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有責配偶者とは?有責になる要件や有責配偶者が離婚したいと考えているケースを解説

有責配偶者とは?有責になる要件や有責配偶者が離婚したいと考えているケースを解説

有責配偶者とは、離婚の原因を作った側の配偶者のことです。以下のいずれかに該当する場合、有責配偶者とみなされます。

法定離婚事由 内容
不貞行為 配偶者以外の人物と性的関係を持つ
悪意の遺棄 無断別居、収入があるのに生活費を渡さない(経済的DV)など、夫婦間の義務を放棄する行為
3年以上の生死不明 消息を絶ってから3年経過している
回復の見込みのない強度の精神病 統合失調症や認知症など、精神科医の判断により回復の見込みがないと判断される
その他婚姻を継続しがたい重大な事由 DVやモラハラ、正当な理由のない一方的で継続的な性行為の拒否などが該当

協議や調停では、双方の合意さえあれば有責配偶者との離婚が可能です。協議や調停で有責配偶者の合意が得られなければ裁判に移行することとなり、裁判で離婚を認めてもらうには相手の有責性を示す証拠を用意する必要があります。

有責配偶者と離婚するなら、できる限り自身に有利な条件で離婚したいところです。弁護士に依頼すれば代理交渉や慰謝料請求の手続き、離婚条件のアドバイスなどをしてもらえるため、有責配偶者との離婚を考えているならまず弁護士へ相談してみることをおすすめします。

本記事では、有責配偶者についてや有責配偶者と離婚する方法などについて詳しく解説します。

有責配偶者とは離婚の原因を作った側の配偶者

離婚原因を作った側の配偶者を、有責配偶者と呼びます。「有責」とは婚姻関係を破綻させる原因を作った責任を指し、不倫や暴力(DV)などが該当します。

夫婦間の協議による離婚ができなかった場合は裁判での離婚成立を目指すことになり、法的に離婚を認めてもらうには「法定離婚事由」が必要です。

基本的には以下の法定離婚事由に該当する行為をした側が有責配偶者となります。

法定離婚事由 内容
不貞行為 配偶者以外の人物と性的関係を持つ
悪意の遺棄 無断別居、収入があるのに生活費を渡さない(経済的DV)など、夫婦間の義務を放棄する行為
3年以上の生死不明 消息を絶ってから3年経過している
回復の見込みのない強度の精神病 統合失調症や認知症など、精神科医の判断により回復の見込みがないと判断される
その他婚姻を継続しがたい重大な事由 DVやモラハラ、正当な理由のない一方的で継続的な性行為の拒否などが該当

有責配偶者となった場合は、不貞行為や悪意の遺棄などの不法行為により、慰謝料を支払わなければならないケースもあります。なお、有責配偶者となった側が離婚請求をすることは原則として認められていません。

ここからは、それぞれの有責性について詳しく見ていきます。

不倫や浮気などの不貞行為があった

不倫や浮気などの不貞行為があった場合、他方の配偶者からの離婚請求が認められるケースがあります。

結婚しているにもかかわらず、配偶者以外の異性と自由意思に基づいて肉体関係(性的関係)を持つことを不貞行為と呼びます。逃げられなかった・無理やりだったという場合を除き、配偶者以外と性行為を行った側は有責配偶者となります。これは、夫婦には配偶者以外と肉体関係を持ってはいけない「貞操義務」が課されているためです。

法的にはあくまでも肉体関係があったかどうかで判断されるため、特定の異性と親密な関係になっていたとしても、肉体関係がなければ不貞行為とはみなされません。

一回のみの肉体関係であったとしても、そのほかの理由で夫婦関係が破綻していると判断されれば、離婚が認められる可能性があります。ただし、一回限りやごく短期間の肉体関係であった場合、不貞行為にはなるものの離婚原因として認められないケースもあります。

そのため相手の不貞行為により離婚したい場合は、性行為があったとわかる写真や音声などの証拠に加え、ある程度継続的に不貞行為が繰り返されていた証拠も用意しなければなりません。

ただ、継続的な不貞行為があった場合でも、さまざまな事情を考慮したうえで婚姻関係の継続が相当であると認められ、離婚が認められなかった判例も存在します。

悪意の遺棄をされた

悪意の遺棄とは、正当な理由なしに、法律で夫婦の義務として定められている「同居」「協力」「扶養」の義務に反する行為を行うことです。

たとえば一定の収入があるにもかかわらず生活費を渡さなかったり、正当な理由なく配偶者や子を放置して勝手に家を出たりすると、悪意の遺棄に該当する可能性があります。

あくまでも「正当な理由なく」という部分が重要視されるため、以下のようなケースでは悪意の遺棄とは判断されない可能性が高いです。

  • お互いの合意のうえで別居している
  • 単身赴任のため別居している
  • DVから逃げるために家を出た

なお、実際に悪意の遺棄が認められることは少ないとされています。悪意の遺棄が問題になる時点で、不貞行為やDVなどほかの離婚事由が存在しているケースがあり、その場合は悪意の遺棄以外の重大な事由が法定離婚事由として優先的に認められることがあります。

強度の精神病で回復の見込みがない

配偶者が夫婦として共同生活を送るのが困難なほどの重い精神的疾患を患っており、なおかつ回復の見込みがないと判断されれば、法定離婚事由と認められる可能性があります。具体的には、統合失調症や双極性障害などが該当するケースが多いです。

ただ、強度の精神病を患っているからといって一律に離婚が認められるわけではありません。回復の見込みがないとはいえ、精神病であれば継続的な治療が必要ですが、無策のまま離婚することになるとさらに苦しい状況に陥る恐れがあるためです。

したがって、そもそも「回復の見込みがない強度の精神病である」ことを理由に離婚が認められることは稀ですが、離婚後の生活や療養に問題がないと判断されれば、法定離婚事由として離婚請求が認められる可能性もあります。

精神病の配偶者と離婚したいのに拒否されている場合や話し合いが進まない場合は、裁判で離婚を認めてもらうために以下のような方法を実践する必要があります。

  • 精神病が重度であり回復の見込みがないことを証明する
  • 配偶者を十分にサポートし、それを証明する
  • 離婚後も配偶者が生活・療養できる環境を準備する

回復の見込みがないことを証明するには、医師の診断書や治療履歴などが有用です。配偶者の精神病を理由に離婚を希望する場合は、まずは十分なサポートを行うことを心がけましょう。

3年以上生死がわからない状態になっている

配偶者が音信不通になっていて、生きているのか死んでいるのかもわからない状態が3年以上続いている場合、離婚請求ができる可能性があります。具体的には、家を出ていったきり帰ってこなくなった場合や、地震・津波などの災害に巻き込まれた場合などが該当します。

なお、住所不明ながらも生きていることが判明しているケースでは、「悪意の遺棄」に該当する可能性が高いでしょう。

生死が不明なレベルだとそもそも協議の場を設けることが難しいため、離婚を希望するなら調停の段階をとばして裁判を提起することになります。

裁判を起こすには、配偶者の生死が不明であることを証明するために以下のような書類を裁判所に提出する必要があります。

  • 警察に提出した行方不明者届や行方不明者届受理証明書
  • 配偶者がいる可能性のある場所に問い合わせや訪問をしたが不明であることの陳述書
  • いなくなった配偶者の親族に問い合わせたが不明であることの陳述書
  • いなくなった配偶者の勤務先や友人に問い合わせたが不明であることの陳述書

「3年以上生死が不明」を理由に離婚の訴えを起こすなら、あくまでも「生死が不明」である必要があるため、あらゆる調査を尽くしても生死がわからなかったことを証明しなければなりません。

「その他婚姻を継続し難い重大な事由」がある

上記で解説した事由以外にも、以下のような「その他婚姻を継続し難い重大な事由」がある場合は離婚が認められる可能性があります。

  • 暴力・モラハラ
  • 正当な理由のない継続的な性行為の拒否
  • 過度な宗教活動
  • 借金や浪費など金銭問題
  • 犯罪行為による服役
  • 配偶者の親族との不和

いずれに該当する場合も、夫婦関係が破綻しており修復が困難であると判断される必要があります。よくある「性格の不一致」だけでは離婚を認めてもらうことは難しく、修復不可能なレベルであることを証明する必要があります。

「その他婚姻を継続し難い重大な事由」により離婚したい場合は、相手が有責となる証拠を用意しなければなりません。たとえば、暴力を受けていたなら怪我の写真や診断書、治療履歴などが客観的な証拠になり得ます。

有責性が離婚条件に与える影響

有責性が離婚条件に与える影響として、主に以下の4つが挙げられます。

  • 有責性が相手にあっても財産分与はしなければいけない
  • 有責性が親権に影響を与えないケースもある
  • 有責性が養育費に影響を与えないケースもある
  • 別居した場合は婚姻費用請求が認められる場合もある

それぞれ詳しく解説していきます。

有責性が相手にあっても財産分与はしなければいけない

たとえ配偶者が有責だとしても、財産分与は必ず行わなければなりません。財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を、それぞれの寄与度に合わせて離婚の際に分ける制度のことです。

有責配偶者に財産分与をしたくないと考える人もいるかもしれませんが、財産分与に有責かどうかは関係なく、基本的に1/2ずつ平等に分けられます。

ただし、財産分与請求は有責配偶者からでも行えるのが特徴で、どうしても離婚したい有責配偶者側が離婚を成立させるため、1/2以上の割合で財産分与するというケースもあります。

有責配偶者だからといって財産分与割合は変わらないものの、必ずしも1/2の割合で財産分与するわけではありません。

有責性が親権に影響を与えないケースもある

有責配偶者だったとしても、子育てをするにあたって有責配偶者の方が適切だと判断された場合は、有責配偶者が親権を獲得するケースもあります。有責配偶者であることと親権は別に考えるべきであるとされているため、有責配偶者側が必ずしも親権をとれないわけではありません。

たとえば配偶者の不貞行為により離婚する場合でも、不貞行為を行った配偶者が日常的にしっかりと育児をしており子どもとの信頼関係も築けている場合、親権を獲得できる可能性があるでしょう。

ただし、不倫相手に夢中になり育児を放棄していたり、虐待をしていたりする場合は、当然ながら親権を取ることはできません。

親権者はあくまでも、きちんとした養育実績があることと、子どもにとって有益な環境であるかどうかを考慮して決定されます。

なお、子どもがいる場合は離婚後に面会交流の場を設ける義務がありますが、相手が有責配偶者であることは面会交流を拒否する理由にはなりません。反対に自身が有責配偶者で親権者となったケースでは、相手が子供に悪影響を及ぼすと考えられる場合は面会交流を拒否することができます。

有責性が養育費に影響を与えないケースもある

有責配偶者だからといって、養育費に直接影響を与えることは基本的にはありません。養育費は子どもの監護や教育のために必要な費用であり、相手が有責配偶者であっても、受け取る養育費の増額などの理由にはならないとされています。

反対に、有責配偶者が親権を獲得した子どもに対して養育費を支払わない理由にもなりません。離婚原因やどちらが有責かに関係なく、養育費は子どもを監護していない側が監護している側に必ず支払う必要があります。

別居した場合は婚姻費用請求が認められる場合もある

有責配偶者とみなされる理由によって別居することになった場合、有責配偶者に対し別居時の婚姻費用を請求できるケースもあります。

婚姻費用とは、別居している夫婦の間で夫婦や子どもが生活していくために必要な費用のことです。衣食住費や医療費、教育費や交際費などが含まれます。

婚姻費用を支払うべき期間は、請求したときから離婚成立もしくは別居解消日までです。婚姻費用の金額は自身と有責配偶者の収入によって決まり、裁判所が作成した「婚姻費用算定表」を元に算出できます。

有責配偶者と離婚する方法

有責配偶者と離婚したい場合、夫婦で話し合い双方が合意すれば離婚可能です。もし調停で有責配偶者からの合意が得られなければ、裁判へ移行することになります。裁判で離婚を認められるには、相手の有責性を示す証拠を用意しておかなければなりません。

以下で詳しく解説していきます。

話し合い(協議・調停)では双方の合意があれば離婚できる

離婚したい場合は夫婦で話し合い(協議・調停)を行い、双方の合意があれば離婚が可能です。

協議離婚は、裁判所を通さずに夫婦間のみで話し合いを行い、条件を決めて離婚届を提出し離婚を成立させるものです。

また調停離婚とは、協議離婚が成立しなかった場合に家庭裁判所に調停を申し立てて離婚する制度を言います。調停では、調停委員が夫婦の間に入り、離婚の合意や離婚条件などについて調整を行いながら離婚を目指します。

調停でも有責配偶者からの合意を得られなかった場合は、裁判に移行することになるでしょう。

離婚裁判では相手の有責性を示す証拠が必要になる

裁判で認められれば、相手からの合意がなくても離婚することが可能です。ただし、離婚の理由が法定離婚事由に該当しなければ認められないため、相手が行った有責行為を示す証拠を用意する必要があります。

必要な証拠は離婚理由により異なりますが、主に以下のようなものが証拠として有用です。

法定離婚事由 証拠になるもの
不貞行為
  • ラブホテルの出入りや肉体関係があったことがわかる写真や動画
  • ラブホテルの領収書やクレジットカードの利用明細書
  • 肉体関係があったことがわかるメールやSNSのやりとり
悪意の遺棄
  • 一方的に家を出ていったことがわかるメールやSNSのやりとり
  • 生活費が振り込まれなくなったことがわかる通帳
  • 別居している事実がわかる住民票や賃貸借契約書
  • 悪意の遺棄に該当する行為の内容を記載した日記
  • 家事を放棄されていることがわかる家の中の写真
強度の精神病
  • 医師の診断書、鑑定書
3年以上の生死不明
  • 警察が発行した捜索願受理証明書
  • 事件・事故・災害があったことを証明する資料
  • 配偶者が生死不明である事実が記載された陳述書
その他
  • 医師の診断書、鑑定書
  • 配偶者からの暴力により生じた怪我の写真
  • モラハラを受けていたことがわかる動画や音声
  • 医師の診断書
  • 警察への相談履歴
  • セックスレスだったことを証明する日記

離婚理由に応じた証拠を用意し、離婚に至る正当な理由であると裁判官に判断されれば、相手の合意がなくても離婚することができます。

有責配偶者の慰謝料の支払い義務について

有責配偶者には、慰謝料の支払い義務が生じる場合があります。不貞行為やDVなどの不法行為があった場合は、慰謝料請求が認められる可能性が高いです。

慰謝料の相場は、離婚事由にもよりますが50~300万円程度です。ただし慰謝料額はさまざまな要素を考慮して算出されることと、時効が存在する点には留意しておきましょう。

以下で、有責配偶者の慰謝料支払い義務について詳しく解説します。

有責配偶者に対する慰謝料請求が認められるための条件

有責配偶者には、民法第709条と710条の不法行為に基づき損害賠償を請求できます。なお不法行為に基づいた損害賠償は、原則として金銭により行うことが民法で定められています。

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)

第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
引用元:e-Gov 法令検索

具体的には、不貞行為やDVなどが不法行為に該当します。有責配偶者の不法行為により精神的苦痛を受けたとして、慰謝料を請求することが可能です。

有責配偶者に対する慰謝料請求の相場は50万~300万円

有責配偶者に慰謝料を請求する場合、相場は50~300万円です。離婚事由別の慰謝料額の相場を以下にまとめました。

離婚事由 慰謝料の相場
不貞行為 100~300万円
悪意の遺棄 50~300万円
DV・モラハラ 50~300万円
セックスレス 0~100万円

ただし、上記はあくまでも目安です。慰謝料額はさまざまな要素を考慮して算定されるため、たとえば「不貞行為があったから300万円」などと明確に決めることはできません。

相場をもとに夫婦間や調停、裁判で話し合い、金額に双方が合意すれば慰謝料を獲得できます。

慰謝料請求には時効があるので注意

有責配偶者になった場合、時効によりその事実が消滅することはありません。そのため、配偶者が過去に行った有責行為を理由に離婚を請求することも可能です。

ただ、あまりにも長い期間が経っている場合は夫婦関係が修復されたとみなされ、夫婦関係が破綻していたことを理由とした離婚は認められない可能性があります。

また、慰謝料請求には時効がある点にも留意しておかなければなりません。慰謝料の請求は基本的に、離婚が成立してから3年以内、離婚後に不貞行為などが発覚した場合は発覚時点から3年以内に行う必要があります。

有責配偶者自身が離婚したいと考えているケースについて

有責配偶者からの離婚請求は、基本的には認められていません。ただし夫婦間での話し合いや調停で双方が合意すれば、離婚することは可能です。また、以下に該当する場合は有責配偶者からでも離婚が認められる可能性があります。

  • 未成年で経済的に自立できない子どもがいない
  • 相手の生活保障を適切に行っている
  • 夫婦関係がすでに破綻していることが明らかである

以下で詳しく解説していきます。

有責配偶者からの離婚請求は基本的に認められない

基本的に、有責配偶者からの離婚請求は認められていません。夫婦関係を破綻させた側が離婚を主張するのは身勝手であると考えられるためです。

有責配偶者が裁判を申し立てたとしても、法定離婚事由があるのは有責配偶者自身なので、離婚が認められる可能性は低いと言えます。

ただ夫婦間で話し合い、お互いに離婚の合意ができれば離婚することは可能です。協議で話がまとまらなくても、調停で条件のすり合わせを行い離婚に至るケースもあるでしょう。

なお、有責配偶者ではない側が断固として離婚を拒否していたとしても、裁判に至れば離婚が認められるケースもなかにはあります。しかし、基本的に有責配偶者からの離婚請求を拒否する際は、はっきりと「離婚はしない」と意思表示をすることが重要です。

有責配偶者から無断で離婚届を提出されるのを防ぐには、離婚届不受理申出を役所に提出しておくのがおすすめです。役場は離婚届が提出されても形式的審査しか行わないため、知らない間に離婚が成立していたということになる可能性もあります。

双方の合意なく提出された離婚届は法律上無効とはなりますが、訂正するには手間も時間もかかるため、あらかじめ離婚届不受理申出をしておくのがよいでしょう。

有責配偶者からの離婚が認められる条件

有責配偶者からの離婚請求は基本的には認められませんが、例外として以下に該当する場合は認められる場合があります。

  • 未成年で経済的に自立できない子どもがいない場合
  • 相手の生活保障を適切に行っている場合
  • 夫婦関係がすでに破綻していることが明らかな場合

それぞれ詳しく解説していきます。

未成年で経済的に自立できない子どもがいない場合

夫婦で養育している未成年の子どもがいない場合は、離婚が認められる可能性があります。逆に言えば、別居期間がどれだけ長くても、未成年で経済的に自立できない状態の子どもがいる場合は、有責配偶者からの離婚請求は認められません。

どんなに夫婦が不仲になっても、夫婦の子どもであることに変わりはなく、健全に養育していくことが求められるためです。

相手の生活保障を適切に行っている場合

有責配偶者が、被害者側の配偶者の生活保障をきちんと行うことで離婚請求が認められる可能性があります。

たとえば被害者側の配偶者が婚姻期間中に仕事をしていなかった場合、離婚により生活が苦しくなることが考えられます。共働きだったとしても、一人での稼ぎが少なければ同じでしょう。

そのような状況を作らないため、慰謝料や財産分与によって金銭面の問題をカバーできれば、有責配偶者からの離婚でも認められるケースがあります。

夫婦関係がすでに破綻していることが明らかな場合

すでに夫婦関係が破綻している場合は、離婚が認められやすくなります。夫婦関係が破綻していると判断されるのは、長期間にわたり別居をしている場合です。

ただし、単身赴任や家庭内別居の場合は別居とはみなされず、連絡を取り合っている場合も夫婦関係が破綻しているとは判断されません。

これまでの判例によると、別居期間が7~8年以上続いている場合に離婚が認められたケースがあります。しかし7~8年というのはあくまでも目安であり、夫婦の年齢や同居期間との対比などを考慮して判断される点には留意しておきましょう。

有責配偶者との離婚を考えているなら弁護士に相談するのがおすすめ

有責配偶者と離婚したいなら、弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士に相談すれば有利な条件で離婚がしやすくなり、精神的負担の軽減にも繋がります。具体的には、以下のようなメリットがあります。

  • 窓口となり相手と代理交渉してくれる
  • 離婚条件のアドバイスをしてくれる
  • 慰謝料請求の手続きなどをしてくれる

以下で詳しく解説していきます。

窓口となり相手と代理交渉してくれる

離婚問題を弁護士に相談すれば、弁護士が代理人となり有責配偶者との窓口になってくれます。

離婚理由がDVやモラハラの場合、夫婦二人きりで話し合うのは大きなストレスになるでしょう。身の危険があれば、話し合いの場に出向くことすら難しいはずです。そのような場合、弁護士に窓口になってもらえば交渉のストレスを減らすことができます。

また、夫婦間で話すとお互い感情的になってしまうことも考えられますが、弁護士に依頼すれば冷静かつ客観的に交渉してもらえるでしょう。

離婚条件のアドバイスをしてくれる

離婚することが決まったら、慰謝料や財産分与、親権や養育費などさまざまな事柄を決めなければなりません。知識がないと相場などがわからず、損をしてしまうことも考えられます。

その点弁護士に相談すれば、夫婦の状況や過去の事例などを鑑みて適切な条件をアドバイスしてもらえます。そのため、相手に都合のよい条件で言いくるめられ不利な状態で離婚をしてしまうのも回避できるでしょう。

慰謝料請求の手続きなどをしてくれる

弁護士に相談すれば、慰謝料請求など複雑な手続きを代行してくれるのもメリットです。

協議離婚の場合は、話し合いにより慰謝料額を決定し、のちのトラブルを防ぐために離婚協議書や公正証書を作成するケースがあります。弁護士に依頼すれば、書類の書き方や内容について適切なサポートをしてもらえるでしょう。

また、離婚理由が不貞行為の場合は、不倫相手に慰謝料を請求することも考えられます。その際も弁護士に代理人を依頼したり、内容証明を送付してもらったりすることが可能です。

まとめ

有責配偶者とは、離婚の原因を作った側の配偶者のことです。不貞行為や悪意の遺棄、強度の精神病を患っている場合などに有責配偶者とみなされます。

双方の合意があれば有責配偶者との離婚が可能であり、協議や調停で有責配偶者の合意が得られなければ裁判に移行することになります。裁判で離婚を認めてもらうには、相手の有責性を示す証拠を用意しなければなりません。

なお、有責配偶者側からの離婚請求は基本的には認められていません。しかし、夫婦が養育している未成年の子どもがいる場合や夫婦関係がすでに破綻している場合などでは、離婚が認められる可能性があります。

できる限り自身に有利な条件で有責配偶者と離婚したいなら、弁護士に相談するのがおすすめです。代理交渉や慰謝料請求の手続き、離婚条件のアドバイスなどの適切なサポートをしてもらえます。