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セックスレスは離婚の理由になる?慰謝料相場や離婚成立のポイントを解説

セックスレスは離婚の理由になる?慰謝料相場や離婚成立のポイントを解説

セックスレスにつらさを感じて離婚を考えているものの、「セックスレスだけを理由に離婚はできるのか」と不安に感じている人もいるのではないでしょうか。

結論から述べると、セックスレスを理由にして離婚することは可能です。しかし、配偶者との話し合いだけで離婚が成立するとは限りません。

セックスレスを理由に離婚する際の流れは、以下のとおりです。

離婚の方法 概要
協議離婚 ・夫婦間の話し合いによって離婚する方法
・双方が合意すれば、離婚理由は問われない
調停離婚 ・家庭裁判所に離婚調停を申し立てて離婚する方法
・お互いが離婚条件に納得すれば、離婚理由は問われない
裁判離婚 ・調停が不成立となった際に訴訟を起こして離婚する方法
・セックスレスが「法定離婚事由」に該当することを証明できれば離婚が認められる

まずは夫婦間の話し合いによる協議離婚を目指し、双方が合意すれば役所に離婚届を提出するのみで離婚が成立します。

話し合いがまとまらなかったときは家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員を介して話し合いを進めていきます。双方が離婚条件に納得すれば調停成立となり、離婚理由は問われず離婚が可能です。

調停が不成立となった際には訴訟を起こして離婚を求めることになりますが、裁判ではセックスレスが「法定離婚事由」に該当することを証明しなければなりません。

具体的には、セックスレスが法定離婚事由のうち「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法770条1項5号)に当てはまるケースであれば、裁判で離婚できる可能性があります。

一例として、セックスレスが「婚姻を継続しがたい重大な事由」として認められるケースは以下のとおりです。

  • 理由なく一方的に性交渉を拒否されている
  • セックスレスが原因で長期間の別居をしている
  • 不貞行為が原因でセックスレスになった

本記事では、セックスレスを理由に離婚できるケースや、慰謝料請求が認められるケース、また慰謝料相場まで詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。

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南陽輔 弁護士
監修
一歩法律事務所
南 陽輔(弁護士)

セックスレスを含む「性的不調和」を離婚の動機にしている人の割合は6.3%~10.5%

「令和5年 司法統計年報」によると、「性的不調和」を離婚理由にあげている人の割合は、男性が10.5%、女性が6.3%です。

性的不調和とは、夫婦間で性的な欲求や価値観が合わない状態のことを指し、セックスレスもその一つに含まれます。

なお、上記のデータはあくまでも裁判に発展した事例のみを対象としており、協議離婚や調停離婚などは含まれていません。そのため、実際にはセックスレスをきっかけに離婚する夫婦の数はさらに多いと考えられます。

セックスレスが原因の離婚は決して特別なことではなく、誰にでも起こり得る現実的な問題といえるでしょう。

セックスレスを理由とした離婚は可能

セックスレスを理由に離婚することは可能です。しかし、配偶者との話し合いだけで離婚が成立するとは限らないため、離婚までの流れを把握しておきましょう。

まずは夫婦間の話し合いによる協議離婚を目指し、お互いが離婚に合意すれば、離婚届を役所に提出するのみで離婚が可能です。

夫婦間の話し合いだけでは合意に至らない場合、次のステップとして離婚調停を申し立てます。家庭裁判所で調停委員を交えて話し合いを行い、合意できれば調停調書が作成され、正式に離婚が成立します。

それでも解決しない場合は、最終的に訴訟を申し立て、裁判による離婚を目指すことになります。セックスレスが「法定離婚事由」のうち「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断されれば、裁判所によって離婚が認められる可能性があります。

それぞれのステップについて、詳しく解説します。

離婚の原因がセックスレスのみの場合は話し合いや調停で合意すれば離婚できる

当事者同士が話し合って離婚の可否や離婚条件を決める協議離婚であれば、離婚理由にかかわらず双方が合意すれば離婚が成立します。

そのため、まずは配偶者との話し合いを行い、協議による離婚が可能かどうか双方の意思確認をしましょう。

もしも話し合いが平行線のまま進まない場合は、調停離婚という選択肢があります。調停は家庭裁判所で行う手続きですが、強制力はないため、協議離婚と同様に最終的には当事者間の合意が必要です。

ただし、調停では第三者である調停委員が間に入り、意見の整理や条件のすり合わせをサポートしてもらえます。直接話し合うと感情的になってしまう場合でも、第三者が関与することでスムーズな交渉がしやすくなるでしょう。

なお、調停の申立書には離婚理由を記載しますが、セックスレスであることを証明する必要はありません。夫婦どちらかが一方的にセックスレスを主張していたとしても、最終的に双方が離婚条件に合意すれば離婚できます。

話し合いで離婚できない場合、セックスレスが「法定離婚事由」に該当すれば裁判の申立が可能

裁判によって離婚する場合は、民法770条1項に規定されている「法定離婚事由」が必要です。

第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
引用元 出典:e-Gov 民法

セックスレスを理由に離婚する場合は、セックスレスが「婚姻を継続し難い重大な事由」につながっていると証明する必要があります

たとえば以下のようなケースは、セックスレスが離婚理由として認められる可能性があるでしょう。

  • 性交渉機能に問題がないのに片方が一方的に拒絶している
  • セックスレスが原因で不仲になり長期間別居をしている
  • 不貞行為をきっかけにセックスレスになった

つまり、裁判で離婚が認められるためには、セックスレスそのものが問題なのではなく、その状態が夫婦関係の破綻にどれほどの影響を与えているのかが重要です。

セックスレスによって精神的な苦痛を抱えていたり、長期間の別居の原因になっていたりする場合は「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる可能性があります。

なお、セックスレス以外に夫婦関係に大きな問題が見当たらない場合は、すぐに離婚を選ぶのではなく、まずはお互いに改善できないか話し合ってみるのも選択肢の一つです。

一時的な感情に任せて離婚をしてしまうと、「親権を取れず子どもに会いにくくなった」「十分慰謝料や養育費がもらえず、経済的に困窮した」など、後悔につながるケースも少なくありません。

夫婦だけで話し合うのが難しい場合は、2人で同時に専門家のカウンセリングを受けられる「夫婦カウンセリング」の利用も検討してみてください。

セックスレスの慰謝料相場

裁判で慰謝料を請求する場合、セックスレスの慰謝料相場は10万円〜100万円程度とされています。

裁判ではセックスレスの期間や程度、離婚の有無、婚姻期間、お互いの年収・職業、子どもの有無などを考慮して慰謝料金額が決められます。

一例として以下のようなケースでは、慰謝料が高額になる傾向があります。

  • 相手側が原因のセックスレスで夫婦関係が破綻し、離婚に至った
  • 結婚後に一度もセックスをしていない
  • セックスレスの期間が数年〜数十年以上にわたる
  • 婚姻期間が長い
  • 慰謝料を請求される側の収入や社会的地位が高い

上記のようなケースでは、配偶者に対する精神的苦痛が大きいと判断されやすく、またセックスレスの責任が一方に偏っているとみなされ、慰謝料が高額になる可能性があります。

なお、訴訟を起こさず示談で解決するのであれば、慰謝料金額に上限はありません。そのため、相手が納得すれば相場以上の慰謝料を請求することも可能です。

慰謝料金額は個々の事情をもとに総合的に判断されるため、実際にどの程度の慰謝料を請求できそうなのか知りたい場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。

セックスレスが原因の離婚で慰謝料請求ができるケース

セックスレスが原因の離婚で慰謝料請求ができるケースの例は以下のとおりです。

  • 特別な理由なく、一方が性交渉を拒否し続けている場合
  • 性交渉の拒絶方法が著しく冷たい場合
  • セックスレスだけではなく不貞行為やモラハラ、DVなどがある

上記のように、夫婦のどちらか一方に大きい責任がある場合は慰謝料請求が認められる可能性があります。

離婚で慰謝料が発生するのは、相手が一方の権利を不当に侵害し、精神的な苦痛を与えた場合に限られます。

セックスレスは夫婦の価値観や体調、精神状態などさまざまな要因が関係しているため、単にセックスレスの状態が続いているだけでは、慰謝料請求をする根拠にはならないと認識しておきましょう。

離婚理由が「セックスレスのみ」の場合の離婚で慰謝料請求が難しいケース

以下のように、性交渉ができない正当な理由がある場合や一方のみにセックスレスの原因があるといえない場合などは、慰謝料を請求するのは難しいでしょう。

  • 病気や高齢でセックスができない
  • 夫婦のどちらもセックスを望んでいない場合
  • セックスレスの程度が軽い(3ヶ月に1回程度ある、毎回拒絶されるわけではないなど)

上記のような理由のみである場合、慰謝料請求が難しいだけではなく、裁判をする際は離婚原因として認められない可能性もあります。

セックスレスが原因の離婚で慰謝料請求したい場合に必要な証拠

セックスレスによる離婚で慰謝料を請求する場合は「セックスができたのに相手が拒んでいた」ことを証明しなければなりません。

以下のような証拠があると、慰謝料を請求する際に有利になる可能性があります。

  • 夫婦の生活状況を具体的に示した日記・メモ
  • 性行為の拒絶の様子を録音・録画したデータややり取りの記録
  • 不貞行為がある場合は不貞行為を示す写真やメッセージなどのやり取り

夫婦の生活状況を具体的に示した日記・メモ

慰謝料を請求する際には、夫婦の生活状況を具体的に記録した日記やメモが重要な証拠となる場合があります。

たとえば、仕事の勤務時間や帰宅時間、就寝時間など日常の生活リズムを記録することで、夫婦のすれ違いや関係の実態を示すことが可能です。また、性交渉を求めた日や、求めた時の反応・言動を日記としてまとめておくのも良いでしょう。

これらの証拠があれば、相手から「仕事が忙しく性交渉をする時間がなかった」という反論があった場合も対処しやすくなります。

なお、後から作成した記録だと疑われないように、日々の状況を継続的に記録しておくことが大切です。毎日少しずつでも記録を残しておくことで、証拠としての信頼性が高まるでしょう。

性行為の拒絶の様子を録音・録画したデータややり取りの記録

性行為が拒絶された様子をボイスレコーダーやデジカメなどで録音・録画したデータも、セックスレスで慰謝料を請求する際の証拠として有効です。

性行為について話し合ったメールやLINEなどを残しておくのも良いでしょう。

なお、音声を無断で記録すること自体は違法ではありませんが、相手に気づかれないようにすることが大切です。また、裁判官が聞いて会話の内容がわかるように記録しておかなければならないため、前後の会話も録音するようにしましょう。

不貞行為がある場合は不貞行為を示す写真やメッセージなどのやり取り

配偶者が不倫をしている場合、不貞行為があったことを示す証拠を用意することで、慰謝料を請求しやすくなります。

不貞行為とは、配偶者以外の異性と肉体関係を持つことです。不倫相手との性行為を記録した写真や動画は強い証拠となりますが、そのような証拠を集めるのは簡単ではありません。

直接的な証拠がなくても、以下のような証拠は不貞行為を立証する有力な証拠となる可能性があります。

  • 不倫相手とのメールやLINEでのやり取り
  • 不倫相手と配偶者が一緒にホテルに入って行く写真
  • 不貞行為を認める内容の念書や録音
  • クレジットカードの明細やレシート

上記のように、不貞行為があったことを示す証拠を複数組み合わせることで、慰謝料請求が認められる可能性が高くなります。

自分で証拠を集めるのが難しい場合は、探偵や興信所の利用も検討してみましょう。

セックスレスが原因で離婚したい場合は弁護士に相談するのがおすすめ

セックスレスが原因で離婚を検討している場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。

セックスレスは非常にデリケートな問題であり、夫婦間の話し合いだけで離婚を目指すのは難しいことがあります。慰謝料を請求する場合や裁判に発展した場合に、セックスレスが離婚理由に該当することを立証するのは容易ではありません

弁護士に相談すれば「どのようなケースで離婚が認められるのか」「裁判に備えて必要な証拠は何か」など、具体的なアドバイスを受けられます。

また、セックスレスに加えて不倫やモラハラ、DVなど他の要因が重なっている場合でも、経験のある弁護士であれば適切に対応してもらえるでしょう。

裁判に発展する場合だけでなく、協議や調停の段階でも弁護士への依頼は可能です。話し合いがこじれて訴訟になれば費用や時間がかかるため、早めに弁護士に相談するのが賢明でしょう。

セックスレスは他人に打ち明けづらい問題かもしれませんが、弁護士には守秘義務があるため、安心して相談できます。離婚問題に詳しい弁護士なら、これまでの経験に基づいて的確なアドバイスが受けられるでしょう。

まとめ

協議離婚や調停離婚など、夫婦の話し合いに基づいた手続きであれば、離婚理由は問われません。そのため、セックスレスを理由に離婚することも可能です。

一方で、相手が離婚を拒否している場合や慰謝料の請求を検討している場合などは、裁判による解決が必要になることもあります。その際には、セックスレスが「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると認められるだけの証拠や事情が求められます。

しかし、セックスレスには明確な基準がないため、事実を立証することは簡単ではありません。離婚手続きをスムーズに進めたい場合や、有利な条件で進めたいと考えている場合は、弁護士への相談がおすすめです。

弁護士に相談すれば、離婚をするためにどのような条件や証拠が必要となるのか、適切なアドバイスを受けられます。

財産分与や親権、養育費などの問題にも一貫して対応してもらえるため、離婚を検討している方は、まず弁護士の無料相談を利用してみてください。

セックスレスを理由とした離婚についてよくある質問

セックスレスは何年から?

法的に明確な定義はありませんが、1年以上性交渉がない場合、セックスレスと認められるケースが多くなっています。ただし、結婚当初から性交渉がない場合など、他に特別な事情がある場合は1年未満でもセックスレスを離婚理由として認めるケースがあります。

セックスレスで慰謝料請求をすることは可能?

セックスレスを理由に慰謝料を請求することは可能です。ただし、セックスレスであるということだけでは、慰謝料を請求する根拠としては不十分なので、不倫をしている、特別な理由なく配偶者からの性交渉の誘いを断っているなど、一方に大きな落ち度があることが必要です。

セックスレスで離婚しても養育費はもらえる?

セックスレスを理由に離婚する場合も、養育費は請求できます。セックスレスによる離婚と養育費の請求可否は無関係なので、慰謝料と養育費を同時に請求することも可能です。養育費の額は、裁判所が公表している「養育費算定表」に基づいて決定されます。

なお、セックスレスによる離婚と親権が認められるかどうかも無関係です。親権は子どもの年齢や意思、これまでの監督・保護の実績や親の収入などで決まります。セックスレスを原因として離婚を申し出た側であっても、必ず親権を獲得できるとは限らないので注意しましょう。

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更新日 : 2025年05月16日
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