養育費の一括請求は相手の合意があれば可能
養育費は、子どもの生活費や教育費として日々必要になるお金と考えられているため、原則として毎月一定額を支払うものとされています。家庭裁判所の調停や審判で養育費を定める際にも、基本的には毎月の支払いとして定められるケースが大半です。
しかし、養育費の支払い方法は夫婦間で自由に決められるため、双方の合意があれば一括で養育費を受け取ることが可能です。これから離婚を考えているのであれば、離婚条件の話し合いとともに養育費の一括請求についても交渉してみましょう。
相手から一括請求の合意が得られれば、一括で支払われる養育費の金額や内訳、支払日、支払方法などを詳細に話し合い、離婚協議書(合意書)にすべての内容を記載します。合意書を作成しておけば、あとから「一括請求に合意していない」などと交渉内容を覆されるリスクを防げます。
合意書を作成する際には、強制執行認諾文言を記載のうえ、公正証書にすることをおすすめします。
強制執行認諾文言付きの公正証書とは、養育費の支払いが滞った際に、裁判を経ずに財産を差し押さえられる効力を持つ書類のことです。
相手が一括請求に応じていたとしても、絶対に支払ってもらえる保証はありません。リスクを避けるためにも、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておきましょう。
養育費を一括請求するための一連の流れ
養育費を一括請求する際の主な流れは以下のとおりです。
- 一括請求する場合の額を計算する
- 配偶者との話し合いを行う
- 一括払いについて取り決めを記載した合意書を作成する
まずは一括請求する養育費の金額を計算のうえ、根拠を提示しながら元配偶者と話し合いましょう。相手からの合意が得られれば、合意書を作成して養育費を一括で支払ってもらうための準備を整えます。
ここでは、養育費を一括請求する際の手順について具体的に解説します。
一括請求する場合の額を計算する
元配偶者と交渉をする前に、一括請求する養育費の金額がいくらになるのかを計算しておきましょう。
一括請求する場合、基本的には「1ヶ月あたりの養育費×支払い期間」で算出した合計額を請求することになります。そのため、まずは1ヶ月あたりの養育費がいくらになるのか、子どもが何歳になるまで支払うのかの2点を決める必要があります。
養育費の金額や支払期間は、基本的に当事者同士で自由に決めても問題ありません。
しかし、一般的には裁判所が公開している「養育費算定表」を参照して1ヶ月あたりの養育費を算出します。また、支払期間については子どもが自立するまでとなるため、「高校を卒業するまで」または「大学を卒業するまで」になるケースが多いです。
次の項目から、一括請求する場合の養育費の計算方法を紹介します。
一括請求する場合の養育費の計算方法
まずは裁判所が公開している「養育費算定表」を参照し、1ヶ月あたりの養育費を決めましょう。養育費算定表では、以下の点が考慮された金額が算出されています。
- 子どもの人数
- 子どもの年齢
- 養育費を支払う側の年収
- 養育費を支払う側が給与所得者か自営業者か
- 養育費を受け取る側の年収
- 養育費を受け取る側が給与所得者か自営業者か
たとえば14歳未満の子どもが1人で、養育費を支払う側の年収が500万円、受け取る側の年収が300万円の場合、算定表では月額4万円〜6万円が相場とされています。
1ヶ月あたりの養育費の金額がわかったら、次に子どもが自立すると見込まれる年齢までの月数をかけ、一括請求の金額を請求しましょう。
一例として、1ヶ月の養育費が4万円、子どもの年齢が10歳、大学卒業するまでの12年間(144ヶ月)の金額を計算する方法は以下のとおりです。
4万円×144ヶ月=576万円
一括請求の金額がわかったら、次に中間利息控除を適用して一定額を減額します。
中間利息控除とは、長期間にわたって支払われる予定の金額を一括で受け取る場合、将来利息を差し引いて計算する仕組みのことです。
法的には「分割で将来的に受け取るお金と、現時点で一括で受け取るお金は価値が違う」とみなされており、一括で受け取る場合はその価値の分を控除する必要があります。また、分割払いであれば手元の資産を運用し、それによって利息や運用益などが得られることなども考慮されています。
中間利息控除でいくら減額になるのかは、主に「ライプニッツ係数」と呼ばれる計算基準に基づいて算出されます。具体的な金額を算出するためには法的知識や数学的知識が必要になるため、弁護士に相談のうえで一括請求の金額を最終決定しましょう。
参照:養育費算定表|裁判所
配偶者との話し合いを行う
養育費の一括請求の金額が決まったら、元配偶者と話し合いを進めましょう。話し合いでは、主に以下の内容を具体的に決定していきます。
- 一括請求が可能かどうか
- 養育費の金額
- 支払い方法や振込先
- 支払い期限
話し合いの際は、一方的に意見を押し付けるのではなく、お互いが納得できる条件を探すことがポイントです。お互いが養育費の支払い条件について納得していれば、あとからトラブルになるリスクを抑えられるでしょう。
もしも話し合いを拒まれたり、モラハラ・DVなどの事情により当事者だけでの話し合いが難しい場合、弁護士に代理で交渉を依頼する方法がおすすめです。弁護士に依頼すれば、法的知識を交えて有利に交渉を進めてもらえます。
当事者同士や弁護士の代理交渉でも話がまとまらないときは、家庭裁判所に調停の申し立てを行い、調停委員を介して交渉を進めましょう。ただし、養育費は毎月の分割払いが基本とされているため、一括払いを希望する場合、明確な理由や根拠を調停委員に伝える必要があります。
調停でも話し合いがまとまらないときは裁判に移行することになりますが、裁判では原則として養育費の一括払いは認めてもらえません。そのため、裁判に移行するのは相手が養育費の支払いそのものを拒否している場合に限られます。
一括払いについて取り決めを記載した合意書を作成する
一括払いの金額や条件などについての合意が得られたら、合意書を作成しましょう。
合意書を作成せず口約束だけで話し合いを終えてしまうと、あとから「やっぱり一括払いはできない」と覆される恐れがあります。確実に一括払いをしてもらうためにも、話し合いをしたその場で合意書を作成するようにしてください。
前述したとおり、合意書を作成する際は「強制執行認諾文言付きの公正証書」にする方法がおすすめ です。もしも相手が期限までに支払いをしなかった場合、裁判をせずに財産の差し押さえができます。
以上で養育費を一括で受け取るまでの一連の流れは完了です。一括請求の際は相手との交渉が難航するケースも考えられるため、不安な場合は弁護士に相談のうえで話し合いに臨みましょう。
養育費の一括請求に応じてもらうためのコツ
養育費の一括請求は大きな金額が必要になることから、相手から拒否されるケースも少なくありません。そのため、一括請求の際は以下のポイントを押さえておきましょう。
- 多少であれば、減額に応じる
- 現金以外での請求をする
- 面会交流を拒否しない
- 一括請求したいなら裁判を避ける
養育費の一括請求に応じてもらうためのコツについて、詳しく解説しています。
多少であれば、減額に応じる
養育費を一括で請求する際は、金額が大きくなる分、分割払いよりも負担が重く感じられるものです。
相手が現金を所有していれば一括での支払いも可能かもしれませんが、離婚後の生活や将来のことを考えると躊躇するという方も多いでしょう。また、現金が足りないことを理由に、減額請求をされるケースも考えられます。
一括請求の交渉をスムーズに進めるためにも、相手の事情を十分に考慮し、多少の減額には応じるようにしましょう。減額に一切応じないとなると、相手からの印象が悪くなり、交渉が決裂する恐れがあるためです。
前述したとおり、将来の価値を控除する中間利息控除を適用した金額を提示すれば、養育費の支払い総額は少なくなるため、相手からの納得を得やすくなる可能性があります。
なお、養育費は毎月の分割払いが基本であり、法律上は一括払いをする義務はありません。一括請求をした時点でネガティブな印象を与えてしまうのは避けられないことを考慮のうえ、多少の減額請求には柔軟に応じる姿勢を見せましょう。
現金以外での請求をする
養育費は現金で支払ってもらうのが一般的ですが、もしも相手が現金を所有していない場合、現金以外で請求するという方法もあります。
たとえば現金を受け取る代わりに自宅を引き渡してもらえば、今後は家賃を支払う必要がありません。賃貸住宅に住む場合と比べ、固定費を大幅に節約できるでしょう。ただし、住宅ローンがまだ残っているのであれば、元配偶者が支払いを滞納した時点で住み続けることが難しくなるため注意が必要です。
自宅のほかには、自動車や貴金属、ブランド品、有価証券など一定の価値があるものを現金の代わりに請求することも可能です。
現金を所有していないことを理由に一括請求を断られた場合、現金以外での請求も検討してみてください。
面会交流を拒否しない
一括請求の交渉を進める際には、面会交流に協力的な姿勢を示すことで、相手に良い印象を与えられる可能性があります。養育費を支払うからには、子どもと定期的に交流し、成長を見守りたいと考える人も多いためです。
そのため、面会交流について相手の希望条件に応じることで、養育費の一括払いに応じてもらいやすくなる可能性はあるでしょう。
一方で、元配偶者との縁を切りたいがために「面会交流を行わないこと」を条件に一括払いに応じるケースも考えられます。交渉の際に面会交流の取り決めをどうするのかは、相手が子どもとどのように関わってきたのかが重要なポイントです。
ただし、面会交流はあくまでも子どもの福祉を最優先に考えるべきものであり、親の都合ばかりを考慮すべきではありません。
子どもが自分の意思で判断できる年齢(一般的には10歳以上)の場合、基本的に面会交流の有無については子どもの意思を尊重すべきといえます。反対に、子どもがまだ乳幼児で相手に預けることに不安がある場合、監護親が同席したり一定の年齢に達するまでは写真の送信など間接的な交流にしたり、子どものことを最優先に考える必要があります。
一括請求したいなら裁判を避ける
養育費についての話し合いがまとまらず、調停でも合意を得られなかった場合、通常は最終手段として裁判に移行することになります。
しかし、養育費は毎月の分割払いが原則と考えられているため、裁判で一括請求が認められるのは非常に難しいでしょう。
たとえば「養育費の支払い義務者が海外に移住予定で、支払いリスクがある」「子どもが病気になり、高額な医療費が発生している」など、特殊な事情があれば認められる可能性はあるかもしれません。
上記のように、一括請求が認められるだけの事情がなければ、基本的には分割払いの判決が下されると考えておきましょう。裁判の判決に不満がある場合は異議申し立てもできますが、一括請求が必要な特殊な事情を客観的に証明できなければ、判決が覆る可能性は非常に低いです。
そのため、養育費を一括請求する場合は裁判を避け、相手の合意を得られるよう忍耐強く話し合いをすることが大切です。
養育費を一括請求するメリット
養育費を一括請求する主なメリットは、以下のとおりです。
- 未払いになることがない
- 経済的に不安を抱えずに済む
- 離婚後に元配偶者と連絡を取る頻度を減らせる
それぞれのメリットについて、次の項目から詳しくみていきましょう。
未払いになることがない
養育費を毎月分割で支払ってもらう場合、元配偶者が途中で支払いを止めてしまうリスクがあります。
未払いの理由は人によって異なりますが、失業や病気、収入の減少、再婚による新たな家庭の経済負担など、さまざまな要因が考えられます。元配偶者が支払いの意義を軽視したり、トラブルが原因で支払いを拒否したりするケースも有り得るでしょう。
養育費が未払いになった場合、元配偶者と連絡を取って支払いを求めたり強制執行の手続きを取ったりなど、手間がかかってしまいます。また、元配偶者が病気や怪我などにより収入が途絶えていれば、回収することも難しくなります。
一括払いであれば、養育費を全額支払ってもらっている状態であるため、上記のような未払いに悩まされる心配はありません。未払いのリスクに備え、子どもの教育費や医療費などを早めに確保しておきたい場合、一括請求は大きな安心感を得られます。
経済的に不安を抱えずに済む
養育費を一括で支払ってもらえば、まとまった資金が手元に入るため、子どもを一人で育てていく場合でも経済的な不安を軽減できます。
資金を上手く活用すれば、今後の生活に必要な支出を計画的に見直したり、貯蓄を増やしたりもしやすくなるでしょう。たとえば、子どもの学資保険に充当する、突然の出費に備えるための資金として残しておくなどの選択肢も増えます。
「次の支払いが滞るかもしれない」「子どもの医療費など突然の出費でお金が足りなくなるのでは」というストレスからも解放されます。
養育費に関してストレスを受けることがなく、経済的な安定が心の余裕を生み出すことから、子どもとの生活も穏やかになりやすいでしょう。
離婚後に元配偶者と連絡を取る頻度を減らせる
離婚後に元配偶者と連絡を取る回数が減ることも、一括請求の大きなメリットです。
離婚はお互いが別々の道を歩む決断でもあるため、なかには「もう連絡を取りたくない」「可能な限り接触を避けたい」と考える方も一定数いるものです。
養育費の支払いに関して元配偶者と連絡を取り合う必要がある場合、それが精神的な負担になることがあります。とくに、離婚理由がDVやモラハラだった場合、元配偶者と関わりたくないと強く感じるケースが多いでしょう。
一括払いをしてもらえれば、養育費に関する連絡が不要になるため、元配偶者との関わりを最小限に抑えられます。
なお、離婚後の面会交流は子どもの権利であるため、原則として拒否はできません。面会交流を子どもが希望する場合、完全に連絡を絶つのは難しいものの、養育費に関するやり取りが不要になる分、連絡を取る頻度は大幅に減らせるでしょう。
養育費を一括請求するデメリット
養育費の一括請求にはメリットがある一方、以下のようなデメリットもあります。
- 養育費の総額が低くなる可能性がある
- 養育費を早めに使い切ってしまう可能性がある
- 養育費に関する話し合いが長引いてしまう可能性がある
一括請求にはどのようなデメリットがあるのか、詳しく解説していきます。
養育費の総額が低くなる可能性がある
月々の分割払いであれば養育費を問題なく支払える人でも、一括払いで大きな金額を準備するのは難しいというケースも少なくありません。そのため、一括で養育費を支払う代わりに減額交渉を持ちかけられることがあります。
一括で支払う金額は子どもの年齢にもよりますが、一例として以下のようなケースで考えてみましょう。
・子どもの年齢:10歳
・月々の養育費:5万円
・支払い期間:子どもが20歳になるまでの10年間
・年間の養育費:5万円×12か月=60万円
・養育費の総額:60万円×10年=600万円
上記の例であれば、600万円の現金を手元に用意する必要があります。「600万円をすぐに用意はできないが、500万円なら支払える」という場合、相手から減額を要求される可能性もあるでしょう。
また、養育費を一括で受け取る場合には「中間利息控除」が適用され、減額される可能性があります。中間利息控除とは、分割で支払われる予定の金額を一括で受け取る際に、将来の利息分を差し引いて計算する仕組みです。
上記の例でいうと、分割で受け取る600万円には利息分が含まれているとみなされ、一括で受け取るのなら利息分を控除して養育費の総額が減額されるということになります。
なお、中間利息控除を含めた養育費の計算方法については「一括請求する場合の養育費の計算方法」で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
養育費を早めに使い切ってしまう可能性がある
養育費を一括で支払ってもらった場合、子どもが自立するまでにすべての養育費を使い切ってしまう可能性があります。
そのため、養育費の管理方法を事前にしっかりと考えておき、収入とのバランスも考慮しながら計画的に使用しなければなりません。
また、計画的に使用していたとしても、生活費や突発的な支出などに充てているうちに徐々に資金が減ってしまうケースもあります。たとえば、子どもの怪我や病気、学校行事に伴う費用などがある場合、通常よりも出費が多くなるでしょう。
一度に使う金額は小さくても、それが積み重なると気付いたときには資金が底をついてしまうことも考えられます。
一括払いで受け取る際には、子どもが就職して自立するまでの分と想定し、年間いくら使っても問題ないのか、あらかじめ決めておきましょう。
養育費に関する話し合いが長引いてしまう可能性がある
養育費を一括請求すると、相手にとっては高額を一度に支払うことになるため、合意を得るのが難しくなる可能性があります。その結果、交渉が長引いてしまう恐れがある点には留意しておきましょう。
また、相手が一括請求に肯定的だったとしても、「現金を用意する時間が欲しい」と言われて実際に受け取るまでに時間がかかることもあります。
前述したとおり、養育費は原則として毎月の分割払いが想定されています。一括請求に応じるかどうかはあくまでも任意であるため、相手がそもそも話し合いを拒否するケースも考えられるでしょう。
交渉が長引くことによって養育費の受け取りが遅れてしまう恐れもあるため、合意が得られそうにない場合は、分割払いで支払ってもらった方がよいでしょう。
養育費を一括請求するときに注意しておくべきこと
養育費を一括請求する際には、以下の点に注意する必要があります。
- 贈与税がかかる可能性がある
- 一括請求後に追加で養育費をもらえる可能性は低い
- 再婚した場合、返金しなければならない可能性がある
それぞれの注意点について、次の項目から詳しくみていきましょう。
贈与税がかかる可能性がある
養育費は原則として非課税ですが、一括請求で支払いを受けた場合、贈与税が課される恐れがあります。
贈与税とは、個人から年間110万円を超える財産が贈与された際に負担する税金のことです。
一括請求で多額の養育費を受け取った場合、国税庁に「子どもの教育や生活に、通常必要とされる範囲を超えている」と判断される可能性があります。養育費の一括請求では数百万円を一度に受けることが考えられるため、贈与税が課される可能性は高いでしょう。
贈与税は、受け取った養育費の合計金額から基礎控除110万円を差し引いた金額に課されます。たとえば養育費として500万円を一括で受け取った場合、390万円が課税対象となり、贈与税額は以下のように計算できます。
390万円×20%(税率)-25万円(控除額)=53万円
なお、贈与税の税率や控除額は受け取った金額によっても異なります。贈与税に関する不安がある場合、弁護士や税理士に相談してアドバイスを受けるようにしてください。
参照:贈与税の計算と税率|国税庁
養育費を一括請求する際に贈与税がかからないようにする方法
養育費を一括で受け取る際に贈与税がかからないようにする方法として、養育信託を活用する方法があります。
養育信託とは、養育費の支払い義務者が信託銀行に養育費を預け、信託銀行から定期的に子どもに養育費を給付する制度です。
養育信託では、子どもを受益者として信託契約を結び、定期的に養育費が支払われます。まとまった資金を一度に受け取るわけではないため、一括払いの養育費を全額非課税にできます。
また、養育信託は原則として中途解約ができません。そのため、養育費の支払いが滞ったり勝手に使われたりするリスクもなく、安心して定期的に一定の養育費を受け取れます。
養育費の一括払いによる贈与税対策をする場合、養育信託の利用を検討してみてください。
一括請求後に追加で養育費をもらえる可能性は低い
一括請求で養育費を受け取ったあと、何かしらの事情が生じて追加で養育費を請求したとしても、認められる可能性は低いと考えておきましょう。
養育費を一括請求で受け取る場合、将来の事情をある程度考慮して金額を決めているものと判断されるためです。相手の合意さえあれば追加での受け取りは可能ですが、よほどの事情がない限り、応じてもらうのは難しいでしょう。
たとえば「子どもが病気になって高額な治療費が発生した」「留学など特殊な教育費が必要になった」などの事情があれば、相手と交渉する余地があるかもしれません。
もしも相手との話し合いで追加請求の合意が得られなければ、調停や審判など裁判所の手続きを経て請求することになります。ただし、特殊な事情がなければ裁判所に追加請求が認めてもらえる可能性は非常に低いため、手続きにかかるお金や時間が無駄になってしまうリスクもあります。
一括請求後に追加で養育費をもらえる可能性は低いと認識しておき、予期せぬ出費にも備えられるように養育費を運用しましょう。
再婚した場合、返金しなければならない可能性がある
養育費を受け取る側が再婚した場合には、一括請求で受け取った養育費を一部返金しなければならない可能性があります。返金が必要かどうかは、再婚相手と子どもが養子縁組をするかどうかで変わります。
再婚相手が子どもと養子縁組をしない場合、法律上は親子関係にならないため、再婚相手に扶養義務は生じません。そのため、受け取った養育費を返金する必要はありません。
一方、再婚相手が子どもと養子縁組をする場合、再婚相手が一時的な扶養義務者になります。これにより
養育費の支払い義務者である実親は二次的な扶養義務者となるため、養育費の減額や免除が認められる可能性があるのです。
したがって、養育費を一括で受け取っていた場合、一部を返金しなくてはならないことがあります。ただし、再婚相手が諸事情により働けない場合などは減額や免除が認められず、返金をしなくてもよいとされることもあります。
再婚後の養育費について自分で判断できない場合は、養育費問題に強い弁護士に相談してみてください。
まとめ
養育費は毎月の分割払いが原則とされていますが、養育費を支払う側が合意すれば一括で支払ってもらうことも可能です。養育費を一括で受け取れば、途中で未払いになるリスクをなくせたり生活が安定したりなどのメリットがあります。
一方、相手からの減額交渉によって養育費の総額が少なくなる、早めに使い切ってしまうリスクがあるなどのデメリットも存在します。また、一括請求すると数百万ほどの大きな金額を用意する必要があることから、相手との交渉が難航するケースも少なくありません。
養育費の一括請求について交渉する際は、多少の減額であれば柔軟に応じる姿勢を見せ、面会交流なども相手の希望に沿うようにしましょう。
もしも自分で交渉することに不安がある場合は、弁護士に代理で交渉を依頼する方法がおすすめです。弁護士であれば法的知識を交えて冷静に話し合いを進めてくれるため、交渉がスムーズに進む可能性が高まります。
また、養育費を一括で受け取ると中間利息控除や贈与税などのことも考える必要があるため、弁護士にアドバイスを受けながら一括請求の手続きを進めていきましょう。
養育費の一括請求に関するよくある質問
認知してもらっていなくても養育費の一括請求は可能ですか?
子どもの親であることを認知してない状態であっても、相手が養育費の支払いに合意していれば一括請求の交渉は可能です。
一方、認知を受けていなければ法律上は親子関係が認められないため、相手が拒否した場合は養育費を支払ってもらうことができません。そのため、養育費を一括請求する場合は、まず親子関係を法的に確立することが最優先となります。
相手が認知をしない場合、まずは認知調停を申し立て、調停での合意を目指します。調停が不成立となれば訴訟を起こし、判決によって強制認知を受ける形になります。裁判所から認知を受ければ法的に親子関係が認められるため、養育費の請求が可能です。
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