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2025年06月現在

離婚裁判の流れを徹底解説|必要書類や費用・判決後の手続きも紹介

離婚裁判の流れ

離婚裁判とは、家庭裁判所での調停を経ても夫婦間で合意に至らなかった場合に、裁判所が離婚の可否やその条件について法的に判断する手続きです。

裁判の手続きは、まず訴状の提出から始まり、相手方への訴状の送達、被告による答弁書の提出、口頭弁論による双方の主張、証拠の提出・審理、当事者尋問などを経て進行します。こうした過程を経たうえで、審理の途中で和解が成立する場合もありますが、合意に至らなければ裁判所が判決を下すことになります。

判決が確定すれば離婚は正式に成立し、その後10日以内に離婚届を提出する必要があります。なお、判決に不服がある場合は、言い渡しから2週間以内であれば控訴することが可能です。また、財産分与や養育費などが判決どおりに履行されない場合には、判決に基づいて強制執行を申し立てることができます。

離婚裁判は、一般的に半年から1年半程度かかるとされていますが、争点が多い場合はさらに長引くこともあります。訴状や証拠の準備をはじめ、裁判にかかる費用の見通しを立てておくことや、弁護士への依頼について早い段階で検討することが重要です。

本記事では、このような離婚裁判の流れをはじめ、必要書類や費用、証拠の集め方、さらには弁護士に依頼するメリットや選び方まで、幅広く解説しています。離婚裁判の進め方を把握したい方は、まず本記事を通して全体像をつかんでみてください。

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南陽輔 弁護士
監修
一歩法律事務所
南 陽輔(弁護士)

離婚裁判全体の流れ

離婚裁判とは、家庭裁判所での調停を経ても夫婦間で合意できなかった場合に、裁判所が離婚の可否や条件を判断する法的手続きです。

ただし、日本では「調停前置主義」が採用されているため、まずは家庭裁判所での調停を経る必要があります。

また、裁判で離婚を認めてもらうには、DVや不倫、長期間の別居など、法律で定められた「離婚原因(法定離婚事由)」があることも重要です。

離婚裁判の一般的な流れは、以下の8つのステップにわかれます。

  1. 原告側が家庭裁判所に訴状を提出する
  2. 第1回口頭弁論の通知・被告側への訴状の送達
  3. 被告側が答弁書を提出する
  4. 口頭弁論
  5. 審理・証拠提出
  6. 当事者への尋問
  7. 家庭裁判所から和解案が提示される(※和解が可能と判断された場合)
  8. 判決の言い渡し

ここからは、各ステップについて詳しく解説していきます。

1.原告側が家庭裁判所に訴状を提出する

離婚裁判は、原告(離婚を求める側)が家庭裁判所に訴状を提出することで始まります。

通常は、被告の住所地を管轄する家庭裁判所に訴状を提出しますが、調停を実施した家庭裁判所が異なる場合は、その家庭裁判所が引き続き離婚訴訟を取り扱うケースもあります。

訴状に記載する内容は、以下のとおりです。

  • 原告・被告の氏名・住所
  • 離婚を求める理由(法定離婚事由)
  • 親権の指定、養育費、慰謝料、財産分与など請求内容

離婚理由には法定離婚事由に該当する具体的事情を簡潔に記載します。

民法第770条に基づく法定離婚事由は以下のとおりです。

法定離婚事由 内容
不貞行為 配偶者以外の人と性的な関係を持つこと(例:浮気・不倫)
悪意の遺棄 正当な理由なく、同居・扶助などの夫婦の義務を果たさない(例:生活費を渡さない、家出を繰り返す)
3年以上の生死不明 配偶者の生死が3年以上わからない状態が続いている
その他婚姻を継続し難い重大な事由 上記以外の理由で夫婦関係が回復困難なほど破綻している状態(例:5年以上の別居、DV、過度な価値観の違い)

なお訴状は、離婚裁判を正式に開始するための法的な申立書類であり、裁判所に対して離婚の意思とその理由を伝える重要な書類です。

書式は、裁判所の公式サイトからダウンロードできます。

2.第1回口頭弁論の通知・被告側へ訴状を送達する

訴状が提出されると、裁判所はその内容を確認し、形式上の問題がなければ第1回口頭弁論の期日を決定します。

そのうえで、裁判所は被告に対して、訴状と「期日呼出状および答弁書催告状」などの書類一式を「特別送達」により送付します。

これによって、被告は離婚裁判が始まったことを正式に知らされ、自身の主張を述べる機会を得られるのです。

一方、原告には「期日通知書」などにより、指定された期日が通知される仕組みです。

なお、訴状に不備がある場合には、裁判所から原告に対して補正を求められるケースがあります。

3.被告側が答弁書を提出する

被告は、訴状と期日呼出状を受け取ったら、定められた期日までに「答弁書」を提出しなければなりません。答弁書とは、訴状の内容に対して自らの立場や反論を述べるための文書です。

通常、答弁書は裁判所と原告(または原告の代理人)の双方に提出する必要があります。 ただし、原告側への送付が難しい場合は、裁判所に2部提出すれば対応可能です。

答弁書では、訴状のどの部分が事実と異なるか、あるいは認めるかを明記します。被告として独自の主張がある場合は、それも同じ書面に記載してかまいません。

答弁書の用紙は、訴状と一緒に送られてくることが多いです。 同封されていない場合は、裁判所の公式サイトからダウンロードできます。

また、提出用とは別に、自分用の控えも必ず作成しておきましょう。万が一、提出後に確認が必要になったときに備えるためです。

答弁書は、持参・郵送・ファックスのいずれかの方法で提出できます。

なお、答弁書を出さずに第1回口頭弁論を欠席すると、訴状に書かれた内容を事実と認め、争わなかったとみなされるおそれがあります。その場合、原告の主張どおりの判決が下される可能性もあるため、答弁書は必ず提出するようにしましょう。

もし呼出状に記載された日程に出席できない場合は、期日を変更してもらえることもあるため、できるだけ早く、裁判所の担当書記官へ連絡をとることが大切です。

また、事前に答弁書を提出していれば、第1回口頭弁論に出席できない場合でも、書面に記載された内容が被告の主張として扱われることがあります。

さらに、事実確認に時間がかかる場合は、まず争点だけを示した答弁書を提出し、後日、準備書面で詳しい反論内容を補足することも可能です。

4.口頭弁論

口頭弁論とは、裁判所で行われる公開の手続きで、当事者やその代理人(弁護士など)が裁判官の前で主張や証拠を述べ、相手方の主張に反論する場です。

裁判長の主導のもと、公開された法廷内で、原告・被告双方またはその弁護士が出席し、準備書面や証拠に基づいて主張を展開します(参考:民事訴訟法第82条

なお、被告が口頭弁論に出席できない場合でも、事前に答弁書を提出しておけば、主張を裁判所に伝えることが可能です(答弁書の提出については「被告側が答弁書を提出する」を参照してください)。

また裁判長は、当事者の主張や提出された証拠に不一致や曖昧な点が見られる場合、質問を行ったり、次の期日までにその点をはっきりさせたりするよう指示する権利(釈明権)を有しています。

通常、訴状を提出してから約1ヵ月後に第1回口頭弁論の日程が設定され、その後の口頭弁論は、月1回の頻度で開催されます。

5.審理・証拠提出

審理では、準備書面や提出された証拠に基づき、裁判所が事実関係や法的争点を整理・検討していきます。一般的な審理の流れは以下のとおりです。

  1. 争点の整理
  2. 原告から証拠の提出
  3. 被告からの証拠の提出
  4. 原告・被告からの証拠提出を裁判官が納得するまで繰り返す

それぞれ詳しく解説します。

①争点の整理

まず、裁判所が両当事者の主張を比較し、どの点が争われているのかを明確にします。

この段階で「合意済みの内容」と「争点」が整理され、以降の審理が効率的に進む基盤となります。

②原告から証拠の提出

争点が明確になった後、原告は自分の主張を裏付ける証拠の提出が必要です。

証拠には、契約書やメール・LINEのやりとり、写真、音声・映像データなどの文書・物的証拠が含まれます。

これらの証拠がなければ、裁判所が事実関係を適切に判断することはできません。

③被告からの証拠の提出

原告に続き、被告も自らの主張を支持する証拠を提出します。

被告は、原告の主張に反論する形で証拠を示したり、独自の主張を補強したりするために証拠を提出する場合もあります。

④原告・被告からの証拠提出を裁判官が納得するまで繰り返す

原告と被告からの証拠提出が完了した後、裁判官は提出された証拠をもとにして、争点に関する判断を下します。

裁判官が争点について十分に理解・納得するまで、証拠の提出や説明が複数回にわたって繰り返されます。

場合によっては、裁判所から追加の証拠提出や釈明(不明点の説明)を求められることもあるでしょう。

審理は一度で終わるものではなく、月1回程度の頻度で数回にわたって行われるのが一般的です。

6.当事者への尋問

離婚裁判における当事者尋問とは、裁判官が原告・被告の双方から直接事実関係を確認するために行う手続きです。尋問を通じて、主張の食い違いや事実の背景を明らかにし、判断材料として活用されます。

当事者は裁判官の前で、自らの立場や主張を述べ、必要に応じて裁判官からの質問に答えなければなりません。当事者の供述は、証拠の一部として扱われ、裁判の結論に大きな影響を及ぼす場合もあるでしょう。

通常、当事者尋問はまず原告、次に被告の順に進められます。尋問の内容や方法は裁判所が決定しますが、裁判長の判断で随時質問が行われるケースもあります。

なお、証人尋問が行われる場合には、原則として申請者側が先に尋問します。その後、相手方が反対尋問を行い、最後に裁判所が補足尋問を行うという順序で進行します(証人尋問とは区別されます)。

7.家庭裁判所から和解案が提示される(※和解が可能と判断された場合)

離婚裁判では、争点が整理され主張がそろった段階で、裁判所が和解を試みることがあります。その際、裁判官は両者の主張や証拠を踏まえて、公平で現実的な解決案を提示します。

提示される和解案は、裁判所が中立の立場から提案する妥協点です。当事者は和解を受け入れるか拒否するかを自由に判断できます。

ただし、一度和解が成立すれば、その内容は判決と同等の効力を持ち、控訴することはできません。

そのため、裁判の長期化を避け、双方にとって負担の少ない解決を望む場合には、和解案を検討が有効な手段となります。

時間や費用を抑えつつ、円満に解決を図りたい場合には、和解に応じる判断も一つの選択肢といえるでしょう。

8.判決の言い渡し

和解が成立しなかった場合、裁判所は尋問などの審理を終えた後、おおむね1〜3ヵ月以内に判決期日を設定し、最終的な判断を言い渡します。

この判決は、これまでに提出された証拠や当事者の主張を総合的に考慮したうえで下されるものです。

離婚訴訟の判決では、まず離婚を認めるかどうかが判断され、あわせて、財産分与や親権、養育費、面会交流、慰謝料、年金分割などの関連事項についても裁定が加えられます。

判決が言い渡されると、その内容は正式な書面で当事者に送付され、これにより、裁判手続きは終了します。

控訴期限である2週間以内に相手方から異議がなければ、判決はそのまま確定し、離婚も法的に成立したとみなされます。

なおいったん成立した離婚は原則として取り消すことができません。不服がある場合は、必ず控訴期間内に対応する必要があります。

控訴については、判決に納得できない場合は控訴も可能を参考にしてください。

判決確定後に起こりうる対応と手続き

離婚裁判で判決が確定した後、当事者は以下のような手続きを進めることになります。

  • 離婚が成立した場合は離婚届などの提出
  • 判決内容の履行(履行されない場合は強制執行)
  • 判決に不服がある場合の控訴

ここでは、これらのステップについて詳しく解説します。

離婚が成立した場合は10日以内に離婚届等を提出する

離婚裁判の判決が確定し、離婚が成立した場合、原告は判決確定日から10日以内に、本籍地または所在地のある市区町村役場へ離婚届を提出しなければなりません。

この際、離婚届とあわせて、判決書の謄本、確定証明書、戸籍謄本の提出も必要です。なお、相手の署名や捺印は不要です。

この手続きをもって、戸籍上も正式に離婚が記録されることになります。

離婚が法的に成立するための重要なステップとなるため、忘れずに提出するようにしましょう。

判決内容が履行されない場合は強制執行も可能

離婚判決で決まった財産分与や養育費などが相手方から支払われない場合は、強制執行を申し立てることができます。

強制執行とは、相手が支払いを行わない場合に、裁判所を通じて相手の財産を差し押さえ、強制的に支払わせる手続きです。

この手続きを行うには、まず裁判所に「執行文」の付与を申請する必要があります。 執行文とは、判決や和解調書などが確定し、法的な強制力を持つことを証明する書類です。

執行文が発行されたあとは、裁判所の執行官が相手の預貯金や給与などの財産を差し押さえることができます。

判決に納得できない場合は控訴も可能

離婚裁判の判決に不服がある場合は、当事者は控訴することができます。控訴とは高等裁判所に対して行う手続きで、原審の判決内容を再検討してもらうものです。

控訴期間は、判決が言い渡された日から2週間以内です。

控訴を行うには、原判決に事実認定や法律の適用に誤りがあると主張する必要があります。たとえば「証拠の評価が不適切」「法解釈に誤りがある」といった場合が挙げられます。

なお、控訴審では新たな証拠の提出は原則できません。第一審の審理内容に基づいて判断されるのが一般的です(ただし、例外的に新証拠が認められる場合もあります)。

離婚裁判にかかる期間

離婚裁判にかかる期間は、一般的に半年〜1年半程度とされています。

ただし、裁判を起こす前には原則として家庭裁判所での調停を経る必要があります。調停には通常4〜6ヵ月程度かかるため、調停から裁判までを含めると、全体で2年以上かかるケースもあるでしょう。

裁判にかかる期間は、争点の数や内容、証拠の有無、裁判所のスケジュールなどによって異なります。たとえば、親権や養育費、財産分与など複数の争点がある場合は、長期化することも少なくありません。また、当事者の協力度や証人尋問の有無によっても、審理の進み具合は左右されます。

審理は、月に1回程度の頻度で進められるのが一般的で、和解に至らなければ複数回の期日を経て判決に至ります。なお、途中で和解が成立すれば、正式な判決を待たずに裁判が終了するため、比較的早期に解決する可能性もあります。

一方、判決に不服がある場合は、判決の言い渡しから2週間以内であれば控訴することも可能です。控訴審に進んだ場合、さらに半年以上かかるケースもあるでしょう。

離婚成立までに長期間を要することもあるため、生活設計や弁護士依頼のタイミングをあらかじめ見越して準備しておくことが大切です。

離婚裁判のために必要な書類

離婚裁判を進めるには、あらかじめ必要な書類を正確に揃えておくことが重要です。これらの書類は裁判所に提出するものであり、審理の進行や判断にも大きく関わります。

離婚裁判で一般的に必要とされる主な書類は以下のとおりです。

書類名 内容
訴状2部 離婚を求める理由や請求内容を記載し、裁判所に離婚を申し立てるための書類
離婚調停不成立調書 家庭裁判所で行われた離婚調停が不成立に終わった際に作成される公式な記録文書。
離婚裁判へ進むために必要
夫婦の戸籍謄本の原本およびそのコピー 夫婦関係が法律上成立していることを証明するための書類。
本籍地のある市区町村役場で取得可能。本籍地が遠方の場合は郵送も可能
年金分割のための情報通知書およびそのコピー(必要な場合) 年金分割を希望する際に、按分割合などを判断するために必要。
年金事務所または共済組合の窓口で取得可能
その他証拠とする書類のコピー2部 財産分与や養育費などの請求を裏付ける資料(通帳、源泉徴収票など)
自身の主張を裏付ける重要な根拠となる

それぞれ詳しく解説します。

訴状2部

離婚裁判を起こす際に必要な書類です。裁判所提出用と、被告への送付用として2部用意します。

記載項目や具体的な記載例については「原告側が家庭裁判所に訴状を提出する」の章をご確認ください。

離婚調停不成立調書

離婚調停不成立調書は、家庭裁判所で行われた離婚調停が不成立に終わった際に作成される公式な記録文書です。この調書には、調停が実施された日時や話し合いの内容、不成立になった理由などが記載されます。

離婚裁判を起こすには、まず家庭裁判所での調停を経ていることが必要です。この調書は「調停前置主義」の要件を満たした証拠として提出しなければなりません。

夫婦の戸籍謄本およびそのコピー

戸籍謄本は、夫婦関係が法律上成立していることを証明するための重要な書類です。
離婚裁判では、原告と被告が婚姻関係にあることを示す資料として、裁判所に提出します。

この書類は、本籍地のある市区町村役場で取得できます。本人確認書類を持参すれば、窓口で即日発行が可能です。本籍が遠方にある場合は、郵送での請求にも対応しています。

提出時には、原本に加えてコピーの添付を求められる場合があるため、あらかじめ2部用意しておくとよいでしょう。

年金分割のための情報通知書およびそのコピー(必要な場合)

年金分割とは、婚姻期間中に一方の配偶者が厚生年金などに加入していた場合、その保険料納付記録の一部をもう一方の配偶者に分ける制度です。将来の年金受給額に反映されるもので、離婚後の生活保障として利用されます。

離婚にあわせて年金分割を希望する場合は「年金分割のための情報通知書」とそのコピーの提出が必要です。 この書類は、年金の按分割合(分割割合)に関する処分を家庭裁判所に求めるために使用されます。

※年金分割によって離婚後すぐに現金が支給されるわけではありません。あくまで将来の年金受給額に反映される制度です。

通知書は、年金事務所または共済組合の窓口で取得できます。「年金分割のための情報提供請求書」とともに、本人確認書類や戸籍謄本(または住民票など)を提出することで交付されます。

請求書の様式や手続きの詳細は、日本年金機構の公式サイトから確認・ダウンロード可能です。

その他証拠とする書類のコピー2部

財産分与や養育費の請求に関係する資料(例:源泉徴収票、預金通帳の写しなど)は、証拠として提出するため、コピーを2部用意します。これらの書類は、自身の主張を裏付ける重要な根拠となるものです。

作成にあたっては、最新かつ正確な内容であることを確認したうえで準備しましょう。不安がある場合は、弁護士など専門家に相談することをおすすめします。

離婚裁判のために必要な費用

離婚裁判には、さまざまな費用が発生しますが、どのような目的で必要なのか、具体的な金額はどの程度なのか把握しておくことが重要です。

ここでは、離婚裁判における主要な費用項目について3つ紹介します。

費用項目 金額の目安
印紙代 訴状に貼付する収入印紙代。
・離婚のみ:13,000円
・附帯処分(財産分与・養育費など)を求める場合:1件につき1,200円加算
・慰謝料請求:請求金額に応じて変動
郵便切手代 裁判所から当事者へ送付する書類の郵送費。
・数千円程度(裁判所ごとに異なる)
弁護士費用 弁護士に依頼する場合の着手金・報酬金など。
・30万〜100万円程度(事務所により異なる)

印紙代

訴状を提出する際は、収入印紙で訴訟手数料を納める必要があります。
離婚裁判における印紙代は、請求内容によって以下のように異なります。

  • 離婚のみ:13,000円
  • 附帯処分(財産分与・養育費など)を求める場合:1件につき1,200円加算
  • 慰謝料請求:請求金額に応じて変動(例:300万円請求→20,000円)

たとえば、離婚+財産分与+2人分の養育費を請求する場合は、13,000円+1,200円×3=16,600円が必要です。

慰謝料も併せて請求する場合は、「離婚のみ」の13,000円と慰謝料請求に応じた手数料を比較し、高い方を採用し、その上で附帯処分分を加算します。

たとえば、300万円の慰謝料請求(20,000円)を含む場合は、20,000円(慰謝料)+1,200円×3=23,600円の印紙代が必要になります。

手数料の詳細は、裁判所の手数料額早見表をご確認ください。

郵便切手代

離婚裁判では、裁判資料を当事者に郵送するための郵便料金をあらかじめ裁判所に支払う必要があります。

必要な郵便切手代は家庭裁判所によって金額は異なりますが、5,000円から6,000円程度が一般的です。

正確な金額や必要な切手の種類は、事前に申し立て先の家庭裁判所に確認しておくとよいでしょう。

弁護士費用

弁護士に依頼する場合、相談料や着手金、報酬金などの費用が発生します。各費用の目安とポイントは以下のとおりです。

項目 費用相場
相談料 0円~1万円(1時間あたり)
※無料相談の弁護士事務所もあり
着手金 0円~30万円
※着手金が無料の弁護士事務所もあり
報酬金 離婚成立:20万~30万円
慰謝料請求:獲得金額の10~20%
財産分与:獲得金額の10~20%
親権の獲得:10万~20万円
養育費の獲得:合意金額の2~5年分の10~20%
日当 1日あたり3~5万円
実費 都度変動

弁護士費用の内訳や金額は事務所ごとに異なるため、事前に確認することが大切です。

弁護士費用の詳細や注意点は、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

離婚裁判で役立つ証拠の種類と注意点

離婚裁判では、感情的な主張だけでは判断されません。主張を裏付ける客観的な証拠を示すことが、裁判を有利に進める鍵となります。

とくに、不倫・DV・モラハラなどが争点となる場合は、証拠の有無が離婚や慰謝料請求の成否を大きく左右します。

ただし、違法な手段で得た証拠は、裁判で使えない可能性があるうえ、逆に訴えられるリスクもあります。証拠の取り扱いや取得方法に不安がある場合は、あらかじめ弁護士に相談しておくとよいでしょう。

以下の表では、離婚裁判で有効とされる証拠の種類と、それぞれの証拠が持つ意味や有効性をまとめました。

証拠の種類 概要
映像・音声・写真 不倫・DV・モラハラの現場を記録した客観的証拠。第三者が撮影したものも有効。
メッセージ・手紙・メール 加害行為を示すやりとり。時系列で整理すると説得力が増す。
診断書 医師の診断により被害の程度を証明。慰謝料請求の根拠となる。
証言 目撃者や家族などの証言により被害の実態を補強できる。
日記・ブログ・SNSの投稿 継続的な被害状況を記録した一貫性のある情報源として有効。

それぞれ詳しく解説します。

映像・音声・写真

スマートフォンや録音・録画機器を使用して、不倫やDV、モラハラの現場を記録した映像や音声、写真は、裁判での強力な証拠となります。

たとえば、不倫相手との関係を示す写真、DVによる傷跡、モラハラの様子などが該当します。第三者や目撃者が撮影したものも有効で、客観的な証拠として評価されやすいです。

これらは、問題行為が実際に発生したことを裏付ける直接的な証拠となるため、裁判に大きな影響を与える可能性があります。

なお、相手の同意なく無理やり録音・撮影したり、プライバシーを侵害したりするような方法は違法となります。

メッセージ・手紙、メール

不倫関係やDV・モラハラを示すメッセージや手紙、メールなどは、離婚裁判で有力な証拠になり得ます。

たとえば、不倫の関係をうかがわせるメッセージや、DV・モラハラを示す脅迫・侮辱的な発言などが含まれているメールがあれば、相手の言動や関係性を具体的に証明する手がかりとなる可能性があります。

これらのやり取りは、時系列で整理することで、継続的な被害の有無や関係性の推移を裁判所に伝えるうえで有効です。

メッセージや手紙、メールなどは画面のスクリーンショットや印刷したコピー、転送メールなど保存形式は問いませんが、改ざんの疑いを持たれないようできるだけ原本に近い形で保存することが重要です。

なお、相手のスマートフォンやパソコンに無断でアクセスしたり、ロックを解除して盗み見したりする行為は、違法と判断される可能性があります。

診断書

DVやモラハラによる精神的、身体的な被害を受けた場合、医師による診断書はその影響を証明する有力な証拠になります。

診断書には、受傷した箇所や症状の程度、通院期間、精神的ダメージの有無などが記載されるため、慰謝料請求や離婚理由を主張する際の根拠として、裁判所で重視されやすい資料です。

証言

第三者の証言も、離婚訴訟において重要な役割を果たします。

とくに、DVやモラハラの現場を目撃していた人、被害者の変化に気づいていた友人や親族の証言は、当事者の主張を補強する客観的な証拠として評価される可能性があります。

客観的な事実が記載された日記・ブログ・SNSの投稿など

日々の出来事を記した日記やブログ、SNSの投稿なども、有効な証拠になり得ます。

これらは被害が長期間にわたって生じていたことや、当時の心理状態、加害者の言動パターンなどを記録した客観的な証拠として扱われます。

主観的に見える記録であっても、内容に一貫性や具体性があれば、裁判所に与える説得力は高まるでしょう。

離婚裁判で離婚が認められないケースとは?

離婚裁判で離婚が認められない主なケースは、以下の3つです。

  • 「法定離婚事由」に該当しない、または事情が軽微と判断された場合
  • 証拠が不十分な場合
  • 別居期間が短く、婚姻関係が破綻していると判断されない場合

「法定離婚事由」に該当しない、または事情が軽微と判断された場合

離婚裁判では、民法770条に定められた「法定離婚事由」のいずれかに該当する事情が必要です。

  • 不貞行為(浮気)
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • その他、婚姻を継続しがたい重大な事由

上記に該当しない場合、あるいは事実が一時的・軽微と判断された場合は、裁判所が離婚請求を棄却することがあります。

たとえば、一時的な夫婦げんかや性格の不一致だけでは、法的離婚事由とまでは認められないケースもあります。

証拠が不十分な場合

離婚裁判では、主張する内容を裏付けるだけの証拠が必要です。たとえば、不倫を理由に離婚や慰謝料を請求する場合、LINEのメッセージだけでは証拠として不十分とされるケースもあります。

写真や通話記録、宿泊履歴、診断書、録音データなど、より客観性の高い証拠を複数組み合わせて提出することで、裁判所に説得力をもって伝えることが可能です。

別居期間が短く、婚姻関係が破綻していると判断されない場合

離婚原因として「婚姻を継続し難い重大な事由」が挙げられている場合、別居期間が判断材料となるケースがあります。とくに双方に明確な非がない場合は「3年程度の別居」が一つの目安とされるケースがあります。

別居期間が数ヵ月程度であると、裁判所が「夫婦関係の修復可能性が残っている」と判断し、離婚請求が認められない可能性があるでしょう。

ただし、DVや不貞など明確な原因がある場合は、別居期間が短くても離婚が認められる可能性もあるため、状況に応じた証拠と主張の準備が大切です。

離婚裁判を有利に進めるなら弁護士に相談しよう

離婚裁判を有利に進めるためには、経験豊富な弁護士への相談が不可欠です。離婚訴訟は、単に夫婦間の問題を解決するだけでなく、財産分与、親権、養育費など、多くの重要な事項を決定しなければなりません。

このような複雑な手続きを自身だけで進めるのは困難です。専門的な知識と経験をもつ弁護士に依頼することをおすすめします。

離婚裁判を弁護士に依頼するメリット

弁護士に相談し、離婚裁判を依頼するメリットとは、以下の3つです。

  • 専門的なアドバイスにより裁判を有利に進められる
  • 裁判手続きの負担を軽減できる
  • 必要に応じて出廷を代理してもらえる

それぞれ詳しくみてみましょう。

専門的なアドバイスにより裁判を有利に進められる

経験豊富な弁護士は、離婚裁判におけるあらゆる局面で的確なアドバイスが可能です。

慰謝料、親権、不倫問題など、離婚に関連する複雑な問題について、専門的な知識をもとにした戦略を立てることができるため、自分の主張が裁判所により受け入れられやすくなるでしょう。

とくに慰謝料を請求する際は、弁護士に依頼すると証拠の提示や主張の整理が的確に行えます。そのため適切な証拠や主張が通りやすくなり、結果として増額に繋がる可能性があります。

裁判手続きの負担を軽減できる

離婚裁判では、訴状の作成や証拠の整理、提出書類の準備など、煩雑な手続きが多く発生します。弁護士に依頼すれば、こうした実務作業を任せることができ、精神的な負担を減らすことができます。

また、裁判全体の流れを把握し、必要な対応を都度サポートしてもらえるため、労力やストレスを軽減できる点もメリットです。とくに、感情的になりがちな離婚裁判では、冷静かつ客観的な視点からアドバイスを受けることが重要です。

必要に応じて出廷を代理してもらえる

弁護士に依頼すると、裁判所への出廷の多くを代理してもらうことが可能です。本人の出廷が求められる場面(尋問など)もありますが、それ以外の期日は弁護士のみで対応できることが一般的です。

仕事や家庭の事情で裁判所に行けない場合でも、無理なく手続きを進められるのは、メリットといえるでしょう。

離婚裁判が得意な弁護士を選ぶポイント

離婚裁判を成功へ導くためには、経験豊富で信頼できる弁護士を選ぶことが重要です。

費用を抑えるために弁護士を立てずに離婚裁判に臨んだり、法テラスなどを利用して弁護士に依頼したりすることも可能です。ただし。法テラスでは必ずしも離婚問題に強い弁護士を紹介されるわけではありません。

離婚裁判を有利かつスムーズに進めるには、離婚問題に精通した弁護士のサポートを受けることが効果的です。

ここでは、離婚裁判に強い弁護士を選ぶ際のポイントを4つ解説します。

  • 離婚裁判の取扱件数が多い
  • 有利なことだけでなく不利なことも解説してくれる
  • 料金形態がわかりやすい
  • 話しやすい・相性がよいと感じる

離婚裁判の取扱件数が多い

離婚裁判では、慰謝料や親権、不倫問題など、さまざまな争点が絡みます。

これらの複雑な問題に的確に対応するには、離婚裁判の取扱実績が豊富な弁護士を選ぶことが重要です。

経験豊富な弁護士は、過去の事例をもとに状況にあった適切なアドバイスや戦略を提案してくれます。また、裁判所での手続きや対応策にも精通しているため、スムーズで、より有利に裁判を進めることができます。

なお、以下のような方法で、取扱実績のある弁護士を探すことが可能です。

  • 「離婚裁判 弁護士 〇〇(地名)」などのキーワードで検索する
  • 弁護士や法律事務所の公式サイトで、取り扱い分野・件数・成功事例を確認する
  • 口コミ・評判サイトで実際の相談者の評価をチェックする

多くの弁護士事務所では、初回相談を無料または低価格で行っています。まずは実際に相談して、弁護士の対応や専門性を確認してみましょう。

有利なことだけでなく不利なことも解説してくれる

信頼できる弁護士は、良い情報だけでなく、不利な点についても正直に説明してくれます。

たとえば、請求している慰謝料の金額が裁判で認められにくい場合や、証拠が不十分な場合など、リスクを事前に知ることで冷静な判断がしやすくなります。

不利な点を知らないまま進めてしまうと、慰謝料が減額されたり、親権を獲得できなかったりといった思わぬ不利益を被る可能性があります。

適切な対応策を講じるためにも、メリットとデメリットをバランスよく伝えてくれる弁護士を選ぶことが大切です。

料金形態がわかりやすい

弁護士に依頼する際は、料金形態が明確であることが大切です。弁護士費用は内容や対応範囲によって大きく異なるため、あらかじめ全体の見積もりを把握しておくことが重要です。

初回相談料が無料か、成功報酬型か、固定料金かなど、料金体系を事前に確認し、後から予期せぬ費用が発生しないようにしましょう。

話しやすい・相性が良いと感じる

離婚裁判は精神的にもストレスが大きいため、弁護士とのコミュニケーションがスムーズに行えることが重要です。相談しやすく、信頼関係を築けるかどうかも、弁護士選びの大切なポイントといえるでしょう。

離婚裁判を有利に進めるには、紹介実績や費用だけでなく「この人に任せたい」と感じられる弁護士を選ぶことが大切です。

無料相談を実施している弁護士事務所も多いため、1ヵ所だけで決めず、複数の弁護士と面談して比較検討するのがおすすめです。

まとめ

離婚裁判は、調停が不成立となった場合の最終手段であり、訴状の提出から判決確定まで複数の手続きを経て進みます。不倫やDV、別居などの法定離婚事由をもとに、証拠や主張を整理し、裁判所に認めてもらうことが必要です。

ただし、手続きは複雑で、準備や対応に時間も労力もかかります。そのため、専門的な知識を持つ弁護士に相談を検討するとよいでしょう。

無料相談を実施している弁護士事務所も多いため、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。

離婚裁判に関するよくある質問

離婚裁判の相手が欠席している場合はどうなりますか?

相手方が離婚裁判の期日に出廷せず、答弁書の提出もない場合でも、裁判は原則として予定どおり進行します。

このようなケースでは、相手方が主張や反論をしなかったものとみなされ、原告の訴えをもとに「欠席判決」が言い渡される可能性があります。

ただし、欠席した側にも一定の期間内で異議申し立てや控訴を行う権利が残されています。

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更新日 : 2025年06月10日
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