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2024年10月現在

離婚裁判の期間はどれくらい?早く終わらせる方法や長引く理由を解説

離婚裁判 期間

夫婦での話し合いや離婚調停でも離婚が成立しないときは、離婚裁判に移行します。離婚裁判にかかる平均期間は半年~2年程度と、中長期間かかることが想定されます。

離婚裁判なら必ず離婚に関する決着がつくとはいえ、長期的なスケジュールを見ておかなければなりません。慰謝料や親権、財産分与に関する争点などがあると、裁判は長期化しやすい傾向があります。

離婚裁判の長期化を避けるには、以下のような事前準備や戦略策定を行い、離婚裁判の短縮化を狙うのが効果的です。

  • 主張は早い段階で出す
  • 証拠があれば早い段階で揃えて出す
  • 離婚裁判中にしてはいけないことを知っておく
  • 和解も検討する
  • 離婚問題に強い弁護士に早めに相談する

離婚裁判の短縮化に加えて、離婚の成功確率の上昇や離婚裁判の負担軽減を求めるなら、離婚裁判に強い弁護士に依頼することが一番おすすめです。離婚以外にも慰謝料、親権、財産分与などの争点についても相談できるので、権利や金銭面で有利な条件での離婚を期待できます。

本記事では、離婚裁判にかかる平均期間、離婚裁判のメリット・デメリット、離婚裁判のおおまかな流れ、離婚裁判が長期化する理由と短縮する方法などを解説します。

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南陽輔 弁護士
監修
南 陽輔(弁護士)

離婚裁判の平均期間は半年~2年

離婚裁判にかかる平均期間は、約半年~2年間です。離婚裁判の前段階である離婚調停と合わせると、離婚の決着が着くまで非常に長い期間がかかる可能性があります。

離婚調停、離婚裁判それぞれの平均期間は以下のとおりです。

  • 離婚調停:平均7.4ヶ月
  • 離婚裁判:平均14.7ヶ月

以下では、裁判所の公開資料にある平均審理期間(裁判所が訴えを受理してから判決・和解などの決着までにかかった期間の平均)を基に、離婚裁判関係でかかる期間を解説します。

離婚裁判前に行う離婚調停の成立期間は平均7.4ヶ月

最高裁判所「家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等」によると、夫婦関係調整調停事件(離婚、親権、養育費、面会交流、財産分与、年金分割などについての調停)の平均審理期間は7.4ヶ月です。

離婚調停とは、裁判官や調停委員などの第三者を入れて、家庭裁判所で離婚の話し合いをする法的手続きです。また、「離婚裁判を起こす前には、まず離婚調停で当事者同士の話し合いを行うべき」という「調停前置主義」に則り、離婚裁判を提起する前に必ず行うべき手続きとなっています。

離婚調停をせずにいきなり離婚裁判を行うことは、原則としてできないと認識しておきましょう。

離婚調停は1ヶ月に1回ほどのペースで開かれ、1回の調停で2時間〜3時間ほど話し合いを行います。夫婦の合意に至れば、その期日をもって調停は終了です。離婚条件が記載された「調停調書」に基づき、離婚が成立します。

双方の合意が早ければ、第1回期日の時点で離婚成立です。しかし争点が多かったり話し合いがこじれたりすると、第2回、第3回と期日が設定されて調停期間が長くなります。

なお調停が取り下げられた案件の場合、令和4年の平均期間は3.9ヶ月でした。

離婚調停の途中であっても、原則として申立人はいつでも取り下げられることになっています。取り下げする際に理由は必要ありません。離婚調停の取り下げを検討すべきケースは次の通りです。

  • 離婚事由立証のための証拠が不十分だった
  • 相手の主張に説得力があり、反論するのが難しい
  • 調停委員の心証が相手に傾いている

取り下げた後でも、同様の事由で再度調停を申し立てることは可能です。しかし、不当な理由で申立と取り下げを繰り返していると判断されると、その後の離婚調停が不利になる可能性が高いです。

また、家事事件手続法第271条に基づき、調停自体が認められないケースもあります。

(調停をしない場合の事件の終了)
第二百七十一条 調停委員会は、事件が性質上調停を行うのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをしたと認めるときは、調停をしないものとして、家事調停事件を終了させることができる。
e-Gov法令検索 家事事件手続法

調停が認められないケースとは、「離婚調停が不成立になったのに、すぐに新しい調停を申し立てる」「調停申立と取り下げを繰り返し、明らかに嫌がらせ目的で行っている」「申立人本人が出席しない」といったケースが挙げられます。

そもそも離婚調停を取り下げると、取り下げた調停の進行次第では家事事件手続法上の「調停前置主義」を満たせず、次の離婚裁判の訴訟ができない可能性があります。

離婚問題の早期解決を目指すなら、離婚調停の時点でしっかりと対応することが大切です。

参考:裁判所「家庭裁判所における 家事事件及び人事訴訟事件の 概況及び実情等

離婚裁判の判決までの期間は平均14.7ヶ月

最高裁判所「家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等」によると、令和4年度の離婚裁判の平均審理期間(親権・財産分与も一緒に争ったとき含む)は、14.7ヶ月です。

離婚裁判の判決までの期間における、平均期日回数や平均期日間隔(次回期日までの月間隔)は次の通りです。

  離婚 親権争いあり 財産分与の争いあり
平均審理期間(月) 14.7 14.8 17.8
平均期日回数 6.5 6.6 8.2
平均期日間隔(月) 2.3 2.2 2.2

離婚裁判は判決までの平均期間は1年+数ヶ月程度、期日は6~7回です。離婚と財産分与と同時に争っていると、裁判が長期化する傾向にあるようです。

離婚裁判は、離婚調停の話し合いが不成立で終わった場合に、夫婦のうちどちらかが提訴することにより開始されます。

同調査にて過去10年の平均審理期間を見てみると、平成25年は11.7ヶ月でその後は右肩上がりに期間が増加しています。令和4年の14.7ヶ月という数値は、過去10年の中で最高値です。

最高裁判所は「少子化や核家族化などの影響により、子どもに関する紛争が先鋭化している」と分析しています。

なお、離婚裁判の終局区分(どのように決着したのか)の割合は、判決37.3%、和解37.4%、取り下げ22.2%、その他3%でした。判決と同じくらいの割合で、裁判上の和解離婚が成立しています。

参考:裁判所「家庭裁判所における 家事事件及び人事訴訟事件の 概況及び実情等

離婚裁判の最短期間は約1ヶ月・最長期間は2年以上

離婚裁判の裁判期間は最短で約1ヶ月、長期化すると2年以上にも及ぶことがあります。

令和4年における、離婚裁判の審理期間の内訳は次の通りです。

離婚裁判の審理期間 割合
6ヶ月以内 20.8%
6ヶ月超~1年位内 28.0%
1年超~2年以内 38.0%
2年超~3年以内 10.1%
3年超~5年以内 3.0%
5年超 0.1%

最短で離婚裁判が終わるのは被告が第1回口頭弁論を欠席したケースです。口頭弁論とは、法廷でお互いの意見を主張し合うことです。

自分の主張を記した答弁書も提出せずに第1回口頭弁論を欠席すると、争う意思がないと見なされ、原告側の主張が全面的に認められます。争う事由がなくなるので、離婚裁判は早期終了します。

また判決を待たずにお互いが和解した場合にも、離婚裁判が早期に決着する傾向にあります。

2年以上に長期化するケースとしては、養育費、慰謝料、財産分与など金銭的な事情が絡んでいたり、親権や面会交流など子どもに関することが争点となっていたりする場合です。

一度判決が下ったものの、敗訴した側が納得できずに控訴すると裁判が長期化します。控訴は、裁判の判決に納得できなかった際に新たな判決を求める不服申し立てのことです。

離婚裁判の平均期間は約1年と数ヶ月ですが、上記のような事情によって期間は前後します。

離婚裁判に発展するケースは2.2%

離婚裁判は、原則として調停前置主義を満たした離婚調停の決着がなければ提起できません。

厚生労働省「令和4年度 離婚に関する統計の概況」によると、令和2年に離婚裁判を経て離婚した夫婦は、全体の2.2%しか存在しません。

離婚の種類 割合
協議離婚 90.7%
調停離婚 8.3%
審判離婚 1.2%
裁判離婚(和解) 1.3%
裁判離婚(判決) 0.9%

平成28年~令和2年の間における裁判離婚の割合は、2.2~2.6%で推移しています。

離婚裁判は長期化する傾向がある一方で、全体を見ると実はそもそも離婚裁判にまでもつれ込むケースは少ないのです。

参考:厚生労働省「令和4年度 離婚に関する統計の概況

離婚裁判の流れ

離婚裁判を提起して判決まで争う場合、以下の流れに沿って進みます。

  1. 訴状を提出
  2. 第1回口頭弁論期日の通知・被告が答弁書を提出
  3. 第1回口頭弁論を実施
  4. 第2回以降の口頭弁論等の審理
  5. 必要に応じて本人尋問・証人尋問を実施
  6. 和解するなら和解を締結
  7. 判決
  8. 判決に納得が行かないときは控訴

それぞれの詳細を見ていきましょう。

1.訴状を提出

まずは家庭裁判所に離婚裁判を申し立てるために、訴状を始めとする必要書類を提出します。裁判の申し立てに必要な書類は以下のとおりです。

  • 訴状(2部)
  • 離婚調停不成立調書
  • 夫婦の戸籍謄本(原本とコピー)
  • 年金分割のための情報通知書(原本とコピー)
  • 証拠となる書類やデータのコピー
  • 収入印紙(1万3,000円以上)や郵便切手代(6,000円程度)

訴状とは、「原告・被告や原告・被告代理人の情報」「離婚裁判における争点や請求内容」などを記した書面のことです。決まったフォーマットはないので自分でも作成できますが、不安な場合は弁護士にも作成を依頼できます。

年金分割が裁判の争点となる場合、年金事務所で年金分割のための情報通知書を発行してもらいましょう。

必要書類がすべて揃ったら、家庭裁判所へ提出します。原則として、夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所が提出先です。

ただし、離婚調停を取り扱った家庭裁判所と異なるときは、現在は管轄外でも離婚調停を取り扱った家庭裁判所で行われることがあります(自庁処理)。とはいえ、自庁処理が行われることはほとんどありません。

なお別居中の場合、夫婦のいずれかが住む地域の管轄区域内の家庭裁判所に書類を提出すれば問題ありません。

2.第1回口頭弁論期日の通知・被告が答弁書を提出

家庭裁判所に訴訟が認められると、原告と被告に第1回口頭弁論期日の通知が届きます。

第1回口頭弁論期日は、訴状を提出してから約1ヶ月後に設定されるケースが多いです。

被告側は訴状の内容を確認のうえ、自分の主張や反論をまとめた答弁書を裁判所に提出します。答弁書の提出期限は、第1回口頭弁論期日の〜2週間前です。

なお被告側は期限までの答弁書作成が難しい場合、裁判で争う意思があることだけを記載して裁判所に提出すれば問題ないとされています。「追って認否する」といった文言が記載されているケースが多いです。

第2回以降の口頭弁論で具体的な討論書を提出するのはとくに珍しいことではなく、これをもって裁判に勝訴すると判断するのは早計でしょう。

3.第1回口頭弁論を実施

第1回期日がきたら、実際に離婚についての審理が行われます。最初に実施されるのは、口頭弁論です。

口頭弁論では、公開法廷で原告が証拠を用いて自分の主張を行い、被告がそれに対する反論の意見を述べます。

一般的に、第1回口頭弁論で判決が下ることはありません。離婚裁判の第1回口頭弁論は、訴状と答弁書の陳述のみで終わることが多いです。その後は、口頭弁論ないしは弁論準備手続に移行し、争点の整理が行われます。

口頭弁論ないしは弁論準備手続は1ヶ月に1回程度のペースで行われ、証拠の提出や双方の主張などから、徐々に争点を整理していきます。

裁判所が争点の整理ができたと判断したタイミングで弁論準備手続は終了となり、次の段階に進みます。

4.第2回以降の口頭弁論等の審理

第2回以降の期日では、口頭弁論の続きが行われます。必要に応じて、弁論準備手続(法廷以外の準備室等において行われる必ずしも公開を必要としない手続)なども実施します。

口頭弁論・弁論準備手続にて争点の整理や証拠の掲示が行われた後に行うのが、本人尋問や証人尋問といった証拠調べです。証拠調べも、原則として第2回以降の期日で行われます。

5.必要に応じて本人尋問・証人尋問を実施

証拠調べの一環として、本人尋問や証人尋問などが行われます。

本人尋問とは、離婚裁判の当事者(離婚裁判の場合は夫婦)が弁護士や裁判官などの質問に答える手続きのことです。

まずは双方の弁護士が原告に質問を行い、最後に裁判官が質問を行います。その後、被告にも同様の順番で質問が行われるという流れで尋問が進みます。

証人がいる場合に行われるのが、弁護士や裁判官が証人へ質問を行う証人尋問です。

本人尋問や証人尋問で回答した内容は、裁判官が判決を下すための判断材料の1つです。事前に弁護士と打ち合わせをし、どのように回答するのかを決めておきましょう。

6.和解するなら和解を締結

離婚裁判を始めとする民事裁判では、判決を待たずに和解という形で決着をつける方法があります。

和解が成立するのは、「裁判官が掲示した和解案を受け入れる」「原告・被告が同意のうえで裁判官に和解の旨を申し入れる」といったケースです。和解が成立したら和解書が作成され、和解書の内容に基づいた離婚を行います。

離婚の早期解決を目指したいときや、判決では難しい柔軟な解決方法を取りたいときは、和解による離婚成立を目指すのがよいでしょう。

なお和解は、離婚訴訟におけるどのタイミングでも行うことが可能です。

7.判決

審理が終了し、和解の成立もなければ判決期日に離婚や付随処分についての判決が下されます。離婚が認められれば認容、認められなければ棄却の判決になります。

判決期日は、最後の口頭弁論が終わってから約1ヶ月〜2ヶ月後に指定されることが多いです。

判決が下されて内容に不服がなければ、判決文に基づいた離婚が成立します。

8.判決に納得が行かないときは控訴

もしも判決に不服がある場合、判決を受けてから14日以内であれば控訴が可能です。控訴すると高等裁判所に場所を移したうえで、あらためて審理が行われます。

ただし、控訴すると訴訟費用や弁護士費用などが余分に発生します。そのため、勝てる見込みがあるかどうかを弁護士と話し合ったうえで控訴しましょう。

控訴審の判決にも納得がいかないときは、最高裁判所での審理を求める上告が可能です。

とはいえ、上告するには「憲法解釈に誤りがある」「法律に定められた重大な訴訟手続の違反事由がある」といった理由が必要です。

離婚裁判において上告理由が見つかるケースはほとんどないので、実質は控訴審で決着が付くものと考えておきましょう。

離婚裁判の詳しい流れについては、「離婚裁判の流れは?事前準備や判決後の流れも詳しく解説」の記事にて詳しく解説しています。

離婚裁判の期間が長期化するケース

以下のケースに該当する場合、離婚の期間が長期化する可能性が高くなります。

  • 離婚以外にも争点がある場合
  • 証拠が不十分な場合
  • 相手が弁護士を雇わず手続きが進まない場合
  • 相手が円満を主張するといった反論が多い
  • 控訴や上告になる場合

それぞれ見ていきましょう。

離婚以外にも争点がある場合

離婚裁判においては、離婚成立以外にも離婚に附随するさまざまな争点があるのが一般的です。

争点が多いと法廷で審理内容が増えたり状況が複雑化したりするので、離婚裁判の期間が長期化する要因となります。争点が多いほど、内容が複雑なほど審理は長引くでしょう。

離婚以外の争点として多いのは、「慰謝料」「親権・養育費などの子ども関係」「財産分与」の3つです。

慰謝料

不貞行為や精神的負担に対する慰謝料請求が争点となっている場合、不貞の事実や負担の大きさなどを裁判で立証する必要があります。

肉体関係や暴力関係の証拠収集・精査、不倫相手を含めた相手側の主張への反論、請求する金額の妥当性の評価などを行うため、裁判が長期化する要因となります。

親権・養育費などの子ども関係

夫婦に子どもがいる場合、離婚時に決めなければならないことが増えるため、離婚が長期化する傾向があります。子どもに関する争点は以下の通りです。

争点 内容
親権 子どもを養育・監護する権利を夫婦のうちどちらが持つのか
養育費 子どもの養育・監護に必要なお金を月にいくら、いつまで支払うのか
面会交流 子どもと離れて暮らす側がどの程度の頻度、どのような方法で子どもと面会するのか

例えば親権が争点となっている場合、家庭裁判所の調査官により、生活状況や子どもへの聴取などの調査が入ることがあります。

親権についての争点が整理されるのは、親権関係の調査がすべて完了した後です。そのため、必然的に離婚裁判の期間も長くなります。

養育費に関しては、双方の主張や証拠、収入資料などに基づいて金額や期間が決定します。

面会交流について争うときは、「原則として面会交流は拒否ができない」という点を念頭に置いておきましょう。非親権者が面会交流を希望した場合なら、実施する方向で面会の頻度や方法などを決めていきます。

ただし、非親権者が子どもに暴力を振るっていたり、子どもが面会を拒否したりした場合、面会交流は認められません。

財産分与

財産分与とは、夫婦が共同で築き上げた財産を離婚の際に分配する制度のことです。

原則として、財産分与の割合は2分の1と決められています。一方が専業主婦(主夫)やパート勤務などで収入格差があったとしても、財産は公平に分けられます。

なぜなら財産を築くうえで夫婦の貢献度は同等であると考えられているからです。

ただし、一方の浪費で財産が著しく減ってしまった場合や、一方の特殊な能力によって大半の財産を築いた場合などは、2分の1のルールの例外となります。

財産分与は預貯金だけでなく、不動産や年金、保険、退職金なども対象です。争点となる財産が多くなるほど、離婚裁判も長期化する可能性が高いでしょう。

とくに相手方が財産の任意の開示に合意しない場合は財産調査を行う必要があるため、裁判がさらに長期化する傾向にあります。

「家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等」においても、財産分与の平均審理期間・平均期日回数が増加している傾向が見られました。

同調査では、「資料収集をめぐって審理が難航しがちである」「離婚原因について、必ずしも事案の結論には結び付かない周辺事情についてまで主張の応酬が繰り返されがちである」などが、財産分与の審理が長期化する原因だと指摘されています。

証拠が不十分な場合

離婚裁判で掲示する証拠が不十分な場合、裁判が長引く可能性が高くなります。長期化する具体的な理由は次の通りです。

  • 間接的な証拠ばかりだと、相手からの反論が増える
  • 離婚事由に関する裏付けが難しくなり、裁判官の判断が長引く
  • 追加の証拠集めや準備に時間がかかる

逆に言えば、離婚や慰謝料の理由が一発で分かる証拠があると、離婚裁判は短期決着しやすいと言えるでしょう。

相手が弁護士を雇わず手続きが進まない場合

相手が弁護士を雇わずに離婚裁判に挑んだ場合、期日までの手続きが終わらなかったり、手続き関係の不備の修正が発生したりなどが原因で、終わるはずの離婚裁判が長引いてしまう可能性があります。

とはいえ、相手が弁護士を雇っていない場合、こちら側にとって裁判を有利に進められるケースが想定できます。

相手が円満を主張するといった反論が多い場合

離婚裁判で、相手側が「自分たち夫婦は円満だ」といった多くの主張をしてきた場合、裁判が長期化する可能性があります。

離婚問題は、はっきりした証拠がない状況で審理を進めることも珍しくありません。証拠が乏しいときは、主張や状況を基にした裁判官の心証が裁判の結果を大きく左右します。

つまり、相手が虚偽の円満を主張したとしても、裁判官が相手の主張を優先して「この夫婦は普段は円満で離婚事由がない」と判断してしまうケースも想定されます。そうならないためにも、相手が主張する円満な関係について、全力で否定しなければならないのです。

明確な証拠もなく円満な関係やそのほかの反論を否定するには、どうしても時間がかかります。裁判官としても一方の主張を完全に無視するわけにはいかないので、よほど荒唐無稽な内容でない限りは、審理期間を伸ばして1つひとつ審理します。

控訴や上告になる場合

離婚裁判について控訴が行われると、第一審に加えて控訴審が行われます。

控訴審の審理は第一審の弁論等を基にして進むため、第一審ほど時間や労力はかかりません。しかしそれでも控訴審の手続き、控訴審の期日の設定、控訴審の審理など、判決・和解確定までの時間がかかります。

ほとんどないケースとはいえ、仮に上告が認められるとさらに離婚の決着までの期間が伸びてしまいます。

離婚裁判の期間を短縮させる方法

離婚裁判の期間は、こちら側の準備や戦略次第で短縮化できる可能性があります。離婚裁判の期間を短縮する方法は次の通りです。

  • 主張と根拠は早めに掲示し裁判の争点をはっきりさせる
  • 証拠を揃えて早めに判決を下せるようにする
  • 和解も検討する
  • 離婚問題に強い弁護士に早めに依頼する

それぞれを見ていきましょう。

主張と根拠は早めに掲示し裁判の争点をはっきりさせる

離婚裁判における主張や根拠は早めに掲示し、裁判の争点を早々にはっきりさせましょう。早めに争点を明確にするメリットは次の通りです。

  • 証拠集めやその他の準備の方向性が定まり、動きやすくなる
  • 後から別の主張をすると新しい争点が生まれ、離婚裁判の長期化の原因になる
  • 第1回口頭弁論から争点がはっきりして整理が進められるので、審理がスムーズになる

主張を早い段階で出すためには、自分自身の意向を明確化させることが重要です。弁護士に対応を依頼しているときは、弁護士と一緒に主張を整理したうえで裁判に臨みましょう。

証拠を揃えて早めに判決を下せるようにする

相手の不法行為や親権の不適格性などを証明できる、裁判の争点に関する証拠は早めに揃えておきましょう。はっきりした証拠があれば、裁判官も証拠を基にすぐ判決を出せるようになります。

裁判は、あくまでも事実のみに基づいて判決が下されます。証拠の提出を渋る必要はありません。

証拠の提出が遅れると、相手に時間の猶予ができる分、反論の余地を与えてしまう可能性があります。証拠の提出が遅くなるほど裁判の回数も多くなり、結果的に心身の負担も大きくなってしまいます。

決定的な証拠を持っている場合は早い段階で提出し、早期解決を図りましょう。証拠を早めに提出するコツは、「何が決定的な証拠になるのか知っておく」「証拠収集と整理は早めに進めておく」の2点です。

何が決定的な証拠になるのか知っておく

相手の不法行為を離婚事由として主張する場合、決定的な証拠が必要になります。不法行為ごとに決定的な証拠の一例を以下の表にまとめました。

不法行為 証拠
不貞行為 ・性行為やホテルに出入りする写真・映像
・性的関係があったと思われる不倫相手とのメッセージやり取り
・配偶者本人が不貞行為を認めた発言の音声
モラハラ ・モラハラの音声データやメッセージやり取り
・心療内科や精神科の診断書
・第三者からの証言
DV ・暴力の映像や音声
・暴力によってできた傷の写真
・病院の診断書
悪意の遺棄 ・相手から生活費を受け取っていなかったことがわかる資料(通帳や家計簿など)
・別居に至る前後の会話の録音やメッセージやり取り

不貞行為やモラハラ、DVなどがあった場合、写真や音声データ、映像などの証拠が有力になります。相手に悟られないように注意しながら証拠を集めましょう。

悪意の遺棄とは、正当な理由もなく夫婦の同居・扶助の義務を放棄することです。たとえば生活費を渡していなかったり、一方的に別居したりなどのケースが当てはまります。

主張を裏付ける証拠を提出できれば、離婚裁判の早期解決を目指せるでしょう。

証拠収集と整理は早めに進めておく

離婚裁判の第1回期日に決定的な証拠を出すためには、証拠収集と整理は早めに進めておきましょう。

とくに不貞行為や暴力などの証拠は、立証が難しい分、時間をかけて証拠集めをしなければなりません。証拠集めが遅れてしまうと、証拠の消失や改ざんなどが発生するリスクがあります。

訴訟を起こすときはあらかじめ証拠集めと整理を終わらせて、確実な勝算を得てからにすることを推奨します。

和解も検討する

離婚裁判の途中であっても、当事者同士が話し合って和解すれば裁判を終わらせられます。

判決による離婚と同じくらいの割合で和解での離婚が成立しており、和解自体は珍しいことではありません。

また離婚裁判が長引きそうな場合は、裁判所の方から和解勧告をしてくるケースもあります。和解勧告とは、裁判官が和解案を提示して和解を促すことです。

双方が和解案に合意したり、変更や条件を加えることで納得したりすれば和解離婚が成立となり、裁判も終了します。

裁判所の方から和解勧告を受けた際には、一度内容を検討してみましょう。和解することには、判決だと難しい柔軟な離婚条件を設定できるメリットもあります。

離婚裁判は弁護士への依頼がおすすめ!

離婚裁判の早期終了を目指すなら、弁護士へ対応を依頼するのがおすすめです。弁護士に依頼すれば、離婚裁判の期間を短縮するうえでさまざまなメリットがあります。

一方で、高額の弁護士費用がかかるのがデメリットです。以下では離婚裁判について、離婚に強い弁護士に依頼するメリット・デメリットを解説します。

離婚に強い弁護士に依頼するメリット

離婚に強い弁護士に依頼することには、次のメリットが存在します。

  • 専門知識や実務能力で、的確にサポートしてくれる
  • 裁判手続きの代行や裁判への同席によって、離婚裁判をスムーズに進められる
  • 証拠集めのサポートやその他アドバイスのおかげで、迅速な準備ができる

弁護士の専門知識と協力によって離婚裁判がスムーズに進めば、有利な条件での離婚が早期に成立する可能性が高くなります。

とはいえ、一口に弁護士といっても、得意分野は弁護士によって異なるものです。離婚問題に特化した弁護士もいれば、借金問題を専門とする弁護士も存在します。

離婚問題に詳しい弁護士であれば、離婚に関する法律や裁判の進め方を熟知しているため、最後まで円滑に進められるでしょう。

弁護士に依頼するときに確認すべきデメリット

弁護士に依頼するときのデメリットは、高額となる弁護士費用の存在です。とくに離婚以外にも慰謝料、親権、財産分与などについても相談するときは、100万円以上の費用がかかる可能性があります。

弁護士費用を抑えたいときは、複数の弁護士事務所へ相見積もりを行い、料金体系やコストパフォーマンスを比較することが効果的です。

また分割払いや後払いに対応している弁護士事務所なら、一括で資金を支払う必要がなくなります。収入・資産状況によっては、法テラスの弁護士費用立替制度が利用可能です。

【相場も解説】離婚裁判が長期化しても費用は変わらない

「離婚裁判が長期化したら、訴訟費用や弁護士費用も高くなるのでは」と、不安に思う人も多いかと思われます。結論から言えば、離婚裁判が長引いても弁護士費用は原則として変わりません。

訴訟費用の相場は約2万円~です。弁護士費用ほど金額が高くなく、長期化によって金額が変更となるものでもありません。

また弁護士費用は期間の長さではなく、着手時の支払いや離婚裁判の結果によって決まるケースがほとんどです。離婚裁判について依頼したときは、約60万~100万円が相場となっています。

以下では、訴訟にて裁判所に支払う費用や、離婚裁判の弁護士費用の相場を紹介します。

訴訟にかかる費用は約2万円~

裁判を起こす際には、裁判所や証人に費用を支払う必要があります。訴訟にかかる費用は以下のとおりです。

費用項目 金額
収入印紙代 13,000円~
郵便切手代 約6,000円
戸籍謄本手数料 450円(1通)
日当 証人:最大7,650円
通訳人:最大8,050円
旅費 最大7,800円または最大8,700円

収入印紙代は裁判所に支払う手数料のことです。13,000円が基本の収入印紙代で、裁判の内容によって金額が上乗せされます。

郵便切手代は裁判所によって差があるのですが、基本的には6,000円前後です。

戸籍謄本手数料は、戸籍謄本を発行する際に必要な手数料です。全国一律で1通450円と決まっています。

日当や旅費は、証人や通訳人などに支払う費用のことです。どちらも上限額が決められており、旅費は地域によって上限額が異なります。

弁護士に依頼する費用は約60万~100万円

弁護士に離婚裁判を依頼する際の費用は、合計で60万〜100万円程度かかるケースが多いです。費用の内訳は以下のとおりです。

費用項目 金額
相談料 10,000円(1時間)
着手金 約20万~50万円
成功報酬 約30万円
日当・実費 裁判の期間・場所による

弁護士事務所と裁判所の距離が離れているときは、長期化する分だけ日当や交通費などがかさむ可能性があります。

また、弁護士に依頼する範囲が変わる場合は追加費用が必要です。例えば離婚調停から離婚裁判に移行するケースや、控訴するケースなどが挙げられます。

弁護士事務所ごとに料金体系が異なるので、依頼前には必ず確認しておきましょう。相談の段階で、必ず見積もりをもらうことを推奨します。

弁護士費用の詳細については、以下の「離婚裁判の費用はいくら?相場や内訳、安く抑える方法を解説」の記事にて詳しく解説しています。

まとめ

離婚裁判にかかる平均期間は14.7ヶ月ですが、裁判の内容や状況によっては短くなったり長期化したりします。

離婚裁判が短く終わるケースは、相手方が口頭弁論を欠席したり和解案に合意したりした場合です。

一方、離婚に関する争点が多いと裁判が長期化する傾向にあります。とくに子どものことや財産分与のことが争点になっていると、調査や立証に時間を要することから裁判が長期化しやすいです。

離婚裁判を少しでも早く終わらせるためには、離婚問題に強い弁護士に依頼することをおすすめします。

離婚裁判を検討している方は、経験豊富な弁護士への依頼を検討してみてください。

【Q&A】離婚裁判に関するよくある質問

離婚裁判で離婚できる確率は?

最高裁判所が開示しているデータによると、離婚裁判によって離婚できる確率は約88%です。

令和4年度のデータを参照したところ、離婚に関する請求が3,030件ありました。そのうち、認容が2,673件、棄却が349件、却下が7件です。

確率を計算すると、「(2673件÷3,030件)×100」で88.2%です。

その他の年のデータを参照してみても、離婚裁判が認容された割合は87%~90%を占めています。

約9割の離婚請求が認められていることになるため、離婚裁判で離婚が成立する可能性は高いといえるでしょう。

参照:人事訴訟事件の概況-令和4年1月~12月-

離婚裁判後にすぐに再婚できる?

2024年5月現在の法律では、民法改正によって再婚禁止期間が廃止され、「女性の再婚が100日間禁止」の決まりがなくなりました。男女とも、離婚裁判後にすぐ再婚できます。

女性が離婚後すぐに再婚すると、子どもが生まれた際にどちらの子かわからなくなることから、このような法律が設けられていました。

現代はDNA鑑定などの科学技術が発展したため、女性の再婚禁止期間の法律は2024年4月に撤廃されています。

婚姻費用分担請求もするべき?

離婚裁判が長期化しそうな場合、経済的負担を軽減するために婚姻費用分担請求をしておきましょう。

婚姻費用分担請求とは、相手に婚姻費用を支払うよう請求することです。婚姻費用には衣食住の費用や医療費、養育費など、生活に必要な費用全般が含まれています。

夫婦が別居している場合、収入の低い方が高い方に対して婚姻費用の分担請求が可能です。

夫婦には生活扶助の義務があるため、離婚するまでの期間は婚姻費用を受け取り続けることができます。

離婚裁判が不利になってしまう行動は?

離婚裁判中に以下の行動をしてしまうと、離婚裁判が不利になる可能性が高くなります。

  • 相手側への悪口や行き過ぎた批判
  • 自己都合ばかりの主張や矛盾した発言
  • 配偶者居以外との交際・性行為
  • 子どもの連れ去り

離婚裁判中に引っ越すことはできる?

離婚裁判中であっても、遠方への引っ越しが可能です。

引っ越しをすると裁判所に直接出向くことが難しくなりますが、電話会議システムを利用すれば電話で裁判を進められます。

電話会議システムは、固定電話やスマートフォンなどから電話をかけることにより、複数人で通話できるツールのことです。

遠方に引っ越す予定のある方でも、電話会議システムにより通常どおり裁判を進められるため、安心してください。

離婚裁判に発展する割合はどれくらいですか?

離婚裁判は、原則として調停前置主義を満たした離婚調停の決着がなければ提起できません。

厚生労働省「令和4年度 離婚に関する統計の概況」によると、令和2年に離婚裁判を経て離婚した夫婦は、全体の2.2%しか存在しません。

離婚の種類 割合
協議離婚 90.7%
調停離婚 8.3%
審判離婚 1.2%
裁判離婚(和解) 1.3%
裁判離婚(判決) 0.9%

平成28年~令和2年の間における裁判離婚の割合は、2.2~2.6%で推移しています。

離婚裁判は長期化する傾向がある一方で、全体を見ると実はそもそも離婚裁判にまでもつれ込むケースは少ないのです。

参考:厚生労働省「令和4年度 離婚に関する統計の概況

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更新日 : 2024年10月30日
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