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2024年10月現在

自己破産の管財事件・少額管財事件・同時廃止事件とは?

自己破産 同時廃止 管財事件

借金の返済が厳しくて、自己破産を検討しています。自己破産には3種類あると聞いたのですが、どういうものですか?

自己破産には「管財事件」「少額管財事件」」「同時廃止」の3種類があります。「管財事件」や「少額管財」は管財人が専任され、財産の調査・処分が行われます。「同時廃止」は、処分する資産がない場合などに、破産管財人を専任せず行う手続きになっています。

それぞれの手続きで違いはあるのでしょうか?

一番の大きな違いは、手続きにかかる費用と期間です。他の手続きに比べて、同時廃止は予納金がほとんどかからず、期間も短いため、申立人にとっては大きなメリットです。ただし、同時廃止になるかどうかは裁判所の判断によるので、不安があればまずは弁護士に相談してみるといいでしょう。

自己破産を検討している人の中には、管財事件や同時廃止など複数ある手続きでどう違いがあるのか、疑問に思う人もいるのではないでしょうか。

自己破産には「管財事件」「少額管財事件」「同時廃止」の3つの手続きがあります。どの手続きで進められるかは、申立人には選択できず、財産を一定以上所有しているかなど、申立人の状況により振り分けられます。

そこで、この記事では自己破産の手続きの振り分け基準や各手続きの特徴について、詳しく解説していきます。この記事を参考に自分がどの手続きなのか、確認してみてください。

ただし、各手続きの運用は裁判所によって違う場合もあるため、詳細は弁護士に確認することをおすすめします。自己破産に強い弁護士であれば、裁判所ごとの運用の違いも把握しているので、安心して手続きを任せられます。

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この記事でわかること
  • 自己破産には「管財事件」「少額管財事件」「同時廃止」の3つの手続きがある。どの手続きになるかは、申立人の状況により裁判所が選択し、申立人が選択することはできない
  • 管財事件は、自己破産の原則的手続きで、破産管財人が選任され資産の調査・処分を行う
  • 少額管財事件は、管財事件のうち借金関係が複雑でないなどの理由で手続きを簡略化したもの。費用・期間ともに管財事件よりも負担は少ないが、弁護士に依頼することが必須となる
  • 同時廃止は、財産を所有していることが明らかな場合に選択される。破産管財人は専任されず、手続きにかかる費用も2万円程度で済む
  • 自己破産手続きの振り分けは複雑であり、裁判所によって運用が異なることも多い為、弁護士に事前に確認することがおすすめ
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自己破産の種類は「同時廃止」「管財事件」「少額管財事件」の3つ

自己破産手続きは「管財事件」「少額管財事件」「同時廃止」の3種類に分類されます。

このうち、どの手続きとなるかは、申立人が選べるわけではなく、申立時点での所有資産などの状況によって手続きが決められます。

【自己破産の各手続きの違い】
管財事件 少額管財 同時廃止
条件 ・財産が20万円以上
・債権額が5,000万円以上または多数
・個人事業主若しくは法人代表者の場合
・免責不許可事由がある
・財産が20万円以上
・免責不許可事由がある
・代理人弁護士に依頼している
・財産が20万円以下
・免責不許可事由がない
費用 ・予納金:50万円~
・弁護士費用(依頼する場合):20万円~
・予納金:20万円~
・弁護士費用(必須):20万円~
・予納金:1~5万円程度
・弁護士費用(依頼する場合):20万円~
期間 8ヶ月~1年 半年~8ヶ月 3ヶ月~6ヶ月

ここでは、それぞれの手続きの特徴について解説していきます。

①自己破産の原則となる「管財事件」

管財事件は、自己破産の原則的手続きで、裁判所が専任した破産管財人が、申立人(自己破産を申し立てた人)の財産を調査・管理・換金し、債権者に配当(公平に分配)する手続きのことをいいます。

そもそも、破産手続きは自分の財産をすべて処分し返済しても、なお借金が返済できない場合に返済を免除する制度です。そのため、手続きでは破産者の収入状況や保有している財産を調査して、本当に自己破産を認めてもいいのかを確認する必要があります。

しかし、この手続きをすべて裁判所が行うとかなりの負担となるため、これらの業務は裁判所が選任した破産管財人によって行われます。

この破産管財人が専任され進められる手続きを管財事件といいます。管財事件は破産手続きの基本形態となっており、自己破産の場合は原則的に管財事件として進められます。

個人の自己破産は、多くの場合、通常の管財事件よりも手続きが簡易で、手続き費用が少額となる「少額管財」という手続きで進められます。

また、分配するような財産がない場合は同時廃止事件として手続きが進められます。

管財事件と同時廃止は裁判所が状況を見て振り分ける

自己破産手続きが管財事件なのか同時廃止なのか、などの振り分けは申立人には選択することはできず、あくまで申立人の借金や収入・資産の状況などにより振り分けられます。

ではこの振り分けはどのように行われているのでしょうか。

先程もご紹介した通り、自己破産の原則的な手続きは管財事件です。そのため、管財事件を行わず同時廃止手続きとなる場合について、自己破産の元となっている破産法で以下のように定められています。

【破産法216条】
裁判所は、破産財団をもって破産手続きの費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続き開始の決定と同時に、破産手続き廃止の決定をしなければならない。

引用元:e-GOV 法令検索 平成十六年法律第七十五号 破産法

破産財団とは、申立人の所有する資産すべてのことを指します。つまり、申立人の所有する資産で破産手続きにかかる費用が支払えない場合は同時廃止となるということです。

ただし、免責不許可事由がある場合はその限りではありません。

免責不許可事由とは、借金の原因がギャンブルや浪費によるものであった場合など、免責が認められないケースのことを指します。

もっとも、免責不許可事由がある場合であっても、即座に認められないのではなく、状況によって「裁量免責」という制度で免責が認められることも少なくありません。

免責不許可事由がある場合は、裁量免責を適用してもよいかを判断する必要があリます。裁量免責の判断には、破産管財人による調査が必要なため、同時廃止とならず、管財事件になる場合がほとんどです。

管財事件と同時廃止の振り分けの基準

次に、管財事件と同時廃止が具体的にどのような基準で振り分けられているかを見ていきましょう。

具体的な基準は裁判所によって異なりますが、一般的には以下の基準に該当する場合は管財事件に振り分けられます。

  • 20万円以上の財産、99万円以上の現金がある場合
  • 免責不許可事由がある場合
  • 債務額が多い場合
  • 個人事業主、法人代表者の場合
20万円以上の財産、99万円以上の現金などの資産がある場合

申立した段階で資産が20万円以上ある場合には管財事件として取り扱われます。

具体的には以下のような場合などに管財事件となります。

  • 99万円以上の現金または預貯金がある
  • 評価額が20万円以上の自動車を所有している
  • 評価額が20万円以上の不動産を所有している
  • 生命保険の解約返戻金が20万円以上ある

ただし、不動産の場合は住宅ローンがあり、オーバーローンであることが明らかな場合は同時廃止となる場合もありますので、弁護士に確認するようにしてください。

免責不許可事由がある場合

免責不許可事由に該当する場合は、財産があるかどうかにかかわらず管財事件となる可能性が高いです。

破産法では免責不許可事由がない場合には同時廃止となる旨の記載はありません。しかし、実際は免責不許可事由があるかどうかの調査も、破産管財人によって行われています。

つまり、破産手続き費用を支払う資産がなかったとしても、免責不許可事由がある場合は調査が必要となるため、管財事件が選択されるというわけです。

免責不許可事由の具体例は以下の通り。

  • 不当な破産財団価値減少行為
    手続き中に財産を隠したり、誰かに譲るなど不当に財産を減らす行為
  • 不当な債務負担行為
    自己破産することを前提にわざと借金をするなどの行為。例えば自己破産直前にクレジットカードで高額な買い物をするなど。
  • 不当な偏波行為
    自己破産直前や手続き中に、特定の債権者にだけ返済を行った場合
  • 浪費または賭博その他の射幸行為
    株やFXなどの投資、ギャンブルなどで借金をした場合
  • 詐術による信用取引
    借金を完済できないことがわかっているのに、借入をした場合
  • 業務帳簿隠滅等の行為
    財産状況などに関連する帳簿や物件を隠した場合
  • 虚偽の債権者名簿提出行為
    意図的に債権者を名簿に載せない、若しくは、架空の債権者を名簿に載せた場合
  • 裁判所への説明拒絶・虚偽説明
    破産手続中に、裁判所からの説明の求めに応じない、または虚偽の説明をした場合
  • 管財業務妨害行為
    破産管財人の業務を違法な行為、若しくは、正当でない方法で妨害した場合
  • 7年以内の免責取得等
    7年以内に免責を受けていたり、それに準ずる法律の保護を受けた場合
  • 破産法上の義務違反行為
    破産手続きにおいて、事業説明や財産開示などの義務を怠った場合
債務額が多い場合

自己破産を申し立てた時点で、借金額が大きい場合や借入先が多い場合は、管財事件として扱われることが多くなります。

資産をほとんど所有していない場合、多額の借金をすることは難しいのが一般的です。

そのため、借金が多い場合は、申立の際に申告された財産が少ない可能性があるため、財産の調査が必要と判断され、破産管財人が選任により管財事件として取り扱われます。

原則的な基準が設定されているわけではありませんが、債務額が5,000万円以上ある場合は管財事件になると言われています。

個人事業主、法人代表者の場合

個人事業主や法人代表者の場合も、管財事件として扱われることが一般的です。

個人事業主や法人代表者であっても、管財事件と同時廃止はあります。しかし多くの裁判所で、同時廃止は例外的な場合に限られます。

個人事業主や法人代表者の場合は、通常よりも借金や資産所有に関して複雑になっている場合が多いのが現実です。そのため、調査を十分に行わず免責することで、債権者(お金を貸した側)に不利な判断をしてしまう恐れが出てきます。

そのため、より適切な判断を行うため、管財事件とするのが一般的です。

ただし、個人事業主や中小企業代表者の場合は、管財事件でも予納金などの費用が安く済む少額管財事件として扱われることが多くなります。

ただし、非事業者と異なり破産管財人による調査はより精密に行われるため、より詳細な使用や書類の提出を求められ、厳格な調査が行われることを認識しておきましょう。

管財事件の予納金は50万円程度

管財事件は、破産管財人の専任、財産の調査・配当が必要となるため、申立した人にも費用や労力の負担がかかります。

最も負担となるのが、裁判所に手続き開始を認めてもらうために収める「予納金」です。予納金は弁護士に依頼せずに申し立てた場合、50万円程度が必要です。また管財事件の手続き期間は通常、半年~1年ほどと長い期間がかかることも特徴です。

もし予納金を払えない場合は「少額管財」で手続きを行うことも可能です。

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管財事件のデメリット

管財事件となった場合は、自己破産手続きのデメリットに加え、以下のような制限を受けることになります。

  • 資産の管理が破産管財人に移動する
  • 申立人宛の郵便物が管財人に転送される
  • 引っ越しや長期の旅行が制限される
①資産の管理が破産管財人に移動する

管財事件になると、所有している資産の所有権は破産管財人に移動します。

自己破産の場合、所有している資産は原則として処分する必要があります。

そのため、管財事件の場合、申立人の所有資産のうち、換金する価値のあるものについては破産管財人が管理し、処分方法を決定します。

処分方法や処分する資産などを決めるのはすべて破産管財人のため、申立人本人の希望は考慮されません。つまり、所有権は申立時点でなくなると考えておいて良いでしょう。

ただし、所有している資産の一切を処分する必要はなく、生活に必要な必要最低限の財産は「自由財産」として残すことができます。主に自由財産として定義されているものは以下です。

  • 破産手続き開始後に取得した財産
  • 債務者の生活必需品などの差押禁止財産
  • 99万円以下の現金

その他にも地方裁判所によっては自由財産の取り扱いになるものもありますので、事前に弁護士等に相談し確認しておくことをおすすめします。

②申立人宛の郵便物が管財人に転送される

管財事件となると、申立人本人宛に届く郵便物はすべて破産管財人に転送され、内容が確認されます。

破産管財人は、申立人の資産の状況を正確に把握する必要があります。申立人が申立時に財産目録で申告した財産以外の財産を持っていないかをチェックするため、郵便物の内容を確認します。

ただし、郵便物の転送は本人宛のものに限られており、家族のものが転送されることはありません。また、転送の対象となるのは郵便物のみで、宅急便などは対象外となります。

③引っ越しや長期の旅行が制限される

管財事件での手続き中は、引っ越しや長期の旅行が制限されます。

自己破産では、申立人は債権者に十分な説明義務を尽くす必要があるとされています。この義務の履行のため、破産法では、居住地の制限の規定があります。

この場合の居住地とは生活の本拠地を指し、居住地を離れる場合には破産管財人の同意を得る必要があるとされています。具体的には、引っ越しや2泊以上の宿泊を伴う旅行や出張には許可が必要と考えておきましょう。

仮に、許可を得ずに移動した場合は、免責不許可事由に当たる可能性があるため、注意してください。ただしこれらの制限はあくまで手続き中のみに有効となるものです。手続きが終われば移動の制限はなくなります。

管財事件の手続きの流れ

管財事件は主に以下のような流れで手続きが行われます。

  1. 弁護士との契約
  2. 受任通知
  3. 債権・資産・家計状況調査、過払い金返還請求
  4. 免責に関する調査
  5. 破産手続き申立
  6. 裁判官と面接
  7. 破産手続き開始決定
  8. 破産管財人の専任・予納金納付
  9. 破産管財人との打ち合わせ
  10. 破産管財人による財産調査と処分手続き
  11. 債権者集会
  12. 債権者に対する配当
  13. 免責審尋
  14. 免責許可決定

自己破産手続きの具体的な流れについては「自己破産の仕方と手続きの流れをわかりやすく解説!」の記事で紹介しています。興味のある方は合わせてこちらもご覧ください。

①弁護士との契約

自己破産手続きを弁護士に依頼する場合は、まず弁護士と委任契約を締結します。

弁護士に依頼する場合は、着手金や成功報酬等で費用が必要となります。これらの費用は分割払いや後払いに応じてくれる事務所も増えていますので、支払いが厳しい場合は相談してみるといいでしょう。

②受任通知

弁護士と契約すると、債権者に対して弁護士から受任通知が送付されます。

受任通知は弁護士が債務者(お金を借りた側)の代理人として、自己破産等の債務整理手続きを行うことを通知するもので、この受任通知を受け取った債権者は、受任通知の受取以降、借金の取り立てができなくなります。

また受任通知と合わせて債権者に債権金額・内容の届け出、取引履歴の開示を請求します。

③債権・資産・家計状況調査、過払い金返還請求

申立者から提出された債権届や、通帳などの書類を元に債権・資産・家計状況を調査します。また、債権者から開示された取引履歴をもとに、過払い金がある場合には返還を請求します。

自己破産の場合は、資産を処分する必要がありますがすべてが対象となる訳ではありません。

資産の状況を詳しく調査し、処分する必要のある資産と処分しなくていい資産を把握します。

④免責に関する調査

管財事件の場合は免責に関する調査も行われます。

自己破産には免責不許可事由が設定されており、これらに当てはまる場合は免責が許可されません。そのため、自己破産は資産調査とともに、免責不許可事由があるかどうかを調査します。免責不許可事由がある場合は、「裁量免責」によって免責が許可されるかどうかも含めて調査が行われます。

調査にあたっては弁護士から、免責不許可事由にあたる事実がないかの聞き取りがあります。

ここではすべてを正直に話すようにしましょう。生活改善に向けた反省や努力が見られれば、免責不許可事由があってもよほどのことがない限りは裁量免責による認可が得られます。

それよりも、嘘をついていたことが後で明らかになれば、裁量免責を受ける余地すらなくなってしまいかねません。必ず正直に話をするようにしてください。

⑤破産手続き申立

調査が終了したら、自己破産の申立書を作成し、裁判所に提出することで申し立てします。この際、官報公告費として予納金を納付する必要があります。

⑥裁判官と面接

また、裁判所によっては、申立当日に裁判官と代理人弁護士との面接が行われます。

面接では、申立の内容を提出し、自己破産手続きが管財事件(少額管財事件)と同時廃止のどちらになるかを決められます。

また、場合によっては債務者に対する審尋が行われる場合があります。審尋は、破産手続き開始原因があるか等の調査を目的に行われ、債務者本人に対して質問が行われます。

⑦破産手続き開始決定・破産管財人の専任

面接が完了すると裁判所によって、破産手続き開始決定が行われ、破産管財人が専任されます。基本的に破産管財人は裁判所の管轄地域内の事務所の弁護士が専任されます。

破産手続き開始決定により、債務者の資産は自由財産を除きすべて破産管財人に管理が移りますので、実質的に所有権を失うことになります。

⑧予納金納付

破産管財人が専任されると、速やかに破産管財人の報酬である「引継予納金」を支払うことになります。この引継予納金は20万円~50万円程度が相場で裁判所によって異なります。

⑨破産管財人との打ち合わせ

破産管財人と、指定された日に打ち合わせを行います。打ち合わせは、代理人弁護士の事務所、若しくは、破産管財人の事務所で行われます。

打ち合わせでは債務者の財産や収入の状況、免責不許可事由の有無に関して確認するため、いくつか質問されますので、しっかり説明しましょう。

⑩破産管財人による財産調査と処分手続き

破産管財人によって、財産を調査した上で処分手続きが進められます。

この過程で、債務者は破産管財人に協力することが求められます。理由なく協力しなかったり、嘘をついたりすると、免責不許可事由に該当する場合があるので注意しましょう。

⑪債権者集会

債権者集会は、破産管財人が債権者に財産状況や手続きの進行状況について説明を行う場です。

1回目の債権者集会は、申立から3ヶ月後に裁判所で開催されます。この債権者集会には債権者が参加できますが、金融機関が債権者の場合出席することはほぼないでしょう。

⑫債権者に対する配当

配当ができる資産がある場合は、債権者に配当する期日が設定され、配当が実施されます。

⑬免責審尋

債権者集会の手続きが完了すると、免責審尋が行われます。

免責審尋は、破産管財人や債権者から免責を与えていいかについて意見が述べられます。場合によっては、債務者にも、免責や今後の更生に関して意見を求められることもあります。

⑭免責許可決定

免責審尋後1周間程度で、裁判所から最終的な免責の可否についての決定がなされます。この決定内容は、官報に掲載されることになります。

そして、官報掲載から2週間以内に債権者から異議がない場合、免責が決定し借金返済義務が免除されます。

②予納金負担が少ない「少額管財」

少額管財とは、管財事件において収めるべき予納金の金額を、大幅に少額にする運用を指します。

管財事件では、裁判所から専任された破産管財人により、財産調査や管理・処分などの破産手続きを行います。この手続きに対し、破産管財人には報酬が発生し、その報酬は申立人の予納金に含まれています。

つまり、業務が複雑になったり、期間が長くなったりすれば、報酬額も比例して大きくなるため、予納金は高額になっていきます。

管財事件の場合、この予納金は50万円以上と高額となっており、一括で支払えない場合も少なくありません。

そうなると、自己破産手続きの目的の1つでもある申立者の経済的更生という目的を図れません。そこで、そういった場合でも自己破産を利用できるよう、少額管財という制度が運用されています。

ただ、この少額管財は、法律で規定されておらず、あくまで裁判所の運用です。地方裁判所によっては少額管財の運用をしていないところもあるため、事前に弁護士に確認する必要があるでしょう。

少額管財の予納金は20万円程度

少額管財での予納金は20万円程度です。通常の管財事件の予納金が50万円以上ですので、大幅に減額されています。

ただし、少額管財の運用は、弁護士に依頼した場合にのみ適用されます。弁護士に依頼した場合にかかる費用は自己破産の場合、概ね20~30万円ほどが多い為、手続き全体にかかる費用は大きく変わりません。

ただし、弁護士費用は分割や後払いに対応している事務所も少なくないので、一括で支払う必要がある予納金に比べると負担は少なくなるといえるでしょう。

手続きは簡略化・短期化される

少額管財では予納金が少額に抑えるため、管財手続きに比べ処理が簡素化されています。

そのため、手続き期間も、申立から2~5ヶ月程で手続きが終了します。通常の管財事件が6ヶ月~1年程かかるので、かなり短縮されているといえるでしょう。

自己破産における予納金は、大部分が専任された破産管財人への報酬です。

予納金を低く抑えるということは、それだけ手続きを簡素化する必要があるので、結果的に複雑な手続きのないものになります。

弁護士への依頼が必須になることも特徴

先程ご紹介した通り、少額管財は弁護士に依頼し、依頼人の代理人となったときのみ利用できる点が特徴です。

少額管財の場合は、手続きを簡易化・迅速化することで、破産管財人の報酬が大半を占める予納金を抑える運用です。そのため、弁護士が代理人になることで、本来、破産管財人が行う手続きの一部を弁護士が申立前に行うことによって、手続きをより迅速化・簡易化する狙いがあります。

そのため、代理人弁護士を立てず自身で申し立てる場合は少額管財は適用されません。

③財産がない場合に行われる「同時廃止」

同時廃止は、破産手続きの開始と同時に手続きを廃止(終了)する手続きのことを言います。

先程説明したとおり、破産手続きは申立者の財産を換金して債権者に公平に配ることにあります。

つまり、財産がないことが明らかなのであれば、時間とコストをかけて破産管財人を専任することは無意味になるということです。

そのため、配当すべき資産がないことが明らかな場合には、破産手続きの開始と同時に破産手続き廃止決定がでることになります。

同時廃止の手続き費用は2万円程度

同時廃止は破産管財人が専任されず、手続きも即時に終了するため申立費用以外に費用がかかりません。申立費用は概ね2万円程度です。

また、同時廃止の場合は、破産管財人による調査や処分などの手続きも必要ないため、手続き期間も短くて済みます。

ただし、裁判所によっては同時廃止でも管財事件と同様の予納金の運用をしている場合もあるため、事前に確認しておくようにしてください。

デメリットは免責不許可事由がある場合は利用できないこと

免責不許可事由がある場合、例え財産を所有していないなど他の要件に当てはまっていたとしても、同時廃止は原則的に利用できません。

免責不許可事由とは、破産手続きによって借金の免責を与えるに不適当な理由のことを指します。

具体的には申立の内容の虚偽があることや、借金の理由がギャンブルや浪費の場合などが免責不許可事由に当たります。

免責不許可事由がある場合、裁量免責によって免責を認めるかを判断する必要があります。そのため、破産管財人による調査が必要になってくるというわけです。

自己破産は弁護士にご依頼ください

自己破産手続きを検討しているなら、弁護士へ依頼することをおすすめします。

自己破産手続きは管財事件・同時廃止の振り分け基準を含めて条件が非常に複雑です。さらに自分が免責不許可事由にあたるかも判断しなくてはなりません。

加えて、自己破産の運用については、裁判所によって違いがあり、例えば少額管財の運用をしていない地域もあります。

弁護士に依頼すればそれなりの費用がかかってしまいますが、これらの判断を適切に行ってもらえるだけでなく、スムーズに免責がもらえるように支援もしてもらえます。

手続きに関する負担を減らせる

自己破産はどの手続きになったとしても、申立のために準備しなければならない書類は多岐に渡ります。

預金通常や不動産登記簿などの自分の財産を証明するものや、給与明細などの収入証明なども必要ですし、陳述書や財産目録など作成が必要なものも多くあります。

弁護士に依頼すれば、これらの書類の取得や作成をリードしてもらえるため、効率的に準備を進めることが可能です。作成には法的な知識や経験が必要な場合も多くあるので、弁護士に依頼する大きなメリットといえるでしょう。

家族や知人に知られることも配慮してもらえる

弁護士に依頼すれば、家族や知人に自己破産の事実を知られることも配慮してもらえます。

自己破産を検討している方の中には、家族や知人に知られたくないという方も多いはずです。弁護士に依頼すれば、裁判所や債権者への対応の多くを弁護士が代理で行ってくれます。

また、郵送物があった場合でも送付に配慮してもらえるため極力知られない状態で手続きを進められるでしょう。

より簡便的な手続きになりやすい

弁護士に依頼することで、より簡便的な手続きになりやすく、労力や費用面でも負担が軽減できる点がメリットです。

弁護士が代理人となることで、申立時点での財産や収入の申告の信頼性が高まりますので、同時廃止も認められやすくなります。また、財産を所有している場合でも弁護士が介入していることで費用負担の少ない少額管財が認められることも多くあります。

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まとめ

自己破産の手続きは、申立者の状況により、「管財事件」「少額管財事件」「同時廃止」に振り分けられます。

各手続きは裁判所に振り分けられるため、選択することはできませんが、手続き内容や期間、費用などが大きく異なるため、どのような手続きかを知っておくことが重要です。

振り分けの基準は原則的なものはありますが、実際には複雑です。加えて、各裁判所でも運用が異なっていますから、一般の人が正確に判断するのは簡単ではなく、専門家による判断が必要になるでしょう。

また、管財事件になる場合であれば、弁護士に依頼することで少額管財事件として、手続き費用を抑えることも可能です。

自己破産を検討しているのであれば、まずは弁護士に相談し自分がどの手続きになるか確認し、よりスムーズに自己破産を進められるよう準備しておくことをおすすめします。

自己破産の同時廃止と管財事件の違いについてよくある質問

同時廃止事件とはどのような手続きですか?

同時廃止は、財産を所有していないことが明らかな場合に選択されます。破産管財人は選任されず、手続きにかかる費用も2万円程度で済みます。

管財事件とはどのような手続きですか?

管財事件は自己破産の原則的手続きで、破産管財人が選任され資産の調査・処分を行います。また少額管財事件は、管財事件のうち借金関係が複雑でないなどの理由で手続きを簡略化したものです。費用・期間ともに管財事件よりも負担は少ないですが、弁護士に依頼することが必須となります。

管財事件と同時廃止事件の振り分けの基準は?

一般的には以下の基準に該当する場合は管財事件に振り分けられます。
・20万円以上の財産、99万円以上の現金などの資産がある場合
・免責不許可事由がある場合
・債務額が多い場合
・個人事業主、法人代表者の場合

同時廃止事件と管財事件どちらになるかを債務者の希望で選ぶことは可能ですか?

同時廃止事件と管財事件どちらになるかを、債務者の希望で選択することはできません。債務状況や資産状況から最終的に裁判所が判断することになります。

自分が同時廃止事件になるか管財事件になるか、自己破産の申立て前に知ることはできますか?

債務状況や資産状況から同時廃止事件と管財事件どちらになるか、ある程度予測することはできますが、実際にどちらの手続きで処理することになるかは裁判所が判断するため、申立て前に100%正確に知ることはできません。申立後に改めて調査した結果、申立て前の予測とは違う手続きになる可能性もあります。
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更新日 : 2024年10月01日
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