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不倫で離婚する前に準備することは?慰謝料請求や他に決めておくことも解説

不倫で離婚する前に準備することは 慰謝料請求や他に決めておくこと

「配偶者に不倫されたから離婚したい」「不倫してしまったが離婚したい」など、不倫と離婚の問題で悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

夫婦間で協議や調停を行い、お互いの合意を得られれば、理由は問われずに離婚が可能です。反対に、協議・調停で相手が離婚や慰謝料の支払いを拒否した場合は話し合いが不成立となり、裁判に進むことになります。

裁判では不倫(不貞行為)は法定離婚事由のひとつとされており、不倫した側が離婚を拒否していても、判決によって強制的に離婚や慰謝料請求が認められます。

ただし、裁判では証拠の提示が求められるため、事前に相手が不倫した証拠を集めなければなりません。裁判で求められる不倫の証拠とは「配偶者と不倫相手が肉体関係を持っていた証拠」のことを指します。

なお、どの方法で離婚をするにしても、確実に離婚や慰謝料請求をしたい場合は、事前の証拠集めが必要です。証拠がない状態で話し合いに臨んでも、相手に不倫の事実を否定される恐れがあるためです。確定的な証拠が揃っていれば、協議・調停の段階で相手が離婚や慰謝料請求に応じる可能性も高くなるでしょう。

一方、不倫した側の人は、不倫の証拠を提示されたうえで離婚や慰謝料を請求された場合、素直に応じる方が賢明です。証拠が揃っているのであれば裁判で争っても勝てる見込みはゼロに等しく、余計に時間やお金がかかってしまうためです。

不倫が原因で離婚や慰謝料請求を考えている方は、離婚問題に強い弁護士に相談しましょう。弁護士に相談すれば協議や調停での同席はもちろん、証拠集めのアドバイスや裁判に発展したときの対応まで一貫して任せられます。

本記事では、不倫された際の離婚の流れや慰謝料請求の際に準備すること、慰謝料以外に決めるべき離婚条件などについて詳しく解説します。不倫された側、不倫した側の両方の視点から解説するので、不倫が原因の離婚で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

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不倫による肉体関係は裁判で離婚が認められる「不貞行為」に該当する

協議や調停によって離婚の話し合いを進める場合、お互いが合意しなければ離婚はできません。たとえば不倫した側が「不倫はしていないから離婚もしない」などと主張して離婚を拒否しているのであれば、協議や調停は不成立となります。

一方、裁判で離婚を求める場合、法的な離婚理由として不倫が認められれば、有責配偶者(離婚原因を作った配偶者)が離婚を拒否していても、判決によって強制的に離婚が可能です。

民法第770条1項では、裁判で離婚が認められる「法定離婚事由」が定められており、その中の一つに「配偶者に不貞行為があったとき」という条項があります。

法定離婚事由における不貞行為とは、異性との親密な関係や浮気の疑いだけではなく、「肉体関係を持っている証拠がある不倫」のことです。そのため、メールやSNSでのやり取り、デートをしていたなどの事実だけでは、裁判で不貞行為として認められない可能性が高いです。

反対に、不倫相手とラブホテルなどに出入りしている写真や、肉体関係を持っていたことがわかるLINEのやり取りなどの証拠があれば、不倫が離婚原因として認められやすくなるでしょう。

つまり、不倫を理由に離婚をする場合は、配偶者に気付かれずに確定的な証拠集めをすることが非常に重要です。

参照:民法第770条 | e-Gov 法令検索

不倫された際の離婚の流れ

不倫が原因で離婚をする場合、基本的には以下のような流れで離婚を進めていきます。

離婚方法 概要 割合
協議離婚 夫婦双方の合意があれば理由問わず離婚できる 約90%
調停離婚 調停員を介し離婚の合意に向けて話し合う 約8%
裁判離婚 不倫の証拠があれが合意がなくても離婚できる 約2%

日本では、協議によって離婚している夫婦が約90%を占めており、調停は約8%、裁判にまで進むのは約2%とされています。

まずは配偶者と話し合いの場を設け、協議離婚を目指しましょう。慰謝料や財産分与、養育費など諸々の合意が得られれば、離婚届を役所に提出するだけで離婚が完了します。

協議離婚による話し合いが難航する場合は、家庭裁判所に申し立てて調停離婚をおこなうことになります。調停離婚では配偶者と直接顔を合わせず、調停委員や裁判官を介して話し合いを進めるため、冷静な解決が期待できます。

調停離婚でも合意が得られなかったときは、裁判離婚に発展する場合があります。不貞行為の証拠があれば法定離婚事由に該当するため、配偶者の合意を得ずとも離婚が可能です。

次の項目から、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の詳細について詳しくみていきましょう。不倫をされた側とした側のどちらの目線も織り交ぜて解説していきます。

協議離婚:夫婦双方の合意があれば理由問わず離婚できる

協議離婚は、夫婦が話し合いのもとでお互いに合意し、離婚を成立させる方法です。離婚理由は問われないため、不倫の有無にかかわらず、双方が納得すれば役所に離婚届を提出するだけで離婚できます。

不倫された側は、離婚する際に慰謝料や財産分与、親権、養育費、面会交流などの条件を決めておく必要があります。あとから約束を反故にされないためにも、合意した内容を離婚協議書に残しておきましょう。

とくに養育費の未払いは発生しやすいため、強制執行認諾付公正証書を作成し、支払いが滞った場合に相手の財産を差し押さえられるようにしておくと安心です。

一方、不倫した側からの離婚請求は調停や裁判では認められにくいため、協議離婚で相手を説得する必要があります。そのため、慰謝料を多めに支払う、財産分与の割合を増やすなど、相手に有利な条件を提示することも検討してみてください。

なお、協議離婚は裁判離婚と比べ、慰謝料金額をある程度自由に決められるという特徴があります。裁判では過去の事例に基づいて慰謝料金額が判断されるため、相場通りになるケースが多いのですが、協議離婚ではお互いの合意さえあれば、相場から離れた金額にすることも可能です。

協議離婚は夫婦間の話し合いによって成立するため、早ければ約1〜2か月で離婚が成立するでしょう。もしも協議離婚で話し合いがまとまらなかった場合や長引く場合は、次の「調停離婚」の段階に進みます。

調停離婚:調停員を介し離婚の合意に向けて話し合う

夫婦間の話し合いで離婚が決まらなかった場合、家庭裁判所に調停を申し立て、裁判官や調停委員を交えて話し合いを行う調停離婚という方法を取ることになります。

調停離婚では配偶者とは直接顔を合わせず、調停委員を介して話し合いを進めていきます。とくに不倫が原因で離婚する場合、お互いが感情的になって話し合いが進まないケースも少なくありません。調停離婚であれば第三者を介して話し合いが進められるため、淡々と離婚条件を決めていけるでしょう。

不倫された側は、調停による話し合いで離婚条件にお互いの合意が得られれば調停成立となり、その日が離婚成立日となります。

一方、不倫した側も調停を申し立てることは可能ですが、原則として有責配偶者からの離婚請求は認められません。そのため、相手が合意してくれる条件を受け入れることも覚悟する必要があります。慰謝料や財産分与などで相手に有利な条件を提示することで、合意を得られる可能性が高まるでしょう。

離婚調停は基本的に1か月に1回の頻度でおこなわれ、2回〜6回以内で終わることが多いようです。そのため、調停離婚による離婚成立までの期間は2か月〜6か月程度になります。

なお、離婚の際には「調停前置主義」という制度が適用されるため、調停を経ずに裁判を起こすことはできません。離婚など家庭に関する問題は、まず当事者間の話し合いで解決する努力をすべきという考え方が前提とされているためです。

最終的には裁判を起こすことを検討していても、まずは調停での話し合いによる解決を目指しましょう。

裁判離婚:不倫の証拠があれが合意がなくても離婚できる

調停でも離婚が成立しなかった場合、訴訟による裁判離婚を求めることになります。裁判では、原告が提出した証拠や陳述内容をもとに、裁判官が最終的な判決を下します。仮に相手が離婚を拒否していたとしても、判決によって強制的に離婚することが可能です。

不倫された側は、調停で離婚が成立しなければ、裁判で不貞行為の証拠を提出し、離婚と慰謝料請求を求めることになります。不貞行為の証拠がなければ離婚が認められにくくなるため、事前に決定的な証拠を集めておくことが重要です。

一方、不倫した側は調停が不成立になった後、裁判を提訴するかどうか慎重に検討する必要があります。調停離婚と同様、原則として有責配偶者からの離婚請求は認められず、裁判を起こしても棄却される可能性が非常に高いです。

判決による離婚は難しいため、訴訟上の和解離婚を目指すことも選択肢のひとつとして検討しましょう。和解離婚とは、裁判の当事者同士で話し合いをおこない、訴訟上で離婚を成立させる方法です。第1回口頭弁論が終わった後であれば、裁判の当事者同士で和解の話し合いをおこなうことが認められています。

裁判離婚の期間は人によっても異なりますが、1年~2年程度であることが多いです。ただし、養育費や面会交流など離婚条件の争点が多い場合は、裁判が長引きやすくなります。

不倫された側が慰謝料請求する際に準備すること

不倫された側は、配偶者や不倫相手に対して慰謝料を請求する権利があります。慰謝料請求に際して準備することは以下のとおりです。

  • 不倫の証拠集めを徹底的に行う
  • 請求する相手を決める
  • 請求する慰謝料額を決める
  • 内容証明郵便で通知書を送付して慰謝料請求を行う

それぞれ順番にみていきましょう。

不倫の証拠集めを徹底的に行う

慰謝料請求を有利に進めるためにも、不倫の証拠をできるだけ多く集めておきましょう。

協議離婚や調停離婚は相手の合意があれば慰謝料を支払ってもらえますが、相手が慰謝料請求を拒否すると裁判に発展する可能性が考えられます。裁判で慰謝料請求が認められるためには、不倫の事実を客観的に証明できる証拠の提出が必要になります。

不倫の客観的な証拠として有効なものの例は以下のとおりです。

  • ラブホテルに出入りしている写真や動画
  • 性交渉をしている写真や動画
  • 配偶者の自白(肉体関係を認めるメール記録や録音データなど)
  • 肉体関係があったことがわかる不倫相手とのメールやSNSメッセージ
  • ラブホテルの領収書やクレジットカードの明細
  • 探偵事務所・興信所の調査報告書

とくに、ラブホテルへの出入りや性交渉中の写真・動画などは単体でも決定的な証拠になり得ます。

写真や動画が手に入らなかったとしても、複数の証拠を組み合わせることで有効な証拠にすることも可能です。たとえば「肉体関係を匂わせる不倫相手とのメッセージやり取り」と「ラブホテルの領収書」の日付が一致していれば、ラブホテルで肉体関係を持っていたことが推測され、有効な証拠になるでしょう。

もしも不倫の証拠が不十分だと、そもそも離婚原因として認められなかったり、慰謝料請求が難しくなったりするため、早い段階で証拠集めを始めることが大切です。また、証拠を消されないためにも、不倫相手や配偶者に気づかれないよう慎重に行う必要があります。

費用をかけられる場合は、弁護士に相談してアドバイスをもらったり、興信所に調査を依頼したりすることで、より確実な証拠を集められます。

請求する相手を決める

慰謝料を請求する場合、配偶者と不倫相手のどちらか一方に請求することも、双方に請求することも可能です。ただし、二重請求は認められていないため、慰謝料の総額が増えることはありません。

仮に裁判で200万円の慰謝料が妥当と判断された場合、配偶者と不倫相手それぞれに200万円ずつ請求することはできず、2人合わせて200万円の請求となります。配偶者と不倫相手の一方に全額請求しても、折半する形で請求しても問題はありません。

不倫が原因で離婚をする場合は、離婚時に配偶者に請求するケースが一般的です。どちらに請求するかは、支払い能力や交渉のしやすさなどを考慮しながら決めるとよいでしょう。

なお、支払う側としては、仮に慰謝料の請求が一方のみに行われた場合でも、不倫した2人で折半することは可能です。

もしも不倫相手だけに慰謝料を支払ってもらいたい場合、慰謝料の合意書を作成する際に「求償権の放棄」についての条項を必ず入れましょう。求償権の放棄とは「慰謝料を全額支払った側が、もう一方に負担を求める権利を放棄すること」を指します

つまり、求償権の放棄についての条項を入れておけば、不倫相手が配偶者に対して慰謝料の折半を求めることができなくなります。とくに配偶者と離婚しない場合、不倫相手に求償権を行使されると家庭の支出になってしまうため、求償権を放棄させることは重要です。

請求する慰謝料額を決める

慰謝料の請求額は、以下のようなポイントを考慮して判断されます。

  • 離婚するかしないか
  • 婚姻期間
  • 不倫期間
  • 子どもの有無や人数
  • 夫婦関係の状態

たとえば夫婦関係が円満だったにもかかわらず不倫で離婚に至った場合、精神的苦痛が大きいことが想定されるため、慰謝料が高額になる傾向にあります。

請求する慰謝料額を決める際には、過去の判例や相場を参考にするのがよいでしょう。個々の状況によって適切な金額は異なるため、弁護士などの専門家に相談して妥当な慰謝料額を確認するのもおすすめです。

なお、一般的な慰謝料相場については「不倫された方向け|不倫による慰謝料相場は50〜300万円!」の見出しで詳しく解説しています。

内容証明郵便で通知書を送付して慰謝料請求を行う

慰謝料を正式に請求する際は、内容証明郵便で通知書を送付するのが一般的です。内容証明郵便とは、郵便局が「いつ・誰に・どのような内容で送ったか」を証明してくれる郵便のことです。

内容証明郵便で送付することにより、相手が「慰謝料請求を受けてない」と主張するのを防ぐことができ、慰謝料請求をした証拠として有効になります。内容証明郵便を利用することで、相手が請求に応じやすくなるという効果も期待できます。

また、慰謝料請求権の時効は不倫の事実および不倫相手を知ったときから3年と定められていますが、内容証明郵便で慰謝料請求を行うことで一時的に時効を中断させる効果もあります。そのため、時効が迫っている場合は、少しでも早く内容証明郵便を送付することが重要です。

確実に請求の意思を伝えるためにも、通知書の内容には具体的な請求額や支払い期限、支払い方法などを明記しなければなりません。不安がある場合は、弁護士に依頼して内容証明の作成や送付をサポートしてもらうことも検討してみましょう。

不倫された方向け|不倫による慰謝料相場は50〜300万円!

不倫による慰謝料相場は50〜300万円と、状況によって非常に幅広くなっています。慰謝料額を決める要素は複数ありますが、基本的には離婚や別居の有無によって慰謝料の相場が分かれています。

状況 慰謝料相場
離婚も別居もしない場合 50~100万円
離婚はしないが別居する場合 100~150万円
離婚する場合 100〜300万円

離婚も別居もしない場合、慰謝料は100万円未満になるケースが大半を占めています。一方、別居や離婚をする場合は、生活環境が大きく変わり、それに伴う精神的苦痛なども想定されることから、慰謝料相場は100万円以上になることが多いです。

離婚や別居のほかに慰謝料額を決める要素は、婚姻期間や子どもの有無、不貞行為の期間や頻度、不倫した本人の反省度合いなどです。また、不倫以外にもDVやモラハラなどの不法行為があった場合、精神的苦痛の増大が考慮され、慰謝料額が上乗せされる可能性があります。

具体的にどの程度の慰謝料を請求できそうか知りたい場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。

不倫されて離婚する人が慰謝料関連以外で決めるべきこと

不倫されて離婚をする場合、慰謝料以外にも決めるべきことがいくつかあります。具体的な内容は以下のとおりです。

  • 親権
  • 養育費
  • 財産分与
  • 別居時の婚姻費用

それぞれの項目について、詳しく解説します。

親権

子どもがいる場合、離婚する際にはどちらが親権を持つのかを決める必要があります。不倫が原因で離婚する場合でも、親権の判断は不倫の有無とは別問題として考えられるのが一般的です。

親権を決める際に重要なのは、子どもを育てるための監護能力があるかどうかが重要視されるためです。具体的には、これまでの養育実績や子どもの年齢、どれだけ子どもと一緒に過ごせる時間があるかなどが判断材料になります。

現状では、日本では母親が親権を獲得するケースが約9割を占めていますが、これは母親の方が育児に関わる時間が長いことが多いためです。

仮に母親が不倫した側だったとしても、父親側の養育実績が少なく、仕事で子どもの面倒を見られないと判断されれば、親権は母親が取ることになる可能性が高いでしょう。

ただし、父親だからといって親権を諦める必要はありません。たとえば、ひとり親になることで仕事が忙しくなる場合でも、実家からの協力を得て子どもの面倒を見られるのであれば親権を主張しやすくなるでしょう。

なお、不倫相手に夢中になってネグレクトをしていたり、子どもを虐待していたりなどの問題があるケースでは、男女問わず親権を獲得することは難しくなります。

親権を取れなかった親は、離婚後に面会交流を通じて子どもに会うことが可能です。しかし、子ども自身が拒否した場合は無理に会わせることはできないため、離婚によって会えなくなる可能性があることも覚悟しなければなりません。

養育費

養育費とは、未成年の子どもを育てるために必要な費用のことで、衣食住にかかる生活費や教育費、医療費などが含まれます。

離婚後、親権を持たない側の親には、親権を持つ親に対して養育費を支払う義務があります。

なお、親権と同様に養育費の支払いについても、不倫の件とは別問題として扱われます。仮に親権を得たのが不倫をした側だったとしても、親権を持たない側は養育費を支払わなければなりません。

養育費の相場は子どもの年齢や人数、年収などによって異なります。養育費の算定方法は複雑であるため、弁護士に相談しながら決めるとよいでしょう。

財産分与

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を離婚時に分け合うことです。財産分与の割合は夫婦間の合意があればどのように分けても問題ありませんが、原則として夫婦で2分の1ずつとされています。

不倫と財産分与は法律上は別問題として扱われるため、不倫した側も基本的には2分の1の財産分与を受ける権利があります。ただし、実際の分配比率については、不倫の慰謝料のことも加味して調整するケースも多くみられます。

財産分与の対象となるものと、ならないものの例は以下のとおりです。

財産分与の対象 財産分与の対象外
・土地や建物などの不動産
・家具や家電
・預貯金
・保険(解約返戻金)、有価証券、暗号資産など
・車、貴金属、ブランド品など
・婚姻前に築いた財産
・相続などで第三者から個人的に譲り受けた財産

基本的に、婚姻期間中に築いた財産はすべて財産分与の対象となります。たとえ夫婦で財布を別々にしていたり、一方が専業主婦(主夫)だったりしても、財産分与の割合は原則として2分の1です。

一方、婚姻前に築いた財産は財産分与の対象になりません。また婚姻期間中であっても、相続などで個人的に譲り受けた財産は財産分与の対象外です。

婚姻期間中に夫婦で築いた財産が多い場合、不倫された側の割合を増やすことで慰謝料と相殺する方法も考えてみてください。

別居時の婚姻費用

婚姻費用とは、夫婦が別居する際に、収入の少ない側が収入の多い側に対して請求できる生活費のことです。衣食住にかかる生活費や子どもの養育費、医療費などが含まれます。

離婚をせず別居をする、または離婚成立までの間に別居をする場合、収入の少ない側は相手に婚姻費用の請求が可能です。婚姻費用の金額は、子どもの有無や人数、年収などによって算定されます。

婚姻費用は別居期間中に生じるものであるため、離婚が成立すれば請求はできなくなります。そのため、別居前に婚姻費用について夫婦間で話し合っておくことをおすすめします。

なお、収入が少ないのが不倫した側だった場合は、基本的に婚姻費用の請求は難しいと考えておきましょう。なぜなら、別居の原因を作った有責配偶者が婚姻費用を請求すると「権利濫用」とみなされ、請求権が制限される可能性が高いためです。

仮に婚姻費用の請求が認められたとしても、少額になるケースが大半を占めていると認識しておきましょう。

不倫した方は証拠が提示された場合、慰謝料請求に応じる方が良い

不貞行為に関する慰謝料請求を受けた場合、証拠を提示されているなら、できるだけ早く応じるようにしましょう。

決定的な証拠が揃っているのであれば、拒否したとしても最終的に慰謝料の支払いは避けられません。支払いに応じず争う姿勢を見せると訴訟を起こされる可能性が高くなり、裁判になれば時間も費用も余計にかかってしまいます。

また、配偶者と不倫相手は連帯して慰謝料を全額支払う義務を負っています。お互いに折半して支払うか、どちらかが全額を支払うかは自由ですが、いずれにしても慰謝料の支払いは必要です。

ただし、慰謝料の金額が相場よりもあまりにも高額な場合は、分割払いや減額の交渉が可能です。

高額な慰謝料請求は減額交渉を前提にしているケースも多いため、減額を要求すれば応じてもらえる可能性もあるでしょう。自分で交渉する自信がないときは、弁護士に代行してもらう方法がおすすめです。

証拠を提示されたうえで慰謝料請求をされたときは、無理に争うのではなく、冷静に対応するようにしましょう。

不倫した側からの離婚請求を認めてもらいやすいケース

不倫した側は有責配偶者となるため、裁判を起こして離婚請求しても認められない可能性が高いです。しかし、以下のようなケースであれば、不倫した側からの離婚請求でも認めてもらえることがあります。

  • もともと婚姻関係が破綻している
  • 配偶者にも非がある
  • 子どもがいない、もしくは子どもが自立している

それぞれのケースについて、具体的に解説します。

もともと婚姻関係が破綻している

不倫が発覚する前から夫婦関係が冷え切っており、婚姻関係が実質的に破綻していた場合、不倫した側からの離婚請求でも認められる可能性があります。

とくに長期間の別居が続いている場合には、婚姻関係の継続が困難であると判断されることが多く、離婚が認められやすいです。

離婚が認められるための別居期間は法的には決まっていませんが、夫婦の年齢や同居期間と比較したときに、別居が長期間に及んでいることとされています。通常であれば3年〜5年以上、有責配偶者からの離婚請求であれば7年〜10年以上が一般的です。

別居が長期化していることで、夫婦の関係修復が難しいと判断されれば、不倫をした側からの離婚請求が受け入れられることもあるでしょう。

その他にも、長年のセックスレスや家庭内別居などの事実があれば、婚姻関係が破綻しているとみなされる可能性があります。

配偶者にも非がある

不倫した側からの離婚請求を認めてもらいやすいケースとして、配偶者側にも婚姻関係が破綻する原因となる行動があった場合が挙げられます。

ただし、単なる価値観の不一致や性格の違いではなく、実質的に婚姻生活が継続不可能なほどの有害な行為が行われていたかどうかがポイントです。

たとえば配偶者からDVやモラハラを受けており、不倫した側が別の人に助けを求め、結果として不倫に発展したようなケースが該当します。

また配偶者が先に不倫をしており、自分も後から不倫をしたケースなどでは相手の方が落ち度が大きいとされ、離婚が認められる可能性があります。

上記のように配偶者にも何らかの非がある場合、不倫した側からの離婚訴訟が可能です。

子どもがいない、もしくは子どもが自立している

夫婦に未成年の子どもがいる場合、配偶者や子どもの生活面・精神面に離婚の影響が大きく及ぶと考えられるため、有責配偶者からの離婚請求は認められにくくなります。

たとえ実質的に婚姻関係が破綻していたとしても、子どものことを考慮して離婚請求が棄却されやすくなると認識しておきましょう。

しかし、子どもがいない、またはすでに成人し自立している場合には、配偶者が離婚によって受ける影響が相対的に小さいと判断され、不倫した側からの離婚請求が認められる可能性が高くなります。とくに配偶者の生活が離婚後も安定すると考えられる場合には、裁判所が離婚を許可することもあります。

ただし、婚姻関係が破綻していないにもかかわらず不倫をしていたり、配偶者に全く非がなかったりする場合は、子どもがいなくても有責配偶者からの離婚請求は認められにくいでしょう。

不倫したけど離婚したくない場合の対応方法

不倫をしたものの離婚したくない場合、まず誠心誠意の気持ちを込めて配偶者に謝罪しましょう。すぐに許してもらえないかもしれませんが、言い訳せず根気よく謝ることが大切です。

そのうえで、関係を修復するためにも今後の生活では以下のように努めましょう。

  • 不倫相手との関係を必ず断ち切る
  • 罪悪感を引きずりすぎないようにする
  • 配偶者にこまめな愛情表現をする
  • 子どものことを大切にする
  • 常に誠実な対応を心掛ける

当然ですが、不倫相手と連絡を取り続けるのはリスクでしかありません。そのため、相手の連絡先はすべて削除し、今後は一切の関わりを持たないようにしましょう。

不倫した側は再構築の際に罪悪感に苛まれるかもしれませんが、罪悪感を必要以上に引きずると、関係の修復が難しくなることがあります。ネガティブな話題はできる限り避け、円満に過ごせるように努めてみてください。

配偶者に愛情表現をするために、日常的に気持ちを伝えたりプレゼントを贈ったりする方法もおすすめです。夫婦2人の時間を取り、遠出や旅行などで新鮮な気持ちを味わってみるのもよいでしょう。

もしも不倫が原因で子どもとの関係が悪化している場合、子どもと過ごす時間を多めに作り、信頼関係を再構築することも大切です。

また、今後は不倫をしないということを信じてもらうためにも、外出先を伝えたり連絡をこまめに取ったりなど、誠実な対応を心掛けるようにしましょう。「どこで何をしているのか」「何時に帰るのか」などをあらかじめ伝えておけば、信頼の回復につながります。

不倫による離婚で後悔したこと

不倫が原因で離婚すると、感情的になって冷静な判断ができず、後悔するケースも少なくありません。不倫された側と不倫した側、それぞれの立場でよくある後悔について紹介します。

【不倫された側】
・不倫発覚後、すぐに問い詰めて離婚を切り出してしまい、証拠集めができず慰謝料がもらえなかった
・不倫されたことにショックを受け、相手からの離婚条件をそのままのんでしまい、後から話し合いを求めても応じてもらえなかった
・感情的になって何の準備もせず離婚してしまい、経済的に苦しくなった

不倫された側は、主に慰謝料や離婚条件に関することで後悔しているケースが多いようです。離婚後は経済的に苦しくなることも想定されるため、慰謝料や財産分与、養育費などについてしっかりと話し合い、離婚に向けての準備を整えることが大切です。

【不倫した側】
・不倫の罪悪感で親権を主張できず、面会交流の取り決めもなく、子どもに会えなくなった
・職場や友人に不倫したことがバレてしまい、社会的信用を失った

不倫をしたとしても親権や面会交流の主張は可能なのですが、罪悪感から主張できないという方も一定数いるようです。離婚条件について話し合うときは、不倫と子どものことは分けて考えるようにしましょう。

また、職場や友人に不倫したことが知られてしまい、社会的信用を失ったというケースもあります。とくに、職場内や配偶者の共通の友人と不倫をしていた場合、隠し通すのは難しいでしょう。

不倫問題による離婚は弁護士に相談しよう

不倫が原因で離婚を考えているなら、弁護士に相談するのがおすすめです。不倫による離婚は、慰謝料請求や財産分与、親権の問題など複雑な要素が絡むため、専門的な知識が必要になります。

不倫された側であれば、離婚後の生活を見据えて、弁護士に相談しながら納得のいく離婚条件で協議を進めることが重要です。とくに慰謝料請求をする場合、不倫の証拠の集め方や適切な請求額の判断を弁護士にサポートしてもらうことで、より有利な条件で離婚を進めることが可能です。

一方、不倫した側であっても、慰謝料や財産分与の負担を最小限に抑える方法を弁護士と相談しながら決めることで、後悔のない形で離婚を進められるでしょう。

当サイト「ツナグ離婚弁護士」では、離婚や慰謝料請求に強い弁護士の紹介を行っています。離婚問題の経験が豊富な弁護士が個々の状況に合わせた適切なアドバイスをし、円滑な解決へと導いてくれます。

不倫による離婚で悩んでいる方は、まず無料相談を活用し、解決のための一歩を踏み出してみてください。

まとめ

不倫が原因で離婚を考える場合、感情的にならず、冷静に準備を進めることが大切です。

離婚の方法には「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つがあり、通常は協議離婚で離婚条件や慰謝料などを話し合います。夫婦間で意見がまとまらなければ、調停や裁判に発展することになるでしょう。

不倫された側は有利な条件で離婚するためにも、肉体関係を持っていたという証拠を集める必要があります。相手に悟られないよう、慎重に証拠集めを進めましょう。

一方、不倫した側(有責配偶者)からの離婚請求は原則として認められていません。慰謝料の減額や分割の交渉などは可能なので、弁護士に相談しながら話し合いを進めるとよいでしょう。

不倫が原因の離婚は、慰謝料や財産分与などのことで揉める可能性が高く、円滑に話し合いができないケースも少なくありません。

専門知識が求められる場面も多いため、離婚に強い弁護士に相談しながら進めると安心です。弁護士に相談すれば、親権や養育費などの問題についてもまとめて一任できます。

離婚は人生の大きな転機となるため、感情に流されず、しっかりと準備を整えてから話し合いに臨みましょう。

不倫による離婚よくある質問

ダブル不倫の場合でも配偶者と不倫相手の両方に慰謝料請求できる?

ダブル不倫の場合でも、配偶者と不倫相手の両方に慰謝料請求は可能です。不倫によって婚姻関係が破綻したことが証明できれば、それぞれに責任を問うことができます。

ただし、慰謝料額は一方的に決められるものではなく、各夫婦の状況や不倫の影響の大きさなどが考慮されます。また、ダブル不倫では不倫した側の配偶者も相手方に慰謝料請求をする可能性があるため、結果的に双方の夫婦間で慰謝料の支払いが発生する可能性が高いでしょう。

不倫した配偶者と絶対離婚したくない場合どうするべき?

不倫した配偶者から離婚を求められた場合でも、絶対に離婚したくないのであれば「不受理届」を役所に提出しておきましょう。不受理届とは、本人の意思を無視して勝手に届出が受理されないようにするための制度です。たとえば離婚届や婚姻届などを一方的に提出されたとしても、不受理届を出しておけば本人確認なしでは受理されません。

また、別居しないことも重要なポイントです。夫婦が長期間別居していると、婚姻関係が破綻していると判断される可能性があり、結果的に離婚請求が認められやすくなってしまいます。

離婚せず再構築することが決まったときは、「今後不倫をしない」という誓約書を作成しておきましょう。違反した場合の制裁についてもあわせて記載しておけば、不倫の抑止力になる可能性があります。

離婚後に不倫相手と再婚するのにリスクはともなう?幸せになれる?

離婚後に不倫相手と再婚する場合、さまざまなリスクを伴うため、必ずしも幸せになれるとは限りません。不倫をしたことで周囲の人間関係が悪化し、友人や家族との関係が壊れてしまう可能性があります。また、職場の同僚や上司からの信頼を失い、仕事上の立場が悪くなることも考えられるでしょう。

さらに、不倫関係から結婚に至った場合、再婚相手に対する不信感が残りやすく、「自分も浮気されるのではないか」という疑念を抱えながらの結婚生活になることもあります。幸せになれるかどうかは本人次第ですが、不倫による離婚と再婚には周囲の反応や信頼関係の問題がつきまとう点に留意しておきましょう。

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