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2025年04月現在

婚約破棄の慰謝料相場は?適正な慰謝料を得るためのポイントを解説

婚約破棄 慰謝料 相場

結婚を約束していた相手から婚約を破棄された側は、結婚への期待を裏切られたことで精神的に大きなショックを受けることになります。そのショックを少しでも和らげるため、婚約を破棄した相手に対して慰謝料を請求したいと考えている方もいるでしょう。

実は、婚約破棄の場合でもその理由が不当なものであれば、婚約を破棄した相手に対して慰謝料を請求できます。相場は30万~200万円ですが、下記の要因で慰謝料額は大きく前後します。

  • 交際期間
  • 婚約破棄時に妊娠していた
  • 寿退社済みだった
  • 相手による浮気やDVがあった
  • すでに同居している

場合によっては、相場よりも高額な慰謝料が認められる可能性もあります。ただし、婚約破棄で慰謝料を請求するには、第三者から見て婚約していたことや、相手が原因で婚約破棄になったことが分かる証拠が必要です。

婚約は法的に守られるべき「契約」をして扱われますが、口約束でも可能なため、相手が「婚約などしていない」と主張した場合、証拠がなければ慰謝料の請求はできません。

本記事では、婚約破棄で慰謝料を請求できるケースやできないケース、慰謝料の相場について解説していきます。

婚約破棄の理由によっては証拠を集めるのが難しかったり、中には口約束のみで結納や婚約指輪など、婚約したことがわかる証拠がなかったりするケースもあります。その場合、弁護士に相談すれば過去のメッセージ上でのやり取りから、証拠になりえるメッセージはないか探してくれたり、慰謝料額の交渉もすべて代理で行ってくれたりします。

精神的な負担も手間も減らせるため、婚約破棄による慰謝料請求を考えている場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。

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南陽輔 弁護士
監修
南 陽輔(弁護士)

婚約・婚約破棄とは

婚約破棄の慰謝料について見ていく前に、まずは婚約や婚約破棄のそれぞれの定義について詳しく見ていきましょう。

婚約とは

婚約とは、カップルがお互いに将来結婚することを約束している状態のことです。婚約は結婚とは違って法律上の規定や形式、手続きが存在しないため、当事者双方の同意があれば口約束だけでも成立します。

ただし、法律上の決まりがないといっても、現在は実務や判例で婚約は「婚姻の予約契約」が結ばれたものとみなされています。そのため、婚約は法律で保護される対象となり、婚約した男女はお互いに結婚に向けて努力する義務が課せられることになります。

しかし、相手が「婚約の事実はなかった」を主張した場合、証拠がなければ慰謝料の請求はできないため、婚約していたことがわかる証拠が必要です。具体的な証拠については、こちらで詳しく解説しています。

特に、両家の顔合わせや結納の儀式は婚約していたことを裏付ける決定的な証拠になりえます。万が一上記のような証拠が用意できなくても、婚約・結婚に同意していたメッセージでのやり取りがあれば、婚約していたと認められる可能性もあります。

婚約破棄とは

婚約破棄とは、婚約が成立した後に一方的に婚約を取り消すことをいいます。前述のとおり、婚約は法律で保護される一種の契約です。

そのため、正当な理由なく婚約を破棄した場合は、婚約破棄によって相手に与えた精神上・財産上の損害に対する法的な賠償責任を負うことになります。

婚約していない男女が別れた場合は、どんな理由であっても慰謝料の請求はできませんが、婚約が成立している男女の場合は、婚約を破棄された理由によっては慰謝料を請求できる可能性があります。

婚約破棄の慰謝料相場は30万〜200万円

婚約破棄の慰謝料相場は30万〜200万円です。

ただし、慰謝料の金額には明確な決まりがないため、個々の事情によってそれぞれ異なります。婚約破棄の慰謝料の算定に影響を与える主な要素は以下の通りです。

  • 交際・同居・婚約期間の長さ
  • 妊娠・出産・中絶の有無
  • 精神疾患の発症の有無
  • 婚約破棄時の年齢
  • 挙式・披露宴・結納など結婚に向けた準備の有無
  • 婚約破棄に至る経緯

「交際・同居・婚約期間が長い」「婚約破棄の時点で妊娠・出産していた」「結婚破棄で中絶を余儀なくされた」といったケースでは、婚約破棄による時間的損失や精神的な苦痛が大きいと判断され、慰謝料が比較的高額になりやすいです。

婚約破棄において慰謝料請求できる例

婚約破棄において慰謝料請求できる具体例としては、主に以下の5つあります。

  • 婚約相手が浮気をしていた
  • 婚約相手からDVやモラハラを受けていた
  • 婚約相手が行方不明となった
  • 婚約を破棄された女性側が妊娠していた
  • 婚約破棄の理由が不当だと判断される

ここからは、それぞれの例について1つずつ詳しく解説していきます。

婚約相手が浮気をしていた

婚約相手が浮気をしていた場合は、婚約破棄の正当な理由となりえます。浮気された側は婚約相手の浮気を理由に婚約破棄できるのはもちろん、婚約相手や浮気相手に対して慰謝料も請求できます。

また、浮気した婚約相手から婚約を破棄された場合でも慰謝料請求が可能です。ただし、浮気を理由に慰謝料を請求できるのは、浮気の内容が「民法上の不貞行為」に該当する場合のみです。

不貞行為とは、婚姻・婚約・内縁関係にある男女の一方が配偶者以外の異性と自由な意思に基づいて肉体関係を持つことです。

不貞行為は民法上の不法行為や法定離婚事由に該当するため、婚約相手の肉体関係を伴う浮気が原因であれば慰謝料を請求できます。ただし、下記の行為にとどまった場合は民法上の不貞行為にあたりません。

  • 2人で親密に食事していた
  • 手を繋いでいた
  • 抱き合っていた
  • キスをしていた

そのため、婚約破棄をしても慰謝料は請求できないのでご注意ください。また、婚約相手が慰謝料の請求に応じず裁判に発展した場合は、婚約相手が婚約中に肉体関係を伴う浮気をしたことが客観的に分かる証拠が必要になります。

  • 2人でラブホテルに出入りしている現場を撮影・録画したデータ
  • 婚約相手が浮気を認めたときの会話を録音・録画したデータ
  • 肉体関係を持ったことが推測できるメールやLINEのやり取り
  • ラブホテルの宿泊記録・領収書
  • 探偵事務所の調査報告書

婚約相手からDVやモラハラを受けていた

婚約相手からDVやモラハラを受けていた場合も、婚約破棄に基づく慰謝料を請求できる可能性があります。

DVとは、夫婦やカップルなどの親密な関係にある男女間でふるわれる暴力の総称です。一方モラハラは、心無い言動や態度などによる精神的な暴力のことを指します。

一口にDVといってもさまざまな種類があります。

DVの種類 具体例
身体的DV 殴る、蹴る、叩く、首を絞める、髪をひっぱる、物を投げつける、刃物を体に突き付ける
精神的DV(モラハラ) 大声で怒鳴る、長時間にわたって説教をする、人格を否定するような暴言を吐く、無視をして口をきかない、家族や友人との交流を止めさせようとする、大切にしている物を勝手に捨てる
性的DV 性行為を強要する、避妊に協力しない、性的嗜好を無理やり押し付ける、ポルノ映像を見るように強要する、中絶を強要する
経済的DV 生活費を渡してもらえない、外で働くことを認めてもらえない、収入額を教えてもらえない

DVやモラハラの程度によっては、法定離婚事由の1つである「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に当てはまる場合もあるため、婚約破棄の正当な理由にもなりえます。

ただし、婚約相手からDVやモラハラを原因に慰謝料を請求する場合も、その事実を立証するための証拠が必要です。

  • DV・モラハラの内容を記録した日記・メモ
  • DV・モラハラの現場を録音・録画したデータ
  • DV・モラハラにあたる言動が含まれたメール・LINE
  • 医師の診断書・治療記録
  • 警察・公的機関への相談履歴

特に身体的な暴力を伴わないモラハラは、精神的な苦痛の程度を立証するのが難しく、正当な理由として認められない可能性が高いです。そのため、できるだけ多くの証拠を集めておく必要があります。

婚約相手が行方不明となった

婚約したカップルは、結婚の実現に向けてお互いに努力していかなければなりません。どちらか一方が行方不明になってしまうと、残された側は結婚に向けた準備を進められないほか、その状態が長引けば時間的にも大きな損失を被ることになります。

行方不明になった婚約者は不当に婚約を破棄したとみなされるため、残された側は婚約相手に対する慰謝料の請求が可能です。

婚約を破棄された女性側が妊娠していた

婚約を破棄された女性が婚約相手の子供を妊娠していた場合、女性は婚約相手に対して慰謝料を請求できます。

妊娠中の女性が婚約を破棄されてしまうと、女性が被る精神的・金銭的負担が大きくなるため、慰謝料は高額になる傾向です

また、女性が出産した後に男性が子供を認知した場合は、男性に扶養義務が生じるため、子供が自立するまでの養育費も請求できます。

婚約破棄の理由が不当だと判断される

婚約破棄が認められる正当な理由がなく、不当に婚約を破棄された場合も慰謝料の請求が可能です。婚約破棄が不当となる理由の具体例としては、以下のものが挙げられます。

  • 性格や価値観が合わない
  • 他に好きな人ができた
  • 相手に対する愛情や結婚する気が無くなった
  • 金銭感覚にズレがあった
  • 親が結婚に反対している
  • 国政や民族、出身地・宗教などによる差別
  • 相手の親族の犯罪歴が発覚した

不当な理由で婚約という契約を破棄する行為は、民法上の不法行為または債務不履行に該当するため、婚約破棄を申し出た側は相手に慰謝料を支払わなければなりません。

婚約破棄において慰謝料請求できない例

婚約破棄において慰謝料請求できないケースとしては、主に以下の2つあります。

  • そもそも婚約が成立していない
  • 自分に婚約破棄をされる理由・落ち度があった

ここからは、それぞれの例について1つずつ詳しく解説していきます。

そもそも婚約が成立していない

そもそも婚約が成立していなければ、婚約破棄を理由に慰謝料を請求できません。そのため、婚姻破棄で慰謝料を請求するためには、婚約が成立していることを立証する必要があります。

そのため、第三者から見ても婚約中であることが分かる客観的な事実が必要です。相手から口頭でプロポーズをされたというだけでは事実を立証するのが難しいため、慰謝料を請求しても棄却される可能性が高いでしょう。

具体的な証拠については、こちらで詳しく解説しています。

自分に婚約破棄をされる理由・落ち度があった

自分に婚約破棄をされる理由・落ち度があった場合は、婚約を破棄した相手に対して慰謝料の請求はできません。

前述のとおり、婚約破棄において慰謝料を請求できるのは、相手側に落ち度(浮気やDV、パワハラなど)があって婚約破棄に至った場合や、相手から不当な理由で婚約を破棄された場合です。

相手が婚約破棄を申し出た理由が自分の浮気やDV、モラハラであった場合は、婚約破棄の正当な理由として認められるため、慰謝料を請求する権利はありません。むしろ、逆に相手から慰謝料を請求される可能性があるため注意が必要です。

婚約破棄の慰謝料が相場より高額になりやすいケース

婚約破棄の慰謝料は30万〜200万円が相場ですが、以下のケースに当てはまる場合は相場よりも慰謝料が高額になる傾向があります。

  • 結婚の準備を進めていた
  • 相手に浮気やDVといった落ち度がある
  • 妊娠している
  • 婚約破棄が原因で心身の健康を損ねた
  • 結婚のために寿退職していた
  • 既に同居している
  • 交際期間が長かった
  • 結婚することを周囲に伝えていた

ここからは、それぞれのケースについて1つずつ詳しく解説していきます。

結婚の準備を進めていた

婚約から結婚に至るまでは、両家の顔合わせや結納、友人や職場への報告、婚約指輪や結婚指輪の購入、結婚式場の見学や予約、新居探し、引っ越しの準備など段階的な準備が必要になります。

これらの準備が進んでいるほど悪質性が高く、婚約破棄による金銭的・時間的損失や精神的な苦痛が大きいと判断されるため、慰謝料の金額も高額になる傾向です

なお、婚約破棄された相手に結納金や婚約指輪を渡していた場合や、新居への引っ越しにかかった費用を支払っていた場合は、慰謝料とは別にそれらの返還を相手に求めることも可能です。

相手に浮気やDVといった落ち度がある

浮気やDV、モラハラは加害者側に100%非がある行為であり、被害者側には何の落ち度もありません。

双方に何らかの落ち度がある場合は慰謝料が減額される可能性がありますが、自分にまったく落ち度がなければ相手に婚約破棄の責任があるため、慰謝料が高額になる傾向があります。

妊娠している

婚約破棄後、出産してシングルマザーとして育てていくにしても、出産せずに中絶するにしても、女性の心身には相当な負荷がかかります。場合によっては、女性の今後の人生設計が大きく狂ってしまう可能性もあります。

男性が不当な理由で婚約を破棄し、一方的に女性に負担を強いるのは非常に悪質性が高く、女性が受ける精神的な苦痛も大きいと判断されるため、慰謝料が高額になるケースが多いです。

なお、出産後に男性が子供を認知した場合、女性は慰謝料とは別に養育費も請求可能です。

婚約破棄が原因で心身の健康を損ねた

食欲不振や不眠、うつなどの症状が実際に現れたということは、それだけ婚約破棄による精神的な苦痛が大きかったと判断できます。

特に、医師の診断書や治療記録など、心身の健康を損ねた客観的な証拠があれば相場よりも高額な慰謝料が認められる可能性が高いでしょう。

結婚のために寿退職していた

結婚のために会社を寿退職していた後、正当な理由なく一方的に婚約を破棄された場合も、慰謝料が相場より高額になるケースが多いです。仕事を辞めるということは、生活基盤となる収入や会社で築いてきたキャリアを失うことでもあります。

寿退職後に婚約破棄をされてしまうと、精神的な苦痛を受けるだけでなく、今後の生活やキャリアプランにも重大な影響を及ぼすため、一般的なケースと比較すると慰謝料が高額になる傾向です。

なお、結婚のために寿退職していたケースでは、寿退職によって得られなくなった収入分を慰謝料とは別に請求できる場合もあります。

既に同居している

婚約後に同居しているということは、まだ結婚していなくても実質的に結婚生活が始まっており、結婚に向けた準備もかなり進んでいる状態であるといえます。

そのため、既に同居しているタイミングでの婚約破棄は悪質性が高いと判断されやすく、慰謝料も高額になる傾向があります。

交際期間が長かった

交際が長く続くということは、それだけ深い関係性で結ばれていると推測できるため、婚約破棄による精神的なショックは大きいといえます。

また、交際期間が長いほど、長期間にわたって自分のプライベートな時間を拘束され、他の異性との交際・結婚・出産の機会も奪われたことになるため、時間的な損失も大きいといえるでしょう。

そのため、長期間交際した相手から不当に婚約を破棄された場合は、交際期間が短いカップルと比較して慰謝料が高額になりやすいです。

結婚することを周囲に伝えていた

婚約した事実を友人や同級生、職場の人などに広く伝えていた場合も、婚約破棄に基づく慰謝料が増額される要因の1つです。

将来結婚することを知っていた人が多いほど、婚約破棄の際に被る精神的な苦痛も大きくなります。職場の人に伝えていた場合は、周囲の目が気になって仕事が続けられなくなるほど精神的に追い込まれてしまう可能性もあります。

そのため、婚約した事実を周囲に伝えていなかった場合と比べれば、慰謝料が高額になる可能性が高いです。

婚約破棄で慰謝料請求が認められた裁判例

下記のように、婚約破棄による慰謝料請求が認められた裁判例はいくつかあります。

  • 慰謝料額70万円の裁判例
  • 慰謝料額100万円の裁判例
  • 慰謝料額200万円の裁判例
  • 慰謝料額780万円の裁判例

ここからは、婚約破棄で慰謝料請求が認められた過去の裁判例をいくつかご紹介していきます。

慰謝料額70万円の裁判例

婚約破棄原因 浮気
婚約破棄時の状況 ・同棲していた
・結納していた
・結婚式の予約をしていた
・2度目の浮気
慰謝料 70万円

こちらは、婚約相手の浮気相手から慰謝料70万円を獲得した事例です。

原告の男性は交際していた女性と婚約が成立した後に同棲を始め、結納を行い、1年後に結婚式を挙げられるように結婚式の予約までしていましたが、婚約相手が別の男性と浮気していることが発覚しました。

原告は2人からの謝罪を受け一度は浮気を許したものの、その後も浮気が続いていることが判明したため、原告は婚約を破棄し、結婚式場の予約もキャンセルしています。

原告は婚約相手から結婚の準備にかかった費用100万円の返金を受けましたが、浮気相手に対しても慰謝料も請求するために損害賠償請求訴訟を提起しました。

その後、被告である浮気相手から一定の金額を支払う内容の和解勧告がなされたため、最終的に被告が原告に対して解決金70万円を支払う形で和解が成立しました。

慰謝料額100万円の裁判例

婚約破棄原因 浮気・無断で結婚
婚約破棄時の状況 ・交際期間は10年間
・突然別の女性と結婚
慰謝料 100万円

こちらは、30代の女性が婚約破棄をした相手から100万円の慰謝料を獲得した事例です。

原告の女性には約10年間交際した後に将来の結婚を約束した婚約相手がいましたが、その婚約相手が突然別の女性と結婚し、婚約を破棄されました。

原告は精神的な苦痛を被ったとして、婚約相手に対して債務不履行に基づく慰謝料を請求しました。弁護士が相手方の弁護士と交渉した結果、関係解消に伴う慰謝料として100万円を獲得しています。

慰謝料額200万円の裁判例

婚約破棄原因 浮気・無断で結婚
婚約破棄時の状況 ・交際期間は17年間
・突然別の女性と結婚
・結婚後も不倫での関係継続を迫る
慰謝料 200万円

こちらは、婚約破棄をした相手から200万円の慰謝料を獲得した事例です。

原告の女性は結婚を前提に約17年間交際していた婚約相手がいましたが、その相手が無断で別の女性と結婚したことで婚約破棄に至りました。さらに相手は別の女性と結婚した後も原告と肉体関係を続けようと連絡し続けていました。

裁判では、長年交際していた相手に婚約を破棄された原告側の精神的苦痛の大きさ、別の女性と結婚後も原告と不倫しようとしていた相手の悪質性の高さが考慮されました。

結果、裁判所は婚約破棄をした相手に対して、慰謝料200万円を原告に支払うように命じる判決を下しています。

慰謝料額780万円の裁判例

婚約破棄原因 一方的な破棄
婚約破棄時の状況 ・寿退社済み
・結婚式や披露宴の準備済み
慰謝料 780万円

こちらは、婚約破棄をした相手から780万円の慰謝料を獲得した事例です。

原告の女性はお見合いを経て婚約が決まり、結納もすでに交わしていましたが、その後婚約相手から一方的に婚約を破棄されました。

婚約破棄された段階では、結婚式や披露宴、嫁入り道具の準備もすでに済んでおり、結婚生活を送るために会社も寿退職していました。

裁判所は被告である婚約相手に対し、婚約破棄によって受けた精神的苦痛の慰謝料400万円と、寿退職による逸失利益123万円を含む、合計780万円を原告に支払うように命じる判決を下しています。

婚約破棄の慰謝料を請求する際の具体的な流れ

婚約破棄の慰謝料を請求する際の具体的な流れは以下の通りです。

  1. 話し合い(示談交渉)で慰謝料について交渉する
  2. 話し合いでの解決が難しい場合は内容証明で慰謝料請求する
  3. 交渉がまとまらない場合は調停を申し立てる
  4. 調停でも話しがまとまらない場合は慰謝料請求訴訟を起こす

ここからは、それぞれの段階について詳しく解説していきます。

話し合い(示談交渉)で慰謝料について交渉する

まずは、当事者同士の話し合いで慰謝料について交渉します。相手に婚約破棄で慰謝料を請求するという意思と慰謝料の金額を明確に伝えましょう。

相手と顔を合わせて話し合うのが難しい場合は、メールや電話で話し合っても問題ありません。メールや電話でも直接連絡を取りたくない場合や、上手く交渉できるか自信がない場合は弁護士に依頼しましょう。

弁護士に依頼すれば、弁護士が代わりに相手と慰謝料について交渉してくれます。

話し合いでの解決が難しい場合は内容証明で慰謝料請求する

話し合いで婚約相手が慰謝料の請求に応じてくれない場合は、内容証明で慰謝料を請求しましょう。内容証明とは、郵便局が差出人や宛先、差出日時、内容を公的に証明してくれる郵便サービスです。

内容証明を利用すれば相手に慰謝料を請求したという客観的な証拠が残せますし、相手にプレッシャーを与える効果もあるため、相手が真剣に対応してくれる可能性があります。

交渉がまとまらない場合は調停を申し立てる

それでも当事者間の交渉がまとまらない場合は、裁判所に調停を申し立てましょう。調停とは、裁判所で調停委員や裁判官を介し、話し合いによってトラブルの解決を目指す手続きです。

調停委員や裁判官は、当事者双方からそれぞれ婚約破棄に至った経緯や原因などを聞き取り、中立的な立場からアドバイスや解決策を提示をしてくれます。

調停はあくまでも話し合いによって解決を目指す手続きなので、裁判のように調停委員や裁判官が当事者に対して命令を下すことはありません。調停で話し合いがまとまれば調停成立となり、調停調書が作成されます。

調停調書は裁判で下された判決と同様に法的な強制力を持つため、調停成立後も婚約相手が慰謝料を支払わなかった場合は、強制執行によって給与や預貯金などの財産を回収できます。

ただし、調停でも話し合いがまとまらなかった場合は調停不成立となり、裁判へと発展します。

調停でも話しがまとまらない場合は慰謝料請求訴訟を起こす

調停でも交渉が上手くいかなかったり、相手が調停に来なかったりした場合は、裁判所で慰謝料請求訴訟を申し立てましょう。

慰謝料請求訴訟では、公開法廷で当事者双方が主張をぶつけ合い、最終的に裁判官が双方の主張や証拠をもとに判決を言い渡します。

訴訟で有利な判決を得るためには、自分の主張を裏付ける客観的な証拠が必要です。判決で慰謝料の請求が認められれば、判決で確定した慰謝料を相手に請求できます。

確定判決にも法的な強制力が生じるため、訴訟後も婚約相手が慰謝料を支払わなかった場合は、強制執行によって婚約相手の財産を差し押さえることが可能です。

婚約破棄において慰謝料を獲得するためのポイント

婚約破棄において慰謝料を獲得するためには、以下の5つのポイントを押さえておきましょう。

  • 婚約破棄で慰謝料請求するための証拠を得る
  • 時効より前に慰謝料請求する
  • 適切な金額を請求する
  • 決定事項は公正証書に記す
  • 離婚問題に強い弁護士に相談する

ここからは、それぞれのポイントについて1つずつ詳しく解説していきます。

婚約破棄で慰謝料請求するための証拠を得る

まずは、婚約破棄で慰謝料を請求するための証拠集めをしましょう。

話し合いの段階では証拠を提示しなくても相手が慰謝料の請求に応じてくれるケースもありますが、裁判で争うことになった場合は裁判官に自分の主張が事実であることを立証しなければならないため、必ず証拠が必要になります。

婚約破棄の場合は、以下の証拠を集めることで慰謝料請求の正当性が認められやすくなります。

  • 「婚約をしていた」という客観的な証拠
  • 婚約破棄が一方的にされたという証拠
  • 婚約破棄による精神的苦痛の内容や大きさを示す証拠

なお、相手の住居に不法侵入して盗聴器を仕掛けたり、相手を脅迫して無理やり自白させたりと、違法性が疑われる方法で収集した証拠は、原則として有効な証拠として認められません。

場合によっては刑事罰に問われる可能性もあるため、証拠集めについて何か分からないことがあれば弁護士に相談するか、探偵事務所に依頼してください。

「婚約をしていた」という客観的な証拠

婚約破棄を理由に慰謝料を請求するためには、相手と婚約していたことが客観的に分かる証拠集めも必要です。

前述のとおり、そもそも婚約が成立していなければ、婚約破棄に基づく慰謝料請求は認められません。婚約は結婚のような正式な手続きがなく、当事者双方の合意があれば口約束だけでも成立します。

しかし、口約束だけでは証拠が残らないため、慰謝料を請求する際相手と婚約の成立の有無について揉めるケースも多いです。

そのため、口頭での合意だけでなく、婚約が成立していたことを裏付ける客観的な証拠が必要になります。

以下のような事実を裏付ける証拠があれば、婚約が成立していたと認められやすくなります。

  • 婚約指輪・結婚指輪を購入した
  • 結婚式場の見学に行った
  • 両家の顔合わせをした
  • 結納金や婚約記念品の授受があった
  • 友人や知人、職場の人などに婚約した事実を伝えていた
  • 新居の契約をしていた
  • すでに同居していた
  • 新婚旅行を予約していた
  • 寿退職が決まっていた
  • 女性が妊娠・出産していた

婚約破棄が一方的にされたという証拠

婚約破棄による慰謝料を請求するには、双方の合意によって婚約を取り消したわけではなく、相手から一方的に婚約を破棄されたことを示す証拠も必要です。具体的には、以下のようなものが証拠となります。

  • メールやLINEでのやり取り
  • 婚約破棄された後の会話の録音

メールやLINE、音声データなどに相手が一方的に婚約を破棄したと推測できる内容が含まれていれば有力な証拠となりえます。

婚約破棄による精神的苦痛の内容や大きさを示す証拠

婚約破棄の慰謝料の金額は、婚約破棄によって受けた精神的苦痛の大きさによって変わってくるため、精神的な苦痛の内容や大きさを示す証拠集めも重要です。

  • 相手の浮気やDV・モラハラの内容
  • 交際・同居・婚約期間の長さ
  • 結婚に向けた準備をどこまで進めていたか
  • 婚約していた事実をどれだけの人が周知していたか
  • すでに妊娠・中絶しているか
  • 婚約破棄によって心身の健康を損ねたか

前述のとおり、「相手に一方的な落ち度があった」「交際・同居・婚約期間が長かった」「すでに妊娠または中絶している」「婚約していた事実が広く周知されていた」といったケースでは、婚約破棄の悪質性や精神的苦痛が大きいと判断されやすいです。

これらの事実を示す動画や写真、音声、メールやLINEのやり取り、病院の治療記録や診断書などがあれば、高額な慰謝料が認められる可能性があるでしょう。

時効より前に慰謝料請求する

慰謝料は時効が成立する前に請求する必要があります。婚約破棄に基づく慰謝料請求の時効は3年または5年です。婚約破棄を不法行為として捉えた場合は3年、婚約破棄を婚約という契約の債務不履行として捉えた場合は5年となります。

婚約破棄から3年または5年した後、相手から時効の成立を主張されてしまうと、慰謝料を請求する法的な権利が消滅してしまいます。どちらを法的根拠とするかは個々の事情によって見解が異なるため、確実に慰謝料を請求するなら不法行為の時効が成立する前に早めに弁護士に相談し、内容証明や裁判上の手続きで慰謝料を請求しましょう。

内容証明や裁判上の手続きで請求すれば、一定期間は時効の進行をストップできます。調停が成立したり、判決が確定したりすればこれまでカウントしていた時効がリセットされ、時効期間も10年に延長されます。

適切な金額を請求する

婚約破棄の慰謝料は、相手の落ち度や経済状況・悪質性・精神的苦痛の程度・一般的な相場などを総合的に考慮して適切な金額を請求しましょう。

慰謝料の請求額は請求者が自由に決められるので、一方的に婚約を破棄された側は請求額を高めに設定してしまいがちです。

しかし、常識の範囲を超える高額な慰謝料を請求すると、相手と揉めて請求から解決までの期間が長引く要因になりえるほか、場合によっては請求が棄却される可能性もあります。

また、現実問題としてそもそもお金がなければ慰謝料を支払いたくても支払えないので、確実に慰謝料を獲得するためには相手の経済状況も考慮する必要があります。

決定事項は公正証書に記す

話し合いによって決めた慰謝料についての決定事項は、公正証書に記しておくのがベストです。公正証書とは、公務員である公証人の権限に基づいて作成される公文書のことです。

公正証書は2人で公証役場に行く手間や費用がかかりますが、私文書と比べて証拠能力が高く、紛失や偽造の心配もありません。

また、公正証書に「執行認諾文言」を入れておけば、相手が約束通りに慰謝料を支払わなかった場合に、裁判を経ずに強制執行による差し押さえが可能になります。

離婚問題に強い弁護士に相談する

確実に慰謝料を獲得するには、離婚問題に強い弁護士に相談しましょう。弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として相手と交渉してくれるので、相手と直接会う必要はありません。

また、弁護士は法律や交渉のプロなので、法的な知識や過去の判例を活かして慰謝料の交渉を有利に進められます。

調停や裁判になった場合でも、弁護士が代わりに面倒な手続きや交渉を行ってくれます。弁護士費用はかかるものの、自分で慰謝料の交渉や裁判をするよりも高額な慰謝料を獲得できる可能性が高いので、婚約破棄されたら弁護士に相談してから請求手続きを進めましょう。

まとめ

不当な理由で婚約を破棄された場合や、相手が婚約破棄の原因を作った場合は、精神的な苦痛を受けたことによる慰謝料を請求できます

婚約破棄で慰謝料を請求するには、婚約の成立していたことや不当な理由または相手の落ち度で婚約破棄になったことなどを立証しなければならないため、これらの事実を示す客観的な証拠が必要です。

しかし、一般の個人が有力な証拠の収集や適正な請求額の算定、相手との交渉や裁判上の手続きを行うのは困難です。婚約破棄で慰謝料を請求したいと考えている方は、離婚問題に強い弁護士に相談しましょう。

婚約破棄の慰謝料についてよくある質問

口約束だけでも婚約していたと言えますか?

結論、婚約は当事者双方の合意があれば口約束だけでも成立します。しかし、婚約の成立の有無について争うことになった場合、口約束だけでは婚約が成立していた事実を立証することができません。

そのため、婚約破棄に基づく慰謝料を請求するなら、婚約が成立したことが客観的に分かる証拠が必要になります。

マリッジブルーで婚約破棄された場合、慰謝料はいくら請求できますか?

マリッジブルーは婚約破棄の正当な理由として認められないため、婚約破棄した相手に対して慰謝料を請求できます。

慰謝料の相場は30万〜200万円ですが、これは交際・婚約期間の長さや精神的苦痛の程度、婚約破棄のタイミングなど個々の事情によって異なるので、具体的にいくら請求できるかどうかは弁護士にご相談ください。

婚約破棄で慰謝料以外に請求できるものはありますか?

相手に婚約破棄となった原因がある場合や、不当な理由で婚約を破棄された場合は、慰謝料以外にも婚姻破棄に関連する金銭的な損害も請求できます。

  • 婚約指輪
  • 結納金
  • 結婚式場や新婚旅行などのキャンセル費用
  • 新居への引っ越し費用・初期費用
  • 寿退職した場合の逸失利益

自分に婚約破棄の原因がある場合は、不当な理由で自分から婚約を破棄した場合は、慰謝料と同様にこれらの費用を相手に請求することはできません。

婚約破棄による慰謝料を請求できる期限・時効はありますか?

婚約破棄による慰謝料請求の時効は、法的根拠が不法行為であれば3年、債務不履行であれば5年です。どちらが法的根拠となるのかは個々の事情によって異なるため、確実に慰謝料を獲得するためにも早めに行動しましょう。

婚約破棄の慰謝料請求を無視された時はどのように対応すれば良いですか?

婚約破棄の慰謝料請求を無視された場合は、まず内容証明で慰謝料を請求しましょう。内容証明は相手に心理的なプレッシャーを与える効果があり、裁判でも使える有力な証拠にもなります。

それでも請求に応じなければ、調停や裁判などの法的手続きへ移行する必要があります。調停成立書や判決には法的な強制力があるため、慰謝料の支払いがなければ強制執行によって給与や預貯金などの差し押さえが可能です。

慰謝料と手切れ金の違いは何ですか?

慰謝料と似たような金銭として手切れ金がありますが、両者は意味がまったく異なります。慰謝料は、不法行為によって受けた精神的苦痛に対して支払われる損害賠償金の一種です。

慰謝料には法的な支払い義務が生じるため、不法行為をした相手が慰謝料の請求に応じない場合は、裁判上の手続きで強制的に支払わせることが可能です。

一方手切れ金は、交際関係や不倫関係などの人間関係を清算するために、別れを切り出した側が任意で支払う金銭のことをいいます。

手切れ金の支払いはあくまで任意であり、法的な強制力が生じるわけではないため、相手に手切れ金の支払いを強制させることはできません。

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更新日 : 2025年04月01日
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