協議離婚とは当事者同士の話し合いだけで成立する離婚、調停離婚とは家庭裁判所で調停委員会を仲介して成立する離婚のことです。
そこで今回は、協議離婚と調停離婚の違いについて解説します。それぞれのメリットやデメリット、離婚にかかる費用の相場に加えて、離婚の種類や割合も紹介します。
配偶者との離婚を考えている場合や、どのような場合に協議離婚や調停離婚が向いているのか知りたい場合は、ぜひ参考にしてください。
協議離婚とは当事者同士の話し合いだけで成立する離婚、調停離婚とは家庭裁判所で調停委員会を仲介して成立する離婚のことです。
そこで今回は、協議離婚と調停離婚の違いについて解説します。それぞれのメリットやデメリット、離婚にかかる費用の相場に加えて、離婚の種類や割合も紹介します。
配偶者との離婚を考えている場合や、どのような場合に協議離婚や調停離婚が向いているのか知りたい場合は、ぜひ参考にしてください。
協議離婚と調停離婚には、どのような違いがあるのでしょうか。具体的な違いは次の通りです。
協議離婚とは、夫婦同士での話し合いによって離婚を成立させる方法です。
基本的には当事者のみで離婚の是非や財産分与、養育費、慰謝料といった離婚条件について話し合います。弁護士が話し合いを仲介したり、当事者の代理人として交渉を行ったりする場合もあります。
当事者間での話し合いによって離婚に合意した場合、離婚届に署名して役所に提出すれば、離婚が成立します。
日本で発生する離婚のうち、協議離婚の割合は約90%となっておりスタンダードな離婚方法といえます。
協議離婚について詳しく知りたい場合は、以下のページを参考にしてください。
調停離婚とは、夫婦のいずれかが離婚調停を申し立て、調停によって離婚を成立させる方法です。
夫婦間の協議では離婚に合意できない場合に、夫婦のいずれかが家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立てます。
調停委員が夫婦双方の話を聞きながら、離婚の是非や財産分与、養育費、親権といった離婚条件を調整し、双方に提案します。
調停によって夫婦が離婚に合意し、調停調書に記載された場合に離婚は成立し、調停を申し立てた人が市区町村役場に調停調書と離婚届を提出します。
調停によって離婚する場合、調停調書の謄本を添付して離婚届を提出しますが、離婚届には届け出た人の署名があれば離婚届は受理されます。
なお、家庭裁判所に離婚調停を申し立てる際には、夫婦関係調整調停申立書と夫婦の戸籍謄本が必要です。
離婚調停における調停委員とは、離婚調停に中立の立場で立ち会う人のことです。
離婚調停に参加する調停委員会は、家庭裁判所の裁判官1名と2名の調停委員(男女1名ずつが多い)の計3名で構成されます。
調停委員は非常勤の裁判所職員で、社会生活における知識や経験、専門知識などを有する人が選出されます。現役の弁護士や会社役員、大学教授が選出されるほか、現役を退いた方が務める場合もあります。
なお、調停委員は夫婦間の離婚についての主張を調整する役割を担いますが、どちらの言い分が正しい、もしくは正しくないかを判断するわけではありません。
そのため、調停委員の提案は、絶対に受け入れなければならないというわけではありません。お互いが離婚の是非や離婚条件に合意できない場合、調停は不成立となり、審判や裁判の手続きに移行することになります。
協議離婚と調停離婚の違いについて解説しましたが、離婚に伴う人やお金、手続きなどに関しても異なる点があります。
ここでは、協議離婚と調停離婚における細かい違いについて解説します。具体的には次のような違いがあります。
協議離婚 | 調停離婚 | |
---|---|---|
立会人 | 不要 | 必要 |
かかる費用 | 基本的に不要 | 手続き費用が必要 |
戸籍の記載内容 | 離婚日が記載される | 調停日が記載される |
作成する書類 | 離婚協議書 | 調停調書 |
強制執行 | 原則不可能 | 可能 |
離婚成立までの期間 | 話がまとまるまで | 数ヶ月~1年程度 |
離婚届提出時の証人 | 2名 | 不要 |
それぞれ詳しく解説します。
協議離婚と調停離婚では、立会人の有無による違いがあります。
協議離婚は基本的に当事者間での話し合いとなるため、立会人は必要ありません。
一方、お互いが感情的になると話し合いが進みにくい場合があります。
なお、離婚協議を円滑に進めたい場合や、配偶者の法定離婚事由があり慰謝料や親権、養育費について有利に交渉したい場合は、弁護士に仲介や代理交渉を依頼すれば、離婚協議に弁護士が同席するケースがあります。
離婚調停では調停委員が当事者の間に入って話し合いを行います。調停委員は社会生活における豊富な経験や知識を有しており、当事者間の調整役となってお互いの主張や言い分を聞いてくれるため、冷静に話し合うことができるでしょう。
協議離婚と調停離婚では、離婚にかかる費用が異なります。
協議離婚では、話し合いによる離婚への合意と、離婚届の提出によって離婚できるため、基本的に費用がかかることがありません。
ただし、離婚協議への対応を弁護士に依頼する場合は弁護士費用が発生するほか、離婚が合意に至った際に作成する離婚協議書を公正証書にする場合は、作成費用(手数料)が発生します。
協議離婚への対応を弁護士に依頼した場合は相談料や着手金が、弁護士の対応によって離婚が成立した場合は成功報酬が発生します。
成功報酬の目安として30万円程度が必要になるほか、依頼する内容によっては他にも費用が発生します。
また、離婚協議書を公正証書にする場合の費用は、目的の価額(財産分与や慰謝料、養育費などの金額)によって異なります。費用の詳細や目安は後ほど詳しく解説します。
一方、調停離婚では、調停の申し立てに手数料などの費用が発生するほか、家庭裁判所への交通費が必要になります。
また、離婚調停に弁護士を代理人として立てることも可能です。弁護士費用は依頼者負担となり、依頼する弁護士事務所や調停期日の回数によって金額は異なるものの、40万円~100万円程度の弁護士費用がかかります。
こちらも詳細は後ほど解説します。
協議離婚と調停離婚では、戸籍に記載される内容が異なります。
協議離婚の場合は、離婚した日と離婚届を提出したこと、役所が受理したことが戸籍に記載されます。
一方、調停離婚が成立した場合は、離婚した日に加えて「離婚の調停成立日」という文言が記載されるため、調停離婚であることが戸籍を見ればわかるようになっています。
何らかの事情で戸籍を誰かに見られる場合、離婚に際して揉めたという印象を持たれるケースもあるでしょう。
協議離婚と調停離婚では、作成する書類が異なります。
協議離婚で離婚が合意に至った場合、離婚協議書を作成します。
離婚協議書とは、夫婦で合意した離婚条件を整理して確認するための合意書です。財産分与や慰謝料、養育費の金額や支払い方法、支払いのタイミング、親権の所有者などについて記載します。
。
一方、調停によって離婚に合意した場合、調停調書が作成されます。
調停調書とは、離婚調停において協議した内容が記載された文書で、裁判における確定判決と同じ効力を持ちます。
なお、調停調書は家庭裁判所の書記官が作成します。
調停調書に記載された内容は、当事者の双方に守る義務が発生し、記載内容が守られない場合は、銀行口座や給与などを差し押さえる強制執行が実施可能になります。
また、調停調書は作成された後に変更(不服申し立て)ができません。そのため、調停においては自分の言い分を調停委員に明確に伝える必要があるほか、調停時の取り決め内容に漏れや誤りがないか、確認しなければなりません。
協議離婚と調停離婚では、強制執行の可否に違いがあります。
強制執行とは、債務者が債務を履行しない場合に、裁判所などが強制的に債務者の財産を回収して債権者に分配する手続きのことです。
離婚においては、財産分与や養育費、慰謝料など、離婚条件で金銭の支払いについて取り決めているにもかかわらず、相手が支払いを怠ったり、滞納したりする場合に、強制執行が行われることがあります。
協議離婚の場合、原則的に強制執行は行われません。ただし、次に挙げる状況では、相手に対して強制執行を行えます。
協議離婚に合意した際は、離婚条件や金銭の支払いなどの取り決めを記載した離婚協議書を作成するのが一般的です。
離婚協議書には強制力(執行力)がないため、離婚協議書を作成しただけでは強制執行ができません。
しかし、相手が金銭の支払いを怠った場合は、裁判を起こして離婚協議書を証拠として提出すれば、離婚協議書に同意していることが立証できるため、強制執行を行えるようになります。
ただし、協議離婚で強制執行を行うには裁判が必要になるため、実際に金銭が支払われるまでに相当の時間と、裁判に対応するための費用が発生します。
なお、離婚協議書を公正証書にしている場合、裁判の手続きを行うことなく、強制執行によって相手の財産を差し押さえられるようになります。
離婚協議書を公正証書にする場合、手数料を負担する必要がありますが、金銭の支払いが行われなかった場合に、多額の費用を負担することなく強制執行を行えるメリットがあります。
そのため、離婚相手からの金銭の支払いに不安がある場合は、離婚協議書を公正証書化することをおすすめします。なお、強制執行の申し立てには、手数料が4,000円程度、郵便代に5,000円程度が必要です。
次に、調停離婚が成立している場合は、強制執行が可能です。
調停離婚の合意内容が記載された調停調書が、確定判決と同一の効力を持つことが法律によって定められているからです。また、強制執行を実施するには債務名義という書類が必要になりますが、調停調書そのものを債務名義にすることが可能です。
協議離婚と調停離婚では、離婚が成立するまでの期間に差があります。
協議離婚の場合、離婚が成立するまでの期間は状況によって異なります。当事者同士が離婚の意思を持っている場合、話し合いは比較的スムーズに進むケースが多く、離婚成立までにそれ程時間はかかりません。
しかし、離婚条件の交渉が長引く場合は、離婚成立までに時間がかかるケースもあります。
特に、離婚時の金銭の支払いや親権争いは、当事者が譲らない場合もあるため、離婚成立までに1年以上かかるケースもあります。
一方、調停離婚は調停が始まってから、離婚が成立するまでに半年から1年程度かかります。また、離婚問題が調停まで発展している場合、協議の段階である程度時間がかかっているケースが多いため、離婚の話し合いを始めてから2年程度時間がかかるものと考えておいた方がいいでしょう。
協議離婚と調停離婚では、離婚届に署名する証人の数が異なります。
協議離婚では、離婚届に証人2人の署名が必要です。これは、婚姻届の条文が準用されるためです。
協議離婚届は当事者の双方に加えて、成年の証人2人以上の署名が必要であると、民法によって定められています。
一方、調停離婚では、家庭裁判所の裁判官が当事者の離婚の意思を確認しているため、離婚届の提出は必要であるものの、2人の証人は不要です。
調停を申し立てた人が調停調書と自分が署名した離婚届を役所に提出すれば離婚が成立します。
参考:
民法第739条2項・第763条・第764条・第765条
協議離婚を選択した場合のメリットとデメリットを紹介します。
協議離婚のメリットは早期解決がしやすく費用がかからないこと、デメリットは話し合いがまとまらず、後々トラブルになるリスクがあることです。
それぞれ詳しく解説します。
協議離婚のメリットは、離婚問題がスムーズに解決しやすく、費用も発生しにくいことです。
協議離婚は、当事者が離婚や条件に合意して、離婚届を提出して離婚が成立します。複雑な手続きを必要としないため、離婚条件の交渉がスムーズに完了すれば、離婚問題の早期解決が可能です。
なお、協議離婚では法定離婚事由以外の理由で離婚することも可能です。当事者同士が離婚に合意さえすれば、離婚の理由を問われることはなく、証明する必要もありません。
また、協議離婚では基本的に費用が発生しません。離婚届も役所で無料提供されており、離婚届の提出に手数料なども不要です。
そのため、協議離婚はスムーズかつ費用をかけずに離婚できる方法といえます。
ただし、離婚協議の仲介や交渉の代理、離婚協議書の公正証書化のサポートなどを弁護士に依頼した場合は、相応の費用が発生します。
協議離婚のデメリットは、当事者同士の話し合いがまとまりづらいことと、離婚後にトラブルになるリスクがあることです。
協議離婚は当事者同士の話し合いとなります。当事者の双方に離婚の意思がある場合や、離婚条件についての取り決める項目が少ない場合などは、話し合いがスムーズに進む場合があります。
しかし、どちらか一方が離婚を拒否している場合や、親権や金銭の支払いなどについて主張が異なる場合は、話し合いがまとまらず、離婚が成立に時間がかかることがあります。
また、離婚条件の細部を詰めずに離婚が成立した場合、後から水掛け論になってしまい、金銭の支払いが行われないなどのトラブルになることがあります。
離婚協議では、財産分与や養育費、慰謝料の支払い金額や支払い方法、支払いが遅れた場合の対応など、細かい点についても取り決める必要があるほか、合意した内容を離婚協議書にまとめたり、録音したりする必要があります。
なお、協議離婚では離婚の合意さえできていればいいため、メールや電話、手紙、LINEなどのチャットツールなどで合意した場合でも離婚が成立します。
ただし、相手からモラハラやDVなどを受ける危険がある場合、弁護士に交渉代行を依頼できます。
調停離婚にもメリットとデメリットが存在します。
調停離婚のメリットはスムーズな話し合いができ、離婚後のトラブルが少ないことです。一方、デメリットは平日の昼間に時間を作る必要があり、調停が長期化しやすいことです。
それぞれ詳しく解説します。
調停離婚のメリットは話し合いがスムーズに進むことと、離婚後にトラブルに発展するケースが少ないことです。
調停離婚は調停委員が当事者の双方の言い分を聞き取りながら、話し合いを進めていきます。基本的にはお互いが顔を合わせることがないため、感情的になりにくいほか、第三者である調停委員が間に入ることで、話し合いが進みやすくなるのです。
また、離婚調停では慰謝料や財産分与といった金銭面、親権の所在や面会交流の条件など、離婚条件を詳細まで決めていきます。
合意した離婚条件は調停調書に記載され、確定判決と同じ効力を持つため、離婚後にトラブルが起きることがほとんどありません。
相手からの金銭の支払いが遅れたり、支払いを拒否したりした場合も、調停調書が持つ効力によって強制執行も実施でき、相手に強制的に金銭を支払わせることも可能です。
調停離婚のデメリットは、平日の昼間に調停に参加するための時間の調整が必要になるほか、調停が長期化しやすく離婚が成立するまでに時間がかかることです。
離婚調停は家庭裁判所が開廷している時間にしか実施されないため、調停に出頭するには平日の昼間に時間を作る必要があります。
なお、調停が1回で成立することはほとんどないため、調停期日ごとに時間を調整しなければなりません。
また、調整された提案内容に納得できない場合は、離婚に合意する必要はありません。つまり、当事者の双方もしくはいずれかが、調停での話し合いの内容に納得しない場合、調停は長期化する可能性が高くなります。
状況によっては調停が不成立となり、審判や裁判へと移行することになります。この場合、調停にかかった費用や時間は無駄になり、さらに裁判にかかる費用の負担と時間の調整が必要になります。
次に協議離婚、調停離婚に必要な費用の相場について解説します。
協議離婚では費用がかかることはありませんが、弁護士に対応を依頼した場合や、公正証書を作成する場合に費用が発生します。
また、調停離婚では調停の申し立てや、調停に弁護士に同席してもらう場合にも費用を負担しなければなりません。
具体的な費用の相場は次の通りです。
それぞれ詳しく解説します。
協議離婚の場合、基本的には費用が発生しません。しかし、弁護士に協議の仲介や交渉の代理を依頼した場合や、公正証書を作成する場合は費用が発生します。
協議離婚の仲介を弁護士に依頼し、離婚が成立した場合に発生する弁護士費用(成功報酬)は約30万円です。
また、依頼内容によって、成功報酬の金額が変動する場合があります。協議離婚に関係する内容と報酬の算出方法の一例は次の通りです。
上記の費用に加えて、弁護士への相談料や着手金、日当、実費などがかかります。それぞれの費用の相場は次の通りです。
離婚協議書を公正証書にする場合にかかる費用は、目的の価額(財産分与や慰謝料、養育費などの金額)によって異なります。目的の価額ごとの公正証書作成に必要な手数料は次の通りです。
慰謝料や養育費などの金額 | 手数料(公正証書の作成費用) |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円超え1,000万円以下 | 17,000円 |
1,000万円超え3,000万円以下 | 23,000円 |
3,000万円超え5,000万円以下 | 29,000円 |
5,000万円超え1億円以下 | 43,000円 |
1億円超え3億円以下 | 43,000円に5,000万円までごとに13,000円を加算 |
※出典:
日本公証人連合
また、作成する公正証書の枚数が4枚以上となる場合は、1枚当たり250円の手数料が追加で必要です。
なお、離婚協議書を公正証書にする際、弁護士や行政書士などに作成を代行してもらう場合にも費用が発生します。公正証書の原案作成の助言を弁護士から受ける場合は5万円~10万円程度、公正証書作成手続きへの同席には3万円~5万円程度が必要です。
調停離婚では、調停手続きのために次の費用が発生します。
これらを合計すると、調停の申し立てや実費として、数千円程度の費用が必要になると考えておきましょう。
また、家庭裁判所への交通費も必要です。一般的に離婚調停は複数回行われるため、自宅と家庭裁判所の往復の交通費が、調停の回数分発生します。
離婚調停での対応を弁護士に依頼した場合も、弁護士費用が発生します。
弁護士費用の目安として、着手金に20万円~50万円程度、離婚が成立した場合の成功報酬として20万円~100万円程度(財産分与や慰謝料、養育費、親権の獲得などの報酬を含む)、弁護士の日当や実費として5万円程度の費用がかかると考えておきましょう。
ただし、弁護士事務所によって金額が異なるため、時間に余裕があれば見積もりを出してもらうなど、弁護士事務所ごとの費用を比較することをおすすめします。
なお、協議の段階から弁護士に依頼している場合は、着手金が少し安くなる可能性があります。
協議離婚と調停離婚は性質が異なるため、夫婦間の状況によって向き・不向きがあります。
ここでは、協議離婚に向いているケースと、調停離婚に向いているケースについて解説します。
協議離婚に向いているのはお互いに歩み寄りが見られる場合です。一方、調停離婚に向いているのは、離婚条件が全く合わない場合です。
それぞれ詳しく解説します。
夫婦がお互いに歩み寄って離婚についての話し合いができる場合は、協議離婚が向いています。
離婚協議が円滑に行える場合、時間や場所を選ばずに話し合いができるほか、離婚にかかる費用を大幅に抑えられるというメリットがあります。
また、協議離婚では話し合い次第では離婚が早期に成立する場合もあります。できるだけ簡単な手続きで済ませたい場合や、離婚成立に時間をかけたくない場合は、協議離婚を選択した方がいいでしょう。
ただし、協議離婚を選択する場合は、後からトラブルに発展しないようにするために、離婚条件など合意している内容を記載した離婚協議書を作成し、公正証書化しておくことをおすすめします。
離婚条件についてお互いの条件が合わない場合は、調停離婚の方が向いています。
このような状況において、当事者同士の話し合いのみで離婚問題を解決するのは、かなり難しいでしょう。
離婚調停を申し立て、第三者である調停委員に間に入ってもらった方が離婚問題を解決しやすくなるはずです。
また、配偶者と直接対面すると暴言や暴力を受ける可能性がある場合や、相手が話し合いに応じようとしない場合も、調停離婚を選択した方が賢明です。
ただし、離婚調停は時間的な制約が大きく、平日の昼間に調停に参加する時間を確保する必要があります。また、離婚成立までに少なくとも半年から1年程度かかることを覚悟しておきましょう。
ここまで協議離婚と調停離婚の違いについて解説してきました。ただし、離婚方法は協議離婚や調停離婚だけではありません。
ここでは、離婚の種類とそれぞれの割合について解説します。
離婚方法の種類には、協議離婚、調停離婚、審判離婚、判決離婚、和解離婚、許諾離婚があります。このうち、協議離婚が選択されるケースが最も多く、その割合は約90%です。
それぞれ詳しく解説します。
離婚方法には、次に挙げる6種類があります。
なお、審判離婚と和解離婚、許諾離婚は、まとめて裁判離婚に含まれます。
協議離婚と調停離婚は解説した通りですが、調停によって離婚が成立しない場合は、審判離婚もしくは判決離婚を目指すことになります。
審判離婚とは、調停が行われることを前提に、調停に代わる審判によって成立する離婚を指します。
一般的に、調停で離婚が成立しなければ裁判に進みます。しかし、離婚に合意ができている場合に、例外的に調停に代わる審判を行えることが法律によって定められています。
審判離婚に至るケースの一例は次の通りです。
ただし、審判離婚は2週間以内に異議を申し立てた場合、無効となります。
判決離婚とは、裁判所の判決によって成立する離婚のことで、裁判離婚と呼ばれることがあります。
判決裁判では、夫婦のうち離婚を求める方が原告となり、法定離婚事由があることを主張する裁判(離婚裁判)を起こします。
法定離婚事由とは、民法において離婚裁判を提起できる離婚の原因のことです。法定離婚事由には次のものが挙げられます。
法定離婚事由を証明する証拠を提出し、双方の主張を聞いたうえで離婚に値するかどうかが判断されます。
判決に対しては上訴(上級裁判所への控訴や上告)が可能ですが、期限までに上訴が行われなかった場合は、判決が確定します。
離婚が認められる判決が出た場合、確定日から10日以内に判決による離婚の届出を行えば離婚は成立します。
判決離婚(裁判離婚)は判決に強制力がある点がメリットとなりますが、一方で法定離婚事由が認められる必要がある点がデメリットです。
また、判決離婚に至るためには、離婚調停を先に申し立て、離婚調停が不成立(不調)となることが必要になり、更に訴訟提起してから判決まで期間がかかりますので、トータルで見ると離婚成立までにかなりの時間を要するという点もデメリットといえます。
和解離婚とは、離婚裁判を起こしてから、和解することで成立する離婚のことです。
分かりやすく言い換えれば、訴訟中に当事者が話し合い、離婚を成立させる方法となります。
和解離婚の内容は、裁判の調書に記載され、確定判決と同じ効力を持ちます。
なお、裁判における調書とは、訴訟手続きなどの内容や経過を公に証明するために作成される公文書のことです。
裁判上で原告と被告の双方が話し合い、和解が成立した場合は、その時点で離婚裁判が終了し、離婚が成立します。
許諾離婚とは、離婚裁判の被告側(離婚を求められている側)が原告側(離婚を求めている側)の離婚請求を全面的に受け入れて成立する離婚のことです。
この場合も、許諾離婚が成立した時点で裁判は終了して、離婚が成立することになります。
なお、許諾離婚では、離婚のみを争っていて、争いを長引かせたくない場合や、避けたい場合に選択される方法です。一方、和解離婚は離婚条件も含めた和解が必要になります。
厚生労働省が発表している「令和4年度 離婚に関する統計の概況」には、令和2年時点での離婚の種類別の年次推移データが公開されています。
日本国内で成立した離婚の割合は次の通りです。
また、裁判離婚の内訳は以下のようになっています。
出典:
厚生労働省「令和4年度 離婚に関する統計の概況」
このように、成立した離婚のうち、約9割が協議離婚となっています。
また裁判離婚のうち、8.3%が調停離婚となっており、協議離婚に次いで多くなっています。なお、調停離婚と和解離婚の割合は減少傾向にあり、審判離婚の割合は増加傾向にあります。
また、許諾離婚については割合が少なく、結果に表示されていません。
協議離婚と調停離婚がどのようなものかを理解していても、それぞれがどのような流れで成立に向かうのか知らない人が多いかもしれません。
ここでは、協議離婚と調停離婚の大まかな流れについて解説します。
協議離婚の場合、当事者のいずれかが離婚の意思を伝え、離婚条件を話し合って合意した後に、離婚届が受理されれば離婚が成立します。
調停離婚では、当事者のいずれかが離婚調停を申し立て、調停が成立すれば離婚が成立、不成立の場合は離婚も不成立となります。
それぞれ詳しく解説します。
協議離婚の流れは以下の通りです。
夫婦のいずれかが離婚を決意した場合、配偶者に対して離婚の意思を伝えます。口頭やメール、内容証明郵便などを用いて伝えられるケースが多いでしょう。
次に、配偶者と離婚の可否や離婚条件について話し合います。特に、離婚条件の取り決めは重要です。離婚条件に取り決めについて話し合うべき内容は次の通りです。
財産分与や慰謝料、年金分割、養育費といった金銭的な取り決めや、子どもとの面会交流の頻度・条件は、その後の関わりや生活にも影響するため、支払い金額のほか支払い方法、支払いを怠った場合の対応など、詳細に決める必要があります。
また、夫婦間に子どもがいる場合は、親権をどちらが持ち、養育費をどちらが払うのかも明確に決めなければなりません。
離婚の可否や離婚条件に双方が合意した場合は、合意内容について記した離婚協議書を作成します。離婚後にトラブルに発展しないよう、離婚協議書は必ず作成しましょう。
なお、相手からの金銭面での支払いに不安がある場合は、離婚協議書を公正証書化することをおすすめします。前述の通り、公正証書化することで裁判を経ずに強制執行手続きがスムーズに行えるためです。
ただし、夫婦間での話し合いでは離婚条件についても揉めるケースが多く、詳細を決めるまでに時間がかかりやすいといえます。
そのため、条件交渉に嫌気がさして、条件が決まっていない状況で相手が離婚届を提出してしまうケースがあります。そのような場合に備えて、事前に離婚届不受理申出をしておくと、勝手に離婚が成立しないため安心です。
離婚協議書の作成が完了し、内容に不備がないことをお互いが確認すれば、離婚協議は終了です。後は離婚届を提出して受理されれば、離婚は成立します。
離婚届の提出先は、夫婦の本籍地の役所もしくは夫婦のいずれかの住民登録地の役所となります。本籍地の役所に離婚届を提出する場合は、本人確認書類の提示が求められます。
一方、夫婦いずれかの住民登録地の役所に提出する場合、離婚届に加えて夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)の提出が必要です。
なお、離婚届が受理された場合、届出日が法律上の離婚日となります。
調停離婚の流れは次の通りです。
離婚調停は、当事者のうち離婚を求める方が、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。申立て先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。
離婚調停の申立てには次の書類が必要です。
なお、調停の申立書は、裁判所の公式Webサイトからダウンロード可能です。また、調停の申立てには1,200円(収入印紙)と、連絡用の郵便切手代の負担が必要です。
申立てが受理された場合、第1回の調停期日が記載された裁判所からの呼出しが当事者双方に送付されるので、指定された期日に調停に出席します。
その後、複数回の調停を経て、当事者の双方が離婚の可否や離婚条件に合意すれば、調停は成立・終了となります。調停成立となった場合は、調停調書が作成され交付されます。
調停が成立した日から10日以内に調停調書と離婚届を役所に提出し、受理されれば離婚は成立です。
なお、双方が離婚の可否や離婚条件に合意できない場合は、調停は不成立となり、不成立調書が作成・交付され終了します。その後、離婚問題の決着を望むのであれば家庭裁判所に訴訟提起(離婚裁判)して争うことになります。
協議離婚は当事者間の話し合いによって離婚の可否や離婚条件が決められるほか、離婚そのものに費用が発生しないため、最も選択されやすい離婚方法となっています。
ただし、次に挙げる点には注意しなければなりません。
それぞれ詳しく解説します。
協議離婚を選択する場合、話し合いの前に自分の考えや主張をまとめて準備しておくことが大切です。
離婚について話し合っていると、感情的になりやすく、何を決めて何を実現しなければならないのかわからなくなってしまうからです。
できるだけ冷静に話し合うためにも、事前の準備はしっかりしておきましょう。
また、自分は冷静に対処できたとしても、配偶者が感情的になりやすい場合、どのような行動に出るかわかりません。最低限の荷物をまとめておき、実家や友人の家などに逃げられるよう手筈を整えておくといいでしょう。
そして、協議内容を録音することも重要です。
話し合いが複数回に渡る場合、録音しておけば前回までに話し合った内容を確認できます。また、離婚調停や離婚裁判に発展しても、証拠として提出可能です。
録音する場合は相手の同意を得ておくとトラブルになりにくいですが、同意なしで録音したところで問題にはなりません。
例えば、相手の不倫や不法行為によって離婚を希望する場合、相手は録音に同意しないことが多いでしょう。
しかし、相手を暴行・脅迫して無理やり自白させたり、誰かの自宅に忍び込んで盗聴したりするといった、反社会的な手段での録音でなければ問題はなく、無断での録音はこれに該当せず、証拠としても採用された判例もあります。
また、相手に黙って録音することは、プライバシーの侵害には当たらず、違法行為でもありません。録音をした音声データを悪用したり、流出させたりした場合に初めてプライバシーの侵害になる可能性があります。
離婚について協議する場合は、相手と2人きりにならない場所で話し合うようにしましょう。
2人だけの空間で話し合いをする場合、相手の暴力や暴言、脅迫などを受ける恐れがあるためです。
特に、相手から暴力を受ける可能性がある場合は、ファミリーレストランのように人目のあるところを話し合いの場所に選択するようにしましょう。
また、信頼できる知人に立ち会ってもらうのも有効です。
万が一、相手の暴力や脅迫などによって不利な条件での離婚に合意させられた場合(自身の意思に反して承諾した場合)、無効にできる可能性があるため、弁護士に相談しましょう。
協議離婚では、子どもに十分配慮しなければなりません。
子どもの前で離婚の話し合いをするのはやめましょう。当事者同士での離婚の話し合いでは、お互いに感情的になるケースもあり、声を荒らげたり、激しく言い争ったりすることも考えられます。
子どもにそのような姿を見せると、悪影響になる恐れがあります。子どものいない時間に話し合ったり、自分の両親に預けたりするなど、子どものことも考えながら、協議に臨みましょう。
調停離婚を選択する場合は、次に挙げるポイントに注意しましょう。
それぞれ詳しく解説します。
調停離婚では、冷静な対応が求められます。
感情的になり、相手の批判や悪口を展開すると、調停委員からの印象が悪くなる恐れがあり、調停が不利になるケースがあるためです。
また、調停委員に対して怒鳴りつけた場合や、暴言を吐いた場合も、調停員からの心証が悪くなり、調停やその後の裁判にも悪影響を及ぼす可能性があります。
話し合いをできるだけスムーズに進めるためには、調停中の冷静な対応が何よりも重要です。
また、調停を申立てられた側が配偶者に離婚調停中に接触したり、連絡を取ったりするのも避けるべきです。
調停中には調停員が双方の話を聞きながら手続きを進めていきます。そのため、話がなかなか進まずにイライラして、配偶者と直接話を付けたいと考える人がいるかもしれません。
しかし、調停を申立てた側は、あなたと直接やりとりをしたくないために調停を申立てている可能性があります。また、調停を申立てた側に弁護士が付いている場合も、直接のやりとりを拒否する意思表示とも考えられます。
連絡をしてくることを認めているケースを除き、調停中は配偶者との接触をしないようにしましょう。
離婚調停では、相手の主張や調停委員の提案に簡単に合意してはいけません。
合意する内容によっては、不利な条件での離婚を強いられる可能性があるためです。
そもそも離婚調停とは調停委員を挟んだ話し合いによって離婚や離婚条件の合意を目指すものです。話し合いがまとまれば調停は成立しますが、まとまらなければ不成立となるだけです。
また、最終的な合意内容が法的に妥当であるかどうかよりも、当事者の双方が納得し合意しているかどうかの方が重要になります。
例えば、親権を争う場合、裁判では妻を親権者にしているケースが多いですが、調停で双方が合意すれば夫が親権者になることも可能です。
調停委員のいうことは絶対ではないため、自分が譲れないと考えるときは、提案に対して安易に合意してはいけません。
もちろん、相手の言い分をすべて呑んでしまうと、離婚条件はどんどん不利になります。自分が絶対に譲れないポイントを整理しておき、相手の言い分によっては譲歩してもいいポイントを設けておくことが大切です。
調停が成立してしまうと、後から覆すことはほとんど不可能となるため、自分が納得できない場合は合意せず、自らの考えやスタンスを主張するようにしてください。
離婚調停は、何があっても無断欠席してはいけません。
その後の話し合いが不利になる可能性が高いためです。また、正当な理由なく欠席した場合は、5万円以下の過料が課せられる恐れもあります。
離婚調停は1カ月から2カ月に1回程度の頻度で、平日の日中に実施されます。調停がある日を調停期日といい、当日に当事者は必ず裁判所に出頭しなければならないのです。
特に第1回の期日は裁判所が一方的に期日を指定するため、すでに予定が入っていて調整が難しいというケースも発生します。
そのような場合は家庭裁判所に連絡を入れましょう。事情を正確に伝えて当日の出頭が難しいことを伝えれば、調停期日を別日に調整してもらえます。
無断欠席は相当な不利を被ることになることを理解しておきましょう。
夫婦間で発生した離婚問題を迅速に解決したい場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。
相手のペースになることなく離婚条件の交渉ができるほか、離婚に関する法的で有利なアドバイスを受けられるためです。
協議離婚では、相手が話し合い応じてくれないケースがありますが、弁護士に対応を依頼すると相手に対して離婚について真剣に考えていると意思表示ができるようになります。
また、離婚条件についてもこちらの主張を明確に主張してくれるため、交渉をスムーズに進められるでしょう。
配偶者からモラハラやDVを受けていて当事者同士で交渉することに不安を抱えている場合も、弁護士に依頼すれば交渉を代行してもらえるため、精神的な負担を軽減できるほか、漏れなく離婚条件を取り決められるなどのメリットがあります。
調停離婚においても、弁護士に調停への同席を依頼すれば、調停委員に対して論理的にこちらの考えを主張してもらえるほか、相手側の主張の適切性も判断してもらえます。
その他、必要な書類の準備も任せられるため、離婚調停に割くべき時間や手間を省けるというメリットもあります。
弁護士費用が発生するというデメリットこそあるものの、有利な条件での離婚や、離婚問題の早期解決が可能になる点を考えられれば、得られるメリットは大きいはずです。
離婚問題の解決が必要な場合は、弁護士への依頼を検討してみてください。
協議離婚と調停離婚は、離婚するための方法としては共通しているものの、それぞれの手続きや取り組みは全く異なります。
どちらの方法にもメリットとデメリット、向き・不向きがあるため、事前に理解しておいた方がいいでしょう。
また、協議離婚も調停離婚も当事者だけで対応することも可能ですが、早期解決を図りたい場合は弁護士に対応を依頼するのがおすすめです。
本記事を参考に、協議離婚と調停離婚の内容や手続きを理解し、離婚問題を解決してください。