不倫の慰謝料請求を弁護士に依頼するべき理由
不倫の慰謝料請求は、自分だけで行うことも可能ですが、より有利に話を進めたいのであれば、弁護士に依頼するべきです。
不倫の慰謝料請求を弁護士に依頼するべき理由は、以下のとおりです。
- 弁護士に慰謝料請求を依頼すると、法的なアドバイスを受けながら手続きを進められる
- 専門的な知識や経験、交渉力を活かし、依頼者が有利になるよう進めてくれる
- 不倫相手と顔を合わせることなく慰謝料請求できるため、精神的なストレスを軽減できる
- これまでの経験や裁判例から、適切な慰謝料額を算定してくれる
- ケースに合わせて合意書や公正証書を作成してくれるため本当の意味で不倫問題が終結し、将来的なトラブルも予防できる
- 法的なアドバイスだけでなく、依頼者の心の支えとして一緒にゴールを目指してくれる
それぞれの理由について、詳しく解説します。
法的なアドバイスのもと手続きを進められる
不倫の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリットとして、法的なアドバイスを受けながら手続きを進められることが挙げられます。不倫問題に精通している弁護士なら、知識やこれまでの経験から慰謝料請求についてのアドバイスが可能です。
また、どういうものが有力な証拠になるのかわかりにくい証拠集めに関しても、的確にアドバイスしてもらえます。
それだけでなく、財産分与についてや子どもがいる場合は親権、養育費のことなど、慰謝料以外の問題についても相談できる点も心強いでしょう。弁護士に依頼することで、依頼者は「何をすればよいのか」「法的にどうなのか」といったことに悩まずに済みます。
依頼者が有利になるよう交渉してくれる
依頼者が有利になるよう交渉してくれる点も、弁護士に依頼するメリットといえます。不倫慰謝料を請求するなら、まず配偶者の行いが不貞行為にあたるのか、慰謝料請求できるのかといった見極めが必要です。
また、慰謝料請求が認められる場合、「このケースであればこの程度の金額が妥当」というように、適正な金額を提示できることも重要です。そのうえでできるだけ多く請求を認めてもらうためには専門的な知識や経験、交渉力が必要不可欠であるため、素人には難しいでしょう。
同じようなケースでも、弁護士が関与した場合としていない場合とでは、請求できる金額に大きな差が生じる可能性があります。少しでも有利に進めたいなら、自力で頑張るより弁護士を頼ることをおすすめします。
不倫相手と直接やりとりをせずに済む
弁護士に依頼した場合、不倫相手と直接やりとりする必要がありません。自分で不倫相手にコンタクトを取り慰謝料を請求するとなると、大きなストレスがかかります。
相手が自分の非を認めている場合などはまだよいですが、中には攻撃的な態度で接してきたり、自分のしてきたことを棚に上げて無茶苦茶な主張をしてくるケースなどもあります。そんな相手と交渉することはもちろん、顔も見たくないと思うこともあるでしょう。
弁護士に依頼すれば、不倫相手と顔を合わせることも話すこともなく慰謝料請求が可能です。
適切な慰謝料額を算定してくれる
適切な慰謝料額を算定してくれるところも弁護士に依頼するメリットです。
配偶者に不倫された場合、今後の生活のためにもできるだけ多く慰謝料を取りたいと思うでしょう。しかし、不倫による慰謝料額には基準が定められておらず、「自分たちのケースならどの程度の慰謝料が妥当か」というのは素人ではなかなかわかりません。
弁護士に依頼すれば、これまでの経験や過去の裁判例から適切な慰謝料額を算出してくれます。逆に依頼者が請求されている側であれば、本当にその金額が妥当かを確認し、明らかに高額すぎる場合は減額交渉してくれます。
不倫問題が終結し、将来的なトラブルも防げる
弁護士に依頼することできちんと不倫問題が終結し、将来的なトラブルも防げます。不倫問題は解決したと思っていても、あとあと問題が再浮上することがあります。
たとえば慰謝料が約束どおり支払われなかったり、不倫相手が「やっぱり納得できない」とあとから言い出したりするケースです。離婚しない選択をした場合でも、もう不倫相手と会わないと約束したにもかかわらず、隠れて関係を続けるケースも少なくありません。
弁護士に依頼した場合、ケースに合わせて合意書や公正証書を作成し、将来的なトラブルも想定したうえで進めてくれます。離婚しない場合でも、夫婦関係を継続させるための条件や違反した場合の離婚条件などを定めた夫婦間契約書を作成し、離婚時に有利になるよう対応してくれます。
弁護士に依頼することで、不倫問題を本当の意味で終結させられる可能性が高まるといえるでしょう。
精神的な支えになる
「弁護士がついている」というだけで、精神的な支えになります。調停や訴訟となると問題が長期化し、中には1年以上解決しないケースもあります。
配偶者の不倫が発覚し、ただでさえ絶望の淵にいる中、自分ですべて対応しながら調停や訴訟を乗り越えていくことは想像以上にハードです。配偶者や不倫相手の少しも反省の色が見られない、開き直ったような主張を聞いているうちに精神的に参ってしまうことも珍しくありません。
弁護士は法的なアドバイスや手続きのサポートだけでなく、依頼者の心に寄り添いながら一緒にゴールを目指してくれる存在でもあります。
不倫の慰謝料請求を弁護士に依頼する場合の流れ
弁護士に依頼する際は、まず事務所に問い合わせ、相談の予約を入れるところから始まります。その後相談、契約、交渉と進み、示談や和解成立というのが一連の流れです。ここでは、不倫の慰謝料請求を弁護士に依頼した場合の流れについて解説します。
- 電話やメールなどで弁護士事務所に問い合わせ、相談の予約を入れる
- 事務所に出向く、電話、Zoomなどの方法で相談し、慰謝料を請求できるのか、これからどうすればよいかなどのアドバイスを聞く
- 弁護士と委任契約を結び、委任契約書に署名・押印する
- 弁護士が相手方に内容証明郵便を送り、交渉する
- 示談や和解が成立し、不倫問題が解決する
1.問い合わせる
まずは相談を受けたい弁護士事務所に問い合わせ、相談の予約をします。問い合わせ方法は電話やメール、事務所によってはLINEでやりとりできるところなどさまざまです。
メールでの問い合わせであれば、24時間365日受け付けているところもあります。また、電話の段階でおおよその請求可能額を教えてもらえる場合もあるため、目安として聞いておくとよいでしょう。
電話やメールで事務所のスタッフと相談日程を打ち合わせ、相談日を予約します。
2.相談する
あらかじめ設定した日程で弁護士に相談します。事務所に直接出向く、電話、Zoomなど、方法は事務所によって異なります。
直接出向く場合でも電話やZoomの場合でも、これまでの経緯をまとめたメモや集めた証拠を手元に置いて話しましょう。依頼者の話をヒアリングしたうえで、弁護士がどの程度慰謝料を請求できるのか、今後どうすればよいのかなどを説明してくれます。
3.弁護士と委任契約を結ぶ
正式に依頼を決めたら、弁護士と委任契約を結びます。委任契約書に署名・押印すれば契約成立です。
事務所に直接出向き、その場で正式な依頼を決めたときはそのまま契約に移りますが、電話やZoomでの相談であれば、後日書類が郵送されてくるため署名・押印したものを返送します。
着手金がかかる場合はこの時点で着手金が発生し、支払い後に弁護士が業務にかかります。事務所によっては分割払いや後払いが可能です。
費用面で不安がある場合は、相談の時点で分割払いなどが可能かどうかを確認しておきましょう。
4.弁護士が相手方と交渉する
交渉に必要な準備が整ったら、弁護士が内容証明郵便によって慰謝料請求の連絡をしたうえで相手との交渉に入ります。
交渉は弁護士が進めてくれるため、依頼者が不倫相手と会ったり話したりすることはありません。依頼者は弁護士の報告をただ待っていればよいため、自分で対応する場合に比べ精神的な負担を軽減できます。
5.示談や和解が成立し問題が解決する
示談や和解が成立したら、弁護士が誓約書や示談書といった書類を作成し、両者が署名・押印します。示談は口約束でも有効ですが、誓約書や示談書を作成しておくことで、示談後に「やっぱり納得がいかない」と言い出したり支払いが滞ったりといったトラブルの回避が可能です。
示談や和解が成立しなければ、慰謝料請求訴訟を提起します。訴訟の手続きについても、引き続き弁護士に任せられます。
不倫の慰謝料請求を依頼する弁護士はどこで探す?
不倫の慰謝料請求を依頼する弁護士は、さまざまなところで探せます。
ここでは、弁護士の探し方について解説します。
- 知人から紹介してもらう場合、あらかじめ弁護士の人柄や対応の仕方、費用などを聞いたうえで相談に臨める
- 不倫問題に関する書籍を執筆している弁護士は不倫問題に精通していると考えられ、書籍を読むことで弁護士の人柄もある程度把握できる
- 弁護士会の「弁護士情報提供サービスひまわりサーチ」を利用すると、探したい条件で弁護士を探せる
- 不倫問題に強い弁護士をインターネットで探す場合、ホームページで事前にどのような事務所かを確認できるため安心して相談・依頼できる
知人からの紹介
なかなかないかもしれませんが、伝手があるなら知人から紹介してもらうのもよいでしょう。あらかじめ弁護士の人柄や対応の仕方、費用について知人から聞いたうえで相談できるため安心感があります。
もちろん、知人からの紹介というだけで決めてしまわず、正式に依頼するかどうかは相談の中でしっかり判断する必要があります。しかし、知人がその弁護士に依頼したことで問題が無事解決しているのなら、ある程度信用できると考えてもよいでしょう。
不倫問題に関する書籍の著者をあたる
不倫問題に関する書籍を執筆している弁護士に依頼するのもひとつです。
弁護士の中には、自分の得意分野に関する書籍を執筆している人がいます。不倫問題に関しても多くの弁護士が書籍を出しているため、実際に書籍を手に取ってみて、この先生に相談したいと思う弁護士がいればそこからコンタクトをとってみるとよいでしょう。
書籍を執筆しているということは、不倫問題に精通していると考えられます。また、書籍を読めば、その弁護士の人柄や仕事に対する姿勢などもある程度わかるはずです。
弁護士会
日本弁護士連合会のホームページから利用できる「弁護士情報提供サービスひまわりサーチ」で弁護士を検索するのもよいでしょう。
ひまわりサーチとは、サービスに登録している弁護士を取扱業務や事務所所在地などから検索できるサービスです。任意登録制であるため、すべての弁護士が登録している訳ではありませんが、探したい条件の弁護士をピンポイントで探せます。
絞り込み検索では弁護士の性別も指定できるため、たとえば女性の弁護士に相談したいと思ったときは、検索時に「女」にチェックを入れれば女性弁護士限定で検索可能です。
どのような弁護士であるかまではわからないため、実際にコンタクトをとるか、ひまわりサーチで得た情報からホームページを検索する必要がありますが、弁護士を探す第一歩にはなるでしょう。
参照:弁護士情報提供サービスひまわりサーチ
インターネット
不倫慰謝料を依頼する弁護士を探すなら、不倫問題に強い弁護士をインターネットで探すのがおすすめです。不倫問題に強い弁護士は、「不倫慰謝料 弁護士」のキーワードで検索すれば探せます。
事務所のコンセプトや解決実績、事例、顧客からのメッセージなども掲載されているため、複数の点から判断できるでしょう。また、多くの弁護士は、ホームページに顔写真やプロフィールも掲載しています。
どのような弁護士なのかを事前に見られるところも、安心して相談・依頼できるポイントです。全国対応している事務所や周囲にばれないよう配慮してくれる事務所など、さまざまな事務所があるため、自分に合う事務所を選ぶとよいでしょう。
不倫の慰謝料請求は自分だけで行うこともできる
不倫の慰謝料請求は「必ず弁護士に依頼しなければならない」というわけではありません。
話し合いや内容証明による書面での請求、自分で裁判を起こして請求する…という方法で、弁護士に依頼した場合と同じように自分だけで行うことも可能です。
相手が言い逃れできないほどの証拠が揃っていて、自分に法律的な知識がある程度ある場合は自分だけで慰謝料請求を行なっても良いかもしれませんが、相手が弁護士をつけた場合は、自分が要求している慰謝料からかなり減額されてしまう可能性もあります。
自分が希望している額慰謝料を手に入れる可能性を高めるためには、やはり弁護士に依頼した方が安心できるでしょう。
自分だけで交渉するデメリット
自分だけでも、うまく解決できることはあります。しかし交渉がうまくいかず、多くの時間がかかったり結局慰謝料を請求できなかったりといったことも珍しくありません。ここでは、自分だけで交渉するデメリットについて解説します。
- 感情的になり自身に不利な言動・行動をしてしまうと、逆に訴えられる可能性がある
- 直接交渉することで大きなストレスを受け、人によっては体調を崩してしまうこともある
- 個人的に請求するだけでは相手が取り合ってくれないことがある
- 「お金がないから払えない」と言われたときの対応策がわからず、相手の要求をそのまま飲んでしまう
- 証拠集めに苦労するうえ、なかなか有力な証拠を集められない
- 不倫相手がどこの誰かわからない、時効を迎えたなどで、結局慰謝料請求できないおそれがある
感情的になり自身に不利な言動・行動をしてしまう
弁護士を間に入れず当事者だけで交渉しても、感情的になってしまい冷静な話し合いができません。中には、話し合いの際相手と口論になり、自身に不利な言動や行動をしてしまうケースもあります。
たとえば口論から取っ組み合いの喧嘩に発展し、相手にけがを負わせてしまうと、いくら不倫問題においては被害者でも逆に訴えられるおそれがあります。また、相手が交渉に応じないからといって「応じなければ家族や職場にばらす」というようなことを言ってしまうと、脅迫にあたる可能性があるため要注意です。
冷静な話し合いができればよいですが、難しいなら当事者だけで交渉を進めるのではなく弁護士への相談を検討したほうがよいでしょう。もしくは、第三者を交えて交渉することをおすすめします。
直接交渉することで大きなストレスを受ける
大きなストレスを受けるのも、相手と直接交渉するデメリットです。通常、配偶者が不倫をしたという事実だけでも相当なストレスを感じるものです。
それに加え、不倫相手に会って慰謝料について話し合わなければならないとなると、よほど強い精神力がないかぎり苦痛に感じるでしょう。相手に反省が見られる場合や慰謝料の支払いに応じてくれるならまだよいですが、自分には非がないと思っていたり、開き直ったりするケースもあります。
そのような相手と交渉していくことは想像以上にストレスです。人によっては、極度のストレスから体調を崩してしまうこともあります。
相手が取り合ってくれない場合がある
相手が取り合ってくれない場合があることも、当事者間で交渉するデメリットのひとつです。中には慰謝料を請求しても、無視したりごまかしたりする人もいます。
弁護士から内容証明郵便が届いたり裁判所から訴状が送られてきたりすれば、多くの場合放置はしないでしょう。しかし、こちらが個人的に請求しているだけでは応じてもらえないことがあり、うまく交渉が進まないおそれがあります。
相手の提示する金額で合意してしまう
当事者だけで交渉を進めた場合、相手の提示する金額で合意してしまう可能性があります。「お金がないからこれ以上は払えない」と相場よりも明らかに少ない金額を提示され、相手の言葉に従ってしまうケースです。
たしかにお金がない場合、本人による支払いや一括での支払いは難しいかもしれません。「ない」と言われれば、そのまま引き下がるしかないように思えるでしょう。
しかし、「お金がない」というのが本当かどうかはわかりません。相手が提示する金額で合意してしまう前に、資力調査を行う必要があるでしょう。
また、本当にお金がないなら、親や親族に立て替えてもらう方法や分割で支払ってもらう方法などもあります。当事者だけで交渉するとこのような対応策がわからず、相手の要求をそのまま飲んでしまいやすくなる点に注意が必要です。
なかなか有力な証拠が集められない
弁護士を頼らず自分で証拠集めをしようと思っても、なかなか有力な証拠を集められない可能性があります。不倫による慰謝料が認められるためには、明らかに不倫しているとわかる決定的な証拠が必要です。
しかし、たとえば配偶者を尾行して、不倫相手とともにホテルに入っていく姿を写真に収めようと思っても、見つかったら終わりという緊張感の中うまく撮影することは難しいでしょう。撮れたとしても写りが悪く、配偶者だと特定できないかもしれません。
それだけでなく、証拠を押さえようとしていることに相手が感づけば、それまで以上に警戒するようになり、ボロを出さなくなります。そうなれば、証拠集めがさらに難航するでしょう。
結果的に慰謝料請求できない可能性がある
不倫慰謝料について当事者だけで交渉を進めた結果、以下の理由から慰謝料請求できない可能性があります。
- 不倫相手がどこの誰かわからない
- 有力な証拠が集められず、不倫を証明できなかった
- いつの間にか時効を迎えていた
不倫の事実はあっても、上記の理由から慰謝料請求できないことがあります。
まずは、不倫相手がどこの誰だかわからないケースです。不倫相手に慰謝料を請求するには、相手を特定する必要があります。しかし、配偶者とLINEやSNSなどでやりとりしていることはわかっても、相手の本名や住所まで自力で特定することは困難です。
また、確実に不倫していても、証拠がないと慰謝料請求は認められにくいです。とくに相手が不倫を否定している場合は難しいでしょう。
そのほか、知らないうちに時効を迎えていて請求できなくなってしまうケースも考えられます。謝料請求には、「不倫相手と不倫の事実を知ってから3年」という期限があります。
不倫が判明し、その相手がわかったときから3年経つと、慰謝料請求できなくなってしまうのです。配偶者に対する慰謝料請求の時効は、離婚から3年です。不倫に気づいたら、すぐに動き出す必要があるでしょう。
このように、自分で対応した場合、さまざまな理由からうまくいかない可能性があります。難しいと感じたら、弁護士に頼ることも検討したほうがよいでしょう。
不倫による慰謝料の相場は50万円〜300万円程度
不倫による慰謝料の相場は「50万円〜300万円程度」であるといわれています。金額に幅があるのは、不倫によって離婚した場合と離婚には至らなかったケースとで、慰謝料の相場が異なるためです。
不倫による慰謝料とは、不貞を働いた配偶者とその不倫相手から受けた精神的苦痛に対する損害賠償です。離婚に至ったときのほうが「婚姻関係を継続できないほど大きなダメージを受けた」と判断されるため、離婚に至らなかった場合よりも慰謝料が高額になる傾向にあります。
離婚なし |
50万円〜150万円程度 |
離婚あり |
200万円〜300万円程度 |
慰謝料請求額に関しては、離婚をしたかどうかだけでなく、不貞行為の回数や夫婦間に幼い子どもがいるかどうか、婚姻期間の長さなども関係します。
ただし不倫による慰謝料には、明確な基準が法的に定められているわけではありません。そのため裁判による方法ではなく話し合いによって決着をつける場合は、問題を長期化させないために相場よりも多く慰謝料を支払うことで和解を目指すこともあります。
不倫慰謝料が高額になりやすいケースや減額されやすいケースについては後述します。
不倫の慰謝料請求を依頼した場合の弁護士費用の相場
弁護士費用は一律ではなく、案件の内容や受け取った慰謝料の金額などによってかかる費用が異なります。
発生する可能性のある費用は以下の通りです。
- 相談料は初回無料や30分5,000円〜が相場
- 着手金の相場は10万円〜30万円程度
- 報酬金は受け取った金額の10%〜20%程度
- 日当は1日あたり3万円〜5万円程度
- 実費(事務手数料)の相場は1万円〜3万円程度
それぞれの費用について、詳しく解説します。
相談料は初回無料や30分5,000円〜が相場
弁護士に相談した場合の相談料は、30分につき5,000円〜が相場です。
ただし、事務所によっては初回無料のところや何度でも無料で相談できるところもあります。
注意点は、無料の種類を確認したうえで利用することです。
無料は無料でも、「初回だけ」無料なのか「何度でも」無料なのかによって、2回目以降の相談で費用が発生するかどうかが違ってきます。
「無料」という単語だけですべて無料と思い込んでしまうと、予想外に費用がかかってしまうことがあるため事前に確認しておきましょう。
なお、無料と謳っていない事務所でも、相談後正式に依頼すると相談料をサービスしてもらえるケースが多いです。
着手金の相場は10万円〜30万円程度
着手金の相場は10万円〜30万円程度です。
着手金とは弁護士に動いてもらうための費用です。結果にかかわらず発生し、キャンセルした場合でも原則返金されません。
着手金は不倫慰謝料を請求する相手との交渉、調停、裁判など、依頼内容によってかかる金額が異なります。配偶者に慰謝料請求する場合は離婚も問題になるケースが多く、着手金の金額が上がりやすい傾向にあります。
また、事務所によっては「交渉◯時間以内で◯万円」など、時間単位で決まっていることもあり、その場合は交渉に時間がかかったり調停や裁判が長引いたりすることで高額になる可能性があるため注意が必要です。
報酬金は受け取った金額の10%〜20%程度
報酬金は、実際に受け取った慰謝料の10%〜20%程度が相場です。
報酬金とは、弁護士に依頼した仕事が成功に終わった場合に発生する費用のことで、「成功報酬」ともいいます。
そのため、いくら慰謝料がもらえるかによってかかる金額が異なり、失敗に終わったときは請求されません。
たとえば報酬金が10%に設定されているなら、100万円の慰謝料を受け取ると成功報酬として10万円かかります。
弁護士事務所によっては、着手金無料で成功報酬が高めに設定されているところや、依頼者の利益に応じて割合が変わるケースもあります。
日当は1日あたり3万円〜5万円程度
日当の相場は1日あたり3万円〜5万円程度です。
また、丸1日ではなく半日の稼働であれば1万円〜3万円程度が相場です。
日当とは、弁護士が事務所以外の場所に出張して業務を行ったときにかかる費用をいいます。
たとえば、交渉のために不倫相手のもとを訪問する際などにかかります。
しかし、事務所から動くことがなければ発生しません。事務所によっては内容によって金額が異なる場合や、日当というかたちでは設定されておらず、着手金にあらかじめ含まれているケースもあります。
実費(事務手数料)の相場は1万円〜3万円
実費(事務手数料)の相場は1万円〜3万円程度です。
実費とは弁護士への報酬ではなく、不倫慰謝料を請求するにあたって実際にかかった費用のことをいいます。
たとえば、交渉や出廷の際にかかった交通費や書類のコピー代、郵送料などが該当します。
不倫の慰謝料請求を弁護士に依頼した場合の費用例
実際に不倫の慰謝料請求を弁護士に依頼した場合、合計でどの程度費用がかかるのかと言うことが気になるのではないでしょうか。
実際に弁護士に依頼した際にかかる費用例を、以下のケース別に紹介します。
- 交渉のみで解決し離婚に至った例
- 調停によって解決し離婚に至った例
- 訴訟によって解決し離婚に至った例
- 不倫相手にのみ慰謝料をして、離婚には至らなかった例
交渉のみで解決し離婚に至った例
交渉のみで解決し、離婚に至ったケースの費用例は以下のとおりです。
相談料 |
無料 |
着手金 |
11万円 |
報酬金 |
20万円 |
日当 |
5万円(1日×5万円) |
実費(事務手数料) |
1万1,000円 |
総額 |
37万1,000円 |
※上記金額はすべて税込金額です。
※慰謝料の金額は200万円、報酬金は10%で計算しています。
交渉のみで解決しているため、その分着手金が調停・訴訟で解決したケースよりも費用が抑えられています。
調停によって解決し離婚に至った例
調停によって解決し、離婚に至ったケースの費用例は以下のとおりです。
相談料 |
無料 |
着手金 |
16万5,000円 |
報酬金 |
20万円 |
日当 |
15万円(3日×5万円) |
実費(事務手数料) |
2万2,000円 |
総額 |
53万7,000円 |
※上記金額はすべて税込金額です。
※慰謝料の金額は200万円、報酬金は10%で計算しています。
交渉では解決せず調停に進んでいるため、交渉のみで解決したケースよりも着手金や日当、実費が増えています。
訴訟によって解決し離婚に至った例
訴訟によって解決し、離婚に至ったケースの費用例は以下のとおりです。
相談料 |
無料 |
着手金 |
22万円 |
報酬金 |
20万円 |
日当 |
15万円(3日×5万円) |
実費(事務手数料) |
3万3,000円 |
総額 |
60万3,000円 |
※上記金額はすべて税込金額です。
※慰謝料の金額は200万円、報酬金は10%で計算しています。
訴訟にまで発展していることから、交渉・調停で解決したケースより着手金や実費が高額になっています。
離婚には至らず不倫相手にのみ慰謝料請求した例
結局離婚には至らず、不倫相手のみに慰謝料請求した場合の費用例は以下のとおりです。
相談料 |
無料 |
着手金 |
11万円(交渉) |
報酬金 |
10万円 |
日当 |
5万円(1日×5万円) |
実費(事務手数料) |
1万1,000円 |
総額 |
27万1,000円 |
※上記金額はすべて税込金額です。
※慰謝料の金額は100万円、報酬金は10%で計算しています。
上記のケースは交渉で解決しており、さらに離婚にも至っていないため、着手金や報酬金がほかのケースよりもかかっていません。そのため総額も、20万円台とほかのケースより安く済んでいます。
弁護士費用をできるだけ抑える方法
弁護士費用が高額だと、慰謝料をもらえてもあまり手元に残らず、今後の生活が不安ということもあるでしょう。弁護士費用を抑えるには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、弁護士費用をできるだけ抑える方法について解説します。
- 複数の事務所で無料相談を受け、比較したうえで正式に依頼するところを選ぶ
- 関係がこじれて訴訟になるとさらに費用がかさむため、早めに弁護士に依頼するのがおすすめ
- 費用について細かく確認し納得したうえで、費用が安めに設定されている事務所に依頼する
- どうしても費用を抑えたい、費用を支払えない可能性があるなら、法テラスの利用を検討する
無料相談を活用し複数の法律事務所を比較する
弁護士費用をできるだけ抑えるためには、無料相談を活用するのがおすすめです。
無料相談を実施している事務所を複数ピックアップし、実際にいくつか相談してみましょう。相談の中で費用について詳しく質問し、事務所同士を比較しながら正式に依頼するところを選ぶと費用を抑えられます。
また、複数の事務所を比較することは、費用面だけでなく「相談しやすい弁護士」や「説明のわかりやすい弁護士」を選ぶという面でも有効です。総合的に検討し、依頼したいとより強く思う事務所を選択するとよいでしょう。
早い段階で弁護士に相談する
早い段階で弁護士に相談するのも費用を抑えるコツのひとつです。早いうちに弁護士に依頼すれば交渉で解決できる問題でも、関係がこじれてしまうと交渉では解決できなくなるおそれがあるためです。
交渉に応じてもらえず話し合いもできない場合、訴訟を起こすしかありません。訴訟になると、交渉で済むケースよりも弁護士費用が高額になってしまいます。
また、問題が泥沼化・長期化することで精神的な負担がさらに増す可能性もあります。早い段階で弁護士に相談することは、問題を早期に解決し、精神的苦痛から早く解放されるという点でもおすすめです。
費用が安めに設定されている法律事務所に依頼する
費用を安めに設定している法律事務所に依頼するのもひとつです。多くの法律事務所が、慰謝料請求にかかる費用をホームページに掲載しています。費用が抑えられそうな事務所をチェックし、無料相談を受けてみるとよいでしょう。
ただし、ホームページ上に掲載されている情報がすべてであるとはかぎりません。中には、ホームページには記載されていない費用があったり、「内容による」と記載されている費用が予想以上に高額だったりということもあり得ます。
ホームページの情報だけで判断せず、実際に細かく確認し、納得したうえで依頼することが大切です。
法テラスを利用する
どうしても費用を抑えたい人や、弁護士に相談したいけど費用を支払えるか心配という人は、法テラスの利用を検討するのもよいでしょう。
法テラスとは、経済的に余裕のない人が法的トラブルを解決するためのサービスを受けられるようつくられた国の機関です。無料で法律相談を受けられるほか、弁護士費用を立て替えてもらえます。
また、立て替えてもらった費用の返済は、たとえば月々1万円など、小額から行えます。
ただし、法テラスには収入や保有資産が一定額以下であることなどの条件があり、誰でも利用できるわけではありません。審査の結果認められれば利用できますが、経済的に余裕があると判断された場合は法テラスを利用できないため注意しましょう。
参照:日本司法支援センター「法テラス」
不倫による慰謝料請求を依頼する弁護士の選び方
「弁護士に依頼する」といっても、どのような弁護士でもよいというわけではありません。弁護士によって、得意分野や人柄、対応の仕方などが異なるためです。ここでは、不倫慰謝料請求を依頼する弁護士の選び方について解説します。
- 不倫・離婚問題の解決実績が多い弁護士事務所を選ぶ際は、ホームページの情報だけで判断せず実際に相談してから決める
- 有名で評判のよい事務所でも、相談しにくい・相性が悪いと感じたらやめておいたほうが無難
- 費用が不透明だと総額でいくらかかるかがわかりにくいため、弁護士費用が明確でわかりやすい事務所を選ぶ
- 質問や相談に的確なアドバイスをくれる事務所は、不倫慰謝料請求に関して幅広い知識と経験があると判断できる
不倫・離婚問題の解決実績が多い
弁護士選びに迷ったら、不倫・離婚問題の解決実績が多い弁護士事務所を選択するのもひとつです。
解決実績が多いということは、その道に精通していると判断できるためです。実務を通して多くのケースを経験してきていると考えられるため、依頼者のケースに合ったアドバイスが期待できます。
解決実績や事例は、ホームページによく掲載されています。弁護士選びの際は参考にしてみるとよいでしょう。
ただし、解決実績だけで判断することはおすすめできません。相談しにくかったり費用が高かったりなど、ほかの要素で「合わない」と感じる可能性もあるためです。実際に相談してから依頼するかどうか決めることをおすすめします。
相談しやすい・相性がよい
相談しやすさや相性も、弁護士選びでは重要なポイントです。相談しにくい、相性がよくないと感じてしまうと疑問に思ったことを聞いたりアドバイスを求めたりしづらく、よい結果につながらない可能性があるためです。
いくら有名で評判のよい弁護士でも、相談の段階で相談のしづらさや相性の悪さを感じた場合、正式に依頼するのはやめておいたほうがよいでしょう。自分に合うかどうかを見極めるためにも、一度無料相談を試してみることをおすすめします。
弁護士費用が明確でわかりやすい
弁護士費用が明確でわかりやすいかどうかも大切な部分です。費用が不透明だと結局総額でいくらかかるかがわからず、予想外の費用に驚く結果になりかねません。
似たような事件はあってもまったく同じケースは存在しないため、弁護士費用の料金体系が不透明になりやすいのはたしかです。しかし、だからといってきちんと説明してくれない弁護士はやめておいたほうがよいでしょう。
質問や相談に的確なアドバイスをくれる
質問や相談に的確なアドバイスをしてくれるかどうかも重要です。的確なアドバイスができる=不倫慰謝料に関して幅広い知識と経験があると判断できるためです。
反対に、どうとでも取れる曖昧な回答しかしてもらえない場合や、回答が答えになっていないようなケースは、不倫慰謝料の請求に関する知識や経験があまりないのかもしれません。
一度無料相談を受けてみて、どのようにアドバイスしてくれるのかといった部分も確認しておくとよいでしょう。
弁護士に相談する際の注意点や準備すること
弁護士に相談する際には、注意すべきポイントがあります。また、何も準備せず飛び込みでというわけにはいきません。ここでは、弁護士に相談する際の注意点や準備することについて解説します。
- 相談の際はうまく話せない可能性があるため、事前にこれまでの経緯をまとめておくと相談時間を無駄にせずに済む
- 慰謝料を請求するまでの計画が台無しになってしまうため、弁護士には隠しごとをしたり嘘をついたりしないよう注意する
- 相談後そのまま契約に進む場合に備えて、「本人確認書類」と「認印」を持参する
事前にこれまでの経緯をまとめておく
無料相談の予約を入れたら、当日までにこれまでの経緯をまとめておきましょう。何も手元にない状態で相談に臨んでも、緊張や怒りからうまく説明できない可能性があるためです。メモにまとめておけば、メモを見せるだけで十分内容が伝わります。
また、相談時間は多くの場合30分〜1時間程度と時間が決まっており、無制限ではありません。相談時間を有効に使うためには、無駄なくスムーズに事情を説明する必要があります。
以下のような内容を、時系列でメモしておくとよいでしょう。
- 不倫を疑うに至ったできごと
- 不倫を確信したできごと
- 不倫が発覚する前の配偶者の様子
- 不倫をしていると思われる頻度
- 不倫が発覚したあとの配偶者の様子
うまくまとめられそうにない場合は、箇条書きでも構いません。できるだけ詳細に書きましょう。そのほか、証拠になりそうなものはすべて持参しましょう。
証拠については後述します。
隠しごとをせずすべてを打ち明ける
弁護士には、隠しごとをせずすべてを打ち明けることが重要です。自分が不利になりそうだからと、隠したり嘘をついたりしてはいけません。
なぜなら、隠された事実を弁護士が知らないまま相手との交渉や訴訟に進み、そのタイミングで判明した場合、弁護士の計画が台無しになってしまうためです。場合によっては、望んでいたとおりの結果にならないおそれがあります。
周囲に知られたくないため打ち明けにくいという場合でも、弁護士には守秘義務があるため秘密が漏れることはありません。弁護士には隠しごとをしたり嘘をついたりせず、すべて正直に話しましょう。
契約に備えて本人確認書類や認印を持参する
相談後、その場で契約することになったときに備えて、「本人確認書類」や「認印」を持参しましょう。いったん保留にし、後日あらためて契約するのでも構いませんが、状況によっては早く行動したほうがよい場合もあります。
なお、本人確認書類とは、運転免許証やパスポートといった写真つきの証明書をいいます。認印は委任契約書に押印するために必要です。
不倫による慰謝料請求には証拠が必要不可欠
不倫による慰謝料請求を行うためには、不倫の証拠が必要不可欠です。「証拠がなければ100%慰謝料請求ができない」とは言いきれませんが、証拠がなく不倫の当事者が不倫を否定している場合、裁判で慰謝料請求が認められる可能性は低いでしょう。
そのため、できるだけ有力な証拠をできるだけ多く集め、不倫の事実を証明する必要があるのです。
証拠につながりそうなものを持参する
弁護士への相談の際や裁判には、証拠につながりそうなものを持参しましょう。しかし「証拠」といっても、いったいどのようなものを持参すればよいのかわからない人もいるのではないでしょうか。ここでは、証拠について詳しく解説します。
- ホテルに出入りする写真や不貞行為があったとわかるメールやLINEなど、不倫の時期や頻度、内容がわかるもの
- 写真やLINEのやりとり、証言など、もともと良好だった夫婦関係が、不倫によって破綻したことがわかるもの
- 病院の診断書や領収書など、配偶者が不倫したことが原因で病を患ったことがわかるもの
不倫の時期や頻度、内容がわかるもの
不倫を証明するためには、不倫の時期や頻度、内容がわかるものが必要です。
たとえば、以下のようなものが該当します。
- ホテルに出入りする様子を撮影した写真・動画
- 不貞行為があったとわかるメールやLINE
- 不貞行為の事実を認める内容の音声
- 2名で宿泊したことがわかるホテルの領収書
- パスポートや旅行の明細
- クレジットカードの利用明細書
- 電話の通話履歴
重要なのはいつから不倫が始まり、どのような頻度で行われていたかです。不倫の期間や回数は、慰謝料の金額に大きく関わるためです。
たとえば1回きりの不倫よりも、5年や10年など、長期にわたって不倫が行われているほうが被害者の精神的ダメージが大きいと考えられるため、その分慰謝料も高額になりやすい傾向にあります。
そのため、証拠は「いつから」「どのような頻度で」不倫が行われていたかがわかるよう、できるだけたくさん集めることが大切です。
夫婦関係が不倫によって破綻したと証明できるもの
不倫慰謝料を請求するためには、夫婦関係が「不倫によって破綻した」と証明できなければなりません。配偶者が不倫に走る前から夫婦仲が壊れていた場合は請求が難しくなります。そのため、不貞行為が始まるまでは夫婦関係が良好だったとわかるものが必要です。
たとえば、以下のようなものが該当します。
- 不貞行為が始まる前の、円満だったことがわかる家族写真
- 夫婦仲が良好とわかるメールやLINEでのやりとり
そして以下のように、不倫をきっかけに夫婦関係が破綻したと証明できるものも用意しなければなりません。
- 夫婦が普段連絡を取り合っていないことがわかるLINE画面や着信履歴
- 食事や睡眠をともにしていないことがわかる写真・証言
- 帰宅時間が遅くなったり外泊が増えたりといったことがわかる写真・証言
- 不倫前は性行為をしていたが、不倫をきっかけに拒むようになったことがわかる証言・メモ
不倫慰謝料を請求するためには、上記のように「円満だった夫婦関係が不倫によって破綻した」と証明できる証拠を揃える必要があります。
相手の不倫で精神的苦痛を受けたと証明できるもの
不倫が原因で精神的苦痛を受けたことに対して慰謝料を請求する場合、精神的苦痛を受けたとわかるものが必要です。たとえばうつ病や急性胃炎など、通院が必要になるほどの症状が出ている場合、病院で診断書を交付してもらえば配偶者の不倫が原因で健康を害したという証明になります。
ただし診断書があるからといって、不倫とうつ病の因果関係が必ず認められるとはかぎりません。診断書さえあれば慰謝料が請求できるとなれば、請求された側が非常に不利であるためです。
そのため、診断書とあわせて通院した時期や回数がわかるものも残しておくことをおすすめします。診察を受けた際の領収書や処方箋のコピーなど、思いつくものはすべて残しておきましょう。
不倫慰謝料を請求できるケース
不倫をされたら、必ず慰謝料が請求できるわけではありません。慰謝料を請求するためには条件があり、慰謝料を請求できるかどうかは、その条件をクリアできているかどうかにかかっています。ここでは、不倫慰謝料を請求できるケースについて解説します。
- 不貞行為の事実があり、それを証明できる場合
- もともとは良好だった夫婦関係が不倫をきっかけに破綻した場合
- 既婚者だと不倫相手が知っていた、または知らなくても不注意によって気づけなかった場合
不貞行為があったと証明できる
不倫慰謝料を請求するためには、配偶者と不倫相手が肉体関係にあることを証明する必要があります。
実際の現場は押さえられなくても、2人でラブホテルを長時間利用したことがわかる映像や2人で旅行に行き同じ部屋に宿泊したことがわかるものがあれば、「肉体関係がある」と判断される可能性は高いです。
ただし、不貞行為が確定していてもそれを証明できなければ請求が難しくなるため、できるだけたくさん証拠になりそうなものを集めることをおすすめします。
なかなか相手が隙を見せず証拠集めが難しい場合は、弁護士にアドバイスを求めるとよいでしょう。ショックが大きく、不倫の現場を見たくないなら探偵に依頼する方法もあります。
不倫によって夫婦関係が破綻した
不倫慰謝料の請求には、もともと良好だった夫婦関係が不倫によって破綻している必要があります。不倫は、その行為によって夫婦関係を侵害・破壊してはじめて「不法行為」になると考えられるためです。
不倫関係が始まるまで夫婦仲が良好であったなら、不倫によって夫婦仲に亀裂が生じたと判断できるため、請求が認められる可能性は高いでしょう。
なお、「不倫によって夫婦関係が破綻した」と認められるためには、その事実の裏付けになるものを用意する必要があります。不倫開始前・開始後それぞれの夫婦関係の変化がわかる、メールやLINEのやりとりや写真などを用意しておきましょう。
既婚者だと不倫相手が知っていた・知り得た
相手が既婚者だと不倫相手が知っていた場合や不注意によって知らなかったときは、配偶者だけでなく不倫相手にも慰謝料請求できる可能性があります。
たとえば以下のケースが該当します。
- 相手(配偶者)が既婚者だと知りながら不倫関係になった
- 相手(配偶者)が既婚者だとは知らなかったが、結婚指輪など、結婚していることに気づくチャンスは十分あった
既婚者だと不倫相手が知らなくても、不注意によって気づけなかったときは不倫相手への請求が認められる可能性があります。
また、一見不注意だと判断できないようなケースでも、メールやLINEのやりとりなどから既婚者と知っていたことが読み取れるのであれば、慰謝料請求の対象になる場合があります。
不倫慰謝料を請求できないケース
ここでは、不倫慰謝料を請求できないケースについて解説します。
- 付き合っていても肉体関係にない場合、基本的に慰謝料は請求できない
- 不倫前から夫婦関係が破綻していた場合、よほどの事情がないかぎり慰謝料の請求は認められない
- 不倫の事実があっても、証拠がなければ慰謝料請求は難しい
- 不倫相手に請求するためには、故意(相手が既婚者だと知っていて不貞行為をした)や過失(自分の不注意によって相手が既婚者だと知らなかった)が必要
- 不倫の事実とその相手を知ったときから3年、または不倫関係の開始から20年経過すると、時効によって慰謝料が請求できなくなる
付き合っているが肉体関係はない
付き合っているという事実はあっても、肉体関係にない場合は基本的に慰謝料請求できません。肉体関係がないと「不倫」や「不貞行為」とは呼べないためです。
たとえば、ただ一緒に食事したり手をつないだり、キスやハグをしただけではたとえ証拠があっても認められない可能性が高いことを覚えておきましょう。
ただ、不貞そのものはなくとも、交際しているような親密な間柄にあり、それによって夫婦関係が破綻してしまっているようなケースであれば慰謝料を請求できる可能性はありますので、判断が難しい場合は弁護士に相談してみましょう。
不倫前から夫婦関係が破綻していた
不倫前から夫婦関係が破綻していた場合、よほど特別な事情がないかぎり不倫慰謝料の請求は認められません。前述のとおり、不倫慰謝料の請求には「不倫によって夫婦関係が侵害・破壊された」といえる状態が必要であるためです。
もともと関係が壊れているなら不倫によって破壊されたとはいえず、保護される利益も存在しないため慰謝料の請求が認められないのです。
なお、「夫婦関係が破綻している」状態とは、「夫婦関係が修復される見込みがない」状態をいいます。たとえば、気持ちがすれ違っている、離婚を望んでいるというだけでは破綻しているとはいえません。
不貞行為をした証拠がない
不貞行為の事実があっても、証拠がなければ慰謝料請求は難しいでしょう。
相手が不倫を認めているなら、証拠が不十分でも慰謝料請求できる可能性はあります。しかし、否定しているのであれば有力な証拠を集め、不倫を立証しなければなりません。
配偶者の不倫に気づいたら、証拠になりそうなものをできるだけ多く集めましょう。実際証拠になるかならないかはあとで判断すればよいため、とにかく配偶者の行動を観察し、多くの証拠を集めることが重要です。
不倫相手に故意や過失があるといえない
不倫相手に故意や過失があるといえない場合は、不倫相手への慰謝料請求が認められないことがあります。不倫相手への請求が認められるためには、不倫相手が既婚者だと知っている(故意)、または不注意によって知らない(過失)ことが必要とされているためです。
たとえば、配偶者がまるで独身のように振る舞っていて、不倫相手に気づく術がなかったようなケースなら、不倫相手には故意も過失もないと判断される可能性があります。
ただし、不倫相手には請求できなくても、不貞行為の事実があり不倫前から夫婦関係が破綻していたなどほかの条件が整っているなら配偶者への請求は可能です。
慰謝料請求権が時効で消滅している
いくら不貞の事実や証拠が揃っていても、慰謝料請求権が時効によって消滅していると慰謝料請求できません。慰謝料請求権の消滅時効は、以下のうちどちらかの期間が経過することで成立します。
- 不倫の事実とその相手を知ったときから3年
- 不倫関係の開始から20年
配偶者が不倫をしていることと、その相手を知ったときから3年で慰謝料請求権は消滅します。不倫に気づけなかった場合は、不倫が開始してから20年です。
なお、時効が完成すると請求はできなくなりますが、相手が自主的に支払うなら受け取りは可能です。
参照:民法|e-Gov法令検索「民法第724条」
不倫慰謝料が高額になりやすいケース
夫婦関係や不倫の状況によっては、不倫慰謝料が増額されることがあります。ここでは、慰謝料が高額になりやすいケースについて解説します。
- 婚姻期間や不倫期間が長いほど高額になりやすいが、「いつから夫婦関係が破綻していたか」がポイントになる
- 夫婦間に幼い子どもがいる場合や、不倫された妻が妊娠中のケースは高額になる傾向にある
- 不倫によって不倫相手が妊娠・出産した、または不倫した妻が不倫相手の子どもを出産し、不倫相手が認知した場合は高額になりやすい
- DVやモラハラなど、不倫以外に悪質な行為を受けていると高額の慰謝料が認められやすい
- 不倫相手が高収入、または社会的地位が高いと、高額になる傾向にある
婚姻期間や不倫期間が長い
婚姻期間や不倫期間が長いと、不倫慰謝料が高額になりやすい傾向にあります。婚姻期間や不倫期間が長ければ不倫された側の精神的苦痛が増し、婚姻関係を侵害された程度がより重くなると考えられるためです。
どの程度の長さを「長い」と判断するかは、以下の基準を参考にしてください。
- 5年以内:短期
- 5年〜10年:中期
- 10年以上:長期
ただし、婚姻期間や不倫期間が長くても、不倫前から夫婦関係が破綻していた場合はそもそも慰謝料請求が認められない可能性が高いです。高額の慰謝料が認められるためには、「不倫をきっかけに夫婦関係が破綻したか」がポイントになるでしょう。
夫婦間に幼い子どもがいる
夫婦間に幼い子どもがいる場合も、高額の慰謝料が認められやすいケースのひとつです。幼い子どもがいるにもかかわらず不貞行為を続けることは子どもに悪影響をおよぼすおそれがあり、不倫された配偶者にとってもダメージが大きくなると考えられるためです。
子どもがまだ生まれておらず、不倫された妻が妊娠中である場合も高額になりやすい傾向にあります。
ただし、子どもがすでに成人しているときは、子どもがいることを理由に慰謝料が増額されることはあまりないでしょう。
不倫によって子どもを妊娠・出産した
慰謝料が高額になりやすいケースには、不倫相手が夫の子どもを妊娠・出産した場合や、妻が不倫相手の子どもを出産し、その子どもを不倫相手が認知した場合も挙げられます。
上記のようなケースでは、不倫された側は通常のケースよりも大きな精神的ダメージを受けると考えられるためです。
不倫された側にとって信じがたい行為が婚姻期間中に行われていることや、配偶者と不倫相手が子どもを通じて今後もつながり続けることになる点も、高額の慰謝料が認められる要因といえるでしょう。
不倫以外にも悪質な行為を受けている
不倫以外にも悪質な行為を配偶者や不倫相手から受けていると、高額の慰謝料が認められる可能性があります。
悪質な行為とは、たとえば以下のような行為をいいます。
- DV
- モラハラ
- 別居後経済的な援助をしない
- わざと不倫を見せつける
- 電話やメールなどによる嫌がらせ行為
- ストーカー行為
不倫に加えて以上のような行為があると、不倫された側の精神的苦痛が増すとして慰謝料の増額が認められる傾向にあります。
不倫相手が高収入・社会的地位が高い
不倫相手が高収入・社会的地位が高い場合、不倫相手への慰謝料が高額になる傾向にあります。本人の立場を考慮すると、実に身勝手で悪質な行為であると判断できるためです。
なお、社会的地位が高いといえるのは、たとえば不倫相手の職業が医師や会社経営者などが該当します。
不倫慰謝料が減額されやすいケース
ケースによっては、不倫慰謝料が減額されることがあります。ここでは、慰謝料が減額されやすいケースについて解説します。
- 不貞行為が数回のみの場合や不倫が短期間である場合、慰謝料が減額されることが多い
- 相場を大きく上回る額の慰謝料を請求すると、認められず減額されることが予想される
- 配偶者や不倫相手がすでに社会的制裁を受けていると、慰謝料が減額されやすい
不貞行為が数回のみ・不倫が短期間
不貞行為が数回のみである場合や不倫が短期間のケースは、慰謝料が減額されることがあります。たとえば一度きりの過ちや、一度きりではなくても期間が数カ月と短い場合はそれほど悪質性がなく、不倫された側が受けるダメージも小さいと判断されるためです。
また、一夜かぎりの関係など、お互いをよく知らないまま不貞行為におよんだ場合、不倫相手が配偶者のことを既婚者だと知らない、または気づけないケースも珍しくありません。その場合、不倫相手への請求は難しいかもしれません。
相場を大きく上回る額の慰謝料を請求した
慰謝料の請求額についてはとくに定めはありません。しかし、だからといって相場を大きく上回ってしまうと、減額される可能性が高いです。
たとえば、200万円〜300万円が相場であるところ、500万円やそれ以上の慰謝料を請求した場合は、よほどのことがないかぎり大きく減額されることが予想されます。
すでに社会的制裁を受けている
配偶者や不倫相手がすでに社会的制裁を受けていると、慰謝料の請求額が減額される傾向にあります。
社会的制裁とは、以下のようなことをいいます。
- 不倫が原因で左遷や降格処分を受けた・退職に追い込まれた
- 不倫が原因で離婚した(W不倫の場合)
- 不倫が周囲に知れ渡り、社会的評価が低下した
上記のような制裁を受けている場合、不倫した側は不倫をしたことに対する罰をすでに受け、不倫された側も受けたダメージがある程度和らいでいると考えられます。そのため、受けた制裁の内容によっては慰謝料が減額されるのです。
まとめ
不倫慰謝料の請求を依頼する弁護士の選び方や費用相場、依頼する際の流れについて解説しました。
弁護士費用は、依頼内容によって異なります。たとえば交渉だけで解決した場合と訴訟に発展したケースとでは、訴訟に発展したケースのほうが高額になりやすい傾向にあります。
また、報酬金は受け取れる慰謝料の金額に影響されるため、高額の慰謝料が認められたときと減額された場合とでは、慰謝料が高額になった場合のほうが報酬額も高くなるでしょう。
弁護士に依頼すると、決して安いとはいえない費用がかかります。しかし、弁護士が関与したときとそうでない場合とでは、請求できる慰謝料額に大きな差が出ることがあります。
費用面に不安があるなら、できるだけ費用が安く設定されている事務所を選んだり法テラスの利用を検討したりなど、工夫する必要があるでしょう。
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