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離婚調停での養育費の決め方|相場や話し合いを有利に進める方法を解説

離婚調停での養育費の決め方|相場や話し合いを有利に進める方法を解説

離婚調停とは、家庭裁判所の裁判官や調停委員を介して、離婚について話し合う手続きです。

離婚調停では子どもの養育費についても話し合われ、養育費は、裁判所が公表する「養育費算定表」をもとに決められます。。

養育費算定表は、裁判所が養育費の目安として示す金額で、子どもの年齢や数、夫婦それぞれの収入を基準に定められています。

もっとも、養育算定表の金額が絶対というわけではありません。進路や子どもの健康状態などの事情を考慮して決められることもあります。

例えば、養育費算定表は、子どもが公立学校に通っていることが前提となっていますが、私立学校に通っている場合などには、養育費算定表より高い金額となることがあります。

そのため、離婚調停では、次の証拠書類をしっかり準備することが大切です。

  • 現在の収入
  • 現在の生活状況
  • 希望する養育費の金額とその根拠
  • 希望する養育費の支払い期間・支払い方法
  • 特別費用(私立学校に進学するための費用など)の取扱い 

また、離婚調停で養育費の話し合いを有利に進めるには、養育費の根拠となる証拠や陳述書をしっかりと準備し、法的な観点も踏まえ主張することが大切です。

そのため、離婚問題や養育費に強い弁護士に相談することがおすすめです。

弁護士に依頼すれば、調停に同席してもらうことができ、証拠や陳述書をもとに、法律的な面を含めて説得力のある主張ができるでしょう。

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離婚調停とは家庭裁判所を通して離婚問題の解決を目指す手続き

離婚調停は、当事者間で話し合いがまとまらない、あるいは話し合いに応じてもらえな場合に、家庭裁判所を利用して話し合う手続きです。

離婚調停は、裁判官1名と調停委員(通常は男女1名ずつ)で構成される調停委員会を介して、離婚に関する問題を話し合います。

調停委員が夫婦の間に立って話し合いが進められ、基本的に夫婦が顔を合わせることはありません。夫婦が個別に調停委員と話す形で進められます。

話し合いの結果、合意に至らなかった場合は、調停が不成立となり裁判へ進むことになります。

離婚調停では、離婚そのものだけでなく、養育費の金額についても話し合われ、合意した養育費は、離婚が成立した後に支払われることになります。

離婚調停にかかる期間

離婚調停は次のような流れで進められ、早ければ1カ月程度、長ければ2年以上かかるケースもあります。一般的には、半年から1年程度で終了します。

  1. 家庭裁判所に申立書を提出
  2. 裁判所から呼出状が届く
  3. 第1回の調停期日が開かれる
  4. 調停を何度か繰り返す
  5. 調停終了

調停期日には、当事者双方が家庭裁判所へ出向き、一人ずつ調停室に呼び出され、調停委員と話し合います。

1回の期日はおよそ2時間程度で、1カ月に1回の頻度で開かれることが一般的です。

調停の回数は1~5回程度が多く、多くなるほど離婚調停に要する期間は長くなります。

離婚調停と養育費調停の違い

離婚調停では養育費についても話し合うことができますが、離婚調停とは別に養育費調停という手続きもあります。

養育費調停とは、家庭裁判所で裁判官や調停委員を介して養育費に関する問題の解決を図る手続きです。

離婚した際に、養育費について話し合いがまとまらなかった場合や話し合い自体に応じてもらえなかった場合などに利用されます。

離婚調停では、離婚前に離婚問題の一つとして養育費に関する合意形成を進めるのに対して、養育費調停は、離婚後に養育費の問題を解決する手続きである点で違いがあります。

以下の表は、養育費の話し合いについて、離婚調停と養育費調停の違いをまとめたものです。

離婚調停と養育費調停の違い
項目 離婚調停 養育費調停
利用する場面 離婚を求めるとともに養育費を取り決めたい場合 ・離婚後に養育費の取り決めがない場合
・裁判所の手続きや公正証書で養育費の取り決めがしたい場合
調停不成立の場合 訴訟(離婚訴訟)提起が必要 自動的に養育費の審判手続きに移行

離婚調停で養育費について話し合いがまとまらなければ、審判手続きの申し立てが必要である一方、養育費調停では、自動的に養育費審判の手続きに移行します。

なお、養育費が取り決められた後に、収入の変動や子どもの進学などの状況の変化があった場合には,養育費の額の変更を求める調停を申し立てることが可能です。

参照:養育費に関する手続き|裁判所

離婚調停で養育費を決めるときは「養育費算定表」を参考にされることが多い

養育費は、夫婦が合意すれば、金額や支払い方法を自由に決められますが、離婚調停で養育費を決める場合は、裁判所が公表している「養育費算定表」を参考にします。

養育費算定表は、子どもの人数と年齢によって9枚作成されており、裁判所のホームページで確認が可能です。

養育費の算定額は、「養育費を支払う側(義務者)の年収」と「養育費を受け取る側(権利者)の年収」で決まります。また、自営か給与収入かで養育費算定額に違いが設けられています。

ここでは、裁判所の養育費算定表をもとに、次の3つのケースで養育費を算定してみます。

  • 0~14歳の子どもが1人の場合
  • 0~14歳の子どもが2人の場合
  • 0~14歳の子どもが3人の場合

0~14歳の子どもが1人の場合

次の表は、0歳~14歳までの子どもが1人の場合の養育費をまとめたものです。

横軸が権利者(養育費を受け取る側)の収入、縦軸が義務者(養育費を支払う側)の収入となっています。

例えば、養育費を受け取る権利者の収入が50万円・75万円・100万円(いずれもパート収入の前提)の場合、養育費は次のようになります。※義務者の収入は給与収入の前提

0~14歳の子どもが1人の場合の養育費
義務者の収入 パート収入50万円 パート収入75万円 パート収入100万円
300万円 月2~4万円 月2~4万円 月2~4万円
400万円 月4~6万円 月4~6万円 月4~6万円
500万円 月4~6万円 月4~6万円 月4~6万円
600万円 月6~8万円 月6~8万円 月6~8万円
700万円 月8~10万円 月6~8万円 月6~8万円
800万円 月8~10万円 月8~10万円 月8~10万円
900万円 月10~12万円 月10~12万円 月10~12万円
1000万円 月12~14万円 月10~12万円 月10~12万円
1500万円 月16~18万円 月16~18万円 月16~18万円
2000万円 月22~24万円 月22~24万円 月22~24万円

なお、収入をみる場合、自営業の場合は「課税対象の所得額」、自営業以外の給与収入やパート収入は「税金や社会保険料が引かれる前の年収(額面年収)」をみます。

0~14歳の子どもが2人の場合

同様に、0歳~14歳までの子どもが2人の場合の養育費算定表です。

養育費を受け取る権利者の収入が50万円・75万円・100万円(パート収入)の場合の養育費は次の表のとおりです。

0~14歳の子どもが2人の場合の養育費
義務者の収入 パート収入50万円 パート収入75万円 パート収入100万円
300万円 月4~6万円 月4~6万円 月4~6万円
400万円 月6~8万円 月6~8万円 月4~6万円
500万円 月8~10万円 月8~10万円 月6~8万円
600万円 月10~12万円 月8~10万円 月8~10万円
700万円 月10~12万円 月10~12万円 月10~12万円
800万円 月12~14万円 月12~14万円 月12~14万円
900万円 月14~16万円 月14~16万円 月14~16万円
1000万円 月16~18万円 月16~18万円 月16~18万円
1500万円 月24~26万円 月24~26万円 月24~26万円
2000万円 月32~34万円 月32~34万円 月32~34万円

0~14歳の子どもが3人の場合

0歳~14歳までの子どもが3人いる場合の養育費算定表です。

養育費を受け取る権利者の収入が50万円・75万円・100万円(パート収入)の場合、養育費は次のようになります。

0~14歳の子どもが3人の場合の養育費
義務者の収入 パート収入50万円 パート収入75万円 パート収入100万円
300万円 月4~6万円 月4~6万円 月4~6万円
400万円 月6~8万円 月6~8万円 月6~8万円
500万円 月10~12万円 月8~10万円 月8~10万円
600万円 月12~14万円 月10~12万円 月10~12万円
700万円 月14~16万円 月12~14万円 月12~14万円
800万円 月16~18万円 月14~16万円 月14~16万円
900万円 月18~20万円 月16~18万円 月16~18万円
1000万円 月20~22万円 月18~20万円 月18~20万円
1500万円 月28~30万円 月28~30万円 月28~30万円
2000万円 月38~40万円 月38~40万円 月38~40万円

出典:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について|裁判所

離婚調停で養育費を決める際に聞かれること

離婚調停では、養育費の支払いの有無や金額、支払い期間、支配方法、特別費用の取扱いなどを取り決めます。

特別費用とは、養育費には該当しない費用で、子どものために生じる一時的な大きな出費です。大学や専門学校、私立学校へ進学するための入学金や学費、予期せぬ病気やケガの治療費、塾や習い事などの費用が特別費用に該当します。

養育費の協議のなかで聞かれるのは次のような内容です。

  • 現在の収入
  • 現在の生活状況
  • 希望する養育費の金額とその根拠
  • 希望する養育費の支払い期間・支払い方法
  • 特別費用の取扱い など

前もって養育費に関する希望や理由について整理したうえで、調停にのぞむとよいでしょう。

離婚調停で養育費の話し合いを有利に進めるためのポイント

では、離婚調停で養育費の話し合いを有利に進めるにはどのような点に注意すればよいでしょうか。ここでは3つのポイントを解説します。

  • 証拠を用意しておく
  • 弁護士に相談する
  • 調停委員を味方につける

証拠を用意しておく

1つめのポイントは、養育費の請求金額が妥当であることを示す証拠を用意することです。

証拠資料として、自分や相手の源泉徴収票や給与明細、確定申告書、課税証明書の写しなどがあります。

また、標準的な子どもの医療費は養育費算定表にも織り込み済みですが、これを超える医療費がかかっている場合、養育費に加算できる場合があります。

この場合、医療費の領収書(直近3カ月~1年程度)や高額医療費の支払い通知書、歯科矯正費用、メガネ代などの領収書も証拠として準備しましょう。

そのほかにも、自分の気持ちや考えを伝える「陳述書」を作成し、提出することも有効な方法です。

希望の養育費の額や支払い期間、将来予測される養育費の増加やその理由などを書面でまとめておくことで、裁判官や調停委員にも納得してもらいやすいでしょう。

弁護士に相談する

2つめのポイントは、養育費に強い弁護士に相談することです。

養育費の請求にあたって弁護士に依頼するメリットは次の点です。

  • 自身の主張を裏付ける証拠など、しっかりと事前準備ができる
  • 調停に一緒に出席してサポートを受けられる
  • 法律的な観点から請求額の妥当性を主張できる
  • 不安や疑問があった場合、いつでも弁護士のアドバイスを受けられる

調停を有利に進めるうえでは、証拠集めや陳述書の作成など事前準備をしっかりと行ったうえで、法的な観点から説得力のある主張をすることがポイントとなります。

弁護士に相談することで、養育費算定表なども踏まえ、有利に話し合いを進めやすいでしょう。

調停委員を味方につける

3つめのポイントは、調停委員を味方につけることです。

養育費の話し合いは調停委員を介して進められます。

そのため、進行役となる調停委員に自分の主張に共感してもらえるように働きかけることが大切です。

調停委員に自分の主張や考えを理解、納得してもらえれば、調停委員と相手との話し合いの内容や進め方が変わる可能性があります。

具体的には、自分の置かれている今の状況や収入、これからの見通しなどを、養育費算定表の基準を踏まえながら主張していくことが必要です。

なお、調停委員には、原則として40歳以上70歳未満で下記の要件に該当する人が任命されます。

  • 弁護士資格を有する人
  • 司法書士や税理士、医師などの専門的知識や経験を有する人
  • 社会生活上、豊富な知識経験を有する人(大学職員や裁判所職員出身者など)

必ずしも法律に精通している人が調停委員に選ばれるというわけではなく、法律の知識がない一般人が選ばれることもあります。

自分の主張がうまく伝わらない、あるいは共感してもらえない場合でも、感情的にならず冷静かつ常識的な対応が求められます。

離婚調停で決定した養育費が支払われない場合の対処法

最後に、離婚調停で合意した養育費が支払われない場合の対処法について解説します。

  • 相手に支払ってもらう様に伝える
  • 「履行勧告」または「履行命令」を行う
  • 「強制執行」を行う

相手に支払ってもらう様に伝える

離婚調停で養育費に支払いを含めて合意した内容について、調停調書が作成されます。

調停調書は、裁判所において調停が成立した場合に、裁判所書記官が作成する法的な書面です。そのため、調停調書の内容は、当事者双方に対して法的な拘束力を持ちます。

まずは、調停調書の内容に基づいて、支払ってもらうよう相手に伝えましょう。

「履行勧告」または「履行命令」を行う

相手に養育費の支払いを求めても応じてもらえない場合、「履行勧告」または「履行命令」を行うことができます。

履行勧告とは、調停や審判などで取り決めた合意内容を守らない人に対して、家庭裁判所が履行状況を調査し、合意内容通りに支払うよう勧告・督促してもらう手続きです(家事事件手続法第289条)

相手方は裁判所から直接督促を受けることになるため、支払いに向けて一定の効果が期待できます。

履行勧告の手続きには費用はかかりませんが、相手が勧告に応じない場合でも支払いを強制することはできません。

また、履行勧告によって支払われない場合、履行命令という方法があります。

履行命令とは、裁判所が相当と認めた場合に、一定の時期までに養育費を支払うよう命令を発する手続きです(家事事件手続法第290条)

履行命令が発せられて、正当な理由なく養育費を支払わない場合、10万円以下の過料に処せられるため、一定の強制力があります。

履行勧告・履行命令ともに費用はかからず、家庭裁判所への口頭での申し立てで受け付けてもらえるため、手続き的な負担もありません。

相手が自主的に支払う意思がある場合に、有効な手続きといえます。

「強制執行」を行う

履行勧告や履行命令でも養育費を支払ってもらえない場合、強制執行を行うことができます。

家事事件手続法第268条第1項において、調停調書は「確定判決と同一の効力を有する」と定められており、調停調書を債務名義として強制執行も可能です(民事執行法第22条)。

強制執行手続きでは、相手の給料や預貯金を強制的に差押え、そこから未払の養育費を受け取ることができます。

ただし、給与を差し押さえる場合、相手の生活を考慮して、税金や社会保険料などを控除した残額の2分の1までを差し押さえることができます。

一度、手続きを行えば、継続的に差し押さえることが可能です。

また、預貯金の場合、未払い分の養育費の限りで差押えることができますが、口座に預貯金がなければ空振りに終わる可能性もあります。

まとめ

離婚を考えている場合、子どもの養育費については、離婚調停のなかで話し合われます。

調停では、裁判所が公表する「養育費算定表」を参考にしながら話し合われますが、実際の生活費や教育費、子どもの健康状態などによってより高額な養育費が請求できる場合もあります。

希望する養育費を認めてもらうには、主張の裏付けとなる証拠を準備し、法的な観点から主張することが重要です。

そのため、離婚に伴う養育費を請求する場合、離婚問題に精通した弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士に依頼することで、妥当な養育費の請求ができるだけでなく、合意した養育費が支払われない場合の対処法についても適切なアドバイスを受けられるでしょう。

よくある質問

養育費を決める調停に相手が来なかった場合はどうなる?

調停は、あくまでも当事者間の話し合いの場です。

離婚調停に相手が来ない場合には、離婚調停は不成立または取り下げることになります。

また、相手が1度調停に来たもののその後来なくなった場合、通常、2~3回連続で来なければ、裁判所から調停の不成立または取り下げについて意見を聞かれます。

離婚調停が不成立または取り下げとなった場合、離婚訴訟を提起するほかありません。

離婚訴訟の場合、相手が期日に出頭しない場合でも、審判手続きは進められます。

相手が出席せず、証拠提出や反論がなければ、こちらの主張が通りやすくなるため、養育費の支払いを含めて離婚が認められる可能性が高くなります。

調停で「養育費の支払いの必要がなし」と判断されることはある?

離婚に伴って親権を失ったとしても、親が子どもを扶養する義務がなくなるわけではありません。

そのため養育費の支払いの必要がないと判断されることは、ほとんどないといえるでしょう。

例外的なケースとして、病気で働くことができず養育費の支払い能力がないと判断されれば、養育費の支払いがないと判断される可能性があります。

もっとも、養育費を受け取る側が再婚し、子どもを再婚相手の養子とした場合、一次的に養育費を支払う義務は再婚相手である養親です。そのため、養育費の支払い免除される可能性があります。

弁護士が居なくても離婚調停は可能?

弁護士がいなくても離婚調停をすることは可能です。

ただし、弁護士に依頼するほうが、養育費だけでなく財産分与や慰謝料請求などの主張も含めて、希望する請求が認められやすいでしょう。

弁護士に依頼することで、調停委員に納得してもらえる証拠や陳述書を準備したうえで、法的な解釈も含めて説得力がある主張をしてもらえます。

また、調停の成立日などを除いて、代理人である弁護士だけの出席が認められることもあるため、平日の日中に開かれる調停に出席する負担を軽減できる場合もあります。

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更新日 : 2025年03月07日
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