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不妊は離婚の理由になる?離婚できるケースや慰謝料を解説

不妊は離婚の理由になる?離婚できるケースや慰謝料を解説

不妊は、子どもを望む夫婦にとって離婚するかを決めるほど大きな問題です。厚生労働省が公表している資料によると、約2.6組に1組、つまり半数近い多くの夫婦が不妊を心配したことがあるというデータもあります。

不妊治療は夫婦にとって精神的・経済的・体力的に大きな負担がかかるため、お互いに協力的でなければ継続は難しいです。しかし2人で不妊治療を頑張ってきたつもりが、気づけば夫婦喧嘩が増えたり治療に対する温度差の違いを感じたりして、離婚を意識し始めたという人もいるのではないでしょうか。

不妊が原因で離婚したい場合、協議や調停など相手との話し合いで同意があれば離婚は可能です。同意が得られない場合は裁判に移行し、不妊が原因で法定離婚事由にあたる行為があったことを証明しなければなりません。

法廷離婚事由とは法律で認められている離婚事由のことです。該当することが離婚裁判で認められれば、相手が拒否していても強制的に離婚できます。

この記事では、不妊で離婚や慰謝料請求ができるケースについて解説します。不妊に対する考えは夫婦でもそれぞれ異なり、子どもができなかった場合でも夫婦で過ごせれば良いと考えてる人も一定数います。

相手と不妊治療や子どもがいない選択肢について話し合うことで離婚せずに済む可能性もあるため、一方的に離婚を切り出す前にきちんと話し合いをするのがおすすめです。

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南陽輔 弁護士
監修
南 陽輔(弁護士)

不妊を理由に離婚はできる?

結論からいうと、不妊だけが理由であれば離婚は認められません。

基本的に、不妊による離婚は夫婦双方の同意があるかによって離婚の可否や手順が下記のように異なります。

  • 配偶者の同意があれば離婚できる
  • 調停離婚が成立しない場合は離婚裁判へ

裁判まで発展した場合、法律で認められた離婚理由である「法定離婚事由」に該当しなければ離婚はできません。しかし、不妊自体は法定離婚事由に当たらないため、不妊がきっかけで法廷離婚事由に該当する行動があったことを証明する必要があります。ここでは、不妊だけでは離婚が認められない理由や、夫婦の同意だけで離婚する方法などについて解説します。

配偶者の同意があれば離婚できる

離婚の理由が不妊であっても、配偶者の同意があれば離婚が可能です。協議離婚や調停離婚の場合は、夫婦双方が離婚に同意し、夫婦が署名した離婚届を役所に提出すればいかなる離婚理由であっても正式に離婚が成立します。

まずは夫婦のみで話し合う離婚協議から始めますが、配偶者の同意が得られない場合は離婚調停という家庭裁判所での話し合いに移行します。離婚調停とは、調停委員や裁判官からなる調停委員会が、夫婦双方から交互に話を聴きながら話し合いをサポートし、夫婦双方の合意で離婚の成立を目指す方法です。

当事者間のみで話し合いをすると、お互いに感情的になって話し合いが進まないケースが多いです。離婚調停なら、中立的な立場である第三者が間に入ってくれるため、お互いに冷静になって話し合いをスムーズに進めやすくなります。

話し合いによって夫婦双方が離婚に同意すれば調停成立となり、成立日を含む10日以内に調停調書謄本を添えて離婚届を提出すれば、正式に離婚が成立します。夫婦双方が同意しなければ調停不成立となり、離婚は成立しません。

調停離婚が成立しない場合は離婚裁判へ

調停離婚も成立しない場合は、離婚裁判を起こして離婚の成立を目指すことになります。離婚裁判では、法廷でお互いに自分の主張をぶつけ合い、裁判所が夫婦双方の主張や証拠などを総合的に判断して離婚の可否を決定します。

協議離婚や調停離婚とは違い、裁判所が離婚を認める判決を下せば、夫婦双方が同意していなくても離婚が可能です。判決書が送達された日から2週間以内に控訴がなければ判決が確定し、確定日を含む10日以内に判決書謄本と判決確定証明書を添えて離婚届を提出すれば、正式に離婚が成立します。

不妊だけでは法定離婚事由に該当しない

離婚裁判では夫婦双方の同意は不要ですが、離婚請求を認めてもらうには法的な離婚事由が必要になります。法的な離婚事由とは、離婚裁判を起こせる場合として定められている5つの理由のことで、民法第770条で定められています。

  1. 不貞行為(配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと)
  2. 悪意の遺棄(正当な理由なく、夫婦の同居・協力・扶助義務を果たさないこと)
  3. 3年以上の生死不明
  4. 回復の見込みのない強度の精神病
  5. 婚姻を継続しがたい重大な事由(暴力・モラハラ・金銭問題・犯罪行為による服役など)

相手が法定離婚事由にあたる行為をした場合は、裁判での離婚請求が認められる可能性があります。しかし、不妊で子供が授かれないことは、法定離婚事由にはあたりません。

不妊は身体的な問題であり、本人の意思でコントロールできるものではないため、誰にも責任がないからです。

そのため不妊のみを離婚理由として離婚裁判を起こしても、配偶者が離婚を拒否し続けている限り、裁判所は離婚を認めないでしょう。

ただし、不妊以外に以下のような理由があれば、法的離婚事由のうち「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたるとして離婚が認められるケースがあります。

  • 不貞行為や暴力など不法行為があった
  • 不妊をきっかけに夫婦関係が破綻した
  • 相手が妊活に非協力的
  • 価値観・性格の不一致
  • 愛情の喪失
  • 配偶者の親族との問題
  • 宗教上の問題
  • セックスレス・性的異常

特に不妊は、法的離婚事由のうち1〜4のどのパターンにもあてはまらないため、5に該当する要素があるかが重要です。ただ上記に該当するだけでなく、そのことが原因で夫婦関係が破綻したといえる状況が必要になります。

参照:民法|e-Gov法令検索

不妊が原因でも離婚が認められる可能性のあるケース

先述の通り、離婚裁判で不妊を理由に離婚を認められるには、法的離婚事由を証明する必要があります。ここでは、不妊が原因でも離婚が認められる可能性のあるケースについて解説します。

  • 不妊治療や妊活が原因の夫婦喧嘩で暴力や暴言が見られるようになった
  • 不妊が原因で精神疾患を患ってしまった
  • 妊活に協力的ではない(セックスレス)
  • 婚姻時に不妊であることを隠されていた

不妊治療や妊活が原因の夫婦喧嘩で暴力や暴言が見られるようになった

夫婦喧嘩で暴力や暴言が見られるようになると、離婚が認められることがあります。きっかけは不妊でも、暴力や暴言が法的な離婚事由にあたるためです。

不妊治療が長引き意見が対立するようになると、喧嘩が増えてしまう場合があります。お互いが対等に言い合うただの夫婦喧嘩であれば別ですが、どちらかが暴力をふるったり暴言を吐くようになったりすると、「婚姻の継続が難しい」と判断される可能性があります。

不妊が原因で精神疾患を患ってしまった

不妊が原因で精神疾患を患ってしまった場合、ケースによっては離婚が認められます。不妊治療は結果が伴わないケースが多く、治療によってメンタルがすり減ってしまうことは珍しくありません。

しかし、通常は不妊が理由でうつ病になったとしても、強度の精神病に該当するとはいえないため離婚は難しいでしょう。

精神疾患で離婚が認められるためには、その精神疾患が「回復の見込みがない」と診断されるか、ほかに「婚姻の継続が難しい」と判断できる要素が必要です。たとえばうつ病の配偶者を無視して別居を続けていたといった状況であれば、「悪意の遺棄」にあたるとして認めてもらえる可能性があります。

妊活に協力的ではない(セックスレス)

直接的な離婚原因を不妊とする離婚は認められなくても、以下のケースのように妊活に非協力的な場合は、法的な離婚事由に該当する可能性があります。

  • 妊活に積極的な妻を夫が理由なく拒否している
  • 「どうせ妊娠しないのだから妊活しても意味がない」というような理由で、妊娠に向けたコミュニケーションを避ける
  • なかなか妊娠しない妻に対してそれを責めるような言葉を投げかける

妊活に対して温度差が生じることは珍しくありません。しかし、セックスレスは法的な離婚事由に該当する問題です。夫婦のうちどちらかが性行為を拒否し続けていると、婚姻を継続できない重大な理由があると判断されるでしょう。

また、子どもができないことを一方的に侮辱する行為も、モラハラに該当する可能性があるため法的な離婚事由にあたると考えられます。

婚姻時に不妊であることを隠されていた

配偶者が婚姻時に不妊であることを隠しており、結婚後に不妊が判明したケースでも裁判で離婚が認められる可能性があります。

不妊は故意や過失によるものではない身体的な問題であり、不妊であること自体は誰にも責任はありません。しかし、婚姻時にその事実を隠したまま結婚するのは故意によるものであり、事実を隠していた本人に落ち度があります。

故意や過失によって相手の利益を侵害する行為は不法行為にあたるため、婚姻時に不妊を隠されていたことを立証できれば、離婚や慰謝料の請求が認められる可能性が高いです。

実際、夫が性交不能であることを妻に隠したまま結婚したことが「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるとして、夫に対し200万円の離婚慰謝料の支払いを命じた裁判例もあります。

不妊が原因で離婚をしたら慰謝料は請求できる?

不妊だけが原因で離婚した場合、慰謝料の請求は難しいでしょう。不妊は誰のせいでもないためです。

ただし、不妊以外に「婚姻の継続が難しい」と判断されるような原因があるケースなら、請求できることもあります。

ここでは、不妊が原因で離婚した場合の慰謝料請求が難しい理由や、慰謝料請求できる可能性のあるケースについて解説します。

不妊だけが原因の場合、慰謝料の請求は難しい

不妊だけが原因で離婚する場合、慰謝料の請求は難しいでしょう。慰謝料とは、たとえば夫婦のうちどちらかが不倫をしたなど、片方の配偶者がもう一方の配偶者に対して不法行為を行った場合に発生する損害賠償であるためです。

不妊は身体的な問題であり、本人の意思でコントロールできるものではありません。不妊治療を行う中でどちらかに根本的な原因があると判明した場合でも、本人はもちろん誰の責任でもないのです。

そのため不妊だけが原因であれば、慰謝料の請求はできないと思っておいたほうがよいでしょう。

ただし、慰謝料を請求してはならないわけではありません。夫婦間の話し合いで意見が一致するのであれば、支払ってもらっても違法ではありません。

また、慰謝料の請求が難しいのは不妊だけが原因であるケースです。不妊以外に原因があったり、婚姻時に不妊であることを隠されていた場合は慰謝料が発生する可能性があります。

不妊以外の理由があれば慰謝料の請求ができる可能性もある

不妊だけが原因なら請求が難しくても、不妊以外に理由があれば慰謝料を請求できる可能性があります。慰謝料が認められやすい離婚事由の相場は、それぞれ以下の通りです。

  • 不貞行為:100~500万円
  • DVやモラハラ:50~500万円
  • 悪意の遺棄:50~300万円
  • セックスレス:~200万円

上記のケースは、法的な離婚事由に該当します。同じように子どもが欲しいと思っていても、夫婦が同じ熱量で不妊治療に取り組んでいけるとはかぎりません。

そのため、すれ違いや仲違いによって夫婦仲が悪くなることは、ある程度は仕方がないといえるでしょう。しかし不妊は、不倫やDVなどの違法行為を正当化する理由にはなりません。

また、悪意の遺棄のように理由もなく相手によって精神的苦痛を負わされた場合も慰謝料の請求が可能です。

不妊を理由にして離婚する際の注意点

「離婚」の二文字が一度頭にちらつくと、離婚することしか考えられないかもしれません。しかし、離婚に踏み切る前に考えておくべきことがいくつかあります。

ここでは、不妊が理由で離婚する前に考えたいことについて解説します。

  • 証拠を集めておく
  • 配偶者を責めない
  • 財産分与や年金分割などの離婚条件を確認する
  • 住む場所やお金など、離婚後の生活についてあらかじめ考えておく
  • 不妊以外の離婚原因を考える

証拠を集めておく

不妊を理由に離婚するには、不妊によって夫婦関係が破綻したことを立証するための決定的な証拠を集めておく必要があります。

不妊だけでは基本的に離婚は認められませんが、不妊がきっかけで別居に至ったりセックスレスになったりと、不妊が間接的な原因となって夫婦関係が破綻した場合は離婚が認められる可能性が高いです。

夫婦関係が破綻したかどうかは、お互いの主張や証拠に基づいて判断されます。夫婦関係が破綻したことが事実であっても、それを裏付ける決定的な証拠が提出できなければ、裁判所は本当に夫婦関係が破綻したのか判断できません。

離婚が認められるには、下記の証拠を押さえると裁判所からも法的離婚事由に該当すると認められる可能性が高まります。

離婚の原因となる要因 必要な証拠の一例
不貞行為 ・不倫相手と性交渉があったと判断できるメールやチャット、SNSでのやりとり
・ラブホテルの領収書
・写真(ラブホテルへの出入り、密会写真)
・クレジットカードの利用明細書
・配偶者や不倫相手が不貞を自白している書面、音声、動画
DV・モラハラ ・暴言や暴力を録音した音声
・暴言や暴力を録画した動画
・配偶者の暴力によってけがをした際の写真、診断書
・暴力によって壊されたものの写真
・警察や公的機関へ相談した記録
・暴力や暴言の内容と日付を記載した日記 など
悪意の遺棄 ・配偶者が生活費を支払ってないことが分かる通帳や家計簿
・配偶者の源泉徴収票や給与明細
・家出を通知する手紙やメール、留守番電話
・悪意に遺棄について記した日記 など
その他 ・セックスレスの場合は性交渉を拒まれた日の日記や話し合いの記録
・性格の不一致により夫婦関係が破綻していることがわかる陳述書や日記

証拠集めは重要なポイントになりますが、状況によって夫婦関係の破綻を立証するのに有効な証拠は異なります。有効な証拠でなければ裁判を起こしても離婚が認められない可能性があるため、離婚問題に強い弁護士に相談してみてください。

配偶者を責めない

配偶者を責めたくなる気持ちもあるかもしれませんが、つらいのは自分だけでなく相手もつらいということを考えましょう。女性側にも男性側にも周囲からのプレッシャーがあり、とくに女性側は治療の痛みに耐えなければならないつらさも抱えています。

たとえば不妊治療には、膣から子宮へカテーテルを入れて子宮や卵管の様子を調べる「卵管造形検査」や、体外受精のために膣から挿入した針で卵子を回収する「採卵」など、人によっては強い痛みを伴うものもあります。

不妊治療が実を結ばないことにはさまざまな原因がありますが、子どもができないのは誰のせいでもなく、相手を傷つけたところで結果が変わるわけではありません。むしろ一方を責めることで、夫婦仲がさらに悪化してしまう可能性があります。

すでに離婚を考えていたとしても、相手を責めるのではなく今後についてしっかりと話し合うことが重要です。

離婚条件を確認する

離婚する前に、離婚条件を確認することが重要です。離婚が決まったら、財産分与や年金分割といった離婚条件を明確にしましょう。

財産分与とは、婚姻中に夫婦が2人で築いてきた財産を離婚の際に分けることです。それぞれの貢献度に応じて分けるとされていますが、基本的には半分ずつ分け合います。財産分与の対象となる可能性があるのは、以下の財産です。

  • 現金・預貯金
  • 不動産
  • 自動車
  • 家具・電化製品
  • 退職金
  • 有価証券
  • 保険
  • 住宅ローン
  • その他経済的に価値のあるもの

預金などの金融資産だけでなく、不動産や車など婚姻期間中に購入したものであればすべて財産分与の対象になります。ただし、プラスの財産だけでなく、住宅ローンなどのマイナスの財産も「財産」に含まれる点にも注意が必要です。

一方で年金分割とは、婚姻中に納付した厚生年金の保険料納付記録を2人で分け合い、将来的にそれぞれ自分の年金として受け取れる制度です。

婚姻中に専業主婦(主夫)をしていたケースや扶養内で働いていた場合は、本来受給できる厚生年金に年金分割分が上乗せされるため、将来受け取れる年金額が増える可能性があります。

離婚後の生活について考えておく

離婚後は婚姻中より収入が減る可能性があるため、住む場所やお金など、離婚後の生活についてあらかじめ考えておく必要があります。

これまで住んでいたところに住み続けられる場合はよいですが、出ていくのであれば住む場所も考えなければなりません。離婚後の生活費についても、財産分与で確保できる場合もありますが、確保できそうになければ生活していくための手段を考えておく必要があるでしょう。

ケースによっては、以下のような公的支援制度が活用できます。

制度名 概要
女性福祉資金の貸付 配偶者がいない女性を対象とした貸付制度で、自立するために必要なお金を無利子または低金利で借りられる
国民年金保険料・国民健康保険料の減免 低所得であるなどの要件をクリアすれば一定期間納付の減額や免除を受けられる
生活保護 国が定める最低限生活に必要な収入うぃ下回る場合にもらえる給付金

上記のように、公的制度で支援を受けられる可能性があります。福祉局や役所で相談を受け付けているケースが多いため、離婚後の生活に不安がある場合は相談してみるのがおすすめです。

参照:東京都福祉局「女性福祉資金の貸付」

参照:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」

参照:厚生労働省「生活保護制度」

不妊以外の離婚原因を考える

不妊を理由に離婚したい場合は、不妊以外にも離婚原因がないか考える必要があります。不妊は法的な離婚事由にあてはまらないため、離婚裁判では不妊のみを理由とした離婚は基本的に認められません。

しかし、不貞行為やDV、長期間の別居など不妊以外にも離婚理由があり、それが法的な離婚事由にあてはまる場合は、裁判でも離婚が認められる可能性があります。

そのため、確実に離婚するためにも相手が法的離婚事由に当てはまる行動をしていなかったか振り返り、当てはまる行動があれば証拠を押さえておきましょう。

子どもが欲しい場合は養子縁組や里親制度を検討する

子どもはできないけどどうしても欲しいという場合は、養子縁組や里親制度を検討するという選択肢もあります。

養子縁組」とは、子どもを引き取った人がその子どもの親権者となる制度です。戸籍上も親子になり、「普通養子縁組」では養子縁組のあとも実の親とのつながりが消えませんが、「特別養子縁組」を行うと実の親とのつながりが消え、より実の親子と近い関係になります。

また、将来相続が発生した場合、子どもは親権者となった人の法定相続人になります。

それに対し「里親制度」では、養子縁組のように法的な親子関係にはなりません。訳あって実の親が育てられない状況にある子どもを一時的に預かり、育てる制度であるためです。戸籍上の親は実の親のままであるため、もし里親が亡くなっても子どもに相続権はありません。

なお、里親には自治体から里親手当や養育費が支給されますが、養子縁組にはそういった制度がありません。

血のつながりがない子どもを引き取り育てていくことは容易ではなく、覚悟が必要です。しかし、「血のつながりだけがすべてではない」という考え方もあります。無理に治療を続けるよりも、養子や里子を迎えることが夫婦にとってよい選択になる場合もあるでしょう。

一度検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

不妊が離婚原因になるかどうかや、不妊で離婚できるケース、不妊で離婚した場合の慰謝料について解説しました。

子どもを望む夫婦にとって、子どもができないことはつらく悲しいことです。しかしそのせいで夫婦仲が険悪になり、離婚というかたちで終わってしまうのはさらに悲しいことでしょう。

まず、「絶対に欲しい」のか「できなかったらできなかったでよい」のか、お互いが子どもについてどのように考えているのかをよく話し合い、片方だけが必死にならないようにすることが重要です。

どうしても子どもが欲しいけど授からないときは2人の間で期限を決め、養子縁組や里親制度を検討してみるのもひとつです。

不妊で離婚する場合によくある質問

不妊が原因で離婚はできますか?

結論からいうと、不妊が理由でも夫婦双方の合意があれば離婚できます。双方が合意しなかった場合、不妊は民法上の法的な離婚事由にあてはまらないため、裁判では原則として離婚は認められません。

ただし、不妊以外にも離婚理由がある場合や、婚姻時に不妊であることを隠されていた場合は、相手が妊活に非協力的な場合は離婚が認められる可能性があります。

不妊が原因で離婚した場合に慰謝料は請求できますか?

結論からいうと、不妊だけが原因で離婚する場合の慰謝料請求は難しいでしょう。不妊は身体的な問題であり、本人の意思でコントロールできるものではないため、慰謝料請求の対象となる不法行為にはあたりません。

夫婦双方が合意すれば慰謝料の請求は可能ですが、離婚裁判では不妊のみを理由とした慰謝料請求は認められません。ただし、不妊以外にも離婚理由がある場合や、婚姻時に不妊であることを隠されていた場合は、裁判でも慰謝料請求が認められる可能性があります。

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更新日 : 2024年11月18日
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