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養育費の減額請求を拒否するには?拒否できるケースや具体的な対処法を解説

養育費の減額請求を拒否するには?拒否できるケースや具体的な対処法を解説

養育費の金額は離婚時に決めるケースが一般的であり、原則として養育費の支払い義務者は、離婚時に定めた条件にしたがって支払いを続けなければなりません。

しかし、離婚後しばらく経つと、事情が変わったことなどを理由に養育費の減額請求をされるというケースもあります。元配偶者から養育費の減額請求を求められたものの、拒否したいと考えている方は多いのではないでしょうか。

結論から述べると、養育費の減額請求を拒否できるかどうかは、双方がどのような状況に置かれているかによって異なります。一例として、養育費の減額請求を拒否できる可能性があるケースと、拒否するのが難しいケースを以下にまとめました。

減額請求を拒否できる可能性があるケース 減額請求の拒否が認められない可能性があるケース
・子どもと会えないという理由での減額請求
・当初決めた養育費が相場より高額であるという理由での減額請求
・支払う側の収入減少の理由が本人の責任である
・支払う側が経営者で収入をコントロールできる
・本人の責任でない理由で支払う側の収入が大幅に減少した
・支払う側が再婚して、扶養家族が増えた
・受け取る側の収入が、大幅に増加した
・受け取る側が再婚し、子どもが再婚相手の養子に入った

子供と会えないことや養育費が相場よりも高いことなどを理由に減額請求をされた場合は、拒否できる可能性があります。また、自己都合での退職や経営者で収入がコントロールできるなど、収入減少が本人の責任である場合も、原則として減額は認められません。

一方、事故や病気など本人の責任でない理由で収入が大幅に減少した場合、減額請求の拒否が難しくなります。また、養育費を受け取る側の収入増やお互いの再婚なども、場合によっては減額請求を拒否できない理由になり得ます。

本記事では、養育費の減額請求を拒否したい場合の対処法や、実際に減額請求の拒否に成功した事例などを紹介します。元配偶者から養育費の減額請求を受けて困っている方は、ぜひ参考にしてください。

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養育費の減額請求を拒否できるかは双方の状況によって決まる

まず前提として、養育費は子どもの生活を支えるために必要な費用であり、父母の間で養育費に関する取り決めが行われた場合、支払い義務は守られるべきものとされています。

一般的に、養育費の支払いを取り決めた後は、養育費の金額や支払期間などを記載したうえで当事者双方が署名捺印した離婚協議書(合意書)を作成します。離婚協議書には法的効力があるため、養育費を支払う側の都合で一方的に減額することはできません。

ただし、双方の状況によっては、正式な手続きを踏んで減額請求を行うことで、養育費の減額が認められるケースもあります。

たとえば、養育費を支払う側の事情が変わった理由として「事故や病気などで収入が減少した」「再婚して扶養家族が増えた」などが挙げられます。

また、養育費を受け取る側の事情変更を理由に減額請求をされる場合もあります。たとえば「離婚時よりも収入が大幅に上がっている」「再婚して子どもが再婚相手と養子縁組をした」などです。

養育費の一方的な減額は認められないものの、双方の事情が大きく変わった場合には、減額が認められる可能性もあります。そのため、減額請求を受けたときは、離婚時と比べてお互いの状況がどのように変化しているのかをまず確認してみてください。

養育費の減額請求が拒否できる可能性があるケース

養育費は、支払い義務者の都合だけで一方的に減額をすることはできません。たとえば以下のような事情を理由に減額請求をしてきたとしても、拒否できる可能性があります。

  • 子どもと会えないという理由での減額請求
  • 当初決めた養育費が相場より高額であるという理由での減額請求
  • 収入減少が理由で減額請求されたが、減少が本人の責任である
  • 収入減少が理由で減額請求されたが、相手が経営者で収入をコントロールできる

次の項目から、それぞれのケースについて詳しくみていきましょう。

子どもと会えないという理由での減額請求

子どもとの面会交流を断っていることを理由に減額請求をされたとしても、請求が認められる可能性は低く、基本的には拒否しても問題ありません。

養育費と面会交流はいずれも子どもの権利ですが、両者は法的には別問題として考えられています。そのため、元配偶者に「子どもと会うことができないため、養育費を減額してほしい」と言われたとしても、拒否できる可能性があります。

また、面会交流は「子どもが両方の親から愛されていることを実感し、健やかに成長すること」を目的に実施されます。もしも子どもが養育費を支払う側の親と会うことを嫌がっている場合、子どもの意思を尊重して面会交流を断るケースもあるでしょう。

ほかにも、面会交流の日が学校行事と被っていたり、受験シーズンで忙しかったりなど、事情により面会交流ができないことも考えられます。

上記のような事情がなければ、養育費を支払っている側に「面会交流権」を主張する権利はありますが、養育費の減額請求が認められる可能性は低いでしょう。

当初決めた養育費が相場より高額であるという理由での減額請求

養育費についての話し合いをした際に、取り決めた金額が相場より高額だったとしても、原則として後から金額を変更するためには当事者間の合意が必要です。

養育費の増額請求をする際に相手の合意を得なければならないのと同じように、減額の際にも相手の合意を得る必要があります。そのため、養育費が高額であることを理由に減額請求をされたとしても、こちら側が拒否すれば相手側の都合のみで一方的に減額することはできません。

養育費の減額や増額など金額変更が認められるのは、基本的には「取り決めた当初から事情の変更があった場合のみ」とされています。事情の変更とは、本人の責任でない収入の減少や再婚などが該当します。

したがって、「取り決めた養育費の金額が相場よりも高い」という理由だけでは、養育費の減額請求が認められる可能性は低いでしょう。

収入減少が理由で減額請求されたが、減少が本人の責任である

収入減少は養育費の減額請求が認められる「事情の変更」に該当する可能性はありますが、本人の責任で減少している場合、原則として減額は認められません。

養育費の算定においては、現在の収入状況だけでなく「潜在的稼働能力」が考慮されるためです。潜在的稼働能力とは、健康状態や今までの収入・経歴を踏まえたうえで本来稼げるはずの収入のことです。

たとえば仕事をやめて一時的に無職になったとしても、働き始めれば前職と同等の収入を稼げるとみなされます。自己都合の退職は本人の責任であり、働き始めれば問題なく養育費を支払えることから、退職を理由とした養育費の減額請求が認められる可能性は低いでしょう。

ほかにも、以下のようなケースで収入が減少した場合、本人の責任とみなされる可能性が高いです。

  • やりたいことがあって転職し、年収が減った
  • 自己都合で退職し、再就職していない
  • フリーランスや自営業を始めたが、収入が安定していない
  • 健康状態に問題がないにもかかわらず、フルタイム勤務をやめた
  • 住宅ローンを組んだため、生活が苦しくなった

自己都合で退職したり、働ける能力があるのに職に就いていなかったりする場合は、基本的に養育費の減額請求を拒否できます。

また、新しく住宅ローンを組んだことを理由に減額請求をされるケースもありますが、養育費は子どもの生活を支えるためのものであり、支払う側の個人的な生活事情よりも優先すべきと考えられています。そのため、住宅ローンで生活が苦しいからといって、養育費の減額請求が認められる可能性は低いです。

反対に、会社都合でのリストラや減給があった場合は本人の責任ではないため、減額請求の拒否が難しくなるでしょう。

ただし、「会社の業績が悪化し、来年から給料が下がりそうだから今から養育費を減額したい」という請求の場合は認められる可能性が低く、拒否が可能です。収入減少が未確定の場合、事前に減額することは原則として認められていないためです。

収入減少を理由に減額請求をされたときは、なぜ収入が減少したのかを相手に詳しく尋ねたうえで拒否するかどうかを検討しましょう。

相手が経営者で収入をコントロールできる

養育費を支払う側が会社の経営者である場合、収入の減少を理由に減額請求をしても認められない可能性があります。会社経営者は、自身の給与のコントロールが可能であることから、減額や増額も自由に行えるとみなされるためです。

養育費は子どもの生活を守るために支払われるものであり、支払う側の都合による収入調整は、子どもの利益に反すると考えられます。そのため、収入減少の理由が業績悪化などでなければ、養育費の減額請求は基本的に認められません。

また、経営難による収入減少を相手が主張していたとしても、収入が減少する前と生活水準が変わっていなければ支払い能力があるとみなされ、養育費の減額は認められない可能性があります。

養育費を支払う側が経営者である場合、収入減少の理由を尋ね、経営難を主張してきたときはそれを客観的に証明できる資料の提示を求めましょう。会社の弁護士などが出てくる可能性もあるため、実際に交渉する際はこちらも弁護士に相談するのがおすすめです。

養育費の減額請求は条件を満たしていた場合に認められる

養育費の金額を後から変更するためには、基本的に当事者同士の合意が必要です。そのため、養育費を支払う側の減額請求に正当な理由がなければ、受け取る側は請求を拒否できる可能性が高いでしょう。

当事者間の合意以外で減額請求が認められるためには、以下のような条件を満たす必要があります。

  • 養育費を取り決めた後に、重要な事情の変更があったこと
  • 養育費を取り決めた時点では、予測不可能な事情であること
  • 事情の変更を考慮しなければ、著しく不公平が生じること

収入減少など事情の変更については、養育費の合意後に起きたことでなければ認められません。また、予測不可能なやむを得ない事情の変更である場合に限られます。

事情の変更が発生したとしても、その内容が軽微であれば養育費の支払いに影響はないとみなされるケースも少なくありません。しかし、やむを得ない事情の変更によって養育費を支払う側に著しい不公平が生じる場合、減額が認められる可能性があります。

上記の条件は、現状の養育費を維持することで、どちらか一方に著しい負担が生じる状況を避けるために設けられています。

養育費の減額請求が拒否できない可能性があるケース

以下のようにやむを得ない事情がある場合、減額請求を拒否できない可能性があります。

  • 養育費を支払う側の収入が、本人の責任でない理由で大幅に減少した
  • 養育費を支払う側が再婚して、扶養家族が増えた
  • 養育費を受け取る側の収入が、大幅に増加した
  • 養育費を受け取る側が再婚し、子が再婚相手の養子に入った

それぞれのケースについて、次の項目から詳しく解説していきます。

養育費を支払う側の収入が、本人の責任でない理由で大幅に減少した

本人の責任でない理由で、養育費を支払う側の収入が大幅に減少した場合、減額請求を拒否できない可能性があります。

一例として、以下のような理由が該当します。

  • 病気になって働けなくなった、または転職を余儀なくされた
  • 怪我を負って働けなくなった、または転職を余儀なくされた
  • 会社都合によるリストラや減給があった

病気や怪我などは予測不可能な事情であり、状況によっては働けなくなったり、収入が少ない職種への転職を余儀なくされることも考えられます。また、会社の業績悪化や経営難など、会社都合によるリストラや減給があった場合、養育費の減額請求が認められる可能性があります。

なお、収入減少によってどの程度の減額が認められるのかは、個々の事情によって異なります。

たとえば病気・怪我が回復可能なものであり、数か月後には職場に復帰できる見込みがある場合、減額の幅は比較的小さくなるでしょう。反対に、長期的な離職が必要なほど重度な場合、大幅な減額が認められるケースもあります。

また、リストラや減給についても、健康状態に問題がなく再就職によって養育費を支払えるのであれば、大幅な減額は認められない可能性が高いでしょう。

養育費を支払う側が再婚して、扶養家族が増えた

養育費を支払う側が再婚して扶養家族が増えた場合、家族を養うための生活費や教育費などが増えることから、減額請求が認められる可能性があります。

ただし、再婚をしただけで養育費の減額が認められるわけではありません。養育費の減額が認められる具体的な事例は以下のとおりです。

  • 再婚相手との間に子どもが誕生した
  • 再婚相手の子どもと養子縁組をした
  • 病気や育児などの事情により仕事ができず、再婚相手が収入を得ていない

再婚相手との間に子どもが誕生したり、再婚相手の連れ子と養子縁組をした場合、養育費を支払う側の生活費負担が増加することが考えられます。また、再婚相手が病気・育児などのやむを得ない事情により働けない場合も、生活費の負担が大きくなる事情を考慮し、減額請求が認められる可能性はあるでしょう。

一方、再婚相手との間に子どもがおらず、また再婚相手が働ける状態にあるのに仕事をしていない場合などは、養育費の減額が認められる可能性が低くなります。

養育費を受け取る側の収入が、大幅に増加した

養育費の算定は、受け取る側と支払う側の収入のバランスが考慮されるのが一般的です。そのため、養育費を受け取る側の収入が大幅に増えた場合、減額請求の拒否が難しくなる可能性があります。

収入が増える事例として、以下のようなケースが挙げられます。

  • 転職や昇進で年収が上がった
  • 独立して事業が成功し、収入が大きく増えた

上記のように、継続的な収入増加であれば、減額請求の拒否が難しくなります。反対に、賞与や副業など一時的な収入増加の場合、減額請求を拒否できる可能性があるでしょう。

なお、どの程度の増加であれば減額が認められるのか、具体的な金額は定められていません。一般的には、収入増加によって子どもの生活を十分に支えられると判断されれば、減額請求が認められる可能性があります。

養育費を受け取る側が再婚し、子が再婚相手の養子に入った

養育費を受け取る側が再婚して子どもが再婚相手と養子縁組をした場合、減額を拒否できない可能性が高くなります。

子どもが再婚相手の養子になった場合、養親が一次的な扶養義務者となり、実親である元配偶者は二次的な扶養義務者になるためです。また、養子縁組によって子どもの生活は再婚相手の収入に支えられることになるため、実親が支払う養育費の必要性が減少します。

そのため、子どもが再婚相手の養子に入った場合、養育費の減額または免除が認められる可能性があります。

ただし、養育費の減額請求が認められるためには、再婚相手の経済状況的に子どもの生活を十分に支えられることが前提となります。

たとえば再婚相手が働けない状況にあったり、子どもに高額の医療費がかかっていたりなどの特殊な事情がある場合、減額請求を拒否できる可能性もあるでしょう。

養育費の減額請求の拒否が認められた事例

養育費の減額請求を受けたものの、拒否したことが認められた事例を3つピックアップして紹介します。

  • 元夫からの減額請求が審判で却下された事例
  • 元夫の扶養家族が増えたものの、減額請求が認められなかった事例
  • 家庭裁判所の調停での決定を覆し、審判で減額請求が却下された事例

減額請求の拒否を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

元夫からの減額請求が審判で却下された事例

元夫からの減額請求を受けて養育費減額調停を申し立てられたものの、審判で請求が却下された事例を紹介します。

離婚時にお互い合意のうえで養育費を取り決め、公正証書まで作成したが、元夫から大幅な減額を求める通知が元妻に届いた。減額の理由は「合意した金額が相場より高額である」とのことだった。


元妻は養育費の減額請求を拒否したが、元夫は養育費減額調停を申し立て、争う姿勢を見せる。調停で元夫は所得の減少や元妻の所得増加などを理由に養育費の減額を主張した。


調停でお互いの合意は得られず不成立となり、審判に移行。裁判官は「養育費の金額は将来のことも踏まえ、お互いが合意のもとで取り決めたものである」とし、元夫の減額請求を却下した。

こちらの事例では、養育費を取り決めた当初から事情の変更があったことなどを理由に、元夫が減額請求をしました。しかし、事情の変更は予測可能な範囲内であると判断され、元夫の減額請求は審判で却下されています。

元夫の扶養家族が増えたものの、減額請求が認められなかった事例

元夫が再婚して子どもができたことを理由に減額請求調停を申し立てられたものの、減額請求を取り下げさせることに成功した事例を紹介します。

再婚して子どもを認知し、扶養家族ができたことを理由に元妻が養育費減額調停の申し立てを受ける。過去の養育費が未払いになっていた経緯があったため、元妻は減額請求を拒否し、弁護士を代理人に立て、以下のポイントで主張を展開した。


まず元夫の扶養家族が増えた一方で、給与は養育費決定時より増額しており、減額の必要性がないこと。また、減額請求が二度目であり、繰り返される手続きによる元妻の精神的負担も考慮されるべきであること。さらに、養育費基準には幅があり、多少の事情変更が生じてもその範囲内で考慮済みであるという原則を強調。最終的に、相手方の減額請求は取り下げられる形で調停は終了した。

一般的に、扶養家族ができると養育費の減額は認められるケースが多いのですが、こちらの事例では相手の収入増や調停による元妻の負担増などを主張し、最終的に相手方が請求を取り下げる形で決着しました。

家庭裁判所の調停での決定を覆し、審判で減額請求が却下された事例

元夫から養育費減額調停を申し立てられ、審判で養育費の減額が認められたものの、即時抗告によって減額請求があらためて却下された事例を紹介します。

離婚時に養育費の金額を調停で取り決めたが、数か月後に元夫が養育費を滞納し始めたうえ、2万円の減額を求める調停が申し立てられた。元夫は、再婚後に新たな子どもが生まれたことや、収入が減少したことを減額の理由に挙げた。


これに対し元妻側は、離婚時に再婚相手がすでに妊娠していたこと、収入減少についても予測可能な範囲内であったことなどを主張し、事情の変更には該当しないと反論した。


家庭裁判所では元夫の主張を一部認め、養育費を1万円減額する審判を下したが、元妻側はこれを不服として東京高等裁判所に即時抗告を行う。改めて主張を行った結果、東京高等裁判所は家庭裁判所の審判を取り消し、元夫の減額請求を却下する決定を下した。

上記の事例も扶養家族ができたことを理由に減額請求をしていますが、養育費の取り決め時点で再婚相手の妊娠が判明しており、生活費の増加は予測可能なものであったと元妻側は主張しました。

家庭裁判所では元夫の減額請求が認められたものの、東京高等裁判所に即時抗告を行った結果、判決が覆され減額請求が却下されました。

養育費減額請求を受けたときの対応の流れ

元配偶者から減額請求を受けたものの、拒否したいと考えている場合は、主に以下の流れで対応することになります。

  1. 協議による話し合い
  2. 養育費減額調停に赴く
  3. 養育費減額審判に臨む

まずは協議による話し合いで「減額請求は受けられない」という旨とその理由を伝えましょう。

もしも相手が納得せず養育費減額調停を申し立てられた場合、調停委員を介して家庭裁判所で話し合いを進めます。調停でも減額請求の問題が解決しなければ、養育費減額審判で裁判官の判断を仰ぐことになります。

次の項目から、養育費減額請求を受けたときの対応の流れについて詳しく紹介します。

協議による話し合い

養育費の減額請求は、まず協議による話し合いを通じて行われるケースが一般的です。

なぜ減額請求するのかの理由を聞いたうえで、減額が妥当でないと感じられる場合、応じられない旨を相手に伝えましょう。

減額請求を拒否する際には、「減額請求が認められる正当な事情がないこと」「減額されると子どもとの生活が苦しくなること」などを冷静に主張することがポイントです。

なお、減額請求の協議は当事者同士のみでも問題ありませんが、元配偶者に会いたくないなどの事情がある場合、弁護士に代理で交渉をしてもらう方法もあります。

養育費減額調停に赴く

協議のよる話し合いが決裂した場合、元配偶者に養育費減額調停を申し立てられる可能性があります。

調停を申し立てられると、自宅に家庭裁判所からの通知書が届きます。通知書には調停期日が記載されているため、当日は裁判所に赴き、調停委員を介しての話し合いを進める必要があります。

もしも調停を無断で欠席すると、相手の主張のみが調停委員に伝えられ、減額請求の拒否が難しくなる恐れがあるため、必ず出頭するようにしましょう。

養育費減額調停では、調停委員を交えて話し合いを進めていきます。話し合いを通じて相手の主張に納得できれば減額を受け入れることになりますが、納得できなければ無理に受け入れる必要はありません。

調停は基本的に月に1回のペースで行われ、当事者間の話し合いが合意に至れば調停成立となります。合意を得られなかった場合は調停不成立となり、次の養育費減額審判に進みます。

養育費減額審判に臨む

養育費減額審判とは、調停が不成立になった際に、家庭裁判所の裁判官が当事者間の主張を総合的に考慮し、判断を下すことを指します。

裁判官がどのような判断を下すのかはケースバイケースです。減額請求が完全に却下されることもあれば、一部認められることもあります。

減額請求が認められた場合、養育費を支払う側の要望が全面的に通るわけではなく、減額幅も審判によって決められることになります。たとえば養育費を支払う側が3万円の減額を希望していても、受け取る側の生活が苦しくなることが想定される場合、1万円の減額という判断になることも有り得るでしょう。

裁判官が養育費の金額を判断する際には、裁判所が定めている「養育費算定表」が用いられるケースが一般的です。

なお、審判で出た結論に不服がある場合は、2週間以内に即時抗告を高等裁判所に申し立てることで、あらためて審理をしてもらうことができます。

養育費の減額請求を拒否するための具体的な対策

養育費の減額請求を拒否したい場合、以下のような対策を取りましょう。

  • 減額請求の理由を確認し、無視せずに話し合いを行う
  • 減額請求したいという理由が相手の責任であることを主張する
  • 自分の生活状況と減額が難しいことを伝える
  • 離婚問題に強い弁護士に相談する

ここでは、養育費の減額請求を拒否するための具体的な対策について、詳しく解説します。

減額請求の理由を確認し、無視せずに話し合いを行う

元配偶者から減額請求を受けたときは、無視せずに理由を確認したうえで話し合いを行いましょう。

もしも相手からの連絡に応じない状態が続くと、調停を申し立てられる可能性があるためです。お互いの状況によっては、協議による話し合いをするよりも、調停での審判の方が自分にとって不利になるケースも考えられます。

そのため、まずは相手と連絡を取り、「なぜ減額が必要なのか」「どの程度の減額を希望しているのか」をしっかりと聞くようにしましょう。

減額請求したいという理由が相手の責任であることを主張する

収入減少を理由に減額請求を受けたときは、まず収入減少の原因が本人の責任か否かを確認してみてください。病気や怪我など本人の責任でない収入減少の場合は、調停を申し立てられると審判によって減額請求が認められる可能性が高いです。

反対に、本人の責任で収入が減少しているのであれば、事情をよく調べたうえで「収入減少は本人の責任のため、減額請求には応じられない」と主張しましょう。

たとえば、「今まで安定した仕事に就いていたにもかかわらず、本人の希望により収入が不安定な仕事に転職した」という理由であれば、本人の責任による収入減少と主張できます。実際に得ている収入が減っていたとしても、潜在的には前職と同等程度の年収を得られると裁判所が判断するケースもあります。

収入減少が元配偶者の責任であることを主張して立証できれば、減額請求を拒否できる可能性はあるでしょう。

自分の生活状況では減額が難しいことを伝える

養育費の減額請求を受けたときは、減額されると自分や子どもの生活状況が厳しくなってしまうことを伝えましょう。たとえ養育費を支払う側の収入が減少していたとしても、以下のような事情がある場合は減額を拒否できる可能性があります。

  • 元々の養育費が少額であり、減額されると受け取る側の生活がさらに厳しくなる
  • 養育費を受け取る側の収入も減少している
  • 減額により、子どもの生活や教育に大きな影響を及ぼす可能性がある

上記のように、減額によって生活が厳しくなるという状況を客観的に伝えることで、減額請求が認められるハードルを上げることが可能です。協議や調停の際には、生活費や子どもの教育費などの具体的な資料を用意しておくと説得力が増すでしょう。

離婚問題に強い弁護士に相談する

養育費の減額請求を拒否する際には、離婚問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

養育費の減額が認められるかどうかは、減額に値する事情の変更があったかどうかが争点となります。事情の変更は収入の変化や再婚などが該当しますが、減額請求を拒否するためには、それらが法的にどの程度の影響を持つのかを正確に判断しなければなりません。

法律の専門知識がなければ正確な判断を下すのは難しいため、弁護士のサポートは必要不可欠といえるでしょう。

また、弁護士は相手との交渉を代理で行ってくれるため、直接話し合いをすることによる精神的な負担を減らせます。さらに、減額請求を拒否するための主張や証拠の準備などのサポートもしてもらえます。

減額請求を受けて困っている方は、まず弁護士の無料相談を受け、どのように対処すればよいのかアドバイスをもらいましょう。

まとめ

養育費は子どもの生活や教育に必要な費用であり、支払う側の都合だけで勝手に減額することはできません。ただし、養育費の取り決め後に重要な事情の変更があった場合は、減額請求が認められるケースもあります。

たとえば「怪我・病気など予測不可能な事情により収入が減少した」「再婚によって扶養家族が増えた」などが重要な事情の変更に該当します。

一方、転職や退職など本人の責任による収入減少の場合、養育費の減額請求は基本的に認められません。また、「子どもと会えないから」「取り決めた養育費が相場よりも高いから」などの理由で減額請求を受けても、拒否できる可能性があります。

上記のように、養育費の減額請求が拒否できるかどうかは個々の状況によって異なります。正確に判断するためには法的知識も必要になるため、離婚問題に強い弁護士に相談のうえで対処していきましょう。

弁護士に相談すれば、相手から調停を申し立てられた場合にも一貫して対応してもらえるというメリットがあります。

養育費は子どもの生活を守るために必要な費用であるため、減額請求を受けた時は専門家である弁護士に相談し、冷静に対処していきましょう。

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