婚姻中は、配偶者・子供が夫の扶養に入っているケースは多いですが、離婚をすると扶養控除はどうなってしまうのか、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
離婚をすると、子供は一緒に暮らす親の扶養に入るケースが多いです。別居することになった親側は、今まで扶養親族だった子供や配偶者が扶養から抜けると扶養控除が使えなくなるでしょう。しかしそうなると、税額控除が少なくなり、手取りが大幅に減少してしまう恐れがあります。
しかし離婚後も養育費を支払っていれば扶養控除が適用できる可能性があります。ただし、子供が16歳未満である、扶養が重複している、養育費を一括で支払っているなどのケースでは、扶養控除が認められなる恐れがあるでしょう。まずは扶養控除が適用できるかどうかを確かめる必要があります。
適用可能であると判断したら、配偶者と話し合って扶養控除は親権に影響がないことや税額が変わることで発生する手取りの変化などを説明し、理解を得ましょう。また、扶養控除を適用させてくれれば養育費を増額する、など交渉し、お互いにプラスとなる方向に話を持っていけるのが理想です。
自分では対応が難しい場合は、弁護士への相談もおすすめです。弁護士であれば、扶養控除適用にあたってのアドバイスや相手との交渉もしてもらえるでしょう。
この記事では、制度の概要や扶養控除が適用される扶養親族の要件、離婚後に扶養控除が使えるケース・使えないケース、そして離婚後に扶養控除を適用させる方法や外さないための手段を紹介しています。
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離婚後は扶養控除が使えるのは片親のみで、扶養を外れれば扶養控除も使えない
離婚後、子供の扶養控除が使えるのは「片親のみ」です。離婚によって子供が扶養から外れると、扶養控除は使えません。子供が扶養家族から外れると、それに伴って税金も上がります。また子供以外に配偶者も扶養から外れると、配偶者控除も受けられなくなるでしょう。
給与の総額は変わらなくても、扶養する人がいなくなることで、税金が増額され手取りが少なくなります。
離婚したことで受けられなく扶養控除は、以下の通りです。
受けられなくなる所得控除 |
所得控除額 |
配偶者控除 |
38万円 |
配偶者特別控除 |
配偶者の所得によって変動する |
扶養控除(16歳以上かつ給与収入103万円以下) |
38万円 |
扶養控除(19~22歳) |
63万円 |
扶養控除とは扶養する親族がいる場合に税金を減らせる制度
扶養控除は、子供もしくは親等の扶養控除の対象となる親族がいる場合、所得から一定額の所得控除が受けられる制度です。対象となるのは所得税で、扶養控除があると税額が軽減され、手元にお金が多く残ります。
扶養控除が認められている理由は、扶養する親族がいない場合に比べて、扶養している親族が多ければ多いほど、生活費や学費など出費が増えることが関係しています。扶養する親族がいると、食費や光熱費も多くなるでしょう。また一緒に住む人数が多ければ広い家を必要とするため、家賃も高くなりやすいです。
さらに、子供がいれば学費が必要になり、高齢者がいれば病気になった場合の医療費なども必要になります。
扶養控除は、納税義務者が子供や配偶者、親を含めた家族を養っている場合に適用されます。扶養している人の数に応じて、税金の負担が軽減されるのです。
扶養親族の年齢や同居の有無で控除される額は異なりますが、38~63万の範囲で控除されます。
扶養控除を適用するための扶養親族の要件
扶養控除を適用するためには、扶養親族の要件が設けられています。
- 生計をともにしている
- その年の12月31日時点で16歳以上である
- 対象となる親族の所得金額が48万円以下である
- 事業専従者として給与を受け取っていない
納税義務者と生計をともにする扶養親族
控除の対象となる「扶養親族」とは、配偶者を除いて6親等以内の血族・3親等以内の姻族のことを指します。子供の場合は、実子・養子問わず、親族に含めることが可能です。
生計を共にする=生活を共にするとは限りません。「1人暮らしをしている子供に毎月生活費を渡している」「実家で暮らす親に生活費としてお金を援助している」などの場合も、生計は同一であるとみなされて扶養控除の対象となります。
その年の12月31日時点で16歳以上
2010年度から「児童手当」の支給が始まりました。16歳未満の子供を扶養している場合は、児童手当が支給されます。
その後、2011年度の法改正により、16歳未満の扶養親族は扶養控除の対象外となっているため、扶養親族に該当するのは16歳以上の親族のみです。
対象の親族の合計所得額が48万円以下
扶養控除の対象となる親族は、年間の所得額が48万円以下であることが必要です。38万円以下と定められていた期間もありましたが、令和2年からは48万円以下に引き上げられています。
ただし、所得=収入ではありません。税法上で、所得は「収入金額」から「必要経費
」を差し引いたものと定められています。所得の種類や必要経費とみなされる控除額は、年齢や職業によって異なります。
アルバイトやパート勤務の場合
「労働の対価」として得た給与は「給与所得」です。
「収入金額ー給与所得控除(最低55万円)」で所得が算出できます。
収入金額が103万であれば、給与所得控除の最低55万円を差し引くと48万円となり、扶養親族として認められます。
年金受給者の場合
厚生年金や国民年金は「雑所得」です。
所得金額は「年金の受給金額ー公的年金等控除額」で所得が算出できます。ただし、公的年金等控除額の最低額は、年齢により異なります。
65歳以上であれば110万円、65歳未満であれば60万円です。
150万円の年金を受給しているケースを見てみましょう。
65歳以上で150万円の年金を受給している場合、「150万円ー110万円=40万円」と計算でき、扶養控除の対象です。一方で64歳の場合「150万円ー60万円=90万円」と計算できますが、所得額が48万円を超えてしまうため、扶養控除の対象外になってしまいます。
事業専従者として給与を受け取っていない
個人事業主として事業を営む納税義務者の事業を手伝っている場合、青色申告や白色申告の「事業専従者」となって給与の受け取りが可能です。
事業専従者として給与を渡している親族は、扶養親族として認められません。
離婚後に扶養控除が使えるケース
離婚して別々に暮らすことになっても、親には子供を養う義務があります。親権を持たない親は、一定の年齢に達するまでは養育費を支払うのが一般的です。
扶養控除の要件の1つである「生計を共にする」ことは同居・別居を問いません。そのため、養育費を支払っており、その養育費は子供を養育するために使われているのであれば、離婚後も扶養控除が受けられる可能性があるでしょう。
離婚後に扶養控除が使えないケース
離婚をして子供と離れて暮らすことになった親は、扶養控除が使えなくなるケースが多いです。以下が、扶養控除が使えない代表的なケースです。
- 一括で養育費を支払った
- 扶養が重複している
- 子供が16歳未満である
養育費を一括で支払った
養育費を一括で支払うと「継続的に子を扶養している」と認められなくなり、扶養控除の適用外とみなされます。また慰謝料や財産分与という形で教育費を支払う場合も、同様に子供の扶養のための費用を支払っていることが認められません。
例外として、一括支払いをした養育費とは別に、子供を受託者として信託契約を結び、養育費相当の金銭を継続的に支払っていれば、扶養控除が認められる可能性もあります。信託契約とは、信託銀行などと契約を結んで、委託先に財産を管理・運用させる契約のことです。
信託契約で子供が受け取る養育費は、子供の信託収益となります。子供が信託収益以外に得ている所得がある場合や、また同居する親の扶養控除になっている場合は扶養控除の対象として認められない可能性もあります。
扶養が重複している
子供1人につき、父もしくは母のどちらかしか扶養控除が使えません。一般的に同居する親が扶養控除を使うケースが多いため、離婚して別居した親は扶養控除が使えなくなるでしょう。特に、一人っ子では扶養が重複するため、話し合いが必要です。
子供が複数人いる場合は、第1子を父の扶養、第2子を母の扶養、などと分けて申請することは可能です。
もしも重複して扶養控除を受けていることが発覚すると、税務署が扶養控除の条件を満たしているのは父と母どちらなのかを判断し、条件を満たしていないと判断された親は、税務署から追徴課税が行われます。
子供が16歳未満
扶養している子供が16歳未満の場合は、扶養控除の要件を満たしていません。これは、児童手当の財源確保のために行われた税制改正によるものです。2011年以降は、16歳未満の扶養親族に対する扶養控除は廃止されました。
ただし適用外になるのは所得税の控除のみで、住民税に関しては16歳未満でも扶養親族に含むことができます。「非課税限度枠」という制度で、非課税限度枠に適用されるかどうかを判断する際、16歳未満の子供も扶養親族の人数に入れることができるのです。
扶養親族が増えて所得が非課税枠に収まると、税金が減額できる可能性があるでしょう。
離婚後に扶養控除を適用させる方法
離婚後も扶養控除を適用させる方法は、給与所得者か個人事業主かで異なります。自分の扶養控除を適用させる方法を知っておきましょう。
- 給与所得者は年末調整で適用
- 個人事業主は確定申告で適用
給与所得者は年末調整で適用できる
会社員や派遣社員、パート・アルバイトなど、給与所得を得ている人は、年末調整で扶養控除が使えます。
年末調整の際に「給与所得者の扶養義務等申告書」が配布されるため、扶養親族の氏名や住所、個人番号などを記載して申告するだけで適用されます。
個人事業主は確定申告で適用できる
自営業・フリーランスなどの個人事業主は、確定申告で扶養控除が使えます。
確定申告書の「第二表 配偶者や親族に関する事項」の欄に、親族の名前やその他情報が記載できます。そこに情報を記載することで、適用可能です。
離婚時に子供を扶養から外さないようにするには
離婚で子供が扶養から外れると、税金が増額されて手取りが減る可能性があります。できれば子供を扶養から外したくない…と思う人は多いでしょう。
離婚しても子供を扶養から外さないために、以下の方法を試してみてください。
配偶者としっかり話し合う
子供を扶養から外さないために、何よりも大切なのは配偶者としっかり話し合うことです。
どちらの親が子供を扶養に入れていても、親権には何も影響がないことを主張しましょう。そして、納税する税金をシミュレーションしながら数字で示すと、相手にも理解してもらいやすいです。
また、自分の扶養に入れる代わりに、養育費増額の約束をするなどの代案を提示してみましょう。
扶養控除を受けられなくなって手取りが減ると、養育費にも影響が出る可能性があります。扶養控除を外さない代わりに養育費が増額されるのであれば、お互いにとってプラスです。
離婚問題に強い弁護士にサポートしてもらう
扶養に関する問題に限らず、離婚協議は小さなことでも揉め事に発展しやすいです。扶養控除の場合は、お互いに扶養控除に入れたいと思っていると、話し合いでは解決が難しくなってしまいます。
弁護士なら、子供を扶養から外さないためのアドバイスをしてくれたり、相手と冷静に交渉してくれたりするでしょう。さらに、教育費や慰謝料などを含め、離婚に関する幅広い問題のトラブルも相談できます。
離婚問題をまとめて相談したい、扶養控除から外さないためにできる限りのことをしたいとお考えの方は、一度弁護士に問い合わせてみてください。
まとめ
扶養控除は、扶養親族がいる場合に所得控除される制度のことです。扶養親族には配偶者を除いて6親等以内の血族・3親等以内の姻族が当てはまりますが、離婚で特に影響が出るのは、配偶者と16歳以上の子供が扶養から抜けた場合です。
配偶者とは離婚してしまうため、配偶者控除が受けられなくなるのは仕方がありません。しかし、子供の扶養控除に関しては、親であれば扶養控除が適用できる可能性があります。
税金の増額は、思った以上に大きな痛手です。配偶者と話し合い、どちらが扶養控除に入れるべきか相談しましょう。離婚後も扶養控除を適用させたい場合は、まず扶養控除が適用できるように条件を整える必要があります。
生計を共にしていれば、一緒に暮らしている必要はありません。しかし、養育費を一括で支払っている、扶養が重複している、子供が16歳未満である場合は、離婚後の扶養控除が適用できないでしょう。
また、離婚した相手の扶養控除に子供を入れることに抵抗を感じる人が多く、扶養控除が使えなかった、というケースは多いです。配偶者には自分が扶養控除に入れるメリットなどを説明し、親権には何も影響が及ばないこと、扶養控除に入れる代わりに養育費を増額するなど、お互いにプラスとなるような条件を提示しましょう。
弁護士に相談すると、扶養控除から外さないためのアドバイスや相手との交渉もしてもらえます。その他の揉めやすい離婚問題の相談にも対応してもらえるため、一度相談してみてはいかがでしょうか。
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