自己破産での提出書類
自己破産手続で、書類の提出を要求されるのは、申立者の借金や財産の状況、自己破産するに至った経緯などを確認することが目的です。
自己破産手続は、借金全額の返済を免除してもらえる大きなメリットのある手続です。しかし、裏を返せば、債権者にとっては大きな損失につながる手続でもあります。
それゆえに、手続においては公平性が求められます。そのため、自己破産手続きでは、借金や財産の状況、経済的状況などを証明するため、さまざまな書類を提出する必要があるわけです。
提出する書類は、法律で定められたものに加えて、状況に合わせて提出が必要なものもあります。
自己破産手続きでは以下の書類が必要になります。
書類名 |
|
①自己破産申立書 |
必須 |
②陳述書・報告書 |
必須 |
③債権者一覧 |
必須 |
④住民票 |
必須 |
⑤申立日前1ヶ月間の家計簿等 |
必須 |
⑥収入を証明する資料 |
必須 |
⑦財産目録 |
必須 |
⑧預金通帳の写し1~2年分 |
必須 |
⑨車検証・自動車税の申告書等車の名義の証明書類 |
状況により必要 |
⑩土地家屋の権利書 |
状況により必要 |
⑪保険証書など保険契約を証明する書類 |
状況により必要 |
⑫退職金見込額証明書 |
状況により必要 |
⑬株式・FX等の取引明細 |
状況により必要 |
⑭その他 |
状況により必要 |
書類には大きく分けて、法律で定められている書類と、債務者の状況により必要となる書類に分かれます。また、各書類は、裁判所によって様式や取り扱いが異なりますので、申立の際には注意してください。
申立する地域で借金問題に強い弁護士に相談すれば、必要書類などについても詳しくアドバイスしてもらえるので、相談してみるとよいでしょう。
ここでは、各書類の具体的な内容や作成準備の際の注意点について詳しく解説します。
①自己破産申立書
自己破産手続きを申し立てるために作成するのが、申立書です。
自己破産の申立は破産法により、書面で行うことが定められています。
自己破産の申立に必要な事項も破産法によって定められていますが、様式内で項目設定されていますので、各項目に従い記載すれば問題ありません。
ただし、申立書は各裁判所によって微妙に様式が異なるため、申立する裁判所で入手するようにしましょう。
また、申立書の記載項目には家計収支表など、他の資料を作成しなければ記入できないものもあります。
②陳述書・報告書
陳述書は、以下のような内容を記載します。
- 借金をした事情
- 自己破産に至った経緯
- 反省文
- 今後の経済的更生をどのように行うか
陳述書は、裁判所が今後の経済的更生が図れるかを判断する極めて重要な書類です。反省の色が見えなければ、免責後の経済的更生も望めないと判断され、免責されない場合もあります。
しっかりと反省の気持ちと、今後の更生に向けた決意について記載するようにしましょう。
陳述書についても自己破産申立書と同様に、裁判所により様式が定められていますので、申立する裁判所から入手するようにしましょう。
③債権者一覧
債権者一覧表は自己破産の対象者となる債権者と債権者ごとの借金額を申告する書類です。
自己破産では、すべての債権者を平等に扱う必要があります。
債権者として取り扱われるべきものは、すべて記入しなければなりません。具体的には以下のようなものはすべて記載する必要があります。
- 金融機関、貸金業者などからの借金
- 預貯金口座のマイナス
- 分割払いのローン
- 友人・知人・親族・勤務先などから借りたり立て替えてもらっているもの
- 税金・家賃・学費などの対応
- 自分以外の人の借金の保証
- クレジットカード
特定の債権者を意図的に除外すると免責不許可事由に該当する
債権者一覧に記載する債権者は、金融機関や貸金業者だけでなく、家族や友人などからの借入もすべて含まれます。
迷惑をかけたくないなどの理由で、債権者一覧に意図的に記載しないと、免責不許可事由(虚偽の債権者名簿提出)となり、免責を受けられない可能性もあるので注意してください。
④住民票
住民票は、申立人が本人であることを確認するために必要です。住民票は、マイナンバー記載のないものを取得しましょう。
自己破産手続きにマイナンバーは必要ないため、マイナンバーが記載されたものでは裁判所が受領できません。
また同居人などがいる場合は、世帯全体の住民票の提出が必要となります。
⑤申立日前1ヶ月間の家計簿等
破産規則では、破産申立前1ヶ月間の収入及び支出を記載した書面の提出が、定められています。
家計簿を普段からつけている場合は家計簿を提出し、ない場合は書面を作成し提出しましょう。
家計簿については、多くの場合1円単位で詳細に作成する必要はありませんが、収入や支出がある程度確認できる必要があります。
銀行口座からの引き落としなども含め、丁寧に作成しましょう。
裁判所によっては、1ヶ月分ではなく2ヶ月分が必要になるなど、取り扱いが異なる場合も多いため、事前に確認しておきましょう。
⑥収入を証明する資料
申立をする際には、自身の収入状況を証明する資料の提出が必要になります。
給与収入を得ている場合は、給与明細や源泉徴収票を提出します。事業者の場合は、確定申告書を提出します。
給与明細は数カ月分が必要になりますので、あらかじめ準備しておくと良いでしょう。
給与明細を紛失している場合は、職場に再発行してもらうか、難しいなら振込先の預金通帳の入金履歴などで代替できることもあります。
また、源泉徴収票については直近1年分が必要です。課税証明書・非課税証明書でも代替できます。
このあたりは、代替資料の取り扱いも含めて、裁判所の裁量に依るところが大きいため、弁護士等に事前に確認しておくことをおすすめします。
⑦財産目録
財産目録の提出も破産規則にて定められています。裁判所で書式が定められていますので、指定されたものを利用してください。
自己破産手続では、債務者が保有している資産を処分・換価し、それでも返済できない債務について免責を行います。
そのため、破産者の所有している資産を一覧にして提出する必要があります。
意図的に所有している財産を記載しなかった場合は、免責不許可事由に該当し免責が認められなかったり、最悪の場合、刑事罰に問われたりするため、正確に記入するようにしましょう。
財産目録に記載すべき主な項目は以下のとおりです。
- 現金
- 預貯金
- 保険
- 積立金
- 賃貸住宅の保証金・敷金、貸付金、売掛金
- 退職金
- 不動産
- 自動車、バイクなど
- 購入価格が20万円以上の貴金属、美術品、着物、電気製品等
- 株券などの有価証券、会員権等
- 過去2年以内の処分した財産のうち、評価額または換価額が20万円以上
- 近日中に取得が見込まれるもの
現金
所有している現金を記入します。預貯金は別の項目にて記載しますので、手持ちのもののみを記載します。
預貯金
預貯金の額をすべて記載します。
銀行口座の預貯金だけでなく、証券口座やFX口座等についても記載が必要です。
また、現在は解約していたとしても、過去2年以内に保有していたものであれば、記載が必要です。
保険
保険に加入している場合、解約返戻金は財産とみなされるため、解約返戻金の額を記載します。
この場合の保険とは、任意保険を指しますので、国民健康保険や自賠責保険は含まれません。
また、解約返戻金がなかったとしても、加入しているすべての保険の保険証券と返戻金証明書を提出する必要がある点は認識しておきましょう。
積立金
財形貯蓄など積立金がある場合は、申立時点で解約した場合の払戻金を記載します。
賃貸住宅の保証金・敷金
賃貸住宅に居住している場合に、敷金など解約時に戻ってくるお金がある場合は記載する必要があります。
退職金
勤務している会社に退職金制度がある場合、退職した場合に得られる退職金額を記載します。
基本的には、勤務先から、退職金見込額証明書を取得するのが原則です。
ご自身で退職金規程などが参照できる場合は、自分で計算しているもので代替できる場合もありますが、裁判所によって取り扱いが異なるので、確認しておきましょう。
また、すでに退職し退職金を受け取っている場合は受け取った金額を記載します。
不動産
土地や建物など不動産を所有している場合は、不動産の種類と所在地を記載します。
自動車、バイクなど
申立時点で、自動車やバイクを保有している場合は、記載が必要です。車検証の写しや、登録事項等証明書の写し、査定書も合わせて提出します。
査定書は、自動車査定協会や中古自動車買取業者等から入手します。
購入価格が20万円以上の貴金属、美術品、着物、電気製品等
購入価格が20万円以上の財産を保有している場合は、記載する必要があります。
購入年月日や現在の評価額を記載する必要があるため、購入時の領収書や鑑定書などを添付して提出します。
株券などの有価証券、会員権等
株券などの有価証券、ゴルフ会員権等を持っている場合も記載します。有価証券や会員証の写し、評価額の根拠も合わせて提出します。
過去2年以内の処分した財産のうち、換価額または評価額が20万円以上
直近2年以内に20万円以上の財産を処分した場合も、記載が必要です。
この場合の20万円以上の基準は、換価額または評価額で判断します。換価額が20万円未満であっても、評価額が20万円以上であれば、記載する必要があるので、注意してください。
近日中に取得が見込まれるもの
申立日以降に取得が見込まれているものがある場合、記載する必要があります。相続財産や損害賠償金などがこれにあたります。
⑧預金通帳の写し1~2年分
自身が保有しているすべての預金口座について、通帳のコピーを1~2年分提出します。
通帳のある口座だけでなく、ネット銀行などの口座も対象となります。通帳がない場合は、インターネットの明細を印刷して提出します。
インターネットの明細などの場合、一定期間より過去のものは入手できない場合もありますので、その場合、銀行から取引明細を入手してください。
裁判所は取引明細をもとに、収入や支出の状況を確認します。口座の履歴について、内容を質問される場合もあるので、答えられるように準備しておきましょう。
⑨車検証・自動車税の申告書等車の名義の証明書類
財産目録に掲載した自動車のものを提出します。
⑩土地家屋の権利書
財産目録に掲載した土地家屋のものを提出します。
⑪保険証書など保険契約を証明する書類
債務者が契約者となっているものを提出します。解約返戻金があるかどうかに関わらず、提出が必要です。
⑫退職金見込額証明書
将来発生すると見込まれる退職金は、債務者の財産としてカウントされます。
実際に退職して分配するわけではありません。
退職金をすぐに受け取る予定がない場合、退職金見込額のうち1/8が財産として評価されます。
⑬株式・FX等の取引明細
証券会社の取引明細書を1~2年分提出します。
株式やFXでの取引などが原因で借金をしている場合、免責不許可事由に該当します。
しかし、個人の自己破産では、反省などが見える場合は裁量免責により、免責許可されるケースがほとんどです。
免責不許可になるから報告しないということのないようにしてください。
⑭その他
上記に挙げた以外でも、収入や財産の状況、借金の理由などの調査にあたって、裁判所から資料の提出を求められることがあります。
誠実かつ迅速に対応するようにしましょう。
自己破産の必要書類準備で周囲にバレる可能性もある?
自己破産手続では、上記の通り様々な書類を準備しなければなりません。
書類の中には、同居人や会社に依頼する必要のあるものもあり、場合によってはそれをきっかけに周囲にバレる可能性があります。
同居家族がいる場合は給与明細や家計簿に注意
同居家族がいる場合、給与明細や家計簿を準備する際にバレる可能性があります。
給与明細を自分で管理しているのであれば問題ありません。しかし、配偶者が管理している場合、何に使うのか怪しまれることも考えられます。
また、同居人がいる場合、同居人の給与明細を求められることもあリます。その場合、配偶者に協力して貰う必要があるので、怪しまれる可能性は高くなるでしょう。
また、家計簿については家計を自分で管理していない場合、協力してもらわざるを得なくなるため、バレる可能性は高くなります。
バレるからといって、内緒にしたまま不確かなものを作成すれば、免責不許可事由に該当してしまうので、絶対にNGです。
源泉徴収票や退職金見込証明書で職場にバレる可能性も
源泉徴収票や退職金見込証明書は、勤務先に依頼して取得する必要があります。
源泉徴収票については、必要となる場面も多いので入手しやすいでしょう。
しかし、退職金見込証明書については、必要となる場面もあまりないため、理由を問われる可能性もあります。
自己破産を行うことを、職場へ報告する義務はありませんので、積極的に伝える必要はありません。将来設計を検討するのに知っておきたい、住宅ローンの審査で求められているなど、無難な理由を考えておきましょう。
手続きをスムーズに進めるなら弁護士への依頼がおすすめ
手続をスムーズに進めたい、周囲にバレるリスクをできるだけ減らしたいとお考えなら、弁護士への依頼がおすすめです。
膨大な書類準備をサポートしてもらえる
これまでご紹介した通り、自己破産手続きでは膨大な資料を用意しなければなりません。
弁護士に依頼すれば、これらの資料準備を問題なく進められるようサポートしてもらえます。
また、提出する資料は債務者の状況により異なる部分もありますし、作成には専門的な知識が必要なケースもあります。
また、裁判所によって微妙に取り扱いが変わることも多いので、自分だけで対処すると思うように進まないことも考えられます。
作成方法や準備する書類なども含めて、スムーズに免責を受けるためのサポートをしてもらえる点は弁護士に依頼する大きなメリットといえるでしょう。
周囲にバレないよう配慮してもらえる
自己破産は国が認めた手続ですが、一般的にはあまりいいイメージがないのも確かです。できるだけ、周囲にばれないように手続を進めたいという方も多いでしょう。
弁護士に依頼すれば、周囲にばれないよう最大限に配慮してもらえます。また、手続で周囲にバレるリスクなどについても、詳しく説明してもらえます。
ただし、周囲にバレるリスクを完全に「0」にはできません。特に、家族が同居しているなど、場合によっては内緒にするのが不可能なこともあります。
周囲にバレるからと、借金を放置していれば更に状況は悪化してしまいます。
過度に不安を抱えるのではなく、まずは弁護士に相談し、リスクと相談しながら、借金問題解決に向けて一歩踏み出すことが大切です。
裁判所とのやり取りを代行してもらえる
弁護士に依頼すれば、裁判所や債権者とのやり取りの一部は弁護士経由となります。
裁判所からの書類などもすべて、弁護士に送付されます。裁判所への出頭などについても、一部は代行してもらえます。
仮に自分で手続きを進めていれば、裁判所からの出頭命令などがあれば、速やかに対応する必要があり、場合によっては、会社を休まざるを得なくなります。
弁護士に代行してもらうことで、怪しまれるリスクを軽減できる点もメリットといえるでしょう。
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まとめ
自己破産では、さまざまな種類の資料を準備しなければなりません。提出する資料は、免責を認めるにあたって、財産や収入などの状況を確認するために利用されます。
資料の提出に不備があったり、不足があったりすれば、手続は進まず、最悪の場合、免責が得られない可能性もあります。
準備する資料は、借金の経緯や申立者の状況により異なります。また、作成には法律的な知識や裁判所の取り扱いなどを理解しておかないと、うまくいかないケースも存在します。
また、資料準備の過程で周囲にバレる可能性もあることから、慎重に進めるべきものです。
地域で債務整理に強い弁護士に依頼すれば、準備する書類の整理や、準備過程でのリスク、作成方法などについても、詳しく説明しサポートしてもらえます。
自己破産を検討していて、スムーズに免責を得るためにも、一度弁護士に相談してみると良いでしょう。
自己破産のよくある質問
自己破産をしようと思い、必要書類を確認したら複雑でとても不安です。どうしたらよいでしょうか。
弁護士へ依頼することをおすすめします。
その際、自己破産の実績が豊富な弁護士へ依頼をすると、手続きがスムーズに進みますよ。
STEP債務整理「債務整理に力を入れるおすすめの弁護士を紹介」
自己破産時に家族の収入証明書が必要だと聞きました。同居の家族に知られずに自己破産するのか難しいのでしょうか。
同居の場合は、基本的に難しいです。
自己破産について家族で理解してから手続きすることをおすすめします。
自己破産の費用相場はどれくらいですか?
一般的には30万円程度です。
ただ、管財事件となると50万円以上かかることも珍しくありません。
弁護士費用がないので、自分で自己破産手続きはできますか?
自分で自己破産手続きをすること自体は可能です。
しかし、自己破産には法的知識や経験が多く必要なため、自己破産に失敗するリスクも高まります。
費用に不安がある場合、一度法律事務所の無料相談を利用して詳しく聞いてみることをおすすめします。
STEP債務整理「債務整理に力を入れるおすすめの弁護士を紹介」
自己破産にはどれくらいの期間がかかりますか?
個人差はありますが、一般的に6ヶ月~1年程度の期間を要するケースが多いです。
最短即日取立STOP!
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