自己破産のやり方は全部で3種類
自己破産は債務整理の一つで、一定以上の価値がある財産を手放す代わりに、借金全額の返済義務を免除してもらう手続きです。
自己破産のやり方には、保有する財産や自己破産に至った経緯などによって「同時廃止事件」「通常管財(特定管財)事件」「少額管財事件」の3つの種類があります。
3つのうちどのやり方に該当するかは、裁判所によって基準が違います。また、どのやり方になるかで、かかる期間や費用なども大きく異なるので、自分がどのやり方に該当するかよく確認しておきましょう。
次の項目から、3つのやり方についてそれぞれ詳しく解説します。
同時廃止事件
同時廃止事件とは、破産手続開始決定と同時に破産手続きが終了し、その後すぐに免責許可が決定するやり方です。手続きにかかる期間は、申立てから3〜4ヶ月程度が目安となります。(東京地方裁判所の場合)
同時廃止事件になるのは、主に以下2点のいずれにも当てはまる場合です。
- 債務者が債権者に分配するほどの財産を保有していない
- 免責不許可事由の疑いがない
東京地方裁判所においては、33万円以上の現金、または価値が20万円以上の財産がない場合、同時廃止事件になるのが原則です。
同時廃止事件の場合、裁判所に選任された破産管財人によって財産の調査・換金・分配がおこなわれたり、免責不許可事由の調査がなされることはないため、短期間で手続きが終了します。
また、破産管財人への報酬も発生しないため、予納金も1〜3万円程度と最低限で済みます。
予納金・・・自己破産をおこなう際に、裁判所に対して納めなければならない手続き費用。
通常管財(特定管財)事件
通常管財(特定管財)事件とは、裁判所が選任した破産管財人によって、財産の換価処分や、免責不許可事由に関する調査がおこなわれるやり方です。手続きにかかる期間は、半年〜1年程度が目安となります。
通常管財(特定管財)事件になるのは、主に以下のような場合です。
- 一定以上の財産がある
- 借金の原因が浪費やギャンブルなど自己破産に至った経緯に問題が多い
通常管財(特定管財)事件の場合、破産手続きがおこなわれるため、手続きに長い期間を要します。
破産手続き・・・裁判所に選任された破産管財人が、債務者の保有する財産を調査・換価処分したり、免責不許可事由に関する調査をおこなう手続き。
また、一定以上の価値がある財産は没収され、さらに破産管財人への報酬(50万円〜)を納めなければなりません。
通常管財(特定管財)事件の場合に処分される財産には、たとえば以下のようなものがあります。
- 99万円を超える現金
- 20万円を超える預貯金
- 20万円を超える価値がある財産(車・家・土地など)
- 生命保険の解約返戻金
ただし、家具や衣服などの生活必需品は手元に残すことが可能です。
少額管財事件
少額管財事件とは、通常管財(特定管財)事件を簡略化し、予納金も20万円程度と安く抑えられるやり方です。手続きにかかる期間は、4〜7ヶ月程度が目安となります。
債務者の代理人である弁護士が破産管財人の調査に協力することで、通常管財(特定管財)事件より手続きの複雑さを軽減し、その分、手続きにかかる期間の短縮や破産管財人への報酬を抑えることが可能です。
通常管財(特定管財)事件よりもメリットの多い少額管財事件ですが、弁護士に自己破産を依頼している場合でなければ利用できないので注意してください。
また、少額管財はすべての裁判所でおこなわれているわけではなく、東京地方裁判所や大阪地方裁判所など、自己破産の申立件数が多い裁判所で実施されています。
自己破産手続きは弁護士に頼むのがおすすめ!その理由は?
じつは、自己破産手続きは自分でもおこなえます。また、弁護士ではなく費用が少額な司法書士に依頼することも可能です。
しかし、実際に自己破産をおこなう場合は、自分自身や司法書士に依頼しておこなうよりも、弁護士に依頼する人がほとんどです。
その理由は、弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあるからです。
- 書類作成などの複雑な手続きを代行してもらえる
- 弁護士は債務者の代理人になれるため手厚いサポートを受けられる
- 債権者からの督促がストップする
- 少額管財事件となり自己破産に必要な予納金を少なくできることもある
次の項目から「自己破産手続きを弁護士に頼むのがおすすめな理由」について、詳しく解説します。
書類作成などの複雑な手続きを代行してもらえる
自己破産の申立てをするには、自己破産申立書や陳述書(または報告書)などの申請書類を記入して、提出する必要があります。
記入には法律の知識が必要であり、そのような知識のない一般の人にとっては、書類の記入が難しく感じたり、時間もかかるでしょう。
一方で、法律の知識と豊富な実務経験を持つ弁護士なら、必要なポイントをおさえて素早く書類を作成することが可能です。
弁護士は債務者の代理人になれるため手厚いサポートを受けられる
弁護士に依頼して自己破産をおこなう場合、弁護士が代理人となってくれるため、ほぼすべての手続きを任せられるメリットがあります。
たとえば、自己破産の申立てを代わりにおこなってくれたり、裁判所へ出頭する際は弁護士が同行して、ほぼすべての手続きを代わりにおこなってくれます。
一方で、司法書士へ自己破産手続きを依頼した場合、書類の作成などをサポートしてくれますが、債務者の代理人となることはできません。そのため、自己破産の申立てなど裁判所とのやり取りは、債務者自身でおこなわなければならないのです。
自己破産手続きの際により手厚いサポートを受けたい場合は、弁護士に依頼するとよいでしょう。
債権者からの督促がストップする
弁護士に自己破産手続きを依頼すると、すぐに弁護士から債権者へ受任通知が送られます。
受任通知とは、弁護士が債務者と委任契約を結んだことを知らせる通知で、債権者が受任通知を受け取ると、取り立てや督促が止まります。
なぜなら、受任通知を受け取って以降の債務者に対する督促は、貸金業法第21条で禁じられているからです。
とくに、滞納していて毎日のように督促の電話や郵便物が来ていた人は、精神的な負担が軽くなることでしょう。
参照:e-Govポータル「貸金業法第21条」
少額管財事件となり自己破産に必要な予納金を少なくできることもある
前述したように、自己破産手続きには「同時廃止事件」「通常管財(特定管財)事件」「少額管財事件」の3つの種類があります。
仮に、通常管財(特定管財)事件になった場合、予納金の金額は高額になることが一般的です。
しかし「少額管財」であれば、管財事件として破産管財人による調査をおこないながらも、予納金の金額をおさえられます。
この少額管財を利用するには、弁護士に依頼して代理人となってもらうことが条件です。
弁護士に依頼せずに自分で自己破産手続きをおこなう場合には、少額管財とはならず通常管財(特定管財)事件か同時廃止事件のどちらかになります。
自己破産手続きの流れとかかる期間
自己破産手続きはどのような流れでおこなわれ、どれくらいの期間がかかるものなのでしょうか?
自己破産手続きには、大きく分けて「同時廃止事件」と「管財事件」の2つの種類があり、どちらの手続きになるかによって、流れや手続きにかかる期間は変わります。
なお、同時廃止事件と管財事件のどちらになるかは、裁判所の判断で決まります。債務者が債権者に配当すべき財産を保有していたり、免責不許可事由に該当する可能性があると判断されると、破産管財人が選任され管財事件となるのが一般的です。
同時廃止事件の場合も管財事件の場合も、まずは弁護士事務所に相談し、自己破産を検討している旨を伝えます。
相談の際には「同時廃止事件と管財事件のどちらになりそうか?」「本当に最適な方法は自己破産で間違いないか?」などを調べるため、借金や生活の状況、保有している財産について詳しく聞かれます。
そのため、事前に以下のような項目について調べてまとめておくと、スムーズに手続きを進められるでしょう。
- 合計何社から借入しているか?
- 借入している業者の名前
- 各業者ごとの残債(借金残高)
- 各業者ごとの月々の返済額
- 各業者ごとの借入期間
- 各業者ごとの滞納期間
- 各業者ごとの連帯保証人の有無
- 各業者ごとの担保の有無
- 各業者ごとの裁判所通知の有無
- 裁判所通知を受け取った場合、支払督促か訴状か?
- 裁判所通知を受け取った場合、受取日はいつか?
- 訴状を受け取った場合、期日はいつになっているか?
- 借入理由
- 滞納理由
- 職業
- 雇用形態(正社員・契約社員・アルバイト)
- 住まい(賃貸・持ち家・実家)
- 家族構成(続柄・同居か別居か?)
- 手取り月収
- ボーナスの有無(受取月・金額)
- 副業の有無
- 同居家族の手取り月収
- 仕送り・援助などはもらっているか?
- 月々の生活費(何にいくら使っているか?)
また「財産を保有していないか?」「保有している場合、今現在の売却価格はいくらになるか?」についても、調べておくことをおすすめします。
財産にあたるものの例として、具体的には以下のとおりです。
- 自動車やバイクなど
- 不動産(土地や建物、マンションなど)
- 預貯金
- 積立式保険の解約返戻金
- 退職金見込額
- 積立金(社内積立や財形貯蓄など)
- 有価証券(株など)
- 貴金属や美術品、着物など
- 相続財産(遺産分割未了の場合も含む)
無料相談などを利用して複数の事務所に相談し、実際に自己破産手続きを依頼する事務所が決まったら、弁護士と委任契約を結びましょう。
委任契約を結ぶことで、弁護士は債務者の代理人として自己破産手続きをサポートできるようになります。
次の項目から「同時廃止事件」と「管財事件」それぞれの流れや手続きにかかる期間について、詳しくお伝えします。
同時廃止事件の場合・・・3~6ヶ月程度
同時廃止事件の場合、以下のような流れで手続きが進んでいきます。
- 債権者に受任通知を送る
- 債権調査をおこなう
- 財産状況や家計状況の調査をおこなう
- 免責不許可事由があるのかどうか調査をおこなう
- 自己破産手続きの再検討をおこなう
- 破産手続開始及び免責申立書の作成
- 自己破産の申立てをおこなう
- 破産手続開始決定・同時廃止決定がなされる
- 免責審尋がおこなわれる
- 免責許可・不許可決定がなされる
代理人となった弁護士が債権者に対して「受任通知」を送ることで、自己破産手続きがスタートします。
受任通知・・・弁護士が債務者の代理人となって債務整理手続きをおこなうことを、債権者に知らせる通知。債権者の債務者に対する直接の取立てを停止させる効力がある。
受任通知を送った後に、まず最初に弁護士がおこなうのは「債権調査」です。
債権調査・・・債権者に取引履歴(借入の金額や年月日・返済の金額や年月日などの情報)の開示を求め、開示された取引履歴に基づいて引き直し計算をおこなうこと。
引き直し計算・・・債権者との間でおこなわれたすべての貸し借りの取引を、すべて適切な利率に直して利息を計算し直す作業のこと。これによって過払金があることが判明する場合もある。
また、債権調査と並行して財産状況や家計状況を調査します。調査のために、債務者は通帳など財産に関する書類や家計簿の提出が必要です。
弁護士は財産を調査し、処分して債権者に配当されるものと手元に残せるものに分けていきます。くわえて、免責不許可事由があるのかどうかも調査します。
免責不許可事由があるからといって必ずしも免責許可が下りないわけではありませんが、事前に裁量免責が得られそうかどうかを判断するためにも、調査しておく必要があるのです。
裁量免責・・・免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所が自己破産に至った経緯やその他の事情を考慮して、免責を許可すること。
ここまで調べてきた債権調査・財産調査・家計調査などの結果に基づいて、自己破産手続きを選択すべきか、他の債務整理手続きを選択すべきか、もう一度確認します。また、最終的に少額管財事件と同時廃止事件のどちらになるのか、見通しを立てておきます。
自己破産手続きをおこなうことが決まったら、まずは「破産手続開始及び免責申立書」の作成が必要です。この申立書には、収支に関する資料・財産に関する資料・家計簿などを添付しなければなりません。
作成した自己破産の申立書を管轄の地方裁判所に提出し、自己破産の申立てをおこないます。
自己破産の申立て後、破産手続開始決定がなされます。
なお、同時廃止事件の場合、破産手続開始決定と同時に破産手続廃止決定もなされることが一般的です。
廃止決定・・・配当すべき財産がないために破産手続を終了させるという決定。
最後に、裁判所において免責審尋が開催されます。
この免責審尋では債務者にも発言が求められる場合もありますが、基本的には住所や氏名の変更がないかどうかを問われるくらいで、それほど詳細な発言が求められるわけではありません。よほど問題がある事案でない限りは、5分程度で済んでしまうことが一般的です。
免責審尋後、裁判所によって免責許可が下りるかどうかの決定がなされます。
免責許可が下りその決定が確定すると、借金の返済義務が免除されることが確定します。
同時廃止事件の場合、手続き完了までにかかる期間は、おおよそ3〜6ヶ月です。
管財事件の場合・・・半年~1年程度
管財事件の場合、以下のような流れで手続きが進んでいきます。
- 債権者に受任通知を送る
- 債権調査をおこなう
- 財産状況や家計状況の調査をおこなう
- 免責不許可事由があるのかどうか調査をおこなう
- 自己破産手続きの再検討をおこなう
- 破産手続開始及び免責申立書の作成
- 自己破産の申立てをおこなう
- 破産手続開始決定・破産管財人の選任がおこなわれる
- 破産管財人との打ち合わせ・面接
- 破産管財人による管財業務の遂行
- 債権者集会・免責審尋がおこなわれる
- 免責許可・不許可決定がなされる
管財事件の場合、自己破産の申立て後に破産手続開始決定がなされるところまでは同時廃止事件の場合と同じで、この破産手続開始決定と同時に破産管財人が選任されます。
破産管財人は、基本的に自己破産手続きをおこなう裁判所の管轄地域内にある法律事務所に所属する弁護士が、選任されることが一般的です。
破産手続開始決定がなされると、債務者の財産は債務者の手元に残せる財産を除いて、破産管財人に管理処分権が与えられます。
通常、破産手続開始決定後、速やかに破産管財人・債務者・代理人の弁護士による三者打ち合わせをおこないます。あらかじめ調整しておいた日程に、破産管財人の所属する法律事務所へ赴いて打ち合わせ・面接をおこなうのが通常です。
ワンポイント解説
破産管財人との打ち合わせでは何をするの?
破産手続開始決定後におこなわれる破産管財人との打ち合わせでは、申立書の記載に沿って借金・財産・家計の状況などについて確認がなされます。
もし、不足書類などがあれば提出を求められるので覚えておきましょう。
また、免責不許可事由があるか、ある場合は裁量免責を与えてよいかを判断するために必要となる事項について、ヒアリングなどがおこなわれます。
破産管財人は、破産手続開始決定後、管財業務(財産の調査・管理・換価処分、および免責不許可事由などの調査)に取りかかります。なお、債務者には破産管財人の調査に協力する義務が課されており、協力しなかった場合はそのこと自体が免責不許可事由となってしまうため注意が必要です。
手続きの最後(または途中)には、裁判所において債権者集会が開催されます。債権者集会では、破産管財人による管財業務の報告がおこなわれます。
債権者集会において自己破産手続きが終結した場合、引き続き免責審尋がおこなわれることが一般的です。免責審尋では、破産管財人から免責を与えてよいかどうかについての意見が述べられます。
この債権者集会・免責審尋では、債務者にも発言が求められる場合もありますが、それほど詳細な発言が求められるわけではありません。よほど問題がある事案でない限りは、5〜10分程度で済んでしまいます。
免責審尋後、裁判所によって免責許可が下りるかどうかの決定がなされます。免責許可が下りその決定が確定すると、借金の返済義務が免除されることが確定するのです。
管財事件の場合、手続き完了までにかかる期間は、おおよそ半年〜1年です。
自己破産手続きにかかる費用
自己破産にかかる費用には、以下のような種類があります。
- 申立手数料(収入印紙)
- 予納郵券(郵便切手)
- 官報公告費
- 引継予納金
- 弁護士費用
上記のうち、弁護士費用以外の4つは裁判所へ支払う予納金です。
予納金や弁護士費用の金額は、自己破産の種類によって以下のように異なります。
|
予納金 |
弁護士費用 |
総額 |
同時廃止事件 |
1~4万円 |
20~40万円 |
21~44万円 |
通常管財(特定管財)事件 |
50万円~ |
50~80万円 |
100万円~ |
少額管財事件 |
約20万円 |
30~50万円 |
50万円~ |
費用の金額に幅がある理由は、自己破産の種類によって手続きにかかる手間や期間などが異なるためです。同時廃止事件の場合は費用が安く、少額管財事件や通常管財事件の場合は費用が高くなる、と考えておきましょう。
なお、実際に予納金がどれくらいかかるのかは、管轄する裁判所や自己破産の種類によって異なりますが、ここでは東京地方裁判所の場合を例にとってお伝えします。
参照:破産事件の手続費用一覧 | 東京地方裁判所
同時廃止事件の場合
東京地方裁判所において同時廃止事件となった場合、予納金は以下のようになります。
申立手数料 |
1,500円 |
官報公告費 |
11,859円 |
予納郵券 |
4,200円 |
同時廃止事件では、破産開始決定と同時に自己破産手続きが終了するため、破産管財業務にかかる実費や破産管財人の報酬は発生しません。
よって引継予納金は不要です。
上記に加えて弁護士費用が20〜40万円程度かかるため、費用の総額は約21~44万円となります。
通常管財(特定管財)事件の場合
東京地方裁判所において通常管財(特定管財)事件となった場合、予納金は以下のようになります。
申立手数料 |
1,500円 |
官報公告費 |
18,543円 |
予納郵券 |
4,200円 |
さらに引継予納金については、借金総額に応じて次のように変動します。
借金総額(単位:円) |
引継予納金 |
5,000万円未満 |
50万円 |
5.000万円~1億円未満 |
80万円 |
1億円~5億円未満 |
150万円 |
5億円~10億円未満 |
250万円 |
10億円~50億円未満 |
400万円 |
50億円~100億円未満 |
500万円 |
100億円~ |
700万円~ |
ただし、東京地方裁判所など多くの裁判所において、個人の自己破産は少額管財事件として処理するのが通常で、通常管財事件(東京地裁では特定管財事件)となることはほとんどありません。
仮に弁護士へ依頼したうえで通常管財事件となった場合、上記に加えて弁護士費用が50〜80万円程度かかるため、費用の総額は約100万円〜となります。
少額管財事件の場合
東京地方裁判所において少額管財事件となった場合、予納金は以下のようになります。
申立手数料 |
1,500円 |
官報公告費 |
18,543円 |
予納郵券 |
4,200円 |
引継予納金 |
20万円~(事案によっては増額もあり得る) |
引継予納金があまりに高額だと、自己破産を利用できる人が限られてしまいます。
そこで「弁護士に依頼して自己破産をおこなう」など裁判所が定める一定の要件を満たした場合に、少額の引継予納金で利用できるようにしたのが「少額管財事件」です。
ただし、裁判所によっては少額管財事件の運用が無い場合もあるので、事前に確認しておく必要があります。
なお、上記に加えて弁護士費用が30〜50万円程度かかるため、費用の総額は約50万円〜となります。
自己破産手続きに必要な書類
弁護士に自己破産を依頼すると、ほぼすべての手続きを代行してもらえますが、手続きに必要な収入証明書や保有財産に関する書類などは、自分で集めなければなりません。
自己破産手続きの際に必要となる書類の中で、代表的なものは以下のとおりです。
- 戸籍謄本
- 住民票
- 通帳一式(申立て前直近1~2年分の通帳コピー)
- 公共料金の領収書(申立て前直近2ヶ月分)
- 保険証券・解約返戻金の証明書(解約返戻金がない場合、ない旨を証明する書類)
- 退職金見込額証明書
- 自動車の車検証
- 不動産登記簿謄本・評価額証明書
- 住宅ローンの契約書・残高証明書
- 賃貸借契約書
- 所得証明書
住民票は本籍地・世帯全員分・続柄の記載があるものが必要です。役所で交付を受ける際には「省略のないもの」と申告すればよいでしょう。また、家族関係を説明する必要がある場合は、戸籍謄本も必要になります。申立て前3か月以内に交付されたもののみ有効です。
なお、住民票に記載されている住所と現在住んでいるところが違う場合は、現在の住居の賃貸借契約書も必要になります。
5年以上会社に勤続していて退職金の支給が考えられる場合、退職金見込額証明書が必要です。
ワンポイント解説
職場の人に怪しまれずに退職金見込額証明書を入手するには?
退職金見込額証明書を入手する際「職場の人に自己破産をすることが知られてしまうのでは?」と思う人もいるでしょう。
その場合には、たとえば「家族みんなで入っている保険の見直しを考えており、担当者から今入っている保険の解約返戻金や会社の退職金金額などもみて、今後のプランを考えようと提案されているので、参考までに退職金見込額証明書を出してほしい。」というようにお願いしてみるなど、伝え方を工夫してみましょう。
なお、証明書の取得が困難な場合で会社の就業規則に退職金規定の記載があるような場合は、その部分をコピーして提出すればよい場合もあります。
所得証明書については、債務者の状況により以下のような書類が必要になります。
- 源泉徴収票または課税証明書
- 給料明細
- 公的年金受給証明書
- 確定申告書
- など
源泉徴収票または課税証明書については、申立て前直近2年分が必要になります。専業主婦などで収入がなく申告をしていない場合は、源泉徴収票も課税証明書も出ないため、市役所市民税課の窓口で申告をして、非課税証明書を発行してもらう必要があります。
現在就業中の場合は、申立て前直近2ヶ月分の給料明細が必要です。
生活保護・母子手当・失業手当・年金・障害年金・遺族年金などの公的年金を受給している場合は、受給額が分かる書類を添付する必要があります。年金の場合には、年1回送られてくる給付額の決定通知書を添付するとよいでしょう。
自己破産ができる条件
自己破産は、裁判所を介しておこなう法的手続きです。
そのため、利用するには法律で定められた「自己破産ができる条件」を満たしている必要があります。
自己破産ができる条件は、以下のとおりです。
- 借金総額が返済可能額を上回っている
- 免責不許可事由に該当しない
- 自己破産や個人再生をしてから7年が経過している
- 借金がゼロになれば生活再建の目処が立つ
- 自己破産手続きに協力的
- 非免責債権ではない
次の項目から、それぞれの条件について詳しく解説します。
借金総額が返済可能額を上回っている
自己破産を利用するには、支払不能であることを裁判所から認められる必要があります。
支払不能とは、現在の収入や財産では、将来借金を返済するのが難しい状況を指します。
支払不能と判断される明確な基準はありませんが、 一般的には現在の借金総額を36ヶ月で割った金額が毎月の返済可能額を上回ると支払不能であると判断されます。
もし、安定収入があるなどの理由で支払不能と認められない場合は、交渉して毎月の返済額を減らす任意整理や、借金を大幅に減らす個人再生を検討するとよいでしょう。
免責不許可事由に該当しない
借金を返済できないと裁判所に認められても「免責不許可事由」に該当すると、基本的に自己破産はおこなえません。
免責不許可事由の内容は、破産法第252条によって以下のように定められています。
- 財産を隠す、壊す、誰かに譲るなど資産隠しととられるような行為をする
- 自己破産することを前提にわざと借金をする
- クレジットカードで商品を購入して売却する(クレジットカードショッピング枠の現金化)
- 闇金などから利息制限法に違反するような高金利で借入をする
- 親や友人など特定の誰かに優先して借金を返済する(偏波弁済)
- 借入理由が浪費やギャンブルなど
- 収支状況や債権者情報について嘘の申告をする
- 過去7年間に自己破産をして免責許可を得ている
ただし、免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所の判断次第では自己破産ができる場合もあるので、自己破産を検討している場合は弁護士に相談してみるとよいでしょう。
参照:e-Govポータル「破産法第252条」
自己破産や個人再生をしてから7年が経過している
自己破産できる回数に制限はなく、何度でも手続きすることが可能です。
ただし、過去に自己破産をして免責許可を得たことがある場合、前の手続きから7年以上経過しなければ再度の自己破産はできないことになっています。
また、給与所得者等再生をしたり、ハードシップ免責を受けた場合も、その後7年間は自己破産ができません。
借金がゼロになれば生活再建の目処が立つ
自己破産の目的は、債務者の生活再建です。
そのため、生活再建の目処が立っていないのに借金だけをゼロにすることは、基本的に認められません。
たとえば、現在無職で次の就職先も決まっていない状況では、借金がゼロになっても生活に困り、また借金を繰り返す恐れがあると判断されて、自己破産が認められない可能性が高いです。
また、事業に失敗して背負った借金を自己破産する場合も、事業を継続している限りまた借金を繰り返すと判断されるため、事業をたたむことが自己破産を認めてもらう条件となることがあります。
自己破産手続きに協力的
自己破産手続きをおこなう際、債務者には裁判所や破産管財人の調査に協力する義務があります。
もし、自己破産手続きにおいて以下のような非協力的な行為をすれば、自己破産を認めてもらえない可能性が高いです。
- 裁判所に対して虚偽の申告をしたり説明の拒否をする
- 破産管財人の調査を妨害する
- 破産管財人の指示に従わない
- 破産管財人を脅迫する
裁判所への嘘の申告や破産管財人の調査を妨害するなどの行為は、債権者の権利を害する恐れがあります。
また、そのような行為をおこなう時点で自己破産手続きに真摯に向き合っているとはいえず、不誠実な債務者に免責の恩恵を与えるべきではないと判断される可能性が高いのです。
非免責債権ではない
自己破産をすれば、すべての支払いが免除されるわけではありません。
自己破産をしても支払義務が免除されないものを「非免責債権」といいます。
非免責債権の具体例を挙げると、以下のようなものがあります。
- 下水道料金
- 税金や社会保険料(国民健康保険料・国民年金保険料・介護保険料など)
- 一部の損害賠償金
- 婚姻費用・養育費
- 従業員の給与
- 債権者名簿に記載しなかった債権
- (交通違反などによる)罰金
自己破産をした場合、滞納している水道・ガス・電気料金の支払いは免除してもらえますが、下水道料金は税金扱いとなるため、支払義務が残ってしまいます。
また、原則として悪意や故意、重過失にあたる損害賠償金も、自己破産で支払義務を免除できません。ただし、悪意や故意がないとみなされた交通事故に対する損害賠償金の支払いは、自己破産で免除される可能性があるので、一度弁護士や司法書士へ相談するとよいでしょう。
養育費は自己破産をおこなう本人よりも、子供の養育される権利が保護されるため、自己破産で支払義務を免除できません。養育費を支払う余裕がない場合や金額を減らしてほしい場合は、自己破産ではなく養育費の支払先である相手方と交渉する必要があります。
まとめ
自己破産のやり方には「同時廃止事件」「通常管財(特定管財)事件」「少額管財事件」の3つの種類があり、どのやり方で手続きをおこなうかによって流れやかかる費用などが異なります。
とくに、債権者へ分配すべき財産や免責不許可事由がある場合は、管財事件となり手続きにかかる期間が長期化したり、高額な予納金の支払いが必要になるため注意が必要です。
ただし、弁護士に自己破産手続きを依頼した場合は、管財事件の中でも比較的費用が安く、短期間で手続きが可能な少額管財事件を利用できる可能性が高くなります。
また、借金や生活の状況によっては自己破産以外の解決方法が適している場合もあるので、まずは弁護士に一度相談して個々の状況に合わせたアドバイスを受けるのがおすすめです。
当サイトでは自己破産を積極的に扱う弁護士事務所を多数紹介しているので、まずは気軽に無料相談を利用してみてください。
自己破産のよくある質問
自己破産のやり方は?
自己破産のやり方には、保有する財産や自己破産に至った経緯などによって「同時廃止事件」「通常管財(特定管財)事件」「少額管財事件」の3つの種類があります。3つのうちどのやり方に該当するかは、裁判所によって基準が違います。また、どのやり方になるかで、かかる期間や費用なども大きく異なるので、自分がどのやり方に該当するかよく確認しておきましょう。
自己破産をしたい場合、どこに頼むべき?
自己破産手続きは弁護士に頼むのがおすすめです。その理由は、弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあるからです。
・代理人となった弁護士から手厚いサポートを受けられる
・債権者からの督促がストップする
・少額管財事件となり自己破産に必要な予納金を少なくできることもある
自己破産手続きにかかる期間は?
自己破産手続きにかかる期間は「同時廃止事件の場合、3~6ヶ月程度」「管財事件の場合、半年~1年程度」が目安となります。
自己破産手続きにかかる費用は?
自己破産手続きにかかる費用は「同時廃止事件の場合21~44万円」「通常管財(特定管財)事件の場合100万円~」「少額管財事件の場合50万円~」が目安となります。
自己破産ができる条件は?
自己破産ができる条件は、以下のとおりです。
・借金総額が返済可能額を上回っている
・免責不許可事由に該当しない
・自己破産や個人再生をしてから7年が経過している
・借金がゼロになれば生活再建の目処が立つ
・自己破産手続きに協力的
・非免責債権ではない
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