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2024年10月現在

離婚協議書の書き方を徹底解説!効力や公正証書にする必要性も紹介

離婚協議書 書き方

離婚協議書とは、離婚時に夫婦で話し合って双方が合意した内容を書面にしたものです。

離婚時は、慰謝料や財産分与、子どもの養育費や親権などさまざま条件を決める必要があります。その際、決定事項を証明できる書類がなければ、後に言った言わないの水掛け論になりトラブルに発展する可能性が高いです。そのため、取り決めた内容は証拠として離婚協議書にまとめておくことが大切です。

しかし作成するタイミングや書き方などが分からず、なかなか作成が進まないケースも多いでしょう。

離婚協議書の作成は離婚前後のどのタイミングでも可能ですが、離婚後に作成すると相手と連絡が取れなくなり、慰謝料や養育費を支払ってもらえない可能性があるため、連絡が取れるうちに早めに作成しておくことが重要です。

ただし、一度お互いが同意した離婚協議書の決定事項は、原則変更できません。早く作成したいあまりに決めるべき条件が抜けていたり、納得のいかない条件で協議書を作ってしまっては本末転倒です。そのため、離婚協議書の作成の際は、早めに弁護士に相談し、話し合いにも参加してもらうのがおすすめです。

本記事では、離婚協議書の書き方や効力、公正証書にする必要性について詳しく解説します。離婚協議書の作成を検討されている方はぜひご覧ください。

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南陽輔 弁護士
監修
南 陽輔(弁護士)

離婚協議書の書き方【サンプルを活用しよう】

離婚協議書とは、離婚の方法や諸条件など夫婦で話し合って取り決めた内容を記した書面です。離婚協議書を作成しておけば、夫婦双方が話し合って合意したことを証明できるため、後で「言った」「言わない」の言い争いを防止できますし、裁判沙汰になった場合は大切な証拠資料として使えます。

離婚協議書に決まった形式はなく、記載する内容も夫婦で自由に決められますが、どのように書けばいいのか分からない場合はサンプルを活用しましょう。離婚協議書に記載すべき主な条項としては、下記のものが挙げられます。

  • 離婚に合意した旨
  • 親権者の指定
  • 養育費の支払い
  • 面会交流について
  • 慰謝料の有無や金額
  • 財産分与の内容
  • 年金分割について
  • 通知義務
  • 禁止条項
  • 清算条項
  • 公正証書作成について
  • 日付、署名、押印

ここからは、上記の各条項についてそれぞれ詳しく解説していきます。

離婚に合意した旨

まずは、夫婦双方が離婚に合意した旨を記載します。

(離婚の合意)
第1条
夫●●●●(以下、「甲」)と妻●●●●(以下、「乙」)は、協議離婚することに合意し、下記の通り離婚協議書を取り交わした。引用元 離婚協議書の雛形と文例の見本 | 離婚協議書・離婚公正証書相談室-全国対応-

続いて、離婚届の提出日について記載します。

(離婚届)
第2条
乙は各自署名捺印した離婚届を令和○○年○○月○○日までに、○○市役所に提出するものとする。引用元 離婚協議書の雛形と文例の見本 | 離婚協議書・離婚公正証書相談室-全国対応-

夫婦で話し合って決める協議離婚の場合、離婚届を提出して役所で受理されなければ離婚は成立しません。そのため、離婚の当事者や離婚届の提出日は明確にしておきましょう。その際、離婚届の提出日は離婚協議書の作成が完了してからあまり間があかないように設定するのがお勧めです。

理由として、実際に提出するまでの間に相手の気が変わり、離婚条件の変更や撤回を交渉される可能性があるためです。離婚協議書の作成後は速やかに離婚届が提出できるよう、離婚届用紙の入手から記入まで済ませておきましょう。

離婚届用紙は、お住まいの役所で受け取れるほか、役所のホームページからも無料でダウンロードできます。ただし、印刷の際はA3用紙に設定して印刷する必要がある点に注意してください。

親権者の指定

未成年の子どもがいる場合は、誰が親権者になるのか話し合って決める必要があります。離婚協議書には、誰が誰の親権者になるのかしっかりと記載しておきましょう。

(親権者及び監護権者)
第3条
甲乙間に生まれた未成年の子である長男▲▲▲▲(令和○○年○月○日生、以下「丙」)、次男▲▲▲▲(令和○○年○月○日生,以下「丁」)、及び長女▲▲▲▲(令和○○年○月○日生,以下「戊」)の親権者を乙と定める。引用元 離婚協議書の雛形と文例の見本 | 離婚協議書・離婚公正証書相談室-全国対応-

親権者と監護権者を別々に指定した場合は、監護権者についても必ず記載しなければなりません。

監護権者とは、実際に子どもと一緒に住んで育てる人のことです。日本では共同親権が認められていないため、夫婦のどちらか一方しか親権者になれません。通常は親権と監護権はセットで夫婦のどちらかが獲得します。

しかし親権・監護権ともに片親に偏ると、離婚後に相手が子どもとの面会交流をさせてくれなかったり、物理的に関わりが減ることから養育費を滞納されたりするリスクがあります。

親権者と監護権者を別々に指定し、どちらも子どもの親として権利がある状態で離婚すれば、面会交流や養育費の条件を守ってもらえる可能性が高いです。そのため、親権争いで離婚協議が進まない場合にもおすすめな選択肢であるといえます。

2 乙は丙、丁、及び戊の監護権者となり、それぞれが成年に達するまで、これを引き取り養育する。引用元 離婚協議書の雛形と文例の見本 | 離婚協議書・離婚公正証書相談室-全国対応-

親権者が監護権者を兼ねる場合でも、確認の意味で監護権者について記載しておいた方が良いでしょう。

養育費の支払い

未成年の子どもがいる場合、親権を持たない親は子どもが社会的に自立するまで養育費の支払い義務が生じます。そのため、養育費の支払いについても夫婦で話し合い、下記の4項目についての合意内容を離婚協議書に記載しておきましょう。

  • 養育費の金額
  • 支払い期限
  • 支払い方法(銀行振込、現金書留など)
  • 支払い期間(子どもが成人するまで、子どもが大学を卒業するまでなど)

養育費の金額や支払い条件は法律上の決まりがないため、夫婦で話し合って双方が合意すれば自由に決められます。もし、話し合いがまとまらなければ、裁判所が公開している「養育費算定表」を参考にして決めましょう。なお、養育費は子どもの大切な権利なので、養育費の支払いを行わないという合意内容は法的に無効となる可能性があります。

また、子どもが複数いる場合はそれぞれ条項を設け、誰に対して毎月いくら払うのか明確にしておきましょう。

(養育費)
第4条
甲は乙に対し丙の養育費として令和○年○月から平成○年○月まで、毎月末日限り、金○○万円を、丁の養育費として令和○○年○月から丁が成年に達する日の属する月まで、毎月末日限り金○万円を、戊の養育費として令和○○年○月から戊が成年に達する日の属する月まで、毎月末日限り金○万円の合計金○○万円を乙の指定する口座へ振込送金の方法により支払う。

2 振込み手数料は甲の負担とする。

3 甲乙は、上記に定めるほか、丙、丁、及び戊に関し、入学や入院等、特別な費用を要する場合は、互いに誠実に協議して分担額を定める。

4 上記養育費は、物価の変動その他の事情の変更に応じて甲乙協議のうえ増減できる。引用元 離婚協議書の雛形と文例の見本 | 離婚協議書・離婚公正証書相談室-全国対応-

面会交流について

未成年の子どもがいる場合は、子どもとの面会交流についても離婚協議書で詳しく定めておきましょう。

  • 面会交流の頻度
  • 面会交流の時間
  • 面会交流の場所
  • 親権者の付き添いの有無
  • 子どもや元夫婦の連絡方法(電話・LINE・メールなど)
  • 子どもの受け渡し場所や方法
  • 学校行事への参加(運動会・授業参観など)
  • 交通費や食費などの費用負担

面会交流も養育費と同様に子どもの大切な権利なので、面会交流は原則として拒否できません。ただし、「相手が子どもに暴力をふるう人だった」「子どもが面会交流を拒否している」など、子どもの福祉や利益を守るための正当な理由があれば、面会交流の拒否が可能です。

(面接交渉権)
第15条
甲の丙、丁、及び戊に対する面接交渉については、以下の内容とする。
1 面接は月に○回、○時間以内とし場所は甲乙協議の上決定する。
2 乙は、甲が丙、丁、及び戊と○ヶ月に1回、宿泊を伴う面接交渉をすることを認める。
3 面接時は事前に甲は乙に連絡するものとする。引用元 離婚協議書の雛形と文例の見本 | 離婚協議書・離婚公正証書相談室-全国対応-

また、面会交流を行うなかで子どもから離婚協議書に記載のない要望をされる可能性もあります。面会交流はあくまでも子どもの希望や体調を最優先して行うのが重要なため、臨機応変に対応できるように大まかにまとめておくのがおすすめです。

慰謝料の有無や金額

夫婦のどちらか一方の不法行為(不倫・暴力・モラハラなど)が原因で離婚に至った場合は、不法行為をした相手に対して慰謝料を請求できます。慰謝料を請求する場合は、慰謝料の支払いについても夫婦で話し合い、合意内容を離婚協議書に記載しておきましょう。慰謝料の条項では、主に下記の内容について記載します。

  • 慰謝料の金額
  • 支払い方法(一括払い・分割払いなど)
  • 支払い期限
  • 支払い手数料の負担

慰謝料の金額は婚姻期間や不法行為の内容、子どもの有無など事情によって大きく異なりますが、一般的な相場は50~300万円です。

(慰謝料)
第5条
甲は、乙に対し、慰謝料として金○○○万円の支払義務があることを認め、これを○○回に分割して、令和○○年○月から令和○○年○月まで、毎月末日限り金○万円を乙の指定する金融機関の預貯金口座に振り込んで支払う。

2 振込み手数料は甲の負担とする。

3 甲について、下記の事由が生じた場合は、乙の通知催告を要さず、甲は、当然に期限の利益を失い、乙に対して残金を直ちに支払う。
(1) 分割金の支払いを1回でも怠ったとき。
(2) 他の債務につき、強制執行、競売、執行保全処分を受け、或いは公租公課の滞納処分を受けたとき。
(3) 破産、民事再生手続開始の申立てがあったとき。
(4) 手形交換所の取引停止処分を受けたとき。
(5) 乙の責めに帰することができない事由によって、所在が不明となったとき。引用元 離婚協議書の雛形と文例の見本 | 離婚協議書・離婚公正証書相談室-全国対応-

なお、慰謝料はなるべく一括払いで受け取るのがおすすめです。理由として、分割払いだと支払いが終わるまで相手との関わりが続くほか、途中で支払いが滞り離婚後にトラブルになる可能性が高いことがあげられます。

そのため、分割払いの場合は離婚協議書に期限の利益の喪失や遅延損害金に関する条項を記載するのがおすすめです。期限の利益の喪失とは、期限までは慰謝料の支払いを待ってもらえるという支払う側にとっての「利益」が失われることです。

期限の利益が喪失すると、慰謝料を受け取る側は遅延した分と残りの慰謝料を一括で請求できるようになります。

一度でも支払いが遅れると残りの慰謝料を一括で支払わなければならないという意識から、滞納されにくくなるため条項に盛り込むことをおすすめします。

財産分与の内容

婚姻期間中に築き上げた財産は、「誰が稼いだか」「誰の名義か」に関わらず夫婦の共有財産となるため、離婚時の財産分与の対象となります。財産分与が発生する場合は、財産分与の対象となる財産を全て洗い出し、誰がどの財産を引き継ぐのか夫婦での話し合いから始めましょう。財産分与の条項では、主に下記の内容について記載します。

  • 財産分与の対象となる財産
  • 財産分与として相手に譲り渡す財産
  • 支払い期限
  • 支払い方法(一括払い・分割払いなど)

なお、婚姻前や別居期間に築き上げた財産や、婚姻期間中に相続・贈与を受けた財産は財産分与の対象外になります。

(財産分与)
第7条
甲は乙に対し、財産分与として金○○万円を令和○○年○月○日までに乙の指定する口座へ振込送金の方法により支払う。

2 振込み手数料は甲の負担とする。引用元 離婚協議書の雛形と文例の見本 | 離婚協議書・離婚公正証書相談室-全国対応-

また、不動産を財産分与して所有者の名義が変わる場合、不動産屋登記の名義変更手続きを行う必要があります。その際、「登録免許税」がかかるため、どちらが支払うのか決めておきましょう。

登録免許税は名義変更の理由によって金額が変化し、離婚の場合は固定資産評価額の2%と定められています。仮に5,000万円の不動産で登録免許税を支払う場合は、100万円かかる計算です。

固定資産評価額は、毎年4月に税務署から固定資産税の納税通知書とともに送付される「課税証明書」に記載されています。離婚を考えている場合は、送付された課税証明書をなくさないように取っておきましょう。

課税証明書が手元にない場合は、不動産が所在する役所で「固定資産税評価証明書」を申請すれば確認できます。その際、不動産名義人と名義人以外が申請するケースで必要な書類が異なります。

申請者 必要書類
不動産名義人本人 ・申請書類
・本人確認書類
不動産名義人以外(家族) ・申請書
・申請者の本人確認書類
・名義人との関係や同居していることが分かる書類(住民票や戸籍謄本)

離婚成立前であれば家族として申請できるため、なるべく早めに取得しておくのがおすすめです。

年金分割について

年金分割とは、婚姻期間中に納付した厚生年金の納付実績を夫婦で分割できる制度です。夫婦2人もしくはどちらか一方が厚生年金に加入している、もしくは過去に加入していた場合は、最大で50%の年金分割が可能です。

そのため、婚姻中は専業主婦で年金を納めていなかったとしても、年金分割を利用すれば夫が支払っていた年金のうち最大半分まで妻が支払ったものとして離婚可能です。

年金分割を行う場合は、離婚協議書に年金の按分割合や夫婦の生年月日、基礎年金番号などを記載しましょう。

(年金分割)
第14条
甲(第1号改定者)及び乙(第2号改定者)は厚生労働大臣に対し、厚生年金分割の対象期間に係る被保険者期間の標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合を0.5とする旨合意し、乙は、離婚届提出後2箇月以内に厚生労働大臣に対し、合意内容を記載した公正証書の謄本を提出して当該請求を行うこととする。

甲(平成○○年○月○日生)(基礎年金番号○○-○○○○○)
乙(平成○○年○月○日生)(基礎年金番号○○-○○○○○)引用元 離婚協議書の雛形と文例の見本 | 離婚協議書・離婚公正証書相談室-全国対応-

通知義務

養育費や慰謝料を請求する場合や、子どもとの面会交流を実施する場合は、離婚後も相手と連絡を取れるよう、離婚協議書に通知義務の条項を盛り込んでおきましょう。通知義務とは、住所や連絡先、勤務先などに変更があった場合、それを相手に書面で通知しなければならないというものです。

(通知)
第16条
甲及び乙は、住所、居所、連絡先を変更したときは、遅滞なく書面により相手方にこれを通知するものとする。引用元 離婚協議書の雛形と文例の見本 | 離婚協議書・離婚公正証書相談室-全国対応-

通知義務は上記のように夫婦双方に課しても、どちらか一方に課しても構いません。なお、通知義務はあくまでも努力義務に位置づけられているため、守られなかったとしても法的に罰せられることはありません。

禁止条項

離婚後にお互い相手にやってほしくないことがあれば、禁止条項にその旨を記載します。

<禁止事項の例>

  • お互いに相手方を誹謗中傷しないこと
  • 婚姻期間中に知り得た情報を、相手方の許可なく第三者に開示しないこと
  • 離婚協議書で定めた条項以外で相手方に連絡・接触しないこと

ただし、法律や公序良俗に反する禁止条項は定められないので注意が必要です。

清算条項

精算条項には、離婚協議書で決めたこと以外の請求をしない旨を記載します。離婚協議書に清算条項が設けられていると、慰謝料や財産分与を追加で請求するために調停や裁判を起こしても、請求は却下されることになります。

もし、離婚成立後に慰謝料や財産分与を請求する場合は離婚協議書に精算条項を設けないか、「離婚成立後、乙は甲に対し、別途慰謝料・財産分与を請求する」というように、その旨を但し書きで記載しておきましょう。

(清算条項)
第18条
甲と乙は、上記の各条項の外、名義の如何を問わず金銭その他の請求を相互にしないこと、及び甲乙以外の者が本件合意内容には一切干渉しないことを相互に確認した。引用元 離婚協議書の雛形と文例の見本 | 離婚協議書・離婚公正証書相談室-全国対応-

ただし、下記のようなケースでは清算条項が設けられていたとしても、後から追加で請求することが可能です。

  • 養育費の支払いを請求する場合
  • 年金分割を請求する場合
  • 錯誤や詐欺によって精算条項が設けられていた場合

公正証書作成について

公正証書とは、公証役場で公証人によって作成してもらった書類のことです。自身で作成するよりも証拠力が高く、原本は公証役場に保管されるため内容の改ざんされるリスクがないのがメリットです。離婚協議書を公正証書にする場合は、夫婦双方が公正証書の作成に合意した旨を記載します。

(公正証書)
第19条
甲及び乙は、本合意につき、強制執行認諾約款付公正証書を作成することを承諾した。引用元 離婚協議書の雛形と文例の見本 | 離婚協議書・離婚公正証書相談室-全国対応-

強制執行認諾文言(約款)付の公正証書にしておけば、養育費や慰謝料など離婚協議書で取り決めた金銭の支払いが滞った場合、裁判上の手続きをしなくても強制執行が可能になります。離婚後に養育費や慰謝料の未払いなどのトラブルが発生するのを防ぐためにも、離婚協議書は公正証書にしておくことをおすすめします。

なお、公正証書の作成には公証役場に支払う手数料が発生するため、離婚協議書には手数料の負担者も明記しておいた方が良いでしょう。

日付、署名、押印

話し合いで取り決めた内容について全て記載したら、最後に日付の記入と夫婦2人の署名・押印を行います。

上記のとおり合意したので、本書二通作成し、甲乙各自署名押印の上、各自一通ずつ保有する。

令和○年○月○日
(甲) 住所 氏名 (印)
(乙) 住所 氏名 (印)引用元 離婚協議書の雛形と文例の見本 | 離婚協議書・離婚公正証書相談室-全国対応-

日付は、離婚協議書に署名・押印を行った日を記入します。署名は、自分の氏名と住民票に登録されている住所地を手書きで記入しましょう。住所の記入は必須ではないため、相手に現在の住所を知られたくない場合は記入しなくても問題ありません。

印鑑は認印でも問題ありませんが、本人が確実に署名・押印したことを証明するためにも、実印(印鑑登録している印鑑)で押印するようにしましょう。

離婚協議書の作成におけるポイント

離婚協議書を作成する際におさえておきたいポイントとしては、下記の7つあります。

  • 離婚協議書はトラブル回避のために不備がないように作る
  • 離婚協議書は離婚届の提出時に作る
  • 離婚協議書に決まった書式はない
  • 離婚協議書の原本はしっかりと保管する
  • 離婚協議書が無効になるケースがある
  • 内容の決定や変更には夫婦双方の同意が必要である
  • 離婚協議書だけでは強制的な執行力はない

ここからは、上記のポイントについてそれぞれ詳しく解説していきます。

離婚協議書はトラブル回避のために不備がないように作る

離婚協議書は、離婚後のトラブルを回避するために作成するものなので、不備がないようにきちんと確認しましょう。財産分与や慰謝料、養育費、親権、面会交流権など離婚の条件についてしっかりと話し合い、離婚協議書には誰が見ても正しく理解できるよう、合意内容を具体的かつ正確に記載することが大切です。

離婚の際に取り決めをしても、実際は養育費を受け取れていない母子家庭は多くあります。そういったときに法的効力の高い離婚協議書があれば、支払ってもらえる可能性が高まります。

また、離婚協議書に記載する内容は夫婦で自由に決められますが、法律や公序良俗に反するような内容は法的に無効となるため、その点にも注意して内容に不備がないように作成しましょう。

離婚協議書は離婚届の提出時に作る

離婚協議書は、離婚届の提出時に作りましょう。離婚協議書を作成するタイミングについて法律上の決まりはないため、離婚届の提出前・提出後のどちらでも作成が可能です。しかし、離婚届の提出後に離婚協議書を作成する場合、下記のようなリスクが伴います。

  • 離婚協議書の作成に相手が応じてくれない
  • 相手と連絡が取れなくなってしまう

離婚協議書を作成しないと、養育費や慰謝料の支払いを受けられなかったり、子供との面会交流に応じてくれなかったりなど後々トラブルに発展する可能性が高いです。このようなトラブルを防ぐためにも、必ず離婚前に離婚の条件について話し合いを行って、おおまかな合意ができたら離婚協議書を作成しましょう。

離婚協議書に決まった書式はない

離婚協議書には決まった書式がないため、手書き・PCのどちらで作成しても問題ありません。離婚協議書をどのように作成すれば良いのか分からなければ、インターネット上で弁護士が公開している離婚協議書のテンプレートを参考にして作成するのがおすすめです。

しかし、離婚協議書を自作しようとすると重要な条項を入れ忘れたり相手が有意な条件で決められてしまったりする可能性があります。もし、離婚協議書を自作するのが難しかったり不安だったりする場合は、離婚問題に強い弁護士への相談を検討してみてください。

離婚協議書の原本はしっかりと保管する

離婚協議書が完成したら、同じ内容のものを2部用意し、夫婦双方で1部ずつしっかりと保管しておきましょう。夫婦のどちらか一方が原本を保管すると、離婚協議書を勝手に偽造・破棄される恐れがあります。

もし、公正証書化していない離婚協議書を紛失してしまった場合は、元配偶者に離婚協議書をコピーさせてもらいましょう。なお、離婚協議書を公正証書にしておけば、原本は公証役場で保管してもらえるので、相手に偽造される心配がなく、紛失しまった場合は再発行してもらえます。

離婚協議書が無効になるケースがある

離婚協議書を作成しても、内容の全部もしくは一部が無効になるケースがあります。離婚協議書そのものが無効になる主なケースは下記の通りです。

  • 夫婦のどちらか一方が相手の同意なく、勝手に離婚届を提出した場合
  • 詐欺・強迫による協議離婚が取り消された場合

離婚協議書の内容は、離婚が成立して初めて法的効力が生じます。協議離婚は、夫婦双方が同意した上で役所に離婚届を提出しなければ成立しません。上記のケースでは協議離婚が成立しないため、すでに作成した協議離婚書の法的効力も消滅することになります。また、離婚協議書そのものが有効であっても、下記のような法律や公序良俗に反するような内容は、当事者間が合意していたとしても無効となる可能性があります。

  • 養育費の請求を放棄する内容
  • 面会交流権を放棄する内容
  • 親権者の変更を申し立てないという内容
  • 婚姻時の氏を使用しないという内容
  • 法定利率を超える違法金利で遅延損害金を支払うという内容

離婚協議書に盛り込む内容は夫婦で自由に定められますが、法律に違反する内容や公序良俗に違反する内容は無効となる可能性があります。養育費や面会交流権は両方とも子どものための権利なので、両親の一存で勝手に放棄することは認められていません。

親権者の変更については、家庭裁判所に申立を行い、子どもの利益を守るために必要であると判断されれば変更が可能です。家庭裁判所に対して親権者変更の請求ができるのは子どもの親族と規定されています。「親権者の変更を申し立てない」という合意内容は、当事者以外の親族の権利を無視していることになるため、これも法的には無効となります。

「婚姻時の氏を使用しない」という合意内容も、戸籍法という法律で認められている婚氏続称を制限する内容になるため、離婚協議書で定めても法的な効力はありません。慰謝料の支払いが遅れた場合に発生する遅延損害金も、利息制限法の上限利率(100万円以上の場合で年21.9%)を超える内容で合意している場合は違法になるので無効となります。

内容の決定や変更には夫婦双方の同意が必要である

離婚協議書の内容は、夫婦のどちらか一方が勝手に決められるものではなく、必ず夫婦双方の同意が必要になります。一方が勝手に内容を取り決めた場合や、脅迫・暴力で無理やり相手の同意を得た場合、離婚協議書は法的に無効となります。

また、夫婦双方が同意した上で作成した離婚協議書は、原則として後で変更することはできませんが、夫婦双方が同意すれば内容の変更が可能です。経済的に苦しく、当初取り決めた金額で養育費や慰謝料を支払うのが難しい場合は、減額してもらえないかお願いしてみましょう。

離婚協議書だけでは強制的な執行力はない

離婚協議書を作成しておけば、夫婦で話し合った内容を客観的に証明できますが、離婚協議書そのものに強制的な執行力はありません。相手が養育費や慰謝料を支払わなかった場合、銀行口座や給料など相手の財産を差し押さえるには、調停や裁判を経て債務名義(調停調書や判決書)を取得しなければなりません。離婚協議書に強制的な執行力を持たせたい場合は、強制執行認諾文言(約款)付の公正証書を作成する必要があります。

強制執行認諾文言(約款)付の公正証書には確定判決と同じ効力を持つため、相手が養育費や慰謝料を支払わなかった場合は、調停や裁判を経ずに強制執行が可能です。ただし、公正証書によって強制執行できるのは、慰謝料・養育費などの支払いや財産分与など、金銭の支払いに関する取り決めが守られなかった場合のみです。子供の面会交流など金銭の支払い以外の取り決めについては、公正証書によって強制的に執行させることができないのでご注意ください。

離婚協議書は公正証書にしましょう

離婚協議書は決まった書式がなく、当事者だけで手軽に作成できますが、後のトラブルを回避するためにも離婚協議書は公正証書にしておくことをおすすめします。

  • 証拠能力が高く強制執行も可能になる
  • 公正証書と離婚協議書は法的効力などに違いがある
  • 公正証書を利用する人の割合は10~20%程度
  • 公正証書を作成する際のポイント
  • 公証人と面談後に書面を作成し役場へ持参する

ここからは、公正証書にするメリットや作成のポイントなどについてそれぞれ詳しく解説していきます。

証拠能力が高く強制執行も可能になる

公正証書は私文書と比べて証拠能力が高く、裁判手続きを経なくても強制執行が可能になるのが最大のメリットです。離婚時に取り決めた内容は口約束だけでも法的な効力を持ちますが、後で「そんなこと取り決めた覚えがない」と言い逃れされてしまう恐れがあるほか、裁判所に対して取り決めた内容を客観的に証明する手段がありません。

離婚協議書を作成しておけば、取り決めた内容を客観的に証明しやすくなるものの、後から内容を偽造されたり、原本を紛失してしまったりするリスクがあります。また、養育費や慰謝料の不払いなどがあった場合、強制執行手続きを行うには裁判を起こして勝訴判決を得なければなりません。

一方、公正証書は公的機関である公証役場が作成する文書なので、高い証拠能力が認められています。原本は公証役場で保管されるため、偽造や紛失の心配もありません。また、公正証書を作成する際に「強制執行認諾文言」を定めておけば、調停や裁判を経ずに強制執行手続きが行えるため、調停や裁判手続きの手間や費用も省けます。公正証書の作成にはそれなりに費用がかかるものの、後々トラブルになった際に心強い味方になってくれるので、離婚協議書は公正証書として残しておくことを強くおすすめします。

公正証書と離婚協議書は法的効力などに違いがある

公正証書と離婚協議書は、法的効力や作成者、作成費用、偽造の可能性など様々な違いがあります。

公正証書 離婚協議書
法的効力 契約書としての法的な効力や強制力がある 契約書としての法的な効力は持つが、法的な強制力はない
強制執行 強制執行認諾文言があれば、調停や裁判を経ずに強制執行ができる 調停や裁判を経て債務名義を取得しなければならない
作成者 公証人 当事者
作成費用 公正証書に定める金額に応じた公証人手数料が必要 無料
偽造の可能性 原本は公証役場で保管されるため、偽造は不可能 原本は当事者が保管するため、偽造される可能性がある

公正証書は公証人が作成してくれる公文書なので信頼性が高く、内容を偽造される心配もないので安心です。

公正証書を利用する人の割合は10~20%程度

2022年に法務省が調査したデータによると、協議離婚を経験した30~40代男女のうち、公正証書を利用した人の割合は10~20%程度に留まっています。公正証書に盛り込んだ割合は、養育費が23.4%、面会交流が19.4%、財産分与が15.8%でした。

養育費 面会交流 財産分与
決めていない 21.5% 29% 44.1%
口約束で決めた 31.5% 32.5% 22.7%
書面(公正証書を除く)で決めた 20.6% 17% 15.7%
公正証書で決めた 23.4% 19.4% 15.8%
裁判所の調停で決めた 2.6% 1.8% 1.5%
裁判所が決めた 0.4% 0.3% 0.2%

協議離婚に関する実態調査結果の概要|令和2年度法務省委託調査研究

離婚の条件を口約束で取り決めている割合も高いですが、きちんと書面として残しておかないとトラブルに発展する恐れがあります。また、離婚協議書のみでは養育費や慰謝料などの金銭の支払いが滞った場合に、裁判上の手続きを経ないと強制執行ができません。トラブルを未然に防ぎ、強制執行の手間を省くためにも、離婚時に取り決めた内容は公正証書としてまとめておくことを強くおすすめします。

公正証書を作成する際のポイント

公正証書を作成する際におさえておきたいポイントとしては、下記の4つあります。

  • 強制執行に関する内容を含める
  • 公正証書作成にあたっては離婚協議書の作成が重要である
  • 公正証書にする際は離婚協議書以外にも書類が必要である
  • 公正証書を作るには時間と費用が必要である

ここからは、上記のポイントについてそれぞれ詳しく解説していきます。

強制執行に関する内容を含める

慰謝料や養育費など金銭の支払いについて合意した場合は、強制執行に関する内容(強制執行認諾文言)を含めた公正証書を作成しましょう。下記のような強制執行認諾文言があれば、公正証書で取り決めた金銭の支払いが滞った場合、裁判上の手続きを経なくても強制執行が可能になります。

(強制執行認諾)
第●条
甲は、第〇条に記載の債務履行を遅滞したときには、直ちに強制執行に服する旨陳述した。引用元 離婚協議書の雛形と文例の見本 | 離婚協議書・離婚公正証書相談室-全国対応-

強制執行認諾文言を記載し忘れてしまうと、公正証書であっても裁判上の手続きを経なければ強制執行はできません。また公正証書によって強制執行できるのは、慰謝料や養育費などの金銭の支払いのみです。面会交流権など金銭の支払い以外の要求については、強制執行でも実現できないのでご注意ください。

公正証書作成にあたっては離婚協議書の作成が重要である

公正証書を作成する場合は、あらかじめ離婚協議書を作成しておくことが重要です。公正証書は口頭のみでも作成できますが、合意内容を間違えて公証人に伝えてしまったり、伝え忘れてしまったりする恐れがあります。離婚協議書を作成しておけば、漏れのない正確な公正証書を作成できます。

公正証書にする際は離婚協議書以外にも書類が必要である

公正証書を作成する際には、離婚協議書以外にも下記の書類を用意する必要があります。

  • 戸籍謄本(家族全員が記載されているもの)
  • 本人確認資料

すでに離婚している場合は、当事者双方の離婚後の戸籍謄本を用意してください。本人確認資料は夫婦それぞれ、下記のいずれか1点ずつ用意する必要があります。

  • 印鑑登録証明書(公正証書の作成日から遡って3ヶ月以内に発行されたもの)と実印
  • 運転免許証と認印
  • マイナンバーカードと認印
  • 写真付きの住民基本台帳カードと認印
  • パスポートと認印

また、合意内容によっては下記の書類が必要になる場合もあります。

合意内容 必要な書類
年金分割についての記載がある場合 基礎年金番号が記載されている年金手帳
年金分割のための情報通知書
不動産の財産分与についての記載がある場合 不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)
固定資産評価証明書または課税明細書
住宅ローンについての記載がある場合 住宅ローン契約書
返済予定表
自動車の財産分与についての記載がある場合 自動車検査証(車検証)
査定資料
預貯金の財産分与についての記載がある場合 預貯金の通帳
生命保険や学資保険の譲渡・名義変更についての記載がある場合 保険証券
解約返戻金証明書

公正証書を作るには時間と費用が必要である

公正証書の作成を依頼してから完成するまでには、1~2週間程度かかるのが一般的です。公証役場に支払う手数料は、養育費や慰謝料など契約内容で定めた金額に応じて変わってきます。

契約内容で定めた金額 手数料の金額
100万円以下 5,000円
100万1円以上200万円以下 7,000円
200万1円以上500万円以下 11,000円
500万1円以上1,000万円以上 17,000円
1,000万1円以上3,000万円以下 23,000円
3,000万1円以上5,000万円以下 29,000円
5,000万1円以上1億円以下 43,000円

手数料の支払いは原則現金ですが、2022年4月1日からクレジットカード決済(VISA、Master、JCB、Diners、AMEX)も可能となっています。ただし、公正証書の印紙代など一部の料金はクレジットカード決済に対応していないため、現金は必ず持参しておきましょう。

公証人と面談後に書面を作成し役場へ持参する

離婚協議書を公正証書にする場合の流れは下記の通りです。

  1. 夫婦で公正証書の原案(離婚協議書)を作成する
  2. 最寄りの公証役場で面談の予約を入れる
  3. 面談当日に必要書類を持参の上、公証役場に訪問する
  4. 公証人と面談する
  5. 公証人が公正証書を作成する
  6. 夫婦2人で完成した公正証書の内容を確認し、問題がなければ署名・押印をする

まずは、夫婦で離婚の条件について話し合い、双方が合意した内容を書面にまとめておきます。原案の作成が完了したら、最寄りの公証役場に電話するか、直接訪問して面談の予約を入れましょう。面談当日になったら、必要な持ち物を持参したうえで夫婦双方もしくはどちらか一方が公証役場に出向きます。

必要書類を提出したら、公証人と面談を行いましょう。ここで原案の内容が法律や公序良俗に反していないかチェックが行われ、問題なければ公証人が原案をもとに公正証書を作成します。公正証書が完成するまでには1~2週間程度かかります。

公正証書の作成が終わったら、必要な持ち物を持参したうえで夫婦で公証役場に出向きます。完成した公正証書の内容を確認し、内容に問題がなければ夫婦2人が公正証書に署名・押印をしましょう。最後に公証人手数料を支払い、公正証書のコピーを受け取ったら手続きは完了です。

まとめ

離婚の際は、慰謝料や財産分与、養育費、親権など離婚の条件について夫婦でしっかりと話し合い、取り決めた内容をまとめた離婚協議書は公正証書化しておくのがおすすめです。公正証書は証拠能力や信頼性が高く、養育費や慰謝料などの未払いがあった場合は裁判上の手続きを経ずに強制執行が可能なので、トラブルへ発展した際の強い味方になってくれます。

もし、離婚協議書の書き方で何か分からないことや不安なことがあれば、離婚問題に強い専門家への相談を検討してみてください。

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更新日 : 2024年10月30日
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