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2024年10月現在

協議離婚とは?進め方やメリット・デメリット、期間や必要書類をわかりやすく解説

協議離婚
南陽輔 弁護士
監修者
南 陽輔
大阪市出身。大阪大学法学部、関西大学法科大学院卒業。2008年に弁護士登録(大阪弁護士会所属)。大阪市の法律事務所に勤務し、離婚問題や債務整理などの一般民事事件のほか、刑事事件など幅広い法律業務を担当。2021年に一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成の支援、起業時の法的なアドバイスなどの予防法務を中心に業務提供をしております。皆さんが利用しやすく、かつ自由で発展的なビジネスが可能となるサービスを提供いたします。

協議離婚とは、夫婦の話し合いで離婚条件を取り決め、離婚届を提出して離婚を成立させる方法です。

日本では離婚した夫婦の約9割が協議離婚を選択しています。協議離婚では裁判所での手続きが必要なく、夫婦の話し合いがスムーズに進めば短期間で離婚が成立することが特徴です。

しかし、協議離婚は話し合いが上手くまとまらなかったり、不利な離婚条件を押し付けられたりなどのデメリットもあります。協議離婚でトラブルを回避するためには、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 離婚協議書を公正証書として作成しておく
  • 弁護士に代理交渉を依頼する
  • 子どもの前で話し合いをしない
  • モラハラやDVがある場合は知人に立ち会ってもらう
  • 勝手に離婚届を出されないようにしておく
  • 離婚後の生活について考えておく

本記事では、協議離婚の進め方やメリット、デメリット、弁護士に依頼した方が良いケースなどについて詳しく解説します。

協議離婚とは夫婦での話し合いによって離婚を成立させる方法

協議離婚とは、夫婦での話し合いによって離婚を成立させる方法です。

協議離婚では裁判所での手続きが必要なく、当事者同士で慰謝料や財産分与、親権、養育費などについて話し合いを行います。話し合いがまとまったら、市区町村の役所に離婚届を提出するだけで離婚が成立します。

夫婦双方が離婚に合意すれば離婚が成立するため、離婚の理由は特に問われません。協議離婚は短期間でのスピード解決も可能です。
離婚を考えている方は、まずパートナーと離婚に関する話し合いを行い、協議離婚を目指しましょう。

協議離婚が成立しなければ調停離婚に移行する

協議離婚で話がまとまらない場合や相手が離婚に同意しない場合、調停離婚で離婚の成立を目指します。

調停離婚とは、第三者として調停委員が介入して話し合いを行い、離婚を成立させる方法です。

調停では双方が主張している内容に基づき、調停委員が解決案を提示しながら離婚の成立を目指します。

夫婦双方が離婚に合意し、家庭裁判所で調停調書が作成されれば離婚成立となります。

離婚調停について、詳細を知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。

調停離婚が不成立になったら裁判離婚で決着をつける

調停離婚でも話がまとまらない場合や相手方が離婚に応じない場合は、裁判離婚へと移行します。

裁判離婚は、家庭裁判所で訴訟を行って離婚を成立させる方法です。

裁判を起こす前には原則として調停を経なければならないというルールがあるため、協議離婚からいきなり裁判離婚は起こせません。

裁判離婚では、裁判所の判断によって離婚できるか否かが強制的に決まります。協議離婚や調停離婚とは異なり、相手の合意がなくても離婚が可能です。

法的な専門知識や経験がないと自分が有利になるように裁判で戦っていくのは難しいため、裁判離婚に発展した場合は必ず弁護士に依頼しましょう。

裁判離婚についての詳細は以下の記事で解説しているので、気になる方は参考にしてみてください。

協議離婚のメリット

協議離婚のメリットとしては、下記の3つが挙げられます。

  • 手続きを簡単に済ませられる
  • 法定事由以外での離婚もできる
  • 慰謝料や養育費の金額を自由に決められる

ここからは、上記のメリットについてそれぞれ詳しく解説していきます。

手続きを簡単に済ませられる

協議離婚の最大のメリットは、簡単な手続きで済ませられる点です。協議離婚は当事者間での話し合いのみで完結するので、調停離婚や裁判離婚とは違って時間や場所を選ばず、いつでもどこでも話し合いができます。

申立てに必要な書類を用意して提出しに行ったり、話し合いや裁判のために何度も裁判所に出向いたりする手間もかかりません。

しかし、口約束のみでは離婚後にトラブルが発生する恐れがあります。そのため、夫婦で合意した内容を記載しておく離婚協議書は、後のトラブルを防ぐためにも作成しておくのが望ましいです。

ただし、作成は必須ではないため、離婚届にサインするだけでも問題ありません。

法定事由以外での離婚もできる

協議離婚なら、裁判離婚とは違って法定離婚事由以外での離婚も可能です。

裁判離婚では、民法第770条で定められている法定離婚事由がなければ離婚は認められないため、「性格が合わない」「愛情が感じられない」など法定外の離婚事由では離婚できません。

一方、協議離婚では、どんな理由であっても夫婦双方が離婚に同意し、離婚届にサインして役所に提出すれば離婚が成立します。

夫婦で話し合って決める慰謝料や養育費なども、夫婦双方が同意すれば相場に関係なく自由に設定できるのも大きなメリットです。

慰謝料や養育費の金額を自由に決められる

協議離婚では、双方の合意さえあれば離婚条件を自由に決められます。そのため、慰謝料や養育費の金額を自由に決めても問題ありません。

離婚裁判になると慰謝料や養育費は相場に基づいて判断されますが、協議離婚なら金額を高めに設定することも可能です。

また、財産分与の割合は原則として夫婦で2分の1ずつですが、協議離婚ならその他の割合で財産を分けることもできます。

離婚条件を柔軟に決められるのは、協議離婚のメリットといえるでしょう。

協議離婚のデメリット

協議離婚のデメリットとしては、下記の2つが挙げられます。

  • 話がうまくまとまらない可能性がある
  • 不利な条件で離婚が決まる可能性がある

ここからは、上記のデメリットについてそれぞれ詳しく解説していきます。

話がうまくまとまらない可能性がある

協議離婚では、調停委員や裁判官などの中立的な立場の第三者が間に入らず、夫婦が直接会って話し合いをしなければなりません。

そのため、お互いに感情的になって相手の不満や自分の主張をぶつけてしまい、話がうまくまとまらない可能性があります。

協議離婚では、話し合いで決めた離婚条件に双方が合意をして離婚届にサインをしなければ離婚が成立しません。話し合いがうまく進まないと離婚まで時間がかかる場合もあります。

不利な条件で離婚が決まる可能性がある

協議離婚の場合、調停や裁判のように第三者の介入がありません。

そのため、法律の知識が未熟だと自分にとって不利な条件だと気付かないまま合意してしまう可能性があります。

特に夫婦間に上下関係があって相手の立場が強い場合、希望の離婚条件をうまく主張できず、相手から不利な条件を押し付けられて合意を迫られる危険性が高いです。

一度離婚条件に合意して離婚協議書を作成してしまうと、基本的に後から覆すことはできません。

離婚条件の話し合いで何か不安や疑問に感じることがあれば、すぐ弁護士に相談するようにしましょう。

協議離婚の進め方

協議離婚は、主に下記の流れで進めていきます。

  1. 離婚に向けての準備を進める
  2. 相手に離婚を切り出す
  3. 相手が離婚に合意したら、離婚条件について話し合う
  4. 話し合った内容を離婚協議書に記載する
  5. 離婚届にサインして役所に提出

協議離婚は相手に離婚を切り出すことから始まりますが、その前に離婚の準備をしっかりと整えておきましょう。

離婚を切り出す前にやっておきたい主な準備は下記の通りです。

  • 希望する離婚条件をまとめておく
  • 夫婦の共有財産の内容や金額を確認しておく
  • 相手に離婚の原因(不倫や暴力、モラハラなど)がある場合は、証拠を集めておく
  • 生活費や居住先、仕事、子どもの養育環境など離婚後の生活について考えておく

離婚準備が整ったら、離婚の意思と離婚協議を進めたいことを相手に伝えましょう。その際は感情的にならず、冷静に対応するようにしてください。

もしも相手が話し合いに応じてくれない場合や、相手からのDVやモラハラで話し合いをするのが難しい場合は、弁護士に相談するのをおすすめします。

離婚を切り出した後に相手が離婚に合意したら、慰謝料や財産分与、親権や養育費などの離婚の条件について話し合いを行います。

離婚条件に夫婦双方が合意したら、後々相手と合意内容についてトラブルにならないよう、離婚協議書を作成しておきましょう。

離婚協議書の作成が終わったら、あとは離婚届にサインをして、夫婦の本籍地もしくは現住所を管轄する役所に離婚届を提出すれば離婚成立です。

協議離婚のトラブルを回避するためのポイント

協議離婚では、「お互いに感情的になって話し合いが進まない」「相手が話し合いに応じてくれない」「合意内容を相手が守ってくれない」などさまざまなトラブルが起こりやすいです。

そういった面倒なトラブルを回避するためのポイントとして、下記の6つが挙げられます。

  • 離婚協議書を公正証書として作成しておく
  • 弁護士に代理交渉を依頼する
  • 子どもの前で話し合いをしない
  • モラハラやDVがある場合は知人に立ち会ってもらう
  • 勝手に離婚届を出されないようにしておく
  • 離婚後の生活について考えておく

ここからは、協議離婚のトラブルを回避するためのポイントについて詳しく解説していきます。

離婚協議書を公正証書として作成しておく

離婚協議で取り決めた内容に関するトラブルを回避するためには、離婚協議書を公正証書として作成しておくのがポイントです。

もしも相手が慰謝料や養育費などの支払いを行わなかった場合、公正証書がなければ裁判を起こして請求をしなければなりません。通常の離婚協議書には、合意内容を強制する効力がないためです。

そこで離婚協議書に強制執行条項を記載し公正証書として作成しておけば、相手が合意内容を守らなかったときに強制執行を申し立てるだけで財産を差し押さえられます。

万が一の事態に備え、離婚協議書は公正証書として作成するようにしましょう。

弁護士に代理交渉を依頼する

離婚問題に関する専門知識や経験が豊富な弁護士に依頼することで、弁護士が代わりに交渉してくれるため、相手と顔を合わせずに話し合いが進められます。

特に以下のケースの場合、弁護士に代理交渉を依頼するのをおすすめします。

  • 相手が話し合いに応じない場合
  • DV・モラハラを受けていて相手と顔を合わせたくない場合
  • 相手が弁護士を付けている場合

相手が話し合いに応じてくれなくても、弁護士から連絡が来ると素直に話し合いに応じてくれるケースが多いです。また、相手の立場が強いと自分に不利な条件で離婚してしまいがちですが、弁護士に依頼すれば適切な条件交渉で離婚の成立が目指せます。

万が一離婚後に相手とトラブルになったとしても、弁護士が代わりに連絡や交渉をしてくれるので安心です。

子どもの前で話し合いをしない

子どもがいる夫婦の場合は、子どもの前で協議離婚の話し合いをしないようにしましょう。

当事者間で話し合うと、感情的になって激しく言い争ってしまうことも多々あります。そういった両親の姿を子どもが見ると、トラウマになってしまう可能性が非常に高いです。

そのため、子どもが学校に行っているタイミングを見計らうか、どちらかの実家に預けるなどして子どもを傷つけないように配慮しましょう。

モラハラやDVがある場合は知人に立ち会ってもらう

相手からモラハラやDVを受けている場合は、知人に立ち会ってもらうか、ファミレスやカフェなど人目のある場所で話し合いをするのがおすすめです。

自宅のような人目のない密室空間では、相手が感情的になって暴言を浴びせてきたり、暴力を振るってきたりする可能性が非常に高いからです。

人目がある場所なら、相手も周りの人の目を気にして暴力や暴言を控えるようになるため、自分の身を守りつつ冷静に話し合いを進めやすくなります。

勝手に離婚届を出されないようにしておく

協議離婚では、夫婦双方が離婚に同意した上で離婚届を提出しなければなりませんが、相手が離婚に同意していないにもかかわらず、勝手に離婚届を提出してしまう人もいます。

そのため、勝手に離婚届を出されないよう、「離婚届不受理申出書」を役所に提出しておきましょう。

離婚届不受理申出書が提出されると、申出人を当事者とする離婚届は申出人が提出したものしか受理されなくなるため、相手が一方的に離婚届を提出しても離婚は成立しません。

離婚届不受理申出は申出人が「離婚届不受理申出の取下書」を提出するか、離婚届を提出するまで有効なものとして取り扱われます。

離婚後の生活について考えておく

協議離婚を検討している方は、生活費や居住先、子どもの養育環境など離婚後の生活についても考えておく必要があります。

特に、専業主婦(主夫)や扶養内で働いている方が離婚後に子どもの親権を持つことになった場合、離婚後の生活についてしっかりと考えておかないと精神的にも金銭的にも苦しくなる可能性が高いです。

離婚後の生活基盤をスムーズに確保するために、下記事項については必ず考えておきましょう。

  • 離婚後の生活費
  • 離婚後に住む家(実家に住めるのか、新たに借りる必要があるのか確認)
  • 別居にかかる費用(引っ越し費用・借りる場合は賃貸の契約費用)
  • 離婚後に必要になる教育費(保育園費用・転校に伴う教材費や制服費用)
  • 奨学支援や公的支援の条件を確認
  • 専業主婦の場合は収入先の確保(パートや正社員など仕事を探す)

基本的に、「自分の収入+養育費-生活費」でプラスになるように生活設計をすれば、離婚後生活に苦しむ可能性は低いでしょう。マイナスになってしまう場合は、収入を増やすか支出を減らすかで調整してみてください。

また、住居の契約や引越し、水道・ガス・電気の契約、通帳や運転免許証の名義変更など離婚に伴う手続きも多数あるので、事前にやるべき手続きを洗い出して手続き方法を調べておきましょう。

協議離婚の際に決めるべきこと

協議離婚では夫婦間で離婚に同意し、離婚届を提出すれば離婚が成立します。

離婚後に子どもや金銭面のことでトラブルにならないよう、下記の事柄については必ず話し合いで条件を決めておきましょう。

  • 慰謝料
  • 親権
  • 面会交流権
  • 財産分与
  • 養育費
  • 年金分割

ここからは、上記の事柄についてそれぞれ詳しく解説していきます。

慰謝料について

不倫や暴力、モラハラ、悪意の遺棄、正当な理由なくセックスを拒否されるなど相手の行為によって精神的な苦痛を受けた場合は、慰謝料の金額について話し合いをしましょう。

なお、慰謝料は相手に不法行為があった場合のみ請求できるので、離婚の際に必ず慰謝料が発生するとは限りません。

慰謝料の金額は50〜300万円が相場ですが、協議離婚では夫婦の話し合いで自由に慰謝料の金額を設定できます。

ただし、あまりにも高額な慰謝料を請求すると相手からの合意が得られない可能性が高いです。婚姻期間や離婚の原因、精神的苦痛の程度などを総合的に判断し、現実的な金額で請求しましょう。

なお、離婚時の慰謝料請求は3年が時効です。以降は請求できなくなってしまうため、注意しましょう。

親権ついて

未成年の子どもがいる夫婦が離婚をする場合は、父母のどちらが子どもの親権を持つのか必ず話し合わなければなりません。

親権を決める際は、夫婦の事情や経済面だけでなく、子どもの意見も踏まえて決めるのが大切です。

なお、親権の中には「監護権」も含まれています、監護権とは、子供と一緒に生活して育てる権利のことであり、離婚する際は親権と監護権はセットでどちらかの親が取得するのが一般的です。

しかし、親権者が仕事の都合で子供と暮らせなかったり、親権者が決まらなかったりなど特殊な理由がある場合は、親権と監護権を夫婦で分けるケースもあります。

親権と監護権が分かれている場合、離婚後もお互いに親権を持ち続けることになるので子供との関わりが希薄になりにくく、養育費の滞りも起きにくいメリットがあります。

親権争いが原因で離婚まで長引いている場合も、親権と監護権を分離すればお互いに納得しやすいでしょう。

面会交流権ついて

親権を持たない親でも子どもが成人するまでは面会交流権があります。親権と監護権を分離しない場合は、面会頻度や時間、場所など面会交流に関する取り決めも行いましょう。

面会交流に関して取り決めるべき内容としては下記の通りです。

  • 面会交流の頻度
  • 面会交流の時間
  • 面会交流の場所
  • 親権者の付き添いの有無
  • 面会交流以外の交流方法(電話・手紙・メールなど)
  • 元夫婦の連絡方法
  • 子どもの受け渡し場所や方法
  • 学校行事への参加(運動会・授業参観など)
  • 宿泊や旅行
  • 祖父母との面会交流

面会交流権は親のためだけでなく子どもが親に会う権利でもあるため、面会交流に関する取り決めは子どもの利益を最優先に考えて決めてください。面会交流は、日中数時間を月に1回の頻度で行うのが一般的です。

子どもが親と会いたがっている場合は、面会交流の頻度を多くしたり、面会交流の時間を長くしたりと、子どもの都合や気持ちを考慮して面会交流の内容を決めましょう。

ただし、以下の場合は面会交流は認められません。

  • 子供が相手から身体的・精神的虐待を受ける可能性がある
  • 親権者に暴言を吐いたり非難したりする
  • 面会交流の条件を守らず何度か違反を繰り返している
  • 相手が子供を誘拐する可能性がある

面会交流は親権のない親が持つ正当な権利であるため、上記のような問題がなければ原則として認められます。

養育費について

未成年の子どもがいる場合は、養育費の金額についても話し合う必要があります。

養育費とは、子どもが社会的に自立するまでに必要な費用のことです。

親権を持たない親には、養育費の支払い義務が生じます。仮に再婚したとしても離れて暮らす子どもとの親子関係は継続するため、養育費の支払い義務は消滅しません。

養育費に関して取り決めるべき内容は下記の通りです。

  • 養育費の金額
  • 支払い日
  • 支払い期間
  • 支払い方法(銀行振込、現金書留など)
  • 振込先の銀行口座(振込で支払う場合)

養育費の金額は法律で決まっていないため、夫婦間の話し合いで金額を決め、合意に至れば問題ありません。

食費や被服費、教育費、医療費、娯楽費など子どもを育てるのに必要な金額を計算し、親権者の経済力と非親権者の経済力を考慮した上で金額を決めましょう。

なお、養育費の支払い期間は原則として子どもが20歳になるまでですが、双方が合意すれば「大学卒業まで」など20歳になった後も養育費を支払う取り決めが可能です。

もしも話し合いで養育費の金額が決まらない場合は、家庭裁判所が定めた「養育費算定表」を基準にして決めるのをおすすめします。

最新の養育費算定表は、裁判所の公式サイトから閲覧・ダウンロードできます。

平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について | 裁判所

財産分与について

婚姻期間中に築いた財産は、「誰が稼いだか」「誰の名義か」に関係なく夫婦の共有財産であるため、離婚する際の財産分与の対象になります。

財産分与の対象・対象外となる財産の例は以下のとおりです。

財産分与の対象 財産分与の対象外
現金・預貯金
有価証券
不動産
家具や家電
生命保険の解約返戻金
退職金
結婚前に築いた財産
別居中に築いた財産
両親からの相続や贈与で得た財産

財産分与の割合は、夫婦間で収入に大きな格差がある場合や夫の稼ぎのみで生計を立てていた場合でも、それぞれ2分の1ずつ分け合うのが一般的です。

借金といったマイナスの財産がある場合は、プラスの財産からマイナスの財産を引いて残った金額が財産分与の対象になります。

ただし、婚姻期間中であっても、夫婦のどちらか一方が趣味や娯楽を目的として作った借金は財産分与の対象外なので、借りた本人が単独で返済義務を負います。

なお、財産分与の有無や配分は夫婦で決めることなので、お互いが合意すれば財産分与を行わなくても問題ありません。

年金分割について

年金分割とは、婚姻期間中に夫婦で納付した厚生年金・共済年金を離婚の際に夫婦で分け合う制度です。分割した年金は、将来的にそれぞれ自分の年金として受け取れます。

年金分割の方法には「合意分割制度」と「3号分割制度」の2種類があります。

合意分割制度は、夫婦双方の合意によって年金の分割の割合を決める方法です。共働きで夫婦双方が厚生年金を納めていた場合、合意分割を行います。

一方の3号分割制度は、3号被保険者に該当する専業主婦(夫)やパートタイマーのみが利用できる分割制度です。3号被保険者が請求を行えば、相手の合意を得なくても2分の1ずつの割合で年金を分割できます

なお、厚生年金・共済年金以外の年金や、結婚前に納付していた年金は年金分割の対象外となるため注意してください。

協議離婚に必要な書類

協議離婚を成立させる際に必要な書類は、下記のとおりです。

  • 離婚届
  • 届出人の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
  • 夫婦双方の戸籍謄本(本籍地の役所で提出する場合は不要)

離婚届には、夫婦双方と証人2名の自筆による署名が必要です。従来は押印も必要でしたが、戸籍法の改正によって2021年9月から押印は不要になりました。

証人は成人している人であれば誰でもなれるので、離婚について相談できる家族や友人に証人になってもらえないかお願いしてみましょう。

離婚届の提出先は、原則夫婦の本籍地もしくは現住所の役所です。本籍地以外の役所で提出する場合は、夫婦双方の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)の提出も必要です。

戸籍謄本は本籍地の役所で取得しますが、本籍地が遠方であれば郵送で取り寄せが可能です。なお、2024年3月1日からは戸籍法の改正により、本籍地以外の役所で提出する場合でも戸籍謄本の提出が原則不要になります。

協議離婚が成立しなかった場合の対処法

配偶者との話し合いがまとまらず協議離婚が成立しなかった場合は、別居を検討してみましょう。いったん別居をすることにより、自分の考えを整理する機会を持てるからです。

少しでも早く離婚したい場合や、すでに別居状態の場合は、離婚調停を申し立てて話し合いを進めていくことをおすすめします。

次の項目から、協議離婚が成立しなかった場合の対処法について詳しく解説していきます。

別居を検討する

お互いに感情的になって話し合いができなかったり、お互いの主張がぶつかったりして協議離婚が成立しない場合は、別居も検討してみると良いでしょう。

別居して相手と距離を置き、一人で考える時間を作ることで、自分の考えを整理して冷静に話し合いに臨めるようになる可能性があります。

ほかにも「本当に離婚すべきなのか」「離婚した後も生活していけるのか」を考え直すきっかけになるかもしれません。

また、別居をすることによって相手に離婚に対する真剣度を示すこともできます。

離婚調停を申し立てる

離婚の話し合いを前進させたい場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てましょう。

離婚調停では調停委員を介して話し合いが行われるため、相手と顔を合わせることなく、冷静に手続きを進められます。

調停で夫婦双方が離婚条件に合意した場合は調停成立となり、調停調書が作成されます。役所に調停調書と離婚届を提出すれば離婚の手続きは完了です。

なお、最終的に調停が不成立になったり、相手が調停の呼び出しを無視したりした場合、離婚裁判で決着をつけることになります。

協議離婚は弁護士への依頼もおすすめ

協議離婚では基本的に弁護士の介入は必要ありませんが、話し合いがスムーズに進まない場合や不利な条件での離婚を回避したい場合は、弁護士に依頼しましょう。

弁護士に協議離婚の依頼をすれば、話し合いを有利に進めるためのアドバイスをもらえたり、交渉を代行してもらえたりします。

また相手からモラハラやDVなどを受けており、話し合いが危険な場合や精神的苦痛を感じる場合は、弁護士に交渉を代行してもらうことをおすすめします。

弁護士に協議離婚を依頼した場合、一般的には合計40〜90万円ほどの費用が発生します。

実際にかかる費用は依頼先の法律事務所や依頼内容によって異なるため、依頼前に見積もりをもらい、具体的な金額について確認しておきましょう。

まとめ

協議離婚では夫婦で話し合いを行い、お互いに離婚に合意した上で離婚届を提出すれば離婚が成立します。

裁判の手続きが必要なく、スムーズに話し合いが進めば短期間で離婚が可能です。

しかし、相手に離婚する気がなく話し合いに応じてくれない場合や、DV・モラハラを受けていてまともに話し合いができない場合は、当事者間での解決は非常に困難です。

また、法律の専門的な知識がないと、自分にとって不利な条件で離婚に合意してしまったり、合意した内容に関して後々トラブルになったりする恐れもあります。

離婚問題に強い弁護士に依頼すれば、弁護士が代わりに協議離婚の交渉や手続きを行ってくれるため、話し合いがスムーズに進みやすく精神的なストレスも軽減されます。

もしも協議離婚で何か困ったことがあれば、離婚問題に強い弁護士への依頼を検討してみてください。

協議離婚に関するよくある質問

協議離婚に証人は必要ですか?

離婚届を記入する際には、第三者の証人2名の署名が必要です。協議離婚の証人になるための特別な資格はなく、18歳以上の成人で離婚の事実を知っている人なら誰でも証人になれます。

また、証人は夫と妻がそれぞれ1名ずつ用意するという決まりはないため、夫婦のどちらか一方が証人を2名用意しても特に問題はありません。

自分の両親や兄弟姉妹、友人、職場の同僚や上司、近所の人など、離婚することを伝えられる関係性の人に証人をお願いすると良いでしょう。なお、証人になることで面倒なトラブルに巻き込まれたり、法的な義務を課されたりすることはありません。

もしも証人になってくれそうな人がいない場合は、離婚届証人代行サービスを利用するか、弁護士や司法書士などの専門家への依頼を検討してみましょう。

協議離婚が成立するまでにはどの程度の時間がかかりますか?

夫婦双方が離婚に合意しており、慰謝料や財産分与、親権、養育費などの離婚の条件でも揉めていなければ即日〜1週間程度の短期間で離婚できます。

反対に、相手が離婚に同意してくれない場合や話し合いに応じてくれない場合、離婚の条件で揉めている場合は離婚が成立するまで長期化しやすいです。

しかし、協議離婚は家庭裁判所での手続きが必要なく、夫婦の予定さえ合えば場所や時間を問わずに話し合いができるため、調停や裁判と比べて早く終わるのが一般的です。

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更新日 : 2024年10月09日
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