任意整理とは弁護士や司法書士に代理人となってもらい、債権者と今後支払う予定の利息をカットや減額してもらえるよう交渉する手続きです。
裁判所を介さない手続きなので比較的費用が安く、周りの人にも知られにくいというメリットがあります。また、手続きする借入先を選べるので返済中のローンにも影響なく手続きが可能です。
ただし、元金自体は減らないため、安定した返済能力や返済意思が求められます。
「自分の場合、任意整理が最適な解決方法なのか?」詳しく知りたい場合、まずは以下の減額チェッカーを利用して任意整理で借金がどれくらい減るのか、確認してみてはいかがでしょうか。
そのまま弁護士へ無料相談もできますので、ぜひお気軽にご利用ください。
- 任意整理は返済額を減らす交渉をおこない、完済を目指す手続き。
- 任意整理は家族や職場の人など周囲に知られにくく、1社から整理が可能。
- 任意整理をすると新しくカードを作ったり新規借入が難しくなる。
任意整理とは?
任意整理とは、将来利息をカットし月々の返済額を減らす手続きのことです。
他の債務整理手続き(自己破産・個人再生)に比べてデメリットが少なく、手続きにかかる期間も短いため、債務整理をおこなう人の約7〜8割が任意整理を選ぶともいわれています。
この項目では、任意整理手続きの概要や、借金額ごとに任意整理をした場合の返済シミュレーションについて詳しくみていきましょう。
将来利息をカットし元金を確実に減らす手続き
任意整理とは、弁護士や司法書士が債権者と交渉をおこない、将来利息をカットまたは減額してもらうことで元金が確実に減る仕組みを作り、早期完済を目指す手続きです。
毎月の返済額の内訳は「利息」と「元金」に分けられます。返済額に対して利息の割合が大きいほど、元金の割合は小さくなります。
返済額に対する元金の割合が小さければ、長く返済を続けていてもなかなか元金がなくなりません。元金がなくならない限り借金の返済は終わらないので、いつまでも完済できない状況に陥ってしまいます。
しかし、任意整理をおこない将来の利息がカットされれば、その後は元金のみ返済すればよくなるため、比較的早い完済を目指せます。
毎月の返済額が1/2程度まで減らせる可能性もある
任意整理をおこなうことで毎月の返済額が一定程度減額されます。
減額できる割合に決まりはありませんが、概ね1/2程度まで減らせる場合が多いです。債務者の状況によっては、返済額が1/3以下になる可能性もあります。
この場合、任意整理をおこなうことで毎月の返済額を半分の2万円程度まで減らせる場合が多く、債務者の状況によっては1/3以下の1.3万円以下になる可能性もあるということです。
元金こそ減らないものの、毎月の返済額を減らせれば負担がかなり軽減されるという方も多いはずです。もし、毎月の返済が厳しいと感じたら、パンクしてしまう前に一度弁護士や司法書士に相談してみましょう。
※任意整理によってご自身の返済額がどれぐらい減らせるか気になる方は「借金減額シミュレーター」をご利用ください。
借金100万円の任意整理シミュレーション
100万円を年利15%で1社から借り入れていた場合、任意整理をしたケース・しなかったケースの月々の返済額は以下のようになります。
返済期間 | 任意整理前 | 任意整理後 |
---|---|---|
3年 | 3万4,665円 | 2万7,777円 |
5年 | 2万3,789円 | 1万6,666円 |
任意整理をしたケースのほうが、返済期間が3年の場合も5年の場合も、月々の返済額を7,000円程度減額できることがわかります。
続いて、100万円を年利15%で1社から借り入れていた場合、任意整理をしたケース・しなかったケースの返済総額を見てみましょう。
返済期間 | 任意整理前 | 任意整理後 |
---|---|---|
3年 | 124万7,940円 | 100万円 |
5年 | 142万7,340円 | 100万円 |
任意整理をしたケースのほうが「返済期間が3年の場合は25万円程度」「返済期間が5年の場合は43万円程度」返済総額が少なくなることがわかりました。
任意整理をせずに返済する場合、長期で返済したほうが月々の返済負担は軽くなりますが、その分利息が膨らみ、返済総額が高くなってしまうことが一般的です。
しかし、任意整理をすると将来利息がカットされるため、返済期間が長くなっても利息の影響を受けません。よって、何年かけて返済しても返済総額は元金の100万円のみとなるのです。
※より詳細な任意整理シミュレーションについて知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
借金150万円の任意整理シミュレーション
150万円を年利15%で1社から借り入れていた場合、任意整理をしたケース・しなかったケースの月々の返済額は以下のようになります。
返済期間 | 任意整理前 | 任意整理後 |
---|---|---|
3年 | 5万1,000円 | 4万1,000円 |
5年 | 3万5,000円 | 2万5,000円 |
任意整理をしたケースのほうが、返済期間が3年の場合も5年の場合も、月々の返済額を1万円減額できることがわかります。
続いて、150万円を年利15%で1社から借り入れていた場合、任意整理をしたケース・しなかったケースの返済総額を見てみましょう。
返済期間 | 任意整理前 | 任意整理後 |
---|---|---|
3年 | 187万円 | 150万円 |
5年 | 214万円 | 150万円 |
任意整理をしたケースのほうが「返済期間が3年の場合は37万円」「返済期間が5年の場合は64万円」返済総額が少なくなることがわかりました。
任意整理をせずに返済する場合、長期で返済したほうが月々の返済負担は軽くなりますが、その分利息が膨らみ、返済総額が高くなってしまうことが一般的です。
しかし、任意整理をすると将来利息がカットされるため、返済期間が長くなっても利息の影響を受けません。よって、何年かけて返済しても返済総額は元金の150万円のみとなるのです。
※より詳細な任意整理シミュレーションについて知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
借金300万円の任意整理シミュレーション
300万円を年利15%で1社から借り入れていた場合、任意整理をしたケース・しなかったケースの月々の返済額は以下のようになります。
返済期間 | 任意整理前 | 任意整理後 |
---|---|---|
3年 | 10万3,995円 | 8万4,000円 |
5年 | 7万1,369円 | 5万円 |
任意整理をしたケースのほうが、返済期間が3年の場合も5年の場合も、月々の返済額を2万円程度減額できることがわかります。
続いて、300万円を年利15%で1社から借り入れていた場合、任意整理をしたケース・しなかったケースの返済総額を見てみましょう。
返済期間 | 任意整理前 | 任意整理後 |
---|---|---|
3年 | 374万3,820円 | 300万円 |
5年 | 428万2,140円 | 300万円 |
任意整理をしたケースのほうが「返済期間が3年の場合は74万円程度」「返済期間が5年の場合は128万円程度」返済総額が少なくなることがわかりました。
任意整理をせずに返済する場合、長期で返済したほうが月々の返済負担は軽くなりますが、その分利息が膨らみ、返済総額が高くなってしまうことが一般的です。
しかし、任意整理をすると将来利息がカットされるため、返済期間が長くなっても利息の影響を受けません。よって、何年かけて返済しても返済総額は元金の300万円のみとなるのです。
※より詳細な任意整理シミュレーションについて知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
任意整理のメリット
任意整理のメリットには以下のようなものがあります。
- 借金を減額できる
- 督促を止められる
- 一時的な支払い猶予期間が得られる
- 家族や職場の人など周囲に知られにくい
- 費用負担が比較的少ない
- 裁判所手続きが不要
- 債務整理の対象を選べる
①借金を減額できる
任意整理をおこなう最大のメリットは、借金を減額できることでしょう。
弁護士や司法書士が債権者と交渉することで将来利息がカットされ、カットされた利息の分だけ本来支払うべき借金を減額できます。
また、任意整理をおこなう際には、同時に過払金がないかどうかも調べることが一般的です。
過払金が発生していた場合、過払金請求をおこなうことで払いすぎた利息分が元金から差し引かれ、元金も減る可能性があります。
②督促を止められる
任意整理をおこなうことで督促を一時的にストップできます。
これは、任意整理を依頼すると弁護士や司法書士が債権者に対して送る「受任通知」の効果です。受任通知を受け取った債権者は、それ以降、債務者に対して直接の取立て行為をおこなってはいけないと貸金業法で定められています。そのため、任意整理を始めることで一時的に督促をストップできるという仕組みです。
ただし、受任通知には訴訟による借金の返還請求まで止める効力はないので、稀なケースではありますが任意整理の手続き中に債権者が訴訟を起こし、裁判所から通知が届くこともあります。
その場合は、届いた通知を持って速やかに依頼している事務所に相談することで、弁護士・司法書士が訴訟の対応も含めて手続きしてくれます。
既に借金の支払いを滞納していても諦めず、まずは弁護士・司法書士に相談しましょう。
③一時的な支払い猶予期間が得られる
弁護士や司法書士が債権者と交渉している間、一時的に支払いが猶予されることも、任意整理をおこなうメリットといえるでしょう。
支払いが猶予されるのは、弁護士や司法書士に任意整理を依頼してから、交渉がまとまり利息の減額割合や月々の返済額などが決定して、債権者への返済が再開されるまでの間です。債務者の返済状況などにもよりますが、おおよそ3〜6ヶ月間と考えておきましょう。
この支払猶予期間に、弁護士や司法書士が一緒に収支の見直しをおこなったり、無理のない返済計画を立て直してくれるので、借金完済までの目処が立てられるようになります。
④家族や職場の人など周囲に知られにくい
自己破産や個人再生の場合、裁判所に同居している家族などの収入証明書を提出しなければならなかったり、自宅に裁判所からの通知が届いたりすることがあります。そのため、同居している家族などに秘密でおこなうことは難しいとされているのです。
また、自己破産や個人再生の場合には官報に名前が載るため、勤めている会社で官報をチェックしている場合は、職場の人に知られてしまうリスクもあります。
一方で、任意整理は裁判所へ収入証明書を提出したり、官報に名前が載ることはなく、職場の人はもちろん家族にも知られずにおこなえる手続きです。
依頼する事務所からの電話連絡や送られてくる書類の管理などには気をつける必要がありますが、事前に依頼する事務所へ家族に内緒で任意整理をおこないたい旨を伝えておくと、法律事務所からの郵便物とは分からないようにして書類を発送してくれたり、電話で連絡を取り合う時間帯などにも配慮してくれる場合が多いです。
⑤費用負担が比較的少ない
他の債務整理(自己破産や個人再生)に比べて、費用負担が少ない点も、任意整理のメリットといえます。
自己破産や個人再生の費用は、最低でも20万円以上になることが一般的で、高い場合は100万円以上かかることもあります。
一方で、債権者1社を任意整理するためにかかる費用は、安い場合だと2万円程度、高くても10万円以内であることがほとんどです。
比較的少ない費用で利用できることから、パートやアルバイトなど収入が少ない人も利用しやすい手続きといえます。
⑥裁判所手続きが不要
任意整理は、弁護士や司法書士が債務者と債権者の間に入り、直接交渉をおこないます。自己破産や個人再生とは異なり、裁判所を介さず手続きをおこなうため、比較的早く借金問題を解決することも可能です。
通常、自己破産や個人再生の手続きにかかる期間は半年〜1年程度ですが、裁判所へ提出する書類が揃わなかったり債務者が資産をたくさん持っていたりすると、さらに長い期間を要する場合もあります。
一方で、任意整理の場合は裁判所へ書類を提出したり、裁判所が債務者の資産を調査することはないため、基本的には半年以内に手続きが完了します。早い場合だと、3ヶ月程度で債権者と和解できるケースも珍しくないのです。
⑦債務整理の対象を選べる
任意整理は、債務整理の対象となる債権者を1社ずつ選べます。
たとえば、ローンの支払いが残っている車やブランド品などがある場合、ローン会社を整理対象から外すことで商品を手元に残せます。
また、借入先の中にお世話になっている取引先や大切な友人などが含まれている場合、貸金業者からの借入だけを整理して取引先や友人にはいままでどおり返済していくことも可能です。
一方で、個人再生や自己破産の場合は、原則としてすべての借入先を整理対象としなければなりません。
既に個人再生や自己破産を行おうとしている方は任意整理への変更も検討してよいでしょう。
任意整理のデメリットと注意点
ここまで、任意整理には借金を減額できるだけでなく「督促を止められる」「債務整理の対象を選べる」などさまざまなメリットがあることをお伝えしてきました。
しかし、任意整理にも良い面ばかりではなく、デメリットや注意しなければならない点が存在します。
この項目では、任意整理のデメリットと注意点について詳しくみていきましょう。
任意整理のデメリット
まずは、任意整理をおこなううえでのデメリットについて解説します。
ブラックリストに3〜5年掲載される
任意整理のような債務整理をおこなったり、借金の滞納を続けると信用情報機関に事故情報として掲載されます。これが、いわゆる「ブラックリストに載る」という状態です。
ブラックリストに載ると次のような影響を受けます。
- クレジットカードの新規発行ができない
- 銀行や消費者金融からの新規借入ができない
- 途上与信により既に持っているクレジットカードが利用停止や強制解約になる
- 既に借りている銀行や消費者金融からの追加借入ができない
- 借金の保証人になれない
一部の債権者を任意整理の対象から外したとしても、今後もカードを使い続けたり追加で借入ができる可能性は低いといえます。複数のクレジットカードを所有していたり、複数の消費者金融から借入している場合は、まとめて任意整理することも検討しましょう。
また、自分の信用情報に事故情報が掲載されている間は、誰かの借金の保証人になることも難しくなります。
既に保証人になっている借金については、保証人の信用情報まで定期的にチェックしている金融機関は少ないため、保証人を外されるなどの影響が出る可能性は低いでしょう。しかし、何かのきっかけで金融機関が保証人の信用情報に事故情報が掲載されていることに気づいた場合は、別の保証人をたてるよう要求されるケースもあるので注意が必要です。
なお、任意整理によって掲載された事故情報はずっと残り続けるわけではなく、借金を完済してから約3〜5年で削除されるのが一般的です。
債務整理後にもカード決済する方法は残されています。たとえば、デビットカードやプリペイドカードなどを利用する方法です。これらを代用することで、ネット通販などの決済もこれまでどおりおこなえます。
※以下、債務整理後にできるカード決済について詳しくまとめた記事になりますので興味のある方はご覧ください。
任意整理をおこなううえでの注意点
任意整理をおこなううえでの注意点には以下のようなものがあります。
- ローン返済中のものは没収される恐れがある
- 保証人がついている場合は督促がいく可能性がある
- 担保を処分される可能性がある
- 税金は任意整理の対象外
①ローン返済中のものは没収される恐れがある
車やブランド品などの商品をローンで購入した場合、ローンを完済するまで商品の所有者は債権者とみなされます。
そのため、ローン支払い途中でローン会社と任意整理の交渉をしてしまうと、債権者から代金未払いとして商品を返却するよう要求されてしまうのです。
ローンが残っている商品を手元に残したい場合は、ローン会社を整理対象から外すことをおすすめします。
②保証人がついている場合は督促がいく可能性がある
保証人とは「主債務者(実際にお金を借りた人)が借金を返済できなくなったとき、代わりに返済する義務を負う人」のことです。
保証人がついている借金を任意整理すると、債権者は「主債務者が返済不能になった」と判断するため、保証人へ督促をおこなう恐れがあります。
この場合、任意整理の交渉が成立すれば、債権者は主債務者に対して期限の利益を再度認めることになるので、主債務者が和解内容に従って返済を続けている限り、保証人への督促も止まることになります。
しかし、債権者が主債務者との任意整理交渉に応じるより保証人から回収することを選択した場合は、保証人への督促が止まらない可能性もあるのです。この場合、保証人に返済能力がなければ、主債務者と同様に任意整理などの債務整理手続きをおこなう必要があるでしょう。
もしも、保証人に迷惑をかけたくないのであれば、保証人がついている借金については任意整理の対象から外すことです。
やむを得ず、保証人がついている借金を任意整理する場合は、保証人に任意整理する旨をしっかりと伝え、一緒に債務整理をするのかも含めてよく話し合ってから手続きすることをおすすめします。
③担保を処分される可能性がある
担保とは「債務者が借金を返せなくなったとき、債権者の損害を補うために保証として差し出す物品など」のことをいいます。
担保付きの借金を任意整理する場合、利息カットや分割返済などの交渉に応じてもらえる代わりに、債務者が借金を返せなくなったとみなされ担保になっている物品を債権者に差し出さなければなりません。
担保になっている物品を手放したくない場合は、担保付きの借金は整理対象から外し、いままでどおり払っていくことをおすすめします。
④税金は任意整理の対象外
国民健康保険や国民年金、住民税などの国に納める税金などは、弁護士や司法書士が間に入って任意整理をおこなえません。
もし、税金などを滞納してしまった場合には、早めに役所へ相談に行き、分割や猶予の申請をしましょう。
借金の場合、債権者が債務者の財産を差し押さえるためには訴訟を起こす必要がありますが、税金の場合は財産を差し押さえるのに訴訟を起こす必要はありません。そのため、税金を滞納してからほどなく銀行口座などを差し押さえられるケースは珍しくないのです。
税金を滞納した場合の分割払いについては自治体によって対応に違いがあるようですが、ほとんどの場合月5千円など少ない金額での分割払いに応じてくれます。支払いが厳しい場合には、放置せず早めに役所へ相談に行くようにしましょう。
任意整理ができる条件
任意整理は任意の交渉事であり、応じなかった債権者を罰するような法律もありません。利息カットや分割返済に応じるかどうかは、あくまでも債権者に決定権があるのです。
この項目では、債権者が任意整理に応じてくれる条件について、詳しく解説します。
※任意整理ができる条件については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。
3〜5年で元金を返済可能なこと
任意整理をすることで減らせるのはあくまでも利息のみであり、元金は全額残ってしまうことが一般的です。残った元金は任意整理後に債権者へ返済しなければならず、その返済にかけられる期間は3〜5年の間となる場合が多いです。
つまり、3〜5年でいまある借金の元金を返済可能なことが、任意整理ができる条件となります。
任意整理後に支払いが滞ってしまった場合、せっかく費用を払って任意整理を依頼したのに、依頼していた事務所に契約を解消されてしまったり、債権者から残金を一括で支払うよう請求されてしまう恐れがあります。
たとえば、仕事に就いておらず収入がなかったり、現在の収入では任意整理後の返済額も支払っていくのが難しい場合には、依頼する事務所とよく話し合い自己破産や個人再生などの債務整理手続きも合わせて検討するとよいでしょう。
一定期間返済を続けていること
任意整理は「いままで利息で稼がせてもらったから、今後は貸した分だけきちんと返してくれればいいよ」と債権者に譲歩してもらう手続きともいえます。
そのため、返済期間が長いほど(利息をたくさん支払っているほど)債権者は交渉に応じてくれやすくなり、利息の減額割合や分割回数などの条件も良くなる傾向があります。
一方で、借入をしてから一度も返済していないなどあまりにも返済期間が短いと、利息を一部しかカットしてくれなかったり、1年以内など短い期間での返済を迫ってくる債権者もいるのです。
「なるべく利息の減額割合を大きくしたい」「分割回数をできるだけ多くしたい」などの希望がある人は、最低でも3ヶ月以上、できれば半年以上は返済実績がある借金について任意整理することをおすすめします。
任意整理にかかる費用相場
任意整理は弁護士や司法書士に依頼しておこなうのが一般的で、弁護士・司法書士に支払う報酬が任意整理の費用となります。費用の金額は、整理する借入先の数や借金の減額幅に応じて変動します。
この項目では、任意整理にかかる費用相場や一括での費用工面が難しい場合の対策について、詳しくみていきましょう。
費用相場は1社あたり約3~7万円
任意整理にかかる主な費用と各費用の目安金額は以下のとおりです。
費用の種類 | 内容 | 金額の目安 |
---|---|---|
相談料 | 借金について相談する際にかかる費用 | 0円〜2万円 |
着手金 | 手続きを開始する際にかかる費用 | 2万円~5万円×債権者数 |
解決報酬金 | 借金問題を解決したことに対してかかる費用 (手続きの結果にかかわらず金額は一定) |
1万円〜2万円×債権者数 |
成功報酬金 (減額報酬金) |
借金問題を解決したことに対してかかる費用 (借金の減額幅に応じて金額が変動) |
減額に成功した金額の10〜20% |
過払報酬金 | 過払い金の回収に成功した際かかる費用 | 回収した過払い金額の20% (訴訟ありの場合25%) |
手続きにかかる実費 | 手続きをおこなう際に必要な各種手数料など | 返済代行:1社あたり1,000円 |
事務所によって違いはありますが、1社整理するごとにかかる費用は「弁護士だと4〜7万円程度」「司法書士だと2〜5万円程度」が一般的です。よって、全体の費用相場は債権者1社あたり約3〜7万円と考えられます。
司法書士に依頼したほうが費用は安く抑えられる場合が多いようですが、司法書士が任意整理の手続きで代理人になれるのは「140万円以下の借金」のみなので注意しましょう。
ちなみに、140万円以下の借金というのは1社あたりの金額のことで、複数社から借金がありその合計金額が140万円を超えていたとしても、各社の金額が140万円以下であれば司法書士が代理人になることは可能です。
一方、弁護士の場合は司法書士に比べて費用は高めですが、代理人になれる借金の金額に制限はありません。また、無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、うまく活用すると費用を抑えられます。
任意整理の費用については以下の記事でも紹介していますので、参考にしてください。
一括での費用工面が難しい場合の対策
任意整理の費用相場をみて「お金に困って任意整理を検討しているのに、何万円もの費用を一括で支払うなんて無理」と思った人もいるでしょう。
しかし、弁護士事務所・司法書士事務所の中には、費用の分割払いに対応している事務所も多くあります。また、経済的に余裕がない人に対して、無料の法律相談や費用の立て替えをおこなってくれる制度もあるので、うまく活用するとよいでしょう。
次の項目から、一括での費用工面が難しい場合の対策について、詳しく紹介します。
費用の分割払いが可能な事務所を選ぶ
債務整理を取り扱う弁護士事務所・司法書士事務所の多くが、費用の分割払いに対応しています。
そのような事務所を選べば、弁護士や司法書士への費用を無理のない金額で積み立てていくことが可能です。前述したように、任意整理を依頼すると債権者への返済は一時的にストップできるので、返済と費用の支払いが被る心配もありません。
費用の分割回数については、手続きの種類ごとにあらかじめ決められている事務所もありますが、債務者の経済状況を考慮して柔軟に対応してくれるところがほとんどです。まずは無料相談などを利用して、弁護士・司法書士に自分の借入状況や収支状況を詳しく説明し、費用の見積もりや支払い計画を立ててもらうとよいでしょう。
民事法律扶助制度が利用できる事務所を選ぶ
弁護士事務所・司法書士事務所の中には、民事法律扶助制度が利用できるところもあります。
民事法律扶助制度とは、経済的に余裕がない人に対して無料の法律相談や費用の立て替えをおこなってくれる制度のことです。民事法律扶助制度が利用できる事務所を選べば、費用負担を大幅に軽減できるため、気兼ねなく弁護士や司法書士へ任意整理を依頼できるでしょう。
ただし、民事法律扶助制度を利用するには、収入と資産が法テラスの定める資力基準以下であることが条件です。一定以上の収入がある人は利用できないので、注意してください。
参照:民事法律扶助|法テラス
任意整理の流れとかかる期間
この項目では、任意整理手続きの一般的な流れについて紹介します。
併せて、任意整理手続きが完了するまでにかかる期間や、借金を完済するまでにかかる期間などについても解説するので参考にしてください。
任意整理の流れ
任意整理の一般的な流れは以下のとおりです。
- 法律相談
- 委任契約
- 受任通知の送付
- 債権調査
- 和解交渉
- 和解内容の決定
- 返済の再開
1.法律相談
まずは弁護士または司法書士の事務所に相談し、任意整理を検討している旨を伝えましょう。
相談の際に弁護士・司法書士は「任意整理をしたらどのような和解内容になりそうか?」「その和解内容で支払っていける生活状況になっているか?」を調べるため、債務者の抱えている借金や生活状況について詳細にヒアリングします。
そのため、あらかじめ以下のような項目について調べてまとめておくとスムーズに手続きを進められるでしょう。
弁護士へ相談する前に調べておくといいもの
- 合計何社から借入しているか?
- 借入している業者の名前
- 各業者ごとの残債
- 各業者ごとの月々の返済額
- 各業者ごとの借入期間
- 各業者ごとの滞納期間
- 各業者ごとの連帯保証人の有無
- 各業者ごとの担保の有無
- 各業者ごとの裁判所通知の有無
- 裁判所通知を受け取った場合、支払督促か訴状か?
- 裁判所通知を受け取った場合、受取日はいつか?
- 訴状を受け取った場合、期日はいつになっているか?
- 借入理由
- 滞納理由
- 手取り月収
- ボーナスの有無(受取月・金額)
- 副業の有無
- 仕送り・援助などはもらっているか?
- 月々の生活費
2.委任契約
依頼する事務所が決まったら、弁護士または司法書士と委任契約を結びましょう。委任契約を結ぶことで、弁護士・司法書士は代理人として債権者と任意整理の交渉ができるようになります。
3.受任通知の送付
代理人となった弁護士が債権者に対して「受任通知」を送ることで任意整理の手続きがスタートします。
受任通知とは「弁護士が債務者の代理人となって債務整理手続きをおこなうことを、債権者に知らせる通知」です。前述したように、債権者の債務者に対する直接の取立てを停止させる効力があります。
4.債権調査
受任通知を送った後に、まず最初に弁護士・司法書士がおこなうのは「債権調査」です。
債権調査とは、債権者に取引履歴(借入の金額や日付・返済の金額や日付などの情報)の開示を求め、開示された取引履歴に基づいて「引き直し計算」をおこなうことです。
引き直し計算とは、債権者との間でおこなわれたすべての貸し借りについて適切な利率に直して利息を計算し直す作業のことで、これによって過払金があることが判明する場合もあります。
5.和解交渉
債権調査が終わったら、代理人と債権者との間で今後の返済について利息の減額や分割返済の交渉がおこなわれます。
6.和解内容の決定
和解内容が決定したら、任意整理の手続きは完了です。
7.返済の再開
あとは、和解内容に沿って債務者が債権者に直接または依頼した事務所を通して再び返済をおこなっていきます。
手続き期間はおおよそ3~6ヶ月
弁護士・司法書士に任意整理を依頼してから再び返済が開始されるまでにかかる期間は、およそ3〜6ヶ月です。
ただし、以下のような事情があるとさらに長引くケースもあるため注意してください。
- 債権者が交渉に応じてくれない
- 和解内容がなかなかまとまらない
なお、返済が再開されてから借金を完済するまでにかかる期間は、和解内容によりますがおおよそ3~5年間です。
さらに、借金を完済してから信用情報の事故情報が削除されるまでにかかる期間はおおよそ3~5年間です。信用情報の事故情報が削除されると、クレジットカードの新規発行や新規借入ができるようになるので、再びカードが作れるようになるまでの期間の目安として覚えておくとよいでしょう。
任意整理にかかる期間については以下の記事でも紹介していますので、参考にしてください。
任意整理しないほうがいいケース
ネット上などで任意整理について調べていると「任意整理はしないほうがいい」「任意整理しなければよかった」という言葉を目にしたことがあるかもしれません。そのような情報をみて「自分はやっぱり任意整理しないほうがいいのでは?」と悩んでいる人もいるでしょう。
じつは、借金をしていても「任意整理しないほうがいいケース」はたしかに存在します。それは、たとえば以下のようなケースです。
- カットできる利息より手続き費用が高い
- 任意整理をするのが2回目
- 個人からの借入
次の項目から、それぞれのケースについて詳しくみていきましょう。
カットできる利息より手続き費用が高い
弁護士または司法書士へ依頼して任意整理をおこなう場合、必ず費用がかかります。ここで考えなければならないのが「カットできる利息の金額とかかる費用を比べてどちらのほうが高いか?」です。
カットできる利息の金額よりかかる費用が高かった場合、借金の負担を軽くするために任意整理をしたはずなのに、損をすることになってしまいます。
カットできる利息の金額よりかかる費用が高くなるのは、主に以下のようなケースです。
- 借入額自体が少ない
- 奨学金や住宅ローン、車のローンなど利率の低い借金を任意整理する場合
利息は「借入額に対して◯%」という形で計算されるため、借入額が少ないと発生する利息の金額も少なくなります。そもそも利息の金額が少ないということは、カットできる金額も少ないため手続き費用のほうが高くなる可能性が高いです。
また、利率の低い借金も利息の金額が少なくなるため、同様に手続き費用のほうが高くなる可能性が高いでしょう。
借入額が少ない場合は債権者が分割払いに応じてくれる可能性も高いので、まずは自分で債権者と交渉してみることをおすすめします。
任意整理をするのが2回目
任意整理をして一度は債権者と和解したものの、その後に返済ができなくなり、再び任意整理をしようと考える人もいるでしょう。
この場合、債権者からは「一度した約束を破った人」とみなされるため、和解条件が厳しくなったり交渉自体応じてくれないケースもあります。
債権者によっては、1回目と同程度の内容で和解してくれる場合もあるため一概にはいえませんが、あまりにも和解条件が厳しかったり、交渉に応じてもらえない場合は、自己破産や個人再生など他の債務整理手続きを検討するとよいでしょう。
個人からの借入
借金をしている相手が、銀行や消費者金融などの金融機関ではなく個人の場合、弁護士や司法書士が間に入っても交渉に応じてもらえない可能性が高いです。
また、正規の貸金業者であれば、貸金業法で禁止されているような行き過ぎた取り立て行為はおこないませんが、相手が個人の場合、無理に踏み倒そうとすると何をされるかわからない怖さもあります。
もし、身の危険を感じるような取り立て行為があれば、弁護士や司法書士だけでは対処しきれないため、一刻も早く警察に相談してください。
まとめ
任意整理は、家族や職場の人など周囲に知られにくく、また手続きのすべてを代理人である弁護士に任せることができるため、比較的誰でも利用しやすい債務整理の手続きだといえるでしょう。
また、債務整理には任意整理以外にもさまざまな方法があり、弁護士に相談することで自分の状況に合わせた最適な方法を提案してもらうことができます。
任意整理をしようか検討している人は、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
任意整理のよくある質問
任意整理とはどのような手続きですか?
任意整理の費用相場を教えてください。
任意整理にかかる期間はどれくらいですか?
依頼件数や滞納状況によってはもっと長くかかる場合もあります。
和解成立から完済までは原則3~5年です。
任意整理をするべきか悩んでいます。どこに相談したらよいですか?
当サイトでも、無料相談可能な法律事務所を紹介しています。
無料相談を利用して、あなたに合った借金の解決方法をアドバイスしてもらうとよいでしょう。
STEP債務整理「債務整理に力を入れるおすすめの弁護士を紹介」
任意整理は弁護士と司法書士どちらに依頼するべきですか?
しかし、140万円を超える可能性があるなら最初から弁護士へ依頼するのがよいでしょう。
また、債務整理に関しては、弁護士の方が経験が豊富である場合が多いです。