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2024年11月現在

離婚届の証人には誰がなれる?そもそも必要?証人がいない場合の対応も解説

離婚届 証人

夫婦の話し合いによって決まった協議離婚では、離婚届を出すときに2名の証人が必要です。
離婚届は証人が署名する欄があり、2名の署名がないと受理されません。
証人は、夫婦の離婚の意思を確認し、提出された離婚届が夫婦の合意に基づき作成されたものだと証明し虚偽の届出を防ぐ役割があります。

離婚届の証人は、18歳以上であれば誰でもなることができます。
「離婚届の証人を頼むのは気が引ける」という人もいるでしょう。しかし、証人と当人の関係性は問われないため、頼むのは親や兄弟でも会社の同僚でも友人でも構いません。

離婚は、相続権や親権、扶養義務などの権利義務に大きな影響をもたらします。
そのため、一方が勝手に離婚届を作成・提出してしまわないよう、第三者が証人となって離婚届が夫婦で合意されたものであることを証明する必要があるのです。

「離婚というプライベートな事実を知られたくない」「住所や本籍などを記入する必要があるため頼みづらい」といった理由から、知り合いに証人を依頼できないときは、離婚届証人代行サービスを利用する方法があります。
相談している弁護士に依頼することも可能です。

協議離婚や調停離婚などの話し合いによって離婚を進める場合も、財産分与や親権、養育費のことなど離婚前に夫婦で確認したり決めたりする必要がある事項がいくつもあります。
法律の知識がないと自分にとって不利な条件で離婚してしまいかねません。後悔しないためにも、専門家へ相談するのがおすすめです。

この記事では、離婚のケースに応じた証人の要不要、離婚届の証人欄の記入方法や注意する点、離婚届の証人が見つからないときの対応や離婚前に夫婦間で決定しておくべきことの詳細を解説しています。
離婚を検討されている方や証人を頼まれてどうしようか迷っている人はぜひご覧ください。

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南陽輔 弁護士
監修
南 陽輔(弁護士)

基本的に離婚届には証人が必要

夫婦で話し合った結果、離婚をすることになったときは証人が必要です。

証人とは、離婚届の証人の記載欄に署名する人のこと。

一方が夫婦の合意がないまま離婚届を提出したり、夫婦間で感情的になって離婚を決めたりするのを防ぐ意味合いがあります。
そのため、離婚届は2名以上の証人の署名がないと提出しても受理されないようになっています。
2名の証人は、夫と妻のそれぞれの知り合いを1名ずつ立たせる必要はなく、一方の両親や友人2名でも構いません。

届出に2名以上の証人が必要であることは、民法の第739条2項で定められています。

(婚姻の届出)
第七百三十九条 婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
引用元 民法 – e-Gov法令検索

協議離婚以外の離婚では証人が不要

本人同士の話し合いによって決まった協議離婚には証人が必要ですが、調停離婚・審判離婚・裁判離婚を行うときは証人は不要です。

離婚の種類 内容 証人
協議離婚 夫婦間の話し合いによって決まる離婚 必要
調停離婚 家庭裁判所の調停委員を介した話し合いによって決まる離婚 不要
審判離婚 離婚調停が不成立だったとき、家庭裁判所の裁判官が必要な決定を行い成立する離婚 不要
裁判離婚 離婚調停が不成立だったとき、もしくは審判離婚で異議申し立てをしたときに裁判によって行う離婚 不要

協議離婚以外の方法で離婚するときは、家庭裁判所の調停委員や審判官、裁判官などの第三者が既に介入しているため、証人を別で立てる必要はありません。

離婚届の証人になれるのは18歳以上の人

離婚届の証人には、成人していれば誰でもなることができます。
民法改正に伴い、2022年4月から成人年齢は20歳から18歳に引き下げられました。
つまり、2022年3月までは20歳以上が条件でしたが、現在は18歳以上であれば離婚届の証人として認められます。

夫婦との関係性も特に問われないため、夫婦の両親や子ども、知り合いや会社の同僚でも証人になることができます。
夫婦どちらの親でも、知り合いでも問題はありません。反対に、二人と全く関わりがない赤の他人でも証人にはなれるのです。

もし子どもに証人をお願いするときは、子どもの感情を考慮することを忘れないようにしましょう。
離婚を理解し肯定してくれているなら問題ありませんが、少しでも抵抗や否定的な気持ちが残っている場合は別の人に依頼する方が良いでしょう。

また、離婚の当事者である夫婦は、証人になることはできません。

離婚届に証人が必要である理由は法的な権利義務に影響が生じるため

離婚届に証人が署名することには、重要な役割が2つあります。

  • 離婚届が本物であることを証明する
  • 離婚の意思を最終確認する機会となる

離婚は、夫婦や親子などの身分関係が大きく変わる決断です。相続権や扶養義務のような法律上定められている権利や義務にも影響を与えます。

例えば、夫婦は互いに相続人の関係にあります。
婚姻中は配偶者が亡くなったときに財産を相続する権利がありますが、離婚すると他人になるため相続権は失われます。

また、夫婦の間に子どもがいる場合は、親権と扶養義務の問題があります。

親権は「親が子どもを育てる権利」を指すのに対し、扶養義務は「直系の血族にあたる兄弟姉妹がお互いを扶養する義務」を指します。

離婚するときは、一方が必ず子どもの親権を失います。また、離婚しても、親権がなくなっても子どもとの血縁関係があるため扶養義務は残ります。
つまり、親権を獲得できなかった場合も扶養義務はあるため、離婚した後も親は子どもの生活費を支払う必要があるのです。

このように、権利義務関係に影響を大きく及ぼすため、離婚届は夫婦がきちんと合意した上で作成・提出される必要があります。
証人は、一方の意思で勝手に離婚届が提出されることを防ぎ、離婚届が偽装されたものでないことを証明するための役割を担っているのです。

また、証人が署名するタイミングが離婚の意思を最終確認する機会になります。
喧嘩をして一時的な感情で離婚届を書いてしまったとしても、証人欄の記入を頼んだり実際に記入してもらったりするタイミングが離婚について冷静に考え直すきっかけになり得ます。
証人という第三者が介入することは、一時的な感情で離婚することを防ぐ役割も持っているのです。

離婚届の証人欄の記入方法

離婚届の証人欄は、必ず本人が記入を行う必要があります。
代筆は刑法違反にあたるため絶対にしないようにしましょう。

証人欄を記入するときに注意すべきポイントは5つあります。

  • 署名・生年月日・住所・本籍を正しく記入する
  • 押印は任意のため不要
  • 書くときはボールペンや万年筆などの消せないペンを使用する
  • 本籍がわからないときは住民票や運転免許証で確認する
  • 書き間違えたときは二重線で訂正する

それぞれ詳しく解説していきます。

離婚届の証人欄の記入は必ず本人が行う

離婚届の証人欄への記入は、必ず本人が行わなくてはいけません。
記載する項目は、以下の4つです。

  • 署名
  • 生年月日
  • 住所
  • 本籍

押印欄がありますが、2024年3月現在は押印は任意のため不要です。
押印する場合は、届出や登録をしていない認印でも構いませんが、シャチハタは使用できないので注意しましょう。
また、どちらかの両親が証人の場合、同じ名字でも使用する印鑑は分ける必要があります。

書くときは、ボールペンや万年筆のような消せないペンを使います。
鉛筆・シャープペン・消せるタイプのボールペンなどは認められません。

役所で受理するとき、届出の際に身分証明書の提示を求められたり証人の素性をあれこれ調べられたりすることはありません。
あくまで、証人が実在するか、書類に不備がないかを確認するための形式的なことだけが調査されます。

しかし、だからといって証人欄を本人が代筆してはいけません。
証人欄の代筆は、契約書の偽造などと同じ私文書偽造にあたり刑法違反になりかねません。
筆跡や何かのきっかけで代筆が判明する可能性は十分にあり得ます。
私文書偽造が判明した場合、懲役刑を課せられる可能性もあるため、証人の署名を自分で書くのはやめましょう。

本籍地が分からない場合は住民票か運転免許証でチェックする

「証人を頼まれたが本籍がわからない」というときは、住民票を見ればわかります。
住民登録がある市区町村で、住民票の写しを発行してもらいましょう。
戸籍の記載ありの写しを希望すれば、本籍が確認ができます。

住民票は、自治体の窓口で発行する方法もありますが、郵送請求や地域によってはマイナンバーカードを使用したコンビニ交付も可能です。

また、あまり知られていませんが運転免許証のICチップでも本籍が確認できます。
警察署や免許センターに設置されている専用端末で読み取り、免許証を発行するときに設定した暗証番号を入力することで登録されている本籍地を照会できます。

また、NFC(近距離無線通信)機能のあるスマートフォンとアプリを使って読み取ることも可能です。
アプリを使用して読み取るときも、暗証番号の入力が求められます。

書き間違えた箇所は二重線で訂正する

書き損じがあったときは、間違えた箇所に二重線を引き、近くの余白に書き直します。
訂正したときは、訂正印か署名を残すのを忘れないようにしてください。

住所は、住民票に記載されているとおりに記入します。
同じように、本籍は戸籍謄本に記載されているとおりに記入しましょう。

住所や本籍が誤っていても受理されるケースはありますが、調べられたときに訂正を求められ二度手間になってしまったり大ごとになったりするのを避けるためにも、事前に証人には正しい情報を確認しておいてもらうようにすると良いでしょう。

離婚届の証人になる法的なデメリットはない

離婚届の証人というと「縁起が悪い」と言われてしまうこともありますが、法的なデメリットは特にありません。
先ほど「離婚届を本物であることを証明する役割がある」と伝えましたが、何かを保証したり法的な責任や義務が生まれたりするわけではありません。

しかし、離婚は必ずしも円満であるとは限りません。
一方が強い怒りや恨み、未練を抱いていた場合、当人と関係がある証人が巻き込まれる可能性もゼロではありません。
証人は氏名や住所などの個人情報も知られてしまいます。トラブルに発展するリスクが全くないとは言い切れません。
離婚の証人を頼まれたときは、円満な離婚なのかどうかや相手が逆恨みする可能性がないかなどを確認し慎重に引き受けるかどうかを判断することをおすすめします。

離婚届の証人がいない・見つからない場合の対応

証人を頼む相手がいないときは、以下の方法を検討すると良いでしょう。

  • 離婚届証人代行サービスを利用する
  • 弁護士に依頼する
  • 調停離婚を検討する

それぞれの対応について詳細を解説していきます。

離婚届証人代行サービスを利用する

法律事務所や行政書士事務所が提供している、離婚届証人代行サービスがあります。
一般的なサービスの利用の流れはシンプルです。

  1. サービスの利用申し込みを行う
  2. 証人欄以外の記入が完了した離婚届を郵送する
  3. 証人欄を記入した状態の離婚届が返送される

金額も数千円〜1万円程度と安価で利用しやすいメリットがあります。

しかし、安価なサービスは、資格のない業者が行っているケースが多いです。
弁護士や行政書士が提供しているサービスでない場合、守秘義務を負っていないため情報漏洩の観点で安全とは言い切れません。

弁護士に依頼する

離婚を既に弁護士に相談している場合は、弁護士に証人を依頼してみても良いでしょう。
特に、離婚問題を多く取り扱っている法律事務所では、代理人が証人として署名してくれることが多々あります。追加の費用の発生もなく、了承してくれる可能性も高いです。

離婚は、先ほども触れたとおり権利や義務への影響が大きいため、どうしても夫婦間では解決しきれない問題が出てきます。
親権・養育費・子どもとの面会や交流・財産分与・慰謝料など争点は多岐に渡ります。
専門性が高い分野だからこそ、代理人として相手と交渉を進めてくれる弁護士の存在は大きいです。
「不利な状況で離婚してしまった」と後悔しないよう、状況によっては弁護士への相談も検討してみましょう。

調停離婚を検討する

「離婚というプライベートな事実を人に知られたくない」「個人情報を記入しなくてはいけない証人を頼むことに抵抗がある」などの理由から、どうしても証人を立てるのが難しい場合、調停離婚を検討するのも一つの方法です。

冒頭で伝えたとおり、協議離婚では証人が必要ですが、家庭裁判所の調停委員が介在して話し合いを進める調停離婚では、既に第三者が間に立っているため証人は必要ありません。

離婚前に決定・確認しておくべきこと

最後に、離婚する前に決定・確認しておくべきことを紹介します。

  • 財産分与
  • 慰謝料
  • 親権や養育費
  • 再婚可能な時期

特に財産分与や慰謝料、親権や養育費については揉めやすいポイントでもあるので、事前の情報収集を行なっておけると安心です。詳しく見ていきましょう。

財産分与はしっかりと行う

婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産は「共有財産」として扱われます。離婚するときは、これを夫婦で分け合う「財産分与」を行う必要があります。

婚姻中に築いた財産が対象なので、お互いが婚姻以前に築いた財産や夫婦の協力とは無関係に発生した相続財産などは該当しません。

例えば、以下のような財産が財産分与の対象になり得ます。

  • 不動産
  • 現金・預貯金
  • 保険
  • 退職金
  • 年金
  • 経済的な価値があるもの

ちなみに、基本的に財産分与は2分の1ずつ分け合います。一方が専業主婦(夫)の場合も、2分の1の割合を受け取ります。
離婚する前に、これらの共有財産のうちどこまでが婚姻中に築いたものかを判断したり、分ける方法を考えたりする必要があります。

慰謝料の有無は離婚の事情によって異なる

慰謝料が発生するかどうかは離婚に至った事情によって異なります。
どちらか一方に原因があることが明確な場合、慰謝料を請求できる可能性があります。

民法第770条で「法定離婚事由」として定められている、不貞行為やDVが原因で離婚に至ったときは慰謝料が請求できます。

不貞行為とは、いわゆる浮気や不倫のことで配偶者以外と性的な関係を持つことです。

不貞行為以外にも、配偶者が正当な理由なしに同居・協力・扶助の義務を果たしてくれない「悪意の遺棄」も慰謝料が請求できる可能性が高いです。
例えば「妻が専業主婦にも関わらず生活費を渡さない」「理由なく家出をし同居していない」などが「悪意の遺棄」にあたります。

子どもがいる場合や親権や養育費について決める

子どもがいる場合、夫婦のどちらが親権を持つのかを決める必要があります。

親権者は、非親権者に子どもの養育費を請求することが可能です。
養育費の金額は、子どもの人数や年齢、親の年収に応じて策定された養育費算定基準表に則って算出されます。
養育費算定基準表は、裁判所が公開しています。離婚以前におおよその試算が可能なので、話し合いの際に参考にすると良いでしょう。

ちなみに、離婚の理由や背景によって養育費の金額が変わることはありません。

再婚可能な時期を確認する

現在は、男女ともに離婚後すぐに再婚が可能です。

実は、2024年4月以前は男性は離婚してすぐに再婚が可能で、女性は100日間の再婚禁止期間がありました。
再婚禁止期間は、元々は女性がすぐに再婚し妊娠したときに、子どもの父親が元夫か現夫か推定できなくなるのを防ぐことが目的に設けられていました。
扶養義務を負う父親を明らかにすることで、子どもの利益・権利を保護するという考え方です。

しかし、現在はDNA鑑定ですぐに親子関係を確かめられ、時代にそぐわないという背景から再婚禁止期間が廃止されました。

ちなみに、民法改正以前は「子どもが離婚から300日以内に生まれた場合、前夫の子」「子どもが婚姻から200日経過後に生まれた場合、現夫の子」と推定されていました。
改正後は「子どもが離婚後300日以内に生まれた場合、母親が元夫以外の男性と再婚後に生まれた子は再婚後の夫の子」と推定されるようになりました。

まとめ

夫婦の話し合いによって離婚を決めた場合、離婚届を出すための証人が必要です。
離婚はさまざまな権利や義務に影響を与える、重要な決断だからこそ、第三者が夫婦が合意したことを証明する必要があるからです。

証人になる法的なデメリットはありませんが、頼みづらさを感じることもあるでしょう。
知り合いへの依頼に抵抗がある場合、守秘義務を負う信頼できる証人代行サービスを利用する方法もあります。

離婚には財産分与や親権、養育費など事前に確認したり決めたりしなくてはいけない複雑な問題が多々あります。
知識不足で悔いの残る離婚にならないためにも、協議離婚の場合も調停離婚の場合も一度専門家に相談しておけると安心です。

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更新日 : 2024年11月18日
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