離婚問題に強い弁護士を探すならツナグ離婚弁護士

熟年離婚は準備が大事!後悔しないために知っておくべきことを男女別で解説

熟年離婚 準備
南陽輔 弁護士
監修者
南 陽輔
大阪市出身。大阪大学法学部、関西大学法科大学院卒業。2008年に弁護士登録(大阪弁護士会所属)。大阪市の法律事務所に勤務し、離婚問題や債務整理などの一般民事事件のほか、刑事事件など幅広い法律業務を担当。2021年に一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成の支援、起業時の法的なアドバイスなどの予防法務を中心に業務提供をしております。皆さんが利用しやすく、かつ自由で発展的なビジネスが可能となるサービスを提供いたします。

熟年離婚の明確な定義はありませんが、一般的に結婚をしてから20年以上の長期間連れ添った夫婦が離婚をすることを指します。

2022年の厚生労働省の人口動態統計によると、全体の離婚件数は179,099件で、そのうち熟年離婚は38,991件です。2022年の離婚のうち、21.7%が熟年離婚だったことになります。1995年の熟年離婚は全体の離婚件数の15%程度だったため、近年熟年離婚の件数は増加の傾向にあるといえます。現在熟年離婚を検討している方も増えているはずです。

熟年離婚の割合が20%以上もあるため、熟年離婚後の人生について不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。熟年離婚には、老後のお金や財産分与・住居についてなど、多くの問題がつきまといます。そのため熟年離婚を決断する前に、以下のようなことについてしっかりと準備をしておく必要があります。

  • 離婚後の住居や仕事
  • 財産分与・年金分割などお金の問題
  • 親権について
  • 交友関係について

熟年離婚前にしておくべき準備についてしっかりと理解しておくことが、離婚後の人生を豊かにするために非常に重要です。

この記事では、熟年離婚をする前にしておくべき準備や、熟年離婚をして後悔しないための方法について詳しく解説していきます。

熟年離婚をする際に準備するべきこと

熟年離婚をすると、長年連れ添った夫婦が別々に暮らすことになります。生活や身の回りの環境が大きく変化するため、十分に準備をしておかないと後悔してしまいます。

以下は熟年離婚をする際に、男女ともに必ず準備するべきことです。

  • 離婚後の住まいをどうするか考える
  • 離婚後や老後の資金について計画を立てる
  • 離婚後に頼れる交友関係を見つけておく
  • 通いやすい病院を見つけておく
  • 趣味や生きがいを見つけておく
  • 親権について話し合っておく
  • 有利かつスムーズに離婚できるように弁護士に相談しておく

それぞれ簡単に解説していきます。

離婚後の住まいをどうするか考える

離婚をした後は、ほとんどの方が別々に暮らすことになるでしょう。

2人で購入したマイホームに同居していた場合、離婚を機にマイホームを売却するのか、どちらか一方がマイホームに住み続けるのか、しっかりと話し合っておく必要があります。

また、賃貸物件であったら、ほとんどのケースで離婚を機に引き払うことになるはずです。

離婚後も今まで住んでいた家に住み続けられるのならあまり心配はいりませんが、新しい住居を探すのであれば入念な準備が必要になります。

熟年離婚後の住居については、以下の5つが候補にあがるでしょう。

メリット デメリット
①現在の持ち家に住み続ける ・新たに費用がかからない
・老後に備えてバリアフリー化ができる
・財産分与の問題が生じる
・固定資産税や維持費がかかる
・1人で住む分手入れに手間がかかる
②賃貸物件に引っ越す ・月々にかかる費用を計画的に考えられる
・家を購入するよりも手間なく引っ越せる
・自治体から家賃補助を受けられる可能性がある
・初期費用や家賃がかかる
・高齢者の入居を受け入れてくれない物件もある
③実家に戻る ・家賃がかからない
・固定資産税や維持費の心配が少ない
・生活費が抑えられる
・場所を選べないため不便になる可能性がある
・親と同居することが精神的に負担になる恐れがある
④子どもの家にお世話になる ・家賃がかからない
・孤独感を覚えずに済む
・介護など老後の心配が少なくなる
・生活費が抑えられる
・場所を選べないため不便になる可能性がある
・子どもとの関係性が悪化する恐れがある
⑤新たに家やマンションを買う ・好きな場所に住める ・費用がかかる
・高齢の場合はローンを組めない可能性がある

どのような選択肢にもメリット・デメリットがあります。

離婚後の人生設計をする上で、住居をどうするかという問題は非常に重要になります。特に熟年離婚の場合は、次に引っ越す家で一生暮らすことになる可能性もあり、慎重に検討する必要があります。

また、熟年離婚を機に仕事を始める方も、住まいが決まらないことには仕事を見つけづらいでしょう。このように、熟年離婚をする前には、まずは離婚後の住居について十分に準備をしておくことが大切です。

離婚後や老後の資金について計画を立てる

熟年離婚をした後は、元配偶者の収入に頼ることが難しくなるため、経済的な問題も大きくなります。

老後の収入は、年金を頼りに考えている方も多いはずです。

しかし、2021年の厚生労働省の統計によると、65歳以上の日本国民が受給できる年金である「老齢基礎年金」の平均受給額は月56,479円です。

また、厚生年金保険が適用された事業所で勤務していた方が65歳から受け取れる「老齢厚生年金」を加えた平均受給額は、月145,665円にしかなりません。

さらに、結婚や子育ての影響により勤務期間が短い方は、受給できる年金はさらに少なくなる傾向があります。

それに対して、2022年の総務省統計局「家計調査年報」によると、単身世帯の家賃などを含めた1ヶ月の生活費は平均161,753円です。つまり単純計算で毎月16,088円のマイナスです。

以上の統計からみても、毎月受給する年金だけでゆとりのある老後生活を送るのは困難といえるでしょう。

また、2022年10月に一定以上の所得がある後期高齢者の医療費自己負担の割合が1割から2割に引き上げられましたが、今後高齢者の医療費の負担がさらに増える可能性もあります。

こういった事情からも、熟年離婚をする際には老後の資金計画について熟慮する必要があります。

参考:後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)

離婚後に頼れる交友関係を見つけておく

熟年離婚をした後は、これまでとは異なり一人での生活を選ぶ方も多いはずです。

一人暮らしは自由が増える反面、孤独を感じる場面も多いでしょう。熟年離婚後の孤独感に耐えられるように、離婚後でも気軽に交流できるような交友関係を築いておくことは非常に大切です。また、病気や怪我をした際に助け合える知人や親族が近隣にいる方が安心して生活を送れるでしょう。

離婚に伴い引っ越しをしなくてはいけない可能性があることを考えると、以前からの交友関係が続くとも限りません。

熟年離婚後に一人暮らしを選択するのであれば、子どもの家の近くに居をかまえるなど、頼れる人を身近に作っていくことがおすすめです。

通いやすい病院を見つけておく

熟年離婚により引っ越す場合には、事前に通いやすい病院を見つけておくといいでしょう。

人は年を重ねるにつれて、病院に通わざるを得ないタイミングが増えていきます。老後のことまで考えると、いずれ車を運転できなくなることも念頭におかなくてはいけません。

特に地方に移住する場合などは、公共交通機関の便もあわせて確認しておきましょう。

趣味や生きがいを見つけておく

熟年離婚をした後は、一人で過ごす時間が増えます。これまでのように家事や育児、仕事に追われていた毎日から解き放たれて自由な時間が増えるわけです。

しかし、人によっては、やるべきことがなくなってしまうのも苦痛を感じる要因となります。現段階で、没頭できる趣味や生きがいが特にないという人は、熟年離婚をした後により虚しさを感じてしまうかもしれません。

ドラマや映画鑑賞のように受動的なものでもいいですし、健康維持も兼ねて軽い運動を初めてみてもいいでしょう。

また、勉強や読書などをして、日々好奇心を刺激できるような暮らしをすれば、一人でもきっと豊かな老後を送れるでしょう。

親権について話し合っておく

夫婦の間に18歳未満の子どもがいる場合は、その子の親権についても話し合っておく必要があります。

親権者となった親は、離婚後も子どもと一緒に暮らせます。また、子どもと離れて暮らす元配偶者に対して養育費を請求することも可能です。

熟年離婚となると、子どももそれなりに大きくなっており、養育費が必要なくなっているかもしれません。ただしまだ子供が経済的に自立していない場合、食費や教育費がかさみやすくなっているでしょう。

親権と合わせて、養育費についてもしっかりと取り決めをしておかなくてはいけません。

有利かつスムーズに離婚できるように弁護士に相談しておく

熟年離婚では、財産分与や年金分割など、お金の問題で揉める可能性が高いです。

相手が財産分与をしたくないために、財産を故意に隠してしまうといった恐れもあります。加えて、離婚の原因が不倫やDVなどであれば、慰謝料の請求も検討するべきです。このように、熟年離婚にはさまざまな問題がつきまといます。

これらをスムーズに解決できるように、熟年離婚をする際には事前に弁護士に相談しておくのがおすすめです。熟年離婚について弁護士に相談しておくと、具体的には以下のようなメリットが得られます。

  • 財産分与や慰謝料の請求を適切に行える(増額も見込める)
  • 離婚条件で不利にならずに済む
  • 相手との交渉を代わりに行ってくれる
  • 離婚後の生活について助言がもらえる

また、早めに相談をしておけば、調停や裁判にもつれ込む前に離婚を解決できて、結果的に弁護士費用を抑えられることもあります。

一人でどうしたらいいか悩むよりも、色々な人の離婚問題を解決に導いている弁護士の助言を受けた方が、スムーズにかつ安心感をもって離婚ができるでしょう。

離婚後に分配されるお金・財産とは

熟年離婚において特に問題になりやすいのは、お金や財産の分配です。熟年離婚によって受け取れるお金・財産は、主に以下の5つに分類できます。

  1. 財産分与
  2. 年金分割
  3. 退職金
  4. 慰謝料
  5. 養育費

それぞれ分配の仕方や内訳を確認していきましょう。

①財産分与

結婚後に二人で築いた財産は、基本的には二人の共有財産としてみなされます。つまり、離婚をした際には、ほぼすべての財産が二人で半分ずつ分配されることになります。

妻が専業主婦で夫のみが働いていた場合でも同様です。妻は家事をして夫を支えるという役割をまっとうし、二人で財産を築いたとみなされるため、妻も平等に財産を受け取る権利があります。

また、夫婦のいずれか一方の名義になっているものであっても、夫婦が協力して形成したと判断されるものは財産分与の対象になります。

財産分与の対象になる財産

具体的には、以下のようなものが財産分与の対象になります。

  • 家や土地などの不動産
  • 自動車
  • 預貯金
  • 有価証券(株・商品券・小切手など)
  • 保険解約返戻金
  • 結婚生活を送るための各種ローン(負債)

先述の通り、基本的にはこれらの財産はすべて二人で平等に分配します。

ただし、専業主婦をしていた妻などの場合は、離婚後に生活費を確保するのが困難になると想定できるため、多めに財産分与を受けられる可能性があります。

適切に財産分与を受けるためにも、弁護士に相談しておくことが重要です。

なお、以下のように結婚後に二人で築いたとみなされないものは、離婚をしても財産分与の対象にならないので注意しましょう。

  • 結婚前にそれぞれが貯めた預貯金
  • 相続や贈与で得たお金や資産
  • 別居期間中に得た財産
  • 結婚期間中に個人で作った借金

②年金分割

年金分割とは、結婚期間中に夫婦が納めた厚生年金(旧公務員共済も含む)の納付記録を分配する制度です。

厚生年金とは、ほぼすべてのサラリーマンや公務員が国に納めている年金です。

厚生年金を納めてきた人は、厚生年金を納めてこなかった人よりも、老後に受け取れる年金が増える仕組みになっています。

つまり、結婚などを機に仕事を辞めた方は、厚生年金を納めた期間が短いため、将来受け取れる年金も少ないことになります。

こういった不平等を解消するために、年金分割という仕組みがあります。

年金分割を適切に行えば、結婚期間中に働いていなかった期間があったとしても、年金の受給額を増やせます。

年金分割の方法

年金分割には、話し合いによって配分を決定する合意分割(按分分割)と、相手の了承に関係なく年金を半分に分割する3号分割があります。

概要
合意分割 ・年金事務所が提示する基準に従って、公平に年金を分割する
・合意できない場合には、年金分割調停を行う
3号分割 ・相手の了承に関係なく年金を半分に分割する
・専業主婦など相手の扶養に入っていた人(国民年金第3号被保険者)が対象
・2008年4月以降に積み立てた年金が分割の対象

年金分割を確実に行うためには、事前に年金事務所に行って分割シミュレーションをしてもらうのがおすすめです。

参考:日本年金機構「離婚時の年金分割」

熟年離婚の年金分割における注意点

年金分割には、請求期限がある点にも注意しておきましょう。原則として、離婚が成立した翌日から起算して2年間が経過すると、年金分割の請求ができなくなります。

また、年金分割の対象となるのは、婚姻期間中に積み立てた年金のみです。たとえば22歳から夫は働いていて、30歳で結婚した場合には22〜30歳の間に積み立てられた厚生年金は分割の対象にはなりません。

加えて、熟年離婚の年金分割では、以下のような点で損をしてしまう可能性もあります。

  • 配偶者の遺族年金が受け取れなくなる
  • 65歳前に離婚した場合、加給年金や振替加算を受け取れなくなる

加給年金とは、年金受給者に扶養家族がいる場合に追加で受給できる年金です。

また、振替加算とは、加給年金を受給していた方の配偶者が年金を受給するようになった際に、老齢基礎年金に追加で加算される年金のことです。

熟年離婚後に年金分割をすることで有利になる可能性ももちろんありますが、このように本来はもらえるはずのお金が受け取れなくなる点にも注意が必要です。

熟年離婚において年金分割は複雑な問題なので、年金相談センターや弁護士によく相談しておきましょう。

③退職金

熟年離婚をする際には、退職金を受け取れる年齢が近かったり、すでに退職金を受け取っていたりする方もいるでしょう。

退職金も、基本的には財産分与の対象になります。

一方が専業主婦(夫)であっても、共働きであっても、それぞれの退職金は夫婦で1/2ずつ分配されることになります。

ただし、分配の対象になるのは婚姻期間に応じた分の退職金となるので注意しましょう。

支払われる前の退職金も分配の対象になる

退職金が支払われるまでは離婚を我慢したいと考えている方もいるのではないでしょうか。

実は、支払われる前の退職金であっても財産分与の対象になるケースもあります。

ただし、「退職金が支払われることがほぼ確実である」と判断できる場合に限ります。

具体的には、相手方の状況が以下にあてはまる場合には、退職金がほぼ確実に支払われると見込まれるため、受け取り前の退職金も財産分与の対象になります。

  • 就業規則等で退職金について定められている
  • 退職金の算定方法が明らかになっている
  • 勤務先が倒産する恐れが少ない
  • 定年退職までの期間が10年未満
  • これまで長期間継続して勤務している

このように、場合によっては退職金が支払われる前に熟年離婚を決断しても、一定の退職金の分配を受けられる可能性があります。

ただし、まだ支払われていない退職金については、「この程度もらえるはず」と想定して算出した金額を分配するしかありません。

本来もらえるはずだった金額よりいくらか少なくなることは覚悟しなくてはいけません。

④慰謝料

慰謝料とは、二人が離婚に至る原因を作った側が、配偶者に与えた精神的苦痛に対する損害賠償として支払うお金のことです。慰謝料が発生する原因としては以下のようなものがあげられます。

  • 正当な理由のない一方的な性行為の拒否
  • 不貞行為(不倫)
  • 家庭にお金を入れないなどの悪意の遺棄
  • DVやモラハラ

上記以外のものでも、「故意や過失により相手の権利を侵害した」と認められれば慰謝料が請求できる可能性はあります。

離婚における慰謝料の相場はおよそ50〜300万円ですが、離婚時の状況や婚姻期間などによって大きく増減します。

主に、以下のようなケースでは、離婚をすることによる精神的苦痛が重くなると判断されて、慰謝料が増額される傾向にあります。

  • 自立していない子どもがいる
  • 婚姻期間が長い
  • 不貞行為の期間が長い

また、離婚の慰謝料を請求する際には、精神的な被害を証明する証拠が重要となります。

証拠集めの方法や慰謝料の適正な金額を知るためには、弁護士へ相談するのがおすすめです。慰謝料を請求できる可能性がある場合は、早めに弁護士に相談してください。

⑤養育費

離婚をした段階で、二人のあいだに経済的に自立していない子どもがいる場合には、親権者となった側がもう一方に対して養育費の請求ができます。

一般的に、養育費は未成年の子どもがいる場合に請求しますが、法的な決まりはありません。そのため、子どもが成年であっても自立していない場合には支払いを受けることは可能です。

また、養育費の金額は、基本的に双方での話し合いで決定します。

裁判所の司法統計によると、養育費の相場は月額2〜4万円がもっとも多いです。

裁判所の「養育費・婚姻費用算定表」が目安として便利なので、養育費の請求を検討している方はぜひ参考にしてください。

なお、継続して支払ってもらうのが難しいと判断できる場合などは、話し合いのうえ一括で養育費を支払ってもらうケースもあります。

熟年離婚を切り出すべきタイミング

熟年離婚は、これまで20年以上も連れ添った夫婦の離婚なので、切り出すタイミングを見つけづらいものです。

また、「早く離婚をしたい」と考えていても、経済的な問題や子どもへの影響などでなかなか踏み出せない方も多いはずです。

熟年離婚を切り出すべきタイミングとしては、以下の3つがあげられます。

  • 子どもが自立した
  • 自身が生活していくのに十分な収入を得られるようになった
  • 配偶者が定年退職をした

それぞれどのような状況なのか、少し詳しくみていきましょう。

子どもが自立した

子どもへの心理的な影響や、子育てにかかるお金のことを考えると、なかなか離婚に踏み出せないという方は多いです。

一度は離婚を考えたが踏みとどまった理由として、「子どものことを考えて我慢した」が40%以上を占めたというアンケート結果もあります。

参考:日経Xwoman

見方を変えれば、子どもが精神的・経済的ともに自立をして手がかからなくなれば、離婚に踏み出しやすいといえます。

熟年夫婦であれば、子どもが自立間近というケースも多いはずです。

離婚が頭をよぎりながらもなかなか決断をできなかったという方も、子どもの自立に合わせて離婚を切り出してみるのはおすすめです。

自身が生活していくのに十分な収入を得られるようになった

特に専業主婦(夫)の場合は、その後の生活費が不安で離婚を切り出せないという方も多いはずです。

だからこそ、定職について自身で十分な収入を得られるようになったタイミングであれば、離婚を切り出しやすくなります。

相手の収入に頼らずとも暮らしていけるという心理的な余裕も、離婚を切り出すきっかけに繋がるでしょう。

配偶者が定年退職をした

配偶者が定年退職をしたタイミングで離婚を切り出す方も多いです。

配偶者が定年退職によって退職金を受け取ったタイミングで離婚をすれば、財産分与として退職金の半分を受け取れる可能性が高いです。

退職金は、勤務年数や勤め先によっては高額になるので、どうにか受け取りたいと考えるのは当然のことです。

離婚後は一人で生活費を工面していかなくてはいけません。計画的に退職金を受け取って離婚することは決して悪いことではありません。

熟年離婚の手続きは3パターン|手続きの流れとは

熟年離婚であっても、離婚の手続きの流れは一般的な離婚と変わりません。

基本的に、以下の3つの段階を踏んで離婚の成立を目指していくことになります。

  1. 協議離婚
  2. 調停離婚
  3. 裁判離婚

それぞれどのような手続きなのか、簡単に解説していきます。

協議離婚

夫婦間の話し合いのみによって離婚を目指す方法を協議離婚と呼びます。

離婚の理由にかかわらず、夫婦間の話し合いによって離婚することについて合意がとれれば、離婚が成立します。

日本における離婚のほとんどはこの協議離婚で行われていて、2022年の厚生労働省の統計によるとおよそ90%ほどの夫婦が協議離婚を選んでいます。

協議離婚の主なメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット ・柔軟な解決ができる
・時間がかからない
・財産分与などについて夫婦間で自由に取り決めができる
・金銭的な負担が少なくて済む
デメリット ・相手が話し合いに応じてくれない可能性がある
・離婚は成立できても、慰謝料の支払いや財産分与で結局揉めてしまい調停や裁判に移行する可能性がある

裁判にかかる費用や時間などを考えると、できることなら協議離婚で済ませておきたいものです。

しかし、熟年離婚となると財産分与などで揉めるケースも多く、結局調停や裁判を行わなくてはいけなくなる可能性も視野に入れておかなくてはいけません。

また、DVやモラハラなどがあり、相手が話し合いに応じてくれないと判断できる場合にも、協議での離婚は難しいでしょう。

調停離婚

夫婦のみでの話し合いで離婚の条件などがまとまらない場合や、そもそも話し合いが困難な場合には、調停離婚を選択しましょう。

調停離婚とは、裁判官や調停委員といった第三者を交えて話し合い、夫婦双方の意見や主張をもとに、離婚の成立を目指す方法です。

調停離婚のメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット ・相手と顔を合わせる機会がほとんどない
・裁判と比較すると柔軟に解決できる可能性がある
・第三者の見解も加味されるので公正に財産分与が行われる
デメリット ・相手が調停に応じないと離婚が成立しない
・時間と費用がかかる

離婚調停は、家庭裁判所の調停室に夫婦が交互に入室して、調停委員や裁判官とやり取りをするという形式をとります。

そのため、お互いに顔を合わせずに話し合いを進められるのは大きなメリットです。

熟年離婚は婚姻期間が長い分、二人共通の財産も多くなります。

夫婦だけの話し合いで離婚条件や財産分与について決めるのは非常に困難となるため、調停離婚を選ぶ夫婦も多い傾向があります。

裁判離婚

調停でも離婚が成立できなかった場合には、裁判での離婚を目指すことになります。

裁判離婚のメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット ・相手が応じなくても離婚が成立する
デメリット ・法定離婚事由が必要となる
・法定離婚事由があったことを示す確かな証拠が必要になる
・時間と費用がかかる
・裁判基準に従った画一的な判決となるため、柔軟性に欠ける

裁判離婚は、メリットよりもデメリットの方が多いといえます。なぜなら離婚裁判は、相手が話し合いや調停に応じてくれない際の最終手段であるからです。

また、裁判離婚の場合は、離婚をしたい理由が以下の5つの法定離婚事由のいずれかに該当しないと離婚自体が認められません。

  • 相手が不貞行為をしていた
  • 相手が家庭にお金を入れないなど悪意を持って遺棄された
  • 相手が3年以上にわたり生死不明であった
  • 相手が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
  • その他婚姻を継続できない重い事情がある

参照:民法770条

たとえば、離婚理由として多い「性格の不一致」などでは、裁判による離婚は認められない可能性が高くなってしまいます。

そのようなケースでは、調停や協議による離婚を目指すしかないでしょう。

【男女別】熟年離婚をする際に考えておくべきこと

熟年離婚をする際の準備としては、男女ともに考えておくべきことの他に、男性のみもしくは女性のみが検討しなくてはいけないことも多いです。

ここでは、熟年離婚をする際に考えておくべきことを男女それぞれについて解説します。

自分に当てはまる項目はしっかりと確認しておいて、準備不足とならないようにしましょう。

女性の場合

女性の場合は、男性と比較すると特に生活費や仕事などの経済的な問題が大きくなる傾向があります。

その分、経済的な問題さえクリアできれば、熟年離婚は女性にとってメリットの大きい選択肢になる可能性が高いです。

女性が熟年離婚をする際は、以下の4点について特に検討しておきましょう。

  • 離婚前に仕事を見つけておく
  • 住宅費の削減を検討する
  • へそくりは隠し続けることにはリスクがあると理解する
  • 不倫やDV・モラハラがあった場合は証拠を集めておく

それぞれ簡単に解説していきます。

離婚をする前に収入源を確保する

熟年離婚を考えている女性の方は、現在職についておらず専業主婦の方も多いです。

離婚をしたら自分一人で生活費を工面していかなくてはいけないため、収入を得る手段として仕事を見つけておくことは非常に重要です。

また、専業主婦だった方は、これまでの職歴や経歴などでハンデを負うため、なかなか希望する条件での就業できない可能性もあります。

就職活動にはある程度の時間がかかることを見越して、離婚を検討し始めた時点で、仕事探しも開始するのがおすすめです。

住宅費の削減を検討する

先述の通り、専業主婦であった女性は離婚後の収入面においてどうしてもハンデが生じやすいです。

一般的に、収入を増やすよりも支出を減らす方が、確実かつ楽に家計にゆとりを持たせられます。

なかでも、毎月発生する家賃や住宅ローンなどの住宅費は、支出の中でも大部分を占めるはずです。

これまで住んでいた持ち家に住み続けられるのであればベストですが、離婚を機に賃貸物件に引っ越す場合には少しでも家賃を抑えておきましょう。

また、自治体が家賃補助を出してくれる高齢者向け賃貸物件なども検討してもいいでしょう。

へそくりを隠し続けることにはリスクがあると理解する

子どものために離婚を我慢していた方などは、早い段階からへそくりを貯めていて、熟年離婚後の生活費にあてようと目論んでいた方もいるかもしれません。

しかし、妻が個人的に貯めていたへそくりも、夫婦の共有財産となるため、財産分与の対象になり、夫と半分ずつ分け合うことになってしまいます。

また、へそくりの存在を隠し通そうとしても、調停や裁判などでは正当な手続きとしてへそくりがあるかどうか配偶者の申立てを受けて裁判所から調査をされてしまう可能性もあります。(民法768条

そういった場合には、「共有できるはずの財産を隠していた」として、財産分与に上乗せして損害賠償を請求されるというケースもあり得ます。

財産分与の対象になっても半分は手元に残せるので、へそくりがあった場合には正直に打ち明けることも考えるべきといえます。

不倫やDV・モラハラがあった場合は証拠を集めておく

配偶者の不倫やDV・モラハラなどが原因で離婚する夫婦は一定数いますが、熟年離婚であっても同様です。

これらの不法行為があった場合には、精神的な苦痛を受けた損害賠償として、相手に慰謝料を請求できる権利があります。

慰謝料の請求のためには、不倫やDV・モラハラがあったことを示す確たる証拠が必要になります。

具体的には、以下のようなものが慰謝料を請求するための証拠として有効です。

不倫 ・不倫相手とのLINEやメールのスクリーンショット、写真
・配偶者と不倫相手がラブホテルに出入りする写真・動画
・配偶者が不倫相手の家に出入りする写真・動画
DV・モラハラ ・配偶者から受けた傷やあざの写真
・配偶者からの高圧的な発言の録音
・配偶者からのLINEやメール

これらの証拠集めは、慰謝料を請求するためには必要不可欠ですが、一人で集めるのはリスクもありますし、精神的にも辛いかもしれません。

そのため、慰謝料の請求を検討した段階で、弁護士や探偵などに相談しておくのがおすすめです。

男性の場合

結論からお伝えすると、一般的には男性にとって熟年離婚はメリットが薄いといえるので注意してください。

熟年離婚前の男性が考えておくべき準備は以下の4点です。

  • 男性の熟年離婚は損が多いことを覚悟しておく
  • 離婚時に妻に渡す財産を整理・把握しておく
  • 離婚後の生活に困らないように家事をできるようにしておく
  • 精神的に落ち込む可能性が高いので注意する

それぞれ簡単に解説していきます。

男性の熟年離婚は損が多いことを覚悟しておく

まず大前提として、男性の熟年離婚は、ほとんどのケースで損が多いと覚えておきましょう。

夫の方が妻よりも収入が少ない場合を除いて、財産分与や年金分割、退職金の配分などによって大きな損を被ったように感じてしまう可能性が高いです。

熟年離婚によって、時間や交際関係における自由が手に入ることは魅力的に感じる方もいるかもしれません。

しかし、これまで一生懸命働いて築いてきた財産を一気に失うことになる可能性もあると覚悟しておくべきです。

場合によっては、慰謝料や養育費が発生する恐れもあると覚えておきましょう。

離婚時に妻に渡す財産を整理・把握しておく

男性が熟年離婚をする際には、離婚後に分配することになる財産をしっかりと洗い出しておきましょう。

離婚をする際には、結婚後に夫婦が共同で築いてきたすべての財産が財産分与の対象になります。

名義が夫個人のものになっている不動産や車であっても、結婚後に購入したのであれば財産分与の対象になるので注意してください。

財産分与の結果、ほとんどのケースで、男性側が妻に対して財産を分け与えるという流れになるでしょう。

きちんと財産分与の計画を立てておかないと、想定以上に財産が出ていってしまって苦しい生活を強いられる恐れもあります。

離婚後の生活に困らないように家事をできるようにしておく

先述の通り、男性にとっては熟年離婚をするメリットは薄いです。

これまで家事を妻に任せっきりだった方は特に苦労することになるでしょう。

掃除や洗濯、食事の準備、買い物など、生活をしていく上でこなさなくてはいけないことは山のようにあります。

また、熟年離婚をする頃には、その後何年間も働けるとは限りませんし、食費も節約していかなくてはいけません。

それにもかかわらず、自分で料理を作れないとなると、金銭的にも健康的にも問題が生じてくるでしょう。

離婚後に一人で生活を送ることを考えているのであれば、今のうちから少しでも家事をできるようにしておきましょう。

精神的に落ち込む可能性が高いので注意する

これまでみてきた通り、熟年離婚は男性よりも女性にとっての方がメリットが大きいケースがほとんどです。

それは、精神的な部分への影響にも現れます。

厚生労働省の「中高年縦断調査」をもとにした分析では、男性は女性と比較すると熟年離婚後にメンタルヘルスが悪化する傾向があります。

これまで打ち込んできた仕事を辞めて社会との繋がりが希薄になった、家事の負担が増えて生活が荒れた、などの事情から、離婚に対する後悔が募ることが原因といえるでしょう。

その反面、女性側としては、子どもや経済的な事情から離婚をずっと我慢していたという立場の方も多いせいか、離婚後にメンタルヘルスはみるみる改善していきます。

男性の方で、相手が熟年離婚を提案してくるような空気を察した時には、どうにか離婚せずに済む方法を模索してみることも考えるべきかもしれません。

熟年離婚の原因

熟年離婚の原因としては、主に以下の7つが挙げられます。

  • 夫婦間の価値観や考えの違いに耐えられなくなった
  • 一緒にいる時間が増えてストレスが増えた
  • 相手の浪費や借金癖が治らない
  • 義両親の介護をしたくない
  • 相手の介護をしたくない
  • 不倫やDV・モラハラがある

それぞれ具体例をあげながら、詳しく解説していきます。

夫婦間の価値観や考えの違いに耐えられなくなった

熟年離婚に限らず、離婚の理由として「性格の不一致」は多いです。

結婚する前には気づくことのできなかった相手の考えや価値観に耐えられず、離婚を選択する夫婦は一定数います。

特に、子どもへの影響を考えて価値観の違いに耐えていた方の中には、子どもが自立したタイミングで離婚を切り出す方も多いでしょう。

これまで我慢していた分、残りの人生はストレスから解放されて自由に生活したいというのは、ごく当たり前の欲求といえます。

一緒にいる時間が増えてストレスが増えた

定年退職によって、お互いがほとんどの時間を家で一緒に過ごすようになったために、ストレスを感じて離婚に至るというケースもあります。

また、夫が家事を手伝ってくれない家庭でも、これまでは「外で仕事をしてきているから」と我慢できていたかもしれません。

しかし、夫が定年退職をして毎日家にいるとなると、「少しくらい手伝ってよ」「どうして私ばかり家事をしないといけないの」といった不満が増えることが想像できるでしょう。

過ごす時間が長くなった分、会話がない時間が増えて、一緒の空間で過ごすのが苦痛と感じるケースも考えられます。

相手の浪費や借金癖が治らない

結婚相手の浪費や借金癖がなかなか治らない場合も、熟年離婚に発展しやすいでしょう。

きちんと働いていて稼ぎがある夫であれば、多少のギャンブルや借金も大目に見られるかもしれません。

しかし、老後は年金や貯蓄を頼りに生きていかなくてはいけないことを考えると、浪費や借金癖が治らない人と一生添い遂げるのは不安に感じるでしょう。

義両親の介護をしたくない

親や兄弟など自身の親族であっても、介護は過酷といえます。

義両親の介護ともなれば、なおさら負担となるはずです。

配偶者との暮らし自体に不満はなくても、義両親の介護をしたくないという理由から熟年離婚に踏み出す方も一定数います。

相手の介護をしたくない

場合によっては、自分自身が配偶者の介護をしなくてはいけない可能性もあります。

これまでの暮らしの中での細かなストレスが積み重なって、「この人の介護はしたくない」と感じて離婚に至るケースも一定数あります。

また、いくらこれまで人生をともにした相手であっても、介護となると話は別で、どうしても拒否反応が出てしまう方もいるかもしれません。

不倫やDV・モラハラがある

どの年代であっても、不倫やDV・モラハラが原因で離婚をする夫婦はいます。

また、SNSやマッチングアプリなどによって、手軽に異性と出会える機会は年々増加しています。

熟年夫婦であっても、不倫が原因で離婚に至るケースは一定数あるのです。

また「以前から配偶者の不倫には気づいていたけど、子どもが自立するまで耐えていた」という方で、子どもの自立を機に熟年離婚を選ぶ方も多いでしょう。

熟年離婚のメリット

熟年離婚には以下のようなメリットがあります。

  • 長い間我慢をしていたストレスや不満から解放される
  • 相手の親族との関係を断ち切れる
  • 新たな人生を満喫できる

それぞれ簡単にみていきましょう。

これまで我慢をしていたストレスや不満から解放される

熟年離婚の大きなメリットとしては、これまで我慢をしていたストレスや不満から解放される点が挙げられます。

相手への不満があったとしても、近隣との付き合い・子どもへの影響・金銭的な問題などを考えて、なかなか離婚へ踏み切れない方も多いでしょう。

しかし、一度離婚に踏み切ってしまえば、配偶者への不満からも一気に解放されて、心身ともに自由な生活ができる可能性が高いです。

相手の親族との関係を断ち切れる

配偶者本人だけでなく、相手の親族との付き合いに頭を悩ませている方も多いでしょう。

離婚をしてしまえば、正月などの行事ごとに相手の親族へ挨拶をいく必要ももちろんなくなります。

また、相手の義両親の介護問題からも解放される点も、熟年離婚のメリットといえるでしょう。

新たな人生を満喫できる

熟年離婚をすれば、残りの人生を新たなものとして満喫できるでしょう。

これまで家族のために費やしていた時間も、自分自身のものとして存分に活用できるようになります。

また、離婚を機に、新たな恋愛をしてみてもいいかもしれません。

配偶者や相手方の親族に配慮をすることなく、自由に人生を謳歌できることは熟年離婚の大きなメリットといえるでしょう。

熟年離婚のデメリット

熟年離婚のデメリットは以下のようなものが考えられます。

  • 孤独を感じる可能性が高い
  • 経済的に余裕がなくなる
  • 家事の負担が大きくなる

それぞれ簡単に解説していきます。

孤独を感じる可能性が高い

自分一人の自由な時間が欲しくて熟年離婚を決意する方も一定数いるでしょう。

離婚した当初は清々しい気持ちになれるかもしれませんが、しばらく経ってから孤独感に苛まれて苦しむ可能性があります。

熟年離婚によって孤独を感じる可能性が高いのは、主に以下のような理由によります。

  • 定年退職をする時期と被って社会との繋がりが希薄になる
  • 年齢的に病気がちになるが心配してくれる人がいない
  • 離婚によって引っ越しをすることになりこれまでの交友関係が途切れる
  • 周りの友人は家族を持っているため自分と比べて幸せに見えてしまう

老後に孤独感を覚えずに済むように、自身の打ち込める趣味を見つけたり、町内会など地域の集まりに積極的に顔をだすなどの対策をとるのがおすすめです。

経済的に余裕がなくなる

特に専業主婦(夫)だった方にとっては、熟年離婚による経済的な問題は大きいです。

離婚をした後は相手の収入に頼らずに生活をしていく必要があるため、これまでよりも質素な暮らしを迫られるケースがほとんどでしょう。

また、自身が一家の稼ぎ頭だった場合でも、財産分与によって相手に多くの財産を持っていかれてしまい、余裕がなくなる可能性もあるので注意してください。

家事の負担が大きくなる


熟年離婚をした後は、当然ながら自身で家事を負担しなくてはいけません。

これまで配偶者に家事を任せきりにしていた方は、離婚を後悔する可能性が高いでしょう。

熟年離婚で後悔しないために考えるべき選択肢

熟年離婚をすれば、不満から解放されてその後の人生を謳歌できるというメリットもありますが、その反面、孤独感や経済的な問題などデメリットも多いです。

熟年離婚をして後悔するくらいであれば、どうにか努力をしてこれまで通りの生活を続けるべきともいえます。

そこで、熟年離婚をして後悔しないために、以下のような選択肢も視野に入れておきましょう。

  1. 老後の暮らしの目処がつくまで離婚はしない
  2. 配偶者と適度に距離をとって生活する
  3. 話し合って夫婦関係の修復を目指す

それぞれ解説していきます。

老後の暮らしの目処がつくまで離婚はしない

熟年離婚をした後の暮らしについては、経済的な問題や、健康面の問題など、検討すべき項目が多く存在します。

いくら相手に愛想をつかしたといっても、感情的になって離婚を進めるのは避けるべきです。

たとえば、40〜50代の方であれば、退職金の財産分与を狙って、配偶者が定年退職をしてからの離婚を検討するのも一つの手です。

離婚後は自分一人で生活していくことになる人も多いはずです。

どうしても熟年離婚をしたいのであれば、今後の人生プランについてはしっかり検討しておくべきです。

我慢できないような事情がある方もいるかもしれませんが、基本的には老後の暮らしの目処が経つまでは我慢した方が、離婚によるリスクを大幅に抑えられると覚えておきましょう。

配偶者と適度に距離をとって生活する

離婚という形は取らずとも、別居や家庭内別居によって、適度な距離をとればストレスが解消される可能性もあります。

いずれは離婚をしたいという場合でも、一度別居をしておけばスムーズに事が運ぶ可能性が高くなります。

また、「卒婚」という選択肢を考えてもいいでしょう。

卒婚とは、戸籍上は夫婦という関係でありながら、お互いに干渉し合わず自由に生活することです。

いきなり離婚を提案すると夫から反対されてしまう恐れもあります。

その点、別居や卒婚であれば、お互いにとってメリットがある可能性もありますし、離婚を提案するよりは受け入れてもらいやすいでしょう。

話し合って夫婦関係の修復を目指す

お互いに話し合える余地があるのであれば、現在抱えている不満や将来の展望について十分に話し合って、夫婦関係の修復を目指すのがベストかもしれません。

二人の人間同士のトラブルにおいて、どちらか一方が100%悪いという状況は実は少ないものです。

自分にも直せる点があるかもしれませんし、相手も自分に対して不満を抱えている点があるかもしれません。

今は熟年離婚を検討するほど夫婦間の関係に亀裂が入っているとしても、かつては好意をもって結婚した者同士のはずです。

熟年離婚を決意してしまう前に、一度歩み寄ってみるというのも検討する価値があるのではないでしょうか。

また、なかなか二人での話し合いが円滑に進まない場合には、弁護士や親族など、第三者を交えるのもおすすめです。

弁護士に依頼すれば、「円満調停」という夫婦関係を修復するための手続きも提案してもらえます。

夫婦関係を修復できるかもという希望がまだ少しでもあるのなら、一度弁護士に相談してみてください。

熟年離婚を検討している時の相談先

これまで紹介してきた通り、熟年離婚においては検討すべき事柄が多いです。

そこで、最後に熟年離婚を検討している方におすすめの相談先をいくつか紹介しておきます。

  • 離婚全般について頼れるのは弁護士事務所
  • 弁護士費用が心配なら法テラス
  • 離婚後の生活や子どもに関することは市区役所
  • 不倫を疑っているのなら探偵事務所
  • DVやモラハラを受けているなら配偶者暴力支援センター

離婚全般について頼れるのは弁護士事務所

離婚における財産分与や、親権、慰謝料についてなど、全般的について頼りになるのは弁護士事務所です。

夫婦同士の話し合いでの解決がうまくいくように助言をもらうこともできますし、話し合いで折り合いがつかない場合には調停の手伝いもしてくれます。

弁護士事務所によっては初回の相談は無料で受け付けてくれるところもあるので、まずは話だけでも聞いてみるのがおすすめです。

弁護士費用が心配なら法テラス

弁護士に依頼したいけど費用が心配という方は法テラスに相談してみましょう。

法テラスとは、経済的に困窮している方でも弁護士など法律の専門家のサポートが受けられるように国が設立した法人です。

法テラスに相談をすると、一人一人の状況に合わせて適切な相談窓口を紹介してくれます。

また、実際に離婚訴訟が必要になる場合には、依頼する弁護士を紹介してくれるケースもあります。

何より、法テラスに相談することの大きなメリットは、収入や資産などの基準が一定以下であれば、弁護士費用の立て替えも行ってくれるという点です。

いきなり弁護士に相談するのは不安という方は、一度法テラスに問い合わせをしてみましょう。

公式ホームページから、メールもしくは電話で問い合わせが可能です。

離婚後の生活や子どもに関することは市区役所

熟年離婚をした後の暮らしや子どもについて不安な点は、市区役所に相談すれば解決する可能性もあります。

役所の相談窓口に相談をすれば、離婚後の生活支援など、頼れる公的扶助について教えてくれます。

また、役所への相談でも、弁護士会を通して離婚問題を解決してくれる弁護士の紹介が受けられます。

弁護士や法テラスと比べても、馴染みのある役所であれば相談の敷居は低いはずです。

一度直接訪問するか、電話で話を聞いてみるのがおすすめです。

不倫を疑っているのなら探偵事務所

配偶者が不倫をしているようであれば、離婚をするとともに慰謝料の請求も検討するべきといえます。

しかし、慰謝料を請求する上では、不倫を証明するたしかな証拠が必要になります。

自分で不倫現場を抑えようとしたり、相手の携帯を覗いたりすることはリスクが伴います。

そのため、不倫の証拠集めの専門家である探偵事務所に依頼するのがおすすめです。

DVやモラハラを受けているなら配偶者暴力支援センター

配偶者暴力支援センターとは、配偶者からのDVやモラハラに苦しんでいる方の悩みを解決する目的で各自治体に設置されている窓口で、相談や支援は無料です。

基本的に、女性向けの相談窓口として機能しており、一部の自治体では「女性相談センター」のような名称になっています。

相談の内容は秘密にしてもらえますし、多数の女性からの相談を受けたカウンセラーが話を聞いてくれるので、悩んでいる女性にとっては非常に大きな助けになるでしょう。

DVやモラハラに悩んでいる方は、一度「都道府県 配偶者暴力支援センター」で検索してみて、問い合わせてみましょう。

まとめ

本記事で紹介してきた通り、熟年離婚においては、財産分与・親権・老後の暮らし・慰謝料などなど多くの問題がつきまといます。

感情的になって熟年離婚をして後悔しているという方もいれば、離婚後の暮らしの計画をしっかり立てておいたので熟年離婚をして本当によかったという方もいます。

熟年離婚のメリットやデメリットをしっかりと理解した上で、必要な準備をきちんとしておきましょう。

また、離婚問題に精通する弁護士に相談すれば、熟年離婚の準備に関する助言をくれたり、実際の法的手続きなどを手伝ってくれたりします。

弁護士事務所によっては初回は無料で相談にのってくれるところもあるので、ぜひ一度問い合わせてみてください。

熟年離婚の準備に関してよくある質問

熟年離婚をする前に準備しておくべきことは?

熟年離婚をした後は別々に暮らすことになるため、離婚後の住居を決めておくことは必須です。

また、老後の生活費は自分一人で工面しなくてはいけなくなるため、現在専業主婦(夫)の方は、仕事を見つけておくことも大切になります。

財産分与や年金分割についても正しい情報を仕入れておくために、弁護士などの専門家への相談もおすすめです。

女性が熟年離婚をする前に考えておくべきことは?

女性は専業主婦で自身の収入がない場合も多いので、きちんと離婚後の収入源を確保しておきましょう。

また、老後の生活費まで考えると財産分与を当てにしすぎるのも危険です。

離婚後の住宅費を削減するなど、少ない収入の中でやりくりをしていくための対策を考えておくのがおすすめです。

男性が熟年離婚をする前に考えておくべきことは?

まずは、財産分与や年金分割の点から、男性の熟年離婚はメリットが薄いことを覚悟しておく必要があります。

さらに、熟年離婚後は家事の負担を自分一人でしなくてはいけないことや、退職後は社会との関わりが希薄になり精神的に塞ぎ込む方が多いことも覚えておきましょう。

熟年離婚に関する相談は誰にしたらいい?

離婚問題を専門に扱っている弁護士への相談がおすすめです。

離婚後の暮らしに関する助言を受けられるほか、実際に裁判や慰謝料の請求などが必要になった際には代理人も努めてくれます。

初回の相談は無料で受け付けてくれる弁護士事務所もありますので、一度問い合わせてみましょう。

また、いきなり弁護士への相談はハードルが高いという方は、法テラスや自治体の相談窓口への相談もおすすめです。