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セックスレスを離婚の理由にできる?慰謝料相場や離婚できるケースを解説

セックスレス 離婚
南陽輔 弁護士
監修者
南 陽輔
大阪市出身。大阪大学法学部、関西大学法科大学院卒業。2008年に弁護士登録(大阪弁護士会所属)。大阪市の法律事務所に勤務し、離婚問題や債務整理などの一般民事事件のほか、刑事事件など幅広い法律業務を担当。2021年に一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成の支援、起業時の法的なアドバイスなどの予防法務を中心に業務提供をしております。皆さんが利用しやすく、かつ自由で発展的なビジネスが可能となるサービスを提供いたします。

明確な定義はありませんが、「病気など特別な事情がないのに、1か月以上性交渉がなく、その状態が長期に渡ると予想されるケース」を「セックスレス」としているケースが一般的です。日本家族計画協会の「【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ2024」によれば、1ヶ月以上夫婦間での性交渉がないと回答した人の割合は64.2%存在することがわかっており、セックスレスに悩んでいる人は多いと考えられます。

セックスレスであることに辛さを感じ、離婚したいと考えたものの、セックスレスだけを理由に離婚できるのか不安に感じている人もいるのではないでしょうか。

実際のところ、セックスレスを理由にして離婚することは可能です。しかし、相手との話し合いだけで離婚が成立するとは限りません。裁判をするとしても、セックスレスは夫婦の性生活の問題であり、客観的な証拠を集めにくいため、立証が難しい場合もあります。

本記事では、セックスレスでの離婚を検討している人に向けて、セックスレスを理由に離婚できるケースや、慰謝料請求が認められるケースなどを詳しく解説します。

7.7%の夫婦が、セックスレスをはじめとした「性的不調和」を離婚における動機のひとつとしている

「令和4年 司法統計年報」によると「性的不調和」を離婚理由の一つとしてあげている人は、全体の7.7%です。性的不調和とは、夫婦間における性的欲求や性的価値観の不一致のことで、一般的にセックスレスも含まれます。

このデータはあくまでも裁判に発展した事例のみをカウントしているため、協議離婚や調停離婚などの件数を含めると、セックスレスを理由に離婚する夫婦の割合はさらに高い可能性があります。セックスレスによる離婚は、決して珍しいことではありません。

セックスレスを理由とした離婚は可能

協議離婚や調停離婚など、話し合いで双方が合意した場合、セックスレスを理由に離婚することが可能です。また、どちらか一方が反対した場合は、裁判での手続きとなりますが、セックスレスの程度によっては、民法上の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断され、離婚が認められる可能性があります。

離婚の原因がセックスレスのみの場合は話し合いや調停で合意すれば離婚できる

当事者同士が話し合って離婚の可否や離婚の条件をきめる「協議離婚」であれば、離婚理由にかかわらず、双方が合意すれば離婚は成立します。そのため、セックスレスを理由として離婚することも可能です。

話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に離婚調停を求めることになるでしょう。しかし、調停離婚をする場合も、一方が提示した離婚条件にもう一方が納得すれば、離婚は可能です。申し立ての動機として書面に離婚理由を記載する欄はありますが、特段第三者にその事実を証明する必要はありません。夫婦どちらかが一方的にセックスレスを主張していたとしても、双方が離婚条件に合意さえすれば離婚できます。

話し合いで離婚できない場合、セックスレスが「法定離婚事由」に該当すれば裁判の申立が可能

裁判によって離婚する場合は、民法770条1項に規定されている「離婚理由」が必要です。

第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
引用元 出典:e-Gov 民法

セックスレスを理由として離婚する場合は、セックスレスが「婚姻を継続し難い重大な事由」に繋がっていると証明する必要があります

たとえば以下のようなケースは、セックスレスが離婚理由として認められる可能性があるでしょう。

  • 性交渉機能に問題がないのに片方が一方的に拒絶している
  • セックスレスが原因で不仲になり長期間別居をしている
  • 不貞行為をきっかけにセックスレスになった

つまり、セックスレスそのものよりも、セックスレスが夫婦関係の破綻を深刻化させ、同居を継続することが事実上不可能になっていることが重要であるということです。

POINT:セックスレス以外に夫婦関係に問題がない場合は、まずはお互いに改善できないか話し合ってみるのもおすすめ

セックスレスが理由で離婚することに対して、抵抗を感じる人もいるでしょう。離婚した結果、親権が無くなることで子どもに自由に会えなくなる、十分な慰謝料や養育費がもらえず経済的に困窮するなど、後悔する結果を招くケースも少なくありません

セックスレス以外に夫婦関係に問題がない場合は、すぐに離婚しようとするのではなく、まずは現状を改善できないかお互いに話し合ってみることをおすすめします。夫婦だけで話し合うのが難しそうな場合は、夫婦二人で一緒に専門家のカウンセリングを受ける「夫婦カウンセリング」を利用するのも一つの手です。

セックスレスの慰謝料相場

セックスレスを主な理由として慰謝料を請求する場合、あまり高額な慰謝料は望めません。過去の判例を考慮すると、慰謝料の相場は10万円〜100万円程度 と考えておいた方がよいでしょう。

ただし、実際に請求できる慰謝料の金額は、婚姻期間や年収、職業や子どもの有無などによっても大きく変わります。以下のようなケースでは、慰謝料が高額になる傾向があります。

  • 結婚後に一度もセックスをしていない
  • セックスレスの期間が数年〜数十年にわたる
  • 婚姻期間が長い
  • 慰謝料を請求される側の収入や社会的地位が高い

セックスレスが原因の離婚で慰謝料請求ができるケース

離婚で慰謝料が発生するのは、基本的に相手が一方の権利を不当に侵害し、精神的な苦痛を与えた場合に限られます。セックスレスは夫婦双方の問題ともいえるので、単にその事実があるだけでは慰謝料請求をする根拠にはなり得ません

以下のように、夫婦のどちらか一方に大きい責任がある場合は慰謝料請求が可能 と考えるのが一般的です。

  • 特別な理由なく、一方が性交渉を拒否し続けている場合
  • 性交渉の拒絶方法が著しく冷たい場合
  • セックスレスだけではなく不貞行為やモラハラ、DVなどがある

離婚理由が「セックスレスのみ」の場合の離婚で慰謝料請求が難しいケース

以下のように、性交渉ができない正当な理由がある場合や一方のみにセックスレスの原因があるといえない場合などは、慰謝料を請求するのは難しい でしょう。

  • 病気や高齢でセックスができない
  • 夫婦のどちらもセックスを望んでいない場合
  • セックスレスの程度が軽い(3ヶ月に1回程度ある、毎回拒絶されるわけではないなど)

これらの理由しかない場合、慰謝料を請求するのが難しいだけではなく、裁判をする際は離婚原因として認められない可能性もあります。

セックスレスが原因の離婚で慰謝料請求したい場合に必要な証拠

セックスレスによる離婚で慰謝料を請求する場合は「セックスができたのに相手が拒んでいた」ことを証明しなければなりません。以下のような証拠があると、慰謝料を請求する際に有利になる可能性があります。

  • 夫婦の生活状況を具体的に示した日記・メモ
  • 性行為の拒絶の様子を録音・録画したデータややり取りの記録
  • 不貞行為がある場合は不貞行為を示す写真やメッセージなどのやり取り

夫婦の生活状況を具体的に示した日記・メモ

仕事時間や帰宅時間、就寝時間など、夫婦の生活状況を具体的に示したメモがあれば、慰謝料を請求する際に有力な証拠となる可能性があります。

また、性交渉を求めた日や、求めた時の反応・言動を日記としてまとめておくのも良いでしょう。

これらの証拠があれば、相手から「仕事が忙しく性交渉をする時間がなかった」といった反論があった場合も対処しやすくなります。

後からでっち上げたと思われないためにも、毎日記録しておくことが大切です。

性行為の拒絶の様子を録音・録画したデータややり取りの記録

性行為が拒絶された様子をボイスレコーダーやデジカメなどで録音・録画したデータも、セックスレスで慰謝料を請求する際の証拠として有効 です。

性行為について話し合ったメールやLINEなどをとっておくのも良いでしょう。

なお、音声を無断で記録すること自体は違法ではありませんが、相手に気づかれないようにすることが大切です。また、裁判官が聞いて会話の内容がわかるように記録しておかなければならないため、録音環境には注意しましょう。

不貞行為がある場合は不貞行為を示す写真やメッセージなどのやり取り

不貞行為がある場合は、不貞行為があったことを示す証拠を用意することで、慰謝料を請求しやすくなります。

不貞行為とは、配偶者以外の異性と性的関係を持つことです。不倫相手との性行為を記録した写真や動画は強い証拠となりますが、そのような証拠を集めるのは簡単ではありません。

直接的な証拠がなくても、以下のような証拠については不貞行為を立証する有力な証拠として採用されやすい傾向があります。

  • 不倫相手とのメールやLINEでのやり取り
  • 不倫相手と配偶者が一緒にホテルに入って行く写真
  • 不貞行為を認める内容の念書や録音

自分で証拠を集めるのが難しい場合は、興信所の利用も検討してみましょう

セックスレスが原因で離婚したい場合は弁護士に相談するのがおすすめ

セックスレスが原因で離婚を検討している場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。セックスレスは非常にデリケートな問題であり、夫婦間の話し合いだけで離婚を目指すのは難しいことがあります。慰謝料を請求する場合や裁判に発展した場合に、セックスレスが離婚理由に該当することを立証するのは容易ではありません

弁護士に相談すれば、どのようなケースで離婚が認められるのか、裁判に備えて必要な証拠は何かなど、様々なアドバイスを受けられます。また、セックスレスだけではなく、不倫やモラハラなどを併発している場合など、複雑なケースにも適切に対応してもらえるでしょう。

協議離婚であっても、弁護士に交渉を代理で行ってもらうことが可能です。話し合いがこじれて訴訟になれば費用や時間がかかるため、早めに弁護士に相談しておくことが賢明でしょう。

セックスレスは相談しづらい問題かもしれません。しかし、弁護士には守秘義務があるため、安心して相談できます。離婚問題に詳しい弁護士なら、これまでの経験に基づいて的確なアドバイスが受けられるでしょう。

まとめ

協議離婚や調停離婚など、夫婦の話し合いに基づいた手続きをする場合、双方が合意すれば、セックスレスを原因として離婚することは可能です。ただし、相手が離婚を拒否した場合や慰謝料を請求する場合などは、裁判での解決を目指すケースもあるでしょう。その場合は、セックスレスが「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると証明する必要があります。

しかし、セックスレスには客観的な基準がないため、事実を立証することは簡単ではありません。手続きをスムーズかつ有利に進めたい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談すれば、離婚をするためにどのような条件や証拠が必要となるのか、適切なアドバイスを受けられるでしょう。離婚に伴い、財産分与や親権、養育費などの手続きが発生した場合も、弁護士が適切に対応してくれます。

セックスレスを理由とした離婚についてよくある質問

セックスレスは何年から?

法的に明確な定義はありませんが、1年以上性交渉がない場合、セックスレスと認められるケースが多くなっています。ただし、結婚当初から性交渉がない場合など、他に特別な事情がある場合は1年未満でもセックスレスを離婚理由として認めるケースがあります。

セックスレスで慰謝料請求をすることは可能?

セックスレスを理由に慰謝料を請求することは可能です。ただし、セックスレスであるということだけでは、慰謝料を請求する根拠としては不十分なので、不倫をしている、特別な理由なく配偶者からの性交渉の誘いを断っているなど、一方に大きな落ち度があることが必要です。

高齢や病気など、やむを得ない理由があり性交渉ができないケースでは、慰謝料を請求するのは難しいでしょう。

セックスレスで離婚しても養育費はもらえる?

セックスレスを理由に離婚する場合も、養育費は請求できます。セックスレスによる離婚と養育費の請求可否は無関係なので、慰謝料と養育費を同時に請求することも可能です。養育費の額は、裁判所が公表している「養育費算定表」に基づいて決定されます。

なお、セックスレスによる離婚と親権が認められるかどうかも無関係です。親権は子どもの年齢や意思、これまでの監督・保護の実績や親の収入などで決まります。セックスレスを原因として離婚を申し出た側であっても、必ず親権を獲得できるとは限らないので注意しましょう。