ギャンブルの借金でも自己破産はできるのか?
まず、ギャンブルの借金でも自己破産できるのかどうかについてです。
ネットでは「ギャンブルの借金は自己破産できない」「いや、ギャンブルの借金でも自己破産できる」と様々な情報を見かけますが、本当のところはどうなのでしょうか?
まずはこの点について整理していきましょう。
免責不許可事由として、ギャンブルなどの賭博行為が規定されている
自己破産を司る「破産法」では、「免責不許可事由」が定められています。
免責不許可事由とは、自己破産手続きにおいて、免責を認められないケースを定めたもので、主な免責不許可事由は以下の通りです。
- 浪費または賭博その他の射幸行為
- 不当な偏頗行為
- 不当な債務負担行為
- 7年以内の免責取得等
上記のように、ギャンブルの借金は免責不許可事由にあたるので、この制度を当てはめるなら、自己破産はできないと解釈できます。
また、免責不許可事由に規定されている賭博行為には、FXなどの為替取引、株取引も含まれます。
一般的にギャンブルというと、パチンコや競馬などを思い浮かべますが、これらの取引も含まれることに注意してください。
ギャンブルが免責不許可事由に当たるのは、著しく財産を減少させた場合
ただし、ギャンブルをしたからといってすぐに免責不許可事由に当たるわけではありません。
「破産法」では、「著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担した場合」に免責不許可事由に当たるとされています。つまり、分不相応なギャンブルによって、返済不能な借金をすることになった場合に免責不許可事由となるということです。
ではどの程度であれば、「著しい」に当たるかというとこれについては、明確ではありません。あくまで申立人の財産や収入の状況などを踏まえて、裁判所が個別に判断することとなります。
「裁量免責」なら免責不許可事由でも免責が可能
上記のように、ギャンブルは免責不許可事由にあたるため、自己破産は認められないかというと、必ずしもそうではありません。「裁量免責」という制度を利用して、免責許可されることがほとんどです。
破産法では、以下のように定められています。
前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。
引用元:e-Gov 破産法 第252条3項
つまり、「裁量免責」とは、状況に応じて、裁判所の裁量で免責許可を与えられる制度です。免責不許可事由に該当する事実があっても、「本人に反省と今後の改善の意思が見える場合」や「自己破産による免責によってのみ救済できる場合」などは免責が許可されます。
実は、ギャンブルによる自己破産は、免責不許可事由の該当事項としては、かなり多いものです。これをすべて免責不許可としてしまえば、多くの人が免責を受けられず、途方にくれてしまいます。
そもそも、自己破産は借金の返済が困難になった人を救済することが目的です。
そのため、例え免責不許可事由に該当する事項であっても、反省の色が見られ今後の更生が期待できる場合には、免責を許可できるように規定されています。
自己破産できるか不安なら、まずは弁護士に相談を
免責不許可事由に該当していて、免責が受けられるかが不安な場合は弁護士に相談することをおすすめします。
裁量免責の取り扱いは、各裁判所や裁判官に委ねられているので、地方によって微妙に取り扱いが異なることもあります。
その地域の弁護士であれば、裁判所の判断基準や運用方法について、熟知しており経験も豊富ですので、免責許可が得られるかの判断や、手続き上の注意点を的確に指導してもらえます。
また、自己破産手続き自体も、自身で申告することは可能ですが、手続きは準備する資料などもかなり複雑です。中には作成にあたって、法律的な知識を求められるものもあり、素人が行うにはかなりの手間と時間がかかります。
弁護士に依頼すれば、これらの多くを代行してもらえますし、スケジュール管理も含めて適切に支援してもらえます。結果として、スムーズに免責を受けることに繋がります。
ギャンブルが原因の借金を自己破産する際の注意点
ギャンブルが借金の原因となっても、ほとんどの場合は裁量免責による免責が可能です。
ただし、ギャンブルのように免責不許可事由にあたる場合には、通常の自己破産手続きに比べ、注意すべき点がいくつかあります。
場合によっては、裁量免責が受けられないという事態もありえるので、認識しておきましょう。
自己破産費用が高額になる可能性がある
自己破産が免責不許可事由に該当する場合、自己破産の費用が通常よりも高額になる可能性があります。
なぜ費用が高額になるのかは、自己破産の手続きに「同時廃止」と「管財事件(少額管財)」の2種類があることが関係しています。
「同時廃止」とは、申立時点で財産をほとんど所有していないことが明らかな場合に、自己破産開始決定と同時に免責許可が行われる方法です。この場合は、手続き費用や期間も少額で済みます。
一方、「管財事件(少額管財)」は、処分すべき財産がある場合に、取られる手続き方法です。管財事件では、破産管財人が専任され、財産などについて調査・処分が行われた上で、免責許可が与えられます。
免責不許可事由に該当する事項があった場合には、2つの手続きのうち、管財手続きが選択されます。
これは、免責不許可事由がある場合、原則的には免責は認められないため、裁量免責を裁判所が認める必要があるからです。
同時廃止だと、破産管財人による調査が行われないため、裁量免責を与えるかどうかの判断材料を得ることができません。
そのため、免責不許可事由に該当する場合は、破産管財人による調査で、裁量免責に関する材料を裁判官が確認するために、管財事件として手続きされるのが一般的になっています。
「管財事件」には50万円以上の費用がかかる
管財事件になった場合、同時廃止と比べ費用が大きくなります。概ね50万円以上はかかると考えておくとよいでしょう。
管財事件の場合、破産管財人が専任され、破産に至った経緯や財産の状況などについて、調査が行われます。専任される破産管財人は、原則的に裁判所地域に所属する弁護士が選任されます。
破産管財人に対する報酬は、自己破産の手続費用の中から支払われることになるので、結果として手続き費用は高額なものとなっています。
弁護士に依頼すれば手続き費用を抑えた少額管財が可能
免責不許可事由に該当している場合は、管財事件となりますが、弁護士に依頼することで費用負担を抑えた少額管財という手続きも可能です。
管財事件の費用負担は高額で、個人や零細企業にとって費用負担の大きなものです。そのため、費用負担に耐えられず、自己破産が利用できない恐れがでてきます。
そこで、自己破産手続きを利用しやすくするために、少額管財という手続きが多くの裁判所で運用されています。
少額管財での手続きには弁護士への依頼が必須となりますが、手続き費用が大幅に抑えられるため、利用したい場合は事前に弁護士に相談してみましょう。
嘘をつくと罪に問われる可能性も
借金の原因がギャンブルにある場合、黙っていれば免責不許可事由に当たらないので隠そうとする人もいますが、絶対にやってはいけません。
自己破産時に行われる調査では、資産隠匿の可能性なども考慮して、お金の動きを詳細に調査します。もちろん不審な点があれば、聞き取りの調査も行われます。
この調査過程で矛盾があったり、嘘がバレたりすれば裁量免責すら認められない可能性もあります。仮に、バレずに自己破産が許可されたとしても、「詐欺破産罪」という罪に問われます。
先程も説明したとおり、免責不許可事由に該当していたとしても、充分に反省が見られ、誠実に対応すれば「裁量免責」が認められるケースがほとんどです。
罪に問われるようなことをするのではなく、あくまで誠実に対応することが最適な対応です。
裁判所の要請には誠実に対応する
裁量免責が認められるかどうかは、債務者自身に充分に反省が見られ、今後の経済的更生が期待できることが最も重要です。
裁判所に十分な反省をわかってもらうためにも、裁判所からの書類提出依頼や、聞き取り等の呼び出しには誠実に対応しなければなりません。
手続きに協力的でないとみなされれば、裁判官の心証を悪くなり、最悪の場合、裁量免責が認められない可能性もあります。
必ず誠実な対応を心がけ、弁護士に依頼している場合は、アドバイスに従って手続きに臨んでください。
それでも免責が難しいなら別の手段を検討
ギャンブルが原因の借金を自己破産する場合、これまでお話した通り、多くの場合は裁量免責による免責が認められます。
ただし、2回目の自己破産など裁量免責があったとしても、免責が認められないケースも存在します。
もしそういったケースに該当する場合は、別の債務整理方法などを検討することになります。借金問題の解決に有効な「債務整理」には、他にも「個人再生」や「任意整理」という方法があります。
自己破産を検討しているほど、借金の返済が厳しい状況なら、現実的には「個人再生」を検討することになるでしょう。
「個人再生」なら免責不許可事由がない
免責不許可事由に該当し、自己破産が難しい状況なのであれば、「個人再生」を検討してみましょう。
「個人再生」は、自己破産と同様、裁判所を介した手続きで、借金総額を概ね1/5程度に減額し、残額について3~5年で返済していく手続きです。
大幅に借金総額を減額することができるため、その後の返済額も抑えられるので、返済が可能になる場合も多いはずです。
また、この個人再生には免責不許可事由がありません。ギャンブルなどが原因の借金であっても、条件にさえ当てはまれば手続きすることが可能です。
ただし、手続き後にも返済が必要になるので、返済できるだけの安定した収入があることが条件になっています。返済計画などを裁判所に提出し、認められる必要があるので、これらの条件をクリアできるのであれば、検討してみると良いでしょう。
個人再生については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
「任意整理」なら手続き対象の借金を選べる
任意整理は、各債権者と個別に交渉し、主に将来の利息部分をカットしてもらい、3~5年で完済を目指す手続きです。
裁判所を介さず、直接債権者と個別に交渉するため、手続きする借金を選択することが可能です。
例えば、保証人がついている借金などを対象にしないことで、保証人に迷惑をかけずに返済負担を減らすことが可能です。
ただし、任意整理の場合は原則的に減額の対象となるのは利息部分に限定されます。
そのため、減額幅としては決して大きくありません。現在の返済状況がまったく追いついていない状況であれば、大きな効果は見込めない可能性もあります。
任意整理については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
手続きが不安なら、まずは弁護士に相談すべき
自己破産の手続きや、借金問題の解決について不安があるなら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
自己破産を含めた債務整理は、条件もさまざまで状況によって、選択すべき手続きは異なります。
また、これまでご説明した通り、状況よっては手続きしても認めてもらえず、借金問題が解決しないこともあり得ます。
弁護士に相談すれば、ご自身の状況を踏まえた上で、最適な債務整理方法をアドバイスしてもらえますし、手続きに関するリスクやデメリットについても、説明してもらえます。
正式に依頼すれば、手続きがスムーズに進むよう支援も得られます。
借金問題は放置しておけばおくほど、解決方法の選択肢は狭まっていくので、まずは弁護士に相談し、今後の方針をまずは検討してみましょう。
当サイトでは、無料相談可能な弁護士を紹介していますので、借金問題に悩んだらぜひ問い合わせてみてください。
>>【借金問題解消】弁護士に無料相談する
まとめ
ギャンブルが原因となっている自己破産は、免責不許可事由に該当し、原則的には免責は認められませんが、裁量免責と言う形で認められる可能性があります。
裁量免責での免責許可を得る場合は、財産がない場合でも破産管財人が専任される管財事件として進められるため、手続き費用が高額となります。
また、裁量免責を認めてもらうためは、裁判所からの依頼など手続き全般において誠実に対応することが重要です。免責不許可事由があるからといって、嘘をついたりすれば裁量免責が認められないばかりか、罪に問われる可能性もあります。
1回目の自己破産であれば、誠実に対応すれば裁量免責が許可されるケースが大半ですので、安心して対応してください。また、このような場合には、手続きをスムーズに進める上でも、弁護士へ相談することをおすすめします。
裁量免責での認可がおりるかも含めて、適切なアドバイスをしてもらえますよ。
自己破産のよくある質問
ギャンブルが原因でも自己破産できますか?
原則、ギャンブルが原因の借金は免責不許可事由とされて自己破産の免責がおりません。
ただし、裁判所の裁量免責によって、免責が認められる可能性があります。
ギャンブルが原因の借金で自己破産したい場合は、自己破産の実績が豊富な弁護士へ相談することをおすすめします。
STEP債務整理「債務整理に力を入れるおすすめの弁護士を紹介」
自己破産をするのですが、友人からの借金を先に返せますか?
友人への借金を先に返すと、偏波弁済とみなされて免責不許可事由となる可能性があります。
そのため、先に返済はしないようにしましょう。
自己破産後に、任意で返済していくことは可能です。
3年前にギャンブルで自己破産したのですが、今度は事業に失敗して多額の借金を背負ってしまいました。また自己破産できますか?
自己破産は前回の自己破産から7年が経過していないと認められないため、残念ながらできません。
弁護士へ相談して、他の方法で借金の解決方法を探すことをおすすめします。
10年前にギャンブルで自己破産しました。またギャンブルで自己破産したいのですが、7年経っているのでできますか?
自己破産では、7年が経過していても同じ理由での自己破産は認められません。
弁護士へ相談して、他の方法で借金の解決方法を探すことをおすすめします。
自己破産では、家にあるものをすべて差押えられてしまうのですか?
原則、差押えられるのは20万円以上の価値を有する財産です。
生活必需品や、仕事に必要な道具など生活に支障が出てしまうようなものまでは差押えられないので安心してください。
また、家族名義の財産も差押えの対象とはなりません。
最短即日取立STOP!
一人で悩まずに士業にご相談を
- 北海道・東北
-
- 関東
-
- 東海
-
- 関西
-
- 北陸・甲信越
-
- 中国・四国
-
- 九州・沖縄
-