生活保護受給者も自己破産は可能!
結論からいうと、生活保護受給者も自己破産は可能です。
むしろ、債務整理を行いたければ自己破産が唯一の選択肢となる可能性が高いでしょう。
なぜなら、生活保護費を借金の返済に充てることは禁止されているため、返済を続けることが前提となる任意整理や個人再生は選択できないからです。
ですから、生活保護受給中に抱えている借金をどうにかしたいと思った場合は、自己破産が有効な選択肢となります。
自己破産できる人の条件
自己破産ができる人の条件は、
- 免責不許可事由に該当しないこと
- 支払い能力がないこと
- 7年以内に自己破産をしていないこと
大きく以上の3点です。
免責不許可事由とは、無駄遣いやギャンブルによって作った多額の借金や、1回目の自己破産から7年間が経過していないなどが該当します。
支払い能力がないこととは、客観的に見て3年程度で返済できる借金であれば「自己破産をせずに返済をしなさい」となるため、自己破産はできません。
ですが、このような事情に該当しない方は基本的にはだれでも自己破産は可能です。
自己破産をしても生活保護の受給に影響はない
自己破産を行うことで生活保護が打ち切られるのではないのかと心配している方もいるかもしれませんが、自己破産が生活保護の受給に影響を与えることはありません。
また、「借金を抱えていること」を理由に、これから生活保護の受給申請を検討されている方が不利益を受けることはありません。
生活保護の受給対象は資産や収入が基準を下回る世帯です。その他、健康面や就労面、不正受給の可能性などをチェックされますが、生活保護の受給決定に「借金の有無」は一切関係ありません。
ただし「借金の返済で生活が困窮している」のであれば、生活保護の受給は認められないでしょう。債務整理をすれば、通常の生活を送れるだけの収入があるためです。
あくまでも、収入が少なく、自己破産したところで生活ができない人(世帯)が生活保護受給の対象です。
自己破産したことはケースワーカーにバレる?自分から伝えるべきなのか?
自己破産することはケースワーカーに伝えて問題ない
結論、自己破産をすることについてはケースワーカーには自分から伝えた方が無難です。
繰り返しになりますが、自己破産を行ったことが受給に悪影響を与えることはありませんので、ケースワーカーに話すことで不利益を被るとは考えにくいでしょう。
ただし、その際、借金の原因などについてヒアリングないし調査が入る可能性もあります。
もし仮に生活保護受給中に新たな借金をしていた場合(かつこれをケースワーカーに隠していた場合)、生活保護の停止、もしくは廃止の理由になる可能性もあることは留意しておいてください(生活保護法第二十八条5項)。
自己破産したことをケースワーカーにバレる可能性はある
自己破産をケースワーカーに知られたくないと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、確実にバレないようにする方法はありません。
なぜなら、自己破産したことは官報に記載されるためです。
もし担当のケースワーカーが官報を見ることになれば、自己破産をしたことが知られる可能性は考えられます。
生活保護者におすすめの自己破産費用を用意する方法
自己破産の費用は安くても30万円~と、かなり高額であり、生活保護の受給を検討されている方が費用の捻出をするのはむずかしいでしょう。
そのため、経済的に余裕のない方であっても安心して法律的な相談や手続きができるよう、法テラスには民事法律扶助制度があります。
また、民事法律扶助制度の条件を満たせない方であっても、自己破産費用を分割で支払っていくことも可能です。
「費用の用意ができない=自己破産ができない」ではないので安心してください。むしろ、生活保護受給者はどうにかして自己破産をしなければいけないため、いずれかの方法で自己破産を開始しましょう。
※自己破産の費用捻出が心配な方はこちらの記事もご覧ください。
分割払い対応可能な弁護士事務所を利用する
生活保護受給前に自己破産をするのであれば、費用の分割を利用してみてください。多くの弁護士事務所では、弁護士費用の分割や裁判所へ支払う予納金の積み立てに対応しています。
一括で数十万円単位のお金を用意する必要はなく、手元に資金が少ない方でも安心です。
なお、弁護士に自己破産の相談をし、委任契約(自己破産手続きを委任する契約)を締結することで、債権者(お金を貸した側)に受任通知が送付されます。この受任通知が債権者に届くと、一切の取り立てが止まるうえに借金の返済義務まで止まります。
今まで借金の返済に充てていた費用を弁護士費用や、裁判所へ支払う予納金の積み立てとして、支払っていけば無理なく自己破産ができます。
自己破産をするタイミングは、生活保護受給前・後どちらでも問題ありません。生活保護受給前に借金を解決しておきたいと考えるのであれば、弁護士費用の分割などを利用してみてください。
法テラスの民事法律扶助制度を利用する
生活保護受給者が、法テラスの民事法律扶助制度を利用すれば、自己破産費用をすべて免除されます。
この制度は、経済的に困窮している個人を対象に、法テラスが弁護士費用や司法書士費用を立て替えてくれる制度です。
あくまでも立て替え費用であるため、事件が解決した後は返済をしなければいけません。
これは、生活保護受給者であっても例外ではなく、法テラスの援助終結した際には、返済義務が発生します。
しかし、法テラスでは費用免除の対象として、「相手方から利益を受けることができず、援助終結後も生活保護を受給している場合は費用を免除する」とされています。
つまり、自己破産という事件の性質上、相手方から利益を得られることはないため、援助終結後も生活保護を受給されているのであれば、費用はすべて免除されます。
参考:法テラス|費用を立て替えてもらいたい
自己破産と生活保護申請はどちらを先に行うべきか?
自己破産手続きを先に行うことがおすすめ
生活保護受給中にも自己破産手続きは行えるため、基本的にはどちらが先でも問題はありません。
しかし、できるなら自己破産手続きは早めに行っておいた方がいいでしょう。
なぜなら、生活保護を受給し始めたからといって、督促が止まるわけではないからです。
また、万が一生活保護費を借金返済に充ててしまえば、生活保護費の支給停止、または廃止になりかねません。
一方、自己破産をすれば借金問題から解放されるため、取り立てや返済のストレスから解放されます。
自己破産を行ったことが申請で不利に扱われる心配もないので、自己破産手続きは早めに行っておくことをお勧めします。
どうしても自己破産したくない!他の解決策はあるのか?
借金問題を解決するには自己破産以外の選択肢は難しい
どうしても自己破産したくないと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、現実的に自己破産の選択肢以外はほとんどないと言っていいでしょう。
繰り返しになりますが、生活保護費を借金の返済に充てることはできません。よって、自力返済も不可能ですし、返済が前提となる任意整理や個人再生といった債務整理手続きも現実的にはとれません。
つまり、選択肢としては自己破産しか残されていないと考えられます。
生活保護者にも取り立ては通常通り行われる
生活保護者は借金の返済ができない状況とは言え、取り立ては通常通り行われます。
そして、滞納期間が長引くほど遅延損害金も膨らみ続けます。
このまま滞納が続けば、銀行口座が差し押さえられたりと強制執行手続きに踏み切られる可能性も少なくありません。
こうした事態を避けるのであれば、早めに自己破産を行い、借金問題を解決することが重要と考えられます。
生活保護の返還金は自己破産の対象となる一方、徴収金は対象外なので要注意
生活保護費を不正受給した場合には、返還金もしくは徴収金を支払わなければいけませんが、徴収金は自己破産の対象とならないので注意してください。
そもそも、返還金と徴収金の違いは悪質かどうかで判断されます。ただ、「〇〇をしたら徴収金」「〇〇までは返還金」などの明確な基準はなく、担当するケースワーカーの判断に委ねられています。
例えば、入った収入を申告しなければ不正受給とみなされますが、これも返還金となるのか徴収金となるのかは、ケースバイケースでしょう。あまりにも悪質な場合は、徴収金にとどまらず、生活保護の打ち切りにもなり得ますので注意してください。
そして、生活保護が打ち切りになったとしても、返還金や徴収金の返還義務を免れることは絶対にありません。その一方で、自己破産をすれば、返還金は0にでき、徴収金はできません。同じ不正受給であっても、背負うものの大きさがまったく違います。
では、なぜ返還金は自己破産が可能で、徴収金はダメなのか、生活保護受給者が借金ではなく返還金のみの自己破産はできるのかについて、詳しくお伝えします。
返還金は自己破産で0にできる
生活保護を受給している方が、収入があるにも関わらず申告しなかったり、家族からの支援があったのに報告をしなかったりすれば不正受給とみなされます。もしも不正受給としてみなされてしまえば、返還金として受け取った収入や支援分の金銭を返還しなければいけません。
ただ、不正受給があったからといって、ただちに生活保護の受給が打ち切りになることは少ないです。そのため実際には、返還ではなく毎月の生活保護費から返還金分が減額されます。生活保護費は「最低限度の生活を送るための経済支援」ですから、今以上に引かれてしまうと厳しいと考える方も多いでしょう。
自分で自分の首を絞めてしまうだけなので、当然ながら「不正受給をしない」ことが一番良いです。しかし中には、不正受給の認識を持たずに行ってしまう行為もあるでしょう。そうすると、「返還金だけでも自己破産できないかな?」と思われる方もいます。生活保護を受給していれば、自己破産費用も免除されるためです。
しかし実際には、返還金だけの自己破産はむずかしいでしょう。なぜなら、自己破産の条件である「支払い能力がないこと」をクリアできていないためです。生活保護費から返還金が引かれるとは言っても、生活に支障をきたさない程度(金額は地域によって異なります)で引かれます。
そのため、「返還金の支払い能力がある」と判断されてしまう可能性が高いでしょう。ただ、不正受給をきっかけに、生活保護の打ち切りに加え返還金も請求された場合には、「返還金のみの自己破産」も可能となるかもしれません。
徴収金は非免責債権なので自己破産対象外
生活保護費の不正受給の中でも悪質と判断された場合には、返還金ではなく徴収金を支払わなければいけません。徴収金は、不正受給した金額に40%を加算した金額が請求されるうえに、自己破産をしたとことで0になることはありません。
自己破産を行うことで、基本的にすべての債務(借金)が0になりますが、一部、自己破産の対象とならない債権があります。これを非免責債権と呼び、税金や公共料金(水道料金)が該当します。
そして、この非免責債権の中には徴収金も含まれます。ことの発端は生活保護の不正受給ですが、悪質かどうかでその後に与える影響も大きく変わってきますので注意しましょう。
まとめ
今回は、生活保護受給者が自己破産をできるのか?また、自己破産や借金の有無が自己破産受給へ影響を与えるのか?についてお伝えしました。
生活保護を受給していても自己破産は可能ですし、自己破産手続き中であっても生活保護の受給は可能です。また、借金の有無や自己破産の有無が生活保護の受給に対して影響を与えることは一切ありません。
また、生活保護受給者が借金の返済をすることが認められていないとのことでした。その一方で、借金の返済義務がなくならないため、【生活保護の受給=自己破産をするしかない】とのことでした。
法テラスの民事法律扶助制度を利用すれば、費用免除を受けられるため、自己負担額0円で自己破産手続きが可能です。安心して自己破産手続きを開始してください。そして、生活保護の不正受給にも充分な注意が必要でしょう。
返還金と徴収金の違いは「悪質かどうか」です。悪質かどうかの判断はあくまでもケースワーカーが行うため、明確な基準はありません。そもそも不正受給をしなければ、返還金も徴収金も求められることがありませんので安心してください。
もしも求められた場合、返還金であれば自己破産で0にできます。ただもちろん、「返還金のみの自己破産」はできない可能性が高いので、注意しておきましょう。
自己破産のよくある質問
生活保護受給中でも、自己破産はできますか?
はい、可能です。
生活保護を受給している場合、費用が免除されることもあるので一度弁護士へ相談してみるとよいでしょう。
STEP債務整理「債務整理に力を入れるおすすめの弁護士を紹介」
自己破産をすると、生活保護費が少なくなったりするのでしょうか?
自己破産をしても、生活保護費などに影響はありません。
ただし、念のため自己破産することを事前にケースワーカーへ伝えておくとよいでしょう。
借金の返済がきついのですが、生活保護を受給できますか?
「借金の返済がきつい」という理由での生活保護受給は認められていません。
また、生活保護費を借金の返済に充てることも禁止されています。
そのため、まずは借金問題を解決してから生活保護を申請するとよいでしょう。
STEP債務整理「債務整理に力を入れるおすすめの弁護士を紹介」
自己破産をすると仕事を解雇されますか?
自己破産を理由に会社を解雇されることはありません。
仕事をクビになるには、正当な解雇理由が存在する場合に限られ、自己破産はこの「正当な解雇理由」には該当しないからです。
ただし、自己破産の資格制限に当てはまる職業に就いている方については、一定期間、職務に就けないので注意が必要です。
自己破産によって賃貸借物件を追い出されることはありますか?
自己破産を理由に、借りている部屋を追い出されることはありません。
ただし、家賃の滞納をしていると、強制退去になる可能性もあります。
最短即日取立STOP!
一人で悩まずに士業にご相談を
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