債務整理をした経験があっても起業はできる?
債務整理をしても起業はできます。
債務整理を行うと個人信用情報に異動情報が登録されてローンやクレジットカードが一切使えなくなる、いわゆるブラックの状態になります。
ただブラックであること、債務整理をしたことが起業の際の障害になることはありません。
債務整理を行って減額後の借金を返済している間でも、問題なく事業を起こすことが可能です。債務整理には、
の3種類がありますが、自己破産には職業制限があり、一部の職種では免責許可が決定するまでは就業できない点に注意が必要です。
個人再生や任意整理の場合は職業制限はありませんが、信用情報がブラックになると資金調達が難しくなる点に気をつけましょう。
自己破産の職業制限は起業に影響する?
自己破産の手続きを行うと、一部の職業に一定期間の間就けなくなります。
いわゆる職業制限、就業制限と呼ばれるものです。
公職 |
公正取引委員、国家公安員会、公証人など |
士業 |
弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、宅地建物取引士など |
団体企業 |
日本銀行、信用金庫、金融商品取引業、商工会議所、労働者派遣業など |
その他職業 |
生命保険募集人、廃棄物処理業者、建築業者、警備員、風俗業管理者など |
自己破産を行ったあと仕事に復帰することを「復権」と呼びます。
大半の場合は免責許可(返済の免除)が決まった時点で復権ができ、特に手続きは必要ありません。
このことを当然復権と呼びます。
ワンポイント解説
当然復権とは?
手続きや申請なしで仕事に復帰できることを呼びます。自己破産の場合は免責許可が決まった時点で、特別に許可を得なくても今まで通り仕事ができるようになります。
職業制限については「自己破産すると職業制限がかかる仕事は?復権するまでの期間と合わせて解説」で詳しく解説していますので、こちらを参考にしてください。
つまり職業制限に当てはまる場合でも、自己破産の手続きが終わるまで待てば問題なく起業ができるということです。
また、自己破産をした後に起業を考えている場合は以下のことにも注意をしておきましょう。
- 資格によっては自分で再登録手続きが必要
- 自己破産をしても仕事に必要なものは処分されない
- 免責許可で復権するまでの期間は状況によって異なる
- 免責許可が得られないこともある
資格によっては自分で再登録手続きが必要な場合がある
職業制限に当てはまっていても手続き完了後は自由に働けますが、ごく一部の資格では復権後に再登録をしないといけないケースがあります。
国家資格の一つである宅建士(宅地建物取引士)は自己破産をした際の申告が義務付けられています。
自己破産をすると宅建士の登録は一度削除され、自己破産後に再度仕事に就くには登録申請をし直さないといけません。
資格を所持していて自己破産後に個人営業をしようと考えている方は注意してください。
自己破産をしても仕事に必要なものは処分されない
自己破産は財産の大半が没収されてしまうことがデメリットです。
財産が没収されて生活や仕事に必要なものが残らなかったらどうしよう、と不安になる方もいるかもしれません。
しかし実際は自己破産で差し押さえされる財産には制限がありますので、工具や事務用品、パソコンなどの仕事に必要な道具は残すことが出来るとされています。
自己破産で手元に残せる財産は以下の通りです。
- 99万円以下の現金
- 20万円以下の預金
- 価値が20万円以下の物品
- 生活に欠かせない家電、家具、衣類など
- 仕事をするにあたり必要な物
- 生活保護費や年金、児童手当などの支給
自動車も査定額が20万円以下でローンが残っていなければ手元に残せます。
しかし査定額が20万円を超えている車でも、普段の生活に不可欠な場合は手元に残せる場合があります。
自己破産をすることで具体的にどの財産が没収されるのか、どうすれば手元に多くの財産を残せるのかについては、債務整理に強い弁護士や司法書士に依頼をすることでアドバイスをしてもらえます。
免責許可で復権するまでの期間は状況によって異なる
自己破産の流れはおおまかに分けると以下のようになっており、職業制限を受けるのは2~3の間です。
- 裁判所への申し立て
- 破産手続きの開始
- 免責許可決定(=借入の帳消し)
免責許可が決定すれば職業制限は解除されるのですが、免責許可が決まるまでの期間は状況によって異なります。
自己破産は同時廃止事件、管財事件、少額管財事件の3つに分けることができ、場合によっては免責許可まで1年以上かかることもあるのです。
自己破産の分類 |
概要 |
免責許可までの目安 |
同時廃止事件 |
債務者の財産が少ない場合 |
2か月~4か月 |
管財事件 |
債務者に財産があり、破産管財人の選出が必要となる |
半年~1年以上 |
少額管財事件 |
弁護士に依頼をすると適用される管財事件 |
4か月~半年 |
財産がある場合はそれを処分し、債権者に分配をする手間がかかるため、裁判所によって破産管財人が選出されます。
そうすると「管財事件」として扱われ免責許可まで1年以上かかるケースもあります。
どれくらいの財産があれば管財事件になるのか、基準は裁判所によって異なるため一概には言えません。
破産手続きに強い弁護士に依頼をすると少額管財事件として破産手続きを行えますので、短い期間で手続きを終わらせることができます。
免責許可が得られないのはどのような時?
破産申立後、免責許可が得られると借金が取消になり職業制限も解除されますが、状況によっては免責許可が得られないこともあります。
その原因を免責不許可事由と呼び、主に以下のようなものが当てはまります。
- 借金の理由がギャンブルや著しい浪費であった場合
- 財産隠しや虚偽の説明をした場合
- 7年以内に免責を受けていた場合
免責不許可事由については、以下の記事に詳しく紹介されています。
免責不許可事由に当てはまった場合は職業制限は続いたままになりますが、以下のいずれかに該当した場合は職業制限がなくなり復権することができます。
- 債権者全員の同意を得て同時廃止が決定した場合
- 個人再生に切り替え、再生計画が認められた場合
- 残債を完済した場合
- 詐欺破産罪の有罪確定判決を受けずに10年経過した場合
免責不許可事由に該当した場合、復権まではさらに長い期間がかかることになります。
自分は免責不許可事由に当てはまるかもしれず不安、という方は借金問題に強い弁護士に相談を行うことで免責許可を得られる可能性が高くなります。
任意整理・個人再生の返済中でも起業はできる?
任意整理や個人再生は自己破産と違い、借金が全て免除されるわけではなく、手続きの後は返済を行っていくことになります。
その返済が続いている間でも起業をしてはいけないという決まりはありませんので、事業を起こすことはできます。
しかし手段に関係なく、債務整理を行った人が起業をする場合は資金調達が難しくなることに注意しなくてはいけません。
債務整理をすると個人信用情報機関にブラックであることが記録されるためです。
事業資金の借入先としてまず候補に挙がるのが日本政策金融公庫、いわゆる日本公庫です。
政府が管轄しているため審査は緩いと考えている方もいるかもしれません。
しかし実際はそのようなことはなく、債務整理をした経験がある場合は借入を断られます。
日本政策金融公庫で融資を受けられる条件は?
日本政策金融公庫は日本の政策金融機関の一つであり、政府が経済や国民生活の発展を目指して運営を行っています。
しかし株式会社として営業を行っていますので、誰にでも融資を行うわけではありません。
債務整理を行った情報を金融機関同士で共有する個人信用情報機関は
- 日本信用情報機構
- 株式会社CIC
- 全国銀行個人信用センター
の3箇所あり、日本政策金融公庫は株式会社CICに加入しています。
つまり申込時はCICの情報が参照され、ブラックになっている場合は融資を断られます。
日本公庫から融資を受けたい場合、異動情報がないことが最低限の条件ということになります。
※ 債務整理に伴うその他のデメリットについては以下の記事に詳しくまとめています。興味のある方はご覧ください。
債務整理後に資金調達を行うにはどうすればいい?
信用情報がブラックになっている場合、銀行や信用金庫などから融資を受けられないだけでなく、日本公庫の融資制度に頼ることも難しくなります。
債務整理を行った人が資金調達を行いたい場合は以下のいずれかを検討しましょう。
- ブラックが消えるまで待つ
- 再挑戦支援資金に申し込む(※廃業歴がある場合)
- 資金がかからない事業を選ぶ
ブラックが消えるまで待つ
信用情報がブラックになっていると金融機関から融資を受けることができません。
また事業用に事務所を借りる場合、不動産会社によっては保証人の信用情報を確認するため、ブラックだと保証人になれないこともあります。
他の人に保証人になってもらえば問題ありませんが、難しい場合はブラックが消えるまで待ちましょう。
事故情報が消えるまでの期間の目安は以下の通りです。
|
日本信用情報機構 |
株式会社シー・アイ・シー |
全国銀行個人信用センター |
長期延滞 |
5年 |
5年 |
5年 |
債務整理 |
5年 |
5年 |
5年 |
自己破産 |
5年 |
7年 |
10年 |
個人信用情報は自分でも確認ができる
個人信用情報の異動情報は一定期間が経過すれば消えることになっています。
しかしさきほど紹介した表はあくまでも記録が保持される最長の期間ですので、異動情報が登録されてからぴったり5年というわけではないのです。
個人信用情報機関の一つ、CICの記録保有期間については以下のような記載があります。
クレジット情報:加盟会員と締結した契約の内容や支払状況を表す情報
契約期間中および契約終了後5年以内
引用元:CICが保有する信用情報
そのため「思っていたよりも早く情報が消えた」という例も珍しくないのです。
自分の個人信用情報は申請を行えば確認ができますので、ブラックが消えてから起業をしたい方はぜひ確認をしてみてください。
再挑戦支援資金に申し込む(※廃業歴がある場合)
日本政策金融金庫の融資制度はブラックだと利用できない旨を紹介しましたが、廃業歴があり、債務整理がスムーズに進んでいれば「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」に申込ができます。
再挑戦支援資金の申込条件は以下の通りです。
- 廃業歴がある人、もしくは廃業歴がある会社の経営者
- 廃業をした際の債務が整理される見込みで、新しい事業に影響を与えないこと
- 廃業の理由がやむを得ないこと
やむを得ない理由で廃業をしたことがある方しか申込ができませんが、当てはまる方はぜひ検討をしてみてください。
日本政策金融公庫「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」
資金がかからない事業を選ぶ
特にやりたい事が決まっていない場合、お金がかからない事業を検討してみてはいかがでしょうか。
お金がかからない事業の例
・ネットショップ
・代行ビジネス(家事代行、買い物代行など)
・フリーランス(ノマドワーカー)
かつては起業するにはお金が不可欠でした。
しかしインターネットの普及によりビジネスの幅は大幅に広がり、資本金が少なくても始められる事業が増えつつあります。
自分ができそうな分野に積極的に挑戦してみましょう。
まとめ
債務整理をしても起業は自由に行えます。
自己破産を行うと一部の職業で資格制限が生じますが、免責許可が決定すれば自由に働けるようになり、起業もできます。
宅建士の場合は自己破産時の申告が義務づけられている上、免責決定後に再度登録が必要となりますので注意しましょう。
破産手続きはスムーズに進めば数か月~半年程度で終わりますが、免責不許可事由に該当すると手続きが中断したり、所持している財産によって免責許可までに長い期間がかかったりします。
早く手続きを終わらせたい場合は借金問題に強い弁護士に相談を行い、アドバイスをしてもらうことをお勧めします。
また債務整理を行うと信用情報にその旨が記録されてブラックになるため、金融機関や公庫から融資を受けることが困難になります。
ブラックが消えるまで待つか、資金調達が必要ない事業を選びましょう。
債務整理後の起業についてよくある質問
過去に債務整理していても起業することは可能?
債務整理の経験があっても起業は自由に行うことができます。
自己破産後に起業したいと考えている場合、自己破産の手続きについて注意すべきことは?
自己破産後の起業を考えている場合、資格制限や免責決定までの期間に注意しましょう。自己破産の手続きを行うと、一部の職業に一定期間の間就けなくなります。大半の場合は免責許可が決まった時点で復権ができ、特に手続きは必要ありませんが、資格によっては自分で再登録手続きが必要なこともあります。また、免責許可で復権するまでの期間は状況によって異なり、場合によっては免責許可まで1年以上かかることもあるので注意が必要です。
債務整理後に起業したいと考えている場合、債務整理することによるデメリットは?
債務整理をすると信用情報に事故情報が載り、事故情報が載っているうちは借入ができないため、起業のための資金調達が難しくなります。必要な資金は自分で準備するか、資金が必要のない事業を選ぶのがおすすめです。
そもそも債務整理とは?
債務整理は、利息や元金をカットし返済総額を大幅に減らせる国が認めた借金救済制度です。債務整理には複数の方法があり、主に「任意整理」「自己破産」「個人再生」を用いて借金問題を解決します。どの方法が適しているかは個人によって異なるので、弁護士・司法書士事務所へ直接相談して確認するとよいでしょう。
債務整理の相談をしたいのですが、今はお金がないので相談料が用意できないのですが・・・。
それなら、債務整理に強い弁護士・司法書士事務所へ相談しましょう。債務整理に強い弁護士・司法書士事務所なら、無料相談を受付けている場合がほとんどです。当サイトでも、無料相談可能な弁護士・司法書士事務所を紹介しているので、ぜひ気軽に利用してくださいね。
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