専業主婦が離婚の際に知っておくべきこと・準備すべきこと
専業主婦の方が離婚を希望している場合、以下のポイントについて理解して準備しておきましょう。
- 離婚費用を計算する
- 離婚してからの家計をシミュレーションする
- 夫に請求するお金について考えておく
- シングルマザーが利用できる助成制度を把握しておく
- 単独所有財産と共有財産を把握しておく
- 子どもの親権について考える
- 子どもをどこで養育するか考えておく
- 有責性の検討や証拠の収集を行う
- 住む場所を準備しておく
それぞれ詳しく解説します。
離婚費用を計算する
専業主婦で離婚を考えている場合は、離婚にどのような費用がかかるのかを理解しておきましょう。
離婚には主に「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つの方法があり、どの方法で離婚するのか、また弁護士に依頼するのかによって費用が大きく異なります。
離婚方法ごとの費用目安は以下のとおりです。
離婚方法 |
費用の内訳 |
費用の合計(目安) |
協議離婚 |
・役所への交通費
・弁護士費用:約30万円~60万円 |
弁護士なし:交通費のみ
弁護士あり:30万円~60万円以上 |
離婚調停 |
・収入印紙費用:1,200円
・郵便切手代:約1,000円
・夫婦の戸籍謄本:約450円
・調停調書謄本費用:約1,000円
・弁護士費用:約50万円~100万円
|
弁護士なし:約4,000円
弁護士あり:50万円~100万円以上 |
離婚裁判 |
・収入印紙費用:13,000円~
・郵便切手代:5,000円前後
・夫婦の戸籍謄本:約450円
・弁護士費用:約70万円~120万円
|
弁護士なし:約2万円
弁護士あり:70万円~120万円以上 |
夫婦同士の話し合いで離婚条件がすんなり決まるような円満な協議離婚の場合、市役所に離婚届を提出するだけで離婚が成立するため、交通費程度の費用しかかかりません。
一方、夫婦のどちらかが離婚に同意していない場合や、財産分与・養育費・慰謝料などで揉めているような場合は、離婚協議がスムーズに進まない場合もあります。
協議で離婚条件がまとまらない場合、離婚調停に進むことになります。離婚調停の申し立てには合計4,000円程度の費用が発生し、弁護士に依頼する場合は約40万円〜100万円ほどの費用が必要です。
さらに、調停でも解決できなかった場合は裁判の判決によって離婚の可否を決めることになります。裁判の申し立てには約2万円の費用が必要で、弁護士費用も70万円〜120万円以上と高額になる傾向にあります。
調停や裁判は弁護士なしでも進められますが、手続きが複雑であるため、弁護士のサポートを受けたほうが有利になります。専業主婦の方で自由に使えるお金が少ない場合は、なるべく協議離婚での解決を目指しましょう。
なお、調停や裁判に進んで弁護士への依頼を検討しているものの、着手金の用意が難しい場合、法テラスの立替制度を利用する方法もあります。一定の要件を満たせば、弁護士費用を立て替えてもらった後、利息なしでの返済が可能です。
弁護士事務所によっては着手金の分割払いに対応しているところもあるため、費用が用意できないときは、柔軟な支払い方法を採用している弁護士を選ぶとよいでしょう。
また、離婚後に養育費や財産分与、慰謝料などを受け取れる可能性がある場合は、結果的に弁護士費用を上回る金額が得られるケースもあります。このような金銭的な取り決めは交渉や手続きが複雑になることも多いため、弁護士に相談することで、より有利な条件で離婚を進められる可能性が高まるでしょう。
離婚してからの家計をシミュレーションする
専業主婦で離婚する場合は、離婚後の家計をシミュレーションすることも大切です。
離婚後は、これまでのように夫の収入に頼ることができなくなります。家賃や食費などを整理し、毎月どの程度の支出が発生しそうなのかを確認しておきましょう。また、新しく仕事を始める場合は、月収目安や就業のタイミングを考えることも大切です。
なお、離婚後に就職活動を始めても、なかなか就業先が見つからないケースも考えられます。生活基盤を安定させるためにも、できるだけ離婚前に就職先を見つけておくとよいでしょう。
また、専業主婦の場合は夫の扶養に入っているケースが多いものですが、離婚すると扶養から抜けることになるため、国民健康保険に加入しなければなりません。国民健康保険料は前年度の収入によって決まるため、専業主婦は保険料が軽減されるケースが多いでしょう。
夫に請求するお金について考えておく
専業主婦が離婚する場合は、夫に請求するお金についても考えておきましょう。離婚する状況によっては、夫に対して金銭を請求できるためです。
請求できる可能性があるお金の種類は、以下のとおりです。
- 慰謝料(不法行為による精神的苦痛に対して)
- 養育費
- 婚姻費用(離婚前に別居している場合)
- 年金分割 など
夫の不法行為が原因で離婚する場合、慰謝料を請求できる可能性があります。裁判に発展したときのことも見越して不法行為の決定的な証拠を集めておくと、請求が通りやすくなるでしょう。
子どもの親権を取る場合は、夫に対して養育費の請求が可能です。婚姻費用は別居時に受け取れる生活費のことであり、収入の少ない側が多い側に対して請求できます。
年金分割とは、婚姻期間中に夫婦が納めた年金を離婚時に公平に分ける制度です。専業主婦でも年金分割の手続きを行えば、婚姻期間中の夫の厚生年金の一部を受け取れます。
専業主婦の場合、離婚すると経済的に困窮する可能性も考えられるため、請求が認められているものに関してはしっかりと請求しましょう。請求に備え、源泉徴収票や給与明細、通帳などで夫の収入を把握し、可能であればコピーを保管しておくのがおすすめです。
なお、夫に対して請求できる金銭の詳細については「専業主婦が離婚時に請求できるお金」の項目で詳しく解説します。
シングルマザーが利用できる助成制度を把握しておく
専業主婦が離婚する場合は、シングルマザーが利用できる国や自治体の助成制度を把握しておきましょう。
日本では、母子家庭のための手当や支援制度が豊富にあり、上手く活用すれば生活の安定につながります。
シングルマザーが利用できる助成制度の一例は以下のとおりです。
- 児童扶養手当
- 児童育成手当
- 家賃補助
- ひとり親家族等医療費助成
- 寡婦控除
- 生活保護 など
ただし、自治体によって助成制度の有無や条件などが異なるため、利用できるかどうか事前に調べておくことが大切です。
なお、助成制度についての詳細は「シングルマザーが利用できる助成制度」の項目で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
単独所有財産と共有財産を把握しておく
専業主婦で離婚する場合は、「夫婦の一方が単独で所有する特有財産」と「夫婦で築いた共有財産」を把握しておきましょう。原則として、離婚する際には共有財産を財産分与する必要があるためです。
財産分与とは、婚姻中に夫婦が築いた共有財産を離婚時に公平に分け合うことです。
財産分与の割合は原則として1:1とされており、専業主婦であっても公平に受け取る権利があります。夫婦の共有名義の財産はもちろん、いずれか単独の名義であっても、夫婦の協力によって形成された財産であれば、財産分与の対象となります。
ただし、財産分与の対象となるのは、あくまでも「共有財産」のみとなっており、一方が所有する「特有財産」は対象にはなりません。財産分与の対象になるものとならないものの例は以下のとおりです。
財産分与の対象 |
財産分与の対象外 |
・婚姻中に積み立てた預貯金
・婚姻中に購入したもの(自動車や不動産など)
・退職金、年金、生命保険の解約返戻金など |
・相続で譲り受けた財産
・婚姻前に積み立てた預貯金
・婚姻前に購入したもの全般 |
婚姻前から所有する個人名義の財産や、婚姻中に親族から相続で譲り受けた財産などは、財産分与の対象とはなりません。
離婚を本格的に考えている場合は、夫婦の共有財産について調べておいた方がいいでしょう。以下に挙げる書類を確認し、どれくらいの共有財産があるか調査してください。
- 不動産の登記簿謄本
- 自動車検査証
- 保険証書
- 年金証書
- 銀行の預金通帳
- 有価証券
- ローン契約書
- 賃貸借契約書
これらの書類のコピーを取っておけば、調査時点での財産の証拠となるほか、金額を確認しやすくなるでしょう。
子どもの親権について考える
専業主婦が離婚する場合は、子どもの親権についても考えておきましょう。
子どもがいない家庭であれば夫婦が離婚するだけで問題は解決できますが、子どもがいる場合は「親権の取り決め」という課題が生じます。
親権は子どもの監護実績が多い側が取るケースが一般的であるため、専業主婦で子どもの育児をしていたのであれば、親権を取れる可能性は高いでしょう。
しかし、親権は一度取り決めると後から変更するのは簡単ではないため、夫婦でしっかりと話し合い、どちらが親権を持つのが最善なのかを考えることが大切です。
親権を決める話し合いでは、「子どもと離れたくない」という気持ちだけで主張してはいけません。自分が親権を持つべき理由を整理し、相手にきちんと伝えることが重要です。もしも夫が親権を主張してきた場合、どのように説得するかを考えておきましょう。
また、子どもが10歳以上で適切な判断能力がある場合、子どもに意見を聞いて参考にしてみるのもおすすめです。反対に、子どもが幼く判断能力がないと考えられる場合は、話し合いに子どもを巻き込まず、親同士で親権者を取り決めたほうがよいでしょう。
子どもをどこで養育するか考えておく
専業主婦が離婚する場合は、子どもをどこで育てるかも考えておきましょう。具体的には「どこに住むのか」「幼稚園・保育園はどうするか」「学区はどうなるのか」「実家から近い場所のほうがよいのか」などを決めておく必要があります。
たとえば、子どもがまだ幼い場合は、幼稚園・保育園などに預けることも検討しなければなりません。定員に空きがあれば途中入園が可能ですが、定員がオーバーしている場合は空きが出るまで待機することになります。
とくに、都市部に住む場合は入園に時間がかかるケースもあるため、できるだけ早く保育園や幼稚園を探すようにしましょう。
また、離婚してから住所変更をする場合は、転園や転校の手続きも同時に行う必要があります。必要な書類の準備や学校・園への事情説明など、手続きには多くの労力がかかるため、あらかじめ準備しておきましょう。
さらに、子どもにとっては幼稚園や学校の友達と離れ離れになるケースもあるため、メンタル面でのケアにも十分配慮することが大切です。
有責性の検討や証拠の収集を行う
不貞行為やDVなど、夫の有責性によって離婚をする場合は、証拠集めを行いましょう。離婚原因が「法定離婚事由」に当てはまる場合、裁判に発展した際に離婚が認められる可能性が高くなります。
法定離婚事由とは、民法上、離婚訴訟を提起できる場合として定められている離婚の原因のことです。
法定離婚事由には以下の5つがあります。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
たとえば、夫の不倫が原因で離婚をする場合は「不倫相手と不貞行為(性行為)をしていた」という証拠が必要になります。不貞行為を証明するための証拠として、ホテルに2人で出入りする写真やLINEのやりとり、クレジットカードの明細などが挙げられます。
もしも証拠を収集せずに離婚を切り出すと、「不倫などしていない」と反論される恐れがあります。決定的な証拠があれば、夫も不倫を認めざるを得なくなり、協議の段階で離婚に応じてもらいやすくなるでしょう。
証拠を提示しているにもかかわらず夫が離婚を頑なに拒否して裁判に発展した場合でも、証拠があれば夫の有責性が認められ、離婚できる可能性が高くなります。
また、夫の行為で精神的苦痛を被っている場合は慰謝料を請求できるケースもあるため、証拠をしっかり集めて相手の有責性を証明しましょう。
住む場所を準備しておく
専業主婦で離婚する場合は、離婚後に住む場所を準備しておくことが重要です。
離婚後、すぐに実家へ戻れるのであれば問題ありませんが、そうでない場合は新しい住居を確保しなければなりません。
住まい探しをする際には、家賃の相場や引っ越し費用、敷金・礼金などの初期費用を事前にシミュレーションしておきましょう。
夫婦間には原則として同居の義務がありますが、離婚協議や調停中であれば夫婦関係がすでに破綻しているとみなされるケースが多いため、離婚前に住居を確保して別居しても問題はありません。
なお、婚姻期間中にマイホームを購入している場合は、財産分与によって持ち家を譲渡してもらえるケースもあります。住む場所の確保が難しいときは、財産分与の協議の際に離婚条件として組み込むのもよいでしょう。
専業主婦が離婚するための流れ・手順
専業主婦が離婚するための具体的な流れや手順は以下のとおりです。
- 話し合いによる離婚成立を目指す
- 話し合いがまとまらない場合は調停を行う
- 調停でも決まらない場合は離婚裁判を行う
それぞれ詳しく解説します。
話し合いによる離婚成立を目指す
専業主婦が離婚を希望する場合、まずは話し合いによる離婚成立(協議離婚)を目指すことになります。
夫婦で話し合いを行い、お互いが離婚条件に合意すれば、役所に離婚届を提出するのみで離婚が成立します。スムーズに話し合いが進めば調停や裁判に発展することもないため、お金をかけずに離婚することが可能です。
まずは配偶者に離婚を考えている旨を伝え、話し合いを開始しましょう。離婚理由をきちんと話したうえで、財産分与や親権などの離婚条件について協議し、離婚の成立を目指します
しかし、こちら側が話し合いをしようとしても、離婚を切り出された夫が感情的になり、話し合いが進まなくなるというケースも少なくありません。
次の項目からは、協議離婚を成立させるためのコツについて詳細に解説します。
専業主婦が離婚を切り出す際のコツ
専業主婦が夫と円満に離婚したいのであれば、離婚を切り出すタイミングが重要です。単純に「離婚したい」と伝えるだけでは夫が納得しない可能性があるほか、夫婦関係がこじれて問題が悪化するケースがあるためです。
専業主婦が離婚を切り出すときは、まず自分の気持ちや理由を冷静に整理し、しっかり言葉にできるように準備することが大切です。夫から「専業主婦だから生活できないはず」「本気ではない」と思われてしまうケースもあるため、情報収集や準備を進めていることを伝えることで本気度や覚悟を示しましょう。
さらに「夫に頼らなくても生きていける」というメッセージを、会話の端々に盛り込むことも一つの手段です。経済的な自立がすぐには難しくても、支援制度の活用や今後の見通しについて伝えられると、相手の受け止め方も変わる可能性があります。
なお、離婚を切り出す方法は、同居しているのか別居しているのかによっても異なります。
同居している場合は、日々の家事や育児に追われるなかで落ち着いて話す機会をつくるのが難しいかもしれません。子どもが寝たあとや休日など、時間と気持ちに余裕があるときに話を切り出すのが理想です。できるだけ感情的にならず、淡々と伝えることを心がけましょう。
一方、別居中の場合は夫に連絡を取って話し合いの日取りを決め、どちらかの自宅や飲食店の個室などで話し合いを進めてみてください。
また、別居していても問題なく生活できていることが伝わるような話し方をすると、「もう夫に依存していない」という印象を与えやすくなります。家計の管理や日々の暮らしを自分でしっかり回していることをさりげなく伝えることで、相手が態度を変えるきっかけになる可能性もあるでしょう。
もしも直接話し合いをするのが難しい場合、メールや郵便など文書や記録に残る形で意思表示しておくことも大切です。
さらに、夫の不貞行為が原因で離婚を希望する場合は、事前に決定的な証拠を揃えておくことも忘れないでください。中途半端な証拠の場合、言い逃れされてしまう恐れがあるため、冷静かつ論理的に話ができるよう、事前の準備を怠らないようにしましょう。
ここまで、離婚を切り出すタイミングについて紹介しましたが、夫からの暴力や経済DVやモラハラを受けている場合は、タイミングを気にせず、まずは離れて暮らすことを優先してから対応してください。
専業主婦が離婚について話し合う際のコツ
専業主婦が夫と離婚について話し合うときにも、以下のようなコツがあります。
- 話し合いの内容は書面にまとめるか録音する
- 話し合いをする場所を工夫する
- 第三者に話し合いに同席してもらう
- 離婚条件や離婚後の生活について想定しておく
- 感情的になりすぎる場合は日を改める
- 離婚に合意した場合は離婚協議書を作成する
離婚について話し合った内容は、書面のまとまるか録音して残しておきましょう。記録を残しておけば、後から「言った・言わない」の水掛け論になることを防げるためです。
調停や裁判に発展した場合でも、話し合いの内容や様子を証明できる証拠として活用できるメリットがあります。話し合いの途中に暴言を吐かれたり、暴力を振るわれたりした際の証拠にもなり、自己防衛のためにも大切です。
離婚の話し合いをする場所を工夫するのも重要です。自宅で話をするのが怖い場合は、個室のある飲食店など、他人の目がある場所で話し合うとよいでしょう。自分の実家や義実家を利用すれば、話し合いに同席してもらえたり、子どもを見てもらえたりもできます。
また、話し合いに共通の友人や弁護士など、第三者に同席してもらうことで、冷静な話し合いができる可能性があります。弁護士に依頼した場合は、同席や仲介だけではなく、離婚協議の交渉を代行してもらうことも可能です。
さらに、離婚の話し合いの前に、離婚条件や離婚後の生活について想定しておきましょう。離婚条件や離婚後の生活を考えずに話し合いを進めると、あとから「希望通りの条件にならなかった」「離婚後に生活が苦しくなった」という事態になりかねません。
感情的になりすぎないことを意識した話し合いも重要です。明らかに相手が悪い場合でも、一方的に責め立ててしまうと、相手が態度を硬化して話し合いが進まなくなるためです。冷静な話し合いが難しい場合は、日を改めることも検討しましょう。
最後に、離婚について合意できた場合は、離婚協議書を作成してください。
離婚協議書とは、離婚する際に夫婦で決めた約束ごとを書面にした契約書のことです。
離婚条件に関して、親権や養育費、慰謝料、財産分与など、詳細に記載するのがポイントです。たとえば養育費についての合意が得られた場合、支払日や支払う口座、支払いが遅れた場合の措置なども記載します。
離婚協議書を作成することで、お互いが守るべき約束が明確になるほか、夫が条件を守らない場合に法的措置を講じやすくなるといったメリットがあります。
離婚後でも作成できますが、離婚届を提出する前に作成しておくのがおすすめです。
話し合いがまとまらない場合は調停を行う
夫婦での話し合いがまとまらない場合は、離婚調停に移行します。
離婚調停とは、家庭裁判所の調停手続きを利用して離婚することをいいます。
調停委員(男女1名ずつが一般的)が夫婦双方の話を聞き、離婚の是非や離婚条件について調整してお互いの合意を目指します。
離婚については話し合いがまとまった場合は、調停離婚が成立します。その際、合意した離婚条件が「調停調書」に記載されるため、離婚届の提出時に調停調書の謄本を取得して同時に提出しましょう。
離婚調停を申し立てた場合、家庭裁判所での話し合いとなるため、1~2ヶ月に1回程度の頻度で定期的に裁判所に通う必要があります。また、調停は平日の日中に実施されるため、日程を調整しなければならない点には注意が必要です。
調停期間は状況によって異なりますが、半年から1年程度はかかると考えておきましょう。
調停でも決まらない場合は離婚裁判を行う
離婚調停でも離婚が成立しない場合は、離婚裁判(離婚訴訟)を行います。
離婚裁判とは、夫婦それぞれの主張や提出された証拠を総合的に考慮して、裁判官が離婚の是非を判断する裁判のことです。調停が不成立となった際に、離婚裁判を提起することができます。
離婚の是非だけではなく、慰謝料や親権、財産分与、年金分割、面会交流などについても裁判で決めることができます。裁判の判決には法的拘束力が生じるため、夫が離婚を拒否していたとしても、判決によって強制的に離婚が可能です。
離婚裁判の大まかな流れは以下のとおりです。
- 離婚裁判を提起する
- 口頭弁論・争点整理
- 証拠調べ
- 和解勧試
- 和解成立もしくは不成立
- 判決
- 確定もしくは控訴
- 離婚が確定した場合は離婚届の提出
裁判が提起されると口頭弁論が開かれ、訴状の陳述や答弁書の陳述が行われます。次回以降の口頭弁論で原告と被告がそれぞれ反論を行い、争点を明確にします。
争点についてお互いの主張を立証するために、証拠の提出や証人尋問などを行い、それらの証拠の信憑性について裁判所が調査します。
離婚裁判では、尋問の後に和解の可能性についての意見聴取(和解勧試)が行われ、可能性がある場合は和解条件を話し合います。
和解しない場合や、和解が成立しない場合は、裁判所の判断(判決)が示されます。判決には、離婚の是非に加えて、離婚条件についても示されます。判決に対して、控訴しなれば判決は確定、納得できない場合は高等裁判所への控訴となります。
なお、裁判で離婚が認められるためには、民法によって定められている法定離婚事由が必要です。以下のいずれにも該当しない、または証拠が弱い場合は、離婚を認められる可能性が低くなります。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
裁判を提訴する場合、法定離婚事由に該当するかどうかを確認のうえ、必要な証拠を事前に収集しておきましょう。自分で判断ができない場合は、離婚の経験が豊富な弁護士に相談してみてください。
専業主婦が離婚時に請求できるお金
専業主婦が離婚する際には、以下のような金銭を請求できる可能性があります。
次の項目から、それぞれの金銭について詳しくみていきましょう。
財産分与
財産分与とは、婚姻生活において夫婦で協力して築き上げた財産を、離婚時に分配することです。離婚時には相手に財産分与を請求できることが民法において定められており、正当な権利となっています。
自分が専業主婦で収入がなかったとしても、離婚時には財産分与を求める権利があります。専業主婦の家事や育児の貢献も、夫婦の共同財産を築くうえで重要な役割であると認められているためです。
どのように財産分与をするのかは、当事者同士の協議や調停、裁判などで決定します。
財産分与の割合は、原則として夫婦で2分の1ずつとされていますが、お互いが合意すればその他の割合で決めても問題はありません。
たとえば夫の不法行為が原因で離婚する場合、慰謝料の代わりとして妻の財産分与の割合を増やす、という方法もあります。
注意点として、離婚成立後に財産分与をすると夫の資産を把握しづらくなるため、できるだけ離婚前に話し合いを行い、割合や方法について取り決めておきましょう。
年金分割
財産分与の一部として、年金分割という制度があります。
年金分割とは、夫婦が婚姻中に納めた厚生年金の金額を分け合う制度のことです。
とくに専業主婦として生活してきた期間が長い場合、年金分割をしなければ将来の年金の金額が大幅に減る恐れがあります。老後の生活に大きく影響するため、可能な限り年金分割を行いましょう。
なお、年金分割制度には「合意分割」と「3号分割」の2種類がありますが、専業主婦は3号分割を請求するケースが一般的です。
具体的には、平成20年4月1日〜離婚するまでの間に第3号被保険者だった場合、3号分割で夫に年金を請求します。平成20年3月31日以前の厚生年金や共働き期間の厚生年金については、合意分割を利用します。
3号分割の割合は2分の1ずつとなっており、話し合いや協議を経ることなく受け取ることが可能です。
一方、合意分割の割合は夫婦の話し合いによって決められます。話し合いがまとまらなかった場合は、調停の審判によって決められますが、2分の1ずつになるケースが多いです。
なお、国民年金や国民年金基金、確定給付企業年金は年金分割の対象とはなりません。
養育費
夫婦に子どもがいる場合、親権を持つ方が持たない方に対して養育費を請求できます。
養育費とは、子どもを教育・監護するための費用のことです。
具体的には、経済的・社会的に自立していない子どもに対して、自立するまでにかかる生活費や教育費、医療費などが養育費に該当します。
平成23年の民法改正により、離婚時に夫婦が決めるべき事項として面会交流と養育費の分担が明確に規定され、養育費は離婚相手に正式に請求できる権利となりました。
また、母子及び寡婦福祉法(現在は母子及び父子並びに寡婦福祉法に改正)によって、養育費の支払いの責務について明記されています。
なお、養育費を確保する方法や相場については「養育費を確保する方法とその相場」の項目で詳しく解説します。
慰謝料
専業主婦が離婚する場合、夫や第三者に対して慰謝料を請求できるケースがあります。
離婚慰謝料とは、離婚によって精神的苦痛を被った場合、相手に対して請求できる賠償金のことです。
離婚慰謝料は、不貞行為やDV、モラハラなどの不法行為のほか、セックスレス、アルコール中毒、ギャンブル依存などがあった場合に請求できる可能性があります。
離婚慰謝料を裁判で請求する場合、一般的な相場は50万円〜300万円程度とされています。配偶者による不法行為の有責性が高い場合や、精神的苦痛の程度が大きい場合は、相場よりも高い慰謝料を請求できるケースもあります。
また、婚姻期間が長い場合や子どもが多い場合、不法行為の期間が長い、回数が多い場合、重責配偶者に反省や謝罪が見られない場合などでも、慰謝料が増額される可能性があるでしょう。
なお、裁判ではなく示談で解決する場合、慰謝料の金額に上限はありません。夫が合意すれば相場を上回る慰謝料を受け取ることも可能です。
ただし、あまりにも高額な慰謝料を請求すると相手方の納得を得られず、裁判に発展しやすくなります。慰謝料のことで揉めると離婚成立までに時間がかかる恐れがあるため、弁護士と相談しながら妥当な金額を請求するのがおすすめです。
婚姻費用
専業主婦が離婚する場合、夫に対して婚姻費用を請求できる場合があります。
婚姻費用とは、家族が収入や財産、社会的地位に応じた通常の社会生活を送るために必要な生活費を指します。
離婚前に別居を選択した場合、夫に対して別居中の妻への生活費の支払い義務が認められる場合があります。
法律において婚姻費用は、夫婦の収入の多さに応じて分担する義務を負います。別居していてもこの義務がなくなることがないため、一般的には収入が少ない専業主婦が夫に対して婚姻費用を請求できます。
婚姻費用の主な内訳は以下のとおりです。
- 衣食住に必要な費用
- 子どもの生活費や教育費(学費、学用品の購入費用を含む)
- 医療費
- 出産費
- 冠婚葬祭費
- 必要な範囲の交際費
- 必要な範囲の娯楽費など
婚姻費用として請求できる金額は、一般的に「婚姻費用算定表」を利用して決められます。子どもの有無や人数、年齢、夫婦の年収などによって目安の金額が異なります。
婚姻費用の支払い有無や金額などは、夫婦の話し合いによって取り決めます。もしも夫が話し合いに応じなかったり支払いを拒否したりした場合、内容証明郵便を送付した後に婚姻費用分担請求調停を申し立てて請求することになるでしょう。
なお、婚姻費用は相手に請求する意思を示した時点以降の分しか認められず、それ以前の分を遡って請求することはできません。また、婚姻費用を請求する側が有責配偶者であった場合は基本的に請求が認められないため、注意しておきましょう。
シングルマザーが利用できる助成制度
専業主婦が離婚してシングルマザーとなった場合、国や自治体などが提供する助成制度を利用できるケースがあります。
助成制度には以下のようなものがあります。
- 児童扶養手当
- 児童育成手当
- 家賃補助
- ひとり親家族等医療費助成
- 寡婦控除
- 生活保護
それぞれどのような制度なのか、詳しく紹介します。
児童扶養手当:ひとり親世帯の生活の安定や福祉の増進を図る制度
シングルマザーの場合、児童扶養手当を受けられる場合があります。
児童扶養手当とは、ひとり親世帯の生活の安定や福祉の増進を図ることを目的とした助成制度で、離婚などにより父や母と生計を別にする児童がいる家庭を対象に手当が支給されます。
実施主体は都道府県や福祉事務所を設置している市町村です。
支給対象となるのは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童を監護するひとり親の父または母です。母子家庭や父子家庭のほか、父母に代わって養育している祖父母なども支給対象となります。
また、子どもに障害があるケースでは、20歳未満までが支給の対象です。
児童扶養手当には所得制限が設けられており、前年の所得が190万円までなら全部支給、385万円までなら一部支給となります。
令和7年4月以降に支給される手当の金額は以下のとおりです。
条件 |
支給される金額 |
基本 |
・全部支給:4万6,690円
・一部支給:4万6,680円~1万1,010円 |
加算額(児童2人目以降1人につき) |
・全部支給:1万1,030円
・一部支給:1万1,020円~5,520円 |
支給サイクルは奇数月の年6回となり、1月、3月、5月、7月、9月、11月にそれぞれ2ヶ月分が支給されます。
参考:児童扶養手当について|こども家庭庁
児童育成手当:ひとり親世帯の生活の安定や福祉の増進を図る制度
シングルマザーの場合、児童育成手当を利用できる可能性があります。
児童育成手当とは、18歳に達した年度末までの児童がいる家庭で、父母が離婚したり、死別したりしている母子家庭、父子家庭が利用できる助成制度です。各市町村が条例を設置して実施している事業です。
子ども1人につき、月額1万3,500円が支給されます。
児童育成手当にも受給者(児童の保護者)の所得制限が設けられています。具体的な金額は以下のとおりです。
扶養親族の数 |
所得制限 |
扶養親族などが0人の場合 |
所得額が360万4,000円未満であること |
扶養親族などが1人の場合 |
所得額が398万4,000円未満であること |
扶養親族などが2人の場合 |
所得額が436万4,000円未満であること |
扶養親族などが3人以上の場合 |
所得額が436万円4,000円に、扶養親族などが3人目以降1人増加するごとに38万円を加算した額未満であること |
児童育成手当は申請した月の翌月分から受給可能です。住んでいる地域によって対応が異なる場合があるため、市区町村の役所に問い合わせて確認しましょう。
家賃補助:各自治体や都道府県が行っている助成制度
シングルマザーの場合、各自治体や都道府県が実施する家賃補助を利用できる可能性があります。
家賃補助は都道府県や自治体によって対応が異なります。家賃補助や住宅手当、住宅費助成制度など、名称が異なるケースがあるほか、市営住宅への申し込みによって支援している自治体もあります。
シングルマザーが利用可能な家賃補助を提供している自治体の一例として、千葉県浦安市と神奈川県厚木市のケースを紹介します。
千葉県浦安市では「ひとり親家庭住宅手当」を提供しています。助成内容は以下の通りです。
項目 |
内容 |
要件 |
・20歳未満までの児童を養育するひとり親家庭
・浦安市の住民基本台帳に世帯主として登録済み
・居住するための住宅を借りたうえで月額1万円を超える家賃を支払っている
・自らの名義の賃貸借契約によって住宅を借りている
・所得制限限度額も条件を満たしている
|
助成金額 |
家賃1万円を超える額に対して、月額1万5,000円を限度として支給 |
支給月 |
4月、8月、12月の各21日(前月分までを振込) |
所得制限 |
・税法上の扶養親族などの数が0人:192万円
・税法上の扶養親族などの数が1人:230万円
・税法上の扶養親族などの数が2人:268万円
・税法上の扶養親族などの数が3人:306万円
・税法上の扶養親族などの数が4人:344万円
※所得制限限度額の計算には、控除などさまざまな要素を含めて計算
|
詳しくは浦安市役所のホームページを確認してください。
参考:ひとり親家庭住宅手当|浦安市
神奈川県厚木市では、ひとり親世帯に対して家賃の一部を助成する「母子家庭等家賃補助制度」を提供しています。
制度の概要は以下の通りです。
項目 |
内容 |
要件 |
・母子家庭もしくは父子家庭であること
・18歳の誕生日から最初の3月31日を迎えるまでの子どもと同居していて、養育する世帯である
・厚木市内に住所を有している
・家賃月額が1万円以上6万円以下である
・前年所得が一定額以下である
・生活保護法の住宅扶助を受けていない
|
助成金額 |
月額1,300円~1万円(家賃月額によって異なる) |
支給月 |
4月、8月、12月の各21日(前月分までを振込) |
所得制限 |
・扶養人数が0人の場合:234万2,000円
・扶養人数もしくは子ども1人につき38万円を加算した金額
※所得制限限度額の計算には、控除などさまざまな要素を含めて計算
|
厚木市で助成を受けたい場合は、年度ごとに申請する必要があるため、注意しましょう。詳しくは厚木市のホームページを参照してください。
参考:母子家庭等家賃助成について|厚木市
このように、住んでいる地域によって制度の有無や内容が異なるため、ホームページや問い合わせなどで確認しましょう。
ひとり親家族等医療費助成:未成年の子どもを扶養するひとり親を支援するための制度
シングルマザーの場合、ひとり親家族等医療費助成を受けられる可能性があります。
ひとり親家庭等医療費助成とは、ひとり親家庭の父もしくは母、父母の代わりに児童を養育している人、養育されている児童の医療費を助成する制度です。
ひとり親家庭の保健の向上と福祉の増進を目的に実施されています。
ひとり親家庭の18歳に到達して最初の3月31日までの間の年齢の子どもがいる家庭が助成の対象となります。
助成内容は自治体によって異なるため、住んでいる地域の助成制度について確認が必要です。ここでは、京都市の制度を例に助成内容を紹介します。
京都市の「ひとり親家庭等医療費助成(支給制度)」の対象となるのは、京都市内に住んでいて、社会保険や国民健康保険に加入している方で、以下の要件に該当する場合です。
- 生計を一にする父の無い児童及びその児童と生計を一にしている配偶者の無い母親
- 生計を一にする母の無い児童及びその児童と生計を一にしている配偶者の無い父親
- 両親のいない児童
- 両親のいない児童を扶養している20代未満の方
また、医療費の助成を受けるためには、所得基準を満たす必要があります。具体的な所得基準は以下の通りです。
税法上の扶養親族の人数 |
所得基準額 |
0人 |
236万円未満 |
1人 |
274万円未満 |
2人 |
312万円未満 |
3人 |
350万円未満 |
※以下、扶養親族が1人増えるごとに38万円を加算
※所得基準額の計算は、収入から各種控除を差し引いて計算
医療機関を受診して同助成制度を利用する場合、健康保険証に加えて、福祉医療費受給者証(親)を一緒に窓口へ提示する必要があります。
ただし、健康診断料や予防注射料、差額ベッド代など、健康保険の給付対象とならないものや、入院時の標準負担額などは支給対象とはならないため注意しましょう。
助成内容や必要な手続きなどは、自治体によって異なるため、必ず確認してください。
参考:【福祉医療】ひとり親家庭等医療費支給制度|京都市
寡婦控除:夫と離婚や死別した妻が利用できる所得控除
シングルマザーの場合、寡婦控除を利用できる場合があります。
寡婦控除とは、納税者が寡婦の場合に、一定金額の所得控除を受けられる制度のことです。
寡婦とは、その年の12月31日の時点で、ひとり親に該当せず、以下の要件に当てはまる人のことです。
- 夫と離婚した後に婚姻しておらず、扶養親族(子どもや親など)がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
- 夫と死別した後婚姻していない人、または夫の生死が明らかではない一定の人出、合計所得金額が500万円以下の人
なお、ひとり親に該当する場合は「ひとり親控除」が優先して適用されます。
納税者自身が寡婦であると認められる場合、27万円の所得控除を受けられるため、所得税や住民税が軽減されます。
参考:寡婦控除|国税庁
ひとり親控除
シングルマザーの場合、寡婦控除ではなく、ひとり親控除の対象となるケースがあります。
ひとり親控除とは、納税者がひとり親の場合に、一定金額の所得控除が受けられる制度です。
ひとり親控除の対象となる人の範囲は以下の通りです。
- その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいない
- 生計を一にする子がいる(その年の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限る)
- 合計所得金額が500万円以下
上記の条件を満たしている場合、ひとり親控除として35万円の所得控除を受けられます。
ひとり親控除の要件を満たしている場合は、寡婦控除ではなく、ひとり親控除の適用が優先されます。両方の控除を同時に受けられないため、シングルマザーの場合はどちらが対象になるのか、確認する必要があるでしょう。
参考:ひとり親控除|国税庁
生活保護:健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度
シングルマザーの場合、生活保護を受けられる場合があります。
生活保護とは、生活に困窮する人に対して、困窮の度合いに応じた必要な保護を実施する制度です。健康で文化的な最低限度の生活の保障と自立の助長を目的にしています。
給与や年金などを含めた収入が国の定めた基準による最低生活費を下回る世帯で、かつ所有する資産や能力、制度を利用しても生活が維持できない場合に利用できます。
そのため、生活保護を受けるには以下の要件を満たす必要があります。
- 資産の活用:預貯金や生活に利用していない土地・家屋などを売却して生活費に充てる
- 能力の活用:働くことが可能な人は、能力に応じて働く
- あらゆるものの活用:年金や手当などの制度で給付が受けられる場合は、まずそれらを活用する
- 扶養義務者の扶養:親族などから援助を受けられる場合は、援助を受ける
上記の要件を満たしたうえで、世帯収入と厚生労働大臣が定める基準によって計算される最低生活費を比較し、収入が最低生活費に満たない場合、生活保護の適用対象となります。
また、生活保護費の支給金額は、最低生活費から収入を差し引いた金額となります。
なお、生活保護には以下のような種類があります。
生活保護の種類 |
内容 |
生活扶助 |
日常生活に必要な費用(食費、光熱費、被服費など) |
住宅扶助 |
アパートなどの家賃 |
教育扶助 |
義務教育を受けるために必要な費用 |
介護扶助 |
介護サービスの費用 |
医療扶助 |
医療サービスの費用 |
出産扶助 |
出産のための費用 |
生業扶助 |
就労に必要なスキルを身に付けるための費用 |
葬祭扶助 |
結婚式や葬儀などに必要な費用 |
生活保護制度の利用を希望する場合は、住んでいる地域の福祉事務所の生活保護担当に問い合わせ・申請を行います。
生活保護制度は日本国憲法第25条や生活保護法によって定められている国民の権利であるため、必要な場合はためらうことなく相談しましょう。
参考:生活保護制度|厚生労働省
子供の親権がどちらにわたるかの判断ポイント
基本的に女性が親権を取れる みたいな見せ方
子どもの親権が夫婦のどちらに認められるのか、具体的な判断ポイントは以下のとおりです。
- これまでの監護実績の有無
- 親の健康状態や愛情の多さ
- 子どもの年齢や兄弟の有無
- 離婚後の経済状況
- 子どもの意思
それぞれ詳しく見ていきましょう。
これまでの監護実績の有無
子どもの親権を取り決める際に、監護実績は重要視されるポイントの一つです。
監護実績とは、子どもの生活について必要とされる監督や保護を行ってきているか(面倒を見てきているか)ということです。
父と母のどちらが主に子どもの世話をしているか、ということが重要な判断材料となります。これまで適切に子どもの監護を行ってきた実績がある親ならば、今後の監護のスキルや意欲があり、離婚後も子どもをきちんと監護すると考えられるためです。
そのため、専業主婦でも監護実績が認められれば親権者になれる可能性は十分にあります。実際、統計では親権者の9割が母親となっており、専業主婦だった人が親権者になったケースも多数存在します。
とくに、子どもが乳幼児である場合は「母性優先の原則」が考慮されるため、母親が親権者になるケースが大半を占めています。
親の健康状態や愛情の多さ
親権の行方は、親の健康状態や愛情の多さによって判断されることもあります。
子どもの養育には、親の心身が健康で安定しており、子どもに対して愛情を持っていることが望ましいためです。そのため、健康で子どもを監護する意欲がある場合は、親権者になれる可能性が高いといえます。
一方、重い病気にかかり入退院を繰り返している場合や、精神が不安定な場合は、子どもを監護できないと判断されることがあります。
また、子どもに対して無関心だったり放置していたり、愛情が薄いと判断されるような場合も、親権は認められない可能性が高いでしょう。
子どもの年齢や兄弟の有無
親権の行方は、子どもの年齢や兄弟・姉妹の有無が判断材料となる場合もあります。
子どもが幼い場合、子どもには母親が必要という考え方(母性優先の法則)があります。近年では、この考え方が重視されるとは限らないものの、母が親権を獲得する可能性が高いといえます。
ただし、父が母の役割を十分に果たしており、適切な監護を実施していると認められれば、父に親権を認めるケースもあります。
また、子どもに兄弟姉妹がいる場合、同じ親権者が養育するのが望ましいという考え方があります。兄弟姉妹が離れ離れになることで、子どもにかかる精神的な負担や悪影響が大きくなると考えられるためです。
このような場合は、子ども全員の親権をどちらかが所有する可能性が高いでしょう。
離婚後の経済状況
親権の行方は、離婚後の経済状況も判断材料となります。
経済的に不自由なく養育できることが、子どもの福祉の観点から望ましいと判断されるためです。
そのため、離婚後の生活について見通しが立っているかどうかも、親権の行方を左右するポイントとなります。専業主婦が親権を獲得したい場合は、離婚後の仕事をあらかじめ決めておくことをおすすめします。
もしも就職先の給料が低かったとしても、生活費は養育費で補うことが可能なため、経済力に関しては重要視されない傾向にあります。働きながら子どもを監護する意思がある姿勢を示すことが大切です。
ただし、借金を繰り返していたり、浪費癖があったりするなど、経済観念が疑問視される場合は、親権を獲得できない場合があるため注意が必要です。
また、子どもの監護への協力者の有無もポイントとなります。自分の親など、働きながら監護できる環境が整っている場合、親権獲得で有利になるためです。子どもの年齢や状況によっては、実家を頼ることも考えた方がいいでしょう。
子どもの意思
親権の行方は、子どもの意思が反映されることもあります。
離婚する夫婦の子どもが15歳以上の場合、裁判所は子どもの意向を必ず確認しなければならないと定められており、原則として子どもの意思が尊重されます。
15歳以上の子どもであれば、判断能力が備わっていると考えられるため、子ども自身の意思で親権者を決められます。そのため、母性優先の原則などは、子どもが15歳以上の場合は判断材料とならないと考えておきましょう。
なお、子どもが15歳未満でも、おおむね10歳前後であれば子どもの意思が尊重される傾向にあります。
10歳未満の幼い子どもの場合、状況判断が難しかったり、気持ちを正直に表現できなかったりするケースが多く、子どもの真意を適切に判断できない可能性があります。
このような場合は、子どもの発言に加えて、これまでの親子の関わりや監護状況、父と母のどちらとの精神的な結びつきが強いか、といった要素を加味して判断されることになります。
専業主婦が離婚するリスク
専業主婦でも離婚は可能で、親権も獲得できる可能性があります。ただし、離婚に対してはリスクが伴うことも忘れてはいけません。
ここでは、専業主婦が離婚するリスクについて解説します。具体的には、以下のようなリスクが存在します。
- 住む場所を見つけるのが難しくなる
- 就職先をなかなか見つけられない
- 自分の力だけで子育てをしなければいけない
それぞれ詳しく解説します。
住む場所を見つけるのが難しくなる
専業主婦が離婚するリスクの1つが、住む場所を見つけるのが難しくなることです。
専業主婦の多くが働いておらず、賃貸物件が借りられない恐れがあるためです。
専業主婦は収入がない場合が多く、敷金や礼金などの初期費用に加えて、契約後の家賃が支払えないと判断されてしまうケースがあります。
離婚後に親に頼らずに自分で生活していく場合は、離婚前に住む場所と生活費を確保するようにしましょう。
離婚後に実家を頼ることができる場合は、初期費用や家賃、生活費などを抑えられます。他にも、収入が少ない場合は公営住宅を借りられるケースもあるため、住んでいる地域の条件などを事前に確認しておきましょう。
就職先をなかなか見つけられない
専業主婦が離婚するリスクとして、就職先が見つかりにくい点も挙げられます。
専業主婦の場合、社会人として会社勤めをしたことがない場合や、仕事の経験はあるもののブランクが長い場合があるためです。
国家資格や専門的な資格を保有していれば、正社員として就職先が見つかりやすいですが、資格がなければいきなり正社員として就職するのは難しいでしょう。
また、子どもがいる場合は、送迎や面倒を見てくれる協力者がいなければ、自分ですべてこなす必要があります。働く必要があっても時間が制限されやすくなるため、就職先が見つかりにくくなるのです。
そのため、離婚前に準備をして仕事探しを終えておき、できれば離婚前から働き始められるようにするのがおすすめです。
たとえば、離婚前に仕事を見つけておけば離婚後の費用を工面できるほか、離婚後に転職する場合でも転職先の選択肢が広がり、企業からも即戦力として求められやすくなります。
自分の力だけで子育てをしなければいけない
自力で子育てをしなければならないのも、専業主婦が離婚するリスクです。
離婚することで、母親だけではなく父親の役割も果たす必要があるためです。
婚姻中に夫が家事や育児に非協力的だった場合、離婚しても日常生活が大きく変わることはないでしょう。しかし、夫が家事や育児を担っていた場合は、離婚後の母親に肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。
生活に必要なお金も自分で稼ぐ必要があるため、離婚後に親権を獲得した場合は相当の覚悟を持って育児と生活に臨む必要があるでしょう。
養育費を確保する方法とその相場
厚生労働省が公表している「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査の結果」によると、離婚後に父親から養育費を受け取っている割合は28%程度となっています。シングルマザーの約4人に3人が養育費を受給できていないのが現状です。
そのため、専業主婦が離婚して親権を獲得する場合、養育費を確保することが極めて重要になります。
ここでは、養育費を確保する方法と、養育費の相場について解説します。
- 執行認諾文言付公正証書または裁判所の手続きで養育費を確保する
- 養育費の相場は約4万円~5万円
それぞれ詳しく見ていきましょう。
執行認諾文言付公正証書または裁判所の手続きで養育費を確保する
養育費を確保するためには、以下の2つの方法があります。
- 養育費の合意を執行認諾文言付公正証書で作成する
- 調停などの裁判所の手続きを利用する
執行認諾文言付公正証書とは、約束されたお金を相手が支払わない場合に、裁判手続きを行わなくても、相手の財産を差し押さえられる効力を持つ公正証書です。
養育費について夫婦間で約束事を取り決めたら、離婚協議書を作成して記録として残します。離婚協議書にも法的な効力がありますが、強制執行を行う場合は裁判所での手続きが必要になり、実際に支払いが行われるまでに時間がかかってしまいます。
そのような事態を避けるための手段が、執行認諾文言付公正証書の作成です。
離婚協議書に養育費の支払い義務がある人の支払いが滞った場合、直ちに強制執行を受けてもやむを得ない、といった文言を付け加えて公正証書化すれば、直ちに強制執行の手続きが行えるようになります。
なお、強制執行に関する文言を記載していなければ、離婚協議書を公正証書化しても強制執行は行えません。
また、養育費を確保するためには、調停などの裁判所での手続きを行うのも有効です。
離婚する際に調停や審判の手続きが成立していて、調停調書や審判所がある場合、強制執行によって養育費を強制的に支払わせることが可能です。
調停や審判で決められた通りに養育費を支払わない人への対処の手順は以下のとおりです。
- 履行勧告を行う
- 強制執行を行う
履行勧告とは、調停や審判で決められた通りに養育費を支払わない人に対して、支払いを促す制度です。
家庭裁判所の履行勧告の申出を行うと、裁判所が調査を行い、支払い義務がある人に対して決められた通りに支払いを行うよう勧告してもらえます。
ただし、それでも支払いが行われない場合、履行勧告では支払いを強制させることはできないため、強制執行に移ることになります。
上記のような方法で、夫からの養育費の支払いを確保しやすくなります。養育費はシングルマザーとして生活するうえで重要になるため、これらの方法を理解しておきましょう。
養育費の相場は約4万円~5万円6~10万円
厚生労働省が公表している「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査の結果」によると、離婚した父親から受け取っている養育費の平均月額は4万円~5万円程度でした。
なお、養育費の金額には、法的に明確な決まりが設けられていません。実際に受け取る金額は平均より前後する可能性もあるため、あくまでも一つの目安と考えておきましょう。
たとえば協議や調停で離婚する場合、両者が合意するのであれば、養育費の金額は自由に決められます。一方、裁判で養育費について争う場合は、裁判所が公表している「養育費算定表」を参考に金額が決められるケースが一般的です。
また、養育費を支払う側の収入状況によっては、想定よりも少ない金額しか支払えない可能性もあります。
このように、さまざまな事情や背景から、養育費の金額は離婚する夫婦の状況によって大きく変動するものと認識しておきましょう。
しかし、養育費算定表からモデルケースとして、目安の養育費の金額を割り出すことは可能です。
たとえば、以下のケースを想定して養育費の金額を算出してみます。
- 夫の年収が600万円
- 妻の年収が0円(専業主婦)
- 子どもが1人いる
この場合、子どもの年齢によって、目安となる養育費の金額が変わります。
- 子どもが0歳から14歳の場合:月額6万円~8万円
- 子どもが15歳以上の場合:月額8万円~10万円
養育費の金額は夫や妻の年収、子どもの年齢によって変動します。子どもの年齢によって養育費の金額が変動するのは、年齢が上がるほど学費や習い事などの教育費にお金がかかるためです。
養育費をしっかり確保したい場合は、弁護士に依頼し適切な養育費の金額を算出してもらったうえで、夫と交渉してもらうといいでしょう。
まとめ
専業主婦が離婚を考える際には、事前に知っておくべきことや準備すべきことが数多くあります。
まずは離婚後の生活費や費用を具体的に計算し、子どもがいる場合は親権や監護の状況などについても考えておきましょう。夫の不法行為が原因で離婚する場合は、証拠の収集や慰謝料請求もあわせて考える必要があります。
離婚の手順としては、協議から調停、裁判へと段階を踏むケースが一般的です。
協議で円滑に離婚の可否や条件などが決まれば問題ありませんが、揉めてしまったときは弁護士に相談することも視野に入れましょう。
離婚を切り出す前にしっかりと情報を集め、計画的に準備を進めてみてください。
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