内縁(事実婚)関係にある相手との間に子どもが生まれた場合、養育費がもらえるかどうかは「相手が子どもを認知しているか」によって異なります。相手の男性が子どもを認知している場合は養育費を請求できますが、認知をしていない場合は請求が難しいでしょう。
したがって、相手の男性が子どもを認知していないのであれば、まずは認知をしてもらうように話し合う必要があります。認知には以下の2種類の方法があり、裁判によって強制的に認知を認めてもらう方法もあります。
認知の種類
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概要
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任意認知
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内縁関係にある男性が自分の意思で子どもを認知すること
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強制認知
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内縁関係にある男性が任意認知してくれない場合、裁判によって強制的に子どもを認知してもらうこと
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子どもが認知されたら、養育費の請求を行いましょう。まずは内縁相手と話し合いの場を設け、協議によって養育費の金額などを決めるのが一般的です。話し合いでの合意が難しい場合は、調停へとステップを進めていきます。調停は「養育費請求調停」と「内縁関係調整調停」の2種類があり、それぞれの違いは以下のとおりです。
- 養育費請求調停:内縁関係は解消せず、養育費のみを請求する場合
- 内縁関係調整調停:内縁関係を解消し、なおかつ養育費も請求する場合
「相手が調停へ出席してくれない」「調停でも養育費の条件がまとまらない」などの場合は調停不成立となり、裁判へ移行することになります。
なお、養育費の相場は裁判所のホームページに記載されている「養育費算定表」を使って算出するとよいでしょう。養育費算出表では、養育費を請求する側やされる側の年収、子どもの人数、年齢に応じた養育費の相場を確認できます。養育費の金額がなかなか折り合わず、話し合いがまとまらない場合は離婚問題に精通した弁護士へ依頼することをおすすめします。
この記事では、内縁(事実婚)関係で生まれた子どもの養育費について、請求方法や相場などを紹介します。内縁関係にある相手との間に子どもが産まれた方や、内縁関係の解消を検討している方などは参考にしてください。
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内縁(事実婚)関係で生まれた子の養育費がもらえるかは認知の有無による
婚姻届を提出し夫婦になった「法律婚」の場合、離婚にあたって親権者となった人は非親権者に養育費を請求できます。しかし、内縁(事実婚)の場合、養育費をもらえるかどうかは「子どもが認知されているかどうか」によって異なります。認知の有無と養育費の問題をまとめると、以下のようになります。
- 子どもが認知されなかった場合:請求できる可能性が低い
- 子どもが認知された場合:請求できる
次の項目から、それぞれの詳しいケースを紹介します。
子どもが認知されなかった場合|請求できる可能性が低い
内縁関係にある男女の間に子どもが生まれ、男性が子どもを認知していない場合、養育費を請求できる可能性は低いでしょう。日本の法律では、男性の認知がなければ法律上の父子関係は成立せず、扶養義務を負わないとされているからです。
そもそも「認知」とは、婚姻関係のない男女の間に生まれた子どもを、自分の子であると認める行為を指します。法律では女性・男性どちらも認知を行えることになっていますが、実際は男性が認知によって子どもを自分の子だと認めるケースが多いでしょう。
女性の場合「子どもを出産した」という事実があるため、子どもとの間に親子関係があるのは明らかです。裁判でも、生殖補助医療(人工授精、体外受精、代理懐胎)で生まれた子どもなどの例外を除き、女性は子どもを出産した時点で法的な親子関係が生じることになっています。
したがって、婚姻関係のない相手との間にできた子どもは、原則として母親の戸籍に入ることになります。男性は子どもを認知することで、はじめて法的な親子関係が認められ、子どもの親権者になることができます。
つまり、内縁状態で「男性が子どもとの親子関係を認めておらず、認知をしていない」という場合、法的に見ると男性は子どもの親ではないことになります。男性に子どもの扶養義務はないため、養育費を請求するのは難しいかもしれません。
子どもが認知された場合|請求できる
内縁関係にある男女の間に子どもが生まれ、男性が子どもを認知している場合は養育費を請求できます。
ただし、民法第772条には以下の決まりがあり、男性に認知をしてもらうにはいくつかの条件があります。
第七百七十二条 妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。女が婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とする。
2 前項の場合において、婚姻の成立の日から二百日以内に生まれた子は、婚姻前に懐胎したものと推定し、婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
3 第一項の場合において、女が子を懐胎した時から子の出生の時までの間に二以上の婚姻をしていたときは、その子は、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定する。
4 前三項の規定により父が定められた子について、第七百七十四条の規定によりその父の嫡出であることが否認された場合における前項の規定の適用については、同項中「直近の婚姻」とあるのは、「直近の婚姻(第七百七十四条の規定により子がその嫡出であることが否認された夫との間の婚姻を除く。)」とする。
引用元 民法 | e-Gov 法令検索
したがって、認知してもらうには「内縁関係にあった最中に生まれた」あるいは「内縁解消後300日以内に生まれた」子どもであることが重要です。
また認知の方法には「任意認知」と「強制認知」があり、それぞれの違いは以下のとおりです。
認知の種類
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概要
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任意認知
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内縁関係にある男性が自分の意思で子どもを認知すること
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強制認知
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内縁関係にある男性が任意認知してくれない場合、裁判によって強制的に子どもを認知してもらうこと
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任意認知とは子どもの出生後、父親が自分の意思で子どもを認知することです。任意認知には以下の2種類の方法があります。
- 認知届の提出
- 遺言
父親が生きている間に子どもを認知する場合は、①の方法が採用されます。手続きは、父親もしくは子の本籍地に必要書類を提出するだけでかまいません。なお、子どもが生まれる前に認知をする「胎児認知」という方法もあります。
強制認知とは父親が認知を拒否している場合、裁判によって子どもの認知を求めることです。強制認知の場合、家庭裁判所に認知調停の申し立てを行い、調停委員の仲介のもと認知に関する話し合いを行います。父親が認知に合意した場合、裁判所は父親と子どもの血液型、懐胎可能期間の父親の様子・性交渉の有無などを調査し、合意が正当なものかどうかを判断します。合意に相当する審判が確定すると、認知が完了します。
相手が調停に出席しなかったり、話し合いがまとまらなかったりと、調停不成立になった場合は裁判に移行します。裁判では人類学的データや認知的行動などから、生物学的な親子関係のありかを立証していくことになります。
内縁(事実婚)関係で生まれた子が認知された場合の養育費請求方法
内縁関係で生まれた子どもが男性に認知された場合、以下の方法で養育費の請求を行います。
- 協議による話し合い
- 養育費請求調停もしくは内縁関係調整調停を申し立てる
- 裁判で判決がくだる
まずは男性と話し合いの場を設け、養育費の金額や支払い方法、時期、期間などを掛け合ってみましょう。金額だけでなく「子どもが何歳になるまで続けるのか」「毎月いつどのような方法で支払うのか」など、具体的な内容を明らかにすることが大切です。
話し合いで合意が得られなかった場合、家庭裁判所に調停を申し立てます。申し立ての内容は2種類あり、それぞれの違いは以下のとおりです。
- 養育費請求調停:内縁関係は解消せず、養育費のみを請求する場合
- 内縁関係調整調停:内縁関係を解消し、なおかつ養育費も請求する場合
内縁関係を解消する・解消しないによって、どちらを申し立てるかが異なる点に注意が必要です。「内縁関係調整調停」の場合は、内縁関係の解消についてだけでなく、あわせて養育費の条件についても話し合うことができます。
調停では調停委員が2人の間に入り、それぞれの主張を聞いていくことになります。調停で合意を得られなかった場合は訴訟を提起し、裁判に移行します。
内縁(事実婚)関係での養育費請求で知っておくべきポイント
先ほど紹介したように、内縁(事実婚)関係にある相手に養育費を請求する場合、まずは子どもの認知をしてもらう必要があります。また、養育費を請求するには以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。
- 養育費がもらえる期間は一般的に20歳まで
- 養育費相場は養育費算定表を使って算出する
- 養育費についての取り決めは公正証書に記しておく
次の項目から、それぞれを詳しく紹介していきます。
養育費がもらえる期間は一般的に20歳まで
内縁(事実婚)関係で生まれた子どもが認知された場合、養育費を請求できるのは一般的に「子どもが20歳になるまで」の期間です。2022年から成人年齢が18歳に引き下げられましたが、養育費に関しては現在も20歳を基準とするケースが多いでしょう。20歳を迎える前の子どもが、完全に親から独立して生活するのは難しいと考えられるからです。
ただし、双方の話し合いで合意が取れているのであれば、養育費の請求期間を自由に決めることもできます。たとえば、子どもが高校卒業を機に就職する場合、高校を卒業する18歳の3月までとするのもよいでしょう。
また子どもが4年制の大学に進学するのであれば、大学を卒業する22歳の3月まで養育費をもらうように掛け合うことも可能です。病気や障がいなどで親から離れて生活するのが難しい場合など、子どもの状況によって養育費の支払い期間が長くなるケースもあります。
養育費相場は養育費算定表を使って算出する
内縁(事実婚)で生まれた子どもの養育費相場は、「養育費算定表」を使って算出するとよいでしょう。養育費算定表とは、東京家庭裁判所のホームページに記載されている、養育費の目安となる表のことです。
養育費算出表では、養育費を請求する側とされる側の年収、子どもの人数、年齢に応じた養育費の相場を確認できます。たとえば令和元年に公表されたデータのよると、子どもの人数が1人、年齢が0歳、子どもと一緒に暮らす母親の年収が200万円、父親の年収が500万円の場合、月々の養育費相場は4万〜6万円です。
参照:裁判所|平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
このとき、内縁だからという理由で、養育費の金額が下がることはありません。法律婚の夫婦の間に生まれた子どもと、事実婚の夫婦の間に生まれた子どもはどちらも平等な権利を持っており、養育費に差を付ける必要はないからです。養育費算出表でも、法律婚・事実婚で相場が分けられているわけではなく、同じ表を使用してかまいません。
養育費についての取り決めは公正証書に記しておく
「内縁(事実婚)関係で生まれた子が認知された場合の養育費請求方法」の項目で紹介したように、まずは内縁関係の相手と話し合いを行い、協議によって養育費の金額などを決めるのが一般的です。
このときに重要なのが、必ず取り決めの内容を「公正証書」に残しておくことです。>公正証書とは、裁判の証拠として使用できる法的効力を持つ書面を指します。
養育費の内容を公正証書化しておくことで、言った・言わないのトラブルを未然に防ぐことができます。養育費の内容を書面に残したものの、後々「取り決めに合意していない」と言われて養育費を支払ってもらえなくなるケースは少なくありません。書面を公正証書化しておけば、公正証書の内容に沿って養育費の支払いを主張できるため、そのようなトラブルにも問題なく対応できます。
また、公正証書には「強制執行認諾文言」と呼ばれる文言を加えることもできます。強制執行認諾文言とは「相手が公正証書に記載されている内容を守らない場合、すぐに強制執行手続きに移行できる」という文言です。
たとえば公正証書に強制執行認諾文言を加えると、内縁相手が養育費を支払わなくなった場合、すぐに相手の給与や預貯金を差し押さえることができます。養育費の内容を公正証書化するときの費用や手順などはこちらの記事で紹介しているので、あわせて参考にしてください。
内縁(事実婚)関係を解消した場合に養育費以外に請求できるもの
内縁関係を解消したうえで養育費をもらう場合は、以下の項目もあわせて請求できる可能性があります。
次の項目から、それぞれのポイントを紹介します。また事実婚を解消する手続きや慰謝料を請求する方法などについては、こちらの記事をご覧ください。
財産分与
内縁関係を解消する場合、養育費だけでなく財産分与を求めることもできます。
財産分与とは、婚姻中に夫婦が築いた財産を離婚時に分配する制度です。法律婚において、婚姻中に築いた財産は夫婦2人のものとみなされます。そのため離婚をするときは、財産を夫婦それぞれに半分ずつ分配しなければなりません。
婚姻届を提出していない内縁関係の場合も、法律婚と同じように財産分与が認められます。ただし、財産分与の対象となるのは「内縁関係の開始から解消するまでの間に、2人で築いた財産」です。内縁関係になる前にそれぞれが持っていた預貯金などは、財産分与の対象とならない点に注意しましょう。
慰謝料
内縁関係を解消する場合は、養育費とあわせて慰謝料を請求することもできます。>慰謝料の相場や請求条件などは、法律婚と同様です。
ただし慰謝料を請求できるのは、不倫など相手に不法行為が認められるときです。そもそも慰謝料とは、相手の不法行為によって精神的苦痛を被ったときに請求できる損害賠償金を指します。双方の合意のうえで内縁解消にいたった場合や、夫婦どちらにも内縁を解消する原因がある場合などは、慰謝料の請求ができない点に注意しましょう。
まとめ
内縁(事実婚)関係にある男女に子どもが生まれた場合、養育費を請求できるかどうかは「相手が子どもを認知しているか」によって異なります。認知と養育費の関係をまとめると、以下のようになります。
- 子どもが認知されなかった場合:請求できる可能性が低い
- 子どもが認知された場合:請求できる
内縁関係の相手が子どもを認知している場合、まずは話し合いの場を設け、協議による合意を目指すのがよいでしょう。慰謝料の金額に加え、支払い時期や期間、支払い方法などを決定し、合意した内容を公正証書にまとめておくことが大切です。なお、慰謝料の金額のは裁判所のホームページに掲載されている「養育費算定表」を参考にするとよいでしょう。
しかし公正証書に記載すべき内容など、なかには法的な知識が求められるものもあります。曖昧なまま手続きを進めてしまうと、どちらか一方が不利な条件となってしまう可能性もあるため、必要に応じて弁護士への相談を検討するとよいでしょう。
内縁(事実婚)での養育費に関するよくある質問
内縁(事実婚)関係を解消した場合、児童扶養手当は受け取れる?
内縁関係を解消した場合、児童扶養手当を受けるときに「事実婚解消申立書」の提出を求められる可能性があります。
児童扶養手当は、母子家庭などのひとり親世帯の支援を目的としています。受給するには、内縁関係が解消され、現在はひとり親であることを証明できなければなりません。
法律婚は役所に婚姻届を提出するため、結婚や離婚の事実を簡単に証明できます。しかし、内縁関係はそのような明確な決まりがないため、関係の始まりや終わりを証明するのが難しいでしょう。「事実婚の解消時に公正証書を作成する」など、内縁関係は関係を始めるときも、解消するときも、それらを証明できる書類を残しておくことが大切です。
子どもが内縁(事実婚)相手の子ではない場合でも養育費を請求できますか?
子どもが内縁相手の子ではない場合、養育費を請求することはできません。ただし、内縁相手と子どもが養子縁組をしているのであれば、養育費を請求できます。連れ子の養育費に関してはこちらの記事で詳しく紹介していますので、あわせて参考にしてください。
無料相談・電話相談OK!
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