熟年離婚での慰謝料相場は高くなりやすい傾向にある
熟年離婚の慰謝料は、一般的に高くなる傾向があります。
これは主に以下の要因からです。
- 精神的・肉体的苦痛の蓄積期間が長い
- 離婚後の生活への不安
結婚生活が長引くほど、精神的・肉体的な苦痛も長期間にわたって蓄積され、その結果、慰謝料が増額される可能性があります。
また、専業主婦(主夫)として長い間家庭を支えてきた方は、離婚後の経済的自立が大きな課題となります。家庭内での役割が中心だったため、就労から離れている期間が長くなり、新たに職を見つけて収入を得ることは容易ではないかもしれません。
これらの理由から、熟年離婚における慰謝料は婚姻期間の長さと密接に関連していることが分かります。そのため、慰謝料請求をする際には綿密な準備が必要です。この点では、専門家に相談し、適切な方法を見つけることで、スムーズに手続きが進められるでしょう。
なお、離婚に伴う慰謝料の相場は数十万~300万円ですが、この金額は婚姻期間の長さのみで決定されるわけではありません。
たとえば、配偶者の不貞行為や家庭内暴力(DV)といった、重大な離婚理由が存在する場合は、慰謝料が300万円を超える可能性もあります。
深刻な事情が認められた場合は、より高額な慰謝料が認定されることを念頭におきましょう。
【原因別】熟年離婚での慰謝料相場
熟年離婚における慰謝料の相場は数十万~300万円ですが、離婚の原因によって金額は異なります。
具体的な内容は以下をご覧ください。
不倫(不貞行為)
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100〜500万円
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DV・モラハラ
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数十万〜300万円
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悪意の遺棄に該当
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50〜300万円
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セックスレス
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100〜300万円
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慰謝料の金額に幅があるのは、それぞれ深刻さや状況の違いからです。行為の悪質性、継続期間、被害の程度など、さまざまな要因が慰謝料の算定に関わってきます。
同じ原因でも状況ごとに金額が変動する点をご留意ください。
不倫(不貞行為)|100〜500万円
不倫が原因で離婚に至った場合の慰謝料は100~500万円が目安です。
請求するうえでの一番のポイントは、不倫相手と肉体的関係にあったかという点です。
さらに、金額は内容の悪質性によっても変動します。
- いつから関係を持っていたのか
- どれくらいの頻度で会っていたのか
- 相手との間に子供ができたか
婚姻期間が長い熟年離婚の場合、不貞行為の期間が長期にわたったり、回数が多かったりする可能性が高くなります。さらに、不貞行為の結果として子供が生まれたような事態は、精神的苦痛が大きいと判断され、慰謝料の金額に影響を与えるのです。
ただし、ここで重要なのが、不倫による慰謝料をもらうためには証拠が必要という点です。
LINEでの会話内容、ホテルに出入りする写真、ホテルを利用したクレジットカードの明細など、肉体関係があったことを確認できるものが求められます。
異性と食事をした、LINEで「好きだ・愛してる」といったやりとりした、といった程度での慰謝料請求は難しいでしょう。あくまでも、肉体行為があったという証拠がなければ慰謝料請求は認められません。
ただし、不貞行為の証拠がない場合でも、精神的苦痛をともなったという理由で慰謝料を請求できる可能性はあります。
相手の行動によって受けた被害やストレスに対して、慰謝料が認められるケースです。
詳しくはこちらをご覧ください。
DV・モラハラ|数十万〜300万円
DV・モラハラの代表的な例は以下になります。
- 身体的暴力:殴る、蹴るなど
- 精神的暴力:暴言、無視など
- 経済的暴力:生活費を与えない、浪費からの借金など
慰謝料の一般的な相場は数十万~300万円程度ですが、これはあくまで目安です。長期間にわたるDVやモラハラを受けていた場合は、慰謝料が増額される可能性があります。
ただし、慰謝料請求を認めさせるためには、暴言や暴力を受けていた証拠が必要です。DVの場合は実際のケガや暴力の痕跡が証拠になりますが、モラハラは目に見えない形で行われることが多いため、立証が難しい場合があります。
そこで、効果的なのが音声データや動画での記録です。客観的な証拠があれば、相手は言い逃れができません。
しかし、この行動をひとりで行うのは困難で、状況によっては危険をともなう可能性もあります。不安な場合は弁護士のような専門家へ相談し、サポートを受けることが重要です。
DV・モラハラの慰謝料の相場や請求する際のポイントについては、こちらでも解説しています。
悪意の遺棄に該当|50〜300万円
悪意の遺棄とは、夫婦間で行うべき同居義務や協力扶助義務を怠る行為を指します。
具体的には、以下のような内容です。
- 生活費を渡さない
- 配偶者との同居を拒む
- 病気療養中の配偶者の面倒をみない
- 正当な理由なく働かない
民法では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と規定されています。正当な理由なくこれらの義務を怠ることは法的ルールに反しており、慰謝料請求の対象にもなるのです。
慰謝料の目安は50~300万円程度ですが、状況の深刻さや継続期間によって金額は変動します。
ただし、悪意の遺棄に該当するかどうかは、生活環境や夫婦関係の実態など、多方面からの検証が必要です。客観的な事実の立証が困難であるため、結果として慰謝料請求が認められないケースもあります。
判断が難しい場合は専門家に相談することで、ご自身の状況が悪意の遺棄に該当するかを適切に判断できるでしょう。
セックスレス|100〜300万円
セックスレスも慰謝料請求の対象となります。
これは一方の配偶者が正当な理由なく性的関係を拒否し続けることで、他方に精神的苦痛を与えたという理由からです。
このような行為は、夫婦間の義務を怠るものとみなされ、慰謝料請求の対象であると考えられています。
一般的な相場は100~300万円ですが、こちらもあくまで目安です。相手が性行為に応じてくれなかった期間や理由によって、金額は変わります。
セックスレスで慰謝料を請求する場合も、裏づける証拠が必要です。生活環境をメモで残したもの、メールや会話の録音などがあると、裁判になった際に証拠として提出できるでしょう。
また、夫婦ともに長い期間性交渉を望んでいなかった、EDのような身体的理由が関係していた、といった場合は請求できません。
過去の不倫やDVに対しても熟年離婚時に慰謝料は請求できる
熟年離婚の場合、過去の不貞行為(浮気・不倫)やDV・モラハラなどを理由に離婚するケースも見られます。これらに対しても慰謝料請求は可能です。
まず、不貞行為についての時効を確認しましょう。
- 不貞行為の事実や相手を知った時から3年
- 不貞行為の発生から20年
慰謝料請求の時効は不貞行為があったことを知ったとき、または不倫相手が誰かを知ったときから3年です。ただし、不倫自体を知らなかった、不倫相手が誰か分からなかったという場合では不倫の日から20年経過すると時効が成立します。
また、過去のDVに対する慰謝料請求の時効はこちらです。
- DVがあった時から3年(身体的DVの場合は行為があった時から5年)
モラハラや経済的DVなど、身体への直接的な暴力以外の行為の場合、慰謝料請求の時効は3年となります。一方、実際に身体的暴力があり、重大な侵害行為と判断される場合は、時効期間が5年に延長されます。
また、過去の行為を裏づけるためにも、証拠の存在が重要です。特に昔の出来事については、相手が認めない可能性が高いため、何らかの証拠を集める必要があります。
熟年離婚で慰謝料の請求が難しいケース
慰謝料は、単に離婚したことだけで請求できるものではありません。相手の有責行為によって精神的苦痛を受け、離婚せざるを得なくなった場合に請求が可能となります。
そのため、以下のケースでは慰謝料請求が難しい場合があります。
- 性格が合わない
- 相手が重度の精神障害を持っている
- 自分も相手を傷つけていた
- 信仰の違いがあった
これらの状況では相手に明確な落ち度があるとはいえず、慰謝料請求も通りにくい傾向があります。
ご自身の状況をふまえてご確認ください。
性格が合わない
最も多い離婚理由として挙げられるのが性格の不一致ですが、この理由だけでは慰謝料の請求はできません。夫婦とはいえ、人間ですから性格や考え方に違いがあるのは自然なことです。
たとえば、金銭感覚が合わなかったり、喜怒哀楽を共有できなかったりすることは、日常生活の中でよくあることです。
性格の不一致は多くの人が抱える問題ですが、夫婦は「婚姻生活を送る中でお互いに努力し合って解消していくもの」とされています。そのため、性格が合わないという理由だけでは、どちらか一方に責任があるとは言えず、慰謝料の請求は困難です。
このように、性格の不一致は離婚の一般的な理由ではありますが、法的には慰謝料請求の根拠にはなりません。
重度の精神障害を持っている
統合失調症やうつ病といった障害を理由に離婚した場合、慰謝料の請求は難しいとされています。
民法752条には、夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならないと定められているからです。助け合うことを前提に結婚しているため、病気や障害を理由に慰謝料を請求することは認められにくいでしょう。
また、精神障害を抱える配偶者は、その状態を自ら選んだわけではありません。そのため、本人に責任がないと考えられます。
結果的に、有責性が認められず、慰謝料の請求にはつながらない傾向があります。
自分も相手を傷つけていた
自分にも離婚に関する非があった場合、慰謝料請求をしても相手が慰謝料の減額を主張したり、逆に慰謝料を請求されたりすることがあります。
これを「過失相殺」といい、双方に責任がある場合は、慰謝料の金額調整が行われるのです。
たとえば、夫が妻に対して暴力を振るい、その結果、妻が精神的苦痛を受けたため慰謝料を請求したとします。しかし、同時に妻も不倫していた場合はどうでしょう?
裁判所は夫の暴力だけでなく、妻の不倫も考慮し、判断を下します。場合によっては慰謝料の請求ができないケースもでてきます。
ただし、自分の非よりも相手の非が明らかに大きい場合は、慰謝料を請求できるかもしれません。
この判断は自力では非常に難しいため、対応に困った場合は弁護士に相談することが重要です。法的な視点から適切なアドバイスを提供してくれるでしょう。
信仰の違いがあった
信仰の違いを理由に慰謝料が請求できないのは「信教の自由」によるものです。
日本国憲法第20条では、すべての人に信教の自由が認められているため、配偶者が異なる宗教を信仰しているからといって、慰謝料請求の対象にはなりません。
慰謝料は、相手に故意や過失があり、その状況を招いた場合に請求できるものです。単に信仰が異なるというだけでは、相手に責任があるとは言えず、慰謝料の請求は認められないでしょう。
ただし「多額の寄付やお布施により経済的問題が発生した」「子どもに宗教的な教育や価値観を押し付けた」などといった内容には考慮が必要です。度を超えた信仰により夫婦関係が破綻し、結果として精神的苦痛を受けた場合には、特定の条件のもとで慰謝料が認められる可能性もあります。
熟年離婚で慰謝料請求する流れ
熟年離婚における慰謝料請求はどのように行うべきなのでしょうか?
長年連れ添ったパートナーとの離婚は、さまざまな感情も生まれるため、複雑な作業となるかもしれません。まずは話し合いでの解決を目指し、まとまらないようであれば調停を検討します。ここでは弁護士に依頼することで、専門的な知識をもとに適切なアドバイスを受けることが可能です。それでも答えが出ないようであれば、裁判所に判断を仰ぐ方法を検討します。
以下、3つの場面で慰謝料請求が可能です。
- 話し合いで解決を目指す協議離婚
- 話がまとまらなかった場合は調停離婚
- 解決に至らない場合は裁判離婚
ご自身の権利を守るためにも、この手順をひとつずつ確認していきましょう。
協議離婚の際に話し合いで決める
相手と会話ができる関係であれば、協議離婚のように話し合いで解決することを検討してみましょう。
ここでの話し合いでは、慰謝料請求の可否だけでなく、具体的な金額や支払方法、支払期限なども決めます。
そして、双方が合意したあとに作成するのが「離婚協議書」です。この協議書には、話し合いで決まった内容が記録されるため、万が一慰謝料が未払いになった場合でもトラブルを回避しやすくなります。
その後、この協議書をもとに「公正証書」が作成され、離婚手続きが始まる流れです。
離婚が成立した後に、合意した慰謝料を受け取ることになります。
なお、夫婦間の話し合いは直接会う必要はなく、電話やメールなどの方法でも問題ありません。コミュニケーションがとりやすい方法を選択しましょう。
協議離婚についてはこちらでも詳しく解説していますので、ご覧ください。
話し合いがまとまらなかったら調停離婚の際に決める
調停離婚は、夫婦間での話し合いだけでは解決が難しい場合に利用される方法です。家庭裁判所が中立的な立場に入ることで、問題の解決をサポートします。
調停では、裁判官や調停委員が仲介役となり、夫婦の意見を聞きながら話し合いを進めます。この際、原則として、夫婦が直接顔を合わせることはありません。感情的な対立を避け、冷静な状態で問題に取り組めるでしょう。
また、金銭的な問題については、専門家がいることで、公平な解決策を見つけることが可能です。
話し合いがまとまると、調停成立となり、その内容は「成立調書」として正式に記録されます。この調書に基づいて離婚手続きが始まり、認可後に慰謝料を受け取る流れです。
調停離婚の詳しい流れについては、こちらでも解説しています。
調停離婚で決まらなければ裁判離婚に移行する
調停離婚で解決できなかった場合に考えられるのが裁判離婚です。裁判離婚では、法的なルールに基づいて、離婚の可否や慰謝料の条件などを裁判所が判断します。
ここで必要なのが、有効な証拠です。裁判できちんと認められるものを準備しましょう。ご自身がどれくらいの被害を受けていたかを証明する必要があります。
また、裁判手続きには複雑な書類も必要となるため、専門知識を持った弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士にサポートしてもらうことで、スムーズに手続きを進められるでしょう。
もし、離婚については合意済みで、慰謝料だけが問題になっている場合は、調停を経ずに直接慰謝料請求の裁判を起こすことも可能です。この方法では、より焦点を絞って問題を解決できる可能性があります。
裁判離婚の流れや費用については、こちらでもご紹介しています。
熟年離婚で慰謝料を請求する際に押さえておきたいポイント
熟年離婚における慰謝料請求は、精神的にも肉体的にも負担をともなう作業ですが、スムーズに行うためのポイントがあります。
- 証拠集め
- 話し合いのシミュレーション
- 弁護士への相談
慰謝料請求をするにあたり、押さえておきたいのは、どれだけの精神的・肉体的苦痛を受けているかを証明することです。第三者が見ても納得するような証拠が必要になります。
ご自身の請求を通すためにも重要なポイントですので、1つずつ確認していきましょう。
熟年離婚するまでの流れや、その後の注意点などは、こちらでも解説しています。
証拠集めを徹底して行う
慰謝料を請求するときに重要なのが、証拠の存在です。精神的または肉体的な苦痛を受けたことを第三者に理解してもらうためには、明確な証拠を提示する必要があります。
この証拠がないと、慰謝料請求の根拠を証明できず、請求自体が認められない可能性があります。
ここからは、有効な証拠の具体例を見ていきましょう。
浮気・不倫(不貞行為)
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性的関係があったとわかるもの
・LINEやメールでのやり取りの記録
・ラブホテルから出てくる時の写真
・避妊具を購入したレシート
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DV・モラハラ
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日常的に暴力や暴言があったとわかるもの
・医師の診断書や暴力を受けた箇所の写真
・ICレコーダーで録音した暴言の音声記録
・警察や配偶者暴力相談支援センターへの相談記録
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悪意の遺棄
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生活費を入れていないことを証明するもの
・生活費が入金されなくなった通帳の記録
・家計が困窮していることがわかる家計簿や借金の明細
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セックスレス
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性交渉を拒絶していることがわかるもの
・性交渉を拒絶していることを示すメールやチャットの記録
・日記やその時の状況を記録したメモ
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これらの証拠集めをひとりで抱え込むことは、複雑で精神的にも負担が大きい作業です。写真や音声データなどの収集は、素人には難しく、リスクがともなうかもしれません。
解決方法としては、まず弁護士に相談することをおすすめします。証拠集めの手助けだけでなく、その証拠をどのように法的に活用するかまで、的確にアドバイスしてくれるでしょう。
話し合いの際のシミュレーションをしておく
離婚時の話し合いで慰謝料を決めるのであれば、事前にどんなことを言われるか想定しておきましょう。
さらに、それに対する回答の準備も必要です。
ここからは、想定される3つのパターンで解説していきます。
要求を素直に受け入れてくれそうな場合
ご自身の要求をそのまま受け入れる可能性がある場合は、具体的に希望する慰謝料額を話し合ってみましょう。
裁判であれは慰謝料に一定の相場がありますが、お互い合意のうえであれば、金額はいくらでもかまいません。
なお、話し合いがまとまった場合は、後々のトラブルを避けるために離婚協議書を作っておくと安心です。
これは、お互いが合意した内容を書面にしたもので、将来的に「言った」「言わない」というトラブルを防ぐために役立ちます。
要求を認めない可能性がある場合
相手は、自分に自覚があったとしても「そんなことはしていない」「知らない」といった言い訳を繰り返す可能性があります。これは自分の責任を回避しようとする典型的な態度です。
こういった状況に直面した場合には、証拠を示すことが有効な手段となります。第三者から見ても明らかな証拠があれば、相手も自分の非を認めざるを得なくなるでしょう。
また、この際に気をつけたいのが証拠品の取り扱いについてです。実際に証拠を相手に見せる場合は、必ず複製を用意しておきましょう。もし相手に証拠を奪われてしまったら、わざわざ集めた証拠が無駄になってしまいます。
写真ならコピーを、音声データなら別の機器にバックアップを取るなど、証拠を守る対策をしておくことが大切です。
激昂して暴力を振るわれる可能性がある場合
DVやモラハラが原因の場合は、慰謝料を請求することで余計に逆鱗にふれる可能性があります。
まずは、ご自身の身を守ることが重要ですので、警察や弁護士に相談して安全を確保してください。話し合いをする場合は人目のある場所、もしくは第三者を交えて行いましょう。
ほかの目があることで、仮に暴力を振るわれた場合でも、それを証拠として将来的に利用できるケースもあります。
弁護士へ相談する
熟年離婚の場合、婚姻期間の長さや離婚原因によって慰謝料金額が変わることがあります。
詳細を決定するには専門的な知識が必要なため、弁護士からアドバイスをもらうのがおすすめです。
弁護士に相談することで、これまでの状況を調査し、適切な慰謝料額を算定してくれます。
また弁護士はご自身の代わりに相手との交渉も行ってくれるので、精神的負担も大きく軽減されるでしょう。
相手と顔を合わせず手続きが進められる点も、ご自身にとってメリットではないでしょうか?
熟年離婚で慰謝料以外に受け取れるお金の種類
熟年離婚を検討する際、夫婦がそれぞれ経済的に自立している場合は、離婚後の生活に困ることは少ないでしょう。
しかし、一方が長年専業主婦(主夫)やパート勤務であった場合、離婚後の生活が厳しくなる可能性があります。
そのため、熟年離婚する際には、慰謝料とは別で受け取れるお金を確認することが重要です。
これらを受け取ることで、経済的な不安を軽減できるかもしれません。ご自身にあてはまる内容であるか、確認していきましょう。
財産分与
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が共同で築いた財産を分け合うことを指します。
基本的に、これらの財産は折半されることになっていますが、実際は財産形成に大きく貢献した方に多く配分される傾向があります。
なお、妻(夫)が専業主婦(主夫)であった場合も、財産は折半されるべきとされています。
これは「一方が働けたのは家庭内でのサポートがあったからこそ」という考えに基づいているからです。
つまり、家庭内での役割も、財産形成において重要な要素と見なされているのです。
以下は、財産分与の対象になります。
- 自宅やその他の不動産
- 預貯金
- 有価証券
- 車
- 家財道具
- 退職金
- 保険の解約返戻金
しかし、この一方で「特有財産」は財産分与の対象にはなりません。
特有財産とは、夫婦の協力とは無関係に得た財産で、結婚前から所有している財産や、親族から相続した財産などが代表例です。
また、家を財産分与する際には、どちらかが居住している可能性があり、現金化して分け合うことが難しい場合もあります。
家の状況や事情によっては、売却せずに財産分与することも可能ですので、詳しくはこちらをご覧ください。
年金分割
婚姻中に払い込んだ年金についても分割することが可能です。ただし、年金分割は会社員や公務員が支払う厚生年金のみが対象で、自営業者が支払う国民年金は対象外となります。
また、年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2つの方法があります。
まず、合意分割は離婚時に夫婦が話し合いで分割の割合を決める手続きです。この場合、婚姻期間中に納付した年金の最大で2分の1まで請求できます。
もし話し合いで合意に至らない場合は、家庭裁判所に年金分割調停を申立てる手順です。
一方、3号分割は専業主婦(主夫)が対象となります。この制度では、専業主婦(主夫)は相手の同意なしで、その期間に納付された年金を半分を受け取れます。
特に熟年離婚の場合は、婚姻期間が長いため納付額も多くなる傾向があります。このため、夫(または妻)が厚生年金に納めた保険料も多くなります。
その結果、専業主婦(主夫)やパート勤務の配偶者は、将来受け取る年金額が増える点がメリットとなるでしょう。
離婚時の年金分割についてはこちらの記事もご参考になさってください。
退職金
退職金は財産分与の対象となりますが、全額が対象になるわけではありません。
具体的には、退職金のうち、婚姻期間に相当する部分のみが分与の対象となります。たとえば、夫が30年間勤務し、そのうち20年間が婚姻期間であった場合、該当するのはその20年分です。
具体的な計算方法は「退職金÷勤続年数×婚姻年数」に決定した財産分与の割合(半分ずつの場合は2分の1)をかけます。
たとえば、退職金が3,000万円で、婚姻期間が20年、勤務期間が30年の場合、財産分与額は3,000万円×(20年÷30年)の半分で、約1,000万円となります。
また、熟年離婚の場合はすでに退職していることが多く、退職金が支払われているケースもあるでしょう。
この場合、支払われた退職金の残額が財産分与の対象になりますが、全額を使い切ってしまっている場合は、その時点で手元に残っている資産がないため、財産分与の対象にはなりません。
退職金を分与する流れや、金額の算定方法についてはこちらをごらんください。
養育費
熟年離婚の場合は、子どもが成人しているケースも多いですが、もし夫婦に未成年の子どもや、独立できない子どもがいる場合は、養育費の請求が可能です。
一般的に、養育費の金額は両親の収入に基づいた算定表があり、おおよその目安が示されています。
しかし、金額や支払い期間については、お互いが合意すれば自由に決められるため、家庭の状況に応じた取り決めが可能です。
請求できる金額は、収入や子どもの年齢、人数によっても状況が変わります。
養育費の詳細についてはこちらでも解説しています。
まとめ
熟年離婚における慰謝料は、婚姻期間の長さから、高額になる傾向があります。しかし、原因によっても相場は大きく異なります。
一般的な慰謝料は数十万~300万円程度ですが、不倫やDVなど、原因によっても変動することを考慮しましょう。
また、慰謝料を請求する際には、証拠の収集が不可欠です。第三者が納得できる証拠を集めることで、請求が認められる可能性が高まります。
しかし、証拠の収集は容易ではないため、不安な場合は専門知識を持つ弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士は適切な方法で証拠を集め、慰謝料請求のサポートもしてくれます。
慰謝料請求には、一定の条件がありますが、最も大事なのは精神的・肉体的苦痛をどれくらい受けていたかという点です。
ご自身の状況を確認し、必要に応じて専門家へ相談することで、円滑に手続きができるでしょう。
まずは、不安を解消するためにも、無料相談を利用してみてはいかがでしょうか?
熟年離婚の慰謝料に関するよくある質問
熟年離婚の慰謝料に税金はかかりますか?
熟年離婚での慰謝料は、基本的に非課税です。慰謝料は精神的損害の賠償金であるため、税金はかかりません。
ただし、高額な慰謝料の場合、相場を超えた部分に贈与税が課せられる場合があります。たとえば、一般的な相場が300万円の場合、500万円の慰謝料を受け取ると、その超過分の200万円に贈与税がかかるといった例です。
また、不動産や有価証券などの資産で慰謝料を受け取った場合には、譲渡所得税が発生することがあります。
さらに、受け取ったお金が慰謝料であることを証明する必要もあります。これについては、離婚協議書などの文書に、慰謝料が支払われた旨や、金額が記載されていれば問題ありません。
状況によっては税金が発生する可能性がでてきますので、随時、確認しましょう。
なお、財産分与にかかわる税金についてはこちらで解説しています。
離婚に伴う財産分与には税金がかかる?節税方法も詳しく解説
相手の年収が高いと熟年離婚の慰謝料も高額請求できますか?
相手が高収入だからといって、必ずしも相場より高額な慰謝料を受け取れるわけではありません。
慰謝料の金額は、相手の収入だけでなく、婚姻期間の長さや、受けた精神的・肉体的苦痛の度合いによって決まります。
ただし、協議による話し合いで双方の合意が得られれば、慰謝料の額は自由に決めることが可能です。
また、高収入の配偶者は社会的地位が高い場合が多く、その社会的評価を守るために、高額な慰謝料の支払いに応じる可能性もあります。
相手の年収は慰謝料請求においてひとつの要素ですが、最終的には婚姻期間や離婚原因など、ほかの要因も考慮されることを念頭に置きましょう。
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