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2025年06月現在

妻や夫の借金を理由に離婚したい!返済義務や離婚後に気をつけたいポイント

妻・夫 借金 離婚

夫や妻の借金が発覚したことをきっかけに、離婚を考えるケースも少なくありません。

結論からいえば、協議離婚や調停離婚であれば、夫婦の合意があれば離婚は可能です。

一方、裁判で離婚するには、以下のいずれかに該当する「法定離婚事由」が必要です。

離婚事由 内容
不貞行為 配偶者が浮気・不倫など、配偶者以外と性的関係を持った場合
悪意の遺棄 正当な理由なく生活費を渡さない、家を出て行ったなどの放置行為
3年以上の生死不明 配偶者の生死が3年以上不明な場合
強度の精神病 重度の精神病にかかり、回復の見込みがなく夫婦としての共同生活を継続することが著しく困難な場合
その他婚姻を継続し難い重大な事由 DV、ギャンブル・浪費による借金、生活費を入れないなど深刻な事情

配偶者の借金は、法定離婚事由に明記されているわけではありません。そのため、借金のみを理由に裁判で離婚を認めてもらうのは、状況によっては困難なこともあります。

ただし、以下のようなケースでは、離婚が認められる可能性があります。

  • ギャンブルによって多額の借金を抱えている
  • 借金返済のために家庭の資産を無断で処分した
  • 不倫相手に貢ぐために借金をしている

また、基本的には、借金をした本人に返済義務がありますが、以下のようなケースでは、離婚後ももう一方の配偶者が返済義務を負う可能性があります。

  • 共有名義や連帯債務で住宅ローンを組んでいる場合
  • 借金の目的が家族・夫婦の生活維持のためだった場合
  • 自分名義のクレジットカードや家族カードで配偶者が借金をしていた場合
  • 自分が借金の保証人になっていた場合

なお、夫婦関係に問題がない場合は、離婚を急がず債務整理などで借金問題を解決するという選択肢もあります。

本記事では、借金が原因で離婚できるのか、離婚後に返済義務が発生するのかを状況別に解説します。返済義務が生じるケースや離婚後の注意点についても具体的に紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

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夫・妻の借金を理由に離婚はできる?

配偶者の借金を理由に離婚できるのか、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

結論からいえば、協議離婚や離婚調停で双方が合意すれば離婚は可能です。ただし、借金問題が法定離婚事由に該当しなければ、裁判で離婚が認められるのは困難です。

ここでは、借金を理由に離婚できるかどうかを状況別に解説します。

離婚の原因が夫・妻の借金のみの場合は双方が合意すれば協議離婚できる

配偶者の借金が原因であっても、夫婦の双方が合意すれば協議離婚を成立させることは可能です。

協議離婚では、法定の離婚理由は求められないため、借金による将来の不安や信頼関係の崩壊など、感情的な理由でも合意があれば離婚できます。

ただし、協議離婚には話し合いによる合意が必要となるため、夫婦間で意思疎通が難しい状態では手続きが進まない可能性もあります。

借金問題をきっかけに離婚を考える場合は、双方が納得できる結論を出すためにも、冷静に話し合いを重ねることが重要です。

また、将来的なトラブルを防ぐためにも、離婚の合意内容については公正証書を作成しておくことをおすすめします。

公正証書とは、夫婦間で話し合って決めた内容を公証人という第三者が確認し、公的な文書としてまとめたものです。

公証人が関与することで、認識のずれや一方的な解釈を防ぎ、合意内容を明文化することができます。さらに、公正証書には強制執行力があり、相手が約束を守らない場合に差し押さえなどを請求できます。

離婚は感情的になりやすい場面だからこそ、こうした第三者を交えた冷静な手続きをとることが大切です。

協議離婚で合意できない場合は離婚調停で離婚を目指すことができる

協議離婚で合意に至らない場合でも、家庭裁判所の調停制度を利用すれば、借金問題を理由に離婚を目指すことができます。

離婚調停とは、家庭裁判所で行われる手続きで、調停委員という第三者が中立的な立場から夫婦の意見を聞き、合意に向けて話し合いをサポートする制度です。

調停では、夫婦が顔を合わせずに個別に意見を述べることができるため、感情的な対立を避けやすく、冷静に進められるのが特徴です。

申し立てはどちらか一方からでも可能で、相手の同意がなくても調停手続き自体は進行します。

ただし、調停離婚も最終的には双方の合意が必要です。また、調停は通常、月1回程度の頻度で行われることが多く、離婚成立までに半年〜1年程度かかるケースもあります。ただし、回数や期間は事案によって異なります。

なお、離婚調停は原則として平日の日中に家庭裁判所で実施されるため、平日勤務の方は有給休暇の取得や勤務先への事前連絡など、仕事とのスケジュール調整が必要になるでしょう。

協議離婚や調停離婚で合意できなければ裁判離婚を検討する

協議離婚や調停離婚で合意できなかった場合、家庭裁判所に離婚訴訟を提起し、裁判所の判決によって離婚を成立させることが可能です。

離婚裁判を行うには、まず家庭裁判所の調停を経なければならない『調停前置主義』が定められています。

ただし、離婚裁判で離婚するためには、民法第770条で定められた法定離婚事由に該当しなければなりません。

法定離婚事由は以下のとおりです。

離婚事由 内容
不貞行為 配偶者が配偶者以外の人物と性的関係を持った場合
悪意の遺棄 正当な理由なく配偶者を放置し、生活費を渡さないなどの行為
3年以上の生死不明 配偶者の生死が3年以上明らかでない場合
強度の精神病 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合
その他婚姻を継続し難い重大な事由 DV、ギャンブル依存、借金問題など、婚姻関係の継続が困難な事情

配偶者の借金は、法定離婚事由にあてはまらないため、借金のみが原因の場合は、基本的に法定離婚事由として認められません。

ただし、以下のような場合は、離婚が認められるケースもあります。

  • ギャンブルにより多額の借金を抱え、生活が困窮している
  • 借金を隠しており、夫婦間の信頼関係が破綻している
  • 借金の返済のために家庭の資産を無断で処分した
  • 不倫相手に貢ぐ目的で借金を繰り返していた
  • 借金返済のストレスを理由に暴言や暴力がある

このように、借金そのものは法定離婚事由ではなくても、借金をめぐる配偶者の言動が夫婦関係に深刻な悪影響を与えている場合には、裁判所が離婚を認める可能性もあります。

ただし裁判は時間や費用がかかるため、できる限り協議離婚や離婚調停によって解決を図ることが賢明です。

裁判離婚を進めるにあたっては、離婚事由を立証するための証拠が重要です。以下のような証拠を収集することが求められます。

  • ギャンブルや浪費の履歴がわかる通帳やクレジットカード明細
  • 借金の契約書・督促状・返済トラブルに関するメッセージ
  • DVを示す診断書や暴言の録音記録
  • 不貞行為を裏付けるLINEやSNSのやりとり
  • 資産の無断売却に関する契約書や口座履歴

離婚裁判について詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。

夫・妻がつくった借金の返済義務は、原則として本人にしか発生しない

夫婦のどちらかが借金をした場合、その返済義務は、原則として借金をした本人にのみ生じます。

たとえば、夫が自分の趣味やギャンブルのために借金をした場合、妻にまで返済義務が及ぶことは基本的にありません。

以下のような借金は、法律上、借入名義人個人に返済義務があると解されており、配偶者が返済を求められることは通常ありません。

  • 結婚前からの借金
  • 趣味や娯楽のための借金
  • ギャンブルによる借金
  • 事業資金としての借金
  • 本人の学費のための借金

なお、これらの借金は財産分与の対象にも含まれないのが一般的です。詳しくは「借金がある場合の財産分与はどうなるのか?」の項目もご覧ください。

借金の名義や使い道によっては、離婚時に「誰が返済するか」でトラブルになる場合もあります。不安がある場合は、早めに専門家へ相談しましょう。

夫・妻の借金の返済義務が生じるケース

借金は原則として、借りた本人にしか返済義務はありません。

ただし、以下のようなケースでは、配偶者にも返済義務が発生する可能性があります。

  • 共有名義や連帯債務で住宅ローンを組んでいる場合
  • 借金の目的が家族・夫婦の生活維持のためだった場合
  • 自分名義のクレジットカードや家族カードで配偶者が借金をしていた場合
  • 自分が借金の保証人になっていた場合

それぞれ詳しくみていきましょう。

共有名義や連帯債務で住宅ローンを組んでいる場合

共有名義や連帯債務で住宅ローンを組んでいる場合は、離婚後も夫婦双方に返済義務が残ります。これは、住宅ローンの契約上、名義人が返済義務を負っているためです。

たとえば、連帯債務型の住宅ローンでは、夫婦双方がローン全額に対する返済義務を負っており、離婚してもその義務は継続します。

アンダーローンの場合、住宅の売却価格がローン残高を上回るため、売却によってローンを完済し、余剰金を得ることが可能です。

一方、オーバーローンの場合、住宅の売却価格がローン残高を下回るため、売却してもローンが完済できず、残債が残るため、任意売却や借り換えなどの対策が必要です。

連帯保証人から外れるには、以下の方法があります。

  • 金融機関の承諾を得て、ほかの保証人を立てる
  • ローンを借り換えて単独名義にする
  • ローンを一括返済する

ただし、これらの方法はいずれも金融機関の審査や承諾が必要となるため、ローンを組んでいる金融機関の担当者に相談しましょう。

離婚時には、住宅ローンの契約内容や残債、住宅の資産価値をしっかりと確認し、今後の返済方法や物件の取り扱いについて、夫婦でよく話し合うことが大切です。

借金の目的が家族・夫婦の生活維持のためだった場合

夫婦の一方が日常生活の維持を目的として借金をした場合、民法第761条に基づき、他方の配偶者も原則として連帯して返済義務を負います。これは、民法第761条において「日常の家事に関する債務の連帯責任」が定められているためです。

以下のような日常生活に必要な支出に関する借金については、夫婦双方が連帯して返済義務を負うことになります。

  • 食費や日用品の購入費
  • 光熱費(電気・ガス・水道代)
  • 住居の賃料
  • 子どもの教育費や医療費

なお、以下のような支出は「日常家事債務」に該当せず、原則として他方の配偶者に返済義務は生じません。

  • ギャンブルや趣味に関連する借金
  • 高額な娯楽費用
  • 事業資金としての借入
  • 他人の債務の保証人となった場合

また、夫婦関係が破綻し、別居状態にある場合でも、形式上婚姻関係が継続していれば、日常家事債務の連帯責任が適用される可能性があります。ただし、実務では、夫婦が別居している場合など、婚姻関係の実態に応じて、第三者(貸主など)が日常家事の範囲と認識できたかどうかを含め、総合的に判断されます。

離婚に際しては、借金の発生原因や目的を慎重に確認し、夫婦間で返済義務の有無を明確にすることが重要です。不明な点がある場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

自分名義のクレジットカードや家族カードで配偶者が借金をしていた場合

自分名義のクレジットカードや家族カードで配偶者が借金をしていた場合でも、基本的にはカードの名義人自身が返済義務を負います。なぜなら、カード会社との契約上、名義人が債務者とされているためです。

以下のような状況では、配偶者のカード使用を名義人が許可または黙認していたとみなされる可能性があります。

  • 家族カードを配偶者に渡していた
  • カードの暗証番号を配偶者に教えていた
  • 配偶者の利用分を名義人が自ら返済していた

ただし、配偶者が無断でカードを使用した場合は、カード会社の規約違反となる可能性があります。このような場合、まずカード会社に連絡して状況を説明し、どのように対応すればよいか相談しましょう。

カード会社の調査によって無断使用であることがわかれば、補償を受けられる可能性があります。

自分が借金の保証人になっていた場合

配偶者の借金の保証人になっていた場合、自分に返済義務が発生する可能性があります。

保証人は、主たる債務者が借金を返済しない場合に、その借金を代わりに返済する責任を負います。

保証人には「保証人」と「連帯保証人」の2種類があります。

種類 特徴
保証人 以下の抗弁権が認められています:

・催告の抗弁:まず債権者は主たる債務者(借金をした本人)に請求しなければなりません。

・検索の抗弁:主たる債務者に支払い能力がある場合、そちらから回収すべきと主張できます。

・分別の利益:保証人が複数いる場合、それぞれが分担した債務額だけ責任を負う
連帯保証人 催告の抗弁・検索の抗弁・分別の利益のいずれも認められず、

債権者から直接全額の請求を受けた場合、直ちに返済義務が生じます。

連帯保証人であれば、配偶者が返済を滞らせた場合、自分が直接借金をしたのと同じように返済義務を負うことになります。

勝手に保証人にされていた場合は借金の保証人から外れるために交渉することも可能

自分が勝手に借金の保証人にされていた場合、その保証契約は民法上の「無権代理」にあたり、無効または取り消しを主張できる可能性があります。

無権代理とは、権限を与えられていない代理人が代理行為を行ったり、与えられた権限の範囲を超えて代理行為をしたりすることです。

具体的には、配偶者など第三者が本人に無断で連帯保証人の契約を結んだような場合が該当します。たとえば、配偶者が本人に無断で連帯保証契約書に署名し、本人がその事実を知らなかった場合などです。

このような場合、本人がその保証契約を追認しなければ、保証契約は無効となり、返済義務は生じません。

勝手に保証人にされていたと気づいたときは、焦って返済せずに弁護士へ相談しましょう。借金を返済してしまうと、自分が保証人であることを認めたとみなされてしまいます。

弁護士に依頼すれば、債権者に対して「無断で保証人にされた」ことを内容証明郵便で通知し、債権者との連絡や交渉、必要に応じた書面作成なども代行してもらえます。

内容証明郵便とは?
送った書類の内容・送付日・宛先を郵便局が証明してくれる郵送方法です。法的な証拠として使えるため、トラブル時に有効です。

万が一、債権者から返済を求める訴訟を起こされた場合は、裁判で保証契約の無効を主張する必要がありますが、その対応も弁護士に任せることができます。

借金を理由に離婚するなら配偶者の借金を正確に把握しよう

借金を理由に離婚を検討する場合は、配偶者が抱えている借金の内容や経緯を正確に把握しておくことが重要です。というのも、借金の名義や目的によって、どちらが返済義務を負うかが変わってくるためです。

たとえば、趣味やギャンブルなど配偶者が個人的につくった借金であれば、原則として本人が単独で返済することになります。

一方、共有名義の住宅を購入するための住宅ローンなど、夫婦の共同生活のための借金であれば、離婚後も双方で返済を続ける必要が生じる場合もあります。

借金の状況を把握するには、借用書や契約書、カードの利用明細などをもとに、名義・金額・使い道などを整理しておくとよいでしょう。

なお、借金の内容が不明なケースや配偶者が借金について開示しない場合は、信用情報機関(CICやJICCなど)で履歴を確認することも検討されます。

ただし、これらの情報は原則として本人のみが請求できるため、配偶者の協力が得られない場合は、弁護士を通じて対応を検討する必要があります。

離婚協議では、借金の存在や責任をめぐってトラブルになることも少なくありません。お互いに隠さず情報を開示し、借金の実態を共有することが、後のトラブル回避につながります。

公平な返済方法を決めるためにも、必要に応じて弁護士に相談することをおすすめします。

離婚時の金銭問題|財産分与・養育費・慰謝料

離婚にあたっては、単に婚姻関係を解消するだけでなく、お金に関する取り決めも重要です。とくに、借金が関係する場合は、財産分与・養育費・慰謝料の扱いが複雑になることがあります。

ここでは、それぞれの金銭問題について、借金との関係や注意点をふまえながら詳しく解説します。

借金がある場合の財産分与はどうなるのか?

離婚時には、夫婦が婚姻期間中に築いた財産を公平に分ける「財産分与」が行われます。対象となるのは、預貯金・不動産・車・退職金などの共有財産です。

借金がある場合には、その借金が「共有財産に関連するもの」か「個人の債務」かによって、財産分与の対象になるかが決まります。

たとえば、以下のような借金は共有財産の形成に関係していると考えられ、財産分与の対象になる可能性があります。

  • 住宅ローン(共有名義の不動産に対するもの)
  • 生活費や子どもの教育費など、家庭の維持のために借りたお金

一方、以下のように個人的な理由で発生した借金は、原則として財産分与の対象外です。

  • 結婚前からの借金
  • ギャンブルや浪費のための借金
  • 個人の趣味や事業資金としての借入
  • 結婚式の費用(ブライダルローン)

ブライダルローンについては、契約名義人の個人債務とされるのが一般的です。ただし、名義人でない配偶者に重大な過失(不貞行為やDVなど)がある場合は、例外的に返済を分担すべきと判断される可能性もあります。

借金がある相手から養育費をもらうことはできるのか?

借金の有無に関係なく、養育費を請求することは可能です。養育費は、両親の収入や生活水準、子どもの人数などをもとに、双方の話し合いや家庭裁判所の調停・審判で決定されます。判断の際は、養育費算定表を参考資料として用いられるのが一般的です。

養育費は非免責債権に該当するため、相手が自己破産しても支払義務はなくなりませ(破産法第253条)。また、養育費は一般的に子どもが20歳に達するまで、月々継続して支払われます(成年年齢は18歳に引き下げられましたが、養育費については20歳までとするのが実務上の一般的な扱いです)。

ただし、相手の収入が著しく少ない場合や、病気・失職などで支払能力が大きく下がっている場合には、養育費の金額が減額される可能性があります。なお、養育費の減額を求めるには、家庭裁判所への調停や審判の申し立てが必要です。

借金がある場合でも、子どもの養育費は原則として優先して支払うべき義務とされているため、支払う側・受け取る側の双方が制度の内容を正しく理解し、適切に対応することが大切です。

借金がある相手から慰謝料をもらうことはできるのか?

借金がある相手から慰謝料を請求することは可能です。ただし、借金そのものが違法というわけではありません。生活費や教育費の補填などを目的とする借入は正当なケースもあります。そのため、慰謝料が認められるには、相手の行為が不法行為(民法第709条)に該当すると判断されなければなりません。

たとえば、借金を理由に生活費を一切負担しない状態が数ヵ月以上続くような場合は、夫婦の同居・協力・扶助義務(民法第752条)に反し「悪意の遺棄」として慰謝料が認められる可能性があります。悪意の遺棄が認められるかどうかは、生活費不払いの期間や意図、双方の生活状況などを総合的に判断されるのが一般的です。

また、借金に加えて不貞行為やDVなどがある場合には、離婚原因に応じた慰謝料請求が認められやすくなります。

慰謝料請求を有利に進めるためには、借金の使い道や金銭管理の放棄を示す証拠(通帳・カード明細・LINEのやりとりなど)を収集しておくことが大切です。これらは、相手の不法行為の存在や損害の程度を立証する材料となります。

なお、実際に認められる慰謝料の金額は、被った損害の大きさや相手の経済状況などによって判断されます。

慰謝料の相場はケースにより異なり、継続的なDVや不貞行為がある場合は100万〜300万円程度になるケースもあるでしょう。一方で、借金のみが原因の場合は経済的損失や精神的苦痛が限定的と判断され、10万〜50万円程度にとどまることも少なくありません。

ただし、相手に資力がなければ、実際に慰謝料を受け取れない可能性もあるため、請求の可否だけでなく回収可能性も踏まえた検討が重要です。

借金を理由に離婚した後に注意したいポイント

借金を理由に離婚した場合でも、離婚後の金銭面で新たなトラブルが発生するリスクがあります。

離婚した後に不利益を被らないよう、以下で挙げる点についてはあらかじめ注意しておきましょう。

  • 借金を理由に養育費の減額交渉をされる可能性がある
  • 元配偶者の死後、借金が子供に相続されてしまうリスクがある

それぞれ解説します。

借金を理由に養育費の減額交渉をされる可能性がある

離婚後、借金があることを理由に、相手方から養育費の減額を交渉される可能性があります。

基本的に、養育費の算定は借金の有無ではなく、双方の収入や子どもの生活費の必要性をもとに判断されます。そのため、趣味・ギャンブルなど個人的な借金を理由に養育費が減額されることは基本的にありません。

しかし、住宅ローンのように夫婦や子どもの生活に直接関係する借金を返済し続けている場合は、養育費の減額が検討される可能性もあります

また、借金とは別に、収入の減少や再婚により扶養すべき家族が増えた場合なども、家庭裁判所で養育費の変更が認められるケースがあります。

さらに、借金によって養育費の支払いが滞るリスクも否定できません。

万一に備え、養育費については「強制執行認諾文言付きの公正証書」を作成しておくことをおすすめします。この文言があれば、相手が支払いを怠っても裁判を経ずに給与や財産の差押えが可能です。

元配偶者の死後、借金が子供に相続されてしまうリスクがある

借金を理由に離婚したとしても、元配偶者が亡くなった場合、その借金が子どもに相続されてしまう恐れがあります。

離婚しても法律上の親子関係は解消できません。そのため、親の遺産を子どもが相続する際、借金も一緒に引き継がれてしまう可能性があるのです。

ただし、子どもが相続放棄すれば、借金を相続することはありません。将来、元配偶者が亡くなったときに迅速に相続放棄の手続きを取れるよう、親権者が制度や手続きの流れを理解しておくことが大切です。

なお、相続放棄をするには、被相続人が亡くなったことを知った日から3ヵ月以内に、家庭裁判所に申し立てる必要があります。

また、子どもが未成年の場合は、親が代理人として相続放棄の手続きを行うことになります。その際、家庭裁判所の許可が必要になる場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

借金以外に問題がないなら、離婚より借金問題の解決を優先するのも1つの選択肢

夫婦関係に大きな問題がない場合は、離婚を急ぐよりも、まず借金問題の解決を検討してみるのも1つの方法です。

債務整理を利用すれば、返済額の軽減や支払いの免除が認められる可能性もあります。

手続き名 特徴 主なデメリット
任意整理 弁護士が債権者と交渉し、利息カットや返済期間(原則3〜5年)の見直しを行う 借金の元金は減額されない/債権者と合意できないと成立しない/安定した収入が必要
個人再生 裁判所を通じて借金を原則5分の1程度に減額し、3〜5年で分割返済する 安定した収入が必要/100万円未満の債務には不向き/住宅ローン特則に条件あり/連帯保証人に請求が及ぶ
自己破産 裁判所に申し立てて、原則すべての借金の返済義務を免除 現金99万円・その他20万円超の財産は原則処分対象/免責不許可事由に該当する可能性あり/職業制限あり/連帯保証人に請求が及ぶ

ただし、債務整理を行うと、信用情報機関に記録が残るため、一定期間(5〜10年程度)クレジットカードの作成やローンの利用が制限されます。そのため、今後の生活や家計への影響も踏まえて、慎重に判断する必要があります。

なお、借金の原因がギャンブルや浪費など、今後も再発する可能性がある場合や、信頼関係の修復が難しい場合は、離婚を含めて検討したほうがよいケースもあるでしょう。

借金を理由に離婚したい場合は弁護士に相談するのがおすすめ

配偶者の借金が原因で離婚を検討している場合は、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。借金の責任分担や財産の扱いなど、法的に整理すべき点が多くあるためです。

とくに裁判に進む場合は、民法で定められた「法定離婚事由」に該当することを、証拠をもとに主張しなければなりません。

借金そのものが離婚理由として認められるケースは少ないため、ギャンブルや浪費、家計の破綻などによって夫婦関係が悪化した事実を具体的に示す必要があります。

弁護士に依頼すれば、必要な証拠の収集や主張の構成、書類作成、調停や裁判での対応まで幅広くサポートしてもらえます。

さらに、財産分与や借金の分担、債務整理の必要性といった金銭面の課題についても、適切なアドバイスが得られるでしょう。

離婚手続きは感情的にも負担が大きく、一人で進めるのは難しい場面も多いため、法律の専門家と連携しながら冷静に対応することが大切です。

まとめ

協議離婚や調停離婚の場合、配偶者の借金が原因であっても、夫婦が合意すれば離婚は可能です。

一方、裁判で離婚が認められるには、借金が夫婦関係に深刻な影響を与えており「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当することを証明しなければなりません。

たとえば、生活費をまったく入れず、配偶者や子どもに経済的困窮を強いている場合や、借金返済のために家庭の資産を無断で売却していたケースなどでは、裁判所が離婚を認める可能性があります。

なお共有名義の住宅ローンが残っている場合や、夫婦の生活費に関わる借金、自分が保証人になっている借金などは、離婚後も返済義務が残るケースもあるため注意が必要です。

夫婦関係に大きな問題がない場合は、離婚を急がず、債務整理などで借金問題を解決するという選択肢も検討できます。

状況が複雑なときは、弁護士に相談することで、今後の選択肢やリスクを整理しやすくなります。感情だけで判断せず、冷静に対応していきましょう。

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更新日 : 2025年06月10日
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