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不倫慰謝料を増額できる15のケースとは?実際の判例や多く請求するコツも解説

不倫慰謝料を増額できる15のケースとは?実際の判例や多く請求するコツも解説

不倫による慰謝料相場は離婚や別居の有無によって異なりますが、50~300万円程といわれています。

全体的な相場 50~300万円
婚姻関係を継続する場合 50~100万円
別居する場合 100~200万円
離婚する場合 200~300万円

特に、下記のように悪質性が高いと判断される内容の不倫は、被害者の精神的苦痛は大きいと見なされるため慰謝料も増額されやすい傾向です。

  • 不倫の期間が長い
  • 不倫の回数が多い
  • 婚姻期間が長い
  • 不倫が原因で離婚・別居した
  • 夫婦間に幼い子どもがいる
  • 不倫をやめるように言っても聞き入れなかった
  • 配偶者と不倫相手との間に子どもがいた
  • 不倫相手が配偶者を既婚者だと知っていた
  • 婚姻関係に問題がなかった
  • 不倫が原因で精神病を患った
  • 不倫によって子どもに悪影響を及ぼした
  • 配偶者が不倫相手に経済的な援助をしていた
  • 不倫をした側が、虚偽の主張をした
  • 不倫以外にDVやモラハラがあった
  • 不倫した側の年収が高い

なるべく多くの慰謝料を請求するには、こちらには非がなく、相手にのみ不法行為があったことを示せる証拠が必要です。特に、上記の増額事由に当てはまる証拠をそろえておくと、多く請求しやすくなるでしょう。

本記事では、不貞行為を行なった配偶者や相手に対して、不倫慰謝料を増額できる15のケースや多く請求するためのコツや判例などについて解説します。証拠をそろえるほかにも、弁護士に相談するのも慰謝料を多く請求するうえでは重要です。

弁護士なら、慰謝料を増額できるポイントはないか確認してくれるので、自分で行うよりも慰謝料額を増額できる可能性が高いです。また、面倒な書類づくりや手続き、相手との交渉や裁判になった場合の出廷などもすべて代理してくれるため、精神的・身体的な負担も少なく済みます。

被害者は不倫をされてただでさえ精神的に辛い時期です。交渉の際は、不倫の証拠を見たり不倫相手と顔を合わせたりとさらに辛いことが多いため、少しでも負担を減らすために弁護士に依頼することをおすすめします。

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不倫慰謝料を増額できるケース

不倫慰謝料は、不倫をされた人が、その配偶者や不倫相手に対して請求する慰謝料です。主に、不倫によって受けた精神的苦痛を和らげることを目的として支払われます。

一般的な相場は50~300万円です。しかし、悪質性が高く、被害者の精神的苦痛が深刻であると想定される場合は、相場よりも慰謝料が増額されることがあります。

特に、下記のケースは不倫慰謝料を増額できる可能性が高いです。

  • 不倫の期間が長い
  • 不倫の回数が多い
  • 婚姻期間が長い
  • 不倫が原因で離婚・別居した
  • 夫婦間に幼い子どもがいる
  • 不倫をやめるように言っても聞き入れなかった
  • 配偶者と不倫相手との間に子どもがいた
  • 不倫相手が配偶者を既婚者だと知っていた
  • 婚姻関係に問題がなかった
  • 不倫によって子どもに悪影響を及ぼした
  • 配偶者が不倫相手に経済的な援助をしていた
  • 不倫をした側が、虚偽の主張をした
  • 不倫以外にDVやモラハラがあった
  • 不倫した側の年収が高い

ここでは、不倫慰謝料を増額できるケースについて解説していきます。

不倫の期間が長い

不倫の期間が長い場合は、精神的に苦しんだ期間も長いと判断されることから、慰謝料の増額が期待できます。

不倫の期間の長さは、1年を基準に判断されるのが一般的です。不倫期間が1年を超えると「長い」と判断され、2年以上となれば200~300万円の慰謝料請求も不可能ではありません。

反対に、不倫期間が3ヶ月以内の場合は「短い」と判断され、不倫慰謝料が相場より低くなることがあります。ただし、半年の婚姻期間に対して不倫期間が3ヶ月のように、婚姻期間に占める割合が大きい場合は、期間そのものは短くとも増額が認められることもあります。

不倫の回数が多い

不貞行為の回数が多いほど、その配偶者が受ける精神的苦痛が大きくなります。したがって、不倫の期間が半年未満など短くても、不貞行為の回数が多ければ、不倫慰謝料が増額される傾向にあります。

具体的には、不貞行為が20回を超えると「多い」と判断されやすいです。一方で、不貞行為が3~5回の場合は「少ない」と見なされ、相場より慰謝料の請求額も少なくなる傾向です。

たとえ不貞行為が1回限りであっても、長期にわたり親密な交際を続けていた場合は、不倫慰謝料の増額が認められる可能性もあります。

なお、不倫の回数を慰謝料増額の焦点とする場合は、回数を明確に示す証拠が必要です。不貞行為の当事者本人は、実際よりも少なく申告することが多いため、証拠がなければ双方の水掛け論で終わってしまう可能性があります。

そのため、配偶者と不倫相手の不貞行為があった日付が分かる写真や動画、ホテルの領収書など、相応の証拠を事前に収集しておきましょう。

婚姻期間が長い

婚姻期間が長くなるほど、多額の慰謝料の請求が可能です。これは、次の2つのような事情が考慮されるためです。

  • 婚姻期間が長いほど夫婦間の信頼関係が深く、精神的苦痛も大きい
  • 仮に離婚する場合、不貞された配偶者の再スタートが困難になりやすい

また、婚姻期間の長短の目安は次の通りです。

短期間 3年以下
長期間 15年以上

婚姻期間が15年を超える場合は、大幅な増額の可能性があります。一方で婚姻期間が3年以下の夫婦では、「短い」と判断されるため、請求できる慰謝料は少ない傾向です。

不倫が原因で離婚・別居した

夫婦の離婚や別居は、婚姻関係の破綻に直結します。継続できたとしても、夫婦関係の修復は容易ではないでしょう。

また、慰謝料の金額は不倫が原因で夫婦関係が破綻したか否かという事項から決まるため、不倫が原因で夫婦が離婚・別居した場合には、慰謝料の増額が認められることが多いです。

なお、離婚か別居かによって、慰謝料の金額相場は下記のように異なります。

離婚 200〜300万円
別居 100~200万円
離婚・別居なし 50~100万円

離婚のほうが、別居よりも不倫された配偶者の精神的苦痛が大きいと判断されるため、慰謝料の金額も大きくなりやすいです。また、不倫が原因で離婚する場合は、不倫慰謝料に加えて離婚慰謝料も請求できるため、金額相場はさらに大きくなります。

不倫慰謝料と離婚慰謝料の違いは下記の通りです。

概要 請求相手
不倫慰謝料 不倫によって婚姻生活が乱され精神的苦痛を受けたことに対して支払われる 配偶者
不倫相手
離婚慰謝料 離婚によって精神的苦痛を受けたことに対して支払われる 配偶者のみ

対して、不倫発覚後も婚姻関係を継続する場合は、離婚・別居する場合に比べて精神的苦痛が小さいと見なされます。そのため、慰謝料が減額されるケースが多いです。

夫婦間に幼い子どもがいる

夫婦の間に未成熟子がいる場合は、不倫慰謝料の増額要因となります。未成熟子は「社会的・経済的に自立できない子」を指し、具体的には次のような子供が該当します。

  • 乳幼児
  • 小中学生
  • 就労前の高校生・大学生
  • 病気・障がいにより就職が難しい成人

18歳以下の子供であっても、自活が可能であれば未成熟子にはあたらないため、増額の要因にはなりません。反対に、成人年齢に達していても、さまざまな理由により親の養育がなければ生活できない子供がいる場合は、次のような事情を汲んで慰謝料が増額されるのが一般的です。

  • 裏切られた配偶者の精神的苦痛が大きい
  • 夫婦関係の亀裂により子供が受ける精神的苦痛が大きい
  • 夫婦関係の破綻により社会的・経済的に未成熟子の養育が困難になる

未成熟子の年齢が低かったり人数が多かったりするほど、上記の事情がより深刻化しやすいことから、慰謝料が大幅に増額される可能性があります。

なお、夫が不貞を働いたときに妻が妊娠中だった場合は、必ずしも増額の要素とはなりません。しかし、妊娠は夫婦円満の証であることから、裏切られた妻の精神的苦痛が大きいと判断されれば、増額につながります。

配偶者と不倫相手との間に子どもがいた

不倫相手との間に子供ができた・生まれた場合に、配偶者が受ける精神的苦痛は甚大です。また、夫婦の婚姻関係が破綻しかねないことからも、慰謝料が大きく増額される傾向にあります。

ただし、不倫相手が流産・中絶した場合は、出産した場合に比べて請求できる慰謝料は減額される可能性があります。これは、出産したほうが、不倫された配偶者が受ける精神的苦痛が大きいと見なされるためです。

また、いずれのケースであっても増額される金額には幅があり、実際は数十万円の増額に留まるケースもみられます。特に、もともと夫婦関係が破綻していた場合、大幅な増額は見込めない可能性が高いでしょう。

不倫をやめるように言っても聞き入れなかった

不倫をやめるように言っても不倫を続けるのは、配偶者への二重の裏切り行為といえます。悪質性が高いと判断されるため、慰謝料が増額されることが多いです。

加えて、次のようなケースにあてはまる場合は、悪質性がさらに高いため、慰謝料の大幅な増額の可能性があります。

  • 誓約書などで不倫解消を約束したにもかかわらず、不貞行為を続けた
  • 謝罪の言葉や反省の態度がない
  • 不倫の責任を配偶者に転嫁する(「おまえが至らないから不倫するしかなかった」など)

なお、不倫発覚後に当事者に「やめてほしい」と伝えないまま不倫関係が続いた場合は、「単なる継続」とみなされます。不倫解消を依頼していた場合に比べて、慰謝料が少なくなる可能性があるため、気づいた時点で一度警告しておくことをおすすめします。

不倫相手が配偶者を既婚者だと知っていた

不倫慰謝料は、不倫相手に「故意」または「過失」が認められると、増額の可能性があります。故意とは、相手が既婚者であると知りながら不倫関係を持つことです。具体的には、最初から既婚者だと知っていた、もしくは交際途中で気づいたものの、その後も不倫を続けた場合です。

不倫している人の配偶者を傷つけたり、その家庭を破綻させたりする意図が明確であることから不倫相手側の悪質性が高いと判断されるため、増額の対象となります。

対して「過失」とは、相手が既婚者だと気づく機会があったにも関わらず、不倫相手側の落ち度によって気づかなかった場合です。

例えば、結婚している人が「独身だ」と偽って、不倫相手に交際を持ちかけたとしましょう。この場合の、嘘をつかれた側(不倫相手)の過失は次のようになります。

独身と嘘をついた人 嘘をつかれた人(不倫相手) 嘘をつかれた人(不倫相手)の過失
結婚指輪をしている 既婚を疑う機会があった あり
結婚指輪をしていない 既婚を疑う機会がない なし

上記は極端な例ですが、嘘をつかれた側にも落ち度がある場合は、慰謝料の増額が期待できます。ただし、不倫慰謝料の請求では過失と故意の違いによって、増額の傾向が異なります。

悪質性 増額の幅
過失のみ 低い 小さい
故意 高い 大きい

このように、不倫で請求できる慰謝料の金額は、個々の状況によって大きく異なります。以下の記事では、高額の慰謝料請求のためのポイントや事例をご紹介しているので、参考にしてみてください。

婚姻関係に問題がなかった

夫婦仲が良かったにもかかわらず不倫された場合、慰謝料が増額される可能性があります。不倫前は信頼し合い、円満な関係を築いていたのに、不倫によって突然その関係が壊れた場合、精神的なダメージが大きいと判断されるためです。

反対に、もともと夫婦仲が冷めていて、不倫が関係に与えた影響が小さいと判断されると、慰謝料の増額は難しくなります。そのため、不倫前の夫婦関係が良好であったことを示す証拠があれば、慰謝料請求の際に有利になるでしょう。

不倫が原因で精神病を患った

不倫のショックによってうつ病や適応障害などの精神疾患を発症した場合、慰謝料の増額が認められる可能性があります。不倫慰謝料は、精神的苦痛に対する損害賠償として支払われるものなので、その苦痛が特に大きい場合には、通常より高額な慰謝料を請求しやすくなります。

そのため、医師の診断書や通院記録があれば、慰謝料増額の根拠として有効です。精神的な影響が大きかったことを客観的に証明できれば、不倫による損害が深刻だったと認められ、慰謝料の増額が期待できるでしょう。

不倫によって子どもに悪影響を及ぼした

不倫は夫婦だけの問題ではありません。不倫発覚後は夫婦のケンカが増えるなど、家庭の雰囲気が悪くなるケースが多いため、家庭全体に影響を与えます。特に、子どもが下記のような精神的なダメージを受けた場合は、慰謝料の金額が高くなる可能性が高いです。

  • ストレスを感じて情緒不安定になった
  • 不登校になった

また、別居や離婚によって親と離れることで、精神的に大きなショックを受けるケースもあります。こうした子どもへの悪影響が確認できれば、慰謝料の増額が認められやすくなります。

特に幼い子どもがいる場合、不倫によって片方の親が育児に専念できなくなるため、子どもへの負担が大きくなることも考えられます。不倫が原因で子どもの生活が大きく変わったことを示せば、慰謝料の増額につながるでしょう。

配偶者が不倫相手に経済的な援助をしていた

配偶者が不倫相手に経済的な援助をしていた場合、慰謝料が増額される可能性があります。特に、援助の金額が大きい場合や、長期間にわたって支援していた場合は、夫婦の財産が不倫相手に流出していたことになるため、精神的苦痛がより深刻であると判断されやすいです。

例えば、過去の裁判例では、配偶者が不倫相手に1000万円を渡していたケースや、不倫相手のマンション購入資金を援助していたケースで、慰謝料の増額が認められています。不倫相手への金銭の流れを証明する資料があれば、慰謝料請求の際に有利になるでしょう。

不倫をした側が、虚偽の主張をした

不倫をした側が慰謝料請求を避けるために虚偽の主張をした場合、慰謝料が増額されることがあります。

例えば、「不貞行為はセクハラやパワハラの結果だった」と虚偽の主張をしたケースや、「不倫相手が妊娠した」と嘘をついたケースでは、慰謝料の増額が認められました。このような嘘は、請求する側にさらなる精神的苦痛を与えるだけでなく、裁判で不誠実な態度と判断され、慰謝料の増額につながります。

また、後になって嘘が発覚した場合も、慰謝料の増額事由にあたるため、追加請求できる可能性があります。そのため、不倫をした相手が慰謝料を減額しようと虚偽の主張をしている場合は、証拠を集めて冷静に対応することが重要です。

不倫以外にDVやモラハラがあった

不倫に加えてDVやモラハラなどの不法行為があった場合、慰謝料が増額される可能性があります。これは、不倫による精神的苦痛に加えて、暴力や精神的虐待による苦痛がさらに加わるためです。

例えば、過去の裁判では下記のような判決が出ています。

状況 慰謝料
夫が不倫相手と同棲しながら生活費を支払わなかった 1000万円
複数の不倫相手がいたうえに妻への暴力があった 1000万円

このように、不倫に加えてDVやモラハラといった悪質な行為がある場合、慰謝料が大幅に増額される可能性が高まります。特に、暴力によって入院を余儀なくされたり、モラハラが原因で精神障害を発症したりした場合は、慰謝料の金額も高額になりやすい傾向にあります。

そのため、不倫以外にも相手からの不法行為があった場合は、不倫の証拠以外にも具体的な記録や証拠を残しておくことが重要です。診断書や録音データ、LINEやメールのやり取りなどを整理しておくことで、裁判や交渉の際に有力な証拠となり、相場よりも高額な慰謝料を得られる可能性が高まるでしょう。

不倫した側の年収が高い

不倫をした配偶者や不倫相手の年収が高い場合、慰謝料が増額されることがあります。これは、収入が多い人に対して一般的な慰謝料の相場を請求するだけでは、経済的なダメージが小さく制裁としての意味が薄れるためです。

ただし、慰謝料の増額には明確な法律上の基準はありません。交渉によって決まるのが一般的なため、相手の収入や資産状況を把握し、現実的に支払える範囲で適正な金額を請求することが重要です。

無理な請求をしても、支払い能力がなければ実際に受け取れる金額が減る可能性があるため、相手の経済状況を考慮しながら慎重に進めましょう。

不倫慰謝料の増額が難しいケース

不倫慰謝料の増額が難しいケースとして、下記の2パターンが挙げられます。

  • 自分が有責の場合
  • 配偶者が不倫相手に既婚者であることを隠していた場合

ここからは、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

自分が有責の場合

不倫慰謝料を請求する側にも、下記のように相手が不倫に走るような原因となる落ち度(有責性)がある場合、慰謝料の増額は難しくなります。

  • 請求する側が過去に不倫をしていた
  • DVやモラハラを行っていた

裁判では、双方の責任が考慮されるため、自分にも大きな非がある場合は、慰謝料請求自体が認められないこともあります。そのため、不倫慰謝料を請求する際は、自分に有責性がないかどうかを慎重に確認することが大切です。

配偶者が不倫相手に既婚者であることを隠していた場合

配偶者が独身だと嘘をついて不倫をしていた場合、不倫相手には故意に不倫をしたという認識がなかった可能性が高いため、慰謝料請求自体が認められないことがあります。ただし、前述の通り不倫相手が「普通に考えれば既婚者だと疑うべきだった」と判断される場合、過失があるとして慰謝料請求が認められる可能性があります。

また、不倫相手への請求が難しい場合でも、不倫をした配偶者への慰謝料請求は認められます。特に、配偶者が意図的に既婚であることを隠し、不倫を続けていた場合、その行為の悪質性が評価され、慰謝料の増額が認められる可能性が高いです。

不倫の責任を適正に追及するためにも、配偶者と不倫相手の関係性や、不倫相手が既婚の事実を知っていたかどうかはしっかり確認しましょう。

高額な不倫慰謝料が認められた判例

不倫の慰謝料相場は50~300万円ですが、不倫の期間や回数、不倫による夫婦関係の変化などの要素で金額が増減します。これに加えて、被害者の精神的苦痛が特に大きいなどの特殊な事情がある場合には、相場よりも高額な慰謝料が認められやすいです。

実際に高額な不倫慰謝料が認められたのは、次のようなケースです。

  • 無断で離婚届を出され子供まで作られていた(慰謝料:800万円)
  • 不倫期間40年の間で妻に生活費を一切支払わなかった(慰謝料:1,500万円)
  • 妻の出産と同時期に不倫相手も出産した(慰謝料:450万円)

ここからは、高額な慰謝料が認められた判例とポイントについて解説します。

無断で離婚届を出され子供まで作られていた(慰謝料:800万円)

17年にわたる不倫で不倫相手との子供を作られ、さらには離婚届を無断で出された妻が、夫と不倫相手に対して不倫慰謝料を請求しました。相場よりも高額な800万円の支払いが認められています。

このケースの要点は次の通りです。

  • 不倫関係は少なくとも17年間
  • 不倫相手との間に子供がいる
  • 夫は次第に妻のもとに帰らなくなり、最終的に不倫相手と同棲した
  • 不倫をきっかけに夫は妻に十分な生活費を渡さなくなった
  • (訴訟に際して)不倫関係を隠蔽しようとした
  • 妻の署名を偽造して離婚届

(東京地方裁判所 平成21年 4月8日判決)

夫と不倫相手との関係がきわめて親密であるだけでなく、生活費を渡さずに妻子を経済的に困窮させ、さらに離婚届を偽造して提出するといった行為がみられます。妻が受けた精神的苦痛は極めて大きく、社会的にみても悪質性が高いことから、相場よりも高額な慰謝料の支払いが認められました。

不倫期間40年の間で妻に生活費を一切支払わなかった(慰謝料:1,500万円)

40年にわたる不倫期間のあいだ、生活費を一切支払われなかった妻が不倫慰謝料を請求し、1,500万円の支払いが認められました。このケースの要点は次の通りです。

  • 婚姻期間52年のうち不倫(別居)期間は40年間
  • 別居時に夫は建物を妻に引き渡している
  • 夫は妻に別居期間に一切生活費を支払わなかった
  • 不倫相手との間に2人の子供がおり、夫は認知している
  • 夫が資産家である(不倫相手と3つの会社を経営)

(東京高等裁判所 平成元年11月22日判決)

このケースでは、40年にわたる不倫で妻が受けた精神的苦痛に加えて、支払われなかった生活費が考慮されています。また、資産家である夫の支払い能力が高いことから、相場よりも高額な慰謝料が認められました。

このように、不倫をした配偶者が裕福な場合は、不倫慰謝料が増額される可能性があります。

妻の出産と同時期に不倫相手も出産した(慰謝料:450万円)

このケースでは、離婚はしていないものの、不倫相手に対して450万円の慰謝料の支払いが命じられました。なお、離婚しない場合の慰謝料は、30~100万円が相場です。

このケースの要点は次の通りです。

  • 夫は不倫相手に妻との不和や離婚をほのめかしていた
  • 妻の出産と同時期に不倫相手も出産し、夫は認知した
  • 妻は出産後も夫の不貞を知らず、半年経った頃に夫が不倫相手と同棲を開始した
  • 不倫相手は同棲解消を承諾しなかった
  • 不倫期間は5年(このうち同棲期間3年)にわたった
  • 妻子が夫との再出発を希望しているにもかかわらず、不倫相手が妨害していた
  • 夫婦は婚姻関係を継続している

(東京地判平成15年9月8日)

不倫開始後に妻が妊娠していることから、不倫相手は夫婦円満を知り得る状況にありました。また、不倫発覚後も不倫をやめないと意思表明し、かつ夫婦の関係修復を妨害していることから、悪質性が高いと判断されています。

そのため、不倫が原因で離婚しなかったにも関わらず、妻への慰謝料は450万円と相場よりも高額になりました。

このように、不倫慰謝料の相場には一定の目安があるものの、個々の事情によって実際の金額は大きく増減します。より詳しい不倫慰謝料の相場や、高額請求のポイントを知りたい場合は、次の記事も参考にしてください。

不倫の慰謝料相場はケースによって変動する(相場50万~300万)

不倫慰謝料の相場は50~300万円が相場です。ただし、実際の慰謝料額は、下記のようなさまざまな要素を踏まえて算定されるため、一概にはいえません。

  • 不倫の期間
  • 不倫の回数
  • 不倫の内容
  • 不倫に至った原因・経緯
  • 不倫が婚姻関係にもたらした影響・結果

一般的な不倫慰謝料の相場について、ケース別に表にまとめました。

全体的な相場 50~300万円
婚姻関係を継続する場合 50~100万円
別居する場合 100~200万円
離婚する場合 200~300万円

最も相場が大きくなりやすいのは、離婚する場合です。ただし、長年にわたって性行為を拒否していたなど、もともと夫婦関係が破綻していた場合は相場と同程度または低くなることもあります。

また、ダブル不倫であるかどうかも、慰謝料額を大きく左右します。ダブル不倫とは、一般的には既婚者同士(妻がいる夫と夫がいる妻)の不倫を差します。

被害者は、通常の不倫と同様に、不倫をした配偶者と不倫相手のそれぞれに慰謝料を請求できます。しかしダブル不倫の場合は、不倫相手の配偶者も被害者のため、自身の配偶者に対して慰謝料を請求してくる可能性があり、通常の不倫慰謝料に比べて算定が複雑化しやすいです。

ダブル不倫の慰謝料の相場は50~300万円ですが、不倫回数や不倫の主導者、双方の離婚の状況などによって増減します。ダブル不倫における慰謝料増額のコツを知りたい場合は、次の記事も参考にしてください。

不倫慰謝料を多く請求するためのコツ

配偶者の不倫で受ける精神的苦痛は、金銭的価値では図れません。自身が受けた痛みを知ってもらうために、より多くの慰謝料が欲しいと思うのも当然です。

これまで見てきたように、不倫慰謝料はさまざまな要素によって大きく増減します。そして、増額に足る事情があったとしても、それが客観的に認められなければ、実際の増額にはつながりません。

不倫慰謝料の増額の可能性を高めるには、次の2つのポイントを押さえる必要があります。

  • 不貞行為があったことと、慰謝料増額の理由に当てはまることの両方を証明する
  • 不倫慰謝料の請求を弁護士に依頼する

ここからは、それぞれの内容について解説します。

不貞行為があったことと、慰謝料増額の理由に当てはまることの両方を証明する

不倫慰謝料を少しでも多く受け取るには、不倫された側が、さまざまな証拠を集めて次の2つを証明しなければなりません。

項目 証拠の例
不貞行為(肉体関係)がある ホテルでの宿泊を伺わせるメールがある
ホテルから2人一緒にでてきた写真・動画がある
慰謝料の増額事由に該当する事柄がある 不倫期間が長い(不倫を伺わせるメールのやり取り・日付入りの密会写真)
不貞行為の回数が多い(ホテルの領収書・クレジットカードの利用明細)
不倫相手との間に子供がいる(不倫した配偶者の戸籍謄本を調べる)

証拠は種類・数が多いほど信頼性が高まり、不倫の事実を認められやすくなります。多くの証拠を集めるには時間がかかりますが、地道に取り組みましょう。なお、証拠集めを配偶者や不倫相手に気づかれると、隠蔽されてしまう恐れがあります。

こちらの調査を有利に進めるためにも、十分な証拠を集め終えるまでは不貞行為に気づいていることは隠しておくのが望ましいです。

不倫慰謝料の請求を弁護士に依頼する

不倫慰謝料の請求を成功させるには、弁護士に依頼するのがおすすめです。自身でも請求は可能ですが、弁護士に依頼すると、次のようなメリットがあります。

  • 個々の状況に合わせて適切な慰謝料を算定してもらえる
  • 効果的な証拠集め方ができる
  • 増額要因の見逃しがない
  • 増額を含めて慰謝料交渉がスムーズになる
  • 煩雑な事務手続きなどを自分でしなくてよい

訴訟のプロである弁護士に依頼することで、増額の要因を見落とすことなく、適正な慰謝料を請求できます。また、被告側は大きな心労の中で、自分だけで膨大な証拠を集めて回ったり、先方と交渉したりするのは大変です。

特に、不倫した配偶者がDVやモラハラだった場合、不倫されたのにもかかわらず慰謝料額を不当に減額されたり、支払わないと主張されたりするケースもあります。弁護士なら、話し合いの場に同席してくれたり代理してくれたりするため、不倫した配偶者の方が強い関係であってもきちんと慰謝料を回収できる可能性が高いです。

請求における失敗のリスクや自身の身体的・精神的負担を減らすためにも、慰謝料請求は弁護士に依頼しましょう。

下記では、不倫の慰謝料請求を依頼する弁護士の選び方について紹介しているので、参考にしてみてください。

まとめ

不倫慰謝料の相場は100~300万円が相場ですが、実際の金額は不倫の内容や不倫に至った経緯、不倫が与えた影響の大きさなど、個々の状況に応じて大きく増減します。

特に、不倫が長期にわたる場合や回数が多い場合、これまで円満だった夫婦関係が破綻した場合などは、悪質性が高いため、慰謝料額が相場よりも増えることが多いです。夫婦間または不倫相手との間の子供の有無も、慰謝料の金額を左右します。

反対に、不倫慰謝料は減額されることもあり、算定は容易ではありません。また、慰謝料の増額を認めてもらうには、不倫された側が相応の証拠を収集する必要があります。1人だけですべてに対応するのは負担が大きいため、慰謝料請求のプロである弁護士に依頼するのがおすすめです。

プロに任せることで、個々の状況に合わせた適正な慰謝料額が分かり、証拠集めや交渉もスムーズになります。慰謝料増額を成功させるためにも、ぜひ信頼できる弁護士に依頼しましょう。

不倫慰謝料の増額に関するよくある質問

不倫慰謝料が請求額より減額されるケースはありますか?

相場より高額な金額を請求された場合は、相当の理由がない限り減額されるでしょう。不倫慰謝料の相場は、最高でも300万円程度です。

そのため、300万円以上の高額な慰謝料を請求した場合は、請求金額よりも大幅に減額される可能性があります。

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更新日 : 2025年03月07日
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