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2024年11月現在

自己破産はどこまで調べられる?財産隠しの危険性について

自己破産とは、借金などの債務の返済が難しくなったことを裁判所へ申し立て、認可されれば債務の支払い義務を免除できる手続きです。

自己破産は「債務を免除する」という特性上、債権者側に大きな不利益を生みます。そのため、自己破産手続きの際には、申立人の財産状況などについて徹底的に調査されるのです。

調査される内容は、主に以下の3点です。

  • 申立人は財産をどれほど所有しているか
  • 借金の内容
  • 免責を認められる借金かどうか

ただ、中には自己破産を行っても、ある程度の財産を残したいと考え、財産をなんとか隠そうと考える方もいるかもしれません。しかし、自己破産時には提出する書類や聴取、現地調査を通して財産や債務の状況を徹底的に調べられます

これらの調査を行う中で、所有している財産を隠していたり、第三者に譲渡したことが発覚すると「財産隠し」と見做される可能性があります。また、借金の理由によっては免責許可が降りなかったり、「詐欺破産罪」として罪を問われるかもしれません。

そのため、自己破産の調査時に財産を隠したり、聴取の段階で債務の内容や理由について嘘をつくのはやめましょう

しかし、交通網が発達していない地域に住んでいるため、車など移動手段がなければ生活に支障をきたす方もいるでしょう。そういった、やむを得ない事情がある場合は、裁判所に財産を残すことが認められる可能性があります。財産を残すための要件は非常に厳しいため、認可される可能性は非常に低いといえるでしょう。

そのため、どうしても財産を残したい方は、一度債務整理に強い弁護士へ相談してみてください

本記事では自己破産時に調査される内容や、財産隠しのリスクについて詳しく解説していきます。

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この記事でわかること
  • 自己破産では「財産」「借金」「免責」の3つのことについて徹底的に調べられる。
  • 調査の方法は聴取や提出書類の精査、状況によっては現地調査で行われる。
  • 財産を隠していたことが発覚すると、免責不許可となり借金が0にならない。最悪の場合「詐欺破産罪」として懲役刑や罰金刑の対象になる。

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自己破産時に隠し財産を調査される理由は?

まず、自己破産時に行われる隠し財産の調査は、誰が、なんのためにするのか気になっている方もいるのではないでしょうか?

結論からいえば、自己破産時の調査を行うのは破産管財人という裁判所に選ばれた弁護士です。そして、破産管財人による調査は、主に破産申立人が虚偽の報告をしているかを目的として調査が行われます。

ここからは、破産管財人と、自己破産時の調査の目的について詳しく解説していきましょう。

調査は破産管財人が行う

先述した通り、破産申立人の財産調査を行うのは、破産管財人と呼ばれる裁判所が選任した弁護士です。

自己破産には処分する財産がない「同時廃止」と、財産が残っている場合の「管財事件」に分けられます。そして破産管財人は主に、破産者の元に金銭へ変えられる財産が残っている「管財事件」の際に任命される弁護士です。

破産管財人の役割は主に破産管財人の役割は主に以下の5点となっています。

  • 破産者の財産を金銭に変える
  • 金銭に変えた破産者の財産を債権者へ配当する
  • 債務者の身辺や借金をした理由の調査
  • 債務者の財産や借金の状況を調査
  • 調査内容を裁判所へ報告

また、これらの行為を遂行するために、破産管財人には破産法に基づいて財産を管理・処分する権利、債権者を害する行為の効力を否定して財産を回復させる否認権などが認められています。そのため、破産管財人は、自己破産手続きにおける中心を担う存在と考えて良いでしょう。

第七十八条 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する。
引用元 e-GOV 法令検索

第百六十条 破破産者が破産債権者を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、破産債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
引用元 e-GOV 法令検索

破産管財人が任命される最大の理由は、適切に破産者の財産を管理・処分し、債権者へ配当する点にあります。そのため、破産管財人には破産者、債権者とは一切利害関係がない、公平な立場に立てる弁護士が選ばれるのです。

破産管財人について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

破産申立人が虚偽の申告をしていないか調べるため

破産管財人が自己破産時に調査を行う最大の目的は、破産申立人が虚偽の報告をしていないかを調べるためです。

自己破産は借金を全て免除するという特性上、債権者へ大きな不利益が発生する行為であるため、簡単に認めるわけにはいきません。そのため、借金を免除するに値する理由があるかどうかを見極める必要があります。例えば、調査の結果ギャンブルや浪費癖から借金していたと判明すると、破産が認められ難くなる可能性があるでしょう。

また、自己破産時には破産者の財産を管理・処分し、債権者へ金銭を配当します。しかし、破産者が財産を隠して金銭に変えるのを避けようとすると、債権者が更に不利益を被る可能性も否定できません。そのため、破産者の財産を隠していないか、厳しく調査する必要があるのです。

自己破産時に調べられることは3つ

自己破産の申立てをすることで調べられることは3つです。

  • ①所有財産の調査
  • ②借金の内容調査
  • ③免責に関する調査

自己破産は一定以上の財産をすべてお金に変えて債権者に分配し、借金のすべてを0にする手続きです。

そのため、自己破産をするためには破産者が抱えている財産の調査や、借金の内容の調査をしなければいけません。また、自己破産申立人が本当に自己破産をするにふさわしい人か?という調査をします。

それぞれの調査で何をどこまで具体的に調べられるのかについて詳しく見ていきましょう。

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①破産者が所有している財産の調査

自己破産をしようとしている人が持つ財産は、自由財産を除いてすべて破産財団で管理し、換価処分します。

お金に変わった財産はすべて債権者に分配されるため、まずは破産者が持つすべての財産を調査しなければいけません。

所有財産の主な調査方法は以下の4つです。

調査の種類 調査方法 注意事項
①破産者が提出した書類の精査 破産申立時に提出する書類による調査 書類に不備があったり嘘の情報を書いたりすると自己破産の手続き上、不利益を受けます。
②破産者への聴取 破産管財人による事情聴取 提出書類をもとにあなたが持っている財産について聞かれますが、ここで嘘をついたりしてはいけません。
③現地調査 物による財産の調査 職員が実際に訪れて調査をします。日時が前もって知らされるので、かならず立ち会うようにしてください。
④郵送物の確認 裁判所が認めた場合、破産者あてに届いた郵送物のすべてを破産管財人あてに届けて中身を調査 財産を隠していたり借金を隠していたりするとここでバレます。

財産の価値や状態権利関係、担保の有無などを調査

財産の調査では破産者が持っているすべての財産について、あらゆる手段をもちいて徹底的に調査をします。とくに、価値の付きそうな物(高級時計や車など)については、その価値や状態を含めて詳しく調査されるでしょう。

その他、マイホームを持っている方のうち、住宅ローンが残っていれば抵当権が設定されています。抵当権はいわゆる担保のような役割を担っているため、抵当権順位や抵当権設定者の調査も対象です。

また、必要に応じて自宅内に価値のある物がないかどうかの現地調査を行います。

換価処分できそうな物は差し押さえの対象となりますが、生活に必要な物については守れるので安心してください。

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マイホームは職員が現地調査で鑑定する

自己破産をすることでマイホームも換価処分の対象となり、マイホームの価値を調査するために現地調査が行われます。

現地調査では破産者が立ち会いのもと、不動産鑑定人と呼ばれる不動産の専門家と裁判所の職員とで物件内外を調査します。

前もって日時は指定されますが、立ち会いができないときは裁判所へ早めに申告しましょう。別日程へ変えてもらえます。

ワンポイント解説
数か月も先延ばしはダメ

マイホームの現地調査は、かならず破産者が立ち会いのもとで行われるため、日程が合わなければ別日にずらすしかありません。このとき、できるだけ長く家に住んでいようと考え「日程を数か月も先延ばしにしよう」と考える方がいるかもしれませんがやめてください。正当な理由なく調査を妨害すると、免責不許可事由に該当し免責許可がおりなくなってしまいます。

②借金の内容を調査

自己破産では、破産者が抱えているすべての借金が対象となるため、ひとつ残らず徹底した調査を行います。

借金の内容を調査する方法は以下の3つです。

調査の種類 調査の方法 注意事項
①破産者、債権者への聴取・書類提出 破産者が提出した債権者一覧表をもとに聞き取り調査を行い、債権者に裏付けを取る この時点で債権者あてに「破産手続き開始の通知」を送付するため、クレジットカード等が止まります。
②信用情報の開示 信用情報機関に対して破産者本人の信用情報を開示請求 債権の申告漏れ等があればここで発見されますので気をつけてください。
③通帳の入出金明細確認 通帳の入出金明細を確認して、債権の有無を確認 個人から借り入れしている借金も通帳の入出金明細を調べられることでかならずバレるので、前もって申告しておきましょう。

破産者が抱えている借金の内容や金額の調査

借金内容の調査についてもあらゆる手段で徹底的に調べられます。

債権の調査で調べられることは2つです。

  • ①債権者について
  • ②各債権者の借金額

債権者が何人いて、個人・法人どちらなのか、各債権者の借金額はいくらなのかなどについて調べられます。基本的には、自分ですべて申告し債権者に裏付けを取る流れです。

また、個人から借りている借金についても自己破産の対象であり、相手方へ弁護士からの「受任通知」や裁判所から送付される「破産手続き開始の通知」が届きます。

「自己破産を知られたくない」という理由から、個人間の借金を隠していても銀行口座の確認等でかならずバレるでしょう。

中には「自己破産前に個人間の借金だけ返済すれば良いのか?」と思われるかもしれませんが、これは偏頗(へんぱ)弁済といって、最悪の場合免責許可がおりません。

とくに「友人や家族からの借り入れは優先して返済したい」とか「自己破産に関係なく返済したい」と思う気持ちはわかります。しかし、絶対にやめてください。

特定の債権者のみに返済する行為も、特定の借金のみを隠す行為も、自分自身が不利益を受けることになります。

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③免責不許可事由に該当しない借金か否かの調査

自己破産によって借金を0にする決定のことを「免責許可の決定」と言い、破産者が免責許可の決定をするに「ふさわしい人かどうか」についても調査されます。

「免責許可を決定するのにふさわしくない人」とは、自分勝手に借金を作った人や反省の態度が見られないなど「免責不許可事由に該当する人」です。

よく問題となる免責不許可事由は下記のとおり6つあります。

  • ①ギャンブルや無駄使いによって多額の借金を抱えた人
  • ②財産を隠したり壊したり、他人に贈与したりする行為
  • ③破産申立てより1年以内に信用情報等を偽って借金をした
  • ④ローンやクレジットカードで購入した商品を安価で売却した
  • ⑤免責許可決定を受けてから7年以内の人
  • ⑥裁判所や破産管財人に協力しない

参考:e-Govポータル「破産法252条(免責許可の決定の要件等)」

免責の調査を簡単にまとめると「この破産者は下記のような人ではないだろうか?」という調査で、基本的には聴取によって調べられます。

  • 無駄使い
  • 不誠実な人、反省していない人
  • 詐欺まがいなことをした結果の借金
  • 短期間で同じことを何度も繰り返す人

上記に当てはまる人は、基本的に免責許可の決定をするにふさわしくないと見られてしまいます。

免責の調査は「厳しい聴取」と「資料の精査」

免責の調査では、破産者が提出した書類や厳しい聴取によって調べられます。

具体的には「なぜ借金を作ってしまったのか」や「同じことを繰り返さないためにはどうするのか」、「免責許可決定後はどのように生活を送るのか」など、あらゆる角度から厳しい質問を受けます。

このとき、借金を抱えてしまった理由などを偽っていると、免責許可がおりません。もちろん、聴取時に話した事実や提出した書類の裏付けは取るため、偽っていてもかならずバレるので注意してください。

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自己破産時に調査対象外となる情報は?

基本的に自己破産の際に調査対象となるのは、破産者の財産や負債に関する情報です。そのため、財産や債務に関係しない個人情報は、破産管財人も調査しません。

例えば、スマホに残ったLINEやSNSにおける会話・通話履歴は調査されることは殆どないでしょう。ただし、オンラインカジノやゲームにおける課金など、スマホを通して発生した借金があった場合は、調査の対象になる可能性はあります。

また、破産者の家族に関する財産も、調査される可能性は非常に低いと言えるでしょう。ただ、自己破産を見越して少しでも財産を残そうと、配偶者や子供へ自らの財産を贈与する方もいます。そのため、直近で破産者の家族へ贈与されたり、名義変更された財産があった場合は調査の対象となるかもしれません。

自己破産時の財産隠しは必ずバレる

自己破産をすることで自由財産を除くすべての財産を処分しなければいけません。もしも、財産を隠したり他人に贈与したりすると「財産隠し」として、免責許可がおりなかったり「詐欺破産罪」という犯罪に抵触する恐れがあります。

中には、どうしても手元に残しておきたい財産がある方もいるでしょう。しかし残念ながら自己破産は、借金を0にする変わりにあなたの財産をすべて換価処分して債権者に分配されます。

財産隠しは徹底して調べられた結果、かならずバレるので漏れなく申告するように心がけてください。

聴取や調査、書類の提出で徹底調査するため財産隠しはかならずバレる

裁判所は破産者が財産を隠していないかどうか、書類や聴取、時には現地調査にて徹底的に調べます。

とくに裁判所へ提出する書類は厳しく、その内容についてしっかり精査されるため、隠し通すことは極めて難しいでしょう。

裁判所へ提出する書類一覧
  • 銀行の通帳
  • 給与明細・源泉徴収票・課税証明書(収入証明書類)
  • 家計簿
  • 破産者が所有する財産の一覧表
  • 車検証(車がある場合)
  • 不動産登記簿(不動産がある場合)

破産手続きが開始されると、破産者あてに届く書類は破産管財人に渡るため、財産を隠していても郵送物によってバレてしまうこともあるでしょう。

また、自宅内で保管している現金についても、家計簿等を調べられることでバレてしまう可能性が高いです。

裁判所や破産管財人は嘘を見抜くプロと言っても過言ではありません。書類や聴取、あらゆる調査によってかならず嘘がバレます。バレて不利益を受けるのはあなた自身なので、財産を隠すようなことは絶対に避けるべきでしょう。

自己破産時に隠し財産がバレるとどうなる?

先述した通り、自己破産時には徹底した調査が行われるので、隠し財産などはほぼ確実にバレます。

隠し財産がバレた際に被る不利益としては、主に以下の2点です。

  • 免責不許可事由になり借金が免除されない
  • 「詐欺破産罪」として刑事罰の対象になる

それぞれ順を追って解説していきましょう。

財産隠しは免責不許可事由となり借金が免除されない

故意に財産を隠す行為はとても悪質であり、問答無用で免責不許可となります。免責不許可となれば、そもそも自己破産をする意味がありません。

自己破産を開始するための費用も無駄になり、債権者からの取り立てもまた始まり返済を強いられることになるでしょう。財産を隠す行為は百害あって一利なしです。

「バレなければ問題ない」ではなく、絶対にバレる、バレてしまえば自分が不利益を受けると考えれば、そこまでして隠しておきたい財産はないはずです。絶対にやめましょう。

【要注意】財産の申告漏れでも財産隠しに該当する恐れがある

「故意」ではなく、誤って財産の申告が漏れていただけでも、免責許可がおりなくなってしまうことがあります。

故意ではない限り免責許可はおりますが、裁判所が「故意」を認めたときには免責許可がおりないこともあるでしょう。たとえば、明らかに破産者が嘘をついていたり、知らないはずのない財産を申告しなかったりしたときです。

また、自己破産前に故意なく財産の名義変更をしたり、他人に贈与したりすれば財産隠しに該当する恐れがあります。

財産隠しは免責不許可事由に該当し、自己破産の手続き上でも大きな弊害となり得ます。財産隠しを疑われるような行為も極力避けるべきでしょう。

財産隠しがバレると「詐欺破産罪」として刑事罰の対象

財産隠しがバレてしまい、悪質であると判断されることで刑法に定める「詐欺破産罪」が成立する恐れがあります。

詐欺破産罪に該当するケースは下記のとおりです。

  • 自己破産前後問わず財産を隠したり壊したりする行為
  • 財産の現状を変えて価値を著しく下げる行為
  • 債務者の財産譲渡や債務負担を仮装する行為
  • 破産手続き開始決定後に正当な理由なく財産を第三者へ取得させる行為等

参考:e-Gov法令検索「破産法265条(詐欺破産罪)」

詐欺破産罪の法定刑は「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金もしくはこの両方を併科」です。

過去に約8億円もの財産を隠そうとした破産者が詐欺破産罪で「懲役3年執行猶予5年」の有罪判決を受けた事例があります。このケースでは額が高額であったことや悪質であったことから、とても厳しい判決が下されました。

自己破産時に財産を隠す行為は免責許可がおりないどころか、最悪の場合、懲役刑となる重罪です。裁判所や破産管財人の徹底した調査によってかならずバレるので、嘘や申告漏れのないようにしてください。

参考:裁判所|裁判例「事件番号 平成27年特(わ)第1454号」

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自己破産時の調査でやってはいけない4つの行為

先述した通り、自己破産時に財産隠しがバレると、詐欺破産罪に問われ10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が課される可能性があります。また、免責不許可事由に該当し、借金の免除が認められなくなるかもしれません。

財産隠し以外にも、自己破産の調査時にやると不利益を被る行為があるので覚えておきましょう。調査時にやってはいけない行為は以下の4点です。

  • 財産の価値を下げる行為
  • 自己破産後の借金の借り入れ
  • 重要書類の偽造・隠滅や虚偽の説明を行う
  • 破産管財人の職務の妨害

それぞれ順番に解説していきましょう。

財産の価値を下げる行為

まず、財産隠しと同様に、財産の価値を下げる行為は債権者に不利益を生む行為です。

例えば、所有していた車を意図的に傷つけると、売却時の値段は大幅に下がってしまいます。すると、財産から変換される金銭の額が下がり、結果的に債権者へ配当される金銭が減少してしまうでしょう。

財産隠しや、財産の第三者の譲渡と並んで、免責不許可事由に該当する行為であると覚えておいてください。

第二百五十二条 一項 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
引用元 e-GOV 法令検索

自己破産後の借金の借り入れ

自己破産の申し立てをした後に、借金の借入を行うのも免責不許可事由に該当する可能性があります。

基本的に債務者は、全ての借金が免除されると知って自己破産を行うはずです。そのため、自己破産の申し立て後に行った借金は、「返済されないと知りながら借り入れた」ものと考えていいでしょう。これは、債権者へ大きな不利益を被らせる非常に悪質な行為です。

そのため、「詐術による信用取引」という行為に該当し、借金の免除が受けられなくなる可能性があります。

第二百五十二条 一項 五号 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
引用元 e-GOV 法令検索

重要書類の偽造・隠滅や虚偽の説明を行う

自己破産手続きにおける、財産や業務に関する帳簿や書類の偽造・隠滅、裁判所の調査へ虚偽の説明を行った場合も免責不許可事由に該当します。

自己破産手続きでは、債権者へ金銭を配当もするため、破産人の財産や債務を正確に把握するのが非常に重要です。そのため、帳簿や書類などお金の動きを把握する書類を偽装するのは、破産手続きの調査を阻害することに繋がります。

また、借金した債権者名簿などを偽装するのも、債務状況の調査を阻害する行為です。また、破産手続きが進むと、裁判所からも様々な調査が行われます。その際に、虚偽の説明をしたり、調査を拒んで調査を阻害しないよう注意してください。

これら破産管財人や裁判所による調査を阻害するような、書類の偽造・隠滅・変造、虚偽の説明は免責不許可事由に該当するでしょう。

第二百五十二条 一項 六号 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
引用元 e-GOV 法令検索

第二百五十二条 一項 七号 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
引用元 e-GOV 法令検索

第二百五十二条 一項 八号 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
引用元 e-GOV 法令検索

破産管財人の職務の妨害

破産管財人の職務の妨害をして、調査を阻害した場合も免責不許可事由に該当します。

先述した通り、破産管財人は破産手続きにおける中心的な人物です。破産管財人によって申立人の財産が処分・管理される上、免責を認可するかどうかも判断されます。そのため、破産管財人の職務を妨害することは、そのまま破産手続きの妨害に繋がるのです。

具体的には、財産の引き渡しを拒んだり、書類を偽造したり、説明を拒むことは破産管財人の職務の妨害として見做されます。当然ですが、破産管財人へ暴力を振るったり、脅迫する行為は強要罪などの罪にも問われるので絶対にやめましょう。

第二百五十二条 一項 九号 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
引用元 e-GOV 法令検索

残したい財産がある場合は弁護士への相談を検討

自己破産を申し立てたいが、車や自宅など生活に直結する財産は残したいと考える方も多いでしょう。

一応、破産者の事情に配慮して、一定額の財産を自由財産(破産者が自由に管理できる財産)として扱える「自由財産拡張」という制度が存在します。ただし、自由財産拡張は財産や生活状況、破産管財人の意見を踏まえて裁判所から認めてもらう必要があり、認可されるのは非常に難しいといえるでしょう。

そのため、残したい財産がある場合は、弁護士へ相談するのが得策です。弁護士に依頼すれば、財産や債務の状況から、自由財産の拡張を行うことが以下に重要か、破産管財人に対して説明してくれます。自己財産拡張の判断には、破産管財人の意見が非常に重要になるので、拡張が認められる可能性が高くなるでしょう。

また、財産や収入などさまざまな視点を踏まえ、任意整理や個人再生など自己破産以外の手段も提案してくれるでしょう。例えば、個人再生ならば財産を残したまま、借金の減額が望めます。

財産を残したい方は、「自己破産しか手がない」と諦めず弁護士に相談することで、財産を残せる最適な債務整理の方法が見つかるかもしれません。

まとめ

今回「自己破産でどこまで調べられるのか?」についてお伝えしました。

自己破産で調べられることは「所有財産」「借金の内容」「免責に関すること」の3つです。いずれも徹底的な調査によって、何かを隠し通すことはほぼ不可能です。

財産を隠していた事実が発覚すれば、借金を0にすることができなかったり破産詐欺罪として厳しい処罰を受けたりすることになるでしょう。

どうしても残しておきたい財産があるかもしれませんが、それを隠そうとする行為は許されるものではありません。自己破産の現実に向き合い、生活再建を目指していきましょう。

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自己破産のよくある質問

自己破産では、何を調べられるのですか?

自己破産では「財産」「借金」「免責」の3つのことについて徹底的に調べられます。

自己破産時に申請を忘れてしまった財産があるのですが、どうしたらよいですか?

弁護士へ相談してすぐに対処しましょう。
このままにしておくと、後から知られたときに免責がおりなかったり、詐欺破産罪に問われる恐れがあります。
STEP債務整理「債務整理に力を入れるおすすめの弁護士を紹介」

自己破産前に名義変更しておけば、家や車の差押えを回避できますか?

自己破産前の名義変更は、免責不許可事由に当たり自己破産が失敗する恐れがあります。
そのため、自己破産前の名義変更は絶対にやめましょう。

生活にどうしても車が必要なのですが、自己破産で手元に残せませんか?

裁判所に「車を失うと生活に重大な支障をきたす」と判断される理由があれば、手元に残せる可能性があります。
ただし、その要件は非常に厳しいため、自己破産の実績が豊富な弁護士へ相談してみるとよいでしょう。
STEP債務整理「債務整理に力を入れるおすすめの弁護士を紹介」

自己破産で免責がおりないとどうなるのですか?

自己破産で免責がおりないと、借金の返済義務がなくなりません。
裁判費用などは戻ってこないので、自己破産したことが無駄となってしまいます。

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