掲載件数
436
2024年11月現在

専業主婦でも離婚時に財産分与は受けられる?知っておくべき条件を解説

専業主婦でも離婚時に財産分与は受けられる?知っておくべき条件を解説

離婚を考えているものの、「専業主婦は財産分与が受けられないのではないか」「離婚後は生活が苦しくなるのではないか」と不安に思う人はいるでしょう。

専業主婦であっても、仕事をしている人と同じように財産分与を受け取ることができます。財産を分配する割合は夫婦それぞれ2分の1ずつとすることが多く、専業主婦だからといって不当に金額を下げられることはありません。

ただし、2分の1ずつという目安はあるものの、財産分与の割合や具体的な金額、「誰がどの財産を引き継ぐのか」といった条件を夫婦の話し合いで自由に決めることもできます。なかには2分の1よりも多い割合で財産をもらう人もいれば、少ない割合で財産をもらう人もいます。

専業主婦が財産分与で、多くの割合を取得できる可能性があるのは以下のようなケースです。

  • 協議による話し合いで相手から合意が得られた場合
  • 相手側に浪費があった場合
  • 夫婦財産契約で割合をあらかじめ定めていた場合

一方で、割合が少なくなる可能性があるのは以下のようなケースです。

  • 専業主婦としての役割を果たしていない場合
  • 相手が特殊な職業をしている場合
  • 専業主婦側が有責配偶者の場合

このように、財産分与の割合は家庭の状況などによって異なります。財産分与について取り決めを行うときは、「年金分割制度や扶養的財産分与を利用する」「婚姻費用や養育費をあわせて請求する」「相手の退職金を確認する」などの対策を検討するとよいでしょう。

この記事では、専業主婦が離婚時に受け取れる財産分与について、知っておくべき知識を紹介します。専業主婦が財産分与を受け取るときの注意点を知りたい人や、金額・割合などの具体的な目安を知りたい人などは参考にしてください。

無料相談・電話相談OK!
一人で悩まずに弁護士にご相談を

ツナグ離婚弁護士で離婚に強い
弁護士を探す

【結論】専業主婦も離婚時に財産分与を受けられる

結論からいうと、専業主婦であっても離婚時に財産分与を受けられます。専業主婦だからという理由で、対象者から外れることはありません。

そもそも財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が築いた財産を離婚時に分配する制度です。結婚生活で築いた財産は、夫婦の協力があってこそ生み出せたものだと考えられます。具体的な項目は後述しますが、婚姻期間中に貯めた預貯金、購入した自動車や住宅などは財産分与の対象となり、離婚するときは夫婦で分け合う必要があります。

基本的に、財産分与の割合は夫婦それぞれ2分の1ずつです。しかし状況によっては異なる割合で分配することもあり、一概に半分ずつとは言い切れない現実があります。財産分与の金額について、夫婦の話し合いがまとまらない場合は弁護士などの専門家にアドバイスをもらうことをおすすめします。

専業主婦が離婚時に財産分与で受け取れる財産

離婚時の財産分与で、専業主婦が受け取れるものは以下のとおりです。

  • 共有財産
  • 相手名義の財産(婚姻中に購入した財産に限る)

次の項目から、それぞれの詳しい内容を紹介します。

共有財産

共有財産とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産のことです。専業主婦は直接収入を得ているわけではありませんが、夫がお金を稼ぐことができるのは妻が生活を支えているからこそといえます。婚姻中に形成・維持された財産、夫婦共有名義の財産などは財産分与の対象となり、具体的な項目は以下のとおりです。

婚姻中に形成・維持された財産 夫婦の共有名義の財産
・現金、預貯金

・有価証券

・美術品、骨董品

・貴金属

・家具、家電

・保険料

・退職金

・婚姻期間中に納付した年金

・ローンや借金などの負債
・預貯金

・不動産

・投資資産

・自動車

・住宅

・ローンや借金などの負債

注意するべきポイントは、夫婦が生活するために負ったローンや借金などの負債も共有財産の対象となる点です。たとえば住宅ローンや子どもの教育ローン、生活費のために借り入れた借金などが挙げられます。ローンが残っている車や住宅などを財産分与で分け合う場合は、以下の方法を取るとよいでしょう。

  • 自動車や住宅を売却し、ローン返済に充てる(残った売却益を財産分与する)
  • 夫婦の一方が自動車や車をもらい、他方に評価額相当分を支払う
  • 夫婦の一方が自動車や車をもらい、他方に代償金を支払う

ただし、ギャンブルで負った借金などは「夫婦の生活のため」とみなされないため、共有財産の対象になりません。共有財産の対象になるもの・ならないものについては下記の記事もあわせて参考にしてください。

相手名義の財産

婚姻中に購入したものであれば、相手名義の財産であっても、財産分与の対象となる可能性があります。以下のものは、実質的に「夫婦で協力して築かれた財産」とみなされるため、相手名義であっても財産分与の対象となります。

  • 婚姻中に相手名義で購入した自動車、住宅
  • 婚姻中に相手名義で購入した株式
  • 婚姻中に相手名義で購入した美術品や骨董品、貴金属など
  • 相手名義の口座に入っている預貯金(婚姻中に貯めたもの)など

たとえば「給料の振込先が夫の個人名義の口座になっている」といった場合でも、口座の預貯金は共有財産として扱われます。

ただし、結婚前から所有していた相手名義の財産は「特有財産」とみなされるため財産分与の対象となりません。特有財産については次の段落で詳しく紹介します。

専業主婦が離婚時に財産分与で受け取れない財産

離婚時の財産分与で、専業主婦が受け取れない財産は以下のとおりです。

  • 法人名義の財産
  • 特有財産

次の項目から、それぞれの詳しい内容を紹介します。

法人名義の財産

法人名義の財産は、基本的に財産分与の対象となりません。法人と個人は別物であるため、法人名義の財産は夫婦のどちらの名義でもない「第三者名義の財産」と判断されるからです。

ただし、事業規模や経営状況等によっては、例外として法人名義の財産も財産分与の対象となる可能性があります。たとえば以下のようなケースです。

  • 個人資産・会社資産の線引きが曖昧な状態で経営されている個人事業や同族経営
  • 経営者の個人資産と会社資産が同一に管理されている企業
  • 個人資産をあえて会社資産としていた場合 など

従業員を雇っておらず1人で経営している会社などは、個人資産と会社資産が混同しており、その線引きが難しいケースもあります。そのような場合は例外として、法人名義の財産であっても財産分与が認められる可能性があります。

特有財産

特有財産とは、夫婦の協力によって生み出したものではない、個人で所有する財産を指します。特有財産に含まれるのは、以下のようなものです。

  • 結婚前から保有していた預貯金
  • 結婚前に購入した不動産
  • 結婚前に加入した保険
  • 退職金(結婚前に働いていた期間に対応する金額)
  • 婚姻前・婚姻中に親や親族から相続した財産
  • 婚姻前・婚姻中に親や親族かた生前贈与された財産
  • 別居後に夫婦それぞれが取得した財産
  • 夫婦それぞれが特有財産から支出し、自分のみが使っているバッグ、アクセサリー、ブランド品、自動車など

ただし「夫婦の協力によって財産の価値が増加した」「妻の貢献があって財産を維持することができた」などと認められる場合は、特有財産であっても財産分与の対象となります。また、夫婦の生活費をまかなうために行われた贈与なども財産分与の対象となります。

専業主婦が離婚時に受け取れる財産分与の額

専業主婦が離婚時に受け取れる財産分与の金額は、以下の点がポイントとなります。

  • 基本は1/2の割合を受け取れるとされている
  • 実際に受け取れる財産分与の額は100万円以下がほとんど

法律上では専業主婦であっても、婚姻中に築いた財産の2分の1を受け取ることが認められています。しかし、実際は夫婦の状況や婚姻期間などが考慮され、異なる割合で分配されるケースも珍しくありません。

次の項目から、専業主婦が受け取れる財産分与の金額について詳しく紹介していきます。

基本は1/2の割合を受け取れるとされている

離婚時の財産分与では、専業主婦であっても共有財産の2分の1を受け取ることができます。法務省のホームページでは、財産分与について以下のような記載があります。


Q2 財産分与の額はどのように決めるのですか。
(A)
 夫婦の財産の清算を基本として,Q1で述べた(2)と(3)の要素も考慮しながら,まずは当事者間の協議によって金額を決めることになります。
 当事者間で協議が調わないときや,協議をすることができないときは,家庭裁判所に調停又は審判を申し立てることができます。
 家庭裁判所の審判では,夫婦が働きをしているケースと,夫婦の一方が専業主夫/婦であるケースのいずれでも,夫婦の財産を2分の1ずつに分けるように命じられることが多いようです。
引用元 引用元:法務省|財産分与

このように夫婦が働いている場合も、一方が専業主婦である場合も、同じように夫婦の財産を2分の1ずつ分けるケースが一般的です。家庭裁判所で調停や審判をするときも、2分の1ずつ分けるように命じることが多いでしょう。

実際に受け取れる財産分与の額は100万円以下がほとんど

しかし、最高裁判所事務総局の「令和3年 司法統計年報 3家事編」によると、離婚した夫婦が財産分与で受け取る金額は100万円以下が多いという結果が出ています。財産分与の詳しい金額と件数は以下のとおりです。

金額 件数
100万以下 1,774件
200万以下 987件
400万以下 996件
600万以下 637件
1000万以下 857件
2000万以下 733件
2000万を超える 401件
算定不能 1,589件

参照:第 27 表 「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件数―財産分与の支払額別婚姻期間別―全家庭裁判所

財産分与の取り決めがあった7,974件のうち、財産分与の金額が100万円以下だったケースは1,774件となり全体の20%ほどを占めていることがわかります。

ただし婚姻期間が20年以上の熟年離婚の場合、多くの共有財産を得ており財産分与の金額も高くなる傾向があります。なかには1,000万〜2,000万円ほどと高額になるケースも少なくありません。

このように財産分与の金額は夫婦の状況によって異なるため、法的な知識が求められる可能性もあります。夫婦の話し合いで金額が折り合わない場合は、弁護士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

専業主婦が離婚時の財産分与の割合が高くなるケース

財産分与の金額は夫婦の状況によって異なり、100万円以下から2,000万円を超えるものまで、さまざまなケースがあります。離婚時の財産分与で、専業主婦が受け取る財産分与の割合が高くなるのは以下のようなケースです。

  • 協議による話し合いで相手から合意が得られた場合
  • 相手側に浪費があった場合
  • 夫婦財産契約で割合をあらかじめ定めていた場合

次の項目から、それぞれのポイントを紹介していきます。

協議による話し合いで相手から合意が得られた場合

財産分与の金額は、基本的に夫婦の話し合いで決めることができます。「夫婦それぞれが2分の1ずつ」という目安はあるものの、夫婦で合意しているのであればどのような割合で分配してもかまいません。話し合いによって相手の了承をもらい、相場よりも多くの金額を受け取ることも可能です。

ただし、財産分与で多くの財産を取得した場合、贈与税が課税される可能性がある点に注意が必要です。贈与税とは、個人が財産を贈られたときにかかる税金を指します。財産分与は夫婦の財産を精算するために行うため、基本的に贈与税がかかることはありません。しかし、以下のようなケースは例外として贈与税が発生する可能性があります。

  • 夫婦の一方が高額の財産を取得し、共有財産の額や家庭の事情などを考慮しても多すぎると判断される場合
  • 贈与税や相続税などの税金対策で離婚した場合

たとえば、離婚時に妻が子どもを引き取ることになり、親権者となった妻が財産分与で多くのお金を取得したとします。金額が常識の範囲を超えていると判断される場合は、超過分に贈与税がかかる可能性があります。

また「離婚時の財産分与は基本的に贈与税がかからない」という仕組みを利用し、贈与税や相続税対策として離婚をすると、全額が課税対象となってしまうため注意が必要です。

相手側に浪費があった場合

婚姻中に相手が借金やギャンブルなどで浪費を繰り返していた場合、専業主婦の財産分与の割合が高くなる可能性があります。そのような場合、相手は婚姻中の財産形成にあまり貢献していなかったと判断される可能性があるからです。

専業主婦であっても、「相手より財産形成に貢献していた」と判断されれば財産分与の割合が高くなることも考えられます。

夫婦財産契約で割合をあらかじめ定めていた場合

「夫婦財産契約(プレナップ)」とは、婚姻中にかかる費用をどのように分担するか、夫婦の財産をどのように分けるかなどを結婚前に話し合い、契約書を交わすことです。

夫婦財産契約は、原則として婚姻後の内容変更が認められていません。そのため、夫婦財産契約であらかじめ財産分与の割合を決めており、相手より多く割合を設定していた場合は、相場よりも多くの金額を受け取れる可能性があります。

専業主婦が離婚時の財産分与の割合が低くなるケース

先述したように、財産分与の割合は夫婦それぞれ2分の1ずつが目安となります。しかし、なかには専業主婦である妻の割合が低くなり、あまり多くの金額がもらえないケースも少なくありません。

離婚時の財産分与で、専業主婦が受け取る財産分与の割合が低くなるのは以下のようなケースです。

  • 専業主婦としての役割を果たしていない場合
  • 相手が特殊な職業をしている場合
  • 専業主婦側が有責配偶者の場合

次の項目から、それぞれのポイントを紹介します。

専業主婦としての役割を果たしていない場合

専業主婦にも関わらず、婚姻中に家事や育児をあまりしていなかった場合、財産分与の割合が低くなる可能性があります。

専業主婦は家事や育児をすることで、夫婦の財産形成に貢献しているとみなされます。「夫の収入で家計が成り立っており、家事・育児も夫がしていた」という場合は、専業主婦の財産分与の割合が2分の1より低くなる可能性もあるでしょう。

相手が特殊な職業をしている場合

夫が特殊な職業に就いており高額な収入を得ている場合、専業主婦の財産分与の割合が低くなる可能性があります。たとえば夫が経営者や弁護士、医師、スポーツ選手、芸能人、芸術家などの職業に就いているケースが該当します。

このような職業は特殊な技能や資格、知名度などが求められ、収入が高額になりやすい特徴があります。財産形成に対する貢献度が高いと判断されるため、財産分与では相手のほうが多くの財産を獲得する可能性があります。

専業主婦側が有責配偶者の場合

「有責配偶者」とは、夫婦で離婚の原因をつくった側を指します。裁判で離婚が認められる原因を「法定離婚事由」といい、下記の行為を行った人は有責配偶者に該当します。

法定離婚事由 内容
不貞行為 配偶者以外の人と性的な関係を持った
悪意の遺棄 夫婦における相互扶助義務を果たしていないと考えられる行為
3年以上の生死不明 配偶者の生死が不明な状態が3年以上続いており、夫婦として実体がない
強度の精神病 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
その他婚姻を継続し難い重大な事由がある そのほかの理由で、夫婦関係が回復不能なほど破綻している

たとえば「不倫をしていた」「同居・協力・扶助の義務を果たさない」「理由もなく何度も家出をする」といった行為は法定離婚事由に該当します。専業主婦である妻がこのような行為を行っている有責配偶者である場合、財産分与の割合が低くなる可能性があります。

また財産分与には「清算的財産分与」「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」の3種類があります。それぞれの違いは以下のとおりです。

①清算的財産分与 夫婦が婚姻中に築いた財産を平等に分け合う
②扶養的財産分与 離婚によって夫婦どちらかの生活が困窮する場合、生活を援助する目的で支払われる
③慰謝料的財産分与 相手の不法行為などによって傷つけられた場合、財産分与のなかに慰謝料を含んで請求する

専業主婦である妻が有責配偶者の場合、③の慰謝料的財産分与が適用される可能性があります。「財産分与は通常どおり2分の1ずつ分配し、別に慰謝料を請求する」というケースもありますが、財産分与に慰謝料額を含め、分配の割合を減らすケースもあります。

専業主婦が離婚時の財産分与で気をつけるべきこと・注意点

財産分与で適切な金額をもらうために、専業主婦が気をつけるべき点は以下のとおりです。

  • 年金分割制度を確認する
  • 相手の退職金も確認する
  • 婚姻費用を請求する
  • 養育費を請求する
  • 離婚後に困窮する場合は「扶養的財産分与」で生活費を確保する

次の項目から、それぞれの注意点を紹介します。

年金分割制度を確認する

「年金分割制度」とは、婚姻期間中に納付した厚生年金を夫婦で分割する制度です。

たとえば、夫は国民年金と厚生年金に入っていた過去があり、妻は国民年金のみに加入しているとします。婚姻期間中の厚生年金は夫婦の共同財産とみなされるため、妻は離婚後、夫の厚生年金の受給額の半額を受け取ることができます。

年金分割制度を利用するには、年金事務所または年金相談センターで手続きが必要となり、離婚をした日の翌日から2年間の期限が設けられています。手続きをしないと年金は分割されないため注意が必要です。

相手の退職金も確認する

相手の退職金も、夫婦が婚姻関係中に築き上げた共有財産の一つであるとみなされます。すでに退職金が支払われており、そのお金が手元に残っている場合は、婚姻期間に応じた金額が財産分与の対象になります。

たとえば、結婚後に就職し、退職後に離婚する場合は、退職金すべてが財産分与の対象となります。また相手が就職した後に結婚したのであれば、結婚〜退職の期間に応じた退職金が対象となるでしょう。このように、結婚した時期・相手が就職した時期・離婚した時期・退職した時期によって、退職金がどれくらい財産分与の対象になるのかが変わる点に注意が必要です。

ただし離婚時に退職金がまだ支払われていない場合、原則として退職金は財産分与の対象になりません。しかし以下の項目を踏まえたうえで、退職金が支払われることが確実だと判断できる場合に限り、財産分与に含めることが可能です。

  • 退職金制度のある会社かどうか
  • 会社の規模や経営状況
  • 定年退職までの期間が10年未満
  • 退職金の算定方法が明らかになっており、金額の予想が立てられるか
  • これまでの勤務状況を考慮して、定年まで働き続ける可能性が高いか

なお、退職金が財産分与の対象になるかどうかの条件を詳しく知りたい人は、下記の記事もあわせて参考にしてください。

婚姻費用を請求する

離婚前に別居をする場合は、「婚姻費用」の請求ができます。民法では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」という決まりがあり、たとえ別居中であってもお互いの生活を維持するために助け合う必要があるからです。専業主婦をしており、別居中の生活費や子どもの養育費などが足りない場合は、婚姻費用の請求を検討しましょう。

婚姻費用には夫婦が生活していくために必要な費用が含まれており、以下の項目が該当します。

  • 光熱費や食費など家族全員の生活費
  • 家賃や固定資産税などの居住費
  • 通院費、治療費、薬代などの医療費
  • 学費や教材費など子どもの養育費・教育費
  • 常識的な範囲での交際費・娯楽費 など

なお、婚姻費用の相場は家庭の状況や所得などによって異なるため、裁判所が公表する「婚姻費用の算定表」を目安とするとよいでしょう。

養育費を請求する

離婚によって子どもの監護者となる親は、非監護親に養育費を請求できます。また離婚の前に別居をする場合は、婚姻費用に養育費を含めて請求するとよいでしょう。

養育費は夫婦の話し合いで自由に金額を決められますが、なかには「妻は子どものために多くの養育費を請求する」「夫はなるべく養育費を下げたがる」など、話し合いがまとまらないケースは少なくありません。金額が折り合わない場合は、裁判所が作成した「養育費算定表」を参考にするとよいでしょう。

養育費算定表は養育費の目安を記載した表で、裁判所のホームページで見ることができます。子どもの人数や年齢、夫婦の収入ごとに養育費の目安が記載されており、裁判で養育費を争うときなどにも使用されています。

離婚後に困窮する場合は「扶養的財産分与」で生活費を確保する

「専業主婦側が有責配偶者の場合」の項目でも紹介したように、財産分与にはいくつかの種類があります。「長年専業主婦をしておりすぐには経済的に自立できない」「病気で働けない」など、離婚によって生活が困窮する可能性がある場合は、扶養的財産分与によって生活費を確保することも検討しましょう。

扶養的財産分与を利用すると、夫婦で収入のある方から生活費をサポートしてもらえます。一般的には半年〜3年ほどの期間、数万円程度を現金で支払われることが多いものの、期間や金額などは夫婦の話し合いで自由に決めてかまいません。相手の収入や専業主婦をしていた期間、経済的に自立できる見込みはあるかなどを総合的に判断し、具体的な内容を決めるようにしましょう。

財産分与の調べ方

財産分与の具体的な金額を計算するには、まず以下のような共有財産をすべて洗い出す必要があります。

  • 現金・預貯金
  • 株式・債券などの有価証券
  • 投資信託
  • 投資資産
  • 不動産
  • 自動車
  • 美術品、骨董品、貴金属
  • 生命保険
  • 退職金
  • 住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、借金など

共有財産をすべてリストアップできたら、相手名義の財産を確認します。相手名義の口座や不動産なども、夫婦の生活のために使っているものであれば財産分与の対象となります。

また、夫が財産を隠していないかどうかもあわせて確認しましょう。「話し合いに応じてくれない」など、詳細な把握が難しい場合は弁護士に依頼して財産を調査してもらうことも可能です。財産が多いほど調査に時間がかかるため、離婚を検討している場合はなるべく早い段階で調査を依頼することが大切です。

専業主婦の財産分与の決まり方

離婚時に専業主婦が財産分与の請求をする場合、次の2通りの方法があります。

  • 離婚と財産分与を併せて請求する
  • 離婚とは別に財産分与を請求する

これから離婚をする人は、協議離婚の話し合いのなかで財産分与についても取り決めを行うとよいでしょう。すでに離婚している人や、協議離婚での合意が難しい人などは、離婚後2年以内であれば財産分与請求調停の申立てをすることもできます。

次の項目から、それぞれの手順を紹介します。

離婚と財産分与を併せて請求する

協議離婚をするときは、夫婦の話し合いによって離婚の条件を決めていきます。慰謝料の有無や養育費の金額、子どもの親権者などを決定しますが、あわせて財産分与の具体的な内容についても取り決めを行うとよいでしょう。協議で決定した内容は必ず公正証書化し、必要に応じて強制執行認諾文言を加えておくことが大切です。

協議での合意が難しい場合は、調停や裁判へとステップを進めていきます。調停では、調停員が夫婦の間に入り、それぞれの意見や希望を聞きながら第三者を交えて話し合いを行います。調停での合意が難しい場合や、相手が調停に出席してくれない場合などは、裁判へ移行し財産分与についての審判を受けることになります。

離婚とは別に財産分与を請求する

財産分与は離婚後に請求することもできます。離婚時と同じように、まずは元配偶者と話し合いの場を設け、協議による合意を目指すとよいでしょう。

協議での合意が難しい場合、離婚が成立した日から2年以内であれば調停や審判の申立てが認められています。離婚後に財産分与の話し合いが折り合わない場合や、話し合い自体ができない場合などは、財産分与請求調停の申立てを検討しましょう。

ただし、財産分与請求調停では慰謝料や養育費など、そのほかの離婚条件についてあわせて取り決めることはできません。離婚後の慰謝料については「慰謝料請求調停」、離婚後の親権者変更については「親権者変更調停・審判」などの申立てを行う必要があります。

まとめ

専業主婦であっても、離婚時に財産分与を受け取ることはできます。婚姻中に夫婦が築いた財産は、妻・夫それぞれの協力があってこそ生み出せたものだと考えられるからです。夫婦の財産をそれぞれ2分の1ずつ分配するのが一般的ではあるものの、金額や分割の割合を夫婦の話し合いで自由に決めることもできます。

ただし、「専業主婦としての役割を果たしていない場合」「相手が経営者などの特殊な職業をしている場合」「専業主婦側が有責配偶者の場合」などは、財産分与で取得できる金額が少なくなる可能性があります。財産分与の分割割合は家庭の状況や婚姻期間などによって変わるため、適切な金額を判断するのが難しいと思う人もいるでしょう。夫婦の話し合いがなかなかまとまらなかったり、適正な金額がわからなかったりと、財産分与で悩みを抱えたときは離婚問題に精通する弁護士に相談することをおすすめします。

専業主婦の離婚による財産分与でよくある質問

財産分与で家を受け取る場合は名義変更をしたほうがいい?

財産分与で家を受け取ったとき、名義が相手のままになっているのであればすみやかに名義変更を行いましょう。名義変更をしないまま放置すると、勝手に家を売却されたり、退去せずに住み続けられてしまったりするリスクがあります。

財産分与の際、財産の存在を隠した場合どうなりますか?

財産の存在を隠しても刑事罰には問われませんが、民事上で不当利得とされる可能性があります。相手からの損害賠償請求など、後々のトラブルにつながりかねません。新たな紛争を発生させないためにも、正直に財産の存在を明かすことをおすすめします。

無料相談・電話相談OK!
一人で悩まずに弁護士にご相談を

ツナグ離婚弁護士で離婚に強い
弁護士を探す

財産分与に関するコラムはこちら

離婚に強い弁護士を探す

掲載事務所
436
更新日 : 2024年11月28日
検索