奨学金も債務整理の対象にできる?返還猶予制度と併せて解説

奨学金を返すのが負担で、債務整理を考えています。奨学金も債務整理できるのでしょうか?


奨学金も債務整理が減額できます。とはいえ、奨学金を債務整理することはおすすめできません。
え、どうして債務整理がおすすめできないんですか?


あなたが奨学金を債務整理すると、保証人や連帯保証人が残額を返還しなければならないからです。そのため、債務整理ではなく各種猶予制度を利用することをおすすめします。
奨学金の返済を負担に感じている人は多く、平成28年には2,009人もの人が奨学金を返済できずに自己破産しています。
しかし、奨学金の債務整理をしてしまうと、連帯保証人や保証人が残額を請求されるため、容易に奨学金の債務整理をおこなうことはおすすめできません。
そのため、出来る限り奨学金の債務整理は避けるべきで、代案として奨学金を返済できない用の猶予制度を利用することをおすすめします。
ただし、猶予制度を効果的に利用するためには、奨学金を債務整理するメリット・デメリットや救済制度の詳細を知っておくことが必要不可欠です。
救済制度を効果的に利用するために、まずは無料相談などを利用して専門家である弁護士からアドバイスを受けるとよいでしょう。
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- 奨学金の債務整理は可能だが、おすすめはできない
- 連帯保証人や保証人も一括返済できない場合、同様に債務整理が必要になる
- 債務整理以外の解決方法として「返還期限猶予制度」「減額返還制度」「返還免除制度」がある
奨学金を返済できない人が急増している
日本学生支援機構の「返還金の回収状況及び平成28年度業務実績の評価について」によれば、奨学金の返還を猶予してもらっている人数は平成23年から平成28年にかけて約1.5倍も増加しています。
調査年 | 件数 |
---|---|
平成23年 | 108,362件 |
平成28年 | 154,249件 |
同じく日本学生支援機構の「平成29年度奨学金の返還者に関する属性調査結果」によると、奨学金の返済を延滞している理由は本人の低所得が全体の64.4%、本人の失業中が24.4%という結果になっています。
近年では、若者の給与が少なく・昇給しづらいことが指摘されており、従来の感覚で「奨学金を使って大学を出てから就職後に返済する」という事が難しくなっているのです。
奨学金の返済ができないことは特殊な問題ではなく、身近な問題であるのでご安心ください。
参照:「平成29年度奨学金の返還者に関する属性調査結果」(日本学生支援機構)
奨学金が払えない場合のリスク
日本学生支援機構では奨学金を払えない場合、以下の流れで督促をおこないます。
延滞期間 | リスク |
---|---|
3ヶ月以上 | 信用情報機関に延滞情報が登録される |
4ヶ月以上 | 債権回収業者からの請求が始まる |
9ヶ月以上 | 支払督促の申立を受ける |
日本学生支援機構は銀行系の信用情報機関である「全国銀行個人信用情報センター」に加盟しているため、奨学金を3ヶ月以上滞納すると、信用情報に延滞情報が登録されます。
その後、日本学生支援機構機構から委託を受けた「アルファ債権回収株式会社」や「三菱HCキャピタル債権回収株式会社」といった、債権回収業者からの請求が始まります。
そして9ヶ月以上も奨学金を滞納すると、両親や親族などの保証人を立てて奨学金を利用している人については、予告文書送付後に支払督促の申立をされます。
支払督促の手続きが進むと、最終的には仮執行宣言が発布されて、日本学生支援機構は強制執行による給与や財産の差押えが可能になるため注意しましょう。
奨学金も債務整理できるがおすすめしない
奨学金も債務整理ができますが、安易に債務整理を選択することはおすすめはできません。
なぜなら、安易に奨学金を債務整理すると、連帯保証人や保証人に迷惑がかかってしまう恐れがあるためです。
債務整理で返済義務が免除・減額されるのは債務者本人だけなので、債権者は残債全額または減額分を連帯保証人や保証人に請求します。
この際、請求された金額を支払えない場合、連帯保証人や保証人まで債務整理せざるを得なくなってしまうのです。
奨学金の債務整理をおすすめしない理由
奨学金の債務整理がおすすめできない理由は、以下の3つです。
- 「任意整理」は減額される金額が少ない
- 「個人再生」は減額分が連帯保証人に請求される
- 「自己破産」も残債全額が連帯保証人に請求される
それぞれについて説明していきます。
「任意整理」は減額される金額が少ない
任意整理とは、借入先と交渉して借金を減額したり利息をなくすことで、負担を軽くして借金を返済できるようにする手続きです。
そのため、利率が低い奨学金は任意整理をしても、あまり利息が減額されないため、返済負担があまり変わりません。
さらに、奨学金は借入先が銀行ではなく、独立行政法人日本学生支援機構・大学・地方自治体などが多いため、任意整理の和解交渉が成立する可能性が低いです。
したがって、奨学金に対して任意整理をおこなうことは適していません。
例えば、貸与の終了が2020年3月の場合は「利率固定方式」は0.070%「利率見直し方式」は0.002%です。
利率固定方式の利率0.070%・返還期間20年(240回)の条件で、400万円を借りた場合、利息と返還総額は以下のとおりです。
利息:29,430円
返還総額:4,029,430円
このように利率が低いため、利息は29,430円しか掛かっていません。
上記のように、任意整理で奨学金の利息をカットしても、減額効果が薄いことがわかるでしょう。
奨学金以外の債務がある場合は任意整理も有効
奨学金以外の債務がある場合、任意整理も有効な選択肢となります。
例えば、カードローンや消費者金融の借入によって生活が圧迫されている場合です。
カードローンや消費者金融の場合、金利相場が4.5%〜18%と高いため、任意整理によって返済負担を大きく減らすことが可能です。
任意整理後に奨学金をしっかり返済できれば、連帯保証人や保証人に迷惑を掛ける心配もないので、安心して利用できます。
「個人再生」は減額分が連帯保証人に請求される
個人再生をおこなうと、奨学金の残債が80〜90%減額されます。
ただし、奨学金に連帯保証人や保証人を設定している場合、その人物が減額分の一括返済を求められてしまいます。
両親や親戚が連帯保証人・保証人に設定されている場合も多く、その人物に迷惑をかけてしまうため、個人再生はおすすめできません。
どうしても個人再生をしなければいけない場合、トラブルを回避するためにも、連帯保証人と保証人に相談するようにしてください。
ちなみに、個人再生のメリットや注意点を知りたい人は、以下の記事もあわせてご覧ください。
「自己破産」も残債全額が連帯保証人に請求される
自己破産をすると、奨学金の残債をすべてなくせますが、連帯保証人や保証人が残債全額の一括返済を求められてしまいます。
例えば、奨学金が600万円残っている状態で自己破産した場合、連帯保証人が600万円全額を一括返済しなければならないのです。
そのため、自己破産をおこなう前には、連帯保証人や保証人とよく話し合うことが重要です。
ちなみに、自己破産のメリットや注意点を知りたい人は、以下の記事もあわせてご覧ください。
誰も返済できない場合は連帯保証人・保証人も債務整理が必要になる
奨学金を債務整理した場合、請求された残債または減額分を連帯保証人が一括返済できないと、連帯保証人も債務者同様に債務整理が必要です。
また、連帯保証人が債務整理をした場合、保証人に対して連帯保証人と同様の請求がされます。
この際、保証人が支払う必要がある金額は「分別の利益分別の利益とは、保証人が複数いる場合に保証人の数で返済金額を按分することです。例えば保証人が2人の場合に500万円借りていた場合は保証人の負担はそれぞれ250万円になります。」によって残債の半分となります。
しかし、債権者が残債全額や減額分の一括返済を求めてくるケースも多いため、請求時には債権者へ「分別の利益」を主張するようにしてください。
なお、返済額が半分になっても支払えない場合、保証人も債務整理をおこなう必要があります。
機関保証を利用している場合は保証機関が代わりに返済してくれる
機関保証とは、連帯保証人や保証人の死亡・破産などによって、保証人を変更する必要がある場合や連帯保証人や保証人が得られない場合、利用できる制度です。
機関保証を利用している場合に自己破産や個人再生をおこなうと、保証機関が代位弁済代位弁済とは、保証会社や親族などの第三者が借金した人の代わりに債権者に返済することを指します。してくれます。
そのため、機関保証を利用している場合は、債務整理をしても保証会社以外には迷惑をかけることはありません。
ただし、機関保証を利用するには、毎月保証料がかかるため注意しましょう。
日本学生支援機構の奨学金で機関保証を利用する場合の保証料については、下記のサイトを参考にしてください。
奨学金の債務整理を検討するなら弁護士に相談しよう
奨学金の返還が苦しく、債務整理を検討している場合、弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士に相談すれば、奨学金を債務整理する以外の方法を提案してくれたり、連帯保証人などへの負担が少ない債務整理の方法を考えてくれます。
債務整理の手続きは複雑で、自分1人でおこなうことは難しいため、まずは専門家である弁護士に相談してみましょう。
無料相談を実施している弁護士事務所も多いので、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。
奨学金で困っている場合に利用できる猶予制度
日本学生支援機構で借りた奨学金の支払いを滞納しそうな場合、次の方法を利用することで債務整理をせずに解決できる可能性があります。
- 一時的に返済が苦しい場合は返還期限猶予制度を利用する
- 傷病や経済的理由で返済が困難な場合は減額返還制度を利用する
- 障害や死亡により返還が困難になった場合は返還免除制度を利用する
それぞれについて説明します。
一時的に返済が苦しい場合は「返還期限猶予制度」
失業などで一時的に奨学金の返済が苦しくなった場合は「返還期限猶予制度」がおすすめです。
返還期限猶予制度とは、低収入・災害・病気などで奨学金の返還が困難になった場合、月々の返還を先送りにできる制度です。
返還猶予期間は通算で最大10年ですが、理由次第では返済の猶予が10年以上も延期される場合もあります。
ただし、返還期限猶予制度を利用するためには、下記の条件を満たしたうえで審査を受けなければいけません。
理由 | 収入の条件 | |
給与所得者年収(税込) | 給与所得者以外の年間所得(控除後) | |
経済困難 | 300万円以下 | 200万円以下 |
傷病(無職) | − | − |
傷病(就労・休職) | 200万円以下 | 130万円以下 |
生活保護 | − | − |
失業中 | − | − |
新卒等(卒業・退学の翌年6月までに申請) | 300万円以下 | 200万円以下 |
産前産後休業・育児休業 | 300万円以下 | 200万円以下 |
災害(1年以内) | − | − |
災害(1年以上) | 300万円以下 | 200万円以下 |
審査を通過した後も毎年申請が必要になるため、忘れないようにしてください。
一時的に奨学金の返済が困難な場合、返還期限猶予制度を利用することをおすすめします。
ただし、返済が先送りにされるだけで、返還すべき元金や利子は免除されないので注意が必要です。
傷病や経済的理由で返済が困難な場合は「減額返還制度」
傷病や経済的理由で返済が困難な場合は「減額返還制度」がおすすめです。
返還減額制度とは、災害・傷病・経済的理由により奨学金の返還が困難な人が返済額を減額できる制度です。
1回の願い出につき適用期間は12ヶ月で、最長15年(180ヶ月)の利用が可能ですが、延長をする場合は適用期間が終了する前に再申請が必要になります。
返還減額制度を利用するには、下記の条件を満たして審査に通過する必要があります。
- 災害や傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難な人で年間収入金額が325万円以下であること(給与所得以外の所得の場合は225万円以下)
- 奨学金を延滞していないこと
- 口座振替(リレー口座)に加入していること
- 返還方法が月賦であること
- 「個人信用情報の取り扱いに関する同意書」が提出されていること
奨学金の返還が困難で上記の条件を満たしている場合には、減額返還制度の利用を検討してください。
障害や死亡により返還が困難になった場合は「返還免除制度」
障害や死亡により返還が困難になった場合は「返還免除制度」がおすすめです。
返還免除制度とは、死亡または身体・精神の障害により返還ができなくなった際に奨学金の返還が免除される制度です。
ただし、死亡か障害かで提出する書類が違うため注意が必要です。
事故などで身体障害になった場合やうつ病などの精神障害になった場合は、診断書と収入に関する証明書を提出します。
一方で本人が死亡した場合は、死亡の事実が記載された戸籍抄本と貸与奨学金返還免除願の提出が必要です。
精神障害や身体障害を患ったり、奨学金を借りた本人が死亡した場合には、返還免除制度の利用を検討してみてください。
まとめ
奨学金を返すのが苦しい場合でも、債務整理はおすすめできません。
なぜなら、任意整理は減額できる金額が少なく、個人再生や自己破産の場合も保証人や連帯保証人に返済義務が生じるので、迷惑をかけてしまうからです。
そのため、奨学金の返還で困っている場合は債務整理ではなく、返還免除制度や返還減額制度といった猶予制度の利用をおすすめします。
しかし、どうしても奨学金の返還が苦しい場合は、債務整理を検討する必要もあるので、まずは弁護士の無料相談を受けてみましょう。
奨学金の債務整理についてよくある質問
奨学金は借金ですので、債務整理の対象になります。
個人再生の場合は残債が減額される代わりに減額分が連帯保証人へ請求されてしまいます。また、自己破産は残債が無くなる代わりに残債全額が連帯保証人へ請求されてしまいます。請求された残債または減額分を連帯保証人が一括返済できない場合は、連帯保証人も債務者同様に債務整理が必要です。
・一時的に返済が苦しい場合は返還期限猶予制度を利用する
・傷病や経済的理由で返済が困難な場合は減額返還制度を利用する
・障害や死亡により返還が困難になった場合は返還免除制度を利用する
などの方法を利用すれば、債務整理をしなくても解決できる可能性があります。
債務整理は、利息や元金をカットし返済総額を大幅に減らせる国が認めた借金救済制度です。債務整理には複数の方法があり、主に「任意整理」「自己破産」「個人再生」を用いて借金問題を解決します。どの方法が適しているかは個人によって異なるので、法律事務所へ直接相談して確認するとよいでしょう。
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