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専業主婦が離婚の際に知っておくべきことは?子供の親権・養育費も解説

専業主婦が離婚の際に知っておくべきことは?子供の親権・養育費も解説

専業主婦の方の中には、配偶者との離婚を考えている方もいるでしょう。しかし、実際に離婚する場合に何に備えればいいのか、離婚後の生活は大丈夫か、気になることがたくさんあって、不安を感じるのではないでしょうか。

専業主婦の方が離婚時や離婚後に感じる不安を解消するためには、以下のようなことを知っておく必要があります。

  • 離婚費用はいくらかかるのか
  • 子どもの親権はどうするのか
  • 夫の不倫が原因の場合の証拠は必要か
  • 夫婦の共有財産と単独で所有する財産はどれだけあるか
  • 夫にどのような金銭を要求できるのか
  • シングルマザーとして利用できる助成制度はあるのか
  • 住む場所や子どもを育てる場所はどこにするか など

その他にも、離婚を進める手順や離婚に伴うリスクなども理解して、準備を進める必要があります。ただし、1人で対応するのが難しい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

今回は専業主婦が離婚する際に知っておくべきことを網羅的に解説します。子どもの親権や養育費についても分かりやすく紹介するので、離婚を考えている専業主婦の方は参考にしてください。

専業主婦が離婚の際に知っておくべきこと・準備すべきこと

専業主婦の方が離婚を希望している場合、事前の理解・準備が必要なことがたくさんあります。離婚はその後の生活面や経済面に大きく影響するためです。

具体的には以下のポイントについて理解して準備しておきましょう。

  • 離婚費用を計算する
  • 子どもの親権について考える
  • 有責性の検討や証拠の収集を行う
  • 単独所有財産と共有財産を把握しておく
  • 離婚してからの家計をシミュレーションする
  • 夫に請求するお金について考えておく
  • シングルマザーが利用できる助成制度を把握しておく
  • 住む場所を準備しておく
  • 子どもをどこで養育するか考えておく
  • 必要書類を準備しておく

それぞれ詳しく解説します。

離婚費用を計算する

専業主婦で離婚を考えている場合は、離婚にどれくらいの費用がかかるか理解しておきましょう。

夫婦が離婚する場合、どのような離婚方法となるかによって、離婚にかかる費用が異なります。

離婚方法による費用の目安は以下の通りです。

離婚方法 費用の内訳 費用の合計(目安)
協議離婚 ・役所への交通費程度 ほとんどかからない
離婚調停 ・収入印紙費用:1,200円
・郵便切手代:1,000円程度
・夫婦の戸籍謄本:450円程度
・調停調書謄本費用:1,000円程度
4,000円程度
協議離婚(弁護士対応) ・着手金:20万円~50万円程度
・成功報酬:20万円~100万円程度
・実費、日当:5万円程度
45万円~155万円程度

例えば、夫婦同士の話し合いで離婚条件がすんなり決まるような円満な協議離婚の場合、市役所に離婚届を提出するだけで離婚が成立するため、交通費程度の費用しかかかりません。

一方、夫婦のどちらかが離婚に同意していない場合や、財産分与・養育費・慰謝料などで揉めているような場合は、離婚協議がスムーズに進まない場合もあります。

協議で離婚条件がまとまらない場合は離婚調停に進むことになります。

離婚調停を申し立てる場合は、裁判所に支払う費用として4,000円程度が必要です。内訳は以下の通りです。

  • 収入印紙費用:1,200円
  • 郵便切手代:1,000円程度
  • 夫婦の戸籍謄本:450円程度
  • 調停調書謄本費用:1,000円程度

また、離婚調停への対応を弁護士に依頼する場合は、着手金として20万円~50万円程度、離婚が成立した場合の成功報酬として20万円~100万円程度(財産分与、慰謝料、養育費、親権の獲得の報酬を含む)、日当や実費として5万円程度の費用がかかります。

他にも、引っ越し費用や別居後の生活費なども必要になるため、自分の貯金でカバーできるのか、足りない場合はどうするのか、考えておきましょう。

子どもの親権について考える

専業主婦が離婚する場合は、子どもの親権についても考えておきましょう。

子どもがいない家庭であれば、夫婦が離婚するだけで問題は解決できますが、子どもがいる場合、話は別です。

一般的には、離婚するまで専業主婦だった人が親権を持てる可能性があります。ただし、夫婦で話し合い、どちらが親権を持つのか最善なのかを考えることが大切です。

また、子どもが話せる年齢であれば、子どもに意見を聞いて参考にするのもいいでしょう。

なお、子どもが15歳未満の場合、適切な判断能力がないため、基本的には親が親権者を決めます。子どもが15歳以上の場合は、子どもがどちらかの親を親権者として選択可能です。

そして、夫婦で親権者を決める場合は、子どもと離れたくないという気持ちだけで親権を主張してはいけません。

自分が親権を持つべきと考えるならその理由を整理して相手に伝える必要があり、夫が親権を主張する場合は、相手を説得する方法を考える必要があるでしょう。

有責性の検討や証拠の収集を行う

不貞行為やDVなどの法定離婚事由によって離婚する場合は、有責性の検討や証拠集めを行いましょう。

法定離婚事由とは、民法上、離婚訴訟を提起できる場合として定められている離婚の原因のことです。

法定離婚事由には以下の5つがあります。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復の見込みのない強度の精神病
  • その他※人を継続し難い重大な事由

離婚について協議する際に、上記に該当する離婚理由がある場合は、夫婦のどちらに夫婦関係の破綻の責任があるのかが重要です。

また、夫に責任がある場合、離婚の原因が夫にあることを証明する必要があります。法定離婚事由による離婚で、相手の行為に対して精神的苦痛を被っている場合は、慰謝料を請求できる場合もあるため、証拠をしっかり集めて相手の責任を証明しましょう。

単独所有財産と共有財産を把握しておく

専業主婦で離婚する場合は、単独所有財産と夫婦で共有する財産を把握しておきましょう。

財産の種類によっては財産分与によって、資産を分け合う必要があるためです。

財産分与とは、離婚した者の一方が、もう一方に対して、財産の分与を請求できる制度のことです。

財産分与には、夫婦が共同生活を送るなかで形成された財産を公平に分配する目的があります。財産分与の対象となるのは、夫婦共有名義の財産(共有財産)のほか、夫婦のいずれかの名義になっている財産でも、夫婦が協力することで形成された財産であれば、財産分与の対象となります。

つまり、共有財産は財産分与の対象になり、婚姻前から所有する個人名義の財産や、婚姻中に自分名義で得た財産(単独所有財産)は財産分与の対象とはなりません。

また、自分の両親や祖父母から得た相続財産は単独所有財産となるため、財産分与の対象外です。

離婚を本格的に考えている場合は、夫婦の共有財産について調べておいた方がいいでしょう。以下に挙げる書類を確認し、どれくらいの共有財産があるか調査してください。

  • 不動産の登記簿謄本
  • 自動車検査証
  • 保険証書
  • 年金証書
  • 銀行の預金通帳
  • 有価証券
  • ローン契約書
  • 賃貸借契約書

これらの書類のコピーを取っておけば、調査時点での財産の証拠となるほか、金額を確認しやすくなるでしょう。

離婚してからの家計をシミュレーションする

専業主婦で離婚する場合は、離婚後の家計をシミュレーションすることも大切です。

離婚した場合、夫の収入に頼ることができなくなるためです。

離婚後にどれくらいの支出が発生し、どれくらいの収入を得られるのか確認しましょう。収入が足りない場合は、どれくらいの収入が得られる仕事に、離婚後のいつまでに就くのかを考えておく必要があります。

離婚してから仕事を確保しようとすると遅い場合があります。生活の基盤を整えられるようにするためにも、できるだけ離婚する前に仕事を見つけておくようにしましょう。

また、専業主婦の場合、夫の扶養に入っているケースがほとんどです。離婚すると扶養から抜けることになるため、国民健康保険に加入しなければなりません。

なお、国民健康保険料は前年度の収入によって決まるため、専業主婦は保険料が軽減されるケースが多いでしょう。

夫に請求するお金について考えておく

専業主婦が離婚する場合は、夫に請求するお金について考えておきましょう。

離婚する状況によっては、夫に対して金銭を請求できるためです。

請求できる可能性があるのは以下の通りです。

  • 財産分与
  • 慰謝料(不法行為による精神的苦痛に対して)
  • 養育費
  • 婚姻費用(離婚前に別居している場合)
  • 年金分割 など

専業主婦が離婚する場合、働いていないかもしくはパート程度の仕事しかしておらず、収入が少ないケースがほとんどです。

子どもの養育や将来もらえる年金など、離婚後の生活に大きく影響するため、請求することが認められているもの、もしくは妥当なものに関しては、遠慮することなく請求しましょう。

また、夫に対して金銭を請求する場合に備えて、夫の収入を把握しておきましょう。源泉徴収票や給与明細書、通帳などを調べ、可能であればコピーを取っておくことをおすすめします。

なお、夫に対して請求できる金銭の詳細については後述します。

シングルマザーが利用できる助成制度を把握しておく

専業主婦が離婚する場合は、シングルマザーが利用できる国や自治体の助成制度を把握しておきましょう。

日本では、母子家庭のための手当や支援制度が豊富にあり、上手く活用すれば生活の安定につながります。

シングルマザーが利用できる助成制度の一例は以下の通りです。

  • 児童扶養手当
  • 児童育成手当
  • 家賃補助
  • ひとり親家族等医療費助成
  • 寡婦控除
  • 生活保護 など

ただし、助成制度によって対象となる条件が異なるため、利用可能かどうか事前に調べておくことが大切です。

なお、助成制度の詳細については後述するので、参考にしてください。

住む場所を準備しておく

専業主婦で離婚する場合は、離婚後に住む場所を準備しておくことが重要です。

住む場所を確保したり、引っ越したりするための費用がネックになるケースが少なくないためです。

現在の収入で住める場所を事前に探したり、引っ越しをするのにどれくらいの費用がかかるかシミュレーションしたりしておくといいでしょう。

引っ越し費用が捻出できない場合や、賃貸物件の家賃を払えそうにない場合は、実家に戻ることも検討しましょう。家賃が発生せず、生活費も安く抑えられるためです。

また、財産分与によって持ち家を譲渡してもらえるケースもあります。自宅をそのまま譲り受けたい場合は、財産分与の協議の際に離婚条件として組み込むのもいいでしょう。

なお、離婚成立前に別居する場合、その理由を明確にする必要があります。夫婦には同居の義務があるためです。

正当な理由がないまま別居すると、離婚裁判に発展した場合に自分が不利になることがあるため、注意しましょう。

子どもをどこで養育するか考えておく

専業主婦が離婚する場合は、子どもをどこで育てるかも考えておきましょう。

夫婦に幼い子どもがいる場合、離婚した後に子どもが通う保育園や学校についても影響が出るためです。

なお、子どもを4月から保育園や幼稚園に預けたい場合、基本的には前年の10月ころには入園の申し込みをしなければなりません。

また、一般的な保育園では定員に空きがあれば入園できますが、定員がオーバーしている場合は空きが出るまで待機する必要があります。

特に、都市部に住む場合は、入園前に時間がかかるケースもあるため、できるだけ早く保育園や幼稚園を探すようにしましょう。

また、離婚してから住所変更をする場合は、転園や転校の手続きも同時に行う必要があります。書類での手続きに加えて、先生に事情を説明する必要もあり、相当な労力がかかることを覚悟しておきましょう。

さらに、子どもにとっては、これまでの友達と離れ離れになるケースもあるため、メンタル面でのフォローやケアを忘れないでください。

必要書類を準備しておく

専業主婦が離婚する場合は、必要な書類を準備しておきましょう。

協議離婚、離婚調停、離婚訴訟(裁判離婚)において、離婚届を役所に提出する際に必要な書類は以下の通りです。

必要書類 協議離婚 離婚調停 離婚訴訟
離婚届
戸籍謄本
本人確認書類
調停調書謄本
判決書謄本
確定証明書

※戸籍謄本は、自分の本籍地以外の役所に離婚届を提出する場合に必要。

協議離婚によって離婚届を提出する場合が基本となり、離婚調停の場合は調停調書謄本、離婚訴訟(裁判離婚)の場合は判決書謄本と確定証明書の提出が必要です。

調停調書とは、調停での話し合いで合意した内容を記載した文書です。調停が成立した場合に作成され、裁判官が内容を読み上げて、内容や夫婦の認識に間違いがないかを確認したうえで、確定した内容が記載されます。

調停調書謄本は、調停があった家庭裁判所での来庁申請もしくは郵送で交付の申請を行います。郵送の場合、手元に届くまでに1週間程度かかるため、急ぎの場合は来庁申請を行いましょう。申請から2~3日程度での発行が可能です。なお、交付手数料は1枚150円です。

判決書とは、裁判所が判決を下した理由や事実、判決主文などが記載され、裁判官が署名捺印されている文書のことです。

判決書は基本的に1つのみ作成されるものであるため、役所に提出する際は謄本を取得する必要があります。

判決書の謄本は、家庭裁判所の担当書記官に判決謄本交付申請書を提出して請求します。請求時には1枚につき60円を収入印紙にて納めます。

確定証明書とは、裁判所が下した判決が確定していることを証明する文書のことです。

確定証明書も裁判を行った家庭裁判所で取得します。申請書類は家庭裁判所の窓口もしくはインターネットから入手可能で、郵送または窓口への持参で申請します。確定証明書1枚につき150円を納めます。

また、離婚調停もしくは離婚訴訟で離婚が成立した場合、成立した日を含めて10日以内に離婚届と必要書類を役所に提出する必要があるため注意しましょう。

なお、提出する離婚届の証人は、協議離婚の場合は夫婦両方の署名に加えて、2名の証人の署名が必要です。この場合、証人は成人であれば誰でも問題ありません。

一方、離婚調停や離婚訴訟で離婚が成立した場合、離婚届の承認は不要です。

また、仕事探しのために、以下の書類も準備しておいた方がいいでしょう。

  • 履歴書
  • 職務経歴書
履歴書とは仕事に応募する人のプロフィールをまとめた文書で、職務経歴書とは応募先の会社に対して自分の職務経験やスキルをアピールするための文書です。

応募先によって、履歴書のみが求められる場合と、両方提出する場合があるため、念のためどちらも用意しておくといいでしょう。

専業主婦が離婚するための流れ・手順

専業主婦で離婚を考えているものの、どのように離婚すればいいのか分からない人がいるかもしれません。

ここでは、専業主婦が離婚するための流れや手順について解説します。具体的な流れは以下の通りです。

  1. 話し合いによる離婚成立を目指す
  2. 話し合いがまとまらない場合は調停を行う
  3. 調停でも決まらない場合は離婚裁判を行う

それぞれ詳しく解説します。

話し合いによる離婚成立を目指す

専業主婦が離婚を希望する場合、まずは話し合いによる離婚成立(協議離婚)を目指すことになります。

夫婦間の話し合いによってお互いが離婚に合意して、離婚届を提出すれば、離婚できるためです。

そのため、本人同士の話し合いによって離婚を目指すのが、日本で最も一般的な離婚方法となっています。

また、離婚方法のなかで、最もお金がかからない離婚方法も協議離婚となります。

離婚に向けての話し合いが難航した場合、離婚調停や離婚訴訟になるケースがありますが、調停や訴訟の申立てや弁護士に対応を依頼する費用などがかかります。

離婚の話し合いは、離婚を希望する側が配偶者に話を持ちかけることで協議がスタートします。

相手が離婚に合意・納得するように離婚したい理由を伝え、財産分与や親権などの離婚条件を協議しながら、離婚の成立を目指します。

離婚することや離婚条件にお互いが合意できれば、役所に離婚届を提出し、受理されれば離婚は成立です。

協議離婚は、費用がかからず、手続きが簡単であるため利用しやすいのが特徴ですが、当事者同士の話し合いは感情的になりやすいほか、冷静に対応できない場合もあり、スムーズに進まないケースもあります。

協議離婚を成立させるためには、いくつかのコツがあるので、次の項目で紹介します。

専業主婦が離婚を切り出す際のコツ

専業主婦が夫と円満に離婚したいのであれば、離婚を切り出すタイミングが重要です。

ただ単に離婚したいと伝えるだけでは、離婚が成立しない場合があるほか、夫婦関係がこじれて問題が悪化するケースがあるためです。

離婚を切り出す場合は、以下のようなタイミングを狙うといいでしょう。

  • 一緒に結婚生活を継続することが難しくなった
  • 夫が退職した
  • 夫が不貞行為を働いた

また、離婚を切り出す場合、離婚したい理由を事前にまとめておくことが大切です。

離婚の話し合いでは、冷静に話し合いができるとは限りません。また、緊張やストレスで言いたいことが伝わらない場合があるからです。

さらに、離婚を切り出す際に別居しているか、同居しているかによって、伝え方は変えた方がいいでしょう。

夫婦が別居している間に離婚を決断した場合は、家の外で伝えるのが得策です。周りに他人がいる状況で伝えることで、お互いが冷静に話し合える可能性が高いためです。

また、自宅で話をする場合は、物に当たることがないよう、テーブルの上や周囲を片付けておくのがおすすめです。

なお、別居中に離婚について話し合いたいものの、直接話し合いをするのが難しい場合は、メールや郵便など文書や記録に残る形で意思表示しておくことも大切です。後々、裁判に発展した場合に有利になります。

また、別居していない状態で離婚を切り出す場合は、冷静に話し合うためにも、お互いの情緒が安定しているときを狙って切り出しましょう。

さらに、夫の不貞行為が原因で離婚を希望する場合は、事前に決定的な証拠を揃えておくことも忘れないでください。中途半端な証拠の場合、言い逃れされてしまう恐れがあるため、冷静かつ論理的に話ができるよう、事前の準備を怠らないようにしましょう。

ここまで、離婚を切り出すタイミングについて紹介しましたが、夫からの暴力や経済DVやモラハラを受けている場合は、タイミングを気にせず、まずは離れて暮らすことを優先してから対応してください。

専業主婦が離婚について話し合う際のコツ

専業主婦が夫と離婚について話し合うときにも、以下のようなコツがあります。

  • 話し合いの内容は書面にまとめるか録音する
  • 話し合いをする場所を工夫する
  • 第三者に話し合いに同席してもらう
  • 離婚条件や離婚後の生活について想定しておく
  • 感情的になりすぎる場合は日を改める
  • 離婚に合意した場合は離婚協議書を作成する

離婚について話し合った内容は、書面にまとめて残しておいたり、録音したりするのがおすすめです。

記録を残しておけば、後から「言った・言わない」の水掛け論になることを防げるためです。また、調停や裁判に発展した場合でも、話し合いの内容や様子を証明できる証拠として活用できるメリットがあります。

話し合いの途中に暴言を吐かれたり、暴力を振るわれたり、脅されたりした際の証拠にもなり、自己防衛のためにも大切です。

ただし、録音に関しては方法によっては違法となる場合があるため、注意しましょう。

録音自体は違法ではありませんが、夫や他人の部屋に忍び込んでボイスレコーダーを設置したり、録音内容をもとに夫などを脅したりすると、犯罪になる可能性があります。

また、録音の手段や方法が反社会的である場合は、調停や裁判の証拠としては採用されない点にも注意しましょう。

離婚の話し合いをする場所を工夫するのも重要です。ファミリーレストランや喫茶店など、他人の目がある場所では、冷静な話し合いができるほか、夫が大声を出したり、暴力を振るったりするのを避けられます。

自分の実家や義実家を利用すれば、話し合いに同席してもらえたり、子どもを見てもらえたりもできます。

また、話し合いに共通の友人や弁護士など、第三者に同席してもらうことで、冷静な話し合いができる可能性があります。弁護士に依頼した場合は、同席や仲介だけではなく、離婚協議の交渉を代行してもらうことも可能です。

さらに、離婚の話し合いの前に、離婚条件や離婚後の生活について想定しておくことも重要です。夫からの「離婚後の生活ができない」という主張に対して反論できるからです。

もちろん、想定するだけではなく、仕事探しや貯金など、経済的な備えを作っておいたり、実家や友人宅など住居を確保したりすることも大切です。

感情的になりすぎないことを意識した話し合いも重要です。明らかに相手が悪い場合でも、一方的に責め立ててしまうと、相手が態度を硬化して話し合いが進まなくなるためです。

冷静な話し合いが難しい場合は、日を改めることも検討しましょう。

最後に、離婚について合意できた場合は、離婚協議書を作成してください。

離婚協議書とは、離婚する際に夫婦で決めた約束ごとを書面にした契約書のことです。

離婚条件に関して、親権や養育費、慰謝料、財産分与など、詳細に記載するのがポイントです。例えば、養育費の支払日や支払う口座、支払いが遅れた場合の措置なども記載します。

離婚協議書を作成することで、お互いが守るべき約束が明確になるほか、夫が条件を守らない場合に法的措置を講じやすくなるといったメリットがあります。

離婚後でも作成できますが、離婚届を提出する前に作成しておくのがおすすめです。

話し合いがまとまらない場合は調停を行う

夫婦での話し合いがまとまらない場合は、離婚調停に移行します。

離婚調停とは、家庭裁判所の調停手続きを利用して離婚することをいいます。

調停委員(男女1名ずつが一般的)が夫婦双方の話を聞き、離婚の是非や離婚条件について調整してお互いの合意を目指します。なお、第三者による審判が行われるものではありません。

離婚については話し合いがまとまった場合、離婚が成立します。その際、合意した離婚条件は調停調書に記載されます。離婚届の提出時には、調停調書の謄本を取得して一緒に提出する必要があります。

離婚調停を申し立てた場合、家庭裁判所での話し合いとなるため、1~2ヶ月に1回程度の頻度で定期的に裁判所に通う必要があります。また、調停は平日の日中に実施されるため、調停のために日程を調整しなければならない点には注意が必要です。

調停期間は状況によって異なりますが、半年から1年程度はかかると考えておきましょう。

調停でも決まらない場合は離婚裁判を行う

離婚調停でも離婚が成立しない場合は、離婚裁判(離婚訴訟)を行います。

離婚裁判とは、夫婦それぞれの主張や提出された証拠を総合的に考慮して、裁判官が離婚の是非を判断する裁判のことです。

離婚の是非だけではなく、慰謝料や親権、財産分与、年金分割、面会交流などについても、相手方と争えます。

なお、離婚裁判を行う場合は、その前に調停が完了している必要があります。これは、調停前置主義と呼ばれるもので、家庭の紛争をいきなり訴訟によって争うのは望ましくないとされているためです。

そのため、配偶者が行方不明の場合や、強度の精神病で離婚の合意が困難な場合など、一部の例外を除いて、裁判の前に調停を行う必要があります。

離婚裁判の大まかな流れは以下の通りです。

  1. 離婚裁判を提起する
  2. 口頭弁論・争点整理
  3. 証拠調べ
  4. 和解勧試
  5. 和解成立もしくは不成立
  6. 判決
  7. 確定もしくは控訴
  8. 離婚が確定した場合は離婚届の提出

夫と離婚したいものの協議離婚や離婚調停が成立しない場合は、離婚裁判を提起します。

裁判が提起されると、口頭弁論という手続きが開かれ、訴状の陳述や答弁書の陳述が行われます。次回以降の口頭弁論で原告と被告がそれぞれ反論を行い、争点を明確にします。

争点についてお互いの主張を立証するために、証拠の提出や証人尋問などを行い、それらの証拠の信ぴょう性について裁判所が調査します。

離婚裁判では、尋問の後に和解の可能性についての意見聴取(和解勧試)が行われ、可能性がある場合は和解条件を話し合います。

和解しない場合や、和解が成立しない場合は、裁判所の判断(判決)が示されます。判決には、離婚の是非に加えて、離婚条件についても示されます。

判決に対して、控訴しなれば判決は確定、納得できない場合は高等裁判所への控訴となります。

裁判で離婚を争う場合は、民法によって定められている法定離婚事由が必要になり、いずれにも該当しない場合は、裁判所が離婚を認めることはありません。

また、法定離婚事由があった場合でも、それを客観的に証明する証拠の提出が必要になります。

なお、離婚裁判を起こす場合は、家庭裁判所に収入印紙代と郵便切手代を納める必要があります。裁判で争う内容によって収入印紙代は以下のように異なります。

裁判の内容 収入印紙代
離婚のみ 1万3,000円
離婚・財産分与 1万3,000円+1,200円
離婚・年金分割 1万3,000円+1,200円
離婚・養育費 1万3,000円+子ども1人につき1,200円
離婚・慰謝料 1万3,000円と「慰謝料請求に対する収入印紙代」の高い方

※慰謝料請求に対する収入印紙代は、請求する金額によって異なる。

また、郵便切手代は裁判を提起する家庭裁判所によって異なりますが、一般的には6,000円前後となります。

さらに、鑑定人や証人の出廷が必要な場合は、交通費や旅費、日当などが発生する場合があるほか、裁判での対応を弁護士に依頼する場合は弁護士費用や成功報酬の負担が必要です。

専業主婦が離婚時に請求できるお金

専業主婦が離婚できる場合、夫や第三者に金銭を請求できる場合があります。具体的には、以下のようなお金です。

  • 財産分与
  • 養育費
  • 慰謝料
  • 婚姻費用

それぞれ、どのような性質のお金なのか、詳しく解説します。

財産分与

繰り返しになりますが、財産分与とは、婚姻生活において夫婦で協力して築き上げた財産を、貢献度に離婚時に分配することをいいます。

離婚時には相手に財産分与を請求できることが民法において定められており、正当な権利となっています。

財産分与の内容は、当事者同士での協議や調停、裁判で決められます。

離婚を急ぐあまりに財産分与の話し合いの前に離婚が成立する場合がありますが、離婚してから行う財産分与の協議は難航するケースが多い傾向にあります。

もらえるはずの財産がもらえなくなる恐れがあるため、離婚が成立する前に話し合いを行い、財産の分配について取り決めておきましょう。

なお、財産分与をせずに離婚することも可能(財産分請求権の放棄)です。ただし、一度請求権を放棄すると原則的に撤回できない点には注意が必要です。

年金分割

財産分与の一部として、年金分割という制度があります。

年金分割とは、夫婦が婚姻中に納めた厚生年金の金額を分け合う制度のことです。

特に婚姻期間が長く、専業主婦として生活してきた場合、年金分割をしなければ将来の年金の金額が大幅に減る恐れがあります。老後の生活に大きく影響するため、可能な限り年金分割を行いましょう。

なお、年金分割制度には、以下の2種類があります。

  • 合意分割
  • 3号分割

このうち、専業主婦が利用できるのは3号分割です。平成20年4月1日以前から専業主婦だった場合は、3号分割を選択することになります。それ以前から専業主婦だった場合は、その期間においては合意分割を利用します。

3号分割の分割割合は一律50%です。合意分割では夫婦の話し合いによって割合が決められますが、決まらない場合は審判によって決められ、その場合は50%ずつの割合となるケースがほとんどです。

なお、国民年金や国民年金基金、確定給付企業年金は年金分割の対象とはなりません。

養育費

夫婦に子どもがいた場合、親権を持つ方が持たない方に対して養育費を請求できます。

養育費とは、子どもを教育・監護するための費用のことです。

具体的には、経済的・社会的に自立していない子どもに対して、自立するまでにかかる生活費や教育費、医療費などが養育費に該当します。

平成23年の民法改正によって、離婚条件として夫婦が決めるべき事項として、面会交流と養育費の分担が明文化されたことから、離婚する配偶者に対して正式に請求できる権利となりました。

また、母子及び寡婦福祉法(現在は母子及び父子並びに寡婦福祉法に改正)によって、養育費の支払いの責務について明記されています。

養育費を確保する方法や相場について、詳しくは後述します。

慰謝料

専業主婦が離婚する場合、夫や第三者に対して慰謝料を請求できるケースがあります。

離婚慰謝料とは、離婚によって精神的苦痛を被った場合、相手に対して請求できる賠償金のことです。

離婚慰謝料には以下の2種類があります。

離婚慰謝料の種類 内容
離婚自体慰謝料 離婚すること自体によって発生した精神的苦痛に対する慰謝料のこと
離婚原因慰謝料 離婚に至った原因から発生する精神的苦痛に対する慰謝料のこと

どちらの場合も、離婚に至った原因を生み出した配偶者(有責配偶者)から、精神的苦痛を被ったもう一方の配偶者(無責配偶者)に対して支払われます。

離婚慰謝料は、法定離婚事由が認められる場合や、セックスレス、アルコール中毒、ギャンブル依存などがあった場合に請求できる可能性があります。

離婚慰謝料の一般的な相場は、離婚事由によって異なりますが、50万円~300万円程度です。

配偶者による不法行為の有責性が高い場合や、精神的苦痛の程度が大きい場合は、相場よりも高い慰謝料を請求できるケースもあります。

また、婚姻期間が長い場合や子どもが多い場合、不法行為の期間が長い、回数が多いといった場合、重責配偶者に反省や謝罪が見られない場合などでも、慰謝料が増額されるケースが多いでしょう。

ただし、請求可能な慰謝料の金額は法律では決められていませんが、あまりに法外な金額を請求した場合、相手と争いに発展しやすくなります。養育費や財産分与など、他の決め事が決まらずに離婚成立までに時間がかかることがある点には注意しましょう。

婚姻費用

専業主婦が離婚する場合、夫に対して婚姻費用を請求できる場合があります。

婚姻費用とは、家族が収入や財産、社会的地位に応じた通常の社会生活を送るために必要な生活費を指します。

夫婦が離婚前に別居を選択した場合、夫に対して別居中の妻への生活費の支払い義務が認められる場合があります。

法律において婚姻費用は、夫婦の収入の多さに応じて分担する義務を負います。別居していてもこの義務がなくなることがないため、一般的に収入が少ない専業主婦が夫に対して婚姻費用の請求を行えるのです。

婚姻費用の一般的な内訳は以下の通りです。

  • 衣食住に必要な費用
  • 子どもの生活費や教育費(学費、学用品の購入費用を含む)
  • 医療費
  • 出産費
  • 冠婚葬祭費
  • 必要な範囲の交際費
  • 必要な範囲の娯楽費 など

婚姻費用として請求できる金額は、一般的に婚姻費用算定表を利用して決められる場合がほとんどです。子どもの有無や人数、年齢、夫婦の年収などによって目安の金額が異なります。

婚姻費用の請求は、夫婦での話し合いによって請求するのが理想的ですが、相手が話し合いに応じない場合は、内容証明郵便を送付した後に婚姻費用分担請求調停を申し立てて請求します。

なお、婚姻費用請求が認められるのは、請求する意思を相手に証明したときとなるため、それ以前の婚姻費用は請求できません。

また、婚姻費用を請求する側が有責配偶者であった場合は、請求が認められません。

シングルマザーが利用できる助成制度

専業主婦が離婚してシングルマザーとなった場合、国や自治体などが提供する助成制度を利用できるケースがあります。

助成制度には以下のようなものがあります。

  • 児童扶養手当
  • 児童育成手当
  • 家賃補助
  • ひとり親家族等医療費助成
  • 寡婦控除
  • 生活保護

それぞれどのような制度なのか、詳しく紹介します。

児童扶養手当:ひとり親世帯の生活の安定や福祉の増進を図る制度

シングルマザーの場合、児童扶養手当を受けられる場合があります。

児童扶養手当とは、ひとり親世帯の生活の安定や福祉の増進を図ることを目的とした助成制度で、離婚などにより父や母と生計を別にする児童がいる家庭を対象に手当が支給されます。

実施主体は都道府県や市、福祉事務所を設置している町村です。

支給対象となるのは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童を監護するひとり親の父または母です。母子家庭や父子家庭のほか、父母に代わって養育している祖父母なども支給対象となります。

また、子どもに障害があるケースでは、20歳未満までが支給の対象です。

児童扶養手当には所得制限が設けられており、前年の所得が160万円までなら全部支給、365万円までなら一部支給となります。

令和5年4月以降に支給される手当の金額は以下の通りです。

条件 支給される金額
基本 ・全部支給:4万4,140円
・一部支給:4万4,130円~1万410円
加算額(自動2人目) ・全部支給:1万420円
・一部支給:1万410円~5,210円
加算額(児童3人目以降1人につき) ・全部支給:6,250円
・一部支給:6,240円~3,130円

支給サイクルは奇数月の年6回となり、1月、3月、5月、7月、9月、11月にそれぞれ2ヶ月分が支給されます。

参考:児童扶養手当について|こども家庭庁

児童育成手当:ひとり親世帯の生活の安定や福祉の増進を図る制度

シングルマザーの場合、児童育成手当を利用できる可能性があります。

児童育成手当とは、18歳に達した年度末までの児童がいる家庭で、父母が離婚したり、死別したりしている母子家庭、父子家庭が利用できる助成制度です。各市町村が条例を設置して実施している事業です。

子ども1人につき、月額1万3,500円が支給されます。

児童育成手当にも受給者(児童の保護者)の所得制限が設けられています。具体的な金額は以下の通りです。

扶養親族の数 所得制限
扶養親族などが0人の場合 所得額が360万4,000円未満であること
扶養親族などが1人の場合 所得額が398万4,000円未満であること
扶養親族などが2人の場合 所得額が436万4,000円未満であること
扶養親族などが3人以上の場合 所得額が436万円4,000円に、扶養親族などが3人目以降1人増加するごとに38万円を加算した額未満であること

児童育成手当は申請した月の翌月分から受給可能です。住んでいる地域によって対応が異なる場合があるため、市区町村の役所に問い合わせて確認しましょう。

家賃補助:各自治体や都道府県が行っている助成制度

シングルマザーの場合、各自治体や都道府県が実施する家賃補助を利用できる可能性があります。

家賃補助は都道府県や自治体によって対応が異なります。家賃補助や住宅手当、住宅費助成制度など、名称が異なるケースがあるほか、市営住宅への申し込みによって支援している自治体もあります。

シングルマザーが利用可能な家賃補助を提供している自治体の一例として、千葉県浦安市と神奈川県厚木市のケースを紹介します。

千葉県浦安市では「ひとり親家庭住宅手当」を提供しています。助成内容は以下の通りです。

項目 内容
要件 ・20歳未満までの児童を養育するひとり親家庭
・浦安市の住民基本台帳に世帯主として登録済み
・居住するための住宅を借りたうえで月額1万円を超える家賃を支払っている
・自らの名義の賃貸借契約によって住宅を借りている
・所得制限限度額も条件を満たしている
助成金額 家賃1万円を超える額に対して、月額1万5,000円を限度として支給
支給月 4月、8月、12月の各21日(前月分までを振込)
所得制限 ・税法上の扶養親族などの数が0人:192万円
・税法上の扶養親族などの数が1人:230万円
・税法上の扶養親族などの数が2人:268万円
・税法上の扶養親族などの数が3人:306万円
・税法上の扶養親族などの数が4人:344万円
※所得制限限度額の計算には、控除などさまざまな要素を含めて計算

詳しくは浦安市役所のホームページを確認してください。

参考:ひとり親家庭住宅手当|浦安市

神奈川県厚木市では、ひとり親世帯に対して家賃の一部を助成する「母子家庭等家賃補助制度」を提供しています。

制度の概要は以下の通りです。

項目 内容
要件 ・母子家庭もしくは父子家庭であること
・18歳の誕生日から最初の3月31日を迎えるまでの子どもと同居していて、養育する世帯である
・厚木市内に住所を有している
・家賃月額が1万円以上6万円以下である
・前年所得が一定額以下である
・生活保護法の住宅扶助を受けていない
助成金額 月額1,300円~1万円(家賃月額によって異なる)
支給月 4月、8月、12月の各21日(前月分までを振込)
所得制限 ・扶養人数が0人の場合:234万2,000円
・扶養人数もしくは子ども1人につき38万円を加算した金額
※所得制限限度額の計算には、控除などさまざまな要素を含めて計算

厚木市で助成を受けたい場合は、年度ごとに申請する必要があるため、注意しましょう。詳しくは厚木市のホームページを参照してください。

参考:母子家庭等家賃助成について|厚木市

このように、住んでいる地域によって制度の有無や内容が異なるため、ホームページや問い合わせなどで確認しましょう。

ひとり親家族等医療費助成:未成年の子どもを扶養するひとり親を支援するための制度

シングルマザーの場合、ひとり親家族等医療費助成を受けられる可能性があります。

ひとり親家庭等医療費助成とは、ひとり親家庭の父もしくは母、父母の代わりに児童を養育している人、養育されている児童の医療費を助成する制度です。

ひとり親家庭の保健の向上と福祉の増進を目的に実施されています。

ひとり親家庭の18歳に到達して最初の3月31日までの間の年齢の子どもがいる家庭が助成の対象となります。

助成内容は自治体によって異なるため、住んでいる地域の助成制度について確認が必要です。ここでは、京都市の制度を例に助成内容を紹介します。

京都市の「ひとり親家庭等医療費助成(支給制度)」の対象となるのは、京都市内に住んでいて、社会保険や国民健康保険に加入している方で、以下の要件に該当する場合です。

  • 生計を一にする父の無い児童及びその児童と生計を一にしている配偶者の無い母親
  • 生計を一にする母の無い児童及びその児童と生計を一にしている配偶者の無い父親
  • 両親のいない児童
  • 両親のいない児童を扶養している20代未満の方

また、医療費の助成を受けるためには、所得基準を満たす必要があります。具体的な所得基準は以下の通りです。

税法上の扶養親族の人数 所得基準額
0人 236万円未満
1人 274万円未満
2人 312万円未満
3人 350万円未満

※以下、扶養親族が1人増えるごとに38万円を加算
※所得基準額の計算は、収入から各種控除を差し引いて計算

医療機関を受診して同助成制度を利用する場合、健康保険証に加えて、福祉医療費受給者証(親)を一緒に窓口へ提示する必要があります。

ただし、健康診断料や予防注射料、差額ベッド代など、健康保険の給付対象とならないものや、入院時の標準負担額などは支給対象とはならないため注意しましょう。

助成内容や必要な手続きなどは、自治体によって異なるため、必ず確認してください。

参考:【福祉医療】ひとり親家庭等医療費支給制度|京都市

寡婦控除:夫と離婚や死別した妻が利用できる所得控除

シングルマザーの場合、寡婦控除を利用できる場合があります。

寡婦控除とは、納税者が寡婦の場合に、一定金額の所得控除を受けられる制度のことです。

寡婦とは、その年の12月31日の時点で、ひとり親に該当せず、以下の要件に当てはまる人のことです。

  • 夫と離婚した後に婚姻しておらず、扶養親族(子どもや親など)がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
  • 夫と死別した後婚姻していない人、または夫の生死が明らかではない一定の人出、合計所得金額が500万円以下の人

なお、ひとり親に該当する場合は「ひとり親控除」が優先して適用されます。

納税者自身が寡婦であると認められる場合、27万円の所得控除を受けられるため、所得税や住民税が軽減されます。

参考:寡婦控除|国税庁

ひとり親控除

シングルマザーの場合、寡婦控除ではなく、ひとり親控除の対象となるケースがあります。

ひとり親控除とは、納税者がひとり親の場合に、一定金額の所得控除が受けられる制度です。

ひとり親控除の対象となる人の範囲は以下の通りです。

  • その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいない
  • 生計を一にする子がいる(その年の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限る)
  • 合計所得金額が500万円以下

上記の条件を満たしている場合、ひとり親控除として35万円の所得控除を受けられます。

ひとり親控除の要件を満たしている場合は、寡婦控除ではなく、ひとり親控除の適用が優先されます。両方の控除を同時に受けられないため、シングルマザーの場合はどちらが対象になるのか、確認する必要があるでしょう。

参考:ひとり親控除|国税庁

生活保護:健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度

シングルマザーの場合、生活保護を受けられる場合があります。

生活保護とは、生活に困窮する人に対して、困窮の度合いに応じた必要な保護を実施する制度です。健康で文化的な最低限度の生活の保障と自立の助長を目的にしています。

給与や年金などを含めた収入が国の定めた基準による最低生活費を下回る世帯で、かつ所有する資産や能力、制度を利用しても生活が維持できない場合に利用できます。

そのため、生活保護を受けるには以下の要件を満たす必要があります。

  • 資産の活用:預貯金や生活に利用していない土地・家屋などを売却して生活費に充てる
  • 能力の活用:働くことが可能な人は、能力に応じて働く
  • あらゆるものの活用:年金や手当などの制度で給付が受けられる場合は、まずそれらを活用する
  • 扶養義務者の扶養:親族などから援助を受けられる場合は、援助を受ける

上記の要件を満たしたうえで、世帯収入と厚生労働大臣が定める基準によって計算される最低生活費を比較し、収入が最低生活費に満たない場合、生活保護の適用対象となります。

また、生活保護費の支給金額は、最低生活費から収入を差し引いた金額となります。

なお、生活保護には以下のような種類があります。

生活保護の種類 内容
生活扶助 日常生活に必要な費用(食費、光熱費、被服費など)
住宅扶助 アパートなどの家賃
教育扶助 義務教育を受けるために必要な費用
介護扶助 介護サービスの費用
医療扶助 医療サービスの費用
出産扶助 出産のための費用
生業扶助 就労に必要なスキルを身に付けるための費用
葬祭扶助 結婚式や葬儀などに必要な費用

生活保護制度の利用を希望する場合は、住んでいる地域の福祉事務所の生活保護担当に問い合わせ・申請を行います。

生活保護制度は日本国憲法第25条や生活保護法によって定められている国民の権利であるため、必要な場合はためらうことなく相談しましょう。

参考:生活保護制度|厚生労働省

子供の親権がどちらにわたるかの判断ポイント

専業主婦が離婚する場合、夫婦のどちらに親権がわたるのか気になるのではないでしょうか?

ここでは、子どもの親権が夫婦のどちらに認められるのか判断されるポイントについて解説します。具体的なポイントは以下の通りです。

  • これまでの監護実績の有無
  • 親の健康状態や愛情の多さ
  • 子どもの年齢や兄弟の有無
  • 離婚後の経済状況
  • 子どもの意思

それぞれ詳しく見ていきましょう。

これまでの監護実績の有無

子どもの親権の行方は、これまでの監護実績の有無によって判断されます。

監護実績とは、子どもの生活について必要とされる監督や保護を行ってきているか(面倒を見てきているか)ということです。

これまで父と母のどちらが主に子どもの世話をしているか、ということが重要な判断材料となります。

これまで適切に子どもの監護を行ってきた実績がある親ならば、今後の監護のスキルや意欲があり、離婚した後も子どもをちゃんと監護すると考えられるためです。

そのため、専業主婦でも監護実績が認められれば親権者になれる可能性は十分にあります。実際、統計では親権者の9割が母親となっており、専業主婦だった人が親権者になったケースは多数存在します。

特に、子どもが小さいケースや乳幼児である場合は、母親が親権者になるケースがほとんどといえるでしょう。

親の健康状態や愛情の多さ

親権の行方は、親の健康状態や愛情の多さによって判断されることもあります。

子どもの養育には、親の心身が健康で安定しており、子どもに対して愛情を持っていることが望ましいためです。

そのため、健康で子どもを監護する意欲がある場合は、親権者になれる可能性が高いといえます。

一方、重い病気にかかり入退院を繰り返している場合や、精神が不安定な場合は、子どもをちゃんと育てられないと判断されることがあります。

また、子どもに対する愛情が薄い場合も、親権が認められないケースがあるでしょう。

子どもの年齢や兄弟の有無

親権の行方は、子どもの年齢や兄弟・姉妹の有無が判断材料となる場合もあります。

子どもが幼い場合、子どもには母親が必要という考え方(母性優先の法則)があります。近年では、この考え方が重視されるとは限らないものの、母が親権を獲得する可能性が高いといえます。

ただし、父が母の役割を十分に果たしており、適切な看護を実施していると認められれば、父に親権を認めるケースもあります。

また、子どもに兄弟姉妹がいる場合、同じ親権者が養育するのが望ましいという考え方があります。

兄弟姉妹が離れ離れになることで、精神的な負担や悪影響が大きいためです。

このような場合は、子ども全員の親権をどちらかが所有する可能性が高いでしょう。

離婚後の経済状況

親権の行方は、離婚後の経済状況も判断材料となります。

経済的に不自由なく養育できることが、子どもの福祉の観点から望ましいと判断されるためです。

そのため、離婚後の生活について見通しが立っているかどうかも、親権の行方を左右するポイントとなります。

不労所得などを得ていない専業主婦が親権を獲得したい場合は、離婚後の仕事をあらかじめ準備しておく必要があるでしょう。

また、子どもの監護への協力者の有無もポイントとなります。自分の親など、働きながら監護できる環境が整っている場合、親権獲得に有利になるためです。

そのため、状況によっては実家を頼ることも考えた方がいいでしょう。

ただし、収入の低さに関しては養育費で補えるため、経済力の大小に関してはそれほど重視されない傾向にあります。

なお、借金を繰り返していたり、浪費癖があったりするなど、経済観念が疑問視される場合は、親権を獲得できない場合があるため注意が必要です。

子どもの意思

親権の行方は、子どもの意思が反映されることもあります。

離婚する夫婦の子どもが15歳以上の場合、裁判所は子どもの意向を必ず確認するうえに、子ども本人の意思を尊重します。

15歳以上の子どもであれば、判断能力が備わっていると考えられるためです。

そのため、母性優先の原則などは、子どもが15歳以上の場合は判断材料とならないと考えておきましょう。

なお、子どもが幼い場合でも意思は尊重されるものの、状況判断が難しかったり、気持ちを正直に表現できなかったりするケースが多く、子どもの真意を適切に判断できない可能性があります。

このような場合は、子どもの発言に加えて、これまでの親子の関わりや監護状況、父と母のどちらとの精神的な結びつきが強いか、といった要素を加味して判断されることになります。

専業主婦が離婚するリスク

ここまで、専業主婦が離婚する方法や請求できるお金、利用できる助成制度などについて解説してきました。

専業主婦でも離婚は可能で、親権も獲得できる可能性があります。ただし、離婚に対してはリスクが伴うことも忘れてはいけません。

ここでは、専業主婦が離婚するリスクについて解説します。具体的には、以下のようなリスクが存在します。

  • 住む場所を見つけるのが難しくなる
  • 就職先をなかなか見つけられない
  • 自分の力だけで子育てをしなければいけない

それぞれ詳しく解説します。

住む場所を見つけるのが難しくなる

専業主婦が離婚するリスクの1つが、住む場所を見つけるのが難しくなることです。

専業主婦の多くが働いておらず、賃貸物件が借りられない恐れがあるためです。

専業主婦は収入がない場合が多く、敷金や礼金などの初期費用に加えて、契約後の家賃が支払えないと判断されてしまうケースがあります。

離婚後に親に頼らずに自分で生活していく場合は、離婚前に住む場所と生活費を確保するようにしましょう。

離婚後に実家を頼ることができる場合は、初期費用や家賃、生活費などを抑えられます。他にも、収入が少ない場合は公営住宅を借りられるケースもあるため、住んでいる地域の条件などを事前に確認しておきましょう。

就職先をなかなか見つけられない

専業主婦が離婚するリスクとして、就職先が見つかりにくい点も挙げられます。

専業主婦の場合、社会人として会社勤めをしたことがない場合や、仕事の経験はあるもののブランクが長い場合があるためです。

国家資格や専門的な資格を保有していれば、正社員として就職先が見つかりやすいですが、資格がなければいきなり正社員として就職するのは難しいでしょう。

また、子どもがいる場合は、送迎や面倒を見てくれる協力者がいなければ、自分ですべてこなす必要があります。働く必要があっても時間が制限されやすくなるため、就職先が見つかりにくくなるのです。

そのため、離婚前に準備をして仕事探しを終えておき、できれば離婚前から働き始められるようにするのがおすすめです。

例えば、離婚前に仕事を見つけて、専業主婦からワーキングマザーに転身しておけば、離婚後の費用を工面できるほか、離婚後に転職する場合でも、転職先の選択肢が広がり、企業からも即戦力として求められやすくなります。

自分の力だけで子育てをしなければいけない

自力で子育てをしなければならないのも、専業主婦が離婚するリスクです。

離婚することで、母親だけではなく父親の役割も果たす必要があるためです。

婚姻中に夫が家事や育児に非協力的だった場合、離婚しても日常生活が大きく変わることはありません。しかし、夫が家事や育児を担っていた場合は、離婚後の母親に肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。

生活に必要なお金も自分で稼ぐ必要があるため、離婚後に親権を獲得した場合は相当の覚悟を持って育児と生活に臨む必要があるでしょう。

養育費を確保する方法とその相場

厚生労働省の調査によれば、離婚後から現在まで養育費を受けられている割合は、28%程度となっており、シングルマザーの4人に3人が養育費をまともにもらえていない現状があります。

そのため、専業主婦が離婚して親権を獲得する場合、養育費を確保することが極めて重要になります。

ここでは、養育費を確保する方法と、養育費の相場について解説します。

  • 執行認諾文言付公正証書または裁判所の手続きで養育費を確保する
  • 養育費の相場は6~10万円

それぞれ詳しく見ていきましょう。

執行認諾文言付公正証書または裁判所の手続きで養育費を確保する

養育費を確保するためには、以下の2つの方法があります。

  1. 養育費の合意を執行認諾文言付公正証書で作成する
  2. 調停などの裁判所の手続きを利用する
執行認諾文言付公正証書とは、約束されたお金を相手が支払わない場合に、裁判手続きを行わなくても、相手の財産を差し押さえられる効力を持つ公正証書です。

養育費について夫婦間で約束事を取り決めたら、離婚協議書を作成して記録として残します。離婚協議書にも法的な効力がありますが、強制執行を行う場合は裁判所での手続きが必要になり、実際に支払いが行われるまでに時間がかかってしまいます。

そのような事態を避けるための手段が、執行認諾文言付公正証書の作成です。

離婚協議書に養育費の支払い義務がある人の支払いが滞った場合、直ちに強制執行を受けてもやむを得ない、といった文言を付け加えて公正証書化すれば、直ちに強制執行の手続きが行えるようになります。

なお、強制執行に関する文言を記載していなければ、離婚協議書を公正証書化しても強制執行は行えません。

また、養育費を確保するためには、調停などの裁判所での手続きを行うのも有効です。

離婚する際に調停や審判の手続きが成立していて、調停調書や審判所がある場合、強制執行によって養育費を強制的に支払わせることが可能です。

調停や審判で決められた通りに養育費を支払わない人への対処の手順は以下の通りです。

  1. 履行勧告を行う
  2. 強制執行を行う
履行勧告とは、調停や審判で決められた通りに養育費を支払わない人に対して、支払いを促す制度です。

家庭裁判所の履行勧告の申出を行うと、裁判所が調査を行い、支払い義務がある人に対して決められた通りに支払いを行うよう勧告してもらえます。

ただし、それでも支払いが行われない場合、履行勧告では支払いを強制させることはできないため、強制執行に移ることになります。

上記のような方法で、夫からの養育費の支払いを確保しやすくなります。養育費はシングルマザーとして生活するうえで重要になるため、これらの方法を理解しておきましょう。

養育費の相場は6~10万円

養育費の相場については、一概には示すのが難しいのが実情です。

そもそも養育費の金額について、法的な決まりがあるわけではないためです。

例えば、協議離婚が成立する場合、両者が合意するのであれば、養育費の金額はいくらでも構いません。また、弁護士が養育費の計算を行う場合、裁判所が公表している「養育費算定表」を用いて養育費の計算を行います。

一方、養育費を支払う側の収入状況によっては、想定よりも少ない金額しか支払えない可能性もあります。

このように、さまざまな事情や状況から、養育費の金額は離婚する夫婦によって大きく変動すると考えておくべきです。

ただし、養育費算定表からモデルケースとして、目安の養育費の金額を割り出すことは可能です。

例えば、以下のケースを想定して養育費の金額を算出してみます。

  • 夫の年収が600万円
  • 妻の年収が0円(専業主婦)
  • 子どもが1人いる

この場合、子どもの年齢によって、目安となる養育費の金額が変わります。

  • 子どもが0歳から14歳の場合:月額6万円~8万円
  • 子どもが15歳以上の場合:月額8万円~10万円

養育費の金額は夫や妻の年収、子どもの年齢によって、変動します。

特に、子どもの年齢によって養育費の金額が変動するのは、学費や習い事など、教育費にお金がかかるためです。

ただし、厚生労働省の調査や最高裁判所の司法統計によれば、実際に支払われている養育費の金額は3万円~4万円程度とも言われています。

養育費をしっかり確保したい場合は、弁護士に依頼し適切な養育費の金額を算出してもらったうえで、夫と交渉してもらうといいでしょう。

まとめ

今回は専業主婦が離婚する際に知っておくべきことについて解説しました。

専業主婦が離婚する場合、さまざまなことを考えたり、準備したりしなければいけません。また、離婚する夫に請求できる金銭の種類や、利用できる助成制度などを知らなければ、離婚後の生活が苦しくなってしまうこともあるでしょう。

離婚前から準備を行い、離婚に備えることが重要です。

本記事を参考に、離婚への準備や対策をしっかり行いましょう。