任意整理後であっても借金を一括返済することはできます。
任意整理の際、債権者と交渉し将来の利息をカットし原則3年間で返済することで和解していても、前倒しで完済することは可能です。
自ら返済している場合は、債権者に一括返済の意思を伝え手続きを進めましょう。
弁護士などに返済を代行してもらっている場合は、トラブルを避けるためにも弁護士を通じて行いましょう。
任意整理後に一括返済する主なメリットは次のとおりです。
- 精神的にラクになる
- 弁済代行費用が少なくなる
- ブラックリストの登録期間を短くできる可能性がある
任意整理後に前倒しで完済したとしても、すでに将来の利息をカットした返済計画となっているため経済的なメリットはほとんどありません。
むしろ、まとまったお金を一括返済してもその後の生活に支障が出ないか慎重に判断すべきですし、次の点に注意しなければなりません。
- ブラックリストの登録はすぐに消えるわけではない
- 一括返済の申し出が認められると再度分割返済に戻れない
- 特定の債権者に一括弁済する場合、その後に自己破産や個人再生手続きをした場合のリスクがある
債権者にもよりますが、債務を完済しても5~7年間はブラックリストに登録されることになり、その間は新たにクレジットカードを作ったりローンを組むことはできません。
借金をなくすことで精神的には楽になりますが、再度分割返済には戻れませんので慎重に判断しなければなりません。
この記事では、債務整理後の一括返済の方法から一括返済するメリットや注意点まで解説します。
一括返済すべきかどうか、どういった点に気を付けなければならないか分かりますのでぜひ参考にしてください。
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任意整理後に借金を一括返済することは可能
任意整理をした後でも借金を一括返済することは可能です。
任意整理をした際、債権者と新たな返済条件で和解解約を締結しますが、通常、和解契約には一括返済を禁止する規定は設けられません。
債権者からすると、受け取る利息がなくなるわけでもなく、むしろ、債務者が病気や失業などで再度返済できなくなるリスクを避けられ、早期に貸付金を回収できるメリットの方が大きいと言えるでしょう。
自分で直接債権者に返済している場合でも、弁護士や司法書士に返済の管理をしてもらっている場合(弁済代行)でも同様に一括返済はできます。
任意整理後の借金を一括返済する方法
任意整理後の一括返済の方法について、自分で直接返済している場合と弁護士や司法書士に返済を代行してもらっている場合について解説します。
- 自分で貸金業者に直接返済している場合
- 弁護士・司法書士事務所が返済代行している場合
自分で貸金業者に直接返済している場合
自分で貸金業者に直接返済している場合、まず相手の会社に連絡し残りの債務を一括返済する旨を伝えましょう。
債務の残高を確認し、通常は相手から指定された口座に振込します。
また、完済したことを証明できる書類が欲しい場合は、手続きをする際、完済したことを証明できる書類が欲しい旨を伝えましょう。
弁護士・司法書士事務所が返済代行している場合
弁護士や司法書士が弁済代行している場合は、一括返済する旨を伝え代行してもらいます。
このとき弁護士や司法書士を通さず直接債権者に返済すると、トラブルの原因となるため注意が必要です。
なぜなら、弁済代行を引き受けた弁護士や司法書士は、複数の債務の返済を一元管理し、そのための手数料を受け取っており、債務者の返済状況を把握する責任があるといえるためです。
そのため、事前に弁護士などに一括返済の旨を伝え、手続きをしてもらうようにしましょう。完済証明が必要な場合も弁護士で対応してくれます。
任意整理後に借金を一括返済するメリット
では、任意整理した後に借金を一括返済するメリットとしてどのようなことが考えられるのでしょうか。
- 精神的にラクになる
- 弁済代行費用が少なくなる
- ブラックリスト入りの期間を短縮できる可能性がある
精神的にラクになる
任意整理後に一括返済する経済的メリットはほとんどなく、メリットと言えるのは債務が減る、あるいは完済することで精神的にラクになることでしょう。
住宅ローンや通常の借入金であれば、元本に利息が付いているため、繰り上げ返済することで将来支払う予定であった利息負担を減らせます。
一方、任意整理後の返済は、将来の利息をカットした返済計画となっているため、繰り上げ完済しても利息削減効果はありません。
任意整理では原則として3年間の返済計画となっています。そのため早期に完済することで交渉次第では債務の減額を認めてもらえる可能性はゼロではありませんが、基本的には難しいでしょう。
一括返済するメリットは、借金から解放され支払いに追われなくなる精神的な面でのメリットが大きいといえるでしょう。
弁済代行費用が少なくなる
債務整理後の一括返済には利息や借入金を減らす効果はありませんが、弁護士や司法書士の弁済代行費用を減らすことができます。
弁済代行手数料は、債権者1社あたり毎月1,000円(税抜)程度です。
例えば、債権者が3社あり、そのうち2社の債務を完済すれば毎月2,000円(年間24,000円)、3社とも完済すれば毎月3,000円(年間36,000円)の費用の節約になります。
ブラックリスト入りの期間を短縮できる可能性がある
一括返済するメリットとして、ブラックリストに登録されている期間を短縮できる可能性があります。
任意整理や滞納すると信用情報機関に事故情報として一定期間登録されることになります。これを俗にブラックリスト入りと言います。
信用情報機関とは、ローンを組んだりクレジットカードを作成・利用する際、契約者の信用度を確認するために、個人の過去の取引状況などを管理している機関です。
日本では、「CIC(株式会社シーアイシー)」、「JICC(日本信用情報機関)」、「KSC(全国銀行個人情報センター)」の3つの機関があります。
任意整理すると、完済してから5年~7年程度、これらの信用情報機関に登録されることになります。
例えば、任意整理してから3年後に債務を完済した場合、そこから5~7年信用情報機関に登録されるため、任意整理した時点からは、およそ8年~10年ブラックリストへの登録期間が続くことになります。
ブラックリストに登録されている間は、クレジットカードの利用・作成やローンを組むことができません。賃貸住宅の契約もできない場合があります。
この点、当初の返済期間から繰り上げて一括完済した場合、その分ブラックリストに登録される期間を短縮することが可能です。
ただし、すべての貸金業者について短縮できるわけではない点には注意しなければなりません。
これは、貸金業者によって、債務整理後、毎月の返済のたびに「金融事故」として信用情報の登録している会社と和解契約を締結後は信用情報の登録しない会社があるためです。
前者の場合、完済日が起算点となるため繰り上げて一括完済することで信用情報機関への登録期間を短縮できます。
一方、後者の場合、債務整理の時点が起算点となるため、完済日が早まったとしても期間短縮の効果は望めません。
任意整理後に借金を一括返済する際の注意点
任意整理後には注意しなければならない点もあります。ここでは4つの注意点について解説します。
- 生活が苦しくなる可能性がある
- ブラックリストの登録はすぐに消えない
- 特定の金融業者だけに一括返済をすると今後、個人再生や自己破産をした場合に不利益になる可能性がある
- 一括返済を申し出た後は分割払いに変更できない
生活が苦しくなる可能性がある
まとまった金額を一括返済に充ててしまうとその後の生活が苦しくなる可能性があるため注意が必要です。
借金がなくなり精神的に楽になったとしてもその後の生活が立ちいかなくなれば元も子もありません。
また、ご紹介したように任意整理後に一括完済しても、すでに将来の利息は免除してもらっているため経済的なメリットはほどんどありません。
そのため、一括返済するかどうかは、その後のライフプランや必要資金を踏まえ慎重に判断する必要があります。
なお、任意整理した後に支払いができなくなった場合の対処法などについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
ブラックリストの登録はすぐに消えない
一括返済したとしてもブラックリストの登録がすぐに消えるわけではない点にも注意しましょう。
信用情報機関によって登録期間は異なりますが、借金を完済しても一定期間はブラックリストに登録されることになります。そのため一括返済したからと言って、すぐにクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりできるわけではありません。
そして、各信用情報機関の情報は共有されているともに、どの機関の会員でも他の機関の登録情報を参照できる仕組みになっています。
そのため、例えば3社から借り入れしていて、そのうち2社の信用情報機関の登録期間を短縮できたとしても、残りの1社の情報が削除されない限り新たな借り入れはできません。
また、貸金業者の信用情報機関への登録の仕方によって、早期に完済してもブラックリストの登録期間は変わらない可能性もあります。
一括返済するとしても、ブラックリストへの登録期間がどれくらい続くのかを理解したうえで判断することが大切です。
特定の金融業者だけに一括返済をすると今後、個人再生や自己破産をした場合に不利益になる可能性がある
複数の債権者があるなかで、特定の債権者に一括返済する際は注意しなければなりません。
一般的に、弁護士や司法書士に任意整理を依頼した場合、複数の債権者に対して債務額に応じて平等に返済することを求められます。
これは複数の債権者の債務整理をする場合、「債権者平等の原則」があるためです。
債権者平等の原則とは、債務整理をする際にすべての債権者を平等に扱わなければならないというルールです
特定の債権者に偏って返済することを「偏頗弁済(へんぱべんさい)」といいますが、債権者平等の原則に反し法律違反になる可能性もあります。
債権者平等の原則が、特に問題となるのは、自己破産や個人再生などの債務整理を行うときです。
自己破産とは、債務の支払いができない場合に裁判所に申し立てを行い、債務の免除をしてもらう手続きです。税金など非免責債権を除き、借金はゼロになります
個人再生は、債務の返済が厳しい場合に、裁判所に再生計画の認可決定を受け、借金を大幅に減額してもらう手続きです。債務額によって最大で5分の1~10分の1に減額され、減額された債務を原則として3年間で支払います。
自己破産や個人再生では、裁判所を介してすべての債務を対象に行われるため、債権者平等の原則は厳格に適用されます。
手続きの前や手続き中に偏頗弁済と認められた場合、管財事件として裁判所の費用が高額になったり、自己破産の免責許可が受けられなくなる「免責不許可事由」あたる場合があります。個人再生の手続きにおいても、再生計画案の認可を受けられない可能性があります。
そのため、任意整理後に特定の債権者に一括返済する場合、その後債務を支払えず自己破産や個人再生手続きをすることになると、申し立てが認められなくなる可能性がある点に注意しなければなりません。
一括返済を申し出た後は分割払いに変更できない
債権者に対して一括返済を申し出て了承された後は、再度分割払いに変更できなくなります。
これは、任意整理の和解契約で定められた「期限の利益」を失うためです。
期限の利益とは、一定の期日が到来するまで借金の返済をしなくてもよいという債務者の利益と意味します
通常、期限の利益を喪失するケースは、債務者が返済義務を果たさないなど契約違反があった場合です。この場合、本来の返済期限に関係なく、すべての債務を一括弁済しなければなりません。
もっとも、自ら一括返済を申し出て債権者が承認した場合も、期限の利益を失います。
そのため、一括返済をやめて再度分割返済に戻ることができなくなります。
もし一括返済できないとなると債務不履行となり、給与や財産の差し押さえなど強制執行を受ける可能性もあります。
一括返済を申し出る場合は、本当に支払っても問題ないかを慎重に確認することが重要です。
まとめ
債務整理をした後でも借金を一括返済することは可能です。
自ら直接債権者に返済している場合は、一括返済の意思を伝え指定の口座に振込みし完済証明書をもらいましょう。弁護士などに代理弁済している場合は、すべての債務を管理している弁護士を通じて行ってください。
とはいえ、債務整理後の一括返済は、毎月の返済を考えずに済み精神的に楽になりますが、経済的なメリットはほとんどありません。
債務整理後に一括返済しても、すぐにブラックリストの登録が消えるわけではありませんし、一度一括返済の申し出が認められると再度分割返済に戻ることはできません。
また、複数の借り入れがある場合、特定の債権者に一括返済すると、その後返済できなくなり自己破産あるい個人再生手続きをする際に裁判所への申し立てが認められなくなる可能性があります。
そのため、一括返済してもその後の生活に支障をきたさないか慎重に判断して決めなければなりません。
むしろ、一括返済できる資金は貯蓄に回し、毎月の返済を続けるほうがよいこともあるでしょう。
最短即日取立STOP!
一人で悩まずに士業にご相談を
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