病気や入院で働けなくなっても借金の返済義務は免除されない
病気で借金が返済できなくなっても、借金の返済義務がなくなることはありません。
しかし、債権者に病気が理由で返済が遅れる旨を伝えれば、支払いを一時的に猶予してもらえる可能性はあります。
とはいえ、返済を待ってもらえる期間は数日から1週間程度が一般的であり、これ以上遅れる場合は猶予を認めてもらえる可能性は低いです。
いずれにしても、支払えないことがわかった時点で、債権者に必ず連絡をして無断で滞納してしまうことは絶対に避けましょう。
債権者との交渉次第で返済を待ってくれる可能性はある
病気による返済遅れに限らず、返済が遅れる可能性があるときは、必ず債権者へ連絡することが大切です。
例えば直近の支払い期日には間に合わなくても、次の月に2ヶ月分返済が可能なら、その旨を伝えれば1ヶ月の猶予が認められるケースもあります。
ただし、待ってくれる期間は数日から1週間程度であることがほとんどですので、その点は留意しておいてください(猶予してくれる期間はあくまで債権者によって異なります)。
支払いを待ってくれる可能性がある主な条件は以下のとおりです。
- 早期の回復が見込める
- 回復後に収入の確保ができている
- 具体的な返済日を指定できる
これらに当てはまりそうな場合は債権者と交渉する価値はありますので、自分の置かれた状況を正確に伝えてみることが大切です。
\ 借金の支払いを一時ストップ!/
滞納が続けば差し押さえなどで回収される可能性あり
病気による滞納とはいえ、滞納が長期間に及べば財産の差押えを行う可能性があります。
具体的には2〜3ヶ月滞納が続けば残債の一括請求が行われ、それでも滞納が続くようだと差し押さえに発展することが一般的です。
また、借金に連帯保証人が設定されていると、一括請求のタイミングから間もなく連帯保証人にも借金残債の一括請求が行われます。
長期的に返済が困難である見通しが立っているなら、債務整理により一括請求や差し押さえを回避する対策をとることは、ひとつ有効な手段です。
ワンポイント解説
返済猶予期間を作るなら弁護士に相談しよう
弁護士に相談し債務整理手続きを開始することにより、返済の猶予期間を作れます。また、長期的に返済の目処が立たないのであれば自己破産等の手続きを行う必要性は高いと考えられます。
いずれにせよ、取り掛かりは早い方がよく、弁護士に相談すれば適切な対応方法をアドバイスしてもらえます。
長期的に返済できない可能性が高い場合は、早めに弁護士に相談しましょう。
→【借金の支払いを一時ストップ!】無料相談ができる弁護士はこちら!
病気やケガで借金の返済ができないときの対処法
病気やケガで借金の返済できない場合は、
- 短期的な滞納で済みそうなのか
- 長期的な滞納になりそうなのか
により対応方法が変わってきます。
滞納が概ね2〜3ヶ月続きそうなのかどうかを一つの判断基準としてみてはいかがでしょうか(信用情報にキズがつくタイミングであるため)。
ここからは、補償制度を使い返済資金を用意する方法や、長期滞納によるペナルティを避ける方法についてご紹介します。
①短期的に返済ができない場合の対処法
「直近の支払い日には遅れるが、復職目処が立っているためその次の月からは2ヶ月分返済できる」という場合は、1ヶ月分だけ滞納することも一つの選択肢です。
信用情報にキズがつかない段階で無理に債務整理を行う必要はありません。
また、保険などの補償制度を使えば数ヶ月分の返済資金を確保できる、というケースもあるかと思います。
まずは滞納が1ヶ月程度で済みそうな場合の対策について見ていきましょう。
1ヶ月だけの滞納ですみそうなら遅延損害金を許容する
1ヶ月だけの滞納で済みそう、かつ、次々回の支払いで2ヶ月分の支払いが確実にできるという場合には、不本意ながらも「あえて滞納する」いう選択肢もなくはありません(この場合は必ず債権者に滞納することをお伝えください)。
1ヶ月分の遅延損害金は発生しますが、信用情報にはキズがつくとは限らないので、安易に債務整理をすべきとは言い切れないからです。
ですから、この方法をとる場合は一度弁護士に「債務整理を行うべきか、1ヶ月だけ滞納を続けるべきか」についてアドバイスをもらうことを強くお勧めします。
「信用情報にいつキズがつくのか」という点については明確な定めがあるわけではないため、弁護士によっても考え方は異なると思います。しかし、専門家の意見を聞くことで納得できることもあるでしょう。
また、次々回の支払いで2ヶ月分の支払いが確実にできるという場合は、債権者に連絡をすれば支払い猶予をもらえるかもしれません。
いずれにせよ、債権者と弁護士に連絡をした上で、総合的に判断することをお勧めします。
補償制度を使い返済資金を工面する
保険などの補償制度をうまく活用し、返済資金を確保することもひとつ有効な方法です。
例えば、病気やケガの原因が「業務」であれば、労災保険を申請し休業補償が受けられることをご存知でしょうか。また、医療保険やがん保険に加入していれば、入院給付金などを受け取れる場合があります。
このような補償制度もうまく活用して滞納を防ぐ方法もありますので、まずはご自身が加入している保険などを確認することをお勧めします。
A.入院給付金などの保険金を使って返済する
医療保険やがん保険に加入されている場合、入院や手術をしたり、がんと診断されたときに入院給付金をはじめとした保険金が支払われます。
そして、実際に支払われた保険金の使いみちは定められておらず、治療費に充ててもよいですし「借金の返済」にも充てることも可能です。
支給される保険金の種類や金額は加入している保険によって異なるので、保険の担当者に確認するとよいでしょう。
「入院が長引いたり手術が必要になった場合に備え、入院給付金を借金返済に充てるのは不安」という場合は、次に紹介する「「高額療養費制度」を利用することをお勧めします。
B.高額療養費制度を申請して医療費の一部を返還してもらう
健康保険に加入されている被保険者、被扶養者の方は高額療養費制度を利用できます。
高額療養費制度を利用すると、被保険者の所得に応じて決定された自己負担額以上の医療費が発生しません。
治療費の支払いと借金返済の両立に不安がある方も、高額療養費制度を利用すれば返済の見通しが立てやすくなるでしょう。
医療費の1ヶ月の自己負担額は所得に応じて決められており、その金額を超えた場合、高額療養費制度を利用するとあとから超過分が返還されます。
前もって申請すると、後からの返還ではなく支払い時に高額療養費制度が適用されるので、自己負担額を超えた請求を受けることはありません。
自己負担限度額は以下を参考にしてください。
所得区分 |
自己負担限度額 |
※多数該当 |
①区分ア
(標準報酬月額83万円以上の方)
(報酬月額81万円以上の方) |
252,600円+(総医療費※1-842,000円)×1% |
140,100円 |
②区分イ
(標準報酬月額53万~79万円の方)
(報酬月額51万5千円以上~81万円未満の方) |
167,400円+(総医療費※1-558,000円)×1% |
93,000円 |
③区分ウ
(標準報酬月額28万~50万円の方)
(報酬月額27万円以上~51万5千円未満の方) |
80,100円+(総医療費※1-267,000円)×1% |
44,400円 |
④区分エ
(標準報酬月額26万円以下の方)
(報酬月額27万円未満の方) |
57,600円 |
44,400円 |
⑤区分オ(低所得者)
(被保険者が市区町村民税の非課税者等 |
35,400円 |
24,600円 |
※多数該当とは、直近12か月の間で高額療養費を3回支払った場合、4回目から適用される自己負担限度額です。高額療養費制度は1か月単位で自己負担額を設定していますが、4か月以上の長期入院をしなければいけない場合や、入退院などを繰り返し、3回以上高額療養費制度を利用した場合に利用できます。
例えば所得区分③ウに該当した場合、自己負担限度額は下記の計算で求められます。
80,100円+ (総医療費-267,000円)×1%=自己負担額
自ら申請をする必要がありますが、自己負担額を超えた治療費を支払う必要がなくなるので、借金返済の負担も軽くなるでしょう。
ただし、高額療養費制度が適用されるのは業務外で発生した病気や怪我の場合に限ります。
また、高額療養費制度は自分で申請をする必要があり、申請のタイミングがずれてしまうと医療費を一時的に自己負担しなければいけません。
そのため、借金の返済で精一杯な方や借金の返済すらままならない方は、早めに申請を出しておきましょう。
早めに申請して「限度額適用認定証」を病院に提出すれば、自己負担額を超えた請求がされることはありません。
参考:全国健康保険協会「自己負担限度額とは」
C.業務に起因する病気・ケガであれば労働災害保険を申請して収入を確保する
仕事中に発生した事故や病気であれば、労働災害保険の保険給付対象です。
業務上で発生したうつ病などの精神疾患も、労災保険の対象となり得ます。
労働基準監督署長あてに労災保険の給付を請求して、調査がおこなわれて労災が認められると保険金が給付される仕組みです。
労災保険の申請は勤務先が本人に代わってすることも多いので、勤務先に確認するとよいでしょう。
また、4日未満の休業は労災保険ではなく、勤務先が休業補償をすると厚生労働省が定めています。
労災保険の詳細は、厚生労働省のページを参考にしてください。
参照:厚生労働省「労働災害が発生したとき」
D.傷病手当金を申請して借金の返済を補填する
健康保険に加入されている被保険者(本人)が業務以外の病気やケガで働けなくなってしまった場合は、傷病手当金が支給されます。
傷病手当金は最長で1年6か月受給が可能であり、うつ病等の精神疾患も支給対象です。
ただ、傷病手当金として受け取れる金額は給与の80%程度ですので、満額が支払われるわけではありません。
生活と借金がギリギリ返済できていた方にとっては、傷病手当金からの借金返済は厳しいかもしれませんが、借金の返済を補填する役割は担ってくれるでしょう。
傷病手当金が支給される条件は以下のとおりです。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
傷病手当金を受け取るには、上記の条件をすべて満たしている必要があります。
また、申請用紙は全国健康保険協会のページからダウンロードできます。
さらに詳しい条件も確認できますので参考にしてください。
参照:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
②長期的に返済できない見通しが立っている場合の対処法
長期的に職場復帰できる可能性がなく、今後も滞納が続く可能性が高いと判断できる場合は、債務整理を行うことが現実的な対処法になります。
債務整理で一括請求や強制執行を回避する
長期的に返済できない見通しが立っている場合は、残債の一括請求や預金等の差し押さえが行われないように対策をとることが大切です。
現実的にこれらを止める方法としては、債務整理が有効な手段となるでしょう。
以下のような状況に当てはまる方は、債務整理を検討することをお勧めします。
- 全治の目処が立たずいつ復職できるかわからない
- 病気をきっかけに退職してしまったから収入がない
- 長期入院が確定していて、借金の返済ができる見通しが立たない
債務整理を行うことで信用情報にキズがつきますが、滞納が2〜3ヶ月続く場合も同様に信用情報にキズがつきますので、この点は実質的なデメリットにはなりません。
他のデメリットがあったとしても、遅延損害金が膨らみ続けることや残債の一括請求強制執行を止められるという点で、メリットがデメリットを上回る可能性は高いと考えられます。
まずは任意整理を第一に検討する
債務整理を検討する場合、まずは任意整理ができるかどうかを検討するのが一般的です。
例えば「毎月の返済額が半分程度まで減らせれば返済を続けられる」という場合であれば任意整理ができる可能性が高いです。
任意整理は、将来の利息をカットして元金のみを返済していく債務整理手続きです。
最低限の返済能力や返済意思が求められますが、他の債務整理とは異なり裁判所を介さずにできる手続きなので、費用も安く手続きにかかる期間も比較的短いです。
また、自己破産と異なり財産没収などのデメリットもありません。
毎月の返済額も相談ができますので、無理のない範囲での返済額を決定できます。
ただ、任意整理は債務者と債権者との交渉です。弁護士が債務者の代理人として交渉をおこなうのが一般的ですが、債務者の返済能力が求められます。
そのため、長期間の入院が確定していて、いずれは収入が途絶えてしまうなどの不安要素があれば、交渉が成立しない可能性があります。
もしも交渉が成立しなければ、自己破産や個人再生などの法的強制力を持った債務整理手続きに移行するとよいでしょう。
自分でも任意整理手続きができるのかどうか悩んだ方は、まず弁護士へ相談をしてみてください。今後の返済計画も含め話し合い、債務者にとって最適なプランを提案してくれます。
返済能力がなくなった場合は自己破産を
病気やケガにより返済能力がなくなったと判断できる場合は自己破産を選択するのが妥当かと思われます。
自己破産が妥当と考えられるのは、例えば以下のような場合です。
- 借金総額が年収の1/3を超えているが、退院時期が未定
- 今後の収入の見込みが一切なくて返済が困難
- 病気の治療に専念したいので債務をすべてなくしたい
自己破産は、裁判所の決定でおこなわれる法的強制力を持った手続きです。
そのため、債権者の意思に関係なく強制的に借金の返済義務をなくせます。
自己破産を行うと財産処分が行われるというデメリットがありますが、生活に最低限必要な家具等が処分されることはありませんし、現金は99万円まで、預金は20万円まで残せます。
毎月の返済ができないような状況であれば、処分されるほどの現預金を持っているケースは少ないのではないでしょうか。
このように自己破産を行うデメリットよりも、借金がなくなるというメリットが上回る場合は、自己破産手続きを行なったほうが妥当と考えれれます。
住宅ローン支払い中の場合は個人再生の検討を
自己破産を選択する場合、仮に住宅ローン支払い中の自宅を所有している場合はこちらは処分対象になってしまいます。
そうなると、自己破産に伴うデメリットが許容できないという方もいるかもしれません。
そのような場合は「個人再生」手続きを行うと、自宅を守りながら借金をおおよそ1/5程度までカットすることが可能です。
自己破産のように借金をゼロにはできませんが、借金全額の80%ほどをなくすことができます。
ここまで大幅な減額ができるなら返済が続けられる、というケースは個人再生は有力な選択肢です。
ただし、少なからず借金を返済していくことが条件となりますので、それさえ返済できる見通しが立たない場合はやはり自己破産をとるしか選択肢はないと言えるでしょう。
住宅ローンが残っているときは団信保険を確認しよう
個人再生手続きはローンの残っていない住宅など、多くの資産を残したまま、借金の大部分をカットできます。
これが自己破産とは大きく異なる部分であり、資産を守りたい方にはおすすめの債務整理手続きです。
ただ、ローンの残っている住宅や自動車などの資産は、個人再生でも競売に掛けられてしまう可能性があります。
そのため、病気になって住宅ローンや自動車ローンなどが返せないのであれば、自己破産を選択したほうがよいかもしれません。
ただ住宅ローンに関しては、必ず団信保険(団体信用生命保険)に加入されているはずです。
団信保険は、ローン契約者が死亡もしくは高度障害状態になってしまった場合に、住宅ローンを肩代わりしてくれる保険です。
団信保険は、三大疾病(心筋梗塞・がん・脳卒中)に対応したものや、八大疾病(三大疾病と五大疾病を組み合わせたもの)など、補償範囲が広いものもあります。
もしもローンが残っている住宅をお持ちの方が病気で借金を返せないと悩んでいるのであれば、ご自身で加入した団信保険の確認をしてみてください。
病気の種類によっては、住宅ローンの返済をする必要がなくなる可能性があります。
まとめ
病気になって借金を返せなくなってしまう可能性は、借金を抱えている誰にでもあることですが、病気やケガは借金の減免理由にはなりません。
病気やケガが原因で、借金を支払えなくなっても絶対にしてはいけないのが「無断で借金を返済しないこと」です。
返済ができないことがわかった時点で債権者に相談しましょう。
そのときは、病気になってしまった旨、いつまでには返済できる旨を伝えたうえで、返済を待ってもらえるよう交渉してみてください。一時的であれば、返済を待ってくれる可能性が高いです。
ただ、いつまでに返済ができるかの見通しが立たない場合や、収入の目処が立たないときなどは、交渉よりも債務整理を検討すべきでしょう。
無料相談や後払いに対応している弁護士もいるので、まずは相談してみてください。
自分の状況を把握し、自分に合った方法で無理なく借金の返済をしていくとよいでしょう。
\ 借金の支払いを一時ストップ!/
借金返済が難しいときによくある質問
病気などやむを得ない理由なら、借金は免除されますか?
病気が原因でも、借金の返済が免除されることはありません。
返済が難しいと感じたら、すぐに弁護士へ相談することをおすすめします。
STEP債務整理「債務整理に力を入れるおすすめの弁護士を紹介」
病気でしばらく復職できそうにありません。費用の用意も難しいのですが債務整理できますか?
はい、大丈夫です。
弁護士に債務整理を依頼をすると、債権者への返済が止められるので債務整理費用に回せます。
また、債務整理に力を入れる弁護士は債務者の金銭事情を熟知しているので、分割や一部後払いなど、費用に関して柔軟に対応していることが多いです。
来週が給料日なのですが、明後日の借金返済に間に合いません。どうしたらよいですか?
債権者にその旨をすぐに連絡しましょう。
数日程度なら待ってもらえるケースが多いです。
入院中で外出できなくても債務整理はできますか?
はい、可能です。
ただし、基本的には本人でないと契約ができないため、最初に電話相談などで事情を話し家族に代理を頼めるか確認してみるとよいでしょう。
コロナの影響で借金を抱えたまま無職になってしまいました。無収入でも債務整理はできますか?
はい、可能です。
ただし、任意整理や個人再生は手続き後の返済計画を作成するために一定の収入が求められます。
そのため、自己破産を検討したほうがよいかもしれません。
最短即日取立STOP!
一人で悩まずに士業にご相談を
- 北海道・東北
-
- 関東
-
- 東海
-
- 関西
-
- 北陸・甲信越
-
- 中国・四国
-
- 九州・沖縄
-