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事実婚を解消する手続きは必要?慰謝料を請求する方法や解消時の注意点

事実婚を解消する手続きは必要?慰謝料を請求する方法や解消時の注意点

事実婚を解消する際は、離婚届を提出しなければならない法律婚とは異なり、法的な手続きは必要ありません。双方が解消に合意すれば解消することができます。相手が解消に合意してくれない場合や、財産分与などの話し合いがまとまらない場合は、裁判所に内縁関係調整調停を申し立てて解決を目指すことになります。

また事実婚解消時には、慰謝料をはじめ財産分与や年金分割、親権や養育費について話し合っておきましょう。後々のトラブルを防ぐため、取り決めた内容は公正証書に残しておくのがおすすめです。

本記事では、事実婚を解消する手続きや慰謝料の請求方法、解消時の注意点について解説します。

事実婚の解消に法的な手続きは必要ない

事実婚の解消には、法的な手続きは必要ありません。離婚届を提出しなければならない法律婚とは違い、事実婚の場合はお互いの合意の上で同居を取りやめ、生活を別にすればよいだけです。

ただ、単に同居するだけでなく住民票に「夫(未届)」「妻(未届)」などの記載をしていた場合は、住民票の異動届を提出しなければなりません。

また、事実婚解消後の住居や財産分与についても、あらかじめ夫婦で話し合い決めておく必要があります。

ちなみに、共同生活をしていながらも双方に婚姻の意思がない場合は「同棲」であり、事実婚扱いにはなりません。

事実婚を解消する手続きの流れ

事実婚を解消するには、夫婦で話し合いを行いお互いが解消に合意する必要があります。もし相手が解消に同意してくれなかったり、解消後の住居や財産分与などの話し合いがまとまらなかったりする場合は、内縁関係調整調停の申立てが可能です。

以下で詳しく解説していきます。

1.事実婚の解消は話し合いで決める

事実婚の解消には法的な手続きは不要で、夫婦の話し合いにより解消するかどうかを決められます。なお、事実婚は婚姻届を提出せずに事実上の夫婦として生活するスタイルであるため、離婚ではなく解消という形になります。

事実婚の解消に伴っては、住居や財産分与についても話し合っておくことが大切です。また、事実婚とはいえ正当な理由なく一方的に相手に別れを告げた場合、別れを切り出した側に落ち度があれば慰謝料を支払わなければならなくなるケースもあります。

婚姻届けを出していないだけで、婚姻関係と同様の関係にあったことには違いないため、事実婚でも一定の法的保護が与えられています。

2. 話し合いが困難なときは家庭裁判所に調停を申し立てる

事実婚相手が解消に同意してくれない、または財産分与や解消後の住居などの話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所で内縁関係調整調停を申し立てることができます。

事実婚は婚姻関係と同様の関係であることから、一方的に解消することはできません。そのため一方が解消に同意していなければ、法律婚の場合と同じように家庭裁判所で調停や裁判を行い解決を目指すことになります。

内縁関係調整調停は、一般的に以下の流れで手続きを進めていきます。

  1. 内縁関係調整調停の申立てを行う
  2. 家庭裁判所から調停期日を通知する呼び出し状が届く
  3. 第1回調停期日
  4. 第2回以降の調停期日
  5. 双方の合意で成立、調停終了

なお、事実婚の場合の法定離婚事由も法律婚と同様で、以下のとおりです。

  • 配偶者に不貞な行為があったとき
  • 配偶者からの悪意の遺棄があったとき
  • 配偶者の生死が3年以上不明なとき
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき

参照:e-Gov 法令検索

「悪意の遺棄」には、理由なく同居を拒否することや、配偶者に生活費を渡さないことなどが該当します。また「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」には、DVやモラハラ、借金やセックスレスなどが挙げられます。

事実婚を解消したい理由が上記のいずれかに該当する場合は、調停もスムーズに進む可能性が高いといえます。

また、内縁関係調整調停では調停委員が間に入ってくれるため、当事者同士よりも冷静に話し合いができるのがメリットです。

内縁関係調整調停に必要な書類・費用

内縁関係調整調停を申し立てる際には、一般的に以下のような書類が必要になります。

  • 夫婦関係等調整調停申立書及びその写し1通
  • 事情説明書
  • 連絡先等の届出書
  • 進行に関する照会回答書
  • 年金分割のための情報通知書(年金分割を取り決める場合のみ、1年以内に発行したもの)

ただし、故人の事情によって必要な書類が変わる可能性があるため、あらかじめ管轄の家庭裁判所に確認しておくことをおすすめします。

また申し立て時には、1,200円の収入印紙と、連絡用の郵便切手も用意する必要があります。

事実婚の解消時に話しておきたいこと

事実婚の解消時には、以下の項目について話し合っておきましょう。

  • 慰謝料
  • 財産分与・年金分割
  • 親権・養育費

上記をきちんと取り決めてから解消しないと、のちに金銭面で揉めたり、受け取れるはずのお金を受け取れずに損をしてしまったりするケースもあります。

それぞれの項目について、詳しく解説していきます。

慰謝料の請求について

事実婚でも、相手の有責により精神的苦痛や損害を受けた場合は、法律婚と同様に慰謝料を請求できる可能性があります。

慰謝料を請求できる主なケースと、離婚事由別の慰謝料相場について解説します。

請求できる主なケース

事実婚解消時に慰謝料を請求できる主なケースとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 正当な理由もなく一方的に事実婚解消や別居をされた場合
  • 相手が不貞行為を行っていた場合
  • DVやモラハラを受けていた場合
  • 事実婚中に婚姻費用を出してくれなかった場合
  • 相手が既婚者であることを隠していた場合

正当な理由がなく一方的に事実婚の解消をさせられた場合、慰謝料を請求できる可能性が高いです。正当な理由については、「2. 話し合いが困難なときは家庭裁判所に調停を申し立てる」で解説した法定離婚事由に該当するものがあるかどうかで判断されます。

事実婚といえども夫婦と同等の関係として扱われるため、不貞行為を行っていた場合や生活費を渡してくれなかった場合(悪意の遺棄)、DVやモラハラを受けていたケースなどでも慰謝料請求が可能です。

慰謝料の相場

事実婚を解消する場合、離婚事由別の慰謝料相場は以下のとおりです。

離婚事由 慰謝料相場
不貞行為 50~300万円
DV・モラハラ 50~500万円
悪意の遺棄 50~300万円
既婚の事実を隠していた 50~200万円

相場の幅は広いものの、上記に該当する離婚事由であれば少なくとも50万円は請求可能であるといえます。

なお、事実婚期間や精神的苦痛・損害を受けた期間が長い場合、相手の行為の悪質性が高い場合などは、より高額な慰謝料を請求できる傾向にあります。

財産分与や年金分割について

事実婚でも婚姻と同等の関係であるとされるため、法律婚の場合と同様に、期間中に夫婦が築いた資産を共有財産とすることができます。事実婚関係を解消するにあたっては、分与についてしっかり話し合っておきましょう。分与割合は基本的には2分の1ずつですが、当事者間で話し合いお互いの合意があれば、割合の変更も可能です。

ちなみに、事実婚解消時に夫婦が険悪な状態になっていた場合、財産分与を請求した際に相手が「事実婚はしていない」としらを切る可能性もあります。その場合はお互いに事実婚夫婦として生活をしていたことを証明するため、以下のような書類を証拠として用意しましょう。

  • 住民票
  • 健康保険証
  • 賃貸借契約書

上記以外にも、結婚指輪や結婚式での写真なども証拠として有用です。同居期間が長いことや、親族・友人から夫婦として扱われていたことなども、裁判所から事実婚関係にあったと判断されるポイントになります。

また事実婚期間中、国民年金の第3号被保険者だった場合は、年金分割もできる可能性があります。事実婚で年金分割が認められるのは、以下3つの条件に該当している場合です。

  • 事実婚期間内に、一方が他方の第3号被保険者であった期間がある
  • 第3号被保険者であった一方がその資格を喪失している
  • 事実婚を解消したことが認められる
国民年金の第3号被保険者とは、厚生年金に加入している配偶者に扶養されている人(20歳以上60歳未満)を指します。

事実婚解消にあたり年金分割をする場合は、事実婚の解消が認められる日の翌日から2年以内に請求を行う必要があります。

親権や養育費について

事実婚の場合、子どもの親権は基本的に母親にあり、父親には扶養義務はありません。ただし父親が認知していれば扶養義務が発生し、事実婚解消後に養育費を請求できます。

そのため、養育費を支払ってもらいたいものの認知されていない場合は、父親本人に以下いずれかの方法で認知してもらう必要があります。

胎児認知 子どもが生まれる前に、母親の本籍地の市区町村役場に認知届を提出する
認知届による任意認知 子どもが生まれた後に、父親の本籍地または子どもの本籍地の市区町村役場に認知届を提出する
強制認知 父親の意思に関わらず、裁判所によって認知を認めてもらう

また、事実婚の場合は共同親権は認められておらず、父母のどちらかを親権者に指定する必要があります。先述のとおり親権は基本的には母親が持ちますが、双方の合意さえあれば父親が親権を取るケースもあります。

事実婚解消にあたって取り決めた内容は公正証書に残す

事実婚の解消にあたり取り決めた財産分与や養育費、慰謝料などの事項は、公正証書として作成・保管しておくのがおすすめです。口約束のみだと約束を簡単に反故にされたり、言った言わないで後々トラブルにつながったりする恐れがあるため、取り決めた内容はきちんと形に残しておきましょう。

債務履行遅延時の強制執行を認めさせる「強制執行認諾文言」を入れておけば、慰謝料や養育費の支払いが滞ったときに相手の財産を差し押さえることが可能になります。

まとめ

事実婚を解消する際は法的な手続きは必要なく、双方が合意すれば解消することができます。相手が解消に合意してくれない場合や、財産分与などの話し合いがまとまらない場合は、裁判所に内縁関係調整調停を申し立てて解決を目指すことになるでしょう。

また事実婚解消時には、慰謝料をはじめ財産分与や年金分割、親権や養育費について話し合っておくことが大切です。後々のトラブルを防ぐため、取り決めた内容は公正証書に残しておくことをおすすめします。