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【自己破産の種類を完全解説】管財事件と同時廃止事件の違いとは?

自己破産の手続きには、「同時廃止事件」と「管財事件」、また管財事件のなかでも費用や手続きの負担をおさえられる「少額管財事件」があります。

破産手続きを進めるうえでは、それぞれの特徴や手続きの違いを把握しておくことが大切です。

どの手続きで自己破産を進めるかは裁判所が決定しますが、同時廃止事件と管財事件では大きな違いがあります。

同時廃止事件と管財事件の違い
同時廃止事件 管財事件
判断基準(東京地裁の場合) 処分する財産がない ・33万円以上の現金を保有している
・20万円以上の価値の資産を保有している
・個人事業主や法人代表者である
・免責不許可事由がある
破産管財人 選任しない 選任する
裁判所に支払う費用 3万円程度 20万円~50万円
免責までの期間 2~3カ月 10~12カ月

自己破産の手続きは、原則として管財事件で進められますが、処分する財産がないことが明らかな場合、同時廃止事件として処理されます。

同時廃止事件では、破産手続き開始決定と同時に破産手続き廃止(終了)の決定がされるため、管財事件と比べ費用も時間もかかりません。

一方管財事件では、公正中立の立場から債務者の財産を管理し、債権者に平等に割り当てる必要があるため、裁判所が破産管財人を選任します。

そのため、同時廃止事件と比べ費用や免責決定までの期間がかかりやすいだけでなく、財産の処分権が破産管財人に移行するため、破産手続き中、申立人(破産者)は次のような制限を受けます。

  • 自分の財産を自由に使用、処分できない
  • 手続き終了までは裁判所の許可なく引越しできない
  • 郵便物が破産管財人に転送される
  • 一部の職業や資格に制限がかかる

一定の財産を保有するため管財事件として進められることは仕方ありませんが、費用や手続きの負担を考えた場合、できるだけ管財事件にしないことがポイントになります。

そのためには特定の債権者への返済を優先しないなど注意すべきこともあり、自己破産に精通した弁護士や司法書士に相談することがおすすめです。

弁護士に依頼せず個人で進める場合、破産手続きに時間がかかりやすいため管財事件に振り分けられる可能性があります。

もっとも、弁護士に依頼したくても費用を準備することが難しい場合もあるでしょう。

その場合、弁護士費用の分割払いに対応している法律事務所を選ぶ、あるいは収入や資産の状況によっては法テラスを利用することが考えられます。

この記事では、自己破産の手続きにおける「同時廃止事件」と「管財事件」について、それぞれの判断基準や特徴の違いについて解説します。

手続きの流れや弁護士費用の準備が難しい場合の対処法も紹介しますのでぜひ参考にしてください。

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自己破産の手続きには2種類がある

自己破産の手続きには「同時廃止事件」と「管財事件」の2つの手続きがあります。最初に、それぞれの特徴について解説します。

  • 自己破産における同時廃止事件|処分する財産が全くない場合の手続き
  • 自己破産における管財事件|処分する財産が一定以上ある場合の手続き

自己破産における同時廃止事件|処分する財産が全くない場合の手続き

自己破産とは、借入金を返済できなくなった場合に、裁判所に申し立てることで税金などを除き借金をゼロにする手続きです。

自己破産の手続きは、「破産手続き」と「免責手続き」に分けることができます。

・破産手続き:財産を処分(現金化)してお金を借りていた債権者に配当する手続き

・免責手続き:残った借金(債務)の支払いを免除してもらう手続き

もっとも、破産事件のなかには債務者に処分する財産がないケースも多く、その場合、破産手続きをしても債権者に配当・返済するお金はありません。

このような場合に取られる手続きが「同時廃止事件」です。

破産法216条第1項では、「裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない」と定めています。

ここで言う「破産手続廃止」とは、破産手続きを終わらせることです。

このように破産手続きの開始と同時に破産手続きを終了させることから「同時廃止事件」といいます。

同時廃止事件では、破産管財人(破産者の財産を管理・処分する弁護士)を選任する必要がなく、通常は書類審査だけで終わるため、管財事件と比べて費用や手間がかかりません。

裁判所によって異なりますが、同時廃止事件の予納金(裁判所に納める費用)はおよそ1~5万円です。

ただし、財産が多少なりとも残っている場合や免責不許可事由がある場合は、同時廃止事件を利用できません。

免責不許可事由とは、ギャンブルで借金を作ったなど、債務者の返済義務をなくす(免責)ことが認められなくなる事情です(破産法252条第1項)。

自己破産における管財事件|処分する財産が一定以上ある場合の手続き

一方、破産者に一定の財産があったり、免責不許可事由にあたる場合に取られる手続きが「管財事件」です。

法人の破産や法人の代表者の破産では、必ず管財事件として進められます。

破産管財人の選任が必要となる

管財事件では裁判所が選任した破産管財人が指定され、債務者が有する財産の管理・処分権は破産管財人へ移行します。

破産管財人は、破産者と債権者の間に入り債務者の財産を調査したうえで現金化し、債権者へ弁済、配当を行います。

自己破産では、債務者にとって抱える借金をすべて免除できるメリットがある一方、債権者に対し、債務者が所有する財産を平等に配当しなければなりません。

このとき返済する約束で借りたお金を返さずに、債務者だけが一方的に利益を得るのは適切ではありません。

そのために、債務者と債権者の利益を調整する必要があり、裁判所から選ばれた中立の立場である破産管財人が、債務者の財産を調査・処分し、債権者への配分を行うわけです。

費用の負担が大きくなる

管財事件では、同時廃止事件と比べ費用負担が大きくなります。

自己破産の手続きでは、予め裁判所に予納金を納めなければなりません。

予納金とは、自己破産や個人再生を申し立てるにあたり裁判所に支払う費用です。

予納金には、破産申し立ての手数料(収入印紙)や官報公告費、予納郵券(郵便切手)、破産管財人の報酬が含まれおり、東京地方裁判所の場合、予納金の算出基準は次のようになっています。

負債総額 予納金(法人以外の自然人)
5,000万円未満 50万円
5,000万円~1億円未満 80万円
1億円~5億円未満 150万円
5億円~10億円未満 250万円
10億円~50億円未満 400万円
50億円~100億円未満 500万円
100億円~ 700万円~

参照:東京地裁民亊第20部「破産事件の手続き費用一覧」

個人の場合、負債額は5,000万円未満のケースが多いですが、それでも70万円の予納金が必要です。

そのため、予納金の負担が重すぎて破産手続きができないことを防ぐため、次に紹介する「少額管財事件」制度ができました。

個人破産では、多くの場合予納金が抑えられる少額管財事件で処理されています。

少額管財事件|予納金の金額を大幅に減額できる運用

少額管財事件は、管財事件よりも予納金や手続きの負担が軽減された破産手続きです。

予納金の額を抑えられるため、個人や零細企業にも利用しやすい制度となっています。

少額管財事件における予納金は20万円程度となっており、通常の管財事件のような債務額に応じた基準もありません。

原則は一括払いですが、分割払いを認めている裁判所もあります。

手続きについても、通常の管財事件より簡略化されているため、迅速に手続きを進めることができます。

管財事件になるかどうかの判断基準

管財事件と比べて費用や手続きの負担を抑えられる同時廃止事件ですが、どちらの手続きで進めるかは裁判所が判断します。

ここでは、管財事件になるかどうかの判断基準について解説します。

  • 33万円以上の現金または20万円以上の価値のものを保有している
  • 個人事業主や法人代表者である
  • 免責不許可事由がある

33万円以上の現金または20万円以上の価値のものを保有している

管財事件になるかは保有する現金や財産によって決まります。

その基準は裁判所によっても異なり、東京地方裁判所の場合、現金33万円以上または20万円を超える資産があれば管財事件になります。

20万円を超える資産とは次のようなものです。

  • 預金
  • 生命保険の解約返戻金
  • 賃金・報酬
  • 貸付金・売掛金
  • 車・バイク
  • 過払い金不動産
  • 不動産など

20万円以上の価値があるかは個々の財産ごとに判断され、全財産の合計が20万円を超えるかどうかではありません。

そのため保険の解約返戻金が10万円と15万円の価値のバイクを保有する場合でも、管財事件ではなく同時廃止事件となります。

なお、申告されている財産額が20万円以下でも、実際には20万円を超える資産があるのではないかとして調査が必要と判断された場合、管財事件となる可能性があります。

個人事業主や法人代表者である

管財事件の対象となる一定の財産がない場合でも、個人事業主や法人代表者は管財事件となる可能性が高くなります。

これは、個人事業主や法人代表者は、一般の会社員などと比べ事業においてさまざまな財産を扱うためです。

経理の処理などを通じて違法に財産を隠している可能性もあるため、調査に慎重を期すため管財事件となります。

例えば、過去に特定の債権者にのみ支払いをしている場合などは、調査の必要があると判断され管財事件になることがあります。

また、法人の破産案件は管財事件となります。財産がなくても破産手続きのために予納金が必要となるため注意が必要です。

免責不許可事由がある

免責不許可事由があると、裁判所はそのまま免責許可の決定をすることができず、管財事件となる可能性が高くなります。

破産法252条第1項に規定されている免責不許可事由のうち、実務上問題となりやすいものとして以下のものが挙げられます。

免責不許可事由 内容・具体例
不当な破産財団の価値減少行為(同条同項1号) 債権者を害する目的で、破産財団に属すべき財産を隠匿、損壊したり、第三者に廉価販売するなど債権者に不利益となる処分をした場合など
著しく不利益な債務負担行為・処分行為(同条同項2号) 返済の目途が立たない債務者がヤミ金業者から借り入れを行った場合やクレジットカードで新幹線のチケットなどを購入し、購入価格より安い価格で販売した場合(換金行為)など
非義務行為についての偏頗行為(同条同項3号) 支払い不能状態に陥っているときに、特定の債権者(返済時期の約束がない親族からの借り入れなど)に対して、全額返済する行為など
浪費、賭博その他射幸行為による財産減少行為・債務増大行為(同条同項4号) 過度な飲食や買い物、ギャンブルなどで著しく財産を減少させる、あるいは過大の借金を負担する行為など
詐術による信用取引(同条同項5号) 収入に対して返済が困難となる借金を抱えているにもかかわらず、それまで取引のなかったクレジットカード会社に虚偽の収入や氏名、借入金の申告をし買い物をする場合など
虚偽の債権者名簿の提出(同条同項7号) すべての債権者を記載しなければならない債権者名簿(債権者の一覧表)について、虚偽の債権者名簿を提出した場合など(過失により債権者の記載が漏れていた場合などは免責不許可事由には該当しません)
説明義務違反(同条同項11号) 裁判所の調査に対して説明を拒否したり、虚偽の説明をした場合など。破産申立書や財産目録に虚偽の記載をした場合も含まれます
再度の免責許可の申立て(同条同項10号) 過去に免責許可決定を受け、その免責許可決定の確定日から7年以内に再度免責許可の申立てをした場合

管財事件になった場合の4つの制限

破産手続きにおいて管財事件となった場合、申し立てをした破産者は、いくつか生活が制限されます。

ここでは4つの制限について解説します。

  • 自分の財産を自由に使ったり処分できない
  • 手続き終了までは裁判所の許可なく引越しができない
  • 郵便物が破産管財人に転送される
  • 一部の職業や資格に制限がかかる

自分の財産を自由に使ったり処分できない

自己破産が管財事件に振り分けられると、債務者が有している財産の管理処分権は破産管財人へと移行します。

そのため、債務者は自分が所有する財産でも、勝手に売却するなど処分できません。

また、財産を処分する方法についても、破産管財人は破産者の意見に左右されることなく処分できます。

もっとも、車などどうしても必要な財産がある場合は、破産管財人に自由財産拡張の申し立てを行うことで、利用が認められる場合があります。

手続き終了までは裁判所の許可なく引越しができない

破産手続き中は、原則として自由に引越しできなくなります。

事前に裁判所の許可を得られれば引越しすることも可能ですが、引越し理由が正当なものでなければ裁判所の許可は下りず、引越しできないケースも少なくありません。

もっとも、破産手続きが終了すれば自由に引越しできます。

郵便物が破産管財人に転送される

破産手続中は、破産者宛の郵便物が破産管財人に転送されます。

これは、債務者より先に破産管財人が郵便物を確認することで、申告していない財産や債権者はないか(財産隠し)、破産手続き上問題となるやり取りがないかなどを確認するためです。

郵便物の中身は開封され、申告していない財産があっても、のちのち判明してしまうため調査の際に全て包み隠さず伝えるようにしましょう。

なお、公共料金の支払いや携帯電話・通信費など、迅速に確認する必要がある郵便物は、破産管財人と相談の上直接受け取れるものもあります。

一部の職業や資格に制限がかかる

破産手続きの間、一部の職業や資格に制限がかかります。

その間は、休業したり転職したりなどの対応が必要となるため、破産手続きが開始される前に仕事をどうするか考えておくことが必要です。

制限の対象となる職業や資格は次のとおりです。

  • 士業(弁護士や税理士、公認会計士など)
  • 役員・取締役
  • 金融関係(貸金業者や生命保険募集人など)
  • 公務員(国家公安委員会の委員など)
  • 警備業
  • 探偵業
  • 種類の製造免許など

通常、職業・資格の制限を受けるのは 「破産手続きの開始決定を受けて復権を得ない間」です。

復権とは、自由に仕事につける権利を回復することで、多くの場合は裁判所による免責許可決定が確定すれば復権します。

【種類別解説】自己破産手続きの流れ

次に、自己破産の手続きの流れについて解説します。

自己破産の申し立てまでは同時廃止事件も管財事件も手続きは変わりませんが、それ以降に違いがあります。

  • 申立てまでは共通の手続きになる
  • 【同時廃止事件】申立て後の流れ
  • 【管財事件】申立て後の流れ

申立てまでは共通の手続きになる

自己破産の申し立てまでは、同時廃止事件、管財事件とも次のような手続きになります。

  1. 弁護士に相談し・依頼する
  2. 弁護士が受任通知を送付する
  3. 必要書類を作成する
  4. 自己破産の申し立てを行う

弁護士に相談し・依頼する

自己破産の手続きは、法律の専門家である弁護士に相談することからスタートです。

日本弁護士連合会の調査によると、およそ9割の破産事件で弁護士が代理人として選任されており、弁護士や司法書士の専門家が関与しない申し立ては、全体の0.73%(不明1.13%)と極めて少なくなっています。

弁護士に依頼することで、現在抱えている債務の状況を正確に調査し、収入や資産状況を踏まえ自己破産で免責許可の決定を受けられるように動いてもらえます。

なお、司法書士にも依頼することは可能ですが、自己破産のすべての手続きをサポートでき、取り扱える訴額に制限がない(司法書士の場合140万円まで)弁護士への依頼がおすすめです。

参照:日本弁護士連合会・消費者問題対策委員会「2020 年破産事件及び個人再生事件記」

弁護士が受任通知を送付する

弁護士に自己破産の手続きを依頼すると、弁護士からすべての債権者宛てに受任通知が送付されます。

受任通知とは、弁護士が債務者の依頼人となったことを債権者に知らせ、以後の連絡は弁護士などにして欲しい旨を伝える文書です。

受任通知を送付することで債権者とのやり取りはすべて弁護士を通じて行うことになるため、執拗な支払い督促や取り立てから解放されます。

一方、債権者は、債務者が自己破産手続きの開始を検討していること、弁護士にその業務を依頼していることを知ることになります。

必要書類を作成する

弁護士と一緒に、裁判所への自己破産の申し立てに必要な書類を作成します。

一般的に、自己破産で必要となる書類は次のとおりです。

  • 申立書
  • 陳述書
  • 債権者一覧表
  • 自己破産申し立て前1カ月の家計簿など
  • 給与明細(数カ月分)
  • 源泉徴収票(1年分)
  • 財産目録
  • 預金通帳の写し(数年分)
  • 住民票
  • 車検証や不動産の権利証、保険証券、退職金見込み額証明書など状況によって必要となるもの

なかでも、破産申し立てに至った経緯を書かなければならない「陳述書」や詳細に財産を記載する必要がある「財産目録」を作成するのは一般の方では難しい場合があります。

弁護士に依頼することで、正確かつ確実に必要書類を作成でき、スムーズに手続きを進められるでしょう。

自己破産の申し立てを行う

必要な書類の準備ができれば裁判所に自己破産の申し立てを行います。

申し立てすると、まず担当裁判官との間で破産審尋の面接が行われ、自己破産に至った経緯や収入や資産状況などに関する調査が行われます。

破産審尋は、原則として、裁判官と弁護士、債務者本人で行われ、これから開始される自己破産手続きを管財事件とするのか同時廃止事件とするのか判断される重要な手続きです。

確実かつスムーズに免責許可の決定を受けるためにも、面接時に何を伝えるかなどについても弁護士と相談しながら進めることが大切になります。

【同時廃止事件】申立て後の流れ

同時廃止事件の申し立て後の流れは、次のとおりです。

  1. 破産手続き開始と同時に同時廃止を決定
  2. 免責審尋(面接)※同時廃止決定から約1週間後
  3. 免責決定※免責の審尋から約1週間
  4. 免責確定※免責決定から約1カ月後

同時廃止事件では、裁判所が書類を確認し問題なければ、破産手続き開始決定と同時に同時廃止を決定します。

同時廃止決定からおよそ1週間後に、提出した書類を基に裁判所で質疑応答が行われ(免責審尋)、問題がなければさらに1週間程度で免責決定となります。

そして、免責許可の決定からおよそ1カ月で免責が確定し、すべての債務が免除されるという流れです。

破産者は破産手続き開始前の状態になり、職業や資格制限はなくなり普通の生活に戻ります(復権)。

【管財事件】申立て後の流れ

次に、管財事件の申し立て後の流れですが、個人の場合、少額管財事件となるケースが多いため、ここではその流れについて紹介します。

  1. 破産管財人(候補)との三者面談
  2. 破産手続開始決定
  3. 引継予納金の支払い
  4. 債権者集会の開催
  5. 免責許可決定
  6. 免責の確定

破産管財人の候補となる弁護士と申立人(破産者)、依頼した弁護士の三者面談が行われます。

面談の結果、裁判所に債務の返済が困難と認められれば、破産手続き開始決定がなされます。

その後、破産管財人に最低20万円の予納金を支払わなければなりません(支払いは通常代理人弁護士が行う)。

そこから約3カ月で債権者集会が開かれます。

債権者集会は、破産管財人が財産や負債の状況と免責について裁判官や債権者に説明するための集会です。

参加者は、裁判官と破産管財人のほか、債権者、申立人、代理人弁護士ですが、個人の自己破産では債権者が参加することはほとんどありません。

債権者集会からおよそ1週間で裁判所から免責許可決定が下され、官報に掲載されます。

官報公告は、他の申立人が把握していない債権者が他にいないかを確認するために行われ、2週間以内に債権者から異議申し立てがなければ免責が確定します。

自己破産を管財事件にしないための3つのポイント

同時廃止事件と比べ管財事件は、費用がかかるうえ手続きに負担も大きくなるため、自己破産手続きはできるだけ管財事件にしないことが大切になります。

ここでは、自己破産を管財事件にしないための3つのポイントについて解説します。

  • 特定の債権者を優先して返済しない
  • 自己破産でなく個人再生を検討する
  • 弁護士に相談する

特定の債権者を優先して返済しない

複数の債権者がいるなか特定の債権者に弁済したり担保を提供する行為を「偏頗弁済(へんぱべんさい)」といい、破産申告に影響することがあります。

例えば、家族や親族、知人への返済、あるいは車のローン会社のみに返済するようなケースでは、偏頗弁済と気づかずに行ってしまうこともあるため注意しなければなりません。

偏頗弁済が行われると本来返済を受けられる債権者間で不平等が生じます。

偏頗弁済は免責不許可事由にあたる可能性があり、管財事件となるだけでなく破産免責が認められなくなる可能性があるため注意が必要です。

また、支払い不能や破産宣告の申し立て後に偏頗弁済に行った場合、破産管財人が否認権を行使すれば、偏頗弁済によって交付された財産は破産財産に復帰することになります(破産法167条第1項)。

自己破産でなく個人再生を検討する

管財事件の予納金を準備できない場合や著しい免責不許可事由がある場合、個人再生を検討する必要があります。

個人再生は、裁判所に申し立てを行い、借入金の総額を5分の1~10分の1に減額したうえで、おおむね3~5年間で分割返済する許可を受ける手続きです。

自己破産と異なり借金がゼロにはなりませんが、債務を大幅に縮小できるため継続的な収入があれば活用が可能です。

さらに、個人再生には住宅ローン特則という制度があり、居住する住宅の住宅ローンの返済だけ継続することができ、自宅を所有し続けることができます。

また、個人再生には自己破産のような免責不許可事由はありません。そのため、自己破産が難しい場合でも個人再生を利用できる可能性があります。

弁護士に相談する

管財事件にしないためには、弁護士に相談することも大切になります。

費用を節約するために自分で手続きすることも可能ですが、個人で手続きした場合、管財事件で進められます。

なぜなら、個人で手続きを進めると本来自己破産の手続きを迅速に行える同時廃止事件で時間がかかってしまうためです。

できるだけ費用や手続きの負担を抑えながら自己破産を進めるためにも、弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士に依頼する費用が無い場合の3つの対処法

最後に、弁護士に依頼する費用を準備できないときの対処法について解説します。

  • 低所得者の場合は法テラスを利用可能
  • 初回無料の法律事務所や無料相談窓口を利用する
  • 分割払いができる法律事務所を選ぶ

低所得者の場合は法テラスを利用可能

低所得者の方や失業中の場合は、法テラスを利用することが考えられます。

法テラス(日本司法支援センター)とは、国が設立した法的トラブルを解決するための総合案内所です。

弁護士や司法書士との無料法律相談のほか、一定の条件のもと費用の立て替えを利用できます。

立替制度を利用できる条件は、地域や住宅ローンの有無などで変わりますが、収入や資産が一定基準以下であり、審査に通れば弁護士費用を立て替えてもらうことが可能です。

また、生活保護を受けている場合は受給中の返済は猶予され、自己破産がすべて終了した後も生活保護を受給している場合、返済の免除の申請ができます。

参照:日本司法支援センター 法テラス

初回無料の法律事務所や無料相談窓口を利用する

弁護士に相談する場合、通常は30分5,000円程度の相談料が必要です。

もっとも、自治体が主催している弁護士相談や地域の弁護士会の相談を利用することで、無料相談することもできます。

また、なかには初回の相談料を無料としている弁護士事務所もあるので、そういった弁護士事務所を探してみましょう。

分割払いができる法律事務所を選ぶ

自己破産にかかる費用には裁判所費用と弁護士費用があり、手続きによって異なりますが20~80万円程度が相場となります。

弁護士費用のうち、着手金については通常一括で支払うことが原則ですが、分割払いに対応している弁護士事務所も少なくありません。

自己破産を検討している人はまとまった費用の支払いが厳しい人も多いため、債務整理に注力している弁護士事務所など分割対応している事務所を探してみましょう。

まとめ

自己破産の手続きには、同時廃止事件と管財事件があり、次の条件に当てはまる場合、管財事件で進められます。

  • 33万円以上の現金または20万円以上の価値のものを保有している
  • 個人事業主や法人代表者である
  • 免責不許可事由がある

一方、処分する財産がないことが明らかな場合、同時廃止事件として処理されます。

管財事件は、同時廃止事件と異なり、破産管財人が選任され、破産者の財産の調査、債権者への分配が行われるため、費用や手続きの負担は大きくなります。

自己破産手続きで裁判所へ支払う予納金を準備できない個人や零細企業なども少なくありません。

そのため多くの場合、管財事件より予納金を抑えられる少額管財事件が利用されます。

自己破産する場合、これらの手続きの特徴や破産手続き中に受ける制限などを理解したうえで進めることが大切です。

また、自己破産の手続きを確実・スムーズに行うために、法律の専門家である弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

弁護士に依頼することで、次のようなメリットがあります。

  • 貸金業者からの督促を止められる
  • 同時廃止事件として処理しやすくなる
  • 免責許可が受けやすくなる
  • 陳述書や財産目録などの書類作成を代行してもらえる
  • 裁判官や破産管財人との面談に同席してもらえる

自己破産の手続きは、短くても2カ月~、長ければ1年以上かかることもあり、その間特定の債権者に返済しないなど注意しなければならないこともあります。

弁護士に依頼する費用が準備できない場合は、分割払いが可能か、また収入や資産の状況によっては法テラスの立替制度を利用できる場合があるため確認してみましょう。

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