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内縁関係の解消・破棄で慰謝料を請求できる?できるケースや慰謝料相場も解説

内縁関係の解消・破棄で慰謝料を請求できる?できるケースや慰謝料相場も解説

内縁相手から不貞行為や一方的な内縁関係の解消をされ、精神的苦痛を癒すために慰謝料を請求したいと考えている方もいるでしょう。実は、内縁関係は婚姻に準ずる関係として法律で保護されているため、法律上の夫婦と同様に相手の不法行為によって精神的損害を被った場合(不貞行為やDVなど)は慰謝料の請求が可能です。

ただし、内縁関係は法律婚とは異なり法的な手続きを必要としないため、まずは相手と内縁関係にあったことを証明しなければなりません。基本的に、下記の2つが客観的に証明できれば内縁関係であったことが認められます。

  • お互いに結婚の意思を持っていること
  • 夫婦同然の共同生活を送っていること

上記が証明できれば慰謝料請求が認められる可能性は高いですが、相手が「そもそも内縁関係ではなかった」と関係を認めないケースもあります。

内縁関係であったことを証明できなければ、単なる同棲中のカップルとみなされるため、慰謝料請求が認められない可能性があります。そのため、あらかじめ内縁関係であったことを認めざるを得ない状況にするために、証拠を集めておくことが重要です。

本記事では、内縁関係で慰謝料を請求できるケースやできないケース、慰謝料請求の方法について解説していきます。

内縁関係であることが証明できても、内縁相手の一方的な行動により関係が崩れたことが証明できなければ、慰謝料の請求はできません。そのため、まずは慰謝料請求ができる状況であるか弁護士に相談してみるのがおすすめです。

弁護士なら、慰謝料請求ができる状態であった場合証拠集めのアドバイスをしてくれたり、こちらが有利な状態で交渉を進めてくれたりします。慰謝料請求するうえで心強い存在となるため、まずは初回無料相談などを活用してみると良いでしょう。

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内縁関係とは

内縁相手に対する慰謝料請求を認めてもらうには、相手との関係性が内縁関係であることを証明する必要があります。自分では内縁関係だと思っていても、内縁関係の定義に当てはまっていない場合や内縁関係を客観的に証明できない場合は慰謝料の請求が認められません。まずは、内縁関係とは具体的にどのような男女関係を指すのか、内縁関係の定義について解説していきます。

婚姻届を提出していないが夫婦同然の生活を送る関係

内縁関係とは、婚姻届は提出していないものの、お互いに結婚の意思を持って夫婦同然の共同生活を営んでいる男女関係のことをいいます。内縁関係にある夫婦は法律上の正式な夫婦ではないものの、婚姻に準ずる関係として扱われるため、下記のように法律婚の夫婦とほぼ同等の権利・義務が生じます。

  • 内縁関係の解消時に財産分与を請求できる
  • 生活費を渡してもらえない場合は、婚姻費用の分担を請求できる
  • 2人の間に子供がいる場合は、内縁関係の解消時に養育費を請求できる
  • 第3号被保険者に加入できる
  • 内縁相手が死亡した場合は遺族年金を受給できる

不貞行為やDV、不当な理由による一方的な内縁関係の解消など相手から不法行為をされた場合は、法律婚の夫婦と同様に精神的・金銭的損害に対する慰謝料を請求できます。ただし、法律婚の夫婦とは決定的に異なる部分もあります。

  • お互いの戸籍は別々のまま
  • 配偶者控除・配偶者特別控除など税制上の優遇は受けられない
  • 内縁相手が死亡しても、法定相続人にはなれない
  • 2人の間に生まれた子供は非嫡出子として扱われる(法律上の父子関係を発生させるには認知が必要)

内縁関係の条件・証明する方法

2人の関係が内縁関係であることを認めてもらうには、下記の2点を証明する客観的な事実が必要になります。

  • お互いに結婚の意思を持っていること
  • 夫婦同然の共同生活を送っていること

内縁関係にあると認められやすい客観的な事実としては、以下のようなものがあります。

  • 3年以上にわたって同居しており、家計も同一にしている
  • 結婚式を挙げたり、冠婚葬祭に夫婦として出席したりと、周囲からも夫婦として認知されている
  • 2人の間に生まれた子どもを認知している
  • どちらかの連れ子を養子縁組している
  • 夫(未届)・妻(未届)と記載されている住民票や賃貸借契約書
  • 健康保険証(内縁相手が被扶養者になっている場合)

内縁関係を証明できる証拠をしっかりと揃えないと、単に同棲しているだけのカップルとみなされてしまい、慰謝料の請求が認められない可能性があるので注意が必要です。

内縁関係で慰謝料を請求できるケース

内縁関係で慰謝料を請求できるケースとしては、主に以下の4つあります。

  • 内縁相手が不貞行為をした
  • 正当な理由なく一方的に内縁関係を解消された
  • 内縁相手が既婚者であることを隠していた
  • 内縁相手からDV・モラハラを受けた

ここからは、それぞれのケースについて1つずつ詳しく解説していきます。

内縁相手が不貞行為をした

内縁関係の相手が不貞行為をした場合は、内縁相手と浮気相手に対して慰謝料を請求できます。

不貞行為とは、配偶者や内縁相手以外の異性と、自由な意思に基づいて性的関係(性行為や性交類似行為)を持つことです。

内縁関係にある夫婦にも、法律婚の夫婦と同様に他の異性と性的関係を持ってはならないという「貞操義務」が課されます。貞操義務に違反する不貞行為は不法行為にあたるため、不貞行為をした側は賠償責任を負います。そのため、不貞行為をされた側は精神的苦痛に対する慰謝料の請求が可能です。

ただし、内縁相手や浮気相手が不貞行為を認めず裁判に発展した場合は、内縁相手が浮気相手と性的関係を持ったことが分かる下記のような客観的な証拠が必要になります。

  • 内縁相手と浮気相手がラブホテルに出入りしている現場や性交渉の現場を収めた写真・動画
  • 性的関係を結んだことが推測できるLINEやメールなどのやり取り
  • 内縁相手が不貞行為を自白した録音・動画・書面
  • 浮気相手と利用したラブホテルのレシートやクレジットカードの利用明細

性的関係がない浮気は不貞行為にあたらないため、「2人きりでデートした」「キスをした」「手を繋いだ」という証拠だけでは慰謝料の請求は認められません。

正当な理由なく一方的に内縁関係を解消された

裁判で内縁関係を解消する正当な理由として認められるのは、民法で定められている法定離婚事由に該当するケースに限られています。具体的な法定離婚事由は下記の通りです。

  • 内縁相手による不貞行為(性的関係を伴う浮気)があった場合
  • 内縁相手から悪意の遺棄(家事や育児の放棄、生活費を渡さないなど)があった場合
  • 内縁相手の生死が3年以上明らかでない場合
  • 内縁相手が回復の見込みのない強度の精神病を患った場合
  • 婚姻を継続しがたい重大な事由(内縁相手からのDVやモラハラ、長期間の別居など)がある場合

正当な理由なく一方的に内縁関係を解消されたことが認められるのは、自分が上記の法定離婚事由に当てはまる行為をしていなかった場合のみです。自分に落ち度がなかったことを裁判で証明できれば、解消を申し出た相手に対して慰謝料を請求できます。

内縁関係は婚姻に準ずる関係として認められています。不当な理由による一方的な内縁関係の解消は不法行為にあたるため、内縁関係を解消された側は内縁関係を申し出た相手に対して慰謝料の請求が可能です。

内縁関係の解消が不当となる理由の具体例としては、以下のものが挙げられます。

  • 性格や価値観が合わない
  • 他に好きな人ができた
  • 相手に対する愛情や一緒に暮らす気が無くなった
  • 親に反対されている
  • 国籍や民族、出身地・宗教などによる差別
  • 相手の親族の犯罪歴が発覚した

内縁相手が既婚者であることを隠していた

内縁相手が既婚者であることを隠していた場合も、慰謝料の請求が認められる可能性があります。独身であると偽って内縁関係を持ち、性的関係を結ぶことは相手の貞操権を侵害する行為にあたります。

貞操権とは性的関係を持つ相手を自由に決める権利のことです。基本的に、はじめから既婚者であることを知ったうえで性的関係を結ぶ人は少ないです。そのため、行為後に既婚者であることが発覚すると、「本当の事実を知っていたら性的関係を持たなかった」と考える傾向にあります。

既婚か既婚でないかは重要な事実であるため、偽った状態で性的同意を得たとしても、それは「自分の意志で決めた」とは言えません。そのため、独身であると偽って性的関係を結ぶことは貞操権の侵害にあたるのです。

貞操権の侵害は不法行為にあたるため、内縁相手が既婚者だと知らずに性的関係を持った場合は慰謝料を請求できます。

また、万が一相手が既婚であることを知っていても、相手から「離婚する」と言われて内縁関係を結んだ場合は、慰謝料の請求が認められる可能性があります。その際、「離婚するから内縁関係になってほしい」等の発言があったことを証明しなければなりません。そのため、メールやLINEなどメッセージ上のやり取りや音声データを残しておくことをおすすめします。

内縁相手からDV・モラハラを受けた

内縁相手からのDVやモラハラを受けた場合も慰謝料を請求できます。

DV 夫婦やカップルなどの親密な関係の男女間で振るわれる暴力の総称
モラハラ 心無い言動や態度で相手を精神的に追い詰める精神的DVの一種

DVは殴る・蹴るなどの身体的な暴力だけでなく、精神的な暴力(モラハラ)や性的な暴力などもDVに含まれます。

DVの種類 具体例
身体的DV 殴る、蹴る、叩く、首を絞める、髪をひっぱる、物を投げつける、刃物を体に突き付ける
精神的DV 大声で怒鳴る、長時間にわたって説教をする、人格を否定するような暴言を吐く、無視をして口をきかない、家族や友人との交流を止めさせようとする、大切にしている物を勝手に捨てる
性的DV 性行為を強要する、避妊に協力しない、性的嗜好を無理やり押し付ける、ポルノ映像を見るように強要する、中絶を強要する
経済的DV 生活費を渡してもらえない、外で働くことを認めてもらえない、収入額を教えてもらえない

DVやモラハラは犯罪行為や内縁関係を破綻させる原因にもなりえる不法行為にあたるため、内縁相手のDVやモラハラが不法行為にあたる場合は慰謝料を請求できます。ただし、裁判で慰謝料の請求を認めてもらうには、日常的にDVやモラハラを受けている事実や被害の大きさを証明するための証拠が必要です。

  • DV・モラハラの内容を記録した日記・メモ
  • DV・モラハラの現場を録音・録画したデータ
  • DV・モラハラに該当する言動が含まれているメールやLINEなどのやり取り
  • 医師の診断書・治療記録
  • 警察・公的機関への相談履歴

夫婦喧嘩で相手から心無いことを言われたという程度では、夫婦喧嘩の延長に過ぎないということで慰謝料の請求が認められない可能性が高いです。

DVやモラハラが認められた場合、離婚する際の慰謝料相場について気になる方は下記の記事で詳しく紹介しているので、参考にしてください。

内縁関係で慰謝料を請求できないケース

内縁関係で慰謝料を請求できないケースとしては、主に以下の4つあります。

  • 内縁関係を立証できない
  • 内縁関係が事実上破綻していた
  • 相手が既婚者だと知って内縁関係を結んだ
  • 内縁関係を解消された原因が自分にある

ここからは、それぞれのケースについて1つずつ詳しく解説していきます。

内縁関係を立証できない

内縁相手に不貞行為やDVなどの不法行為をされても、内縁関係を立証できない場合や内縁関係の定義に当てはまらない場合は慰謝料を請求できません。内縁相手への慰謝料を請求する際、内縁関係を結んでいたかどうかで争いになることも珍しくないため、内縁関係を結んでいたことを証明するための客観的な証拠が必要になります。

2人の関係を内縁関係として認めてもらうには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  • お互いに結婚の意思を持っていること
  • 夫婦同然の共同生活を営んでいること

しかし、以下のようなケースは内縁関係にあたらず一般的なカップルと変わらないため、慰謝料の請求は認められません。

  • 一緒に住んでいたものの、ルームシェアをしていただけの場合
  • お互いに結婚する意思がない場合
  • 当事者の一方だけが結婚すると思い込んでいただけの場合

また、内縁関係の成立要件を満たしていたとしても、「結婚式を挙げていた」「住民票の続柄に夫(未届)・妻(見届)と記載されている」などの客観的な証拠がなければ、慰謝料の請求が認められない可能性が高いでしょう。

内縁関係が事実上破綻していた

内縁相手に不貞行為をされても、その時点ですでに内縁関係が事実上破綻していた場合は、内縁相手や浮気相手に対して慰謝料を請求できません。不貞行為では、法律で保護された平穏な共同生活を送る権利を侵害されたことに対して慰謝料を請求します。

しかし、すでに内縁関係が破綻している夫婦には、法律で守るべき平穏な共同生活を送る権利は存在しません。慰謝料を請求する法的根拠が存在しないため、慰謝料の請求は認められないのが一般的です。

内縁関係が事実上破綻している状態とは、主に以下のような状態を指します。

  • 正当な理由なく長期間別居していた(3~5年程度)
  • 正当な理由なく長期間セックスレスの状態が続いている
  • 内縁関係の解消に向けて話し合いを進めていた
  • お互いに関係を修復する意思がない

長期間セックスレスの状態が続いていても、下記の場合は正当な理由に当てはまるため、慰謝料の請求はできません。

  • 病気などやむを得ない理由がある
  • 結婚後、夫婦のどちらかが性的不能になった(EDなど)
  • 夫婦双方が望んでいない
  • 回数が少ないものの性交渉はしている

病気や性的不能によるセックスレスは、本人に責任はないため基本的には慰謝料の請求はできません。それどころか、離婚も認められない可能性があります。ただし、結婚前からその症状があり、相手に隠していた場合は慰謝料請求の対象となります。

また、数ヶ月に1度や3回に1回は応じてもらえるなど、回数は頻度が少なくても性交渉を行っている場合も慰謝料請求の対象にはなりません。基本的には、1年以上にわたって相手から一方的に拒否されている場合に認められる可能性が高いです。

ただし、不貞やDVなど、自分が相手に対して法定離婚事由に当たる行為をしていたことが原因でセックスレスになっている場合は、慰謝料の請求はできません。逆に、自分が相手から請求される可能性があります。

相手が既婚者だと知って内縁関係を結んだ

内縁関係は婚姻と同様に法律上の保護の対象となっています。しかし、相手が既婚者だと知った上で結んだ内縁関係は、重婚を禁止する民法の規定により原則として法律上の保護の対象外となっています。

法律上の保護を受けないということは、普通の男女のカップルと変わりないため、不当な理由で一方的に内縁関係を解消されたとしても慰謝料を請求する権利はありません。それどころか、内縁相手の配偶者から不倫を理由に慰謝料を請求される可能性もあります。

ただし、内縁相手の夫婦関係が事実上破綻している場合は、例外的に法律上の保護の対象となり、一方的に内縁関係を解消された際に慰謝料を請求できる可能性があります。また、夫婦関係が破綻している既婚者との不貞行為は不法行為にあたらないため、内縁相手の配偶者に対する慰謝料の支払い義務も生じません。

内縁関係を解消された原因が自分にある

前述の通り、内縁関係を解消した理由が下記の法定離婚事由にあてはまる場合は正当な理由として認められるため、内縁関係を解消した側に賠償責任は生じません。

  • 内縁相手による不貞行為(性的関係を伴う浮気)があった場合
  • 内縁相手から悪意の遺棄(家事や育児の放棄、生活費を渡さないなど)があった場合
  • 内縁相手の生死が3年以上明らかでない場合
  • 内縁相手が回復の見込みのない強度の精神病を患った場合
  • 婚姻を継続しがたい重大な事由(内縁相手からのDVやモラハラ、長期間の別居など)がある場合

そのため、自分が法定離婚事由にあてはまる行動をしたのが原因で相手から一方的に内縁関係を解消された場合、慰謝料は請求できません。それどころか、自分が内縁関係の解消に至った原因を作ったとして、逆に内縁相手から慰謝料を請求される可能性もあります。

内縁関係の慰謝料相場(50〜300万円)

内縁関係の慰謝料相場は50~300万円程度とされています。内縁関係は法律婚とほぼ同等の権利が認められているため、慰謝料の相場も法律婚の夫婦と基本的には同じです。

慰謝料の相場は、内縁関係を解消した理由によって下記のように変動します。

慰謝料請求の理由 慰謝料の相場
不貞行為 50~300万円
DV・モラハラ 50~500万円
悪意の遺棄 50~300万円
既婚の事実を隠していた 50~200万円

ただし、内縁関係は2人の関係性を証明するのが難しいことから、法律婚の夫婦よりも慰謝料がやや低くなる傾向にあるようです。しかし、慰謝料の相場はあくまでも目安に過ぎません。

また、理由以外にも下記のような個々の事情も考慮されるため、状況によって相場よりも高い金額が認められることも少なくありません。

  • 精神的苦痛の程度
  • 相手の行為の悪質性
  • 内縁関係の期間
  • 子供の有無
  • 支払う側の収入や資産

特に内縁期間が長く相手の行為の悪質性が高い場合は、精神的苦痛が大きいと判断されるため、高額な慰謝料が認められる可能性が高いです。自身のケースだと適正な慰謝料の金額はいくらなのかを的確に判断するのは難しいため、内縁相手に慰謝料を請求する場合は専門家である弁護士に一度ご相談ください。

なお、浮気や不倫で離婚する際の慰謝料相場についてはこちらの記事で詳しく紹介しているので、参考にしてみてください。

内縁関係の相手から慰謝料を取るための方法

内縁関係の相手から慰謝料を取るための方法は、大きく分けて以下の2通りあります。

  • 相手と交渉する
  • 調停・訴訟を申し立てる

ここからは、それぞれの方法について1つずつ詳しく解説していきます。

相手と交渉する

まずは、内縁相手に対して慰謝料を請求する意思があることを伝え、慰謝料について内縁相手と直接話し合いをしましょう。対面で話し合うのが難しい場合は、メールや電話、書面などでやり取りしても構いませんが、できれば確実に証拠が残る内容証明郵便でやり取りするようにしてください。

当事者間の話し合いでは、内縁相手が自分に原因があることを認めなかったり、内縁関係ではなかったと言い逃れしたりして慰謝料の支払いに応じない可能性があります。そのため、内縁相手が言い逃れできないような証拠をしっかりと集めてから交渉に臨みましょう。

内縁相手が慰謝料の支払いに応じ、慰謝料の金額や支払い方法などについて話し合ってお互いが合意したら、合意内容をまとめた書面を作成します。合意書を作成しておけば、内縁相手が約束通り慰謝料を支払わず裁判に発展した場合、有力な証拠として使えます。

合意書を作成する際は、強制執行認諾文言付の公正証書で作成しましょう。公正証書とは、公正役場で公証人立会いの下作成する書類のことで、証拠力が高く自分で作成するよりも有力な証拠となります。

また、強制執行認諾文言付なら内縁相手が慰謝料を支払わなかった場合、裁判を起こさなくても直ちに強制執行による財産の差し押さえができます。特に、慰謝料以外にも養育費など、継続した支払いを受け取る予定がある場合におすすめです。

調停・訴訟を申し立てる

内縁相手との交渉がまとまらなかった場合や交渉にまったく応じてくれない場合は、裁判所の手続きである「内縁関係調整調停」や「慰謝料請求訴訟」を利用できます。

内縁関係調整調停 調停委員や裁判官を交えて内縁関係の解消や慰謝料について話し合う手続き
慰謝料請求訴訟 裁判を通じて慰謝料の支払いを求める手続き

内縁関係調整調停は、相手の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者間の合意で定めた家庭裁判所で申し立てます。慰謝料請求訴訟は、原則として相手の住所地を管轄する地方裁判所(慰謝料の請求額が140万円未満の場合は簡易裁判所)で申し立てます。

調停や裁判の結果得られた調停調書や確定判決は、法的な強制力を持ちます。そのため、調停成立後や判決確定後も内縁相手が慰謝料の支払いに応じない場合は、裁判所に強制執行を申し立てることで内縁相手の財産の差し押さえが可能です。

なお、事実婚を解消する手続きについては下記の記事で詳しく紹介しているので、参考にしてみてください。

内縁関係で慰謝料請求した場合の裁判例

ここからは、内縁関係で慰謝料請求が認められた過去の裁判例として、下記の2つをご紹介していきます。

  • 妻と離婚すると言った男性と内縁関係を解消した裁判例(慰謝料80万円)
  • 内縁関係の相手と浮気相手の双方に対して慰謝料請求した裁判例(慰謝料60万円)

妻と離婚すると言った男性と内縁関係を解消した裁判例(慰謝料80万円)

こちらは、妻と離婚すると言った内縁相手の男性から慰謝料80万円を獲得した裁判例です。原告女性は「妻子と別居しており、妻と離婚する合意ができている」いう被告男性の言葉を信じ、事実上の夫婦として同居を始めましたが、被告男性は5年9ヶ月後に同居を一方的に解消し、妻との同居を再開しました。

そこで原告女性は精神的な苦痛を受けたとして慰謝料を請求しました。裁判では、下記の状況から原告女性との婚約は成立していると判断され、被告男性に対して慰謝料80万円の支払いを命じる判決が下されています。

  • 被告男性が妻と別居してから7年以上経過していた
  • 妻と離婚する合意や念書があった

通常、既婚者と結んだ内縁関係は法律で保護されず、一方的に内縁関係を解消されても慰謝料の請求は認められません。しかし、今回の事例では内縁関係を持った時点で被告男性の夫婦関係が事実上破綻していると判断され、内縁関係が法的保護の対象となったことから、原告女性の慰謝料請求を認める判決が下されています。

なお、婚約破棄の慰謝料相場については下記の記事で詳しく紹介しているので、参考にしてみてください。

内縁関係の相手と浮気相手の双方に対して慰謝料請求した裁判例(慰謝料60万円)

こちらは、不貞行為をした内縁関係の相手と浮気相手に慰謝料を請求し、内縁関係の相手から慰謝料60万円を獲得した裁判例です。原告は内縁関係にある相手がいましたが、内縁相手の不貞行為が発覚しました。

そのため、内縁関係が不当に侵害されたとして内縁相手と浮気相手に対し、連帯して慰謝料を支払うように求める裁判を起こしています。
裁判では下記のような事情を考慮し、内縁相手に対して慰謝料60万円の支払いを命じる判決が下されました。

  • 原告と被告の内縁相手が事実上の夫婦として共同生活していた
  • 不貞行為によって内縁関係が破綻したことが認められた

一方、被告の浮気相手に対する慰謝料請求は、下記の理由から故意や過失があるとまでは認められず棄却されています。

  • 被告の内縁相手からすでに原告と別れていると告げられていた
  • 交際時点で原告と被告の内縁相手が同居していなかった

なお、浮気相手が慰謝料を払わない時の対処法については下記の記事で詳しく紹介しているので、参考にしてみてください。

内縁関係でも慰謝料を請求したい時は弁護士に相談しよう

内縁相手に慰謝料を請求したい場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。不当な内縁関係の解消や相手の不貞行為などを理由に慰謝料を請求するには、2人の関係が内縁関係であることや、相手に非のある行為で内縁関係が破綻したことを立証する必要があります。

しかし、内縁関係は婚姻のような法的な手続きが必要ないため、裁判でその関係性を立証するのは非常に難しいほか、不法行為があった事実を証明するのもそう簡単なことではありません。弁護士に相談・依頼すれば、以下のようなメリットが得られます。

  • 慰謝料請求が可能かどうか判断してもらえる
  • 慰謝料請求にかかる費用や相場を把握できる
  • 有力な証拠集めの方法や高額な慰謝料を獲得するための適切なアドバイスがもらえる
  • 弁護士に依頼すれば、示談交渉や書類作成、調停・裁判の手続きなどを一任できる

弁護士は法律や交渉のプロです。そのため、弁護士に相談・依頼すれば有利な条件で交渉や裁判を進めやすくなり、高額な慰謝料を獲得できる可能性が高まります。

また、弁護士に一任すれば自分で交渉や手続きを行う必要がないため、時間や労力が省けるのはもちろん、精神的なストレスも軽減できるでしょう。慰謝料を確実に獲得するためにも、離婚や男女トラブルに強い弁護士に一度ご相談されることをおすすめします。

まとめ

内縁関係は法律上の夫婦ではないものの、婚姻に準ずる関係として法律で保護されています。そのため、相手からの不貞行為やDV、正当な理由のない一方的な内縁関係の解消などによって精神的苦痛を受けた場合は、内縁相手に対して慰謝料を請求できます。

ただし、慰謝料の請求を認めてもらうには、2人の関係性が内縁関係にあることや、相手の不法行為によって精神的苦痛を受けたことを証明するための客観的な証拠が必要です。特に内縁関係は婚姻のような法的な手続きが必要なく、2人の関係性を証明するのが難しいため、慰謝料の請求が認められない可能性もあります。

そのため、内縁相手から確実に慰謝料を取りたいと考えている方は、ぜひ離婚や男女トラブルに強い弁護士に相談・依頼することを検討してみてください。

内縁関係の慰謝料請求に関するよくある質問

内縁関係を解消する際に財産分与を行うことはできますか?

結論から言うと、内縁関係であっても解消する際の財産分与は認められています。財産分与の割合は2分の1ずつが原則ですが、当事者間の話し合いによっては自由に変更できます。

また、法律婚と同様に内縁期間に2人で協力して築き上げた財産が財産分与の対象です。「誰の名義か」「誰が稼いだか」に関係なく、内縁関係に築き上げた財産は原則として2人の共有財産となります。

そのため、どちらか一方の名義で購入した車や不動産、どちらか一方が稼いだ給与や退職金なども財産分与の対象です。ただし、親からの贈与や親から相続した財産、内縁関係になる前に築き上げた財産は個人の財産になるため、財産分与の対象にはなりません。

内縁関係でも扶養義務はありますか?

内縁関係にある夫婦も法律婚の夫婦と同様に、お互いに相手に対する扶養義務を負います。相手に生活費を渡さなかったり、給与を自らの趣味やギャンブルに使い果たしたりする行為は扶養義務違反にあたるため、内縁相手から慰謝料を請求される可能性があります。

内縁の夫(妻)の浮気相手にも慰謝料は請求できますか?

結論からいうと、内縁相手だけでなく浮気相手にも慰謝料請求は可能です。ただし、浮気相手に慰謝料を請求できるのは、浮気相手が自由な意思に基づいて性的関係を結び、かつ性的関係を結んだことに故意または過失がある場合に限られています。

  • 故意:相手に配偶者や内縁相手がいることを知った上で性的関係を持つこと
  • 過失:注意していれば相手に配偶者や内縁相手がいるのを気付けた状況であること

浮気相手が内縁相手に襲われた場合や脅されて仕方なく性的関係を結んだという場合は、浮気相手の自由意思で性的関係を持ったわけではないため、浮気相手に対しては慰謝料を請求できません。

また、性的関係が自由な意思に基づくものであっても、浮気相手が内縁相手を独身者だと信じて性的関係を持ち、かつそのように信じても仕方なかった状況である場合は、浮気相手に慰謝料の支払い義務は生じません。

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