夫・妻が離婚に応じない心理・理由10選
夫や妻が離婚に応じないのは、応じたくない心理や理由があるからです。
株式会社Clamppyが男女500人に対して行ったアンケートでは、「配偶者または自分が離婚に応じなかった理由は何ですか(複数回答可)」という質問に対して下記のような結果が出ています。
配偶者または自分が離婚に応じなかった理由 |
全体実数 |
全体% |
まだ子どもが小さいから |
180 |
20.0% |
配偶者への気持ちが残っているから |
170 |
18.9% |
経済的な不安があるから |
135 |
15.0% |
世間体が気になるから |
125 |
13.9% |
離婚の理由を理解していないから |
95 |
10.6% |
子どもと会えなくなるのが嫌だから |
65 |
7.2% |
お金を払いたくないから(財産分与したくない) |
50 |
5.6% |
モラハラ気質で配偶者を見下しているから |
40 |
4.4% |
他の誰かと幸せになるのが許せないから |
48/td>
|
3.3% |
その他 |
48 |
3.3% |
「まだ子どもが小さいから」「配偶者への気持ちが残っているから」「経済的な不安があるから」の3つが大半を占める結果となりました。それぞれの理由についてより詳しく解説していきます。
1.まだ子どもが小さいから
夫婦の間に幼い子どもがいる場合、配偶者が離婚に応じない場合があります。
世間一般には、子どもにとって両親が揃っているほうが好ましいという考え方があることから、子どもが幼いうちは離婚を決められないことが多いといえるでしょう。
また、実際に離婚してしまうと、子どもから父親もしくは母親を奪ってしまうことになるのを心配する人も多いようです。
夫婦に子どもがいる場合、離婚は夫と妻だけの問題ではなく、子どもにも大きな影響を及ぼします。
離婚によって収入が減れば、経済的に苦しくなり、教育費や習い事を減らさざるを得なくなることがあるほか、学費が高い学校への進学や進路を諦めなければならなくなることもあるでしょう。
そのため、夫婦関係の溝が深い場合でも、子どもが高校に進学したり、独り立ちしたりするまでは離婚を拒否する配偶者が多いといえます。
このようなケースでは、養育費の支払いや面会交流についても柔軟に提案する必要があるでしょう。
養育費や面会交流については、「子どもに関する心配事を解消する」で詳しく解説します。
2.配偶者への気持ちが残っているから
夫婦のいずれかに相手に対する愛情や気持ちが残っている場合も、離婚を拒否される可能性が高いでしょう。
毎日のように喧嘩をしている夫婦であっても、実際には相手を愛しているケースはよくあることです。「まだやり直せる」「相手の気持ちはなくならない」と甘く考えている場合もあります。また、言い争っているのは相手に甘えているからといった考え方もできます。
このような状況で相手から離婚を求められた場合、「そんなつもりではなかった」といって反論してしまうのです。
また、相手の不貞行為が発覚した場合、それがきっかけで相手への想いに気づくこともあります。
3.経済的な不安があるから
夫婦のどちらか一方に経済的な不安がある場合も、離婚に応じない場合があります。
専業主婦(主夫)や収入が少ない方にとって、離婚は経済的な不安の要因となるためです。
特に親権を取得して子どもを養育する側は、子どもを共に暮らしていくための生活費や教育費などをどのように工面していくのか、不安を抱えることになります。
最近では、シングルマザーの貧困問題が社会問題化していることから、離婚による経済的不安を感じやすくなっています。
また、結婚して家庭に入った主婦(主夫)の場合、ブランクがあるため、正社員として就職するのが難しい可能性もあります。
経済的な不安がぬぐえない場合、離婚を求められても応じられなくなってしまうでしょう。
対策としては、財産分与や慰謝料の支払い、養育費といった金銭面での話し合いを行う必要があります。
財産分与や慰謝料については、「財産分与や養育費、慰謝料などの離婚条件を譲歩する」で詳しく解説します。
4.世間体が気になるから
離婚による世間体が気になる場合でも、離婚に応じない場合があります。
自分がそうではなくても、相手は離婚による世間体の悪さを感じるかもしれません。
離婚の事実を会社や学校、知り合いに知られたくないケースがあれば、両親や親せきがうるさく言うため、離婚したくないと考えているケースもあります。
現在の日本では、昔と比較して離婚率は上昇していますが、それでも離婚の事実を良く思わない人もいるのです。
また、離婚した本人が気にしていなかったり、非がなかったりしても、離婚したことで結婚生活に問題があったと見られたり、心無い言葉を投げかけられたりすることもあります。
さらに、日本では結婚したら妻が男性の性を名乗るケースが多く、離婚することで名字が変わり目立ってしまうことを嫌う人もいます。
5.離婚の理由を理解していないから
夫婦の一方が離婚を希望しても、もう一方が離婚理由を理解していない場合、離婚に応じないことがあります。
例えば、夫側が妻との婚姻生活に限界を感じていても、妻が同じように考えているとは限りません。場合によっては、妻は離婚することなどまったく考えてもいない場合もあります。
一方がコミュニケーション不足や性交渉の不足を主張しても、もう一方は意に介していないケースもあるでしょう。
離婚するほどのことではないとか、どこの夫婦でもこれくらいの不満はあるものと考えられていたのであれば、こちらがいくら主張しても離婚に応じてもらえません。
また、相手から離婚を求められても、その考えや意思は一時的なもので、時間がたてば解決すると楽観視している場合もあるでしょう。
ただし、相手が離婚の話し合いを真に受けなかったとしても、感情的になるのは避けなければなりません。あくまでも冷静な話し合いを意識することが大切です。
6.子どもと会えなくなるのが嫌だから
子どもに会えなくなることを恐れて、離婚に応じないケースもあります。
夫婦間に未成年の子どもがいる場合、離婚すれば夫婦のいずれかが親権を持つことになります。問題がある場合を除いて、母親が親権を取得するケースが大半となるため、離婚してしまうと、夫が子どもに遭えなくなると考えるかもしれません。
また、妻に親権が渡ることを認めなかったり、妻が親権を持つことを「負け」と感じたりして、夫が離婚を拒むケースがあるほか、離婚自体は嫌ではなくても、子どもと離れたくないために離婚を拒否することもあります。
妻への愛情はすでに枯渇しているものの、夫の子どもに対する愛情が大きい場合も、離婚するのは難しいかもしれません。
7.お金を払いたくないから
相手に対してお金を支払いたくないと考えられている場合も、夫や妻が離婚に応じないことがあります。
離婚の際には、財産分与や養育費、場合によっては慰謝料といった金銭の支払いが発生します。
特に、家庭の収入や財産を、夫婦の片方が管理しているような場合、財産分与としてどれくらいの金額が手に入るのかを把握されているケースがあり、管理されている側が金銭の支払いを拒みたいがために離婚を拒否することも考えられます。
また、配偶者に黙って貯蓄をしていたり、実家から援助を受けたりしているケースもあるでしょう。
他にも、夫婦のいずれかの不貞行為やDV・モラハラなどの不法行為が原因で離婚を求められた場合、慰謝料の支払いが発生するため、それを避けたいという心理が働き、有責側が再構築を主張するケースもあります。
相手の隠し財産を探したい場合の対処法などは、下記の記事で詳しく紹介しています。
8.モラハラ気質で配偶者を見下しているから
配偶者にモラハラ気質がある場合も、離婚を拒否されるケースが多いでしょう。
モラハラ気質がある方は、相手を見下している場合が多く、離婚を求めた側の考え方を拒否するためです。自分のモラハラに気づかないケースが多いため、相手が傷ついていることや離婚を視野に入れていることを感じないばかりか、原因が自分にあることを認めようともしないのです。
また、夫婦の一方のプライドが高く、相手の思い通りになることを嫌ったり、見下している相手から離婚を切り出されたことが気に食わなかったりして離婚を拒否することもあります。
モラハラがひどい場合は、ストレス解消の「道具」としての配偶者を手放したくないと考えるケースもあるようです。
モラハラの相談窓口については、下記の記事を参考にしてみてください。
9.他の誰かと幸せになるのが許せないから
夫婦が離婚した場合、相手が他の誰かと幸せに暮らしていくことを許せないために、離婚に応じないこともあります。
例えば、夫が不倫をしていて離婚を切り出した場合、妻としては不倫相手と幸せになんかなってほしくないと感じたり、ここで離婚に応じたら夫の思うつぼと考えたりする場合です。
そのため、夫に対する愛情がなくても、意地を張って離婚を拒否するのです。
また、相手が不倫をしていなくても、「不倫しているはずだ」と思い込んでいる場合も、離婚が拒否される可能性が高いほか、不倫の事実がないと主張しても聞き入れてくれないこともあります。
夫婦のどちらかの独占欲が強い場合も、離婚は拒絶されやすいでしょう。
10.その他
アンケートで「その他」を選択した人の「離婚に応じない理由」は、下記のとおりです。
- 配偶者が共同経営者で、離婚すると仕事に支障をきたすから
- 浮気した配偶者が「もう二度と裏切らないから、チャンスがほしい」と言い続け、離婚に応じないから
- 配偶者から慰謝料を一括請求されたが、慰謝料を支払えないから
- 子どもをつくるかどうかで喧嘩が増え、離婚を求められたが、それだけの理由で応じる気になれなかったから
- セックスレスを理由に離婚を求められたが、仲の良い夫婦だと感じており、離婚する気になれないから
- まだ、配偶者のなかに自分に対する気持ちがあるから
慰謝料については「7.お金を払いたくないから」にほぼ該当するといえます。子どもに対する価値観、セックスレスについては「5.離婚の理由を理解していないから」に該当し、離婚を求める側にとっては深刻な理由であるにもかかわらず、求められた側にはその気持ちがあまり伝わっていないと考えられるでしょう。
離婚に応じない夫・妻に離婚を同意してもらう方法
配偶者から離婚を同意してもらうための方法は次の通りです。
- 夫婦だけでは話が進まない場合は弁護士に交渉してもらう
- 財産分与や養育費、慰謝料などの離婚条件を譲歩する
- 子どもに関する心配事を解消する
- 相手が有責配偶者であれば、証拠を提示する
- 離婚を前提とした別居を提案する
- 調停離婚や裁判離婚を検討する
相手がどういった理由で離婚に応じないかを考えて、対策をとることが重要です。例えば、配偶者が気持ちや世間体などを理由に「離婚そのものをしたくない」と考えている場合は、離婚を専門とする弁護士に交渉してもらった方が話が進みやすくなります。有責配偶者(不倫やDVをした側の配偶者)であれば、証拠を提示して離婚を求めるのも効果的でしょう。経済的な心配などが理由となっているのであれば、財産分与や養育費といった離婚条件をこちらが譲歩することで、離婚に応じてくれる場合もあります。
夫婦だけでは話が進まない場合は弁護士に交渉してもらう
配偶者が離婚に応じない理由が下記なのであれば、夫婦間でいくら話し合っても平行線を辿るおそれがあります。
- 離婚の理由を理解していないから
- 世間体が気になるから
- 配偶者への気持ちが残っているから
- 他の誰かと幸せになるのが許せないから
こういった場合は、弁護士への相談を検討することをおすすめします。
弁護士は依頼者の代理人として、配偶者との交渉を進めてくれます。弁護士を通して離婚話を進めることで、離婚への本気度が相手に伝わりやすくなり、話がスムーズに進むこともあります。また、離婚を専門とする弁護士であれば、財産分与や養育費といった離婚条件も、こちら側に有利な内容になるように取り計らってくれるでしょう。
財産分与や養育費、慰謝料などの離婚条件を譲歩する
配偶者が離婚に応じない理由が「経済的な不安があるから」なのであれば、財産分与や養育費、慰謝料などの離婚条件を譲歩することで、離婚に同意してもらえる可能性があります。
財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた共有財産を、離婚時に分配することをいいます。
婚姻中に築いた財産はすべて財産分与の対象となり、配偶者の片方が専業主婦(主夫)でも、共働きであっても、2分の1ずつ財産を分け合うのが基本です。
ただし、財産分与の割合は夫婦間で自由に決められるため、配偶者に多めに財産を渡して離婚してもらうといった手段を取ることも可能です。
財産分与を行う場合は、事前に財産目録を作成して夫婦の共有財産をリストアップしておきます。そのうえで離婚の話し合いのときに財産分与を持ちかけましょう。
離婚時の慰謝料とは、配偶者の不貞行為などの不法行為、離婚することで被った精神的苦痛に対して支払われる金銭のことです。
離婚するだけでは慰謝料を請求できない場合がありますが、配偶者が不貞行為やDVなどの不法行為を行っている場合は、慰謝料を請求できます。
配偶者が経済的不安から離婚に同意しない場合は、慰謝料について以下のように配慮することを検討しましょう。
- こちらが有責配偶者の場合に慰謝料を多めに支払う
- 相手が有責配偶者の場合に請求する慰謝料を減額する
- 相手が有責配偶者の場合に慰謝料を請求しない
- 相手が有責配偶者の場合に慰謝料の分割払いを認める
相手に譲歩して経済的不安を軽減する提案をすれば、離婚に同意してもらえる可能性が高まるでしょう。
なお、相手が慰謝料の支払いを認めた場合は、念書や音声データを取っておくことが重要です。さらに、支払金額や支払方法などについても取り決め、離婚協議書にまとめてから公正証書にすることが重要です。
慰謝料の支払いが行われない場合に、公正証書に強制執行を行う旨を記載しておけば、実際に支払いが滞った際に強制執行の手続きを取りやすくなり、慰謝料を回収しやすくなります。
特に専業主婦(主夫)の場合、離婚後に経済的に不安定になる可能性が高いため、財産分与や慰謝料の支払いについては必ず話し合っておきましょう。
なお、「離婚に応じない配偶者に離婚を同意してもらった際の体験」を募ったアンケートでは、下記のような体験談が寄せられています。
・相手に離婚に同意してもらうために、お金を支払った
・親権をすべてこちらで引き取り、当面の相手の生活費を補助する形で同意してもらった
・養育費の減額を提示して、納得してもらった
離婚条件の譲歩を交渉材料とする例は多い模様です。
参考:民法第768条協議上の離婚(財産分与)|e-GOV法令検索
子どもに関する心配事を解消する
「まだ子どもが小さいから」「子どもと会えなくなるのが嫌だから」といった理由で離婚に応じないのであれば、養育費や面会交流のタイミングといった離婚条件を明確に決めるなど、子どもに関する心配事を解消すると、配偶者から離婚の同意を得やすくなります。
離婚後の養育費の金額や面会交流の回数は、子どもにとって非常に重要です。離婚後は家庭の収入状況が大きく変化する可能性があります。子どもの成長を経済的にサポートするため、子どもを養育する側が安心して子どもを育てられるようにするためにも、養育費の金額や支払いのタイミングなどは明確に決める必要があります。
また、子どもは一方の親と離れることを悲しんだり、寂しがったりします。そのため、配偶者に対して情がなくても、面会交流の内容については決めなければなりません。
養育費を話し合う場合、以下のポイントについて具体的に取り決めましょう。
- 養育費の金額
- 養育費の支払期間(いつからいつまで支払うか)
- 養育費の支払方法(一括か分割か一部分割か)
- 臨時の費用の扱い(入学金や医療費など)
養育費の金額については、最高裁判所のWebサイトにある「改定標準算定表(令和元年版)」を参考にするといいでしょう。
ただし、算定表はあくまでも参考にする程度にとどめておき、子どもの人数や年齢、健康状態、夫婦の収入状況などから総合的に判断する必要があります。
夫婦同士で具体的な金額を決められない場合や、納得した金額にならない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
また、面会交流については、以下のポイントについて具体的に取り決めましょう。
- 面会交流の頻度(週または月に何回程度か)
- 面会交流の内容(1回当たりの時間、日帰りか宿泊かなど)
- 面会交流の場所(交流場所や子どもの受け渡し場所)
- 急な事情で面会できない場合の対応 など
配偶者が「離婚後、子どもに会えなくなるのでは」と心配している場合は、面会交流の詳細を決めることで、離婚に前向きになる可能性が高まるでしょう。
相手が有責配偶者であれば、証拠を提示する
離婚を持ちかけたものの、相手にはこちらに対する気持ちが残っている場合、こちらから夫婦生活の継続ができない理由や根拠を提示することが大切です。
ここで重要になるのが、具体的に理由を主張することです。単純に暴力を振るわれたからとか、別居しているからと主張しても、相手に認めてもらえない可能性があるためです。
相手の有責性を指摘できる主張を目指しましょう。
例えば、相手のモラハラやDV、不倫などが原因の場合は、暴力・言動があった日時、不倫の証拠などを提示しましょう。
また、長期に渡って別居している場合は、いつから別居を始めて、どのような経緯があったのかを説明します。
そのためには、日常的に日記を付けたり、暴力的な言動や家事の放棄、不倫の事実を示す音声データや動画、写真、怪我をした際の診断書、相手からのメール・文書など、客観的な証拠を集めておくことが重要になります。
これらの証拠があれば、仮に話し合いでの離婚の合意が取れなくても、離婚調停や離婚裁判に発展した際に有力な証拠として提出できるようになります。
また、こちらに弁護士が付いていることを伝えれば、本気で離婚を考えていることが配偶者に伝わりやすくなるため、離婚に同意してもらいやすくなるでしょう。
夫婦関係の破綻を説明するための準備をしっかり行いましょう。
アンケートでも、有責性を提示することで離婚に成功した体験談が寄せられています。
相手の不倫が原因だったので、その証拠を叩きつけました。探偵会社を利用していたので、相手は何も言えずすぐに不倫を認めました。子供がいたのでなかなか離婚に応じてもらえませんでしたが、冷静に話し合い同意してもらいました。
モラハラや経済的DV、不倫の証拠については下記の記事を参考にしてみてください。
離婚を前提とした別居を提案する
夫や妻に離婚に同意してもらうために、別居を提案する方法もあります。
話し合っても相手が離婚に応じない場合、別居の提案によって離婚を真剣に考えている意思表示ができます。
また、夫婦で物質的な距離を取ることで、お互いが冷静になれる可能性があります。
さらに、夫婦の離婚問題が裁判に発展した場合、離婚が認められる可能性が高まる点も、別居を選択するメリットです。
なお、別居中は生活費にあたる「婚姻費用」を請求する権利、もしくは支払う義務が発生するため、別居前に婚姻費用についても決めておきましょう。
離婚裁判では不貞行為やDVといった明確な離婚理由がない場合、婚姻を継続し難い理由があるかどうかが、裁判で離婚が認められるポイントとなります。
夫婦が別居状態にあった場合、婚姻を継続し難い状況にあることが認められやすくなるため、裁判での離婚が成立しやすいのです。
他にも、夫婦間でのもめごとが原因で別居した場合、周りから見ても夫婦関係が悪化したり、破綻したりしていることが明らかとなります。
このように、別居の提案には、離婚問題を前進させられる要素がたくさんあることがわかります。
ただし、注意したいのが、別居する場合は離婚を前提にした別居であることを相手に伝える必要がある点です。
離婚が前提であることを宣言しないまま別居した場合、悪意の遺棄と見なされて出て行った側が有責配偶者となります。
有責配偶者となった場合、自分から離婚を希望しても、裁判で認めてもらえない恐れがあるほか、配偶者から精神的苦痛に対する慰謝料(損害賠償)を請求されるケースもあります。
さらに、不貞行為をした側が別居を提案して実際に出て行った場合、慰謝料が増える恐れがある点にも注意しましょう。
下記のアンケート結果でも、別居から離婚を成功させた人が多いことがうかがえます。
・当初は応じなかったので別居した結果、数ヵ月して相手が同意しました。
・相手からのDVやモラハラがひどくなり、このままでは心身ともに壊れてしまうと思い、無料で相談できる弁護士のところに確認に行き、3年の別居期間があれば離婚できると聞いたため、離婚届と結婚指輪を残し、最低限の荷物を持って家出した。結果的には互いの両親が離婚届をやり取りしてくれ、その後は会うこともなく数ヵ月で離婚できた。
・気持ちが薄れている感覚があった為別居をまず提案しました。最初は、「離れるのは無理だ」「結局離婚するのだろう」と話をされましたが、「結果はどうであれ、気持ちが戻らないなら離婚をするに変わりはない」と言い続け離婚に至りました。すごく冷たくしましたし、連絡もほぼ無視。相手に興味がないことを態度で示しました。結果離婚になりました。
調停離婚や裁判離婚を検討する
夫婦間の話し合いで離婚を進める「協議離婚」がうまくいかない場合は、調停委員を間に挟んで話し合いを行う「調停離婚」を検討しましょう。それでも相手が離婚を認めない場合は、「裁判離婚」において法定離婚事由を提示し、裁判所に離婚を認めてもらう方法を検討してみてください。
あらかじめ離婚に強い弁護士に相談しておくと、離婚を有利に進められます。裁判離婚で必要な法定離婚事由についても、適格なアドバイスをもらえるでしょう。法定離婚事由については「法定離婚事由に該当していると裁判で離婚が認められる」で詳しく解説します。
調停離婚や裁判離婚に関しては、下記のようなアンケート結果が出ています。
・浪費が酷く財産を使い切っていたため、離婚を申し出たが、使っていないと主張を続けた。自分から別居し、調停で離婚とした。
・モラハラがひどく、育児家事全般に関与しなかったため、家を出て離婚調停を申し立てた。話し合ってやり直したいと言われたが、養育費の減額を提示し、離婚調停を数回して離婚した。
・ひどいモラハラが原因で、子どもを連れて家を出た。別居の状態になってから、直接のちに弁護士を通して離婚を切り出したが、拒否される。調停離婚も不成立となり、離婚訴訟予定。
夫・妻が離婚に応じない場合に離婚する流れ
夫や妻が離婚に応じない場合でも、こちらが離婚を希望しているなら、そのための行動を起こすことが大切です。しかし、離婚するためにどのような手順を踏むのかわからない方もいらっしゃるでしょう。
そこで、夫婦が離婚する流れについて解説します。具体的な流れは以下の通りです。
- 協議離婚:話し合いで離婚を決める
- 調停離婚:裁判所の調停手続を通して離婚する
- 裁判離婚:離婚訴訟を起こして離婚へとつなげる
それぞれ詳しく解説します。
協議離婚:話し合いで離婚を決める
夫婦が離婚する場合、まずは話し合いによって離婚の可否を決定します。
夫婦の話し合いによって成立した離婚を協議離婚といいます。日本における約90%の離婚が協議離婚によるものです。
原則として、協議離婚は夫婦による合意があり、離婚届を役所に受理されて初めて成立する離婚であるため、夫や妻が離婚に応じない場合は離婚が成立しません(離婚の効力が発生しない)。
しかし、説得や説明、主張を重ねることで、最終的に相手が離婚に応じる場合もあります。
離婚の話し合いを始める場合は、口頭やメール、チャットで相手に離婚を切り出します。また、内容証明郵便を利用して、離婚の意思表示の証拠を残しながら離婚を切り出す方法もあります。
離婚することにお互いが合意すれば、財産分与や親権、養育費、面会交流などについて取り決め、離婚協議書にまとめたうえで、公正証書化します。
また、話し合いがまとまらない場合は弁護士に仲介を相談したり、交渉の代行を依頼したりもできます。
協議離婚については下記の記事で詳しく紹介しています。
調停離婚:裁判所の調停手続を通して離婚する
夫婦間での話し合いによって離婚の合意に至らなかった場合は、裁判所の調停手続(離婚調停)による離婚を目指します。
裁判所の調停手続によって成立する離婚を調停離婚といいます。
離婚調停では、調停委員(多くの場合男女1名ずつの計2名)が仲介役となって別々の部屋で夫婦双方の話を聞き、離婚の可否や離婚条件などの調整が行われます。
調停によって離婚や離婚条件に合意できれば調停証書が作成され、調停の申立人(離婚を求めている側)が離婚届を提出することで離婚が成立します。
ただし、離婚調停は調停委員の仲介による話し合いでの離婚問題解決の手段です。あくまでも話し合いとなるため、相手が離婚に応じない場合は調停不成立となり、離婚は成立しません。
調停でも離婚に合意できなかった場合は、離婚裁判(もしくは審判)に移行することになります。
一方で、法定離婚事由がなくても離婚の成立が可能であるため、不貞行為や不法行為がなかった場合でも、両者で合意を得られれば離婚できます。
離婚調停の流れや費用などは、下記の記事を参考にしてみてください。
裁判離婚:離婚訴訟を起こして離婚へとつなげる
離婚調停が不成立となった場合は、離婚訴訟(離婚裁判)を起こして離婚を目指すことになります。
離婚訴訟(離婚裁判)とは、離婚調停によって夫婦の離婚問題が解決できなかった場合に、家庭裁判所の判断によって離婚を求める手続きのことです。
離婚裁判では、それぞれの主張や提出された証拠を総合的に判断し、裁判所が離婚の可否について判断(判決)します。また、判決が出る前に両者の話し合いによって和解が成立する場合もあります。
離婚訴訟の特徴は、法定離婚事由が必要になるということです。つまり、法的に離婚が認められなければ、離婚が成立しません。
逆に、法定離婚事由の存在が認められ、夫婦による婚姻関係の継続が難しいと判断された場合、相手の意思にかかわらず強制的に離婚を認める判断が下されます。
裁判所が離婚を認めるには、主張を裏付ける客観的な証拠の存在が必要になります。どのような主張をして、どのような証拠が重要なのか適切に判断することが重要になるため、法律の専門家であり、裁判に長けている弁護士に対応を依頼するのがおすすめです。
離婚裁判の流れや準備などは下記の記事を参考にしてみてください。
裁判で離婚するための法的な条件について
夫婦が離婚について話し合い(協議や調停)をする場合、お互いの合意が取れればどのような理由でも離婚は成立します。しかし、離婚裁判となった場合、離婚する法的な条件を満たしていなければ、離婚は成立しません。
法的に離婚が認められる条件を法定離婚事由といいます。離婚を求める理由が法定離婚事由にあてはまる場合、法的に離婚が認められます。
ただし、状況によっては婚姻関係が破綻しているとは判断されないケースもあります。
それぞれ詳しく解説します。
法定離婚事由に該当していると裁判で離婚が認められる
一方の配偶者が離婚を求める理由が、法定離婚事由にあてはまる場合は、法的に離婚が認められます。
法定離婚事由には以下の5つがあります。
- 配偶者による不貞行為
- 配偶者の生死が3年以上明らかになっていない
- 配偶者による悪意の遺棄
- 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない
- その他婚姻関係を継続し難い重大な事由がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
不貞行為があった
配偶者による不貞行為があった場合、離婚は認められます。
不貞行為とは、夫婦間の貞操義務に違反する行為で、既婚者が配偶者以外の人物と肉体関係を持つこと(不倫・浮気)です。
ただし、肉体関係がない場合は不貞行為と認められません。性的な接触が一切ないプラトニックな恋愛関係は不貞行為ではないと判断されます。
離婚裁判で、配偶者の不貞行為による離婚を主張する場合、配偶者が自分以外の人物と肉体関係を持ったことを証明する証拠が必要です。
例えば、配偶者と不倫相手がラブホテルや自宅、相手宅に出入りする写真や動画、不倫関係にあることがわかる二人の音声データやメール、チャットなどが、不貞行為を証明する証拠になり得ます。
また、興信所に依頼して配偶者と不倫相手の行動を観察してもらった報告書も、不貞行為を証明する証拠となります。
生死が3年以上明らかになっていない
配偶者の生死が3年以上明らかになっていない場合も、離婚は認められます。
生死が3年以上明らかではないとは、配偶者の生死がわからない状況が発生して3年経過しているケースです。
この状況で離婚が認められるには、配偶者が生死不明であることが必要です。逆にいえば、どこにいるかはわからないものの、確実に生きていることがわかっている場合は、離婚は認められません。
例えば、自分からは連絡できないものの、知人が連絡可能な状況にある場合、法定離婚事由とはなりません。
また、単純に連絡が取れないだけでは、配偶者の生死不明が認められない可能性が高いといえます。
警察で捜索願を出したり、住民票をたどったり、友人や同僚に聞いて回ったりするなど、さまざまな手を尽くしたものの行方がわからない場合に限り、生死不明が認められると考えておきましょう。
悪意の遺棄をされた
配偶者からの悪意の遺棄があった場合も、離婚は認められます。
悪意の遺棄とは、夫婦として生活するための同居や扶助、協力といった義務を、正当な理由なく果たさないことをいいます。
悪意の遺棄の一例は以下の通りです。
- 不倫相手と相手の家で同棲しており自宅にまったく帰ってこない
- 配偶者が生活費を一切渡さない
- 配偶者に自宅から追い出されて帰れなくなってしまった
悪意の遺棄の存在を認められるためには、やはり証拠が必要ですが、相手の行動によって必要な証拠が異なります。
例えば、一方的な家出や別居の場合は、相手とのメールやチャットのやりとりや手紙などに加え、相手が住民票を勝手に移している場合は、住民票が証拠になることもあります。
生活費の支払いを拒否された場合は、金銭の授受がないことを証明する通帳や家計簿、相手の給与明細のコピーなどが証拠になるケースもあります。
強度の精神病にかかって回復の見込みがない
配偶者が強度の精神病にかかって回復の見込みがなく、婚姻生活の相互扶助や協力ができない場合も、離婚は成立します。
強度の精神疾患とは、日常生活に支障をきたすほどの精神疾患で、離婚が認められるには長期間患っていることに加えて、治る見込みがないとの診断を受ける必要があります。
強度の精神疾患にあたるかどうかは、診断された病名に加えて、具体的な症状や病状によって裁判所が判断します。そのため、専門医による鑑定(診断)が必要になります。
判例では総合失調症によるものが多いですが、躁うつ病や早発性痴ほう症、によって離婚が認められたケースもあります。一方、認知症やアルコール中毒などは、強度の精神疾患とは認めないと考えられています。
ただし、離婚によって精神疾患を患っている側の生活が著しく悪化する可能性が高いことから、裁判所は簡単に離婚を認めない傾向にあります。
公的な保護などによって療養できる環境があり、離婚後に療養のための資金提供を行うなど、離婚後も描写が生活を継続できる手段が用意されていて、今後の見込みが立っているなら、離婚は比較的認められやすくなります。
うつ病を理由に離婚する際の条件や流れについては、下記の記事で紹介しています。
その他婚姻関係を継続し難い重大な事由がある
これまで紹介した離婚の原因には該当しないものの、婚姻関係を継続し難い重大な事由があると判断された場合も、離婚を認める判断が下されるケースがあります。
ただし、離婚裁判では主張された離婚理由により、夫婦の関係が修復できないほど破綻している、もしくは離婚を求める側の努力によっても解決不可能との判断がなければ、離婚は認められません。
婚姻関係を継続し難いと判断されるケースとしては、以下のようなものがあります。
離婚理由となり得るもの |
どのような場合に離婚が認められるか |
性格の不一致、価値観の違い |
性格の不一致の程度があまりにひどく、幾度となく努力しても改善する兆しがない状況で、夫婦関係の破綻が認められた場合、離婚できるケースがある。 |
DV、モラハラ |
程度や重大なDVやモラハラがあった場合、離婚事由となるものの、十分な証拠を集める必要がある。例えば、相手の暴力が原因の怪我の写真や診断書、暴力を振るわれた様子を記録した動画データや音声データ、散乱した部屋の写真、日記、警察やカウンセリングへの相談履歴などが証拠になり得る。 |
性の不一致、セックスレス |
性の不一致とは、相手が望まないのに1日に何度も性行為を求める、SMなど特殊な性行為を強要、身体的・精神的な要因による性交不能など。セックスレスとは、正当な理由がなく1ヶ月以上性行為がない、もしくは性行為を拒否された状態のこと。離婚が認められるには、日記や夫婦での話し合いの録音データなどの証拠が必要。 |
親族との不仲 |
親族との不仲の状況を配偶者が解決しようとしない、親族の味方をする、同居している親族からの暴力、モラハラ、セクハラを受けている状況で、婚姻関係の継続が不可能と判断されれば離婚できる。 |
浪費や借金 |
ブランド品の購入やギャンブル依存、借金癖があり、家族が日常生活を送れず、夫婦関係が修復可能な場合も、離婚が認められる。 |
アルコール依存や薬物中毒 |
アルコール依存や薬物中毒にある配偶者によって暴力が振るわれる、酒や薬物を購入するために貯金を使い果たす、生活費を渡さないなどの事情があれば、離婚が認められる場合も。 |
過度な宗教活動 |
行き過ぎた宗教活動が原因で、夫婦生活や育児に支障をきたす場合、離婚が認められるケースがある。 |
犯罪行為や服役 |
配偶者の犯罪行為や服役によって家庭に影響が及び、夫婦関係の破綻が判断されれば、離婚可能。 |
家事や育児の放棄 |
配偶者が家事や育児を行わないことが要因で、夫婦関係が修復できない状態になっている場合や、生活費の支払いがなく悪意の遺棄と判断される場合は、離婚が認められる可能性がある。 |
配偶者の借金を理由に離婚する方法については、下記の記事で詳しく紹介しています。
婚姻関係の破綻が認められない場合もある
離婚を主張している側が、婚姻関係の継続が難しいと考えている場合でも、実際には婚姻関係の破綻が認められない場合もあります。
例えば、夫婦間で同居や協力、扶助の義務を果たしていると判断される場合や、夫婦関係の回復の見込みがあると判断される場合では、婚姻関係の破綻が認められず、裁判による離婚が成立しません。
婚姻関係の破綻が認められないケースの一例は以下の通りです。
- 夫婦が同居しており定期的に性交渉がある場合
- 家族でのイベントや旅行を計画・実施している場合
- 配偶者の片方が相手の看病をしている場合
- 別居時間が短いうえに、離婚協議を行っていない
夫婦関係の破綻を証明する条件、チェック方法については下記の記事を参考にしてみてください。
夫・妻が離婚に応じない場合にやってはいけない行動6選
こちらが離婚を求めても、夫や妻が離婚に応じようとしない場合、してはいけない行動がいくつかあります。具体的には以下のような行動です。
- 1.相手の嫌な部分ばかり責める
- 2.自分自身の正当性ばかり述べる
- 3.強引に離婚をさせようとする
- 4.正当な理由がないのに家を出て別居を始める
- 5.勝手に離婚届を出す
- 6.子どもの取り合いをする
それぞれ詳しく解説します。
1.相手の嫌な部分ばかり責める
夫や妻が離婚に応じない場合でも、相手の嫌な部分ばかりを責める行動は避けましょう。
お互いが感情的になり、話し合いが進まなくなってしまう恐れがあるためです。また、言い争いに発展しやすくなるほか、話し合いをすることに疲れてしまい、いつまでたっても離婚できないままの状態が続くこともあります。
また、離婚の理由を理解してもらうために、相手の嫌なところだけを離してしまいがちですが、夫婦生活ではお互いに良くないところがあるはずで、相手がそれを許容していた可能性も十分に考えられます。
相手ばかりを責めれば「こちらばかりが悪いとはいえないのでは?」「そちらにも悪いとこがあるけれど」と反論されることになるでしょう。これでは、どちらも感情的になってしまうのは避けられません。
夫婦で離婚問題を話し合う際に重要なことは、常に冷静さを保つことです。
冷静さを保てない場合は、別居して一旦距離を置いて、メールやチャットなどを利用してロジカルで説得力のある表現で離婚理由を伝えてみましょう。
また、相手の良いところをしっかり認めたうえで、離婚したいと考えている理由について、冷静に伝える努力をしましょう。
2.自分自身の正当性ばかり述べる
夫や妻が離婚に応じない場合でも、自分自身の正当性ばかりを主張することはやめましょう。
離婚の話し合いにおいて、どちらが悪いのかを決めることに、意味がないためです。また、夫婦で離婚について話し合いをする場は、正当な離婚原因だけを主張する局面ではありません。
離婚を求める側としては、相手のどこが悪いから離婚したいと主張したいと思います。しかし、前述したように相手にも主張や反論があるはずです。
自分の主張だけではなく、相手の主張も聞くようにして、そのうえで離婚が最善であるという結論に持っていくことが大切です。
3.強引に離婚をさせようとする
夫や妻が離婚に応じない場合でも、強引に離婚させようとしてはいけません。
このような場合、離婚が無効になる可能性が高いほか、場合によっては罪に問われるケースがあるためです。
暴力行為や脅迫行為によって相手に離婚を迫り、無理やり離婚届に署名させたとしても、相手から離婚の取り消しや無効を求められる可能性が高いといえます。
また、暴行罪や傷害罪、脅迫罪、強要罪などに問われたり、相手が離婚に応じた場合でも、不当行為による精神的苦痛を理由に高額な慰謝料を請求される恐れもあります。
強引に離婚を進めるのは、不利になるだけですので、やめておきましょう。
4.正当な理由がないのに家を出て別居を始める
夫や妻が離婚に応じなくても、勝手に家を出て別居を始めてはいけません。
正当な理由がないまま勝手に別居した場合、悪意の遺棄と見なされる場合があるためです。
悪意の遺棄があると判断された場合、相手が離婚を拒む気持ちが強くなるほか、有責配偶者となり離婚時に相手から慰謝料を請求される恐れがあります。
離婚を成立させたい場合、別居は有効な手段となりますが、やり方によっては問題が複雑化したり、自分が不利になったりします。
別居を選択する際は、離婚を前提に別居することを相手に必ず伝えましょう。伝える方法は置手紙やメールなどでも構いません。
また、別居を切り出す際は、物質的な距離を置いてお互いの関係について考えることを提案してみてください。
なお、相手からDVやモラハラがあるならば、それは別居する正当の理由となり、悪意の遺棄にはなりません。精神的・身体的な危険がある場合は、ためらうことなく別居を選択しましょう。
5.勝手に離婚届を出す
夫や妻が離婚に応じようとしない場合でも、勝手に離婚届を提出するのはNGです。
夫婦の合意がない場合に、夫婦の一方が離婚届を勝手に提出した場合、離婚は無効になるためです。
勝手に離婚届を提出した場合でも、一旦離婚届が受理される可能性があります。提出に参加していない配偶者に対して離婚届受理通知が送付されるため、相手に離婚届を提出したことはバレてしまいます。
離婚に合意したように偽装して離婚届を提出しても、もう一方の配偶者から離婚の無効を求める調停・訴訟を起こされれば、離婚は認められなくなります。暴力や脅迫などによって無理やり離婚届に署名させた場合も同様です。
また、離婚届を偽造して提出した場合、有印私文書偽造罪という罪に問われるほか、精神的苦痛を理由に慰謝料を請求される可能性もあります。
勝手に提出した側の責任が重い行為であるため、離婚届を勝手に提出することはやめましょう。
離婚届を勝手に出した際にどうなるかについては、下記の記事で詳しく紹介しています。
6.子どもの取り合いをする
夫や妻が離婚に応じず、話し合いが進まない場合でも、子どもを取り合わないようにすることが大切です。
夫婦に子どもがいる場合、子どもの扱いやかかわり方を考えることが重要だからです。特に、幼い子どもがいる場合は注意しなければなりません。
離婚協議では、お互いが感情的になりやすいものです。親権に関してはお互いに譲らずに親権争いによって調停や裁判に発展することもあるでしょう。
離婚したとしても離婚後も子どもを大切にし、どのようにかかわっていくべきなのかを考えてください。
離婚問題に強い弁護士の選ぶためのポイント
夫や妻が離婚に応じてくれずに話し合いが難航したり、調停や裁判にまで発展したりするケースがあります。
そのような場合は、弁護士に話し合いの仲介を頼んだり、離婚協議や交渉、調停、裁判の代行を依頼したりするのがおすすめです。
弁護士は法律の専門家であり、かつ交渉事を有利に進めることに長けているためです。
ただし、弁護士にも得意・不得意があるため、離婚問題に強い弁護士に依頼することが重要になります。
ここでは、離婚問題に強い弁護士を選ぶためのポイントについて解説します。具体的なポイントは以下の通りです。
- 離婚問題の解決実績が豊富である
- 探偵など他の専門家とつながりがある
- リスクなどについてもしっかり説明してくれる
- 料金体系が明確になっている
- 同性の弁護士でなくても問題はない
それぞれ詳しく解説します。
離婚問題の解決実績が豊富である
離婚問題について弁護士に依頼するなら、離婚問題の解決実績が豊富な弁護士を探しましょう。
離婚問題は弁護士の仕事のなかでも、専門性が高い分野であるためです。
離婚問題の解決実績が豊富であるほど、依頼者の悩みを解決したり、依頼者にとって有利になったりするような方法や手続きを選択してもらいやすいといえます。また、状況的に不利になるポイントについて対策を講じてもらえる可能性が高いでしょう。
弁護士の実績については、弁護士や弁護士事務所のホームページで確認可能です。解決した事案の件数や経歴だけではなく、慰謝料請求や親権の獲得など、自分が解決したい問題に強い弁護士かどうかをチェックしましょう。
探偵など他の専門家とつながりがある
離婚問題に強い弁護士は、探偵や興信所など、他の専門家とのつながりを持っている場合が多い傾向にあります。
離婚の原因にはさまざまなものがありますが、例えば配偶者が不倫をしている場合や、離婚後に自宅の財産分与が必要な場合などでは、弁護士が自ら調査するのに加えて、他分野の専門家の力を借りた方がいいケースがあります。
依頼者自身で専門家を探すことも可能ですが、弁護士の人脈で他の専門家との連携が取れるのであれば、調査を依頼する負担を軽減できます。
また、離婚問題を専門的に扱う弁護士は、これまでに離婚に関するさまざまな依頼を受けているため、離婚に関係する他の分野の専門家とのつながりがあるケースが多いといえます。
離婚に関する問題や悩みをスムーズに解決するためにも、依頼前に弁護士の人脈もチェックした方がいいでしょう。
リスクなどについてもしっかり説明してくれる
離婚問題を弁護士に依頼する場合は、リスクや不利なポイントについても説明してくれる弁護士を選びましょう。
離婚問題の協議や調停、裁判に関して、確実に勝てる保証はなく、勝てる可能性が高い場合でも多少のリスクが伴うためです。
離婚問題について弁護士に相談した際に、勝てる見込みに関してだけ話をする弁護士ではなく、状況的に不利なポイントやリスクを明確に説明してくれる弁護士であれば安心して問題の対応を依頼できるでしょう。
料金体系が明確になっている
離婚問題の対応を弁護士に依頼する場合は、料金体系が明確になっているかどうかを確認しましょう。
弁護士に離婚問題の対応を依頼する場合、相談料や着手金、成功報酬、実費といった弁護士費用が発生します。
弁護士費用が高すぎる場合は依頼するのが難しくなりますが、逆に安すぎる場合は安心して依頼できないと感じることもあるでしょう。
この場合、複数の弁護士事務所の料金体系をチェックしてある程度の相場観を把握したうえで、自分が納得できる費用が必要な弁護士に依頼するようにしましょう。
また、弁護士にも直接質問して、弁護士費用の算出方法や支払方法、分割払いの可否などについて説明してもらうようにしましょう。
離婚における弁護士費用の相場については、下記の記事を参考にしてみてください。
同性の弁護士でなくても問題はない
離婚問題の対応を依頼する弁護士は、依頼者と同棲でなくても問題ありません。
例えば、依頼する弁護士があなたとは異性であった場合でも、あなたの配偶者とは同性となります。
自分と異性の弁護士だからこそ、配偶者の考えを読みやすいといった強みをもっている可能性もあります。
また、同性の弁護士にこだわりすぎることで、本当に優秀な弁護士に依頼するチャンスを逃しているケースもあります。
もちろん、自分と同性の弁護士であれば話しやすいなどのメリットはありますが、同性の弁護士の方が有利とか、同性でなければならないといった決まりはないため、自分が納得できて話しやすく、信頼できると感じた弁護士に対応を依頼しましょう。
まとめ
夫や妻が離婚に応じない場合、相手には離婚したくないさまざま理由があったり、離婚したくない心理が働いたりしている可能性があります。
それでも離婚したい場合は離婚条件を譲歩したり、相手に離婚を求められる法的な理由がないかを確認したり、離婚を納得してもらうためにどうすればいいか考えたりすることが大切です。
また、離婚問題をスムーズに解決するためには、法律の専門家である弁護士への依頼を考えることをおすすめします。
本記事を参考に、離婚を求めても応じない夫や妻と離婚するための行動を取っていきましょう。
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