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2025年06月現在

妻側の拒否によるセックスレスを理由に離婚できる?できるケースや慰謝料について解説

セックスレス 妻側拒否 離婚

「妻がセックスを拒否する」という状況が長期間続くと、夫婦関係のあり方に悩み、離婚を真剣に考え始める方もいるのではないでしょうか。

とはいえ、実際にセックスレスを理由に離婚が成立するのか、また慰謝料を請求できるのか、不安を感じる方も多いでしょう。

結論からいえば、離婚協議や離婚調停の場合は、双方の合意さえあれば離婚の理由は問われません。つまり、セックスレスが原因であっても、夫婦が納得していれば離婚は可能です。実際、セックスレスを原因とする離婚は全体の1〜2割にのぼるという調査もあります。

一方、裁判でセックスレスを離婚理由とする場合、それだけで離婚が認められるとは限りません。裁判で離婚を成立させるには、夫婦双方で合意をするか、民法で定められた「法定離婚事由」があることを証明する必要があります。

たとえ「セックスレス」「性行為の拒否」の事実があっても、それが法定離婚事由に当たると判断されなければ、裁判所が離婚を認めない可能性があります。

裁判所に離婚を認めてもらうためには、夫婦関係がすでに修復困難な状態にあることを立証しなければなりません。実際に、裁判所が関係の回復が見込めないと判断すれば、たとえ妻が離婚を拒否していても、離婚が認められることがあります。

ただし、夫婦ともに性交渉に積極的でなかった場合や、病気・妊娠・単身赴任など正当な理由で性交渉ができない場合、自らセックスレスの原因を作っている場合などには、離婚が認められないこともあるため、注意が必要です。

このように、セックスレスをめぐる法的判断は、個別の事情や証拠の有無によって大きく変わってきます。「この状況は離婚理由として認められるのか?」「慰謝料は請求できるのか?」といった疑問がある方は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。経験豊富な弁護士であれば、妻からの拒否の経緯や夫婦間の状況を丁寧に整理し、あなたにとって最善の解決策を一緒に考えてくれるはずです。

本記事では、妻側の拒否によるセックスレスで離婚できるか、セックスレスを原因とした離婚が認められにくいケースを解説します。併せて、セックスレスから離婚に至った方の体験談、離婚の手続きの流れ、慰謝料の判例や金額を左右するポイントなどを紹介します。

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南陽輔 弁護士
監修
一歩法律事務所
南 陽輔(弁護士)

離婚を招くセックスレスとは

セックスレスとは

セックスレスとは、夫婦やカップルの間で特別な事情がないにもかかわらず、1ヵ月以上、性行為やセクシュアルコンタクトがない状態のことを指します。性交渉は、夫婦が互いの愛情を確認し合い、精神的な安定を得る大切な行為であり、円満な関係を維持するうえで重要な役割を果たします。

そのため、セックスレスの状態が続いたり、どちらか一方が性交渉を拒否し続けたりすると、拒否された側は強い精神的苦痛を感じることがあります。また、性的欲求が満たされないことで不倫をしたり、離婚を考えたりする可能性もあるでしょう。

子どもを望んでいるケースでは、セックスレスによって子どもをもてないため、より深刻な状況に陥るかもしれません。夫婦関係にひずみが生じ、最終的に離婚という選択に至るケースもあるでしょう。

実際、ツナグ離婚弁護士を運営する株式会社Clamppyが1,000人の男女を対象に実施したアンケートでは、婚姻中にセックスレスを経験した人のうち「セックスレスが原因で不倫・離婚をした(された)」と答えた人が9%、「セックスレスによって夫婦仲が変化した」と回答した人は20%にのぼりました。

アンケートには以下のような具体的な声も寄せられており、セックスレスが夫婦の距離や関係性に大きく影響を及ぼしている実態が浮き彫りになっています。

「お腹は出てるし、お酒臭いし、いろんな言い訳をして10年以上放置されました。子どもがいるから一緒に住んでいるだけで、最近は会話もなく、離婚を考えています」

「産後からレスとなり、気持ちがどんどん冷めて今では抱かれたくもありません。離婚も考えるようになりました」

「会話がなくなり、相手への興味も期待も薄れ、離婚を意識するようになりました」

「すでに夫婦関係が悪化していた中でレスが加わり、さらに距離が遠くなった結果、離婚も自然な流れと感じています」

このように、セックスレスは単なる性的問題にとどまらず、夫婦の信頼関係や心のつながりをも蝕み、離婚に至る重大な原因となり得るのです。

妻側の拒否によるセックスレスを理由に離婚できる?

セックスは、夫婦の婚姻関係を維持するために重要であるとされていますが、日本の20代から50代の既婚者の約68%がセックスレス傾向にあると回答しています。

また、とある避妊具メーカーが2008年に発表した調査によれば、日本人の年間の性交回数は48回(週1回程度)で、世界平均の103回の半分以下であり、世界でも最低水準となっています。

このように、日本ではセックスレスの割合が多いといえますが、夫婦間で妻側にセックスを拒否されてセックスレスになった場合、夫は離婚できるのでしょうか?

結論、離婚協議や離婚調停であれば、夫婦双方が同意すれば離婚が可能であるため、理由がセックスレスであっても離婚が成立します。

一方、離婚裁判まで発展し、さらに妻が離婚に合意しない場合は、法定離婚事由を証明して裁判所に離婚を認めてもらう必要があります。

離婚協議・離婚調停|夫婦双方が同意すれば離婚できる

セックスレスを理由に離婚したい場合、妻側が離婚に同意すれば離婚可能です。

離婚の是非については、まずは夫婦同士で話し合うのが一般的です。このように、話し合いによって成立する離婚を離婚協議といいます。

当事者同士が話し合って離婚に同意する場合、離婚の理由は問われないため、セックスレスが原因での離婚でも離婚できます。

なお、セックスレスが原因で離婚する際、その責任が妻にある場合は妻に対して慰謝料を請求できる可能性もあります。

また、話し合いでの離婚の合意が得られず、調停に至った場合でも、夫婦間で合意できればセックスレスが原因でも離婚可能です。

離婚調停とは
離婚調停とは、家庭裁判所の調停手続きを利用して、調停員という第三者を挟んで夫婦間で離婚条件について話し合い、合意に至ることで離婚することです。

夫婦間で協議したものの、離婚について合意できないケースや、配偶者が話し合いに応じない場合に、調停での離婚を目指すことになります。

離婚調停は、裁判ではなく、調停委員による仲介のもと、離婚条件を話し合いまとめることを目的としています。

そのため、離婚訴訟の判決に盛り込むのが難しいようなことについても、調停では合意できます。

離婚裁判|夫婦双方が合意するか法定離婚事由を証明すれば離婚できる

離婚調停でも離婚が成立しない場合、離婚訴訟(離婚裁判)に移行しますが、セックスレスだけが原因の場合、裁判では離婚しにくくなります。

なぜなら、セックスレスや性行為を拒否する行動は、法定離婚事由ではないためです。

法定離婚事由とは、民法770条第1条に規定されている法的な離婚原因のことで、裁判所は法定離婚事由が存在する場合に、離婚の判決を出します。

民法に規定されている法定離婚事由は以下の通りです。

法定離婚事由
  • 配偶者による不貞行為
  • 配偶者による悪意の遺棄
  • 配偶者の生死が三年以上明らかではないとき
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復が見込めない
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由がある

参考:民法第770条第1項 裁判上の離婚|e-GOV 法令検索

上記に示す通り、セックスレスや性行為の拒否は、裁判上の離婚事由として規定されていません。そのため、客観的な証拠によってセックスレスが認められた場合でも、それだけで離婚が認められるわけではないのです。

ただし、セックスレスや性行為の拒否によって、法定離婚事由にある「その他婚姻を継続し難い重大な事由」がある状況に至っている場合は、裁判所が認定すれば離婚判決が下される可能性があります。

たとえば、以下のようなケースは「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。

  • 配偶者が性行為を拒否しながら不倫している
  • 子どもを望んでいるにもかかわらず、配偶者が性交渉に応じない
  • セックスレスが原因で夫婦が長期間別居している
  • セックスレスにより、拒否された側がうつ病などの精神的疾患を患った
  • 結婚後、一度も性交渉がなく、性生活がまったく営まれていない
  • 性行為を拒否されている側に落ち度がない(特殊な性的要求などがない)
  • 配偶者が性交不能(EDなど)や同性愛者であることが結婚後に初めて判明した
  • 性行為を拒否されている側に落ち度がない(特殊な性的要求などがない)
  • 配偶者が性行為を拒否しながら自慰行為やアダルトコンテンツに依存している
  • 配偶者が性行為を拒否する明確な理由を示さず、話し合おうとしても頑なに拒否し続けている

また、妻からセックスを拒否され、セックスレスの状態になることは、夫にとって精神的に辛い状況といえます。その状況で離婚に至った場合は、夫は妻に対して慰謝料を請求できる場合があります。

この場合の慰謝料の相場は、50万円から200万円程度の金額となるケースが多いですが、夫婦間の事情や状況によっては、それ以上の慰謝料請求が認められる場合もあります。

離婚裁判の離婚の成立率は8割

協議・調停で離婚が成立しない場合は、最終的には家庭裁判所で離婚裁判を行うことになります。実際、裁判まで進んだケースのうち、約8割が離婚の成立に至っています。裁判になれば必ず離婚できるわけではありませんが、離婚が認められる可能性は比較的高いといえるでしょう。

セックスレスが原因での裁判離婚が認められにくいケース

セックスレスが原因で裁判離婚が認められる場合があれば、裁判離婚が認められない場合もあります。

具体的には、以下に該当する場合、離婚は認められません。

  • 元々夫婦ともに性交渉に積極的でない場合
  • 正当な理由があってセックスできない場合
  • 自らセックスレスの原因を作っている場合

それぞれ詳しく見ていきましょう。

元々夫婦ともに性交渉に積極的でない場合

夫婦のいずれもがセックスに積極的ではない状況で、夫婦の片方だけが離婚を希望している場合、裁判離婚が認められないケースがあります。

夫婦のいずれもがセックスに消極的な状況として、以下のようなケースが考えられます。

  • お互いに相手に関心がなくなっている場合
  • お互いに性交渉に関心がない
  • 仕事などで疲れていてセックスしたくない
  • 高齢の夫婦でセックスの必要性を感じていない

性的な欲求がある若い夫婦が配偶者に関心をなくしてしまっていて離婚を希望する場合は、セックスレスが原因での離婚が認められます。

言い換えれば、積極的に行動しなかったために性交渉ができなかった場合、「本当は性交渉がしたかった」という理由で離婚できる可能性は低くなります。

一方、セックスに関心がなく、どちらがきっかけでもないセックスレスが長期間に渡って継続している場合でも、夫婦のいずれかが相手や家族に対する愛情を失っていない場合は、離婚は認められないでしょう。

セックスレスが原因で離婚する場合は、セックスを求めたけれども拒絶されたという事実が必要になります。

なお、夫婦のどちらもセックスを望んでいない状況で離婚する場合、どちらにも非がないと判断されるため、相手に対して慰謝料を請求できないのが一般的です。

正当な理由があってセックスできない場合

夫婦がセックスレスの状況にあるものの、正当な理由があってセックスができない場合は、離婚は認められません。

具体的には、以下のようなケースの場合です。

  • 病気でセックスができない
  • 妊娠中でセックスができない
  • 単身赴任など仕事上の理由でセックスができない

それぞれ詳しく解説します。

病気でセックスができない

夫婦のいずれかの病気が原因となってセックスができず、セックスレスに至った場合は、離婚原因とはなりません。

たとえば、以下のようなケースでは、セックスレスが理由での離婚は認められません。

  • 夫婦のいずれかが重い病気を患っている
  • 夫婦のいずれかがうつ病などの精神疾患を患っている
  • 病気のために医師からセックスを禁止されている
  • 病気で処方された薬の影響によってセックスが身に危険を及ぼす可能性がある

上記のようなケースは、セックスができない正当の理由があることから、セックスレスによる離婚は認められないでしょう。

また、病気によってセックスができなかった場合、本人に非がないため、慰謝料請求もできません。

妊娠中でセックスができない

妻が妊娠中でセックスができない場合も、セックスレスが原因での離婚が認められません。

妊娠中の女性は、体調が優れない場合が多く、母体や胎児にセックスが影響を及ぼす可能性があるため、妻から性交渉を断られるケースがあります。

しかし、これにも妊娠中という正当な理由があると判断される場合が多く、セックスレスを理由にした離婚が認められないケースが多いでしょう。

ただし、出産後もセックスレスが長く続き、夫婦関係が悪化した場合では、セックスレスが原因での離婚が認められる場合があります。

単身赴任など仕事上の理由でセックスができない

夫や妻の単身赴任といった仕事上の理由でセックスレスになった場合も、離婚が認められないケースが多いでしょう。

単身赴任になることは、仕事においてやむを得ないためです。

単身赴任が原因で別居を余儀なくされてセックスレスになってしまった場合、正当な理由もしくは特別な事情があるとみなされ、法定離婚事由にある「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」には該当しないと判断されるケースが多い傾向にあります。

また、夫婦が長期間別居状態にあった場合、裁判でも離婚が認められるケースが多いですが、単身赴任の期間は離婚裁判における別居期間には該当しません。

ただし、単身赴任が終了した後もセックスレスの状態が長期間続いた場合は、裁判で離婚が認められる場合があります。

なお、単身赴任の場合は、夫婦が同居しないことに対して正当な理由があるため、その期間が長い場合でもそれだけが離婚理由になることはありません。同様に、正当な理由があることから、悪意の遺棄にもならないため、配偶者が単身赴任中に離婚を希望する場合は、その他の離婚原因が必要になります。

自らセックスレスの原因を作っている場合

セックスレスの状況を作ったのが、自分の行為や行動が原因である場合も、離婚は認められません。

セックスレスの原因を作った側から離婚を切り出しても、裁判では認められないケースがほとんどです。

自分が不貞行為を行ったり、配偶者に対してモラハラ行為やパワハラ行為を行ったりしたことがきっかけでセックスレスになった場合、その原因はあなたにあるため、配偶者が拒否した場合はセックスレスを理由にしたところで離婚できません。

不貞行為の定義と判断基準

また、自分の不貞行為が原因でセックスレスになった場合、あなたは有責配偶者となるため、離婚を求めたり、離婚調停・離婚訴訟を起こしたりすることもできません。

妻側の拒否によるセックスレスで離婚に至った方の体験談

先述した通り、当社が行ったアンケートでは、「セックスレスが原因で不倫・離婚をした(された)」と答えた人が9%にのぼります。

実際に、妻側の拒否によるセックスレスで離婚に至った人は、どのような経緯でセックスレスになり、最終的に離婚を選んだのでしょうか?

ここでは、4つの体験談をご紹介します。

  • 体験談1.出産を機に妻がセックスを拒否するようになり離婚へ
  • 体験談2.セックスレスから愛情がなくなり離婚へ
  • 体験談3.忙しさから夫婦関係に溝ができ離婚へ
  • 体験談4.妻の浮気からセックスレスになり離婚へ

体験談1.出産を機に妻がセックスを拒否するようになり離婚へ

結婚当初はごく普通に夫婦生活がありましたが、妻の出産をきっかけに状況が一変しました。産後の体調不良や育児の疲れもあったとは思いますが、半年、1年と経っても関係は戻らず、妻は「もうそういう気になれない」とセックスを完全に拒否するように。

話し合いをしても、「育児に集中したい」「母親になったから気持ちが変わった」と言われるばかりで、夫婦としての距離がどんどん開いていきました。自分は“家族”ではあっても“パートナー”ではないんだと感じる日々に耐えきれず、最終的に離婚を選びました。

出産後の育児や家事に追われ、性交渉に興味をもてなくなる女性は少なくありません。心身ともに疲れ果ててしまい、夜に性交渉を求められても応じる余裕がなく、結果的に拒否されることが増えることもあるでしょう。

出産以外にも、下記のような理由で性交渉を拒否するケースもみられます。

  • そもそも性交渉が好きではない
  • 新鮮味や興奮を感じられない
  • 精神的・身体的な不調や疾患がある

妻が元々性交渉にあまり興味がないタイプの場合、結婚当初は夫に愛情があるからこそ応じていたものの、年月とともに無理をしなくなり、次第に拒否するようになることもあります。

また、夫婦としての時間が長くなる中で、相手に対する新鮮味やドキドキ感が薄れ、そうした気持ちの変化がセックスレスにつながる場合もあるでしょう。

さらに、精神的に不安定な状態や、うつ病などの疾患、あるいは怪我・病気・加齢による身体的な問題も原因になります。

体験談2.セックスレスから愛情がなくなり離婚へ

セックスレスが始まったのは、特に大きなきっかけもなく、なんとなく互いに誘わなくなったことが始まりでした。最初のうちは気にしないようにしていたものの、月日が経つにつれ、手をつなぐことも、会話をすることも減っていきました。

そのうちに、相手の存在がただの「同居人」のように感じられるようになり、次第に愛情も薄れていきました。「どうして一緒にいるんだろう」と思う時間が増え、自然と離婚を意識するように。気づけば、愛のない結婚生活を続ける意味を見出せなくなっていました。

性交渉は、夫婦が互いの愛情を確認し合い、信頼関係を深めるコミュニケーションの1つです。そのため、セックスレスの状態が続くと、心の距離が広がり、次第に愛情も薄れていくこともあります。

「なんとなく誘わなくなった」と感じるようなセックスレスでも、その背後には何らかの原因が潜んでいることが少なくありません。

たとえば、加齢に伴う容姿や体型の変化により、セクシャルな魅力を感じにくくなったり、精神的なつながりだけで満足するようになったりすることがあります。

また、子どもが生まれて夫婦の役割や考え方が変化し、互いを性的な対象として見られなくなるケースもあります。

体験談3.忙しさから夫婦関係に溝ができ離婚へ

共働きで、夫婦ともに仕事が多忙だった私たちは、日々の生活に追われる中で、ゆっくり会話をする時間すら取れなくなっていました。疲れて帰ってきて、最低限の会話だけを交わし、寝る。そんな生活が続き、自然と夫婦のスキンシップもなくなっていきました。

気づけば、セックスレスの状態が1年以上続き、話し合いを試みても「忙しいから無理」と流される日々。そうして溝は深まるばかりで、夫婦関係はすっかり冷え切ってしまいました。心が通わないまま一緒にいる意味を見失い、最終的に離婚を決断しました。

共働きの夫婦の場合、共有できる時間が少なくなり、性交渉の機会がなくなるケースがあります。

また、夫婦に子どもがいる場合は、仕事に加えて日々の生活に追われやすくなり、性交渉にかけられる時間が少なくなるほか、セックスをする気持ちになれないこともあります。

時間や体力、気持ちの余裕がなくなると、セックスレスになってしまう夫婦が多いといえるでしょう。

体験談4.妻の浮気からセックスレスになり離婚へ

ある日、妻のスマホに見知らぬ男性とのやりとりを見つけ、浮気が発覚しました。問い詰めたところ、しばらく前から関係があったことを認められました。それ以来、妻とは完全にセックスレスに。というより、浮気を知ってからは自分の中で妻を“女性”として見られなくなってしまいました。

妻からの謝罪もなく、「私だって満たされてなかった」と開き直られたこともあり、気持ちは一気に冷めてしまいました。浮気そのものももちろん許せませんでしたが、それによって壊れてしまった夫婦の信頼関係と、セックスレスという現実が決定打となり、離婚に至りました。

配偶者の浮気が発覚すると、それをきっかけにセックスレスになるケースは少なくありません。浮気を知った側が相手を性的対象として見られなくなったり、信頼関係が壊れたりすることで、夫婦関係に大きな亀裂が生じるためです。

民法上、夫婦には貞操義務が課せられており、配偶者以外との性的関係を持つことは不貞行為とされます。不貞行為が証明された場合、離婚請求が認められるだけでなく、慰謝料請求の対象にもなります。

離婚裁判においては、妻が夫以外との不貞行為があったことを証明し、裁判所が認めた場合に離婚が成立します。

なお、不貞行為の証拠となるのは、以下のようなものです。

不貞行為の証拠となるもの 内容・注意点
性交渉や裸体の写真・映像 ・性交渉時や裸、それに近い状況、旅行で同じ部屋に宿泊したことがわかる写真や映像などは有力な証拠に
・配偶者と不倫相手の顔がわかるように撮影する
・配偶者のスマートフォンに保存されている写真は、自分のスマートフォンに転送もしくは相手のスマートフォンごと撮影する
ラブホテルや自宅への出入りがわかる写真・映像 ・ラブホテルや自宅へ出入り(入る場面と出てくる場面の両方)、キス、抱き合っているシーンの写真や映像も証拠になる
・撮影日時と場所がわかるように撮影
・配偶者と不倫相手の顔がわかるように撮影する
・オリジナルのデータは必ず残しておく(編集しない)
配偶者と不倫相手の会話の録音 ・配偶者の車やカバンにICレコーダーを忍ばせて、2人の会話を録音できれば証拠になり得る
・性行為に及んでいる場面や、2人が性的な関係であることを示す発言が録音できれば強力な証拠に
・オリジナルデータは必ず残しておく(編集しない)
不貞行為を認める念書もしくは録音データ ・配偶者が不貞行為を認めた場合は念書などの書面にしておけば強い証拠に
・返書には、不貞行為の開始の時期や機関、回数、不倫相手の名前と職業、出会ったきっかけ、不倫相手は配偶者が既婚者であることを知っていたか、といった内容を具体的に記載する
・不貞行為について話し合う場合、録音しておくのも有効
・録音する場合は、不貞行為を認めさせることを無理にいわそうとしない(裁判所に証拠として音声の提出が求められることがある)
メールやチャット、SNS ・誰のスマートフォンなのかわかるよう、スマートフォン全体の写真を撮影する
・メッセージの送信日時がわかるように撮影する
・メッセージの前後が途切れてないことがわかるように撮影する
・性交渉に及んだことを示すやりとりは証拠になり得る
・性行為を行ったことを推測させるやりとりは、ホテルのレシートやクレジットカードの履歴など合わせれば、性交渉があった証拠になる可能性がある
不倫相手との通話履歴 ・不倫相手との通話履歴も証拠になる可能性がある
・他の証拠と合わせれば不貞行為を立証できるケースがある
レシートやクレジットカードの明細書 ・不倫に利用したホテルや、不倫相手に対するプレゼントなどのレシートやクレジットカードの明細書も証拠になる
・メールやチャット、SNSでのやりとりや写真と合わせれば、証拠になる可能性がある
興信所(探偵事務所)に依頼した調査 ・自分で証拠を集めるのが難しい場合は、興信所に調査を依頼する
・興信所は配偶者と不倫相手の行動の尾行、写真や動画の撮影、報告書の作成が可能
・数十万~数百万程度の調査費用必要になる

離婚成立までの手続きの流れ

セックスレスが原因での離婚を本格的に考えている場合は、離婚が成立するまでの流れを理解しておくことが大切です。

ここでは、離婚が成立するまでの手続きの流れについて解説します。具体的な流れは以下の通りです。

「セックスレス」で離婚するための流れ
  • 1.離婚協議を行う
  • 2.離婚調停を行う
  • 3.離婚裁判を行う

夫婦間で離婚について話し合うのが基本ですが、話がまとまらない場合は離婚調停や離婚裁判へと進行していきます。

それぞれ詳しく解説します。

1.離婚協議を行う

セックスレスが原因で離婚を求める場合、まずは離婚協議を目指します。

離婚協議とは

離婚協議は夫婦間の話し合いで合意すれば成立し、裁判所を通さず役所に離婚届を提出するだけで手続きが完了します。離婚協議では、夫婦が合意さえすれば離婚の理由は問われません。

話し合いでは、離婚理由や慰謝料、養育費、財産分与などの条件を取り決めます。合意内容は「離婚協議書」として文書化し、将来のトラブルを防ぐためにも内容を明確にしておくことが大切です。

財産分与とは

さらに、協議書を「執行認諾文言を記載した公正証書」にしておくと、相手が慰謝料や養育費の支払いに応じない場合でも、裁判を経ずに財産の差し押さえ(強制執行)が可能になります。

離婚が成立した場合は、離婚協議書の作成と協議書の公正証書化を忘れないようにしましょう。

離婚協議の概要や費用、離婚協議書の書き方については、下記の記事も参考にしてみてください。

2.離婚調停を行う

協議で離婚が成立しない場合は、離婚調停を行います。

離婚調停とは

離婚調停とは、家庭裁判所の調停委員が仲介し、夫婦間で離婚やその条件を話し合う手続きです。男女1名ずつの調停委員が、夫婦それぞれから意見を聞き、慰謝料や親権などの条件を整理します。夫婦別々に調停委員と話をするため、冷静に話し合いやすいのが特徴です。

ただし、調停は平日昼間に行われ、何度も裁判所に足を運ぶ必要があるため、仕事への影響も考慮が必要です。調停の回数は月1回ペースで2〜4回程度、期間は通常3〜6ヵ月かかります。

調停が成立すれば、調停調書と離婚届を役所に提出して離婚が成立します。合意に至らない場合は、離婚裁判に進むことになります。

離婚調停の流れや費用、不利になる発言などは、下記の記事で詳しく解説しています。

3.離婚裁判を行う

離婚調停が不成立になった場合は、離婚裁判を行って離婚を目指します。

離婚裁判とは

離婚裁判(離婚訴訟)とは、裁判所の判決によって離婚を成立させる手続きです。調停で合意できない場合に提起され、相手が離婚に同意しなくても裁判所が認めれば、離婚が成立します。

なお、離婚裁判で離婚が認められる(法定離婚事由が認められる)には、セックスレスの事実とそれによって夫婦関係が破綻していることを立証する証拠が必要になります。

なお、離婚裁判は専門的な対応が必要になるため、弁護士に対応を依頼することをおすすめします。裁判の手続きを任せられるほか、代理人として裁判での主張や立証を行ってくれます。

離婚裁判の流れや費用については、下記の記事を参考にしてみてください。

妻側の拒否によるセックスレスを理由に慰謝料請求が認められるケース

妻に性交渉を継続的に拒否され、セックスレスが原因で離婚に至った場合、状況によっては慰謝料請求が認められる可能性があります。

下記のようなケースの場合、慰謝料請求が認められることがあります。

  • 妻の不貞行為が原因でセックスレスになり、夫婦関係が破綻した場合
  • 夫婦ともに若く、健康で、性交渉が期待される関係にもかかわらず、一方が理由なく性交渉を拒み続けた場合
  • 結婚時に子どもを望んでいたにもかかわらず、正当な理由なく性交渉を拒んだ場合

結婚する際に子どもを希望していたのであれば、正当な理由なく性交渉を拒絶するのは、「夫婦の協力義務(民法大752条)」に反するとされる可能性があります。この場合、セックスレスによる慰謝料に加え、協力義務違反に対する慰謝料も請求できる可能性もあります。

なお、離婚協議の場合は慰謝料の取り決めを行わずに離婚することも多いため、妻側に明確な責任があると感じた場合は、きちんと慰謝料請求を検討すべきです。慰謝料の請求が可能であるかを判断できない場合は、離婚問題に詳しい弁護士に相談すると良いでしょう。

セックスレスを理由とした慰謝料相場

先述した通り、セックスレスが原因で離婚に至った場合、状況によっては慰謝料請求が認められます。
慰謝料の金額は、話し合いによって決める離婚協議や調停の場合、双方が合意すれば金額に上限はありません。一方、離婚裁判に発展した場合は、一般的な相場として50万円〜200万円程度が目安とされています。
ただし、慰謝料の金額は、セックスレスの期間、夫婦関係の状況、精神的苦痛の度合いなど、さまざまな事情を総合的に考慮して決定されます。
請求額が妥当かどうか判断に迷う場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

離婚裁判での慰謝料相場は50万~200万円程度

セックスレスが原因で離婚に至った場合、離婚裁判で認められる慰謝料の相場は50万円~200万円程度です。

慰謝料の金額は、セックスレスの期間や婚姻期間、慰謝料を請求する相手の収入や職業、子どもの有無など、さまざまな事情を考慮して決められます。

ただし、これはあくまで裁判における慰謝料の目安です。協議や調停のように夫婦の話し合いで離婚条件を決める場合には、金額に法的な上限はありません。つまり、相手が合意するなら、高額な慰謝料を獲得できる可能性があるということです。

ただし、高額な慰謝料を請求した場合、相手が態度を硬化させ、それ以降の話し合いがスムーズに進まなくなる可能性がある点には注意が必要です。

また、協議の段階から弁護士に対応を依頼している場合や、離婚調停・離婚裁判に進んだ場合は、一般的な相場を考慮した慰謝料が請求されるケースが多いといえます。

慰謝料の金額を左右するポイント

セックスレスが原因で離婚する場合、慰謝料の金額は個別の事情によって大きく左右されます。

以下のような要素が、金額に影響を与えるポイントとなります。

  • セックスレスの期間が長い場合(3年以上)
  • 相手から拒絶される態度が厳しい(相手から激しい拒絶や暴言など)
  • 結婚してからセックスが一度もない
  • 婚姻年数が長い
  • 夫婦間に未成年の子どもがいる
  • 離婚による財産分与の額が少ない
  • 相手がセックスするための努力をしない
  • セックスを拒否された側が初婚の場合
  • 明確な理由なく、継続的にセックスを拒否された
  • 相手が自分とのセックスを拒否しており、かつ不貞行為を行っている
  • セックスレスによって、性交渉を拒否された側がうつ病などの精神病を発症した

ただし、これらの要素がすべて金額に反映されるとは限りません。慰謝料の金額には、相手の支払い能力や反省の度合い、離婚の有無、弁護士の交渉力なども大きく影響します。

また、いくら正当な理由があっても、証拠がなければ主張が通らないこともあります。特に裁判では、下記のような証拠を複数組み合わせて状況を立証することが重要です。

  • セックスレスに関する日記やメモ(日常の生活状況や性交渉に関する状況)
  • メールのデータ
  • 会話の録音データ

慰謝料の目安はあっても、最終的な金額はケースバイケースです。自身の状況でどの程度の慰謝料を請求できるかは、弁護士に相談することをおすすめします。

セックスレスを理由に100万円以上の慰謝料請求が認められた判例

ここでは、セックスレスを理由に離婚が成立し、かつ100万円以上の慰謝料請求が認められた判例を紹介します。

まずは、妻の性行為の拒否が原因でセックスレスとなり、夫が離婚を求めた裁判です。

この事案での夫婦間の状況は以下の通りです。

セックスレスが原因で夫が離婚を求めた裁判 慰謝料:150万円
  • 「異性に体を触られると気持ち悪い」などの理由により、妻が夫との性交渉を拒否
  • セックスレスとなり夫婦喧嘩が絶えない状況
  • 妻には身体的異常がない
  • 妻と仲の良い夫側の親せきによる説得にも、妻の性行為拒否の態度は改善されなかった

このような状況に対して、裁判所は以下のような判断を下します。

  • 結婚は子孫の育成を重要な目的にしており、夫婦間の性行為はその意味では通常伴うべき営みである
  • 当事者が配偶者との性行為に期待する感情を抱くのは当然
  • 妻の「男性との性行為に耐えられない性質」による夫との性行為拒否によって、夫婦関係が破綻した
  • 妻の性行為拒否やその際の言動によって夫婦関係が破綻したことが不法行為に当たり、夫が被った精神的苦痛に対して慰謝料を支払うべき

この裁判では、セックスレスが原因で婚姻関係が破綻したことと、夫に妻に対しての150万円の慰謝料請求が認められました。

また、慰謝料が500万円の高額となった判例もあります。これは、夫が性行為を拒否したことでセックスレスとなり、妻が離婚を求めた裁判です。

この事案での夫婦の状況は以下の通りです。

セックスレスが原因で妻が離婚を求めた裁判 慰謝料:500万円
  • 夫婦間には未成年の子どもが2人いる
  • 夫がポルノ雑誌に異常に関心を示し、自慰行為にふけり妻との性行為を拒否
  • 長男出産後にはすでに夫婦間の性行為はほとんどない状態に
  • 妻はどうしてももう1人子どもが欲しかったため、二男妊娠の際に夫に頼んで性行為に応じてもらう
  • 妻は夫に対して通常の性生活を求めたものの、夫は妻と同室で寝ることすら拒否
  • 夫がキセル乗車やゴミ箱の物を拾う、他人の物を盗む、落ちているガムを子どもに食べさせようとするなどの行動を取る
  • 妻がやめるようにいっても改善されない
  • 妻が夫との生活に耐えられず夫に離婚を切り出すと、夫は生活の改善を約束
  • しかし、夫の生活は改善されず、妻が子どもを連れて別居を開始

上記のような状況に対し、夫婦の婚姻関係は夫の異常な性癖によって破綻している、その責任は一方的に夫にある、といった判断を下します。

結果、セックスレスが原因の離婚と、妻から夫に対する500万円の慰謝料請求が認められました。

妻側の拒否によるセックスレスで離婚・慰謝料請求する際の準備ポイント

妻からセックスを拒否されてセックスレスとなり、それが原因で離婚を求めたり、慰謝料を請求したりする場合、準備が非常に大切です。

準備をせずに離婚を切り出した場合、離婚も慰謝料請求も認められない可能性があるためです。

特に、セックスレスを客観的に立証するのはかなり難しいため、離婚を考えている場合は日ごろから証拠を集めておくことが重要になります。

まずは、夫婦間の性生活の状況を記録することから始めましょう。妻にセックスを拒否された日をメモに記載したり、その日の出来事を日記に記録したりするのも有効です。

また、お互いの生活状況を記録しましょう。それぞれが何時に起き、家を出て、帰宅し、寝るのかを毎日記録することで、セックスができる状態かどうかを証明できます。

さらに、相手をセックスに誘ったメールやメモ、録音データなどを保存しておくと、セックスレスの証拠となります。

他にも実際に離婚した場合の財産分与や養育費、慰謝料の請求に備えて、相手の財産について調べておきましょう。

次の章では、離婚を切り出す前のプロセスや裁判に有利な証拠の集め方について解説します。

離婚を切り出す前に性交渉を誘うプロセスを踏む

セックスレスが原因で離婚したい場合、離婚を切り出す前に妻を性交渉に誘いましょう。

離婚の切り出し方を間違えた場合、離婚トラブルに発展する恐れがあるためです。

セックスレスによる離婚を決意しているのであれば、以下の手順を踏んで離婚の準備を進めてきましょう。

  1. 自分から性交渉を求める
  2. 性交渉を拒否される理由を聞く
  3. 自分側に理由がある場合は改善する

裁判においてセックスレスであることを主張するためには、自分が積極的に性交渉に誘っている状況が必要です。

これは、相手から「努力が足りなかった」という反論を防ぐためにも重要です。

次に、セックスを拒否された場合は、その場で拒否の理由を聞き出します。もし、自分の責任を相手から指摘された場合は、改善の努力をしたうえで、再び性交渉に誘います。

これを繰り返しても改善されなければ、相手に対して離婚を切り出しましょう。

もし、セックスレスが理由で離婚したいことを恥ずかしくて言えない場合は、別居してから弁護士に対応してもらうのがおすすめです。

裁判に有利なセックスレスの証拠を収集する

セックスレスによる離婚問題を解決するには、セックスレスの証拠を集めることが大切です。

特に、離婚裁判にまで発展した場合、離婚の可否や慰謝料の請求権、請求金額は、すべて裁判所が判断することになります。

そのため、セックスレスであることを客観的に立証できる証拠の存在が重要になります。

準備しておきたい証拠の種類は、以下の2つです。

  1. セックスレスが「婚姻を継続し難い重大な事由」になるほど重大であることを証明する証拠
  2. セックスレスに対して慰謝料請求ができるほどの違法性があることを証明する証拠

セックスレスでの離婚の際には、以下のような証拠を準備しましょう。

裁判に有利なセックスレスの証拠
証拠の種類 内容・効果
手書きの日記やメモ ・セックスをしたかどうかを毎日記録して、性交渉がなかったことを証明
・性交渉が拒否、拒絶された場合は、反応や言動を詳細に記録
・改善を求められ努力しても応じてもらえなかったことを記録
・セックスとは関係ない日常の出来事も書くことで、改ざんや記憶違いとの反論を避けつつ、証拠の価値が向上する
・起床時間、出発時間、帰宅時間、就寝時間など、日ごろの生活状況を記録(忙しい、すれ違いで性交渉できなかったとの反論の回避のため)
夫婦間のメールやチャットのやりとり ・当事者同士のやりとりの中で、セックスの拒否の理由やいきさつ、責任の程度が証明できるケースあり
・メールで性交渉に誘ったものの、断られた際のやりとりを保存
会話の録音データ ・夫婦の会話や性行為を拒否された際の会話を録音
・スマートフォンやボイスレコーダーを使用
・会話の流れを判断できるよう、会話全体を録音することが重要
・音声が鮮明に記録されるよう注意する

他にも、相手の不貞行為やモラハラ、DVなどが原因でセックスレスとなった場合は、それぞれの証拠を準備しておきましょう。

妻側の拒否によるセックスレスでも、不倫すれば慰謝料を払う必要がある?

セックスレスの状態にあっても、不倫をすれば「不貞行為」とみなされ、慰謝料を支払う義務が生じます。

不倫は、夫婦の婚姻生活の平和を侵害する行為であり、セックスレスであったことを理由に、その違法性が免除されることはありません。

ただし、慰謝料は精神的苦痛に対する賠償金であるため、裁判ではセックスレスに至った経緯や夫婦関係の状況などを考慮したうえで、慰謝料の金額が判断されます。

たとえば、婚姻関係の破綻とまではいえないものの、夫婦関係がかなり冷え込んでいた場合は、精神的苦痛が小さいと評価され、慰謝料が減額される可能性があります。

また、不貞をされた側が長期間にわたり性交渉を拒否していたようなケースでは、減額事由として考慮されることがあります。

セックスレスから不倫に発展した実例や対策については、下記の記事も参考にしてみてください。

妻側の拒否によるセックスレスで離婚を検討しているなら弁護士に相談を

ここまでセックスレスが原因の離婚問題について解説してきました。

夫婦間のセックスレスの問題はセンシティブな問題であるため、親や友人などに相談しにくいものであり、なかには1人で抱え込んでしまう方もいるでしょう。

また、セックスレスや離婚に関しては、自分だけで適切に判断することが難しいうえ、間違った判断を下した場合は、夫婦関係がさらにこじれたり、不利な条件での離婚となったりするおそれがあります。

さらに、相手の不貞行為やDV、モラハラなど、他の要因が絡むこともあり、安易に解決できる問題ではありません。

このような場合は、弁護士に相談することを検討しましょう。

弁護士に相談すれば、夫婦の状況をヒアリングしたうえで、法律の観点からセックスレスを理由に離婚できるか、慰謝料を請求できるか、アドバイスしてもらえます。

また、離婚協議や調停、裁判の代理人となってもらえたり、必要な手続きを代行してもらえたりするため、離婚問題の解決がスムーズに進む可能性もあります。

1人での対応が難しい場合は、離婚に強い弁護士に相談してください。

まとめ

離婚理由がセックスレスであっても、離婚協議や離婚調停であれば、双方の合意で離婚ができます。

一方、協議や調停で合意に至らず裁判に発展した場合、セックスレスのみを理由に離婚が認められるのは簡単ではありません。離婚を認めてもらうには、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当することを証明する必要があります。

なお、セックスレスの原因が妻にある場合は、状況によって慰謝料の請求が認められることもあります。ただし、慰謝料請求を行うためには、証拠集めや日常生活の記録などの準備が必要です。

もし、離婚や慰謝料請求が可能かどうかの判断が難しいのなら、早めに離婚問題に詳しい弁護士に相談しましょう。

【Q&A】セックスレスの離婚に関するよくある質問

セックスレスでの離婚は財産分与や養育費も請求もできる?

セックスレスが原因で離婚する場合、一般的な離婚と同じように、相手に対して財産分与や養育費を請求できます。

財産分与とは、夫婦の共同生活のなかでともに形成した財産を、それぞれの貢献度に応じて公平に分配する制度のことです。

これは、民法第768条によって規定された、離婚する人の権利です。

夫婦の共通名義となっている財産や、個人名義の財産でも夫婦の協力がなければ形成できなかった財産は、財産分与の対象となります。

また、養育費とは子どもの監護・教育のために必要な費用のことで、一般的には子どもが経済的・社会的に自立するまでにかかる費用を指します。

たとえば、子どもの衣食住に必要な費用や教育費、医療費などが養育費に該当します。夫婦ごとに取り決めによって異なりますが、基本的には子どもが20歳になるまで養育費の支払いが発生します。

セックスレスが原因で妻と離婚し、夫側が親権を取得する場合は、妻に対して養育費を請求できます。一方、妻側が親権を持つ場合は、夫側が養育費を支払います。

養育費の金額は子どもの年齢や人数、健康状態、離婚する両親の収入などを総合的に考慮して判断されます。

ちなみに、子どもがいる夫婦が離婚する場合、母性優先の法則があることから、およそ90%の割合で母親が親権を得ることになります。母親が親権を獲得できないのは、以下のようなケースです。

  • 子どもを虐待している
  • 子どもの育児を放棄している
  • 母親が病気で育児ができない
  • 夫婦が別居した後、子どもが父親と暮らしている
  • 母親が精神疾患を患っている
  • 母親の監護実績が乏しい

セックスレスだけが原因で離婚が成立する場合、父親が親権を獲得するのはかなり難しいと考えておきましょう。

参考:民法第768条 財産分与|e-GOV 法令検索

セックスレスを理由に離婚したら親権に影響はある?

セックスレスを理由に離婚した場合でも、親権に影響することはありません。

裁判所が夫婦の離婚時に子どもの親権を考える場合、重視されるのは子どもの福祉であり、夫婦の問題とは関係ないためです。

親権は夫婦の子どもへの愛情や経済力、これまでの子育て状況、子どもとの精神的な絆の強さなどを総合的に判断して、どちらのもとで養育するべきかが判断されます。

そのため、セックスレスの原因がある方に、親権が渡ることもあります。なお、子どもが15歳以上の場合は、子どもの気持ちが尊重されたうえで親権者が決まります。

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更新日 : 2025年06月13日
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