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2024年10月現在

離婚裁判に出廷しないとどうなる?欠席しなければならない時の対処法も解説

離婚裁判に出廷しないとどうなる?欠席しなければならない時の対処法も解説

「離婚裁判の日程の通知が届いたけれど、仕事などで出廷できそうにない」「離婚裁判に出廷しない場合、どうなるのか気になる」といった方もいるでしょう。

離婚裁判の初回期日は、原告の希望に沿って日程が組まれます。さらに、被告の元に日程の通知が届くのは初回期日の約3週間前~1ヵ月前であるため、被告が都合をつけられず出廷できないケースもあります。

そのため、離婚裁判の初回期日に関しては、答弁書が提出されていれば、被告が欠席であっても判決にはあまり影響はありません。原告の主張への反論や被告の主張をまとめた答弁書が、初回期日の陳述の役割を担ってくれるためです。

なお、続行期日の日程は原告と被告双方の希望をすり合わせて決めるため、できるだけ出廷するのが望ましいです。欠席が続けば裁判官の心証を害するおそれもありますし、裁判において弁論しなければ、原告に寄った判決になる可能性もあります。

離婚裁判への出廷が難しい場合は、下記のような対処法を検討しましょう。

  • 遠方の裁判所であれば、移送を申し立てる
  • 初回期日であれば、答弁書を提出する
  • 仕事の都合などが欠席の理由であれば、弁護士に依頼する
  • 電話会議を提案する

「裁判所で自分の主張を伝えられるか不安」「平日の出廷はほぼ望めない」といった場合は、離婚問題に強い弁護士に依頼するのがおすすめです。弁護士は代理人となって出廷し、専門知識を活かした主張をしてくれるため、心強い味方となってくれます。慰謝料や養育費、財産分与などの離婚条件も有利に進めてくれるでしょう。

本記事では、離婚裁判に出廷しない場合の影響や、裁判を欠席しなければならない場合の対処法、相手が裁判を欠席した場合に覚えておくべきことを解説します。

【パターン別】離婚裁判に出廷しない場合どうなるのか

被告が離婚裁判に出廷しない場合、答弁書の提出の有無で裁判の流れが変わります。

答弁書とは、被告が訴状に対する回答や説明、事実の否認など自分の言い分を記載して裁判所に提出する書面を指します。答弁書が提出されていれば、被告が出廷していなくても裁判は続きます。答弁書を提出していなければ、原告の主張に反論がないとみなされ、原告の請求の通りに判決がくだされます。

なお、途中の欠席に関しては、原告の主張に対して反論や立証をきちんと行えば、相手の主張を退けることが可能です。

被告が裁判にまったく出廷しないかつ答弁書の提出がない場合、被告の主張なく裁判は進み、判決がくだることになるでしょう。判決が出れば婚姻費用や慰謝料、養育費、財産分与に関する強制執行も可能となります。ただし、被告が請求異議の訴えを行えば、強制執行の可否が問われることとなります。

答弁書が提出されている場合:答弁書を被告の主張として裁判が行われる

被告が出廷していなくても裁判は行われます。初回期日までに被告より答弁書が提出されていれば、この書面が被告の主張として扱われます。

答弁書は、原告の主張に対する回答や反論などを記載する書面です。裁判所は原告の主張と立証、答弁書を照らし合わせて総合的に判断します。とはいえ、初回期日で判決がくだることはほとんどありません。

初回期日は訴状による原告の主張と、答弁書による被告の主張の確認、次回の裁判の日程調整が行われる程度です。そのため、被告が出廷しない場合も、答弁書が提出されていれば裁判は続きます。

初回期日に被告が欠席するのは珍しくありません。初回期日の決定は期日の1ヵ月~1ヵ月半前、裁判所から被告の元に通知が届くのは期日の約3週間前~1ヵ月前になることが多いといわれています。

初回期日は原告の希望で決まり、被告の予定は配慮されていません。被告が欠席しても致し方ないとみなされるため、初回期日の欠席が被告にとって大きくマイナスになることはありません。ただし、被告の欠席が続けば裁判官の心証を損なうおそれがあり、判決に影響を及ぼす場合もあります。

なお、裁判に遅刻した場合も被告が不利になることはほとんどありません。裁判所は原告と被告のどちらの主張も公平に耳を傾けます。被告の主張に正当性があれば、被告が勝訴する可能性もあるでしょう。

答弁書が提出されていない場合:被告に争う意思がないとみなされ原告の請求が通る

初回期日に被告が出廷せず、答弁書も提出されていない場合は、民事訴訟法第159条の「擬制自白」が成立し、原告と争う意思がなく、原告側の主張を認めたとみなされます。そのため、被告が欠席のまま、原告の請求通りの判決が言い渡されるでしょう。

なお、擬制自白の成立には下記のような条件があります。

  • 答弁書を提出していないこと
  • 被告が裁判に出廷していないこと
  • 被告への送達が公示送達ではないこと

公示送達とは、裁判所や区役所の掲示板への掲示でこちらの意思を伝える制度で、被告の居場所がわからない場合などに利用されます。公示送達の場合、被告が訴状に目を通しているとは限らないため、擬制自白は成立しません。

ただし、公示送達の手続きから2週間が経過すると被告へ送達されたことになり、裁判が進みます。被告が欠席し続ければ、最終的には原告の請求通りの判決がくだされるでしょう。

途中で欠席する場合:被告の主張や立証に正当性があれば判決に影響はない

答弁書の提出後の続行期日を欠席したとしても、敗訴になるとは限りません。裁判所は被告に対して出廷を促し、裁判を続けられるように配慮することが多いとされます。出欠よりもそれぞれの主張や立証を重視するため、被告の主張や立証がきちんとしたものであれば、相手の主張を排斥することも可能でしょう。

ただし、出廷を促しても被告が欠席し続ける、もしくは出席するものの被告が弁論せずに退廷するといった場合は、民事訴訟法第244条の「終局判決」となり、原告の請求通りに判決がくだされる可能性があります。

まったく裁判に出廷しない場合:原告の請求が通る可能性が高い

被告が出廷しなくても裁判は行われ、さらに続く裁判に被告がまったく出廷しない場合はそのまま判決がくだります。答弁書の提出がないのであれば、原告の主張通りの判決となるでしょう。

判決がくだされれば被告への強制執行も可能となり、原告は婚姻費用や慰謝料、養育費、財産分与などを受け取れます。

ただし、被告が強制執行が不当だと主張して「請求異議の訴え」を起こした場合は、執行の可否が判断されることになります。

離婚裁判を欠席しなければいけない場合の対処法

離婚裁判を欠席しなければならない場合の対処法は下記の通りです。

  • 遠方の裁判所で出廷できない場合は、移送を申し立てる
  • 初回期日に出廷できない場合は、答弁書を提出する
  • 仕事の都合などで出廷の目途が立たない場合は、弁護士に依頼する
  • 電話会議を提案する

なお、欠席によって判決が出てしまった場合は、控訴によって不服申し立てを行うことも可能です。出廷できない場合の対処法と、控訴について詳しく解説していきます。

移送を申し立てる

裁判所の場所が問題で出廷が難しい場合は、現在の裁判所から他の裁判所へと担当を移す「移送」の申し立てを行うと良いでしょう。

下記のような場合は民事訴訟法第17条の「遅滞を避ける等のための移送」に該当し、移送を認めてもらえる可能性があります。

  • 当事者の一方が遠方で期日への出頭が難しく、裁判の遅延が予想される場合
  • 当事者を平等に扱うために必要であると裁判所が判断した場合

移送の申し立ては、答弁書の提出前に行う必要があります。また、移送は裁判所の判断により決定されるので、必ずしも申し立てが認められるわけではありません。

初回の期日であれば擬制陳述を利用する

初回期日に出廷できない場合は、民事訴訟法第158条の「訴状等の陳述の擬制」を利用しましょう。つまり、答弁書の提出を陳述とし、裁判を進めていきます。

離婚裁判における擬制陳述が認められるのは、初回期日の答弁書のみとなるため、以降の続行期日は出廷する必要があります。なお、続行期日の日程は原告と被告双方の都合が考慮されます。きちんと出廷できるように、スケジュールを調整しましょう。

弁護士をたてる

「仕事の都合などで裁判への出席が難しい」「裁判で配偶者となるべく顔を合わせたくない」といった場合は、弁護士に依頼することも検討しましょう。弁護士に依頼すれば、代理人として裁判に出廷してもらえるため、欠席として扱われません。

裁判官が当事者から話を聞く必要があると判断した場合や、和解にて離婚を成立させる場合などは出廷する必要がありますが、基本は弁護士が対応してくれるため、負担は軽減されるでしょう。弁護士費用は発生するものの、法律に秀でた専門家が代理人として対応するため、自分が出廷するよりも安心ともいえます。

弁護士と一口にいっても専門とする分野は異なるため、離婚問題に詳しい弁護士への依頼が重要です。離婚問題を専門とする弁護士であれば、慰謝料や養育費、財産分与などの離婚条件が有利になるように進めてくれるでしょう。

「ツナグ離婚弁護士」では、離婚問題の解決の実績が豊富な弁護士を紹介しています。地域別に弁護士を探すことが可能なため、弁護士への依頼を検討されている方はぜひご利用ください。

離婚裁判の費用や、弁護士費用については下記の記事で詳しく紹介しています。

電話会議を提案する

離婚裁判所の当事者が遠方にいる場合は、民事訴訟法の「民事訴訟規則第96条」「第170条」「第176条」に従って、電話回線を利用して裁判に参加することが認められる場合もあります。

出廷が難しい場合は、電話会議で参加することを相談してみましょう。裁判所が認めれば、電話にて裁判に参加ができます。

判決を覆したいなら控訴する

裁判に出廷できず、判決がくだされてしまった場合も、判決より2週間以内であれば不服申し立てをする「控訴」が可能です。高等裁判所宛の控訴状を離婚裁判を行った家庭裁判所に提出し、さらに50日以内に控訴理由書を提出することで不服申し立てをします。

日本では同じ事件について3回まで争える「三審制」を採用しているため、控訴審にも不服がある場合は、上告もしくは上告受理申し立てにて最高裁判所で争います。

なお、最初の判決より2週間以内に控訴しなければ判決は確定し、覆りません。

相手が裁判を欠席した場合に覚えておくべきこと

相手が裁判に出廷しない場合、一人相撲のようで不安になるかもしれません。しかし、相手の欠席はこちらに有利に働く場合もあるため、こちら側から出席を促す必要はありません。

また、相手が出廷しなくても、裁判では「法定離婚事由」の証明が必要です。離婚を求めるに至った理由、事実関係の立証、慰謝料を請求するための証拠など必要な準備を整えておきましょう。

相手が欠席しても連絡は入れなくていい

相手が出廷していなくても裁判は進みます。相手が出廷しない場合は、自分の主張が通る可能性が高まるため、わざわざこちら側から相手に連絡する必要はありません。相手への出廷要請は裁判所が行うため、自分から相手へはアクションを起こさず、裁判を進めていきましょう。

離婚裁判の流れや準備については、下記の記事を参考にしてみてください。

相手が欠席しても「法定離婚事由」の説明は必要

相手が出廷しないからといって、そのまま原告の請求が認められるわけではありません。離婚裁判では、民法770条「裁判上の離婚」に定められている「法定離婚事由」に該当しなければ、離婚が認められません。

下記の法定離婚事由を裁判官に証明することで、離婚を認めてもらいます。

  • 配偶者に不貞な行為があったとき
  • 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  • 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

なお、相手の不貞行為、DVやモラハラによる慰謝料請求を行う場合は、その事実を示す証拠も必要となります。

相手が出廷しない場合は反論がない分、有利に働く可能性はありますが、必ずしも原告の主張や立証が認められるとは限りません。また、被告が途中から出廷し、被告の主張や反論が認められれば、これまで有利と思っていた裁判が覆るおそれもあります。

自分の請求を認めてもらうためには、法定離婚事由の提示や裁判官を納得させる証拠が必要となります。裁判を有利に進めたい場合は、離婚問題に強い弁護士を頼りましょう。

法定離婚事由、不貞行為やモラハラの証拠については、下記記事でも詳しく解説しています。

まとめ

離婚裁判の初回期日は答弁書の提出さえしていれば、その書面が被告の陳述として扱われるため、欠席してもあまり影響はありません。答弁書の提出をせずに出廷しない場合は、原告の主張に反論がないとみなされるため、被告欠席のまま判決がくだされます。ただし、判決後2週間以内であれば控訴が可能です。

どうしても裁判に出廷できない場合は、移送の申し立てや電話会議、弁護士を代理人とするなどの対処を検討しましょう。離婚問題に詳しい弁護士であれば、代理人を務めてくれるだけでなく裁判を有利に進めてくれます。万が一、控訴などで争いが長引く場合も適切な対処をしてくれるでしょう。

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更新日 : 2024年10月09日
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