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2024年10月現在

妻側の拒否によるセックスレスを理由に離婚できる?できるケースや慰謝料について解説

セックスレス 妻側拒否 離婚
南陽輔 弁護士
監修者
南 陽輔
大阪市出身。大阪大学法学部、関西大学法科大学院卒業。2008年に弁護士登録(大阪弁護士会所属)。大阪市の法律事務所に勤務し、離婚問題や債務整理などの一般民事事件のほか、刑事事件など幅広い法律業務を担当。2021年に一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成の支援、起業時の法的なアドバイスなどの予防法務を中心に業務提供をしております。皆さんが利用しやすく、かつ自由で発展的なビジネスが可能となるサービスを提供いたします。

妻にセックスを拒否されたことでセックスレスとなってしまい、離婚について真剣に考えている方もいらっしゃるでしょう。しかし、セックスレスを理由に離婚が認められるのかわからず、不安を感じてしまうかもしれません。

結論からいえば、協議離婚や調停離婚の場合は、双方の合意さえあれば離婚の理由は問われないため、セックスレスが原因でも離婚することは可能です。また、裁判離婚の場合でもセックスレスが理由となって、婚姻生活を続けることが難しいと裁判所が認める場合は、一方が離婚を拒否していたとしても離婚が成立します。

さらに、セックスレスが原因で離婚が成立した場合、セックスを拒否した側に対して慰謝料を請求できる可能性があります。

ただし、裁判で離婚が成立したり、慰謝料の請求が認められたりするためには、セックスレスであったことを証明する証拠や日常生活の記録といった準備が必要です。感情的に離婚を主張するのではなく、慎重に行動することが重要になります。

本記事では、妻側の拒否によるセックスレスを理由に離婚できるケースや、妻に慰謝料を請求できるケースについて詳しく解説します。

セックスレスを理由に離婚を考えている男性の方は、最後までチェックしてください。

妻側の拒否によるセックスレスを理由に離婚できる?

セックスレスとは、夫婦やカップルの間で特別な事情がないにもかかわらず、1カ月以上性行為やセクシュアルコンタクトがない状態のことです。

セックスは、夫婦の婚姻関係を維持するために重要であるとされていますが、日本の20代から50代の既婚者の約68%がセックスレス傾向にあると回答しています。

また、とある避妊具メーカーが2008年に発表した調査によれば、日本人の年間の性交回数は48回(週1回程度)で、世界平均の103回の半分以下であり、世界でも最低水準となっています。

このように、日本ではセックスレスの割合が多いといえますが、夫婦間で妻側にセックスを拒否されてセックスレスになった場合、夫は離婚できるのでしょうか?

具体的には、以下に該当する場合、離婚が可能です。

  • 双方が話し合い(協議・調停)で離婚に同意している
  • セックスレスが原因で婚姻関係が破綻していることを裁判で証明できる

それぞれ詳しく解説します。

妻側が話し合い(協議・調停)で同意すればセックスレスだけを理由に離婚できる

セックスレスを理由に離婚したい場合、妻側が離婚に同意すれば離婚可能です。

離婚の是非については、まずは夫婦同士で話し合うのが一般的です。このように、話し合いによって成立する離婚を協議離婚といいます。

当事者同士が話し合って離婚に同意する場合、離婚の理由は問われないため、セックスレスが原因での離婚でも離婚できます。

なお、セックスレスが原因で離婚する際、その責任が妻にある場合は妻に対して慰謝料を請求可能です。

また、話し合いでの離婚の合意が得られず、調停に至った場合でも、夫婦間で合意できればセックスレスが原因でも離婚可能です。

離婚調停とは、家庭裁判所の調停手続きを利用して、調停員という第三者を挟んで夫婦間で離婚条件について話し合い、合意に至ることで離婚することです。

夫婦間で協議したものの、離婚について合意できないケースや、配偶者が話し合いに応じない場合に、調停での離婚を目指すことになります。

離婚調停は、裁判ではなく、調停委員による仲介のもと、離婚条件を話し合いまとめることを目的としています。

そのため、離婚訴訟の判決に盛り込むのが難しいようなことについても、調停では合意できます。

裁判で離婚するには「セックスレス」が原因で婚姻関係が破綻している必要がある

離婚調停でも離婚が成立しない場合、離婚訴訟(離婚裁判)に移行しますが、セックスレスだけが原因の場合、裁判では離婚しにくくなります。

なぜなら、セックスレスや性行為を拒否する行動は、法定離婚事由ではないためです。

法定離婚事由とは、民法770条第1条に規定されている法的な離婚原因のことで、裁判所は法定離婚事由が存在する場合に、離婚の判決を出します。

民法に規定されている法定離婚事由は以下の通りです。

  • 配偶者による不貞行為
  • 配偶者による悪意の遺棄
  • 配偶者の生死が三年以上明らかではないとき
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復が見込めない
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由がある

参考:民法第770条第1項 裁判上の離婚|e-GOV 法令検索

上記に示す通り、セックスレスや性行為の拒否は、裁判上の離婚事由として規定されていません。そのため、客観的な証拠によってセックスレスが認められた場合でも、それだけで離婚が認められるわけではないのです。

ただし、セックスレスや性行為の拒否によって、法定離婚事由にある「その他婚姻を継続し難い重大な事由」がある状況に至っている場合は、裁判所が認定すれば離婚判決が下される可能性があります。

例えば、以下のようなケースでは、セックスレスが原因で「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。

  • セックスレスがきっかけとなり、夫婦が長期間別居している
  • セックスレスが原因で、拒否された側がうつ病などの精神病を患った
  • 子どもを望んでいるものの、相手が性交渉をしてくれない
  • 結婚後まったく性交渉がなく、夫側の性交不能を妻が後から知らされた
  • セックスを拒否している側が不倫している

また、妻からセックスを拒否され、セックスレスの状態になることは、夫にとって精神的に辛い状況といえます。その状況で離婚に至った場合は、夫は妻に対して慰謝料を請求できる場合があります。

この場合の慰謝料の相場は、50万円から200万円程度の金額となるケースが多いですが、夫婦間の事情や状況によっては、それ以上の慰謝料請求が認められる場合もあります。

セックスレスが原因で裁判離婚が認められるケース

日本国内では離婚を争う裁判が行われており、直近10年間の裁判によって離婚が成立する割合は80%に上ります。つまり、ほとんどの離婚裁判で離婚が成立していることになります。

なかには、セックスレスが原因となり、裁判離婚が認められているケースもあるため紹介します。離婚が認められたのは、以下のようなケースです。

  • 正当な理由なく妻から一方的に性交渉を拒絶され続け夫婦関係の修復が困難になった
  • セックスレスだけではなく妻に不貞行為をされている

それぞれ詳しく解説します。

正当な理由なく妻から一方的に性交渉を拒絶され続け夫婦関係の修復が困難になった

正当な理由がないまま妻から一方的に性交渉を拒絶され続けた結果、夫婦関係の修復が困難になったケースでは、離婚が認められています。

例えば、お互いが若い夫婦であるにもかかわらず、相手が嫌といった理由だけで性交渉を拒否され続けたことがきっかけになるようなケースです。

このようなケースでは、相手が性交渉できるにもかかわらず、セックスしようとしない状況にあることが重要です。

妻の年齢や病気などにより、セックスを拒否する正当な理由がある場合は仕方ありませんが、まったく支障がないのに妻が性交渉を拒む場合は、正当な理由は存在せず、妻側の責任が問われるのです。

このような状況が続く場合、法定離婚事由の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、離婚裁判によって離婚が認められるケースがあります。

なお、子どもが欲しいのに性交渉を拒否され続けたことが原因の場合でも、離婚が認められます。

女性にとっては高齢出産のリスクがあるため、出産するなら早いうちにという考えがある一方で、男性が子づくりに積極的ではなく、夜の営みを拒否するケースがあります。

妊娠を望む妻との性交渉を拒否し続けたことが原因でセックスレスになった場合、裁判でも離婚は認められやすいといえます。

セックスレスだけではなく妻に不貞行為をされている

夫婦間のセックスレスだけではなく、妻に不貞行為をされている場合も、裁判で離婚が認められます。

不貞行為とは、既婚者が配偶者以外の異性と自由意思のもと肉体関係を結ぶことをいいます。

夫婦は、性的な純潔を保ち、配偶者以外との性行為を行ってはいけないという貞操義務を負うことが、民法によって定められています。

これを守らなかった場合は不貞行為となり、離婚請求が認められるほか、慰謝料請求の対象となります。

不貞行為に該当するケースには、以下のようなものがあります。

  • 性的関係がある場合
  • 性的関係があると推測できる行為がある場合
  • 性交類似行為(前戯や口淫など)がある場合

性的関係に至るまでの状況で、断ろうと思えば断れたケースでは、自由意思が認められるため、不貞行為とみなされる可能性があります。

また、配偶者以外の異性と同棲していたり、ラブホテルで長時間過ごしたりするなど、性的関係があると推測できる場合や、前戯・口淫といった性交類似行為がある場合も、不貞行為に該当します。

離婚裁判においては、妻が夫以外との不貞行為があったことを証明し、裁判所が認めた場合に離婚が成立します。

なお、不貞行為の証拠となるのは、以下のようなものです。

不貞行為の証拠となるもの 内容・注意点
性交渉や裸体の写真・映像 ・性交渉時や裸、それに近い状況、旅行で同じ部屋に宿泊したことがわかる写真や映像などは有力な証拠に
・配偶者と不倫相手の顔がわかるように撮影する
・配偶者のスマートフォンに保存されている写真は、自分のスマートフォンに転送もしくは相手のスマートフォンごと撮影する
ラブホテルや自宅への出入りがわかる写真・映像 ・ラブホテルや自宅へ出入り(入る場面と出てくる場面の両方)、キス、抱き合っているシーンの写真や映像も証拠になる
・撮影日時と場所がわかるように撮影
・配偶者と不倫相手の顔がわかるように撮影する
・オリジナルのデータは必ず残しておく(編集しない)
配偶者と不倫相手の会話の録音 ・配偶者の車やカバンにICレコーダーを忍ばせて、2人の会話を録音できれば証拠になり得る
・性行為に及んでいる場面や、2人が性的な関係であることを示す発言が録音できれば強力な証拠に
・オリジナルデータは必ず残しておく(編集しない)
不貞行為を認める念書もしくは録音データ ・配偶者が不貞行為を認めた場合は念書などの書面にしておけば強い証拠に
・返書には、不貞行為の開始の時期や機関、回数、不倫相手の名前と職業、出会ったきっかけ、不倫相手は配偶者が既婚者であることを知っていたか、といった内容を具体的に記載する
・不貞行為について話し合う場合、録音しておくのも有効
・録音する場合は、不貞行為を認めさせることを無理にいわそうとしない(裁判所に証拠として音声の提出が求められることがある)
メールやチャット、SNS ・誰のスマートフォンなのかわかるよう、スマートフォン全体の写真を撮影する
・メッセージの送信日時がわかるように撮影する
・メッセージの前後が途切れてないことがわかるように撮影する
・性交渉に及んだことを示すやりとりは証拠になり得る
・性行為を行ったことを推測させるやりとりは、ホテルのレシートやクレジットカードの履歴など合わせれば、性交渉があった証拠になる可能性がある
不倫相手との通話履歴 ・不倫相手との通話履歴も証拠になる可能性がある
・他の証拠と合わせれば不貞行為を立証できるケースがある
レシートやクレジットカードの明細書 ・不倫に利用したホテルや、不倫相手に対するプレゼントなどのレシートやクレジットカードの明細書も証拠になる
・メールやチャット、SNSでのやりとりや写真と合わせれば、証拠になる可能性がある
興信所(探偵事務所)に依頼した調査 ・自分で証拠を集めるのが難しい場合は、興信所に調査を依頼する
・興信所は配偶者と不倫相手の行動の尾行、写真や動画の撮影、報告書の作成が可能
・数十万~数百万程度の調査費用必要になる

セックスレスが原因で裁判離婚が認められないケース

セックスレスが原因で裁判離婚が認められる場合があれば、裁判離婚が認められない場合もあります。

具体的には、以下に該当する場合、離婚は認められません。

  • 元々夫婦ともに性交渉に積極的でない
  • 正当な理由があってセックスできない
  • 自らセックスレスの原因を作っている

それぞれ詳しく見ていきましょう。

元々夫婦ともに性交渉に積極的でない

夫婦のいずれもがセックスに積極的ではない状況で、夫婦の片方だけが離婚を希望している場合、裁判離婚が認められないケースがあります。

夫婦のいずれもがセックスに消極的な状況として、以下のようなケースが考えられます。

  • お互いに相手に関心がなくなっている場合
  • お互いに性交渉に関心がない
  • 仕事などで疲れていてセックスしたくない
  • 高齢の夫婦でセックスの必要性を感じていない

性的な欲求がある若い夫婦が配偶者に関心をなくしてしまっていて離婚を希望する場合は、セックスレスが原因での離婚が認められます。

言い換えれば、積極的に行動しなかったために性交渉ができなかった場合、「本当は性交渉がしたかった」という理由で離婚できる可能性は低くなります。

一方、セックスに関心がなく、どちらがきっかけでもないセックスレスが長期間に渡って継続している場合でも、夫婦のいずれかが相手や家族に対する愛情を失っていない場合は、離婚は認められないでしょう。

セックスレスが原因で離婚する場合は、セックスを求めたけれども拒絶されたという事実が必要になります。

なお、夫婦のどちらもセックスを望んでいない状況で離婚する場合、どちらにも非がないと判断されるため、相手に対して慰謝料を請求できないのが一般的です。

正当な理由があってセックスできない

夫婦がセックスレスの状況にあるものの、正当な理由があってセックスができない場合は、離婚は認められません。

具体的には、以下のようなケースの場合です。

  • 病気でセックスができない
  • 妊娠中でセックスができない
  • 単身赴任など仕事上の理由でセックスができない

それぞれ詳しく解説します。

病気でセックスができない

夫婦のいずれかの病気が原因となってセックスができず、セックスレスに至った場合は、離婚原因とはなりません。

例えば、以下のようなケースでは、セックスレスが理由での離婚は認められません。

  • 夫婦のいずれかが重い病気を患っている
  • 夫婦のいずれかがうつ病などの精神疾患を患っている
  • 病気のために医師からセックスを禁止されている
  • 病気で処方された薬の影響によってセックスが身に危険を及ぼす可能性がある

上記のようなケースは、セックスができない正当の理由があることから、セックスレスによる離婚は認められないでしょう。

また、病気によってセックスができなかった場合、本人に非がないため、慰謝料請求もできません。

妊娠中でセックスができない

妻が妊娠中でセックスができない場合も、セックスレスが原因での離婚が認められません。

妊娠中の女性は、体調が優れない場合が多く、母体や胎児にセックスが影響を及ぼす可能性があるため、妻から性交渉を断られるケースがあります。

しかし、これにも妊娠中という正当な理由があると判断される場合が多く、セックスレスを理由にした離婚が認められないケースが多いでしょう。

ただし、出産後もセックスレスが長く続き、夫婦関係が悪化した場合では、セックスレスが原因での離婚が認められる場合があります。

単身赴任など仕事上の理由でセックスができない

夫や妻の単身赴任といった仕事上の理由でセックスレスになった場合も、離婚が認められないケースが多いでしょう。

単身赴任になることは、仕事においてやむを得ないためです。

単身赴任が原因で別居を余儀なくされてセックスレスになってしまった場合、正当な理由もしくは特別な事情があるとみなされ、法定離婚事由にある「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」には該当しないと判断されるケースが多い傾向にあります。

また、夫婦が長期間別居状態にあった場合、裁判でも離婚が認められるケースが多いですが、単身赴任の期間は離婚裁判における別居期間には該当しません。

ただし、単身赴任が終了した後もセックスレスの状態が長期間続いた場合は、裁判で離婚が認められる場合があります。

なお、単身赴任の場合は、夫婦が同居しないことに対して正当な理由があるため、その期間が長い場合でもそれだけが離婚理由になることはありません。同様に、正当な理由があることから、悪意の遺棄にもならないため、配偶者が単身赴任中に離婚を希望する場合は、その他の離婚原因が必要になります。

自らセックスレスの原因を作っている

セックスレスの状況を作ったのが、自分の行為や行動が原因である場合も、離婚は認められません。

セックスレスの原因を作った側から離婚を切り出しても、裁判では認められないケースがほとんどです。

自分が不貞行為を行ったり、配偶者に対してモラハラ行為やパワハラ行為を行ったりしたことがきっかけでセックスレスになった場合、その原因はあなたにあるため、配偶者が拒否した場合はセックスレスを理由にしたところで離婚できません。

また、自分の不貞行為が原因でセックスレスになった場合、あなたは有責配偶者となるため、離婚を求めたり、離婚調停・離婚訴訟を起こしたりすることもできません。

離婚成立までの手続きの流れ

セックスレスが原因での離婚を本格的に考えている場合は、離婚が成立するまでの流れを理解しておくことが大切です。

ここでは、離婚が成立するまでの手続きの流れについて解説します。具体的な流れは以下の通りです。

  • 1.離婚協議を行う
  • 2.離婚調停を行う
  • 3.離婚裁判を行う

夫婦間で離婚について話し合うのが基本ですが、話がまとまらない場合は離婚調停や離婚裁判へと進行していきます。

それぞれ詳しく解説します。

1.離婚協議を行う

セックスレスが原因で離婚を求める場合、まずは協議離婚を目指します。

協議離婚とは、夫婦間での話し合いによって離婚する方法です。裁判所に関する手続きは不要で、離婚に合意できた場合、役所に離婚届を提出して受理されれば離婚が成立します。

協議離婚では、夫婦が合意さえすれば離婚の理由は問われないほか、セックスレスの原因を作った側に慰謝料の請求が可能です。

また、相手に請求する慰謝料の金額について制限がないため、相手が合意する場合は相場よりも高い金額の慰謝料を請求できる可能性があります。

離婚協議では、配偶者に対して離婚を切り出し、離婚を求める理由を伝えたうえで、慰謝料を含めた離婚条件について話し合いを行います。

話し合いで離婚することや離婚条件に合意できた場合は、離婚協議書を作成します。

離婚協議書とは、夫婦間で合意した離婚条件を整理したり、確認したりするための合意書のことです。

離婚協議書を作成しておけば、合意内容に関して後日トラブルが発生するのを回避できます。そのため、離婚協議によって決定した慰謝料や養育費の金額、財産分与の内容、親権などについて、詳細に記載することが大切です。

また、離婚協議書は公正証書にしておくことも重要です。

公正証書とは私人(個人や会社、法人など)からの嘱託によって、公務員である公証人が権限に基づいて作成する公文書のことです。

離婚協議書を公正証書化するのは、強制執行に関して大きな違いがあるためです。

強制執行とは、両者が金銭の支払いについて合意したにもかかわらず、相手方に約束を守ってもらえない場合に、裁判所が強制的に相手の滞納分の取立てを行う手続きのことです。

離婚条件に合意し、離婚協議書を作成しても、慰謝料や養育費、財産分与などのお金が支払われないケースは、残念ながらよくあるものです。

この場合、離婚協議書を公正証書にしておけば、裁判所で強制執行の申立てを行えば、すぐに相手の財産を差し押さえられ、支払いを完結できます。

ただし、強制執行を行うには、離婚協議書の執行認諾文言を記しておくことが重要です。

執行認諾文言とは、債務不履行(金銭の支払いが行われない)の場合、強制執行を受けても異議がないことを承諾する旨の文言です。

一方、離婚協議書を作成しただけでは、金銭の支払いが行われない場合、裁判を起こして判決を得なければ、強制執行続きを行えません。手続きだけではなく、実際に金銭が支払われるまでに時間がかかってしまいます。

離婚が成立した場合は、離婚協議書の作成と協議書の公正証書化を忘れないようにしましょう。

2.離婚調停を行う

協議では離婚が成立しない場合は、離婚調停を行います。

離婚調停とは、家庭裁判所の調停手続きを利用して、夫婦が離婚の可否や離婚条件について話し合う手続きのことをいいます。

離婚の話し合いがまとまらなかった場合や、相手が離婚の話し合いに応じない場合などでは、調停による離婚を目指します。

離婚調停では2名の調停委員(男女1名ずつとなるケースが多い)が中心に、夫婦それぞれの話を聞きながら、離婚の可否や慰謝料、財産分与、親権などの離婚条件を調整します。

離婚調停は家庭裁判所で実施されるものの、あくまでも話し合いによる離婚問題の解決が図られます。調停委員からのヒアリングは夫婦別々で行われるため、感情的になることなく話し合いがスムーズに進むメリットがあります。

ただし、調停期日には本人が調停に参加する必要があり、合意となるまで何度も裁判所へ行かなければなりません。また、調停は平日の昼間に実施されるため、仕事に影響するケースがあります。

なお、調停離婚が成立するには3ヶ月から6ヶ月程度掛かるのが一般的ですが、なかには1年以上かかるケースもあります。調停が行われる回数は2回から4回程度、頻度は1ヶ月に1回程度が多い傾向にあります。

調停によって離婚が成立する場合は、離婚調停の申立人が離婚届と調停調書を役所に提出すれば、離婚は成立します。

調停でも話し合いがまとまらなかった場合(調停不成立)は、離婚裁判へと移行することになります。

3.離婚裁判を行う

離婚調停が不成立になった場合は、離婚裁判を行って離婚を目指します。

離婚裁判とは、裁判所の判決によって強制的な離婚を目指す手続きで、離婚訴訟とも呼ばれています。

協議や調停によって話し合いがまとまらない場合に、離婚裁判が提起されます。なお、裁判離婚は、相手が合意しない場合でも強制的に離婚できる唯一の手段であり、離婚を成立させるための最終手段ともいえます。

なお、離婚裁判で離婚が認められる(法定離婚事由が認められる)には、セックスレスの事実とそれによって夫婦関係が破綻していることを立証する証拠が必要になります。証拠の詳細について詳しくは後述します。

また、裁判になると自分1人で対応するのはかなり難しくなります。そのため、離婚裁判を提起する場合は、弁護士に相談したり、対応を依頼したりすることをおすすめします。

弁護士に対応を依頼した場合、裁判の手続きを任せられるほか、代理人として裁判での主張や立証を行ってくれます。

一方、弁護士費用が発生するのがデメリットとなります。離婚裁判への対応を弁護士に依頼する場合にかかる費用の相場は以下の通りです。

弁護士費用の種類 費用相場
相談料 ・弁護士に離婚問題について相談する際の費用
・5,000円から1万円程度
着手金 ・利用者からの依頼を受ける際に発生する費用
・問題が解決しなかった場合でも返還されない
・20万円から50万円程度(弁護士によって異なる)
成功報酬 ・依頼された事案が解決した際に発生する報酬
・固定金額となる場合と発生した経済的利益の数%が報酬になる場合がある
・20万円から60万円程度(慰謝料、財産分与の金額に応じて変動する場合あり)
日当・実費 ・弁護士の出張費用や出費が発生して立て替えているお金など
・5万円程度が目安

妻側のセックスレスで慰謝料を請求できる可能性がある

妻に性交渉を拒否されてセックスレスとなり離婚する場合は、妻への慰謝料請求が認められる可能性があります。

例えば、セックスレスの原因が妻の不法行為だった場合、その事実を立証して裁判所が認めた場合は、慰謝料請求を請求できます。

また、悪質な理由で性交渉を拒絶されたことでセックスレスとなった場合は、離婚と合わせて慰謝料を請求できる可能性が高いでしょう。

協議によって離婚が成立する場合、慰謝料について取り決めることなく離婚するケースが多いのが実情です。明確な離婚の理由が妻にある場合は、慰謝料を請求するべきといえるでしょう。

ただし、セックスレスがあったとしても離婚しないことを選択した場合は、不法行為として認められるほどの違法性がないと判断されるケースが多いため、慰謝料請求は難しくなるのが一般的です。

では、セックスレスで離婚する場合、慰謝料の相場はいくらぐらいなのでしょうか。次の章で詳しく解説します。

セックスレスで離婚になった際の慰謝料相場は50万~200万円程度

セックスレスが原因で離婚に至った場合、慰謝料の相場は50万円から200万円程度です。

慰謝料の金額はセックスレスの期間や婚姻期間、慰謝料を請求する相手の収入や職業、子どもの有無など、さまざまな事情が考慮されて、慰謝料の金額が決められます。

なお、離婚協議において慰謝料の交渉を行う場合、請求する金額の上限はありません。そのため、相手に対して自由な金額で請求できます。

つまり、相手が合意するなら、高額な慰謝料を獲得できる可能性があるということです。

ただし、高額な慰謝料を請求した場合、相手が態度を硬化させ、それ以降の話し合いがスムーズに進まなくなる可能性がある点には注意が必要です。

また、協議の段階から弁護士に対応を依頼している場合や、離婚調停・離婚裁判に進んだ場合は、一般的な相場を考慮した慰謝料が請求されるケースが多いといえます。

セックスレスの慰謝料が高額になりやすいケースもある

セックスレスが原因で離婚する場合、慰謝料が高額になるケースがあります。

例えば、以下のようなケースです。

  • セックスレスの期間が長い場合(3年以上)
  • 相手から拒絶される態度が厳しい(相手から激しい拒絶や暴言など)
  • 結婚してからセックスが一度もない
  • 婚姻年数が長い
  • 夫婦間に未成年の子どもがいる
  • 離婚による財産分与の額が少ない
  • 相手がセックスするための努力をしない
  • セックスを拒否された側が初婚の場合
  • 特に支障がないのにセックスを拒否された
  • 相手が自分とのセックスを拒否しており、かつ不貞行為を行っている
  • セックスレスによって、性交渉を拒否された側がうつ病などの精神病を発症した

なお、高額な慰謝料を請求するためには、上記の事情を証明する証拠が必要になります。特に裁判となった場合は、裁判所が判断するためにも証拠の存在が重要です。

ただし、セックスレスはプライベートな問題であるため、証拠による立証が難しいのが難点です。

そのため、以下の証拠を組み合わせて証明する必要があります。

  • セックスレスに関する日記やメモ(日常の生活状況や性交渉に関する状況)
  • メールのデータ
  • 会話の録音データ

証拠の詳細については後述します。

セックスレスでの離婚は財産分与や養育費の請求もできる

セックスレスが原因で離婚する場合、一般的な離婚と同じように、相手に対して財産分与や養育費を請求できます。

財産分与とは、夫婦の共同生活のなかでともに形成した財産を、それぞれの貢献度に応じて公平に分配する制度のことです。

これは、民法第768条によって規定された、離婚する人の権利です。

夫婦の共通名義となっている財産や、個人名義の財産でも夫婦の協力がなければ形成できなかった財産は、財産分与の対象となります。

また、養育費とは子どもの監護・教育のために必要な費用のことで、一般的には子どもが経済的・社会的に自立するまでにかかる費用を指します。

例えば、子どもの衣食住に必要な費用や教育費、医療費などが養育費に該当します。夫婦ごとに取り決めによって異なりますが、基本的には子どもが20歳になるまで養育費の支払いが発生します。

セックスレスが原因で妻と離婚し、夫側が親権を取得する場合は、妻に対して養育費を請求できます。一方、妻側が親権を持つ場合は、夫側が養育費を支払います。

養育費の金額は子どもの年齢や人数、健康状態、離婚する両親の収入などを総合的に考慮して判断されます。

ちなみに、子どもがいる夫婦が離婚する場合、母性優先の法則があることから、およそ90%の割合で母親が親権を得ることになります。母親が親権を獲得できないのは、以下のようなケースです。

  • 子どもを虐待している
  • 子どもの育児を放棄している
  • 母親が病気で育児ができない
  • 夫婦が別居した後、子どもが父親と暮らしている
  • 母親が精神疾患を患っている
  • 母親の監護実績が乏しい

セックスレスだけが原因で離婚が成立する場合、父親が親権を獲得するのはかなり難しいと考えておきましょう。

参考:民法第768条 財産分与|e-GOV 法令検索

セックスレスを理由に100万円以上の慰謝料請求が認められた判例

ここでは、セックスレスを理由に離婚が成立し、かつ100万円以上の慰謝料請求が認められた判例を紹介します。

まずは、妻の性行為の拒否が原因でセックスレスとなり、夫が離婚を求めた裁判です。

この事案での夫婦間の状況は以下の通りです。

  • 「異性に体を触られると気持ち悪い」などの理由により、妻が夫との性交渉を拒否
  • セックスレスとなり夫婦喧嘩が絶えない状況
  • 妻には身体的異常がない
  • 妻と仲の良い夫側の親せきによる説得にも、妻の性行為拒否の態度は改善されなかった

このような状況に対して、裁判所は以下のような判断を下します。

  • 結婚は子孫の育成を重要な目的にしており、夫婦間の性行為はその意味では通常伴うべき営みである
  • 当事者が配偶者との性行為に期待する感情を抱くのは当然
  • 妻の「男性との性行為に耐えられない性質」による夫との性行為拒否によって、夫婦関係が破綻した
  • 妻の性行為拒否やその際の言動によって夫婦関係が破綻したことが不法行為に当たり、夫が被った精神的苦痛に対して慰謝料を支払うべき

この裁判では、セックスレスが原因で婚姻関係が破綻したことと、夫に妻に対しての150万円の慰謝料請求が認められました。

また、慰謝料が500万円の高額となった判例もあります。これは、夫が性行為を拒否したことでセックスレスとなり、妻が離婚を求めた裁判です。

この事案での夫婦の状況は以下の通りです。

  • 夫婦間には未成年の子どもが2人いる
  • 夫がポルノ雑誌に異常に関心を示し、自慰行為にふけり妻との性行為を拒否
  • 長男出産後にはすでに夫婦間の性行為はほとんどない状態に
  • 妻はどうしてももう1人子どもが欲しかったため、二男妊娠の際に夫に頼んで性行為に応じてもらう
  • 妻は夫に対して通常の性生活を求めたものの、夫は妻と同室で寝ることすら拒否
  • 夫がキセル乗車やゴミ箱の物を拾う、他人の物を盗む、落ちているガムを子どもに食べさせようとするなどの行動を取る
  • 妻がやめるようにいっても改善されない
  • 妻が夫との生活に耐えられず夫に離婚を切り出すと、夫は生活の改善を約束
  • しかし、夫の生活は改善されず、妻が子どもを連れて別居を開始

上記のような状況に対し、夫婦の婚姻関係は夫の異常な性癖によって破綻している、その責任は一方的に夫にある、といった判断を下します。

結果、セックスレスが原因の離婚と、妻から夫に対する500万円の慰謝料請求が認められました。

セックスレスによる離婚や慰謝料請求には準備が大切

妻からセックスを拒否されてセックスレスとなり、それが原因で離婚を求めたり、慰謝料を請求したりする場合、準備が非常に大切です。

準備をせずに離婚を切り出した場合、離婚も慰謝料請求も認められない可能性があるためです。

特に、セックスレスを客観的に立証するのはかなり難しいため、離婚を考えている場合は日ごろから証拠を集めておくことが重要になります。

まずは、夫婦間の性生活の状況を記録することから始めましょう。妻にセックスを拒否された日をメモに記載したり、その日の出来事を日記に記録したりするのも有効です。

また、お互いの生活状況を記録しましょう。それぞれが何時に起き、家を出て、帰宅し、寝るのかを毎日記録することで、セックスができる状態かどうかを証明できます。

さらに、相手をセックスに誘ったメールやメモ、録音データなどを保存しておくと、セックスレスの証拠となります。

他にも実際に離婚した場合の財産分与や養育費、慰謝料の請求に備えて、相手の財産について調べておきましょう。

次の章では、離婚を切り出す前のプロセスや裁判に有利な証拠の集め方について解説します。

離婚を切り出す前に性交渉を誘うプロセスを踏む

セックスレスが原因で離婚したい場合、離婚を切り出す前に妻を性交渉に誘いましょう。

離婚の切り出し方を間違えた場合、離婚トラブルに発展する恐れがあるためです。

セックスレスによる離婚を決意しているのであれば、以下の手順を踏んで離婚の準備を進めてきましょう。

  1. 自分から性交渉を求める
  2. 性交渉を拒否される理由を聞く
  3. 自分側に理由がある場合は改善する

裁判においてセックスレスであることを主張するためには、自分が積極的に性交渉に誘っている状況が必要です。

これは、相手から「努力が足りなかった」という反論を防ぐためにも重要です。

次に、セックスを拒否された場合は、その場で拒否の理由を聞き出します。もし、自分の責任を相手から指摘された場合は、改善の努力をした上で、再び性交渉に誘います。

これを繰り返しても改善されなければ、相手に対して離婚を切り出しましょう。

もし、セックスレスが理由で離婚したいことを恥ずかしくて言えない場合は、別居してから弁護士に対応してもらうのがおすすめです。

裁判に有利なセックスレスの証拠を収集する

セックスレスによる離婚問題を解決するには、セックスレスの証拠を集めることが大切です。

特に、離婚裁判にまで発展した場合、離婚の可否や慰謝料の請求権、請求金額は、すべて裁判所が判断することになります。

そのため、セックスレスであることを客観的に立証できる証拠の存在が重要になります。

準備しておきたい証拠の種類は、以下の2つです。

  1. セックスレスが「婚姻を継続し難い重大な事由」になるほど重大であることを証明する証拠
  2. セックスレスに対して慰謝料請求ができるほどの違法性があることを証明する証拠

セックスレスでの離婚の際には、以下のような証拠を準備しましょう。

証拠の種類 内容・効果
手書きの日記やメモ ・セックスをしたかどうかを毎日記録して、性交渉がなかったことを証明
・性交渉が拒否、拒絶された場合は、反応や言動を詳細に記録
・改善を求められ努力しても応じてもらえなかったことを記録
・セックスとは関係ない日常の出来事も書くことで、改ざんや記憶違いとの反論を避けつつ、証拠の価値が向上する
・起床時間、出発時間、帰宅時間、就寝時間など、日ごろの生活状況を記録(忙しい、すれ違いで性交渉できなかったとの反論の回避のため)
夫婦間のメールやチャットのやりとり ・当事者同士のやりとりの中で、セックスの拒否の理由やいきさつ、責任の程度が証明できるケースあり
・メールで性交渉に誘ったものの、断られた際のやりとりを保存
会話の録音データ ・夫婦の会話や性行為を拒否された際の会話を録音
・スマートフォンやボイスレコーダーを使用
・会話の流れを判断できるよう、会話全体を録音することが重要
・音声が鮮明に記録されるよう注意する

他にも、相手の不貞行為やモラハラ、DVなどが原因でセックスレスとなった場合は、それぞれの証拠を準備しておきましょう。

セックスレスによる離婚問題は弁護士への相談がおすすめ

ここまでセックスレスが原因の離婚問題について解説してきました。

夫婦間のセックスレスの問題はセンシティブな問題であるため、親や友人などに相談しにくいものであり、なかには1人で抱え込んでしまう方もいらっしゃるでしょう。

また、セックスレスや離婚に関しては、自分だけで適切に判断することが難しいうえ、間違った判断を下した場合は、夫婦関係がさらにこじれたり、不利な条件での離婚となったりする恐れがあります。

さらに、相手の不貞行為やDV、モラハラなど、他の要因が絡むこともあり、安易に解決できる問題ではありません。

このような場合は、弁護士に相談することを検討しましょう。

弁護士に相談すれば、夫婦の状況をヒアリングしたうえで、法律の観点からセックスレスを理由に離婚できるか、慰謝料を請求できるか、アドバイスしてもらえます。

ま他、離婚協議や調停、裁判の代理人となってもらえたり、必要な手続きを代行してもらえたりするため、離婚問題の解決がスムーズに進む可能性もあります。

1人での対応が難しい場合は、離婚に強い弁護士に相談してください。

まとめ

妻から性交渉を拒否されてセックスレスになった場合、それを理由に離婚することが可能です。

ただし、協議離婚や調停離婚では離婚できるものの、離婚裁判となった場合、セックスレスだけが理由で離婚するのは難しくなるため、法定離婚事由である「婚姻を継続し難い重大な事由」であることを証明する必要があります。

また、セックスレスを理由に離婚が成立した場合、相手に慰謝料を請求できる可能性があります。慰謝料請求のためには、証拠集めや日常生活の記録といった準備が必要になるなど、慎重な行動が大切です。

妻側に原因があるセックスレスを理由に離婚したい方は、本記事を参考に離婚問題の解決を目指しましょう。

【Q&A】セックスレスの離婚に関するよくある質問

セックスレスを理由に離婚したら親権に影響はある?

セックスレスを理由に離婚した場合でも、親権に影響することはありません。

裁判所が夫婦の離婚時に子どもの親権を考える場合、重視されるのは子どもの福祉であり、夫婦の問題とは関係ないためです。

親権は夫婦の子どもへの愛情や経済力、これまでの子育て状況、子どもとの精神的な絆の強さなどを総合的に判断して、どちらのもとで養育するべきかが判断されます。

そのため、セックスレスの原因がある方に、親権が渡ることもあります。なお、子どもが15歳以上の場合は、子どもの気持ちが尊重されたうえで親権者が決まります。

婚姻時に子どもを希望していたものの、セックスレスにより離婚した場合は慰謝料を請求できる?

妻に性交渉ができない正当な理由がないのに、性交渉を拒絶されてセックスレスとなり、それが原因で離婚する際は、相手に対して慰謝料を請求できる場合があります。

これは、離婚の責任が妻にあるためです。

質問のように、結婚する際に子どもを希望していたのであれば、正当な理由なく性交渉を拒絶するのは、夫婦の協力義務に違反していると考えられます。

夫婦の協力義務は、民法によって規定されていることから、セックスレスの原因が妻にあることに対する慰謝料に加え、夫婦の協力義務違反の慰謝料を請求できる可能性があります。

参考:民法大752条 同居、協力及び扶助の義務

妻側がセックスを拒否する理由は?

妻側がセックスを拒否する場合、以下のような理由があると考えられます。

  • 妻側に性交渉をしたいという気持ちがなくなった
  • 生活環境や容姿、身体的な変化により性的な目で見られなくなった
  • 共働きにより性交渉の機会がない
  • 精神状態や健康状態の悪化によりそもそも性交渉ができない

それぞれ詳しく解説します。

妻側に性交渉をしたいという気持ちがなくなった

妻が性交渉をしたいという気持ちがなくなった場合、セックスを拒否される可能性があります。

例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • 家事や育児で疲れている
  • そもそも性交渉が好きではない
  • 新鮮味や興奮を感じられない

家事や育児に追われて疲れているため、夜に性交渉をする気になれず、妻に拒否されるケースがあります。

また、夫に愛情があるため対応していたものの、そもそも性交渉が好きではない場合、結婚してからしばらく経過すると、性交渉をしたくないと主張されることもあるでしょう。

他にも、婚姻してからともに時間を過ごしているせいで、相手に対する新鮮味や興奮が失われることもあり、性交渉をする雰囲気にならないこともあります。

生活環境や容姿、身体的な変化により性的な目で見られなくなった

生活環境や容姿、身体の変化に変化が起こり、妻が夫を性的な目で見られなくなった場合も、性交渉を拒否されるケースがあります。

例えば、子どもができた場合、妻は母に、夫は父になります。立場や意識、考え方が変化することで、お互いを性的な対象として見られなくなってしまうことがあるのです。

また、加齢による容姿や身体の変化が起きて、セクシャルな魅力を感じなくなったり、肉体的よりも精神的なつながりに満足したりして、妻から性交渉を拒否されることもあります。

共働きにより性交渉の機会がない

夫婦が共働きで共有できる時間が少なくなり、性交渉の機会がなくなるケースがあります。

性交渉をする時間がない状況が続くことで、そのままセックスレスとなってしまうのです。

また、夫婦に子どもがいる場合は、仕事に加えて日々の生活に追われやすくなり、性交渉にかけられる時間が少なくなるほか、セックスをする気持ちになれないこともあります。

時間や体力、気持ちの余裕がなくなると、セックスレスになってしまう夫婦が多いといえるでしょう。

精神状態や健康状態の悪化によりそもそも性交渉ができない

妻の精神状態や健康状態が悪化したり、衰えたりすることで、性交渉ができないケースがあります。

例えば、生活の辛さや悲しみなどが原因で精神的な不安を感じている場合や、うつ病といった精神的な疾患を患っている場合は、性交渉ができない場合があります。

また、怪我や病気をしている場合や、加齢によって性的機能が衰えている場合でも、セックスレスになることがあります。

精神状態や健康状態が悪化している場合は、夫婦間でコミュニケーションを取りながら、フォローやケアを重視することが大切です。

心身ともに良好な状況となったところで、性交渉に誘ってみるといいでしょう。

セックスレスが原因の離婚率は?

セックスレスが原因での離婚率については、株式会社Liamが運営するメディア「ふくむすび」が調査を行っています。

20代から60代のセックスレスを経験したことがある300人を対象に調査したところ、セックスレスが原因で離婚に至ったのは、全体の25.2%という結果でした。

男性よりも女性の離婚率が10%以上も高くなっており、女性の方がセックスレスに関して現実的に考えているといえます。

また、離婚はしていないものの、離婚を考えたことがあると回答した人の割合が全体の30%以上を占めているほか、離婚する予定と回答した人が4.6%となりました。

セックスレスが原因となって離婚するケースや離婚を考えたケース、離婚する予定のケースが全体の6割以上を占めていることを考えれば、セックスレスは夫婦の離婚問題に影響しやすい問題であるといえるでしょう。

参考:セックスレスの離婚率は25.2%!夫婦のセックスレスについてアンケート調査|ふくむすび

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更新日 : 2024年10月09日
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