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離婚は別居期間が何年あれば成立する?年数目安や生活費の問題まで徹底解説

離婚は別居期間が何年あれば成立する?年数目安や生活費の問題まで徹底解説

「離婚するには、何年別居すればいい?」「別居が長ければ、離婚できる?」

別居を経たうえでの離婚を考えている場合、このような疑問を抱くこともあるでしょう。

離婚の方法には、夫婦の話し合いによる「協議離婚」、家庭裁判所で調停委員を挟んだ話し合いを行う「調停離婚」、裁判で離婚を求める「裁判離婚」の3つの方法がありますが、離婚の可否に別居期間が影響するのは「裁判離婚」を選んだ場合です。

裁判で離婚を認めてもらうためには、法定離婚事由と呼ばれる離婚を求める理由が必要です。別居を法定離婚事由として提示したい場合は、「夫婦関係が破綻している」と示すだけの期間が必要なため、5年程度の別居期間を要するといわれています。

とはいえ、5年はあくまでも目安であり、離婚までの別居期間は個々の状況で異なります。下記のデータでは、「1年未満の別居」で離婚する夫婦が多いことがわかります。

別居期間 1年未満 1~5年未満 5年以上
全体平均 82.8% 11.7% 5.5%
協議離婚 86.2% 8.7% 5.1%
裁判離婚 56.8% 34.1% 9.1%

※令和2年(2020年)時点のデータ
出典:厚生労働省「令和4年度離婚に関する統計

裁判では別居期間以外の要素も考慮しながら判決をくだすため、別居期間が短くても離婚が認められることがあるのです。

例えば、配偶者が不貞行為やDVなどを行った有責配偶者だった場合は、それらを理由に離婚を請求できます。有責配偶者であることを証明できれば、別居期間が短い、もしくは別居していなくても離婚を認められる可能性があるでしょう。

一方、下記のようなケースでは、離婚裁判を起こしても離婚が認められにくいため、別居期間がより長くなる傾向です。

  • 性格の不一致以外に特に理由や証拠がない
  • ​​

  • 相手が離婚を拒否している
  • 婚姻期間が長い
  • 離婚を請求する側が有責配偶者である
  • 子どもが小さい

「夫婦関係が破綻している」と示すために、5年程度の別居期間が必要となるでしょう。なお、有責配偶者からの離婚請求は本来は認められないため、離婚成立までの別居期間は10年程度といわれています。

離婚に必要な別居期間は状況によって前後するため、早期の離婚を目指したいのであれば、離婚に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、離婚を有利に進めるアドバイスはもちろん、代理人として交渉にもあたってくれるでしょう。

本記事では、別居期間の目安や離婚までの別居期間が短くなるポイント、あるいは長くなるポイントについて詳しく紹介します。

また、不利な離婚としないための別居における注意点についても解説しますので、別居による離婚で失敗しないためにも、最後まで目を通してみてください。

夫婦の話し合い(協議や調停)で同意さえできれば別居期間に関係なく離婚できる

冒頭でも触れた通り、協議離婚や調停離婚など夫婦の話し合いで離婚に合意さえできれば、別居期間に関係なく離婚できるといえます。

夫婦が離婚する方法には、話し合いによる協議離婚、家庭裁判所で裁判官と調停員の立ち合いのもとで話し合う調停離婚、裁判を起こして決着をつける裁判離婚とがあります。

【離婚方法】

  • 協議離婚:夫婦が話し合って離婚に合意する方法
  • 調停離婚:家庭裁判所で裁判官と調停委員立ち合いのもと夫婦で話し合い離婚に合意する方法
  • 裁判離婚:協議でも調停でも夫婦の話し合いがまとまらなかった場合に、裁判で離婚についての判決を出してもらうこと。

このうち、協議離婚や調停離婚の場合は、夫婦間で話し合いがまとまりさえすれば離婚が可能です。そのため、かならずしも別居の必要はありません。協議離婚や調停離婚の場合は、別居の期間に関係なく、夫婦間で離婚に同意さえできれば離婚できます。

ただし、調停離婚では調停委員を挟んだ話し合いを複数回行うため、離婚成立まで6ヵ月~1年程度要することが考えられます。

調停離婚については、下記の記事も参考にしてみてください。

別居期間が何年あれば裁判で離婚は成立するか

離婚に別居期間が影響するのは、協議離婚や調停離婚における夫婦間の話し合いでも離婚に合意することができずに裁判に至った場合です。

裁判で離婚を認めてもらうためには、「不貞行為」「悪意の遺棄」「3年以上の生死不明」「回復の見込みのない強度の精神病」「婚姻を継続しがたい重大な事由」といった法定離婚事由が必要となります

別居を離婚事由としたい場合は、5年を目安とした別居期間が必要とされています。

とはいえ、裁判官は別居期間だけをみて判断するわけではありません。実際、別居1年未満の夫婦の半数以上が離婚を成立させています。

裁判で離婚が認められる別居期間の目安は5年程度とされている

裁判を起こして離婚を認められるのに必要な別居期間の目安は5年程度といわれています。

実際に離婚裁判を起こす際には下記のような法定離婚事由が必要です。

【離婚裁判を起こすために必要な法定離婚事由】

法定離婚事由 内容
1.配偶者に不貞行為があったとき。 配偶者が不倫や浮気をして、配偶者以外の異性と性的関係を結んだ場合
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。 配偶者が必要な生活費を渡さない、一方的に家を出てしまうなど、夫婦の同居・協力・扶助義務を果たさない場合
3.配偶者の生死が3年以上不明のとき。 配偶者との音信や消息が途絶えてから3年が経過して生死の確認ができない場合
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。 配偶者に精神疾患があり、共同生活が営めない程度に症状が重い、あるいは回復の見込みがない場合
5.その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき。 性格の不一致、暴力・侮辱・虐待(DV)、性生活の不満など、夫婦関係が事実上破綻しており、関係回復が不可能と判断される場合

参考: e-Gov法令検索「民法770条1項

裁判を起こすのに1~4の理由がないときに、5の「婚姻を継続しがたい重大な事由」として、別居状態であることを挙げることがあります。

婚姻を継続しがたい重大な事由とは、夫婦関係が事実上破綻しており関係の修復が不可能と判断される場合のことです。例えば、性格の不一致や暴力・侮辱・虐待(DV)、性生活への不満などが挙げられます。

婚姻を継続しがたい重大な事由として認めてもらうためには、状況が客観的に見て夫婦関係が修復できないほどに重大であると見なされることが重要です。実際には理由1つで離婚が認められるわけではなく、周辺の事情も踏まえて判断されるといえます。

別居状態であることを婚姻を継続しがたい重大な事由とする場合も、夫婦関係が破綻していると認められるためには、子どもの存在や婚姻期間などさまざまな事情を考慮して総合的に判断されます。

具体的にどのくらいの別居で夫婦関係が破綻していると判断されるかは、単純には決まらないものの、5年が一つの目安とされています。その理由として、1996年に、法制審議会が答申した民法改正案の中で、この離婚事由に「夫婦が5年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき」という文言を追加する案があったことが挙げられます。

参考:法務省「民法の一部を改正する法律案要綱

改正案は現在の法令には反映されていませんが、この改正案で掲げられた5年が離婚成立のための別居期間の一つの目安になっています。

夫婦関係の破綻を証明する条件や、離婚裁判の期間については、下記の記事を参考にしてみてください。

実際は別居1年未満でも半数以上が離婚している

裁判で離婚するために必要な別居期間の目安は5年とお伝えしましたが、実際は別居1年未満でも半数以上が離婚しています。

厚生労働省の統計によると、実際に別居を経て離婚した人のうち、別居1年未満だった人は全体の82.8%と圧倒的多数です。続いて1~5年未満が11.7%、5年以上が5.5%となっています

別居して離婚する人のほとんどが、1年足らずの別居で離婚に至っていることがわかります。

別居期間 1年未満 1~5年未満 5年以上
全体平均 82.8% 11.7% 5.5%
協議離婚 86.2% 8.7% 5.1%
裁判離婚 56.8% 34.1% 9.1%

※令和2年(2020年)時点のデータ
出典:厚生労働省「令和4年度離婚に関する統計

協議離婚と裁判離婚のケースを比較すると、やはり協議離婚の方が「別居期間が1年未満」で離婚成立している人の割合が高いといえます。

とはいえ、裁判離婚においても、半数以上の夫婦が「別居期間が1年未満」に離婚しています。裁判では別居期間以外の要素も考慮し、総合的に判決をくだすためです。

別居期間が短くても離婚できるケース

離婚までの別居期間については、できるだけ短くしたいと思う人も多いのではないでしょうか。

別居期間が短くても離婚できるケースとしては次の2ケースが考えられます。

  • 相手が離婚の話合いに応じてくれる
  • 相手が有責配偶者である

上記のような場合は「別居期間が1年未満」であっても離婚が認められる可能性があります。それぞれのケースについて詳しく解説します。

相手が離婚の話合いに応じてくれる

先述した通り、協議離婚や調停離婚など夫婦で離婚の話し合いが進み同意に至るような場合は別居期間はゼロ、あるいは短くて済むといえます。

相手が有責配偶者である

相手が有責配偶者の場合は、別居期間が1年未満であっても、裁判で離婚が認められる可能性があります。

有責配偶者とは、婚姻関係の破綻を招いた方の配偶者を指します。具体的には、不貞行為やDV、モラハラといった行為です。これらの行為は法定離婚事由に該当するため、その行為を元に離婚訴訟を起こすことができます。

そのため、法定離婚事由とするために別居をしたり、別居を長引かせたりする必要はありません。離婚までの別居期間はゼロでも問題なく、別居したとしても短く済みます

ただし、裁判において不貞行為やDVの事実を証明する必要があります。不貞行為であれば、配偶者と不倫相手がラブホテルに出入りする際の写真、ベッドの上での2ショットなどが証拠となります。

DVであれば、医療機関で発行された診断書や暴力に関する音声や動画などが証拠となるでしょう。

有責配偶者について、不貞行為やDV、モラハラの証拠については下記の記事も参考にしてみてください。

離婚までの別居期間が長引くケース

次に、離婚までの別居期間が長引くケースについて解説します。離婚までの別居期間が長引く具体的なケースとしては次の5つが考えられます。

  • 性格の不一致以外に特に理由がない
  • 相手が離婚を拒否している
  • 婚姻期間が長い
  • 離婚を請求する側が有責配偶者である
  • 子どもが小さい

詳しい内容は次の通りです。

性格の不一致以外に特に理由がない

性格の不一致以外に特に離婚の理由がない場合は、離婚までの別居期間が長引く傾向があります。

なぜなら、性格の不一致だけが離婚原因である場合、それだけでは、離婚が成立する理由になりにくいからです。話し合いが長引く可能性があるほか、裁判を起こそうとしても、性格の不一致のみでは裁判を起こす理由にはなりません。

そのため、法定離婚事由として、別居期間が長く夫婦関係が破綻していることを掲げる方法が考えられます。

前述で解説した通り、別居期間を裁判の法定離婚事由として認めてもらうには相応の長い別居期間が必要となります。婚姻期間などによっても前後しますが、5年程度の別居期間が必要と考えておきましょう。

性格の不一致、価値観の違いなどを理由に離婚する方法については、下記の記事で紹介しています。

相手が離婚を拒否している

相手が離婚を拒否している場合も、離婚までの別居期間は長くなるといえます。

相手が離婚を拒否している場合、協議や調停では離婚の話合いの決着がつかないため、裁判を起こすことになります。相手が有責配偶者であるなどの法定離婚事由があれば別ですが、法定離婚事由として、別居を挙げるのであれば、別居期間は長くなる傾向です。

先述した通り、裁判を起こす際に法定離婚事由と認められる別居期間の目安は5年です。さらに、相手が離婚を拒否している場合は、話合いそのものが長引く可能性が高いため、別居期間がより長引くといえるでしょう。

配偶者が離婚に応じない理由については、下記の記事でも詳しく解説しています。

婚姻期間が長い

婚姻期間が長い場合も、離婚までの別居期間は長引く傾向です。

裁判を起こす際の法定離婚事由として、長い期間別居状態であることを挙げる場合、別居期間が長いかどうかは、複数の事情を勘案して判断されます。

なかでも特に、これまでの婚姻期間(同居期間)との比較で、別居期間の長短の判断を行うケースがよくあります。

例えば、婚姻期間25年に対し別居期間2年だと、一時的な別居であり夫婦関係が修復不能なほど破綻しているわけではないと判断されてしまうケースも少なくありません。

婚姻期間が長い中で、別居の長さを法定離婚事由と認めてもらうには、別居期間も相応に長くなり5年程度は必要といえます。

離婚を請求する側が有責配偶者である

離婚を請求する側が有責配偶者である場合も、離婚までの別居期間は長くなります。

そもそも、自分が有責配偶者の場合には、離婚請求はできないのが基本です。なぜなら、夫婦関係を破綻させる不貞行為を行った当人が離婚請求をすることは、社会正義に照らして許容されることではないと、解釈されているからです。

実際には、有責配偶者でも離婚請求が認められるケースは多いものの、過去の判例などから別居期間10年ほどは必要とみなされています。

なお、過去の有責配偶者からの離婚請求の判例に見られる別居期間は下記の通りです。

【有責配偶者からの離婚請求が認められた判例】
判例 離婚成立までの別居期間や内容
東京高裁平成14年6月26日 別居期間6年で離婚成立。
夫(有責配偶者)51歳、妻50歳、同居期間22年、子どもは成人、妻は日本語教師、夫が妻にマンションを譲渡し、ローン完済を約束したことなどから離婚が認められた。
最一小判昭和62年3月25日 別居10年3ヶ月で離婚成立。
夫36歳、妻(有責配偶者)38歳、同居期間10ヶ月、子どもなしといった事情が勘案されて離婚が認められた。
最高裁平成元年9月7日 別居期間15年半で離婚成立。
夫(有責配偶者)61歳、妻53歳、同居期間5年、
別居中、妻は夫のマンションに居住していたことや、別居後も夫は妻に生活費として婚姻費用を支払っていたことなどで離婚が認められた。

判例の通り、実際の離婚までの別居期間は、10年を超える場合や、10年に満たない場合もあります。反対に、上記の判例以外のケースで別居期間が10年以上であっても、離婚が認められなかったという判例も多くあります。

離婚を請求する側が有責配偶者の場合は、離婚が認められる要件は厳しくなり、別居期間は長くなる傾向です。

子どもが小さい

夫婦間の子どもが小さい場合も、別居期間は長くなるといえるでしょう。

夫婦間に経済的・社会的に自立をしていない子どもがいる場合は、親権や養育費の問題など話し合うことが多くなります。子どもがいない場合に比べて、争点が多い分、話合いが長引きます。

別居しながら、離婚の協議・調停や裁判を進めている場合は、子どもの件で話し合う分、離婚成立まで長くかかるため、別居期間も長くなる傾向です。

別居で不利にならないために気を付けたいポイント10

離婚に向けて別居する際には、離婚裁判で不利にならないように別居することが大切です。

以下では、離婚に向けた別居で注意したいポイントについて紹介します。

  • 配偶者の同意を得ないまま別居を始めない
  • 子どもを連れ去られないようにする
  • 配偶者以外に恋人を作らない
  • 離婚事由になる証拠を早めに集める
  • お互いの財産を把握しておく
  • 別居中は住民票を異動しておく
  • 家庭内別居は婚姻関係の破綻とは見なされにくい
  • 単身赴任は別居期間には含まれない
  • 生活費は配偶者に請求できる
  • 生活費が足りない場合に利用できる制度

上記の点について、知らないままでいると、離婚裁判で不利になったり、別居生活で損をしたりすることもあるため、ぜひ目を通してみてください。

詳しくは次の通りです。

配偶者の同意を得ないまま別居を始めない

別居をする際には、配偶者の同意を得ないまま別居を始めないようにしましょう。

なぜなら、夫婦には、同居して協力、扶助しあう義務が民法で定められているからです。相手の同意を得ないまま別居を始めると、同居義務に違反したことになります。

同居義務違反は、裁判をする際に必要となる法定離婚事由の「悪意の遺棄」に該当すると捉えられる可能性があります。

悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦間の義務を履行しないことです。悪意の遺棄を行ったと判断されると、自分が有責配偶者となり、離婚請求ができなくなったり、慰謝料を請求できなくなったりします。

また、別居する際に相手の同意を得ていないと、別居中の婚姻費用が請求しにくいといった不都合も生じます。婚姻費用とは夫婦の収入の低い方が高い方に請求できる別居中の生活費です。

このため、別居する際には、相手に話して同意を得てから別居するようにしましょう。

ただし、暴力を受けている、子どもが虐待を受けているなどと危険な状態にある場合は、正統な理由のある別居となるため、相手の同意を得ずに別居しても問題はありません。

正当な理由のない場合は、裁判で不利にならないように相手の同意を得ることが大切です。

子どもを連れ去られないようにする

子どもを連れて別居している場合は、配偶者に子どもを連れ去られないように気を付けましょう。離れて暮らす配偶者が、親権を得たいあまりに、子どもを連れ去ることは少なくありません。

万が一、子どもを連れ去られてしまった場合には、直接連れ戻すことはせずに、家庭裁判所に「子の監護者の指定審判」と「子の引渡し審判」を申し立てましょう。子の監護者の指定審判とは、夫と妻のどちらが子どもを世話するのにふさわしいかを家庭裁判所に判断してもらうことです。子の引き渡し審判とは、子どもの監護者との指定を受けた人に、子どもが引き渡されるよう家庭裁判所が命ずるものです。

なお、子どもに差し迫った危険がある場合は、これに加えて、審判前の保全処分の申立てを行います。それにより、家庭裁判所が、仮に子どもを申立人に引き渡すように命ずる処分(保全処分)を行います。

これらの手続きを踏まえずに、子どもを連れ戻すと、自分の方が「違法な連れ去りをした」と判断されてしまい、親権を得るのに不利に働くこともあるため、注意しましょう。

まずは、別居中に子どもを連れ去られないように気を配り、もし連れ去られた場合には、上記のような所定の手続きを取って取り戻すことが大切です。

子どもの連れ去りについては、下記記事でも詳しく解説しています。

配偶者以外に恋人を作らない

離婚前の別居の状況においては、配偶者以外に恋人を作らないことが大切です。離婚が成立するまでは、婚姻関係にあるため、配偶者以外の異性と肉体関係を持つと、不貞行為と見なされます。

不貞行為と判断されると、離婚請求ができなくなったり、あるいは、慰謝料の請求をされてしまったりする可能性があります。

離婚において不利な状況に陥らないためにも、離婚までの別居期間中は、配偶者以外に恋人を作らないことが得策です。

離婚事由になる証拠を早めに集める

相手の浮気や家庭内暴力や子どもへの虐待などを、法的離婚事由とする場合には、その証拠を早めに集めるようにしましょう。

不貞行為やDVなどの行為を離婚事由として裁判をおこなうためには、証拠の提出が必要となります。証拠が整えば、別居期間が長くなるのを待たなくても、訴訟は起こせるため、早めに集めるのがよいでしょう。

不倫の証拠としては、例えば、不倫関係がわかるようなメール、SNSのやり取り、ホテルに一緒に入る写真などがあります。

DVや虐待の証拠としては、暴力を振るわれている様子を録画あるいは録音したデータ、診断書、けがの写真といったものが有効です。

これらの証拠は、慰謝料請求にも必要となるため、しっかりと集めておきましょう。

お互いの財産を把握しておく

離婚に向けて準備を進めるのであれば、お互いの財産も把握しておくようにしましょう。

離婚をする際には財産分与を行いますが、適正に財産分与をするためにも、お互いにどのような財産をどのくらい持っているかをしっかりと把握しておくことが大切です。

離婚が現実的になると、財産分与を警戒して収入や財産を隠すケースもあるため、できれば別居前、同居している間に相手の財産を調べた方が確認しやすいといえます。

相手の財産を調べきれない場合には、弁護士や弁護士会照会を通じて相手の財産状況を確認したり、裁判所を通じて情報開示を求める調停嘱託で確認したりする方法もあります。

離婚時の財産分与の対象範囲については、下記の記事を参考にしてみてください。

別居中は住民票を移しておく

別居中に、住民票を別居先の住所に移しておくようにしましょう。住民票を移しておくと、別居していることの証明として使えます。

また、もし子どもを連れて別居している場合には、住民票を移すことで転校や転園手続きが可能となります。自分宛ての公的な書類を受けとるためにも住民票を移しておくことは大切です。

もし、DVなどの理由での別居で、新たな住所を配偶者に知られたくないといった場合には、住民票の手続きをする自治体の窓口で相談し、閲覧制限をかけてもらいましょう。

家庭内別居は婚姻関係の破綻とは見なされにくい

通常の別居ではなく、家庭内別居でも裁判離婚ができるのかどうか気になっている人は多いでしょう。

結論をいうと、家庭内別居は長いからといって、裁判を起こす法定離婚事由の「婚姻関係が破綻している」とは認められにくいといえます。

「別居期間が長くて婚姻関係が破綻している」という場合には、通常は物理的な別居状態のことを想定しているからです。

とはいえ、家庭内別居であることが、裁判で全く考慮されないわけではありません。同じ家にいるものの食事や寝室も別々で、生活費の分担もない、まったく顔も合わせないなどの完全別居に近い場合は「婚姻関係が破綻している」ことを証明する事柄のひとつとして扱われることがあります。

単身赴任は別居期間には含まれない

単身赴任期間が別居期間に含まれるかどうか気になっている人も多いでしょう。

単身赴任と別居は、夫婦が別々に暮らしているという点で似ていますが、離婚の裁判においてはまったく別物です。単身赴任は仕事によるもののため、別居期間には含まれません。

単身赴任の期間自体が法定離婚事由になることはないものの、単身赴任中の浮気・不倫などの不貞行為が法定離婚事由となって離婚に至ることはあります。

生活費は配偶者に請求できる

夫婦である間は、お互いを扶養する義務があるため、別居している間も、収入の低い配偶者は、収入の高い配偶者に、生活費を請求することができます。

これを婚姻費用といい、婚姻費用には、衣食住の費用、医療費、未成年の子の養育費、教育費、交際費などの生活に必要な費用が含まれます。

婚姻費用の金額や支払いのタイミングなどは夫婦の話合いで決めますが、決まらない場合や決めた金額を支払ってもらえない場合は、婚姻費用分担請求調停の申し立てができます。

調停を経て、支払金額を決め、支払いを請求できます。なおDVなどで、話合いができない場合は、話合いを経ずにいきなり調停申し立てをしてもよいとされています。

生活費が足りない場合に利用できる制度

別居している間に生活費や子どもの学費が足りないといったことも出てくるかもしれません。そうしたときに使える制度としては以下のものがあります。

【生活費が足りない場合に利用できる制度】
制度 内容
児童手当 中学生までの児童を養う人に支給される手当。夫婦が別居中の場合は、児童と同居している方に支給される。別居先に住民票を移していれば、その自治体の福祉課などで申請可能。
児童扶養手当 離婚した後、18歳までの子どもを養育する父か母に対し、支給される手当。通常は離婚後に受け取るが、配偶者からの暴力で「裁判所からの保護命令」が出されている場合は、離婚前でも受け取れる。別居先に住民票を移している場合、その自治体の窓口で申請可能。
生活保護 世帯収入だけでは国が定める最低生活費に満たない場合に、不足額を保護費として支給されるもの。別居中に働けない、著しく収入が少ない場合に受給できる。別居先に住民票を移している場合は、自治体の窓口で申請可能。

上記制度の利用に際しては、住民票を別居先に移し、住民票のある自治体の窓口で申請を行います。

別居期間の独自判断は危険!専門家の意見を聞くことがおすすめ

別居期間が何年あれば離婚できるかどうかは、離婚手段のほか離婚理由や、子どもがいるかどうかなどの個々の事情などによって異なります。

自分が離婚するのに必要な別居期間について、独自で判断するのは難しいといえるでしょう。そのため、別居を経て離婚したいと考えている場合には、離婚に詳しい弁護士に相談することがおすすめです。

離婚に際しては、財産分与、親権、養育費、慰謝料など話し合うことは多くあります。弁護士に相談することで、これらの話合いを進めるのもスムーズで、早期離婚を目指すことができます。

弁護士の選び方や、無料で相談する窓口については、下記の記事も参考にしてみてください。

まとめ

別居を経て離婚する場合、どのくらいの期間別居すれば離婚できるかといった、明確な基準はありません。しかし、実際に別居して離婚した人の別居期間としては、1年未満が約8割と圧倒的多数です。

協議・調停など夫婦間での話し合いで離婚が進められる場合には、別居は特に必要ないため、別居期間は短くなる傾向です。また相手が不貞行為を行ったなど有責配偶者の場合も別居の必要がなく、離婚での別居期間は短くなるでしょう。

別居が長くなる場合は、別居を婚姻を継続しがたい重大な事由の1つとして離婚裁判を起こす場合です。その場合、別居期間の目安は5年となります。

また離婚に向けて別居する場合は、離婚に不利にならないような別居とすることが大切です。例えば、相手の同意を得ないまま別居をしたり、離婚前に配偶者以外の恋人を作ったりすることがないようにしましょう。

離婚までどのくらい別居が必要そうか気になる場合や、早期離婚を目指している場合には、離婚に詳しい弁護士などの専門家に相談することがおすすめです。

別居を必要とする離婚は決して簡単な離婚とはいえません。弁護士の手を借りることで、少しでもスムーズに離婚を進めることができるでしょう。

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更新日 : 2024年10月09日
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