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2024年11月現在

婚約破棄の慰謝料相場は?適正な慰謝料を得るためのポイントを解説

婚約破棄 慰謝料 相場

結婚への期待が突如絶たれることは、精神的な苦痛を伴う深刻な問題です。婚約破棄は、予期せぬ形で未来の計画を台無しにするものであり、慰謝料を婚約者に求めたいと思う人もいるでしょう。

一般的に婚約を解消された際に請求できる慰謝料の相場は、30万円〜200万円と言われています。慰謝料の金額は、婚約期間の長さや結婚準備にかかった費用、精神的苦痛の度合い、そして双方の経済状況などにより異なります。事情によっては慰謝料が請求できないケースもあります。逆に、特に重大な精神的苦痛を伴う場合や、経済的損失が大きい場合は、高額な慰謝料を請求できる傾向にあります。

しかし、高額な慰謝料を請求するためには、「婚約をしていた」という客観的な証拠や婚約破棄が一方的であった証拠、婚約破棄による精神的苦痛が大きいことを示す証拠が必要です。

この記事では、婚約破棄に伴う慰謝料の相場や、そもそも慰謝料の請求ができるのか、慰謝料の請求が可能なケース、慰謝料が高額になる事例、高額な慰謝料を請求するために必要な証拠の集め方などについて、専門的な視点から解説します。
慰謝料を請求する際の具体的な流れや、婚約破棄の慰謝料を確実に獲得するためのポイントも紹介するので、参考にしてみてください。

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南陽輔 弁護士
監修
南 陽輔(弁護士)

婚約・婚約破棄とは

婚約とは、二人が将来結婚することについて約束するものです。婚約自体には、結婚と異なり特定の形式が法律で定められているわけではありません。
そのため、婚約の有無に関する後の紛争のリスクが生じる場合があります。最も一般的なのが婚約破棄です。婚約破棄は、婚約中の二人のうちの一方または双方が、結婚するという以前の合意を撤回することを意味します。

婚約および婚約破棄は、当事者の人生において重要な出来事であり、両者には精神的、社会的な影響が伴います。そのため、婚約する際には、お互いの意思が確固としている証拠を残し、そして万が一婚約破棄に至った場合には、公平な解決を目指すことが重要です。

婚約とは

婚約は、二人が将来結婚することをお互いに約束するものです。この約束は、二人が共通の理解と合意のもとで結ばれます。婚約は、口頭で交わされるだけでも成立するものですが、婚約破棄に対する慰謝料を請求するためには、客観的に明確である必要があるとされています。

もし相手が婚約の存在自体を否定する場合、訴訟などの法的な手続きにおいて婚約があったことを示すために、具体的な証拠が求められることになります。
その際は、口頭での約束だけでなく、婚約が実際にあったことを支持する証拠の存在が大切になります。たとえば、次のような状況は、婚約が成立していることを示す強力な証拠となる可能性があります。

  • 婚約指輪の交換
  • 結納や両家の顔合わせ
  • 結婚式場の予約
  • 新居の契約
  • 将来についてのSNSやメールでのやり取り

まず、婚約指輪を購入した際の領収書や、指輪を交換したことを証明する写真や証言などは婚約の有力な証拠になり得ます。
また、結納や両家の顔合わせなどの儀式を行った記録は、婚約が法的に成立していることの強力な証拠となります。
さらに、結婚式場の予約や新居の契約など、結婚に向けた具体的な計画や準備の記録も有効です。

愛情の言葉や将来についての計画を語ったメッセージや、知人や友人に婚約したことを伝えたメッセージなどは、婚約が存在したことを裏付ける情報源となり得ます。

婚約破棄とは

婚約破棄とは、結婚を前提とした約束が、何らかの理由で一方的または双方合意のもとで解消されることを意味します。この場合、感情的な傷みや経済的な損失が伴うことも少なくありません。婚約期間中に、新居の準備、結婚式場の予約、結納など結婚に向けた具体的な準備が進んでいた場合の精神的ダメージは計り知れません。

法律的には、このような婚約の一方的な解消を「婚約破棄」と呼び、特定の条件下で慰謝料の請求が可能です。

婚約の破棄が発生した際には、まずは冷静になり、法的なアドバイスを求めることが重要です。慰謝料の請求は、具体的な状況や損害の程度に基づいて検討されるため、専門家の意見を聞きながら適切な対応を取ることが求められます。

婚約破棄の慰謝料相場は30万円〜200万円

婚約破棄に際して慰謝料が発生する場合、その相場はさまざまな要因に左右されます。慰謝料の額は、婚約期間の長さ、結婚準備にかかった費用、精神的苦痛の度合い、そして双方の経済状況などに基づき算定されます。
一般的には、30万円〜200万円の範囲で慰謝料が設定されるケースが多いですが、特に重大な精神的苦痛を伴う場合や、経済的損失が大きい場合には、その額は上昇する傾向にあります。

特に、結婚準備の進行度が高かったり、妊娠による影響があったりするケースでは、相場以上の額が認められることもあります。

婚約破棄による慰謝料請求を検討する場合、法律の専門家に相談することが重要です。専門家は、具体的な状況を踏まえた上で、適切な慰謝料額の算出や、請求のサポートを行います。また、場合によっては、調停や裁判といった法的手続きを通じて、慰謝料の支払いを求めることも可能です。

婚約破棄において慰謝料請求できる例

元婚約者による正当な理由のない婚約解消の場合、精神的苦痛や計画の変更、場合によっては経済的損失を被った側が慰謝料を請求することができます。

また、自ら婚約破棄の意思を伝えた場合でも、その破棄の根本的な原因が元婚約者にあるときは、慰謝料請求の対象となることがあります。例えば、相手の不誠実な行為や、結婚生活を維持する上で重要な信頼関係が築けないことが明らかになった場合などです。このような状況では、婚約を継続することが不可能と判断され、破棄を選択した側も慰謝料を請求する理由が認められる可能性があります。

ここでは、慰謝料請求を認められる可能性が高い婚約破棄の理由として有効なものを5つ紹介します。

  • 婚約相手が浮気をしていた
  • 婚約相手からDVやモラハラを受けていた
  • 婚約相手が行方不明となった
  • 婚約を破棄された女性側が妊娠していた
  • 婚約破棄の理由が不当だと判断される

婚約相手が浮気をしていた

婚約期間中に相手が不貞行為、すなわち浮気をした場合、これは深刻な信頼関係の破壊と見なされます。婚約者が浮気をした上で婚約破棄を申し出てきた場合や、自分が浮気を発見して婚約破棄を申し出た場合でも、慰謝料の請求は可能です。
このような状況では、婚約破棄の精神的なダメージに対する補償として、慰謝料の支払いが認められることが一般的です。

婚約相手からDVやモラハラを受けていた

婚約期間中に身体的、精神的虐待やモラルハラスメント(モラハラ)を受けた場合、これらの行為は婚約関係を継続不可能にする重大な理由となります。被害を受けた方は、これらの行為によって受けた精神的苦痛に対して慰謝料を請求する権利があります。

婚約相手が行方不明となった

婚約相手が突如として行方不明になり、連絡が取れなくなった場合、これは婚約破棄と同等に扱われ、慰謝料請求の対象となり得ます。特に、結婚準備が進行中にこのような状況が発生した場合、残された方は大きな精神的、経済的損害を被ることになります。

婚約を破棄された女性側が妊娠していた

婚約中に女性が妊娠していたにもかかわらず婚約を破棄された場合、これは特に重大な精神的苦痛を伴います。婚約破棄によって単身での出産や子育てを余儀なくされる状況では、慰謝料の請求が可能です。

婚約破棄の理由が不当だと判断される

性格の不一致、家族からの反対、愛情の消失、金銭感覚の違い、占いの結果が悪かったなど、合理的とは言えない理由で婚約破棄をされた場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。
こうした理由で婚約を破棄された場合、裁判所は精神的苦痛に対する補償として慰謝料の支払いを命じることがあります。

婚約破棄において慰謝料請求できない例

婚約破棄をされても慰謝料を請求できない場合もあります。これは、婚約そのものが法的に成立していなかったり、破棄の原因が請求を考えている側にある場合に該当します。以下では、慰謝料請求が困難となる典型的なケースを解説します。

そもそも婚約が成立していない

婚約とは、将来的に結婚するという合意の下で成立する関係ですが、この合意が曖昧で、具体的な約束や証拠が伴っていない場合、婚約が法的に成立しているとは認められません。
例えば、結婚に対する希望や願望を語り合った程度で具体的な計画がない場合や、双方の意思が確固として合致していない場合などです。このような状況では、婚約破棄とみなされず、したがって慰謝料を請求する根拠が失われます。

自分に婚約破棄をされる理由・落ち度があった

婚約破棄の原因が請求を考えている側にある場合、慰謝料請求は困難となります。これには、自分が不貞行為を行った、暴言や暴力を振るった、または重要な事実(借金、婚姻歴、学歴など)について婚約者に虚偽の情報を提供していた場合などが挙げられます。
これらの行為は、婚約破棄の正当な理由となり得るため、逆に相手方から慰謝料を請求される可能性があります。

このような状況では、慰謝料の請求ではなく、双方での合意に基づく解決を模索することが望ましいでしょう。
婚約破棄とそれに伴う慰謝料の問題は、法的な側面だけでなく、倫理的な側面も含めて複雑です。慰謝料を請求する前に、自身の状況を正確に評価し、必要に応じて法律専門家の意見を求めることが賢明です。

婚約破棄の慰謝料が相場より高額になりやすいケース

婚約破棄の際に慰謝料が発生するケースは多岐にわたりますが、特定の状況下では慰謝料の相場を超える高額が認められることがあります。以下では、そのような状況を具体的に解説します。

  • 結婚の準備を進めていた
  • 相手に浮気やDVといった落ち度がある
  • 妊娠している
  • 婚約破棄が原因で心身の健康を損ねた
  • 結婚のために寿退職していた
  • 既に同居している
  • 交際期間が長かった
  • 結婚することを周囲に伝えていた

結婚の準備を進めていた

結婚式の準備が進行していた場合、具体的には両家への挨拶が完了していたり、結納が行われていたり、婚約指輪の購入、結婚式場や新婚旅行の予約、さらには新居の契約が済んでいたりすると、慰謝料の額は相場を上回る可能性が高まります。これらの準備には精神的、時間的、金銭的な投資が大きいため、婚約破棄によるダメージは計り知れません。

相手に浮気やDVといった落ち度がある

婚約中でも、浮気は不貞行為とみなされます。精神的なダメージは計り知れず、その結果、慰謝料の額が相場を大幅に上回る可能性があります。
ただし、慰謝料を請求するには、婚約者の浮気を裏付ける確固たる証拠が必要になります。メッセージのやりとり、目撃証言、写真などが証拠になり得ます。

このケースで慰謝料を請求する際のポイントは、浮気の証拠をしっかりと集めることです。しかし、証拠収集の過程でプライバシーの侵害や違法行為に陥らないよう注意が必要です。可能であれば、法的な手続きを専門とする弁護士の助言を仰ぐことが望ましいでしょう。

他にも、DV(家庭内暴力)、モラハラ(精神的虐待)なども、婚約破棄を受ける側の精神的苦痛を増幅させ、深刻な信頼関係の破壊を意味するため、法的にも重く見られる傾向にあります。

妊娠している

妊娠は、将来に対する計画や期待を具体的にするものであり、婚約破棄が起こった際には、この期待が突然裏切られ、女性が直面する精神的、身体的、経済的な影響は極めて大きいものとなります。
また、婚約破棄によって中絶を余儀なくされた場合、これらの影響はさらに深刻なものとなります。このケースでは、慰謝料の請求は、単に精神的な苦痛を補償するだけでなく、妊娠に関連する医療費や、将来的な生活設計の変更に伴う経済的な損失に対しても求められることがあります。慰謝料の額は、妊娠によって被ったダメージの全体を考慮して算定されるため、一般的な相場を超えることが一般的です。

婚約破棄が原因で心身の健康を損ねた

婚約破棄により深刻なストレスや心身の健康問題を抱えるようになった場合、これも高額な慰謝料の支払いにつながる可能性があります。心理的なサポートや治療にかかった費用も慰謝料の計算に含まれることがあります。

結婚のために寿退職していた

婚約者が結婚を前提に職を辞した場合、婚約破棄になったからといって退職した会社に戻るわけにもいきません。その後の職探しの困難さやキャリアの中断など、経済的な負担も増えます。このような状況下での婚約破棄は、慰謝料の額を高める要因となります。

既に同居している

婚約者との同居は、二人の関係がより深いレベルであることを示します。同居することで、日常生活の中で互いの存在が不可欠なものとなり、精神的な絆も強まります。そのため、同居中に婚約破棄が発生すると、その精神的なダメージは非常に大きくなります。
さらに、同居に伴う経済的な投資(家賃、家具の購入、生活費など)もあり、これらが突然無駄になることで、損失はさらに増大します。このような状況下では、慰謝料の額が相場よりも高額になる傾向があります。

交際期間が長かった

特に、婚約期間を含めた長い交際期間は、二人の未来に対する期待が高まっているため、その期待が裏切られたときのショックは計り知れません。また、婚約破棄をされた側が結婚適齢期を過ぎてしまう可能性や、婚約成立後に長期間が経過している場合は、その影響はさらに深刻となり得ます。これらの理由から、交際期間が長いほど、慰謝料の額が増加する可能性が高まります。

結婚することを周囲に伝えていた

結婚の計画を友人や家族に公表していた場合、婚約破棄による社会的な恥や精神的な打撃は、周囲に伝えていなかった場合よりも大きくなります。このような公の場での期待の裏切りは、慰謝料請求の際に重要な要素となり得ます。

婚約破棄で慰謝料請求が認められた裁判例

実際に婚約破棄で慰謝料請求をした場合、どのくらいの慰謝料額になるのでしょうか。
ここでは、実際に婚約破棄で慰謝料請求が認められた裁判例を紹介します。

慰謝料額70万円の裁判例

・申立人(女性→男性)
男性から一方的に婚約破棄され、女性がその結果うつ病を発症。しかし、その精神的苦痛が「婚約解消により通常想定される範囲内」と見なされ、慰謝料は70万円と定められました。

慰謝料額100万円の裁判例

・申立人(女性→男性)
原告に対して「結婚を望んでいる」「共に子どもを持ちたい」と話していたことから、被告は避妊をしないで性交渉に及び、結果として妊娠することになりました。

しかし、妊娠が判明した後、被告は「まだ前の配偶者と正式に離婚していない」などの虚偽を理由に婚約を撤回しました。
この時、原告と被告はまだ共同生活を送っておらず、互いの家族に紹介も完了していない状態でしたが、それでも慰謝料として100万円の支払いが認定されました。

慰謝料額200万円の裁判例

・申立人(女性→男性)
男性側の結婚への意欲の喪失により、女性が結婚のために退職し、結婚式の招待状が完成している状況で婚約が解消されました。加えて、男性が意思を何度も変えるなど信頼に欠ける行動を取り、これが女性の心情にさらに深い傷を与えたとされ、慰謝料200万円が認められました。しかし、退職によって生じた損害については、逸失利益として認められませんでした。

慰謝料額780万円の裁判例

・申立人(女性→男性)
お見合いを経て婚約が決まり、結納も交わされた後、男性側から電話で一方的に婚約解消が宣告されたケース。女性は結婚式や披露宴の準備を進めており、嫁入り道具の準備も完了しており、さらには結婚生活を始めるために会社も退職していました。

この事例において、裁判所は男性に対し、婚約解消による精神的損害の補償として400万円、退職したことによる経済的損失123万円を含む、合わせて779万円の高額支払いを指示しました。

婚約破棄の慰謝料を請求する際の具体的な流れ

婚約破棄に伴う慰謝料請求は、感情的な苦痛を経済的に補償する手段として考えられます。ここでは、慰謝料を請求する際の具体的な流れを紹介します。

  1. 話し合い(示談交渉)で慰謝料について交渉する
  2. 話し合いでの解決が難しい場合は内容証明で慰謝料請求する
  3. 交渉がまとまらない場合は調停を申し立てる
  4. 調停でも話しがまとまらない場合は慰謝料請求訴訟を起こす

話し合い(示談交渉)で慰謝料について交渉する

婚約破棄が発生した際には、双方が直接話し合い、慰謝料の支払いについて合意に達することが望ましいです。まずは、お互いの感情や立場を尊重しながら、公平な解決を目指します。示談交渉は、法的手続きに移行する前の、最も望ましい解決策です。

この段階で、将来的な法的な争いを避けるために、「強制的な取立てを認めること」つまり「執行認諾文言の記載」についても合意することが推奨されます。これにより、示談合意後に相手方が約束した慰謝料を支払わない場合、迅速に法的措置を取ることが可能になります。

示談交渉が成立した場合、合意内容を明確に記録するために、示談書の原文を作成します。この文書には、慰謝料の金額、支払いスケジュール、執行認諾文言を含めることが重要です。作成した示談書は、公証役場に持参し、公正証書として正式に作成することをおすすめします。公正証書にすることで、示談書の内容が法的に強固な証拠となり、後のトラブルを防ぐことができます。

公正証書の作成は、示談合意が双方にとって公平かつ実行可能なものであることを保証するためにも重要です。また、示談合意が適切に履行されない場合には、公正証書に基づいて迅速に法的措置を取ることが可能となります。

話し合いでの解決が難しい場合は内容証明で慰謝料請求する

元婚約者が話し合いを避けたり、直接対面することを望まない場合、慰謝料請求の次なる手段として内容証明郵便を利用した慰謝料請求を行います。内容証明郵便とは、送付した文書の内容と発送日を郵便局が証明するサービスです。これにより、文書をいつ、どのような内容で送ったのかが正式に記録され、後日の紛争や証拠としての必要性に対応できます。

慰謝料請求において内容証明郵便を利用することは、民法第724条1号に定められた慰謝料請求権の消滅時効にかかるのを防ぐ有効な手段となります。この時効は通常、権利発生から一定期間が経過すると権利が消滅するものですが、内容証明郵便を送ることで請求権の存在を明確にし、時効の完成を一時的に猶予させることが可能になります。

ただし、請求書類の送付は法的な効力があるものではないため、慰謝料を強制的に取り立てることはできません。

交渉がまとまらない場合は調停を申し立てる

内容証明郵便を用いた請求後も、依然として合意に達しない場合、裁判所に調停を申し立てることになります。
なお、請求する慰謝料額が140万円以下の場合は簡易裁判所に、140万円を超える場合は地方裁判所に訴訟を提起します。

調停では、裁判所の調停委員が間に入り、双方が納得できる解決策を模索します。調停は、裁判に比べて手続きが簡易で、比較的迅速に解決を図ることができるメリットがあります。

調停でも話しがまとまらない場合は慰謝料請求訴訟を起こす

調停を通じても解決に至らない場合、最終手段として慰謝料請求訴訟を起こすことになります。訴訟は、法的に慰謝料の支払いを求める手段であり、裁判所が双方の主張を聞いた上で、法律に基づいて判断を下します。訴訟は時間と費用がかかる可能性があるため、この選択をする前には慎重に検討することが必要です。

婚約破棄において慰謝料を獲得するためのポイント

婚約破棄が生じた際、適切な慰謝料を獲得することは、被害者にとって重要な問題です。ここでは、慰謝料を獲得しやすくなるポイントを5つ解説します。

  • 婚約破棄で慰謝料請求するための証拠を得る
  • 時効より前に慰謝料請求する
  • 適切な金額を請求する
  • 決定事項は公正証書に記す
  • 離婚問題に強い弁護士に相談する

婚約破棄で慰謝料請求するための証拠を得る

慰謝料を請求する過程において、成功の鍵は慰謝料請求に有効な充分な証拠を集めることです。特に、下記の証拠を集めることで、慰謝料請求の正当性を裏付けることができます。

  • 婚約をしていたという客観的な証拠
  • 婚約破棄が一方的にされたという証拠
  • 婚約破棄による精神的苦痛の内容や大きさを示す証拠

「婚約をしていた」という客観的な証拠

婚約の存在を示すためには、以下のような客観的な証拠が必要です。

  • 婚約指輪の受領
  • 結婚式場の予約
  • 新居の契約
  • 結納の実施
  • 両家の挨拶
  • 寿退職の申し出

まず、婚約指輪の交換は、婚約の成立を示す伝統的な方法です。婚約指輪は、双方が結婚の約束をしたことの物理的な証拠となり、その交換は婚約成立の強力な指標とみなされます。婚約指輪や指輪を購入した際の領収書、指輪を交換したことを証明する写真や証言なども有力な証拠になり得ます。

結婚式場の予約や新居の契約など、結婚に向けて共同で進められた具体的な計画や準備の記録も婚約の存在を示す客観的な証拠となります。これらの準備に関連する書類やメールのやり取り、領収書などは、両者が将来の結婚に向けて具体的な約束を交わしていたことを示す証拠として利用できます。

また、結納や両家の顔合わせを済ませていることも、両家間の合意があったことを示します。結納は特に、両家が婚約を認め合い、公式に結婚の約束をしたことを示す伝統的な手続きです。結納の写真や、両家顔合わせに参加した人の証言は、婚約が法的に成立していることの強力な証拠となります。

また、結婚を理由に退職を申し出た記録も、婚約が具体的な未来計画に基づいていたことを示します。

これらの状況が全てにおいて婚約の成立を自動的に保証するわけではありませんが、重要な証拠になり得ます。

婚約破棄が一方的にされたという証拠

婚約破棄が一方的にされたという証拠としては、以下のものが挙げられます。

  • メッセージのやり取り
  • 婚約破棄されたあとに直接話す機会がある場合は録音
  • 当時の状況を客観的に示した日記・SNS投稿など

SNSやメールでのやり取りも、婚約の成立を示す現代的な証拠としての価値があります。
例えば、婚約破棄の経緯を示すメッセージのやり取りの中に、婚約破棄が一方的にされたという状況を推測するものがあれば、LINEやメールのスクリーンショットをとっておきましょう。
特にメッセージのやり取りは、相手方に削除されてしまう可能性があるため、画像として保存しておくことをおすすめします。

また、婚約破棄に関する直接の会話があれば、その録音は強力な証拠となる場合があります。ただし、録音には法的な留意点があるため注意が必要です。
当時の状況を記録した日記やSNSの投稿は、精神状態や出来事の経緯を示す補助的な証拠になり得ます。

婚約破棄による精神的苦痛の内容や大きさを示す証拠

婚約破棄により精神的な苦痛を受けたことも、慰謝料を請求する証拠として有効です。精神的苦痛の内容や大きさを示す証拠としては、以下のものが挙げられます。

  • 交際していた期間の長さ
  • 周囲の人間に婚約の事実をどれだけ周知されていたか
  • すでに妊娠している・または中絶したことがある
  • 一方的な婚約破棄の申し出によって精神的な疾患になったなど

まず、長期にわたる交際は、双方の深い結びつきを示し、婚約破棄による精神的苦痛の大きさを裏付けます。

また、知人や友人に婚約したことを伝えていた場合は、周囲に婚約の事実が広く知られることで、婚約破棄に陥った社会的なプレッシャーや恥を感じる可能性も考慮され、慰謝料額の増額が認められる可能性があります。

さらに、妊娠していたり、婚約破棄により中絶を余儀なくされたりした場合は、精神的な苦痛のみならず、肉体的、経済的な損失もはかりしれません。
一方的な婚約破棄によって精神的な疾患を患った場合、その診断書や治療記録は、慰謝料の額に影響を及ぼします。

時効より前に慰謝料請求する

慰謝料請求には時効が設けられており、この期間を過ぎると請求権利が消滅します。婚約破棄に関する慰謝料請求の時効は、破棄された日から起算して、通常3年間とされています。このため、慰謝料を確実に獲得するためには、時効が成立する前に請求プロセスを開始することが重要です。

適切な金額を請求する

慰謝料の金額を決定する際には、相手方の収入や落ち度、被害の度合い、さらには一般的な相場を考慮することが必要です。請求額が不当に高額であると、交渉や訴訟が長引く原因となり、場合によっては請求が棄却される可能性もあります。相場を理解し、公平かつ妥当な額を請求することが、成功への鍵となります。

決定事項は公正証書に記す

慰謝料請求に関する合意が成立した場合、その内容を公正証書にして記録することが推奨されます。公正証書にすることで、合意内容が法的に強固な証拠となり、後日の紛争を避けることができます。公正証書の作成は、公証役場で行われ、公証人が内容の正確性を保証します。

離婚問題に強い弁護士に相談する

婚約破棄と慰謝料請求は、法的な専門知識を要する複雑な問題です。成功への道を切り開くためには、離婚や家庭法に精通した弁護士に相談することが賢明です。弁護士は適切な請求額の決定、必要な証拠の収集、効果的な交渉戦略の立案など、慰謝料請求の各ステップで専門的なサポートをしてくれます。

まとめ

婚約破棄は、当事者にとって精神的な苦痛や経済的な損失が伴う深刻な出来事です。婚約破棄による慰謝料請求は、関係の解消に伴う精神的・経済的苦痛を補償するための重要な手段となります。
慰謝料の相場は、一概に定められた金額があるわけではなく、婚約破棄の状況や原因、双方の経済状況、婚約期間、そして具体的な被害の程度など、多岐にわたる要素が考慮されまが、一般的に、30万円〜200万円に及ぶことが多いです。
特に結婚準備が進んでいたケースや、婚約者に重大な落ち度があった場合(例えば不貞行為や暴力、重要な事実の隠蔽など)は、相場を上回ることがあります。また、妊娠していた場合や、婚約解消が直接的な精神的、身体的健康の損害を引き起こした場合には、より高額の慰謝料が認められる可能性が高まります。

慰謝料請求は、まずは示談交渉から始め、合意に至らない場合は内容証明郵便による正式な請求、さらには法的手続きへと進むことになります。この過程で重要となるのは、婚約が存在したこと、破棄された事実、そしてその結果として受けた精神的苦痛や具体的な損害を証明する客観的な証拠を確保することです。

最終的に、慰謝料の額や請求の成立については、法的な評価が必要となるため、専門家である弁護士の助言を得ることが賢明です。婚約破棄という個人的な危機を乗り越え、公正な補償を受けるためには、適切な準備と正確な情報が不可欠です。

婚約破棄の慰謝料についてよくある質問

口約束だけでも婚約していたと言えますか?

婚約に関しては、多くの人が具体的な契約書や書面による証明を思い浮かべがちです。しかし、法的には、口頭での合意も婚約と認められる場合があります。重要なのは、双方が結婚を意図して合意に達していることを証明できるかどうかです。

婚約が口頭で交わされた場合、その証明はやや複雑になり得ます。証明の方法としては、婚約の事実を裏付ける行動や証拠が求められます。例えば、結婚式場の予約、結納の実施、共通の住居の準備、両家族間の会合の開催など、結婚に向けた具体的な行動などです。

さらに、婚約の存在を示す間接的な証拠として、SNSでの公開発言や友人、家族への口頭での言及なども有効です。これらの証拠を集めることで、口頭での約束であったとしても、実際に婚約が成立していたことを裏付けることが可能となります。

マリッジブルーで婚約破棄された場合、慰謝料はいくら請求できますか?

マリッジブルー、すなわち結婚を控えた不安やストレスが原因で婚約破棄に至る場合、慰謝料の請求は複雑な問題となります。
マリッジブルーが婚約破棄の直接の原因となった場合、慰謝料の請求可能性は存在しますが、その額を一概に定めることは困難です。婚約破棄がどの程度合理的な理由に基づいているか、また、破棄された側がどれだけの精神的ダメージを受けたかが重要な判断基準となります。

マリッジブルーを理由にした婚約破棄の場合、慰謝料の算定にあたっては、婚約期間の長さと深さ、破棄の理由(マリッジブルーが一方的なものであったか)、結婚準備の進行状況、周囲への公表状況などの要素を総合的に考慮する必要があり、結果は個別の事情により大きく異なります。

したがって、マリッジブルーによる婚約破棄の慰謝料に関しては、専門家である弁護士に相談し、具体的なアドバイスを得ることが最も適切なアプローチと言えるでしょう。

婚約破棄で慰謝料以外に請求できるものはありますか?

婚約破棄に際し、慰謝料以外にも請求可能なものがあります。例えば、結婚準備に関わる具体的な費用や、婚約破棄によって生じた直接的な経済的損失です。以下に、慰謝料以外で請求できる代表的な項目を紹介します。

① 結婚準備にかかった費用
婚約期間中に行われた結婚準備に関連する費用は、婚約破棄が発生した場合、請求の対象となり得ます。これには、以下のようなものが含まれます。

  • 結婚式場の予約金やキャンセル料
  • 招待状の制作費用
  • 衣装の購入またはレンタル費用

② 同棲にかかった費用

  • 新居に関連する費用
  • 新居の契約に伴う手付金
  • 家具や家電の購入費用
  • 同居生活にかかった費用

婚約期間中に同居を開始していた場合、共同生活に関連する費用も請求の対象となる場合があります。これには、家賃、生活費、共同で購入した家具や家電などが含まれます。

③ 特別な損害の発生
婚約破棄によって特別な損害が発生した場合、その補償を請求することも可能です。例えば、結婚を理由に退職した場合の失業による経済的損害などがこれに該当します。

これらの請求を行う際には、支出の証明となる書類や領収書の保持が不可欠です。

婚約破棄による慰謝料を請求できる期限・時効はありますか?

婚約破棄が発生した際、慰謝料を請求できる法的な期限が存在し、一定期間内に行動を起こさなければ請求権が失われる可能性があります。
慰謝料請求の根拠が「契約不履行」にある場合と「不法行為」に基づく場合では、適用される時効期間が異なるのが通例です。

契約不履行に基づく場合
婚約という契約が破棄された場合、その請求権の時効は原則として10年間とされています。これは、契約関係に基づく一般的な請求に対する時効期間に準じるものです。

不法行為に基づく場合
婚約破棄が相手方の不法行為(例:浮気による精神的苦痛)による場合、請求できる期限は破棄された日から3年間とされています。不法行為に基づく損害賠償請求の時効が適用されるためです。

時効の中断と延長
重要なのは、時効は一定の条件下で「中断」することが可能であるという点です。例えば、慰謝料に関する請求や交渉の開始、または法的手続きの開始は時効を中断させる効果があり、中断後は時効期間が再度起算されます。また、特定の事情により時効の「延長」が認められる場合もありますが、これには法的な手続きが必要となります。

婚約破棄の慰謝料請求を無視された時はどのように対応すれば良いですか?

相手方が慰謝料請求の対応に応じない場合、「気づいていなかった」「通知が届いていない」などの言い訳ができないように、内容証明郵便を送付し証拠を残しましょう。

内容証明郵便を利用する際には、「本文書を受け取った後2週間以内にご連絡ください」や「指定期間内に返答がない場合は法的措置を取ります」といった明確な期限と、その期限内に連絡がなかった場合の対応を書き添えます。そして、その期限まで相手の反応を待ちましょう。内容証明郵便を無視することは、相手方にとってリスクを伴うため、対応を促すことが期待できます。

内容証明郵便を送付したにもかかわらず、依然として相手方からの応答がない場合は、法的な手続きに移ります。具体的には、家庭裁判所に調停を申し立てることから始めることが一般的です。調停では、裁判所の調停委員が介入し、双方にとって公平な解決を図ります。

調停で解決に至らない場合は、民事訴訟に進むことができます。訴訟を通じて、裁判所に慰謝料の支払いを命じてもらうことが目的です。訴訟は時間とコストがかかる可能性があるため、この選択肢をとる前に、専門家である弁護士に相談することが重要です。

弁護士は、慰謝料請求の適切な方法や、法的な手続きの進め方について、専門的なアドバイスを提供してくれます。また、弁護士が介入すること自体が、相手方に対して請求を真剣に受け止めるよう促す効果がある場合もあります。

慰謝料と手切れ金の違いは何ですか?

「慰謝料」と「手切れ金」はしばしば混同されがちですが、意味合いや法的な位置づけには明確な違いがあります。

慰謝料は、婚約破棄などの行為によって精神的な苦痛や損害を受けた人が、その苦痛に対する補償として請求できる金銭です。法律上、慰謝料の請求は、相手方に何らかの過失があった場合に成立することが多く、婚約破棄に際して生じた精神的苦痛を金銭で補填することを目的としています。

一方、手切れ金は、双方がこれ以上のトラブルなく関係を解消するための合意金として支払われます。手切れ金の支払いは、法的な義務に基づくものではなく、むしろ双方が今後のトラブルを避けるために、相互に納得した上で決定されることが一般的です。手切れ金の額は、双方の協議により自由に決められ、具体的な金額に法的な基準はありません。

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更新日 : 2024年11月18日
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