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未払いになっている養育費の請求方法は?請求できないケースについても解説

未払いになっている養育費の請求方法は?請求できないケースについても解説

自立していない子供がいる夫婦が離婚した場合、子供と離れて暮らす親は子に対して養育費を支払う法的な義務が生じます。しかし、養育費を取り決めて離婚しても、相手が約束通り養育費を支払ってくれず、子供を育てる側が経済的に苦しい状況に陥ってしまうケースもあります。

子どもを引き取った側の親としては、子どもに安定して生活を送らせるためにも、未払い分の養育費を全額請求したいと考えるでしょう。結論からいうと、相手に対して養育費を請求する意思表示をしていた場合、養育費の未払い分の請求は可能です。

何度請求しても支払いがない場合は、調停や審判の手続きを経て強制執行で相手の財産を差し押さえ、未払い分の養育費を回収できます。また、給与差し押さえをした場合、将来分の養育費まで継続的に回収できるため、養育費未払いの再発防止にもつながるでしょう。

ただし、養育費について請求する意思を見せなかった場合、相手には養育費を支払う義務が発生しません。その場合、過去にさかのぼって請求はできないため、未払い分の養育費が回収できないのが一般的です。

また、養育費には5~10年の時効があり、時効が過ぎると請求できなくなります。養育費は子供が健やかに成長するための大切な費用なので、離婚後に養育費が未払いになっている場合は適切に対処し、速やかに回収することが大切です。

本記事では、養育費が未払いになった場合の回収方法や時効について解説していきます。養育費に関する協議書を強制執行認諾文言付きの公正証書で作成すれば、調停を起こさなくてもスムーズに強制執行できますが、強制執行をするにも複雑な手続きが必要です。

また、公正証書を作成していなかった場合は調停で調停員を介した話し合いが必要なため、時間も手間も精神的な負担もかかります。弁護士に依頼すれば、それらの必要な手続きをすべて代理してくれるほか、法律の専門知識でこちらが有利な条件になるように話し合いを進めてくれます。

そのため、養育費の未払い問題で悩んでいる場合は、一度弁護士に相談してみるのがおすすめです。

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養育費が未払いでも諦めないですぐに請求しましょう

養育費が未払いになっている場合、相手に請求すれば養育費をもらえる可能性があります。離婚しても親子であることに変わりありません。

子供と離れて暮らす親にも養育費を支払う法的な義務が生じるため、子供と同居して養育している親は、子供と離れて暮らす親から養育費をもらえる権利があります。

養育費の相場について知りたい方は、下記の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。

離婚をしても親には子供に対して生活保持義務がある

親に養育費の支払い義務が生じるのは、子供に対する生活保持義務を負っているからです。生活保持義務とは、被扶養者の生活(子供)を扶養義務者(親)と同程度の水準に維持しなければならないという扶養義務の1つを指します。

離婚しても子供に対する生活保持義務は消滅しないため、離婚後も子供が親と同程度の水準の生活を送れるよう、子供と離れて暮らす親は養育費を支払わなければなりません。子供と離れて暮らす親に経済的な余裕がない場合は、自分の生活レベルを下げてでも養育費を支払う必要があります。

親が子どもに対して負う生活保持義務は、3親等以内の親族が負う生活扶助義務よりも強い意味合いを持っています。生活扶助義務者は自分の生活を犠牲にしてまで被扶養者を援助する必要はありませんが、生活保持義務者は自分の生活を犠牲にしてでも被扶養者を援助しなければなりません。

そのため、相手が経済的な理由で養育費の支払いを拒んだ場合でも、養育費の支払いを求めることが可能です。

養育費の支払い義務は相手側に請求したときから発生する

離婚後に子供と離れて暮らす親には養育費を支払う法的な義務があります。しかし、実務上養育費の支払い義務は、権利者が義務者に対して請求の意思を通知した時点から発生すると考えられています。

離婚しただけでは相手に養育費の支払い義務が生じないため、支払われなかったとしても違反にはなりません。また、養育費はさかのぼっての請求はできないため、養育費の請求をせずに離婚から数年が経ってしまった場合は未払い分の請求はできないケースが多いでしょう。

したがって、養育費をもらうためには、まず相手に養育費を請求する意思を伝える必要があります。請求の意思表示は口頭で伝えた場合でも法的に有効です。

しかし、後で「言った」「言わない」の水掛け論に発展するリスクがあるため、養育費を請求した事実が証拠として残る内容証明郵便で通知するのが一般的です。きちんと意思表示し、双方納得の上で取り決めたのにもかかわらず支払われない場合は義務違反となります。そのため、強制執行で相手の財産を差し押さえることが可能です。

養育費の未払い分の請求方法

相手が養育費を支払ってくれない場合は、以下の方法で請求しましょう。

  • 相手に直接連絡して請求する
  • 養育費請求調停を申し立てる
  • 履行勧告・履行命令制度を利用する
  • 強制執行を申し立てる

ここからは、それぞれの請求方法について1つずつ詳しく解説していきます。

相手に直接連絡して請求する

養育費の未払い分が発生したら、まず相手に直接連絡して養育費を請求しましょう。請求方法に法的な決まりはないため、メールやLINE、電話、FAX、手紙などどのような手段でも構いません。

相手に連絡しても無視される場合は、内容証明郵便で督促しましょう。内容証明郵便で送付すれば、下記の情報が郵便局で記録されるため、相手に養育費を請求した事実を証明できる有力な証拠になります。

  • 文書の内容
  • 送付日
  • 受取日
  • 差出人の氏名・住所
  • 受取人の氏名・住所

また、普通郵便よりも相手に心理的なプレッシャーを与えやすいため、養育費の支払いに応じてもらえる可能性が高まります。

内容 メールやLINE、電話、FAX、内容証明郵便などの手段で直接相手に養育費を請求する
メリット ・手間や労力をかけずに請求できる
・内容証明郵便で送付すれば、養育費を請求した証拠が残り、相手に心理的なプレッシャーをかけられる
デメリット 相手に連絡を無視されたり、支払いに応じてもらえなかったりする可能性が高い

養育費請求調停を申し立てる

養育費について取り決めしていても、強制執行認諾文言付き公正証書など公的な文書を作成していない場合は支払われないケースも多いです。強制執行認諾文言付き公正証書とは、公正役場で作成する書類のことで、公証人立会いのもと作成するため強い証拠力を持ちます。

強制執行認諾文言が記載されている場合、支払われなければ調停を通さずに相手の財産を差し押さえられます。そのため、養育費の取り決め内容を強制執行認諾文言付き公正証書に残している場合はきちんと支払ってもらえる可能性が高いです。書類を作成しておらず、相手に直接養育費を請求しても支払いに応じてくれなかったり、話し合いがまとまらなかったりした場合は、家庭裁判所で養育費請求調停を申し立てましょう。

養育費請求調停では、調停委員や裁判官で構成された調停委員会が仲介役となり、養育費の金額や支払い方法などについて話し合いを進めていきます。当事者双方が合意すれば調停成立となり、合意内容が記載された調停調書が作成されます。

調停でも話し合いがまとまらなかった場合や相手が欠席し続けた場合は調停不成立となり、自動的に審判手続きに移行します。審判では、裁判官が当事者双方の言い分や提出された資料を検討した上で養育費について決定を下します。

内容 調停委員や裁判官で構成された調停委員会が仲介役となり、養育費の金額や支払い方法などについて話し合いを進める。
メリット ・双方が納得して調停が成立すれば、法的効力がある調停調書が作成される。
・万が一未払いが生じても、強制執行や履行勧告などの手続きでスムーズに請求できる
デメリット 話し合いベースで進めるため、意見がまとまらず調停不成立となった場合は審判に移り最終的な決定まで長引く

履行勧告・履行命令制度を利用する

調停や審判で養育費を取り決めたにもかかわらず、相手が養育費を支払ってくれない場合は、家庭裁判所の履行勧告履行命令制度を利用しましょう。

履行勧告とは、調停や審判などで取り決めた養育費を支払わない相手に対し、家庭裁判所から支払いを勧告してもらう手続きのことです。対して履行命令は、履行勧告をしても養育費を支払わない相手に対し、家庭裁判所から養育費を一定期間内に支払うように命じてもらう手続きを指します。

どちらも家庭裁判所が支払いを促す手続きなので、支払いを強制する法的効力はありません。しかし、履行命令に従わなかった場合は10万円以下の過料に処せられる可能性があるため、養育費を支払わない相手に対して心理的に強いプレッシャーを与えられます。

履行勧告 履行命令
内容 調停や審判などで取り決めた養育費を支払わない相手に対し、家庭裁判所から支払いを勧告してもらう手続き 履行勧告をしても養育費を支払わない相手に対し、家庭裁判所から養育費を一定期間内に支払うように命じてもらう手続き
メリット 裁判所から連絡がくることで、心理的に強いプレッシャーを与えられる 支払いを強制する法的効力がない
デメリット 従わなかった場合は10万円以下の過料に処せられる可能性があるというプレッシャーを与えられる 支払いを強制する法的効力がない

強制執行を申し立てる

前述の通り、養育費の支払いについて強制執行認諾文言付き公正証書を作成している場合や、調停や審判で養育費の取り決めをしている場合、養育費が約束通り支払われなければ裁判所で強制執行を申し立てられます。

強制執行を申し立てれば、下記のような財産を差し押さえ、養育費の未払い分を強制的に回収できます。

  • 給与や預貯金
  • 有価証券
  • 不動産

一度給料の差し押えができれば、相手が会社を辞めない限り、今後の養育費全てについても差し押えが可能です。ただし、強制執行を申し立てるには、差し押さえる財産の詳細や相手の現住所を自力で調べるか、弁護士に依頼して調べてもらわなければなりません。

また、相手に差し押さえられるだけの財産がない場合や働いていない場合は、強制執行を申し立てても回収できない可能性があります。なお、強制執行の対象となるのは債務者本人の財産のみなので、債務者の親や兄弟の財産を差し押さえることはできません。

今後の養育費についても、相手が転職したり退職したりした場合は、転職先を調べて再度強制執行の手続きをとらなければなりません。しかし、給与が差し押さえられると勤務先にも知られてしまうため、一度差し押さえられた義務者からすると同じ目にあいたくないと考えている可能性が高いです。

そのため、差し押さえの手続きまで取らなくとも、任意の交渉により支払いに合意してもらえるケースが多いでしょう。

内容 相手の財産を強制的に差し押さえて未払いの養育費を回収する
メリット ・未払い養育費を強制的に回収できる
・給与を差し押さえれば、相手が会社を辞めない限り、一度の手続きで将来分の養育費まで差し押さえられる
デメリット ・手続きが複雑で手間がかかる
・相手の住所や差し押さえたい財産の詳細を把握する必要がある
・強制執行しても相手に財産がなければ回収できない

養育費を差し押さえ(強制執行)して回収する方法について詳しく知りたい方は、下記の記事で詳しく証書しているので参考にしてみてください。

養育費の未払い請求には時効がある

養育費の未払い分を請求する場合は時効に注意しなければなりません。時効が成立した未払い分の養育費は請求できなくなるため、時効の成立が迫っている場合は相手に支払い義務があることを認めさせたり、裁判上の手続きを行ったりして時効の成立を阻止する必要があります。

養育費の未払い分の時効は、話し合いで取り決めた場合と裁判所の手続きで取り決めた場合でそれぞれ異なります。

  • 話し合いで取り決めた場合は支払予定日から5年
  • 裁判所の手続きで取り決めた場合は支払予定日から10年

なお、養育費の時効は養育費の支払い義務が発生していなければ進行しないため、養育費についての取り決めがない場合は時効がありません。

養育費の時効について詳しく知りたい方は、下記の記事でも詳しく紹介しているので参考にしてみてください

話し合いで取り決めた場合は支払予定日から5年

夫婦の話し合いで養育費を取り決めた場合は、原則として支払予定日から5年で時効を迎えます。その根拠となる規定は、民法166条1項で定められています。


第166条【債権等の消滅時効】
①債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
引用元 法令検索

養育費をもらう権利は毎月発生するため、「債権者が権利を行使することができることを知った時」と「権利を行使することができる時」のタイミングは同じになります。この場合は時効が短い方が適用されるため、養育費をもらう権利の時効は5年です。

5年分は遡って養育費を請求できますが、未払いが発生してからすでに5年経過した養育費は時効が成立しているため、原則として請求は認められません。

<具体例>
・未払いから2年経過した場合:2年分すべて遡って請求できる
・未払いから6年経過した場合:5年分は遡って請求できるが、1年分は時効で請求できない
・未払いから8年経過した場合:5年分は遡って請求できるが、3年分は時効で請求できない

なお、公正証書で取り決めた場合も当事者同士で話し合い決めたことに変わりません。そのため、時効は5年が適用されます。

裁判所の手続きで取り決めた場合は支払予定日から10年

裁判所の手続きを利用して養育費を取り決めた場合は、支払予定日から10年で時効を迎えます。その根拠となる規定は民法169条1項で定められています。


第169条【判決で確定した権利の消滅時効】
確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。
引用元 法令検索

話し合いで取り決めた養育費の時効は5年ですが、調停・審判・裁判で養育費を取り決めた場合は10年に延長されます。調停・審判・裁判で権利が確定すると時効が更新されるため、それまで進行していた時効のカウントはリセットされ、ゼロからカウントし直すことになります。

ただし、10年に延長されるのは過去の未払い分のみです。調停・審判・裁判後に未払いが発生した養育費については、話し合いで取り決めた場合と同様に5年の時効が適用されます。

養育費の取り決めをしていない場合は時効がない

話し合いや裁判上の手続きで養育費の取り決めをしていない場合は、そもそも養育費の請求権が発生していないため、時効は存在しません。そのため、養育費を取り決めずに離婚した場合は、離婚してから数年以上経過した後でも養育費を請求することが可能です。

ただし、前述の通り養育費の支払い義務は、権利者が請求の意思を通知した時点から発生します。そのため、離婚してから相手に請求の意思を伝えるまでの間に発生した養育費の支払いを受けることは困難です。

相手が支払いに応じてくれれば、請求以前の養育費も支払ってもらえる可能性がありますが、相手が支払いに応じず調停や裁判で請求する場合、請求以前の養育費を遡って請求するのは原則として認められません。

養育費未払いを差し押さえできないケース

相手がどうしても養育費を支払ってくれない場合、最終的には財産の差し押さえで未払い分を強制的に回収することになります。しかし、財産を差し押さえるには一定の要件を満たさなければなりません。以下のケースでは未払い分の差し押さえができないので注意しましょう。

  • 強制執行認諾文言付き公正証書などの債務名義がない
  • 相手の現住所が不明
  • 相手に支払い能力がない

ここからは、それぞれのケースについて1つずつ詳しく解説していきます。

強制執行認諾文言付き公正証書などの債務名義がない

強制執行認諾文言付き公正証書などの債務名義が手元になければ、養育費の未払い分を強制執行で差し押さえることはできません。裁判所で強制執行を申し立てるには、債務名義という債権の存在や範囲、債権者、債務者などを公的に証明する文書が必要になります。

債務名義は、具体的に以下のものを指します。

  • 確定判決
  • 仮執行宣言付き判決
  • 仮執行宣言付き支払督促
  • 強制執行認諾文言付き公正証書
  • 裁判上の和解調書や調停調書等

養育費について記載した単なる合意書は債務名義にならないため、約束通りに養育費が支払われなかったとしても強制執行は申し立てられません。債務名義が手元になければ調停や裁判を申し立てる必要がありますが、それだと手間も費用もかかるため、合意内容は強制執行認諾文言が記載された公正証書にしておくのが望ましいです。

強制執行認諾文言とは、「養育費の支払いを履行しない場合はただちに強制執行に服する旨の記載(執行認諾文言)」を指します。公証役場で強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておけば、約束通りに養育費が支払われなかった場合に調停や裁判を経ず、ただちに強制執行が可能になります。

ただし、公正証書を作成しても強制執行認諾文言がなければ、養育費が支払われなくてもすぐに強制執行はできません。通常通り、調停や裁判を申し立てる必要があります。公正証書の作成にも費用がかかるため、無駄にしないためにも必ず強制執行認諾文言を記載しておきましょう。

養育費で公正証書を作成することについて知りたい方は、下記の記事で詳しく紹介しているので参考にしてみてください。

相手の現住所が不明

強制執行を申し立てるには、差し押さえる相手の現住所を把握しておく必要があります。相手の現住所を調べる方法としては、以下の3通りあります。

  • 相手の本籍地で戸籍の附票を取得する
  • 住民票(住民票の除票)を取得する
  • 弁護士に依頼して調査してもらう

自力で調査する場合は、相手の本籍地で戸籍の附票を取得するのがおすすめです。戸籍の附票には戸籍が作られてから現在までの住所の履歴がすべて掲載されています。離婚して相手の戸籍から抜けた後でも除籍者として取得できるため、戸籍の附票から簡単に相手の現住所を確認可能です。

離婚後に相手が本籍地を移した場合は除籍者として取得できませんが、相手の戸籍に子供が記載されていれば、子供の親として取得できます。相手の戸籍に子供が記載されていない場合でも、養育費を請求するなどの正当な理由があれば請求が認められる可能性があります。

相手に支払い能力がない

養育費の未払い分を差し押さえるには、相手に支払い能力があることが前提となります。相手が無職で差し押さえできる財産を何も持っていなければ、強制執行を申し立てても差し押さえは不可能です。

相手の財産を調査した結果、預貯金や不動産などのまとまった財産がなければ、現在の勤務先を特定して給与債権を差し押さえることを検討しましょう。一度給与債権を差し押さえれば、相手がその勤務先を退職するまで毎月の給与から回収し続けることが可能です。

ただ、勤務先の特定や財産調査を個人で行うのは難しいため、強制執行を申し立てる場合は弁護士に依頼するのがおすすめです。

養育費不払いは国が立て替えてくれる?養育費に関する自治体の取り組み事例

養育費を支払ってもらえない場合は相手に直接請求したり、裁判上の手続きで強制的に支払いを求めたりすることが可能です。しかし、労力や時間、費用がかかる上、確実に回収できる保証もありません。

厚生労働省が実施した調査によると、取り決め通りに養育費が支払われている母子家庭の割合は28.1%、父子家庭の割合は8.7%しかなく、養育費の不払いが深刻な社会問題となっています。

そこで厚生労働省では自治体と連携し、養育費の不払い解消に向けた取り組みを開始しています。残念ながら、国が不払いの養育費を立て替えてくれる制度は今のところありませんが、兵庫県明石市や埼玉県さいたま市では不払いの養育費の立て替え制度がすでに実施されています。

他の自治体でも、弁護士や相談員による無料の法律相談、養育費保証契約に要する費用の補助、調停や強制執行にかかる弁護士費用の補助といったさまざまな取り組みが実施されています。ここでは、秋田県、奈良県、和歌山県の3県で実施されている取り組み事例についてご紹介します。

取り組み事例 内容
秋田県 弁護士による法律相談 離婚前の養育費等の取り決めから離婚後の養育費の請求、強制執行、調停などを弁護士に無料で相談できる制度
養育費確保手続き費用補助 ・公正証書の作成費用や調停の申し立て費用の補助(最大3万円)
・養育費(増額)請求調停申立てにかかる実費や弁護士費用 (最大6万円)
・強制執行申し立てにかかる弁護士費用の補助(最大6万円)
・保証会社との養育費保証契約締結にかかる初回保証料(最大5万円)
奈良県 弁護士・相談員(元家庭裁判所調査官)による無料相談 養育費や面会交流などについて弁護士や相談員に無料で相談できる
相談は弁護士が月1~2回、相談員が月2回それぞれ実施。
無料の親支援講座(ひとり親家庭等支援セミナー) 離婚前後の心配事や子どもの不安を少しでも取り除くため、何ができるかを共に考える機会を無料で提供。
講師は元家庭裁判所の調査官。
和歌山県 公正証書作成費用等補助 公正証書作成、調停、裁判に要する費用全額を補助(最大3万円)
無料の弁護士相談 養育費の取り決めや不払いへの対応について弁護士に無料で相談できる(1回1時間)
保証契約補助の実施 ・養育費保証会社に支払う手数料を1年分補助(最大5万円)
・強制執行の申し立てに要する費用を補助(最大3万円)
公証役場等への同行支援 公証役場や弁護士事務所などに一人で行くのが心細い場合に、県母子寡婦福祉連合会の会員が同行してくれる

他の取り組み事例については、こども家庭庁が公開している「養育費の履行確保等に関する取組事例集」から確認できます。

参考:令和 3年度 全国ひとり親世帯等調査結果の概要

養育費の未払いの再発を防ぐ方法

養育費の未払いの再発を防ぐためには、あらかじめ以下の対策を取っておくのが効果的です。

  • 強制力のある公的文書を用意する
  • 給与を差し押さえて将来の養育費を確保しておく

ここからは、それぞれの方法について1つずつ詳しく解説していきます。

強制力のある公的文書を用意する

強制力のある以下の公的文書を用意しておけば、相手がどうしても養育費を支払ってくれない場合の最終手段として、強制執行による財産の差し押さえが可能になります。

  • 強制執行認諾文言付き公正証書
  • 調停調書
  • 審判書
  • 判決書

強制執行は未払い分を完済するか、時効が成立するまで何度でも申し立てられるため、未払いの再発を防ぐのに効果的です。また、前述したように養育費の合意内容を強制執行認諾文言付き公正証書で作成しておけば、調停や審判、裁判を申し立てなくても強制執行が申し立てられるので手間が省けます。

話し合いで養育費を取り決めた場合は、公証役場で強制執行認諾文言付き公正証書を作成してもらいましょう。

給与を差し押さえて将来の養育費を確保しておく

強制執行で養育費の未払い分を回収する場合は、未払いの再発を防ぐため、給与を差し押さえて将来の養育費を確保しておきましょう。勤務先を特定して給与を差し押さえれば、毎月差し押さえた給与の一部が勤務先から直接支払われるため、未払いのリスクを最小限に抑えられます。

まとまった金額を確保しておきたい場合は、預貯金や不動産などの財産の差し押さえも検討するのがおすすめです。子どもの生活を安定させるためにも、養育費未払いの再発を防ぐ対策を講じましょう。

養育費の未払いを弁護士に相談・依頼するメリット

未払い養育費については、ケースごとに適切な回収方法が異なります。そのため、どの回収方法を選択するかが重要です。たとえば、時効が迫っているのであればすぐにでも調停を申し立てる必要がありますし、相手と連絡が取れているのであれば内容証明郵便から始めるなど状況によってさまざまです。

ただし、自分で請求する場合はどの方法が適しているか見極めるのは難しいでしょう。弁護士なら、どの方法が適しているか状況に合わせて判断してくれます。そのため、養育費の未払いが発生したら、養育費の未払い問題に強い弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。

弁護士に相談・依頼するメリットとしては、主に以下の3つが挙げられます。

  • 養育費の回収ができる可能性が高まる
  • 相手とのやり取りや裁判所の手続きを弁護士に任せられる
  • 請求可能な養育費や元配偶者の住所・財産状況を調査できる

特に、養育費問題に関する経験が多い弁護士の方が、より最適な方法を提案してくれるでしょう。ここからは、それぞれのメリットについて1つずつ詳しく解説していきます。

養育費の回収ができる可能性が高まる

弁護士名義で内容証明郵便を送付するだけでも、心理的に強いプレッシャーを与えられます。これまで連絡を無視していた相手も事の重大さに気付き、養育費の話し合いに応じてくれる可能性が高まるでしょう。

それでも支払いに応じてくれなければ、弁護士が代理人となって訴訟・調停など適切な方法で交渉や手続きを進めてくれます。そのため、自分で行うよりも養育費の回収率が高くなるでしょう。

相手とのやり取りや裁判所の手続きを弁護士に任せられる

弁護士に相談・依頼すれば、相手とのやり取りや裁判所の手続きなどをすべて弁護士に任せられます。相手と顔を合わせたくない場合や直接やり取りしたくない場合でも、弁護士に依頼すれば代理人として交渉してくれるため、心理的な負担がかかりません。

また、弁護士なら法的知識や経験に基づいて交渉を進められるため、自分に有利な条件で交渉がまとまりやすくなるでしょう。話し合いがまとまらなければ調停や裁判へ移行することになりますが、その場合も弁護士が代理人として手続きを進めてくれます。

調停や裁判、強制執行などの裁判所の手続きは非常に複雑で、すべて自分で行うとなると手間がかかります。弁護士に依頼すれば複雑で専門的な手続きを一任できるため、スムーズに未払い分の養育費を回収できるのもメリットです。

請求可能な養育費や元配偶者の住所・財産状況を調査できる

弁護士に相談・依頼することで、請求可能な養育費の金額や元配偶者の住所・財産状況も調査できます。養育費の金額は裁判所が公表している「養育費算定表」を参考にして決めるのが一般的です。

しかし、当事者双方の収入や子供の年齢・人数以外にも考慮すべき事情がある場合は、それらも踏まえた上で適正額を算出する必要があります。弁護士に相談すれば、適正額が分からなくても個々の事情を考慮した適正額を算出してもらえます。

また、強制執行を申し立てる際には、元配偶者の住所や財産状況を把握しておかなければなりません。しかし、自力で調査するのはそう簡単なことではなく、労力や時間もかかります。

弁護士に依頼すれば、弁護士会照会や財産開示などの制度を利用して調査できるため、元配偶者の給与や財産の差し押さえで未払い分の養育費を回収できる可能性が高まります。

養育費の具体的な金額例を知りたい方は、下記の記事で詳しく紹介しています。

また、養育費問題を弁護士に無料相談できる窓口について知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

まとめ

養育費は子供が健やかに成長するために必要な費用です。相手から養育費が支払われない場合は子供のためにもそのまま放置せず、まずは相手に直接連絡して養育費を請求してください。

それでも相手が支払いに応じなければ、調停や履行勧告・履行命令制度、強制執行などの裁判所の手続きを利用して解決を目指しましょう。もし、養育費の請求で何か困ったことがあれば、養育費問題に強い弁護士に一度相談してみてください。

養育費の未払いについてよくある質問

未払いの養育費を元配偶者の親に請求することはできる?

元配偶者の親に未払いの養育費を請求することは原則としてできません。扶養義務があるのは子供の親のみなので、元配偶者の親には養育費を支払う法的義務はありません。

ただし、養育費を取り決めた際に元配偶者の親が連帯保証人になっていた場合や経済的に余裕がある場合は、例外的に請求が認められるケースもあります。また、元配偶者の親に養育費の支払いをお願いすれば、自主的に養育費を支払ってくれる可能性もあります。

養育費の未払いは子供自身が請求できる?

子供が親に対して請求する生活費は「養育費」ではなく「扶養料」といい、子供は親に対して扶養料の請求が可能です。ただし、養育費と扶養料は呼び方が異なるだけで子供の生活費として使われることに変わりはないため、養育費と二重で請求することはできません。

子供がすでに成人している場合は子供自身が請求しますが、未成年の場合は法定代理人である親権者が扶養料を請求します。

未払い養育費の請求を弁護士に依頼したときの費用相場は?

未払い養育費の請求を弁護士に依頼すると、相談料や着手金、成功報酬などの費用がかかります。弁護士費用は弁護士事務所によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。

相談料 5,000~10,000円程度(1時間あたり)
着手金 20~40万円程度
成功報酬 実際に回収した養育費の10~20%程度

弁護士費用を工面するのが難しい場合は、自治体や弁護士会などが実施している無料法律相談、法テラスや一部の自治体が実施している立て替え制度などを利用しましょう。

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更新日 : 2025年03月07日
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