債務整理(任意整理)にかかる費用相場は?
債務整理の費用には、裁判所に支払う費用と弁護士・司法書士に支払う費用があります。
債務整理方法別の費用は以下のとおりです。
- 任意整理:債権者1社につき5〜15万円程度(専門家への報酬のみ)
- 個人再生:30〜80万円程度(裁判所費用+専門家への報酬)
- 自己破産:50〜130万円程度(裁判所費用+専門家への報酬)
それぞれ解説します。
任意整理(5〜15万円程度)の内訳
任意整理にかかる費用の相場は、債権者1社につき5〜15万円程度です。
【任意整理とは】
任意整理とは、裁判所を介さず、債権者と債権者が今後の支払い方法について交渉する手続き。将来利息や遅延損害金のカット、返済期間の調整などを行うのが一般的。一般的に元金は残り、3〜5年程度かけて返済していくケースが多い。ほかの債務整理方法とは異なり、整理対象を選べるというメリットがある。
任意整理は個人再生や自己破産などと異なり、裁判所を通しません。そのためかかる費用は、主に弁護士・司法書士といった専門家への報酬だけです。
費用の内訳は以下のとおりです。
相談料 |
30分あたり5,000〜1万円程度
※無料の場合もあり |
着手金 |
債権者1社につき2〜5万円 |
解決報酬金 |
債権者1社につき原則2万円以内 |
減額報酬金 |
減額できた金額の10%以内 |
過払金報酬金 |
回収できた金額の20〜25%
※交渉:20%以下/訴訟:25%以下 |
弁済代行費用 |
債権者1社につき1,000円程度 |
参照:債務整理の弁護士報酬のルールについて|日本弁護士連合会
上記のような費用がかかりますが、事務所によって金額設定は異なるため、あくまでも目安として考えてください。
また、上記は弁護士に依頼した場合の費用相場です。こちらも事務所によりますが、司法書士に依頼すると費用を抑えられる可能性があります。ただし司法書士は、債権者1社あたりの借金額が140万円以下でなければ扱えないため注意しましょう。
なお、任意整理は債権者と直接交渉し、一般的には将来利息のカットや返済期間の調整を目指す手続きですが、将来利息の減額のみが目的であれば、自分で債権者と交渉して手続きする「特定調停」を行うのもひとつの手段です。特定調停は専門家の力を借りないため、1,000円程度の費用で済みます。
特定調停については、「4.特定調停を利用する」で詳しく解説しています。
任意整理の費用相場や払えないときの対処法については、以下の記事を参考にしてください。
個人再生(30〜80万円程度)の内訳
個人再生にかかる費用の相場は、30〜80万円程度です。
【個人再生とは】
個人再生とは、裁判所に申立てを行い、借金を大幅に減額した上で、原則3年(最長5年)で返済する手続き。負債額に応じた最低弁済額が法律で定められており、原則100万円以上を返済する必要がある。自己破産とは異なり、一定の条件を満たせば持ち家を残せる可能性がある。
個人再生は任意整理とは違い、裁判所に申し立てて行う手続きです。そのため弁護士費用だけでなく裁判所費用もかかります。手続きが複雑で専門知識を要するため、自力での申立ては難しいでしょう。
費用の内訳は以下のとおりです。
▼裁判所費用
収入印紙代(申立手数料) |
1万円 |
郵便切手代 |
2,000〜5,000円程度 |
官報公告費 |
1万2,000〜1万4,000円程度 |
個人再生委員の報酬 |
15万〜25万円程度 |
▼弁護士費用
相談料 |
30分あたり5,000〜1万円程度
※無料の場合もあり |
着手金 |
20万円〜 |
報酬金 |
30万円〜 |
裁判所費用は、申し立てる裁判所によって異なります。また、個人再生委員が選任されるかどうかも裁判所によります。
【個人再生委員とは】
個人再生の手続きを行う際に申立人の財産や収入を調査したり、個人再生後どのように返済していくかをまとめた「再生計画案」の作成について指示をする人のこと。裁判所が選任する。
弁護士ではなく、司法書士に書類作成を依頼した場合にかかる専門家費用は30万円程度です。
弁護士に依頼するより安くなる傾向にありますが、司法書士ができるのは主に書類の作成です。司法書士には手続き自体を代理する権限がないため、弁護士のように申立人に代わって裁判所に出頭できません。
なお、専門家費用については、持ち家を残すかどうかによっても変わってきます。持ち家を残すなら、残さないケースよりも5〜10万円程度高くなる可能性があります。
個人再生の費用を安く抑えるコツや支払えない場合の対処法については、以下の記事を参考にしてください。
自己破産(50〜130万円程度)の内訳
自己破産にかかる費用の相場は、50〜130万円程度です。
【自己破産とは】
自己破産とは裁判所に免責の許可をもらい、借金をゼロにする手続き。多くの財産を失う可能性があるほか、一部の職業が就業を一定期間制限される。ほかの債務整理方法とは異なり借金の返済義務はなくなるが、税金や養育費などの「非免責債権」の返済義務は残る。
自己破産には以下の3つの種類があり、どの手続きに該当するかによって費用が大きく異なります。
同時廃止事件 |
所有している財産が少なく、免責が認められない理由のことを指す「免責不許可事由」に該当しない場合に適用される可能性が高い。裁判所費用として1〜3万円程度かかる。 |
管財事件 |
所有している財産が多く、免責不許可事由に該当する場合に適用される可能性が高い。「破産管財人」が選任される分費用が高額になる。裁判所費用として50万円程度かかる。 |
少額管財事件 |
管財事件にするほど財産・問題がない場合に適用される可能性がある。破産管財人が選任される分同時廃止事件より高額になるが、管財事件よりも手続きを簡略化できるため費用を抑えられる。裁判所費用として20万円程度かかる。 |
破産管財人とは、申立人の財産を現金化し、債権者に分配する人のことです。管財事件・少額管財事件は破産管財人への報酬が発生する分、同時廃止事件よりも高額になりやすくなります。
費用の内訳は以下のとおりです。
▼裁判所費用
収入印紙代(申立手数料) |
1,500円程度 |
郵便切手代 |
3,000〜1万円程度 |
官報公告費 |
1万〜2万円程度 |
破産管財人の報酬 |
・管財事件:50万円程度
・少額管財事件:20万円程度 |
▼弁護士費用
相談料 |
30分あたり5,000〜1万円程度
※無料の場合もあり |
着手金 |
30万〜50万円程度 |
成功報酬 |
0〜80万円程度 |
司法書士に依頼した場合は、専門家費用を20万〜30万円程度に抑えられる可能性があります。
ただし司法書士が代理人として対応できるのは書類作成のみであり、手続き自体を代理できません。そのため、裁判官との面接や債権者集会などには申立人本人が出席しなければなりません。
自己破産の費用相場と払えない場合の対処法については、以下の記事を参考にしてください。
いわゆる「費用倒れ」になるリスクは低い
専門家に依頼すると「費用倒れ」になるのでは、と心配する方もいるでしょう。しかし、費用倒れになるリスクは高くありません。
【費用倒れとは】
債務整理によって減額できた金額よりも、弁護士・司法書士費用が上回ること。
費用倒れになる可能性があるかどうかは相談の時点である程度わかるため、相談の時点できちんと確認することをおすすめします。良心的な専門家であれば、減額できる分より費用が上回るとわかった時点で債務整理を勧めないでしょう。
費用倒れになる可能性があるのは、以下のようなケースです。
- 債権者数は多いが借金総額は少ない場合の任意整理
- 借金総額が100万円程度の個人再生
- 借金総額が100万円以下の自己破産
費用倒れを避けるには、無料相談を複数の事務所で受けることをおすすめします。相談の段階で費用を確認したり複数の事務所を比較したりできるため、費用倒れを回避しやすくなります。
ここからは、費用倒れになるケース・ならないケースをそれぞれシミュレーションしてみましょう。
費用倒れになる場合の例
費用倒れになる可能性があるのは、以下のようなケースです。
- 債権者数は多いが借金総額は少ない場合の任意整理
- 借金総額が100万円程度の個人再生
- 借金総額が100万円以下の自己破産
順番に紹介します。
債権者数は多いが借金総額は少ない場合の任意整理
債権者数は多いが借金総額は少ない場合に任意整理を依頼すると、費用のほうが高くつく可能性があります。
たとえば以下のケースでは、減額できた金額よりも弁護士費用のほうが上回ってしまいます。
債権者数 |
5社 |
借金総額 |
130万1,453円{(20万円+利息)×5社} |
弁護士費用 |
50万円(10万円×5社)
【内訳(1社あたり)】
・着手金:5万円
・解決報酬金:2万円
・減額報酬金:3万円 |
減額できた金額 |
30万1,453円 |
減額できた金額ー弁護士費用=△19万8,547円
※あくまでも一例です。
借金総額が100万円程度の個人再生
借金総額が100万円程度の個人再生も、費用倒れになる可能性が高いです。個人再生には「最低弁済額」が決まっており、100万円未満には減額できないためです。
たとえば以下のケースでは、借金総額が少なく20万円しか減額できなかったため、弁護士に依頼したことで費用倒れになってしまっています。
借金総額 |
120万円 |
裁判所費用 |
17万9,000円
【内訳】
・収入印紙1万円
・郵便切手代5,000円
・官報広告費1万4,000円
・個人再生委員の報酬15万円 |
弁護士費用 |
50万円
【内訳】
・相談料:無料
・着手金:20万円
・報酬金:30万円 |
減額できた金額 |
20万円 |
減額できた金額ー裁判所費用ー弁護士費用=△47万9,000円
※あくまでも一例です。
このように、個人再生の場合はある程度借金総額が高額でなければ費用倒れになってしまう可能性があることを念頭に入れておきましょう。
借金総額が100万円以下の自己破産
自己破産に関しては、借金総額が100万円以下でも支払不能に陥っていると裁判所が判断した場合は申立てが可能です。ただし借金総額が少ないと、費用倒れになりやすいでしょう。
たとえば以下のケースでは同時廃止で裁判所費用こそあまりかかりませんでしたが、費用借金総額が50万円と少額だったため、結局費用が借金総額をわずかに上回ってしまっています。
借金総額 |
50万円 |
裁判所費用 |
3万1,500円
【内訳】
・収入印紙代:1,500円
・郵便切手代:1万円
・官報公告費:2万円 |
弁護士費用 |
50万円
【内訳】
・着手金:30万円
・成功報酬:20万円 |
免除された金額 |
50万円 |
免除された金額ー裁判所費用ー弁護士費用=△3万1,500円
※あくまでも一例です。
これでは、官報に載ったり職業制限を受けたりといった制限を受けてまで自己破産をした意味がないと感じるでしょう。
費用倒れにならない場合の例
費用倒れを心配する必要がないのは、以下のようなケースです。
- 債権者数が少ない場合の任意整理
- 借金総額が500万円以上の個人再生
- 借金総額が200万円以上の自己破産
順番に紹介します。
債権者数が少ない場合の任意整理
任意整理の弁護士費用は債権者の数が多ければ多いほどかかるため、債権者数が少ないケースであれば費用倒れにならない可能性が高いでしょう。
たとえば以下のケースでは、弁護士費用よりも減額できた金額のほうが多かったため費用倒れを回避できています。
債権者数 |
1社 |
借金総額 |
164万5,317円(うち利息34万5,317円) |
弁護士費用 |
10万円
【内訳】
・着手金:5万円
・解決報酬金:2万円
・減額報酬金:3万円 |
減額できた金額 |
34万5,317円 |
減額できた金額ー弁護士費用=24万5,317円
※あくまでも一例です。
ただし、借金総額が少なく減額できた金額も少ないと、費用倒れの可能性がある点に注意しましょう。
借金総額が500万円以上の個人再生
借金総額が500万円以上のケースであれば、よほどのことがない限り費用倒れの心配はいらないでしょう。実際、多くの人が500〜1,000万円程度の借金で個人再生を選択しています。
200万円や300万円程度の借金で個人再生を利用した場合でも、費用倒れにならずに済む可能性はあります。しかし利用する人はそれほど多くなく、とくに借金総額200万円のケースでは、費用倒れにならなかったとしても大きな減額効果を感じないかもしれません。
たとえば以下のケースでは、500万円の借金が個人再生によって5分の1になり、400万円の減額に成功しています。裁判所費用と弁護士費用を合わせても100万円に満たないため、費用倒れを回避できています。
借金総額 |
500万円 |
裁判所費用 |
17万9,000円
【内訳】
・収入印紙1万円
・郵便切手代5,000円
・官報広告費1万4,000円
・個人再生委員の報酬15万円 |
弁護士費用 |
50万円
【内訳】
・相談料:無料
・着手金:20万円
・報酬金:30万円 |
減額できた金額 |
400万円 |
減額できた金額ー裁判所費用ー弁護士費用=332万1,000円
※あくまでも一例です。
借金総額が200万円以上の自己破産
自己破産の場合、借金総額が200万円以上のケースであれば管財事件になったとしても費用倒れになる可能性は低いでしょう。
免責が許可されればすべての借金が免除される自己破産は、任意整理や個人再生よりも減額される金額が高額になる可能性が高いためです。
たとえば以下のケースでは、管財事件になったものの費用倒れにはなっていません。
借金総額 |
200万円 |
裁判所費用 |
53万1,500円
【内訳】
・収入印紙代:1,500円
・郵便切手代:1万円
・官報公告費:2万円
・破産管財人の報酬:50万円 |
弁護士費用 |
50万円
【内訳】
・着手金:30万円
・成功報酬:20万円 |
免除された金額 |
200万円 |
免除された金額ー裁判所費用ー弁護士費用=96万8,500円
※あくまでも一例です。
債務整理の費用を支払えない場合に検討すべき4つの対処法
債務整理を検討する方の多くがぶつかるのは、費用の問題です。「借金を返済するお金がないから債務整理を検討しているのに、こんなに払えるわけがない」という方も少なくないでしょう。
債務整理の費用を払えない場合は、以下の4つの対処法を検討することをおすすめします。
- 法テラスを利用する
- 分割払いができる弁護士・司法書士事務所に依頼する
- 返済が止まったら費用を貯める
- 特定調停を利用する
それぞれ解説します。
1.法テラスを利用する
債務整理の費用が払えないときは、「法テラス」の利用を検討してみましょう。
【法テラス(日本司法支援センター)とは】
経済的な理由から弁護士や司法書士への依頼が難しい方を対象に、無料法律相談や弁護士・司法書士費用の立替えといった「民事法律扶助業務」を行っている国の機関。
法テラスを利用すると、同じ問題につき3回まで無料で相談できます。また、立替制度を活用すれば、立て替えてもらった弁護士・司法書士費用を毎月1万円程度返済していくだけで済むため、経済的に厳しい方でも法的サービスが利用しやすくなります。
民事法律扶助業務には、無料法律相談や費用の立替制度のほかにも以下のようなものがあります。
- 立替費用の返済猶予(生活保護受給中)
- 立替費用の返済免除(債務整理後に生活保護を受給する場合)
ただし、法テラスの利用には一定の条件があります。たとえば無料法律相談は、収入・資産が以下の基準以下でなければ利用できません。
世帯人数 |
東京都23区・大阪市などの収入基準
※()内は上記以外の地区 |
資産基準 |
1人 |
20万200円(18万2,000円) |
180万円 |
2人 |
27万6,100円(25万1,000円) |
250万円 |
3人 |
29万9,200円(27万2,000円) |
270万円 |
4人 |
32万8,900円(29万9,000円) |
300万円 |
参照:無料法律相談のご利用の流れ|日本司法支援センター法テラス
立替制度を利用するなら、さらに以下の条件を満たさなければなりません。
- 債権者との交渉成立・免責決定の見込みがあること
- 利用の目的が報復や嫌がらせでないこと
法テラスを利用した場合の費用の目安や利用条件については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてチェックしてください。
2.分割払いができる弁護士・司法書士事務所に依頼する
債務整理の費用の支払いが難しければ、分割払いに対応している弁護士・司法書士事務所に依頼するのもひとつの方法です。
借金問題や債務整理を扱っている事務所は、債務整理を検討する方の事情をわかっています。そのため分割払いや後払いに対応してくれるところが多く、相談すればできるだけ事情を考慮してくれる可能性があります。
なお、分割払いの回数については事務所によってまちまちです。3〜6回程度に設定している事務所もあれば、12回やそれ以上の回数に応じてくれる事務所もあるため、相談の際に確認しておきましょう。
ただし、裁判所費用は一括で支払う必要があります。裁判所費用の支払いが難しい場合は、裁判所費用についても弁護士・司法書士に相談するとよいでしょう。
3.返済が止まったら費用を貯める
弁護士・司法書士に正式に依頼し「受任通知」が債務者に発送されたあと、督促が止まったら費用を貯めるチャンスです。
【受任通知とは】
債務整理手続きを専門家が引き受けたことについて、各債権者に知らせるための通知。受任通知を受け取った債権者は債務者に直接返済を迫れなくなるため、結果的に督促が止まる。
督促が止まるのは、賃金業法で受任通知受け取り後の督促が禁止されているためです。違反した債権者は罰則を受ける可能性があるため、受任通知発送後に督促を受けることはないと考えてよいでしょう。
督促が止まれば、返済する必要がなくなります。任意整理や個人再生の場合は手続き完了後に返済が再開しますが、それまでは返済が止まるため、その間借金返済に充てていたお金を弁護士費用や裁判所費用として貯められます。
たとえば、任意整理で返済を止められるのは3〜6ヶ月程度です。毎月10万円返済していたケースなら、30万〜60万円貯められる計算です。自己破産なら1年程度かかる場合もあるため、十分貯められるでしょう。
4.特定調停を利用する
弁護士・司法書士費用を節約したいなら、「特定調停」を利用するのもよいでしょう。
【特定調停とは】
弁護士や司法書士に依頼せず自分で簡易裁判所に申し立て、調停委員を介して債権者と交渉する手続きのこと。債権者1社につき500円+郵便切手代だけで行える点はメリットだが、通常減額できるのは利息のみであり、元金自体を減額できない可能性が高い。
特定調停のメリットは、なんといっても費用を抑えられる点です。専門家や裁判所に何十万円という高額な費用を支払う必要がないため、手元にお金がない方でも利用できます。
また、弁護士・司法書士に頼らず自分で対応する必要はありますが、調停委員が間に入ってくれるため債権者と直接話す必要がなく、債権者から責められたり言い争いになったりしにくいでしょう。
特定調停の受付票を債権者に送付すれば、専門家から受任通知を発行してもらうときのように督促を止められるほか、個人再生や自己破産とは異なり、官報に載ることもありません。
しかし専門家に頼れないため、裁判所へはすべて自分で出頭する必要があります。調停の期日は、債権者1社につき最低でも2回設けられるため、債権者が多ければ多いほど時間を取られてしまいます。
もっとも注意すべきなのは、期待したほど減額されない可能性が高いことです。基本的に利息の減額しかできないため、特定調停を行っても自力で返済できる金額まで減らず、結局個人再生や自己破産を検討しなければならないケースもあります。
特定調停のメリット・デメリットや手続き方法については、以下の記事を参考にしてください。
債務整理を専門家に任せることで得られる5つのメリット
ここまで解説したとおり、債務整理には専門家への報酬が費用としてかかります。
「費用がかかるなら、自分で手続きしたほうがよいのでは?」と考える方もいるでしょう。たしかに、法律上は自分で手続きを進めても問題ありません。
ただし、手続きを進める中で思わぬ課題に直面し、結果的に望んだ解決につながらないこともあります。費用の負担を抑えられても、手間やリスクを考えると、専門家のサポートを検討する価値はあるでしょう。
ここでは、費用がかかっても債務整理を専門家に任せることで得られる5つのメリットについて解説します。
- 督促を止められる
- 手間・時間を削減できる
- 借金が減額・免責されやすくなる
- 少額管財は弁護士でないと利用できない
- 過払金を取り戻せる可能性がある
それぞれ解説します。
1.督促を止められる
専門家に依頼すると、受任通知を発送することで債権者からの督促を止められます。「3.返済が止まったら費用を貯める」でも解説したとおり、受任通知には督促を止める効果があるためです。
しかし自分で任意整理や個人再生、自己破産の手続きをする場合は、督促を止められません。つまり取り立ての電話を受けながら、債権者との交渉や裁判所での手続きを進めなければならないということです。
慣れない作業にも止まらない督促にも、大きなストレスを感じるでしょう。また、滞納のリスクも高まります。
専門家に依頼すれば、債権者との交渉も裁判所への提出書類の作成も任せられます。もちろん督促も止まり、精神的な負担を大きく軽減できるでしょう。
かかる負担の違いを考えれば、自分で無理に手続きを進めるより、早い段階で専門家に依頼したほうがよいといえます。
2.手間・時間を削減できる
専門家に依頼することで、手間や時間を削減できます。
債務整理の手続きには債権者との交渉や書類の収集など、多くの手間や時間がかかります。もちろん、裁判所に出頭したり指示された書類を取得したりといった作業は発生しますが、大半は専門家に進めてもらえるため、それほどストレスもないでしょう。
とくに任意整理を行う場合、払いすぎた利息を指す「過払金」が発生しないかを確認するため、利息制限法にもとづいた引き直し計算が必要です。引き直し計算も自分でできるかもしれませんが、知識がないと時間がかかるうえミスをしてしまう可能性があります。
インターネット上には自動で計算できるツールも出回っていますが正確とはいえないため、やはり専門家に依頼するのがベストでしょう。
3.借金が減額・免責されやすくなる
専門家に依頼すると、借金が減額・免責されやすくなります。専門家は債権者との交渉や裁判所での手続きに長けており、専門知識があることはもちろん、借金を減らすコツも心得ていると考えられるためです。
反対に、自分ですべて行おうとすると、知識や経験がないために債権者から相手にされなかったり、不利な条件で和解させられたりするおそれがあります。
中には、弁護士・司法書士でないと交渉に応じてくれない債権者もいます。交渉や手続きがうまくいかず、債務整理が失敗に終わる可能性もあるでしょう。
債務整理の結果は、今後の生活や生き方に大きく影響する場合があります。ただ「費用を節約したいから」という理由だけで専門家に依頼しないことを選択してしまうと、後悔する結果になる可能性があることを念頭に置いておきましょう。
4.少額管財は弁護士でないと利用できない
少額管財事件は、弁護士に依頼しなければ利用できません。弁護士が代理人として申立てを行うのが、少額管財事件の適用要件であるためです。
少額管財事件とは、管財事件を一部簡略化した破産手続きです。弁護士に依頼する以外にも、手続きするには以下の要件を満たす必要があります。
- 現金化できる財産がないか、あっても総額が50万円以下で現金化しやすい財産しかない
- 売却に時間がかかる不動産を所有していない
- 自己破産前に財産を他人に譲ったり特定の債権者だけに返済する「偏頗弁済(へんぱべんさい)」を行っていない
判断するのは裁判所であるため、希望しているからといって少額管財事件になるとは限りませんが、弁護士が申立てを行ったケースで財産が一定額以下・免責不許可事由に該当しないといった要件を満たしているなら、適用される可能性があります。
弁護士からの申立てを必要とする理由は、手続きの簡略化と迅速化を目的とした少額管財事件では、スピーディな対応が求められるためです。しかし申立人本人が自分で手続きを進める場合、ミスをしたり手続きに手間取ったりする可能性が考えられます。
また、少額管財事件では、通常の管財事件より破産管財人への報酬額が安く設定されています。もし対応するのが弁護士ではなく申立人本人であれば、慣れない手続きに時間がかかり、破産管財人に報酬額以上の負担がかかってしまいます。
「少額管財事件で行きたい」と考えているなら、弁護士に依頼するようにしましょう。
5.過払金を取り戻せる可能性がある
過払金を取り戻せる可能性があることも、専門家に依頼すべき理由のひとつです。
【過払金とは】
利息制限法が定める上限金利(年15〜20%)を超えて支払った利息のこと。2010年6月17日以前は、当時出資法の上限金利とされていた29.2%との間の「グレーゾーン金利」での貸付が多発し、そのために過払金が発生することとなった。
「2.手間・時間を削減できる」でも解説したとおり、自分でも過払金の計算は可能です。しかし計算ミスをすれば、過払金を取り戻せない可能性があります。
また、過払金は「計算ができれば取り戻せる」という単純なものではありません。引き直し計算のあと、賃金業者と交渉する必要があるためです。交渉で話がまとまらなければ、訴訟になることもあります。
このような手続きを、専門家の手を借りず自分で行うのはハードルが高いでしょう。相手は金融のプロであるため、こちらもプロでなければ対等な交渉はできません。
過払金請求に精通した専門家であれば、賃金業者と対等に交渉できると考えられるため、自分で対応するよりも請求に成功しやすいでしょう。
過払金を請求できる条件とグレーゾーン金利については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてチェックしてください。
まとめ
債務整理(任意整理)にかかる費用やその内訳、払えない場合の対処法について解説しました。
債務整理には、任意整理で1社につき5〜15万円程度、個人再生で30〜80万円程度、自己破産で50〜130万円程度かかります。
費用の支払いが難しければ、法テラスを利用したり分割払いができる弁護士・司法書士事務所に依頼したりなどといった対処法を試してみるとよいでしょう。
法テラスでは無料法律相談や弁護士・司法書士費用の立替制度を利用でき、分割払いができる事務所なら依頼後督促が止まっている間に費用を貯められます。
債務整理を専門家に依頼するメリットとして、督促の停止や借金の減額・免責の可能性が高くなることが挙げられます。
「費用が高すぎる」「支払う余裕がない」と感じるかもしれませんが、債務整理を自己流で進めると、交渉がうまくいかず結果的に解決に時間がかかることがあります。専門家に相談することで、より効率的に問題を解決できる可能性が高くなります。
よくある質問
債務整理の費用を支払うタイミングはいつ?
費用を支払うタイミングは依頼する弁護士や業務内容、契約によって異なりますが、一般的には以下のタイミングで支払います。
- 相談費用(有料):相談後
- 着手金:正式に委任契約を交わしたあと
- 成功報酬:手続き完了後
なお、分割払いの場合は、契約した月または翌月からスタートするケースが多いでしょう。
個人再生・自己破産の裁判所費用を支払うタイミングは以下のとおりです。
支払いのタイミングについては、相談時に確認しておくようにしましょう。
司法書士と弁護士、どっちに依頼すべき?
司法書士と弁護士どちらに依頼すべきかは、債務状況によって異なります。
弁護士よりも司法書士に依頼したほうが費用を抑えられる傾向にありますが、司法書士は債務整理に関してすべての業務を行えるわけではないためです。
それぞれが対応できる業務内容は以下のとおりです。
債務整理方法 |
司法書士にできること |
弁護士にできること |
任意整理 |
債権者1社につき元金140万円までの案件
※140万円を超える案件は対応不可 |
すべての業務 |
個人再生・自己破産 |
書類作成
※手続きの代理人にはなれない |
すべての業務 |
司法書士に任意整理を依頼するなら、債権者1社につき140万円までの案件でなければなりません。
個人再生・自己破産に関しては、書類作成はできても手続きの代理人にはなれません。個人再生・自己破産は地方裁判所で行われる手続きであり、司法書士が代理人として対応できるのは簡易裁判所で扱う案件のみと決まっているためです。
そのため個人再生・自己破産を検討しているときは、弁護士に依頼することをおすすめします。ただし債権者1社につき140万円以下で任意整理を検討しているなら、司法書士に依頼するとよいでしょう。
債務整理における弁護士と司法書士の違いやどちらに依頼するかの判断基準については、以下の記事で詳しく解説しています。
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