相手の収入がわからない場合はどう調べる?収入の調べ方
配偶者の収入を調べる方法は、同居中、調停・審判手続中で変わってきます。
主な収入の調査方法は以下の通りです。
- 同居中:課税証明書を取得する
- 調停・審判手続き中:調査嘱託を申し立てる
- 資料が用意できない場合:賃金センサスを利用
それぞれ詳しく解説していきます。
同居中は課税証明書を取得する
夫婦で同居中であれば、配偶者の課税証明書を取得すると収入は簡単にわかるでしょう。
課税証明書は文字通り課税額について記載された書類で、所得の内訳や所得控除の内訳、課税標準額などが記載されています。そして、所得の内訳では給与所得や事業所得だけでなく、分離課税となっている投資信託による配当所得まで、細かく区分されて記載されているのです。そのため、相手の収入を正確に調べられます。
課税証明書は同居中の親族であれば、窓口で簡単に取得可能です。主な取得場所としては、市役所、郵便局、コンビニエンスストアがあります。しかし、郵便局とコンビニエンスストアは本人以外の取得を受け付けていません。そのため、課税証明書を発行したいなら、市役所を訪れるのが良いでしょう。
証明書の取得には、課税・非課税証明書交付申請書と、申請者の身分証、200〜300円の手数料が必要です。申請書の雛形や、有効な身分証は市のホームページに掲載されているので、ぜひ1度ご確認ください。
ただ、配偶者と既に別居中の方、同居していても親族ではない方は、証明書を発行する権限を委任する委任状が必要になります。そのため、別居中の方が配偶者の収入を調べるには、相手方への理解を求めなければいけません。
調停・審判手続き中は調査嘱託を申し立てる
調停・審判手続き中であれば、裁判所に対して調査嘱託の申し立てが可能です。
既に養育費調停などを行っている場合は、裁判所が相手方に源泉徴収票や所得証明書の提出を指示します。そのため、多くの場合は調停・審判に入れば、相手の正確な収入が判明するはずです。
しかし、なんらかの理由で、相手が所得に関する資料を提出しない場合は、裁判所に対して調査嘱託を申し立てできます。調査嘱託は、裁判所が第三者に対して、事実認定のために必要な書類の送付を要求できる制度です。
収入を調査する場合は、配偶者の職場に対して給与明細などの送付を要求することになります。場合によっては、職場の人間に調停中であることがバレたり、迷惑がかかるかもしれません。そのため、調査嘱託の実施による第三者への影響を鑑みて、相手方が任意で資料を開示する可能性もあります。
資料が入手できないときは賃金センサスを利用する
どうしても収入に関する資料が入手できない場合は、賃金センサスを利用するのがおすすめです。
賃金センサスは、厚生労働省が行っている「賃金構造基本統計調査」によって作成された資料を指します。主に、学歴、年齢、性別などさまざまな条件ごとに平均収入がまとめられた資料です。
中には、養育費の支払いに非協力的で、所得を把握できる資料を提出しない方もいるでしょう。そんな時には、賃金センサスのデータに則り、相手の年齢、職業などから収入を推測し養育費を決定します。
ただ、賃金センサスで割り出されるのは、あくまで平均年収です。例えば、相手が副業も行い平均より高い年収を得ていた場合は、請求できる金額が安くなってしまう可能性もあります。そのため、養育費を正確に請求したいのであれば、相手方の協力が必要不可欠です。
養育費の金額はどんな要素で決まる?
養育費の金額を決定する際に、重要になる要素は子どもの人数と年齢です。
そして、支払い義務者の昨年の年収を元に、裁判所が公表している「養育費算定表」を参考に、養育費を決定します。
例えば、子ども(0〜14歳)2人で、受け取り手の年収は120万、支払う側の年収が500万円だった場合の養育費は6〜8万円が目安です。
ここからは、なぜ上記のように計算するのか、その理由を詳しく解説していきます。
算定する際は子どもの人数と年齢が重要な要素となる
養育費を算出する際には、子どもの人数と年齢が第一の基準となります。
裁判所が公表している「養育費算定表」も、子どもの人数・年齢別で分られていることから、養育費決定への影響力が伺えるでしょう。特に、14歳以下と15歳以上かで、養育費の相場は約2万円ほど異なってきます。これは、15歳以上になると高校進学や、大学受験が近づくなどさまざまな要因から学費や生活費が高くなるのが要因でしょう。
養育費は、あくまで子どもに「両親が同居していた場合の生活水準」を保証するため、親に課せられる義務です。そのため、子どもの年齢や人数、生活状況が算出に大きく影響するのは当然といえます。
裁判所で公表されている養育費算定表を参考にする
裁判所では、令和元年12月23日から、養育費・婚姻費用算定表が公表されています。養育費の算出の際には、これを用いてください。
養育費の算定表は、子どもの人数(1〜3人)と、年齢(0歳〜14歳と15歳)に応じて、9つ用意されています。まずは、自身の家庭環境に当てはまる表を探しましょう。
表は縦軸が支払い義務者の年収、横軸が権利者(子どもを育てている側)の年収を示しています。そして、両者の数値が交差する部分が、子ども人数・年齢と収入を加味した養育費の相場です。なお、自営業と会社員では、条件となる年収が異なるので、自身の就業状況に合わせて表を利用してください。
下記に、一例として0~14歳の子ども2人、権利者側の収入が120万円だった場合の養育費の相場を記載します。養育費算出の際に参考にしてみてください。
支払う側の年収
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会社員
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自営業
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100万円
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0〜1万円
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1〜2万円
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200万円
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1〜2万円
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2〜4万円
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300万円
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2〜4万円
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4〜6万円
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400万円
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4〜6万円
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6〜8万円
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500万円
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6〜8万円
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8〜10万円
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600万円
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8〜10万円
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10〜12万円
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700万円
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10〜12万円
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12〜14万円
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800万円
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10〜12万円
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14〜16万円
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900万円
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12〜14万円
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18〜20万円
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1,000万円
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14〜16万円
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20〜22万円
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1,500万円
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22〜24万円
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28〜30万円
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ただし、これはあくまで目安の金額であって、絶対の数値ではありません。生活状況によっては、算出された養育費では足りない、または支払いが難しい場合があるでしょう。
そのため、養育費は表から算出された数値を元に、個人の事情を踏まえて話し合いで決定するのがベストです。
養育費の算定で使用するのは原則「昨年」の年収
養育費の算定で使用するのは、原則「昨年」の収入です。つまり2024年に養育費を請求する際は、2023年1月1日から12月31日までの収入をベースに計算します。
前年度の年収は、会社員の方は源泉徴収票の「支払い金額」の欄を、自営業の方は確定申告書の「課税される所得金額」の欄で確認可能です。
ただし、転職によって年収が大幅に減少、もしくは増加している場合もあります。その場合は、養育費を算出する際に、どちらの年度をベースにするかで、大幅に数値が変動するでしょう。
そのため、前年度と収入に乖離がある際は、今年度分の年収をベースに、養育費を算定することもあります。ただ、今年度分の年収は、源泉徴収票が発行されていない可能性が高いです。その際は、給与明細を参考に、今年度分の収入を割り出しましょう。
なお、給与明細を参考にする際は、数ヶ月分の明細を使用することが重要になります。なぜなら、ボーナスや一時金が支給された場合は、他月に比べて月収が高くなるからです。そのため、正確な年収を割り出すには、数ヶ月分の給与明細を確認するべきと覚えておきましょう。
収入の増減が著しい場合は今年度の収入をベースにして算定することもある
転職で収入が著しく減少する、または増加する場合は、前年度と今年度で年収に大きな差が生じます。
養育費を請求する側としては、年収に見合った正確な金額を要求したいと感じるでしょう。逆に、払う側の収入が減少していた場合は、前年度の収入基準で養育費を払うのは難しいと考えるはずです。
そのため、収入が前年度と今年度で大幅に変化するとわかっている場合は、今年度分の収入をベースに養育費を選定するのがいいでしょう。今年度分の年収を養育費を算定する場合は、複数月分の明細から収入を平均して年収を計算するのが重要となります。
また、直近の年収ではなく、複数年分の年収を平均して、収入を計算するのも1つの手段です。例えば、エンジニアや外資系企業など年棒制を採用している会社に務めていると、年度によって収入が大きく変動してしまいます。そのため、過去数年の年収を平均して養育費を算出するのは非常に合理的な手段です。
なお、収入がない相手にも、養育費は請求できるのか?と疑問に思う方もいるでしょう。無職の相手に対する養育費の請求方法は、以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
同じ年収の場合、算定金額は会社員より自営業のほうが高い傾向にある
上述した表から分かる通り、会社員に比べ、自営業の方が養育費は2〜6万円高くなる傾向にあります。
これは会社員と自営業では、「基礎収入の額」が異なるからです。「基礎収入」とは、収入から年金保険料・税金・住居費・医療費・業務上の費用を差し引いた額となります。
会社員の場合は、源泉徴収票の「支払金額」から上記の費用を差し引き、残った金額が基礎収入として算出されるのです。これはおよそ年収の34%から42%ほどとなります。
一方、自営業の場合は、確定申告書の「課税される所得金額」が年収として見做されますが、実はこの金額は既に上記の費用を差し引いた金額になっているのです。そのため、自営業は会社員よりも基礎年収が多く、およそ年収の47%〜52%ほどとなります。
結果、自営業は会社員と年収が同じでも、基礎年収は異なるため「より多く養育費を払う必要がある」と考えられているのです。
みんなはどのくらいもらっている?養育費の最新データ
ここまで、養育費の算出方法について計算してきました。しかし、これらはあくまで目安で、養育費の相場ではありません。
そのため、実際にはどれくらいの養育費が、夫から妻へ支払われているのか気になる方もいるのではないでしょうか?
そこで、最高裁判所が公開している「令和5年司法統計年報(家事編) 」を参考に、夫から妻へ支払われた養育費の支払い状況の表を作成しました。ぜひ、養育費を請求する際の参考にしてください。
順位
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月額
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割合
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1位
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4万円以下
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31%
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2位
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6万円以下
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26%
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3位
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8万円以下
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13%
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4位
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10万円超
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11%
|
5位
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10万円以下
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8%
|
6位
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2万円以下
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7%
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7位
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1万円以下
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2%
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また、一時金として支払われた養育費の内訳は以下の通りとなっています。
順位
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一時金
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割合
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1位
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30万円以下
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42%
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2位
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300万円超
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14%
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3位
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200万円以下
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14%
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4位
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50万円以下
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11%
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5位
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70万円以下
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6%
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6位
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100万円以下
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5%
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7位
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300万円以下
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4%
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なお、離婚時に片方の親が子どもを全員引き取るのではなく、親権を1人ずつ分ける方もいるでしょう。その場合の養育費の算出方法に関しては、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
養育費を決めるにあたって知っておくこと
ここからは、養育費を決める際に、知っておくべきことについて解説していきます。
養育費の取り決めに当たって知っておくべきことは、主に以下の4点です。
- 収入が変動した場合は養育費も変動する
- 親権者の方が収入が多くても養育費はもらえる
- 配偶者が収入をごまかし養育費を低く算出するケースがある
- 病気や怪我で働けず収入がない場合は支払義務がないケースもある
それぞれ詳しく解説していきます。
相手の収入が増えた、あるいは下がった場合は養育費も変動する
養育費の取り決めを行った際に予想し得なかった理由で、相手の収入が増加・減少した場合は、養育費の変更が可能です。
先述したように、養育費は基本的に最高裁判所が公開している、養育費の算定表によって計算されます。多くの方は、算定表に記載された子どもの人数・年齢だけでなく、受け取る側と支払う側の年収を用いて養育費を算出するでしょう。
しかし、病気や怪我などで就労できなくなり、養育費の取り決め時より収入が大幅に減少する場合もあります。逆に、昇進や転職で、収入が大幅に増加することもあるはずです。
こうした場合は、新たな年収を元に、算定表から妥当な養育費を算出することが認められています。しかし、1度取り決めた養育費は、一方が勝手に変更することはできません。当事者間での話し合いが必要になります。
ただ、生活苦からの減額請求はまだしも、増額請求には中々応じてくれない人もいるでしょう。このように、話し合いで決着がつかない場合は、裁判所へ養育費の増額・減額請求の調停申し立てが必要です。
なお、養育費を支払う側が再婚して、新たに子どもができた場合は養育費を減額できる可能性はあります。再婚した場合の養育費の取り扱いに関して詳しく知りたい方は、ぜひ下記の記事をご覧ください。
親権者の収入のほうが多くても養育費はもらえる
昨今では共働き世帯が増えているため、夫側よりも、親権を持った妻の方が収入が多い家庭も珍しくありません。その場合、夫側が親権者の収入の高さを理由に、養育費の支払いを拒否するケースも少なくないようです。
しかし、仮に支払義務者より、親権者の収入の方が多くても、養育費の支払いを拒否することができません。
ただ、権利者の方が収入が多い場合は、権利者と義務者の年収を同額と仮定して養育費を計算するのが一般的とされています。
養育費は子どもに「両親が同居している時と同程度の生活水準を維持させる」ことを目的とした制度です。そのため、権利者の方が収入が多い場合は、養育費の支払いが義務者に大きな負担となってしまう可能性があります。
そこで、権利者の収入を義務者の収入と同額と仮定することで、義務者が支払い可能な額に調整するのです。
配偶者が収入をごまかして養育費を下げようとするケースもあるので要注意
配偶者の中には、自身の収入をごまかして、養育費の金額を下げようとする方もいると覚えておきましょう。
養育費の取り決めは、基本的に当事者同士の話し合いによって行われます。ただ、話し合いでは収入に関する資料の開示請求ができないため、いくらでも収入の偽装は可能です。
例えば、源泉徴収票や給料明細だけを配偶者に提示し、副業や、投資信託による収入が記載された課税証明書は提出しないというケースもあるでしょう。そのため、養育費の支払いに協力的ではない相手には、正確な養育費の請求が難しくなるかもしれません。
また、同居中であれば課税証明書は配偶者でも取得できますが、別居していると委任状が必要になります。どうしても収入に関する資料が手に入らない場合は、離婚訴訟に持ち込み裁判所から文書送付の要求を行ってもらうのも1つの手段です。
病気で働けず収入が無い場合、養育費支払義務がないケースもある
養育費は基本的に無収入であっても、「潜在的に働ける力がある」と判断し、以前の就労状況を元に養育費の算定が行われます。しかし、病気や怪我によって働けなくなった場合は。養育費の支払義務がないと認められるかもしれません。
なぜなら、長期間の復職ができない怪我や病気を患った場合は、「潜在的に働ける力はない」と判断されるからです。例えば、うつ病のような治療によって完全に回復する見込みがない病気を患った場合は、支払いが免除されることがあります。
ただし、骨折のような治療すれば完治すると見做される病気・怪我であれば、養育費の支払いが求められる可能性が高いです。
なお、生活が苦しくなり、生活保護の受給を検討する世帯もあるはずです。その際、養育費を受け取りながら、生活保護を受けられるか気になるでしょう。下記の記事では、養育費をもらいながら生活保護を受ける方法について詳しく解説しています。気になる方はぜひ参考にしてください。
離婚時に養育費の金額を決める流れ
最後に、離婚時に養育費の金額を決める際の、基本的な流れについて解説します。なお、養育費の金額の設定方法は、状況によって変化すると覚えておいてください。
離婚時に養育費を決める流れとしては、主に以下の通りです。
- STEP1.夫婦の話し合いで決める
- STEP2.話し合いがまとまらない時は調停で決める
- STEP3.調停で決まらないときは裁判で決める
それぞれ順を追って解説していきます。
STEP1.夫婦の話し合いで決める
まず、夫婦の話し合いによって養育費を決定します。
ご存知かもしれませんが、養育費の金額は離婚と同じく、当事者間の話し合いだけで決定可能です。決着が付かない場合は調停・裁判にもつれ込むかもしれませんが、必ずしも裁判所で決めなければいけないというルールはありません。
話し合いで養育費を決める際は、裁判所が公開している「養育費算定表」が目安にするのがおすすめです。算定表は主に、子どもの年齢・人数、権利者と義務者の年収を元に計算されます。ただ、算出される数値はあくまで目安で、絶対のものではありません。各自の家庭事情なども考慮し、適切な養育費を算出するのが望ましいです。
また、話し合いでは、養育費の金額だけでなく、その他の条件に関しても細かく決めるのが大切です。
金額以外で養育費の支払いに関して、取り決めるべき条件は主に以下の3点となります。
- 支払い期間:⚪︎ヶ月先まで何歳になるまでなど具体的に決める
- 支払い方法:一括支払いか毎月決まった日に支払うか
- 臨時の費用:学費や入院費など臨時の費用が発生した場合の対処法
そして、話し合った内容は、必ず書面に残しましょう。口約束だけでは、後に「言った言わない」の水掛け論に発展するかもしれません。
養育費の支払いに関する書面を作成する際は、公正証書として残すのがおすすめです。公正証書として残す方法や、必要書類に関しては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
STEP2.話し合いがまとまらない時は調停で決める
話し合いで決着しない場合は、裁判所に調停の申し立てを行いましょう。
調停では、第三者の調停委員を交えながら、非公開の場で問題解決へ向け話し合いが行われます。調停は裁判と異なり、結論を出すのは当事者同士で第三者ではありません。調停を行う調停委員は、あくまで問題解決へ向けサポートを行う存在として立ち会います。
中には、当事者同士だけの話し合いでは感情的になってしまい、話し合いが上手くいかない方もいるでしょう。しかし、第三者の調停委員が間に入ってくれれば、冷静に話し合いが進められるかもしれません。
ただし、調停委員が「どうしても話し合いで解決しない」と判断した場合は、調停不成立となり審判へと自動的に移行します。審判では、裁判官が話し合いの内容を元に結論を出すため、望んだ額の養育費が請求できるとは限らないと覚えておきましょう。
なお、養育費調停を申し立てるには、申立書を作成し、必要書類と共に家庭裁判所に提出しなければいけません。調停のために必要な書類は以下の通りです。
- 申立書およびそのコピー
- 収入印紙(子ども1人につき1,200円)
- 郵便切手(家庭裁判所によって値段が異なる)
- 子どもの戸籍謄本一通
- 子どもの両親それぞれの収入が分かる書類のコピー各1通
- 事情説明書
- 進行に関する照会回答書
- 連絡先等申告書
ちなみに、申し立てを行えるのは、原則対立する相手方が住んでいる地域の家庭裁判所のみとなっているので注意してください。
なお、調停に際して、弁護士に養育費の相場について相談したいと考える方もいるでしょう。下記の記事では、養育費問題について無料で相談できる窓口について紹介しています。
STEP3.調停で決まらないときは裁判で決める
養育費調停で問題が解決できなかった場合は、自動的に審判へと移行し、裁判官が支払う養育費の額を決定します。なお、離婚調停・裁判でも、養育費の取り決めについて請求することが可能です。
そして、審判または裁判で決定した養育費の支払いには、法的に強い強制力が生じます。そのため、裁判を経て取り決めた養育費の支払いがあるにも関わらず、支払いが行われない場合は、義務者に対して支払いの勧告または強制執行を利用可能です。
ちなみに、債権の差し押さえは、原則給料の4分の1に相当する金額分しか行えません。しかし、養育費の差し押さえに関しては、特例として給料の2分の1まで差し押さえ可能です。
なお、未払いの養育費には、支払いを請求できる時効が存在しています。養育費の時効に関しては、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。
既に離婚している場合でも養育請求調停ができる
養育請求調停は既に離婚していた場合でも申し立て可能です。
養育費の支払いは両親に課せられた義務であるため、離婚後であっても双方の経済力に応じて、子どもの養育費を分担する必要があります。
しかし、既に離婚してしまっている場合は、話し合いで養育費について決定するのは難しいでしょう。そのため、子の監護をしている側の親から、他方の親に対して調停または審判の申し立てを行うことになります。
ただ、調停委員を交えても、離婚済みの夫婦が養育費について、冷静に話し合うのは難しいかもしれません。仮に、そのまま話し合いで決着がつかなかった場合は。自動的に裁判官による審判手続へ移行します。
審判では、各々の経済状況、収入、家庭事情など一切を考慮して審判を下してくれるでしょう。ただ、あくまで裁判官が事情を考慮し下す判決なので、必ずしも自身が望んだ額を請求できるわけではないと覚えておいてください。
調停では、まず権利者が義務者に対して、申し立てを行います。そして、申し立てが受理されたら、双方に調停期日(基本的に平日)が通達されるのです。調停時間はおよそ2時間ほどで、非公開の調停室で調停委員を交え、当事者同士の話し合いが行われます。
そして、調停内で双方合意ができれば調停成立となり、「調停調書」に同意した内容が記載され終了です。調停調書には裁判の判決と同じ効力があるため、養育費が支払われなければ強制執行が行えます。
なお、話し合いがどうしてもまとまらないと調停委員が判断した場合は、調停不成立となり自動的に審判手続へと移行すると覚えておきましょう。
調停や裁判で有利な判決を得るには、客観的で正確な証拠の提示と書類提出が必要となります。しかし、法律知識を持たない一般人に、有効な書類作成は難しいかもしれません。そのため、調停に合わせて弁護士に依頼するのも1つの手段です。
下記の記事では、養育費問題に強い弁護士の選び方について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
養育費の算出には、子どもの年齢・人数の他に、権利者と義務者の年収が重要な判断材料になります。そのため、正確な養育費の金額設定には、相手の収入を把握しなければいけません。そのため、同居中の方は課税証明書の発行、別居中の方は調停・審判手続きを通して、調査嘱託を申し立てましょう。
ただ、相手方が素直に、自身の収入に関する資料を提示してくれるとは限りません。例えば、相手が養育費の支払いに協力的ではない場合、収入を意図的に低く報告する可能性もあります。
その場合は、調停・裁判などを通して、養育費を請求することになるでしょう。しかし、調停や裁判で有効な書類を作成するには、法的な知識が必要になります。
そのため、養育費問題で困ってる方は、1度弁護士に相談するのがおすすめです。仮に依頼をしなくても、無料相談で養育費問題について相談するだけで、解決の糸口が見つかるかもしれません。
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