債務整理で資格制限があるのは自己破産だけ
「資格制限があるから、債務整理をすると就けない職業や取得できない資格が出てきてしまうのでは?」
そう考えている人もいるかもしれません。
しかし、資格制限がある債務整理手続きは自己破産だけです。
そのため、自己破産以外の債務整理手続きを選択すれば、資格制限を気にすることなく借金の負担を減らせます。
また自己破産を選択した場合も、資格制限によって影響を受けるのはごく一部の資格・職業だけであり、ほとんどの人は何の制限も受けることなく仕事を続けられます。
自己破産手続きについて、さらに詳しく知りたい場合はこちらの記事も参考にしてください。
任意整理・個人再生に資格制限はない
自己破産以外の債務整理手続きといいましたが、具体的には以下のような方法があります。
- 任意整理・・・将来利息をカットや減額して3~5年で分割返済する。
- 個人再生・・・借金総額を1/5~1/10に減らし3~5年で分割返済する。
上記2つの方法であれば、資格制限を受けることなく月々の返済額を減らしたり、返済総額を抑えられます。
それぞれの方法について詳しく知りたい場合、以下の記事も参考にしてください。
また「自分の場合どれくらい負担が軽くなるのか?」「自分の状況だとどの方法が最適なのか?」気になる場合は法律事務所へ直接相談するのがおすすめです。
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※ 債務整理に伴うその他のデメリットについては以下の記事に詳しくまとめています。興味のある方はご覧ください。
資格制限があるのは「破産者で復権を得ない期間」
「自己破産すると、資格制限がある資格はずっと使えないの?」
「自己破産すると、希望の職業に就けなかったり、取りたい資格も取得できないの?」
自己破産の資格制限に対して、このような不安を抱いている人も多いでしょう。
しかし自己破産をしても、ずっと資格制限に該当する資格が使えなかったり、資格が取得できないわけではありません。
一般的に自己破産によって資格制限がかかるのは「破産者で復権を得ない期間」とされています。
なお、資格制限の期間についてはそれぞれの資格・職業を定めた法律に記載されています。
■弁護士法7条4号
第七条 次に掲げる者は、第四条、第五条及び前条の規定にかかわらず、弁護士となる資格を有しない。
四 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
引用元:e-Govポータル「弁護士法7条4号」
■公認会計士法34条の10の10第5号
第三十四条の十の十 次の各号のいずれかに該当する者は、特定社員の登録を受けることができない。
五 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
引用元:e-Govポータル「公認会計士法34条の10の10第5号」
■貸金業法6条1項2号
第六条 内閣総理大臣又は都道府県知事は、第三条第一項の登録を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は登録申請書若しくはその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。
二 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
引用元:e-Govポータル「貸金業法6条1項2号」
では「破産者で復権を得ない期間」とは、具体的にいつからいつまでなのでしょうか。
次の項目から詳しくお伝えします。
「破産者で復権を得ない期間」は免責が下りるかどうかで変わる
破産者で復権を得ない期間とは、いつからいつまでをいうのでしょうか。
破産者とは、破産手続の開始決定を受けた債務者のことをいいます。
第二条 この法律において「破産手続」とは、次章以下(第十二章を除く。)に定めるところにより、債務者の財産又は相続財産若しくは信託財産を清算する手続をいう。
4 この法律において「破産者」とは、債務者であって、第三十条第一項の規定により破産手続開始の決定がされているものをいう。
引用元:e-Govポータル「破産法2条4項」
つまり破産者で復権を得ない期間とは、破産手続の開始決定を受けてから復権を得るまでの期間を示しています。
そして復権を得るには、主に以下の2つの方法があります。
- 免責許可決定が確定する。
- 自己破産手続きから10年が経過する。
上記のうち、どちらの方法で復権を得るかは自己破産の際に免責が下りるかどうかで変わります。
免責が下りる場合・下りない場合について、次の項目からそれぞれ詳しくお伝えします。
【免責が下りる場合】破産手続の開始決定から免責許可決定の確定まで
自己破産の際に免責が下りる場合は、免責許可決定が確定することによって復権を得られます。
実際のところ、東京地方裁判所の場合は8~9割のケースで免責許可決定が出されているようです。
一般的に、自己破産の申立てから免責許可決定が出されるまで約4~5ヶ月、免責許可決定が出されてから確定するまで約1ヶ月かかります。
そのため多くのケースでは、自己破産の申立てから4~6ヶ月程で資格制限は解除されると考えてよいでしょう。
【免責が下りない場合】自己破産手続きから10年が経過するまで
借入理由が浪費やギャンブルだったり偏頗弁済などをしてしまうと、免責不許可事由に該当し、原則として免責が下りません。
偏頗弁済・・・特定の債権者に優先して返済すること。
免責不許可事由・・・免責が下りない原因となる事由。
もっとも裁量免責といって、裁判所の裁量によって免責が下りる場合もあります。
しかし免責不許可事由の程度が大きかったり、自己破産手続きに非協力的な場合などは、免責が下りない場合もあります。
その場合も、自己破産手続きから10年が経過すると、自動的に復権を得ることになり資格制限も解除されます。
資格制限がある資格・職業の例
資格制限の対象となる資格・職業には、公的資格・職業に関するものが多いです。
■公的免許・資格の例
- 弁護士
- 弁理士
- 社労士
- 司法書士
- 土地家屋調査士
- 不動産鑑定士
- 公認会計士
- 税理士
- 行政書士
- 宅地建物取引主任者
■公的職業の例
- 公証人
- 都道府県公安委員会
- 公正取引委員会
- 教育委員会
しかしそれだけでなく、私法上の地位やその他の職業なども、資格制限の対象となる場合があります。
■私法上の地位の例
■その他の職業の例
- 生命保険外交員(生命保険募集人)
- 取締役
- 警備員(警備業者)
- 卸売業者
- 貸金業者
- 旅行業務取扱主任者(旅行業者)
- 建設業
また「どの資格・職業が制限を受けるか」について、破産法自体に定めはなく、それぞれの資格・職業を定めた法律に記載されています。
例えば弁護士であれば弁護士法、生命保険募集人であれば保険業法といった具合です。
なお、資格制限にはいくつかタイプがあります。
- 制限期間中、資格の取得・使用ができないタイプ
- 制限期間中、資格の取得は不可だが既存の資格は使えるタイプ
- 資格制限により失職するが制限期間中に復帰可能なタイプ
次の項目から、上記3つのタイプにあてはまる資格・職業ついて、それぞれ例を挙げて詳しくお伝えします。
資格の取得・使用ができない資格・職業
- 弁護士
- 司法書士
- 公認会計士
- 税理士
- 警備員
- 宅地建物取引主任者
例えば上記のような資格では「破産者で復権を得ない」ことが欠格事由となります。
欠格事由がある場合、新たにその資格を取得できないだけでなく、既に資格を有している場合も一時的に資格が使えなくなります。
よって資格制限のかかる期間中は、資格の取得・使用ができなくなるのです。
取得不可だが既存の資格は使える資格・職業
生命保険外交員(生命保険募集人)は資格制限の対象となる資格・職業の一つです。
生命保険外交員の場合、資格制限のかかる期間中は新たに資格を取得できませんが、既に資格を有している人が一時的に資格を使えなくなることはありません。
ただし生命保険外交員が自己破産した場合、内閣総理大臣によって登録取消や6ヶ月以内の業務停止を命じられる恐れがあります。
とはいえ、これも絶対ではありませんから「生命保険外交員は自己破産しても問題ないのでは?」と思う人もいるかもしれません。
ここで注意しなければならないのが、生命保険会社の就業規則です。
次の項目から詳しくお伝えします。
勤務先によっては就業規則で「破産したら解雇」と定めている場合も
前述したように、法律上は資格制限により生命保険外交員の資格を一時的に使えなくなることはありません。
しかし、保険会社の就業規則には自己破産が解雇事由として記載されている場合が非常に多いです。
「勤務先にわざわざ申告しなければ知られることはないのでは?」と思うかもしれませんが、自己破産をすると官報に名前が掲載されます。
官報・・・国が発行している新聞のようなもの。
保険会社は官報をチェックしていることが多いので、勤務先に申告せず自己破産したとしても、官報によって発覚し解雇される可能性が高いので注意が必要です。
資格制限により失職するが制限期間中に復帰可能な資格・職業
会社の取締役は、自己破産すると取締役の地位を失います。
これは取締役という資格が制限されるのではなく、自己破産によって取締役と会社との委任契約が終了するためです。
取締役などの役員と会社との関係は委任契約であり、民法では「委任契約は、委任者または受任者のどちらか一方が破産すると終了する」と定められています。
第六百五十三条 委任は、次に掲げる事由によって終了する。
二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
引用元:e-Govポータル「民法653条2号」
ただし自己破産は取締役の欠格事由ではないので、自己破産中であっても株主総会で再び取締役に選任されれば、取締役の地位に戻ることも可能です。
もっとも銀行の取締役のように、自己破産が欠格事由になる場合もあるので注意してください。
- 自分が有している資格、または将来的に取得予定の資格が、資格制限に該当するか?
- 資格制限に該当する場合、どのようなタイプにあたるのか?
- 資格制限に対して何か対策をとる必要があるか?(配置転換・転職・他の債務整理の検討など)
上記のような項目について詳しく相談・確認したい場合は、破産法に詳しい弁護士に相談するのがおすすめです。
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「資格制限=会社をクビになる」は誤解
「債務整理で資格制限がかかると、今勤めている会社をクビになるのでは」と心配する人は少なくありません。
しかし「資格制限=会社をクビになる」という認識には、大きな誤解があります。
自己破産など債務整理をしたことを理由に解雇することは「不当解雇」にあたります。
よって債務整理以外に解雇されるような事由が見当たらない場合は、不当解雇で会社を訴えることもできるのです。
ただし、前述した生命保険会社のように、就業規則などで自己破産が解雇事由と定められている場合もあるので注意してください。
「自分の場合、債務整理をしても本当に会社をクビにならないか確かめたい」
「就業規則を確認したら、債務整理に関するものらしい記載があって不安」
このような場合は、法律事務所へ相談してきちんと確認することをおすすめします。
まとめ
資格制限を受けるのは、債務整理のうち自己破産を選択する場合だけです。
また、資格制限の対象となる資格は限られているので、ほとんどの人は自己破産をしても資格制限の影響を受けずに借金の負担を減らせます。
自分の場合、自己破産をすると資格制限の影響を受けるのか気になる場合は、法律事務所へ一度相談するとよいでしょう。
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債務整理の資格制限についてよくある質問
「債務整理をすると資格制限を受ける」と聞いたのですが、本当ですか?
確かに資格制限はありますが、資格制限を受けるのは自己破産を選択した場合だけで、その他の債務整理手続きを選択する場合は、資格制限はありません。
資格制限を受けるのは具体的にどのような資格ですか?
警備員、生命保険の外交員(生命保険募集人)、建設業、宅地建物取引主任者(宅建)などの資格です。資格制限の対象となる資格は他にも多数ありますので、詳しくは法律事務所へ相談することをおすすめします。
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自己破産をしたら資格制限の対象となる資格はずっと使えないのですか?
資格制限を受けるのは、破産手続の開始決定を受けてから復権を得るまでの間だけです。復権は免責許可決定が確定するか、自己破産手続きから10年が経過すると得ることができます。復権を得れば、資格制限の対象となる資格も、再び使用できるようになります。
自己破産をすると、将来、資格制限の対象となる資格が必要な職業に就けないの?
新たに資格が取得できないのは、破産手続の開始決定を受けてから復権を得るまでの間だけです。復権は免責許可決定が確定するか、自己破産手続きから10年が経過すると得ることができます。復権を得れば、資格制限の対象となる資格も取得できるようになります。
資格制限の対象となる職業に就いている場合、会社にバレるの?
資格制限の対象となる職業、例えば生命保険の外交員の場合は、会社が官報をチェックしており、社員が自己破産をしていないかチェックしている場合もあるようです。詳しく知りたい場合は、法律事務所へ一度相談することをおすすめします。
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