債務整理に強い弁護士の選び方
債務整理の手続きを依頼する弁護士は、以下のポイントに注意して選びましょう。
- 債務整理の実績が豊富にあるか
- かかる費用が明確か
- かかる費用は相場以内か
- 減額報酬が発生しないか
- 相談料は無料か
- 分割払いが可能か
- 親身になって相談に乗ってくれるか
- デメリットも説明してくれるか
- 対応スピードは速いか
- 通いやすい場所にあるか
- 担当弁護士が変わることはないか
- 弁護士懲戒処分検索センターから処分を受けてないか
それぞれ解説します。
債務整理の実績が豊富にあるか
債務整理の実績が豊富な弁護士事務所を選ぶとよいでしょう。弁護士にはそれぞれ得意分野やとくに力を入れている分野などがあり、中には債務整理を積極的に扱っていない事務所もあるためです。
同じ弁護士でも、債務整理の手続きに長けている弁護士とそうでない弁護士とでは、対応スピードや債権者との交渉スキル、裁判所とのやりとりなどの際に差が出ます。
また、実績や経験がなければ、「その債務整理方法が最適か」の判断ができない可能性があります。
なお、主な債務整理方法は以下の3つです。
任意整理 |
弁護士が債権者と交渉し、将来発生する利息や遅延損害金をカットしてもらう手続き。残債を3年〜5年程度で完済する必要があるため安定した収入が必要。整理対象を選べる。 |
個人再生 |
裁判所に申立て、借金の元本を5分の1〜10分の1程度に減額してもらう手続き。残った借金を原則3年で完済する必要がある。整理対象は選べないが持ち家を残せる可能性がある。 |
自己破産 |
裁判所に免責を許可してもらい、借金をゼロにする手続き。持ち家や車などを失う可能性があるほか、税金や国民保険料、養育費などは免除されない。 |
不慣れな弁護士に依頼したせいで、任意整理の際に債権者と和解できなかったり、自己破産でうまく免責されなかったりといったことも考えられるため、失敗しないためには債務整理の実績が豊富で手続きを知り尽くしている弁護士に依頼すべきでしょう。
弁護士の得意分野や実績は、多くの場合ホームページで確認できます。ホームページにはポジティブな情報しか書かれていない可能性もありますが、実績が豊富であれば債務整理の手続きに精通していると考えられるため、判断基準の1つになるでしょう。
かかる費用が明確か
弁護士費用が明確かどうかも弁護士選びには重要なポイントです。費用が明確でない場合、トータルでいくらかかるかがわかりません。
あとから追加で請求され、最後になってから結局支払えないという事態に陥ってしまう可能性があるため、相談の段階で以下の費用がそれぞれいくらかかるかわかるのが望ましいでしょう。
相談の際に見積もりをしてもらい、それをもとに依頼するかどうか決めることをおすすめします。
そのほか、依頼後のスケジュールが明確かどうかも重要なポイントです。「依頼したのはいいけど、今手続きがどうなっているのかわからない」というのでは安心できません。
「本当に借金をなくせるのか・減額できるのか」といった不安は、無事手続きが終わるまで続きます。スケジュールがわかっていれば焦らずに済むため、心の健康も保てるでしょう。
なお、自己破産の申立てを行い免責の許可が下りると借金は免除されますが、弁護士費用については免責されないため注意が必要です。
かかる費用は相場以内か
費用が相場以内かどうかも重要です。相場と比べ、金額設定が低すぎる事務所や高すぎる事務所はやめておいたほうがよいでしょう。
相場よりも低すぎる場合、あとから追加で請求されたり説明にない費用が別途かかる可能性があります。反対に高すぎるときは、債務整理で借金の返済額を減らせても、減額された分が高額な弁護士費用で相殺されてしまうおそれがあります。
たとえば任意整理の費用相場は1社あたり4万円程度です。にもかかわらず、1社あたり10万円を超えているようなら高すぎるといえるでしょう。
実際にいくらかかるかは見積もりをしてもらうまでわかりませんが、事務所の多くはホームページに弁護士費用を掲載しています。まずは、ホームページに掲載されている費用が相場と比べてどうなのかを確認しましょう。
債務整理を弁護士に相談・依頼した場合の費用については、「債務整理にかかる弁護士費用の相場」で解説します。
減額報酬が発生しないか
減額報酬が発生しないかどうかも確認すべきポイントです。
【減額報酬とは】
債権者との交渉の結果、借金を減額できたときに発生する費用のことで、任意整理で設定されていることがある。たとえば減額報酬が10%に設定されている場合、減額できたのが50万円なら5万円の減額報酬が発生する。
減額報酬を設定している事務所を避けるべき理由は、費用がわかりにくくなるためです。
いくら減額されるかは、債権者に対して取引履歴を開示請求し、それをもとに借金の正確な残高を計算する必要があるため依頼の時点ではわかりません。そのため予想よりも費用がかさみ、支払えなくなる可能性があります。
弁護士事務所の中には、減額報酬を設定していないところもあります。任意整理の際は、減額報酬が発生するところを避けたほうがよいでしょう。
相談料は無料か
相談料が無料の事務所を選ぶとよいでしょう。無料なら、費用を気にせず「とりあえず相談してみる」ということができるためです。
無料相談を通して、どのような弁護士事務所か、弁護士の対応や人柄はどうかといったことも気軽にチェックできます。実際に相談した結果、「この弁護士に依頼したい」と思ったらそのまま依頼すればよいでしょう。
しかし「もう少しほかの弁護士にも相談したい」と感じたら、正式な依頼はせず相談だけで終了できます。
なお、無料には種類があります。何度でも無料という事務所もあれば、初回のみ無料、初回30分のみ無料という事務所もあるため、無料の種類にも注目するようにしましょう。
分割払いが可能か
費用が心配な場合は、分割払いに対応している事務所を選ぶことをおすすめします。弁護士費用は高額になるケースも多いためです。
費用については「債務整理にかかる弁護士費用の相場」で解説しますが、たとえば自己破産手続きには30万円〜80万円程度の弁護士費用がかかります。
任意整理でも1社につき4万円程度かかるため、5社からの借金を整理対象にするなら20万円程度必要です。そのため、一括で支払えない人も少なくないでしょう。
弁護士事務所の多くは、債務整理を検討している人が一括で弁護士費用を支払うことの難しさを理解しており、分割払いに対応しています。中には、借金問題に関する依頼のみ分割払いに対応しているところもあります。
しかしそのような事務所ばかりではないため、事前に分割払いが可能かどうかを確認し、分割払いに対応している事務所に依頼するのがよいでしょう。
分割払いが可能な場合、弁護士が「受任通知」を送付し、取り立てがストップしている間に少しずつ支払っていくことが可能です。
【受任通知とは】
債務整理を弁護士や司法書士といった専門家に依頼したあと、専門家が債権者に対して送付する通知のこと。通知を受け取った債権者は、債務者に直接借金の取り立てができなくなる。
親身になって相談に乗ってくれるか
親身になって相談に乗ってくれることも、弁護士選びでは重要です。
借金問題は非常にデリケートな悩みであり、相手が弁護士でも、包み隠さず相談するのは勇気がいるものです。冷たい対応しかしてくれないような弁護士では相談しにくく、伝えるべきことも伝えられない可能性があります。
もちろん好みもありますが、依頼者の多くは借金問題に疲れ、精神的に参ってしまっていると考えられるため、テキパキと事務的に進める弁護士よりも対応が丁寧で気持ちに寄り添ってくれる弁護士のほうが適しているでしょう。
また、債務整理の手続きはすぐに終わるようなものではなく、とくに任意整理や個人再生なら3〜5年弁護士との付き合いが続きます。
そのため、「合わない」「苦手」と感じるようなタイプの弁護士だと、数年にわたってストレスを感じながらやりとりしなければなりません。そういったことも踏まえると、性格的にも自分と合う弁護士のほうがよいでしょう。
親身になってくれる弁護士かどうかは、ホームページの情報だけではわからないため、Googleマップの口コミや比較サイト、口コミサイトをチェックするのがおすすめです。誰が書き込んだものかわからないため100%信用するのは危険ですが、参考にはなるでしょう。
デメリットも説明してくれるか
メリットだけでなく、債務整理をすることで生じるデメリットやリスクについても説明してくれる弁護士かどうかも選ぶ際のポイントです。
債務整理には借金を減額したりゼロにしたりといったメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあるためです。
- 一定期間はクレジットカードの利用や新規作成・新たな借入れができない
- 任意整理は同じ債権者からの借入れができなくなる可能性あり
- 個人再生と自己破産は官報に掲載される
- 個人再生と自己破産は債権者を選べないため、保証人・連帯保証人に迷惑がかかる場合がある
- 自己破産は高額な財産を没収されるおそれがある
- 職業によっては、自己破産で一定期間職業・資格制限を受ける
借金から逃れたい一心で債務整理にたどり着いた人の中には、「借金がなくなるなら何でもいい」と考え、デメリットにまで目が向いていないかもしれません。
しかし上記のようなデメリットもあるため、理解したうえで実行する必要があります。言われるまま進めるだけでデメリットについてろくに説明してくれないような弁護士は、やめておいたほうがよいでしょう。
対応スピードは速いか
対応スピードの速さも大切です。対応が遅ければその分手続きの進み具合が遅くなり、長く不安な気持ちで過ごさなければならなくなるためです。
依頼した弁護士が多忙すぎると、対応を後回しにされてしまったり問い合わせても返信が遅かったりといったことが起こり得ます。
反対に、対応が速い弁護士なら、債権者との交渉や裁判官とのやりとりもスピーディに対応してくれると考えられるため、短い時間で手続きを完了できる可能性が高いでしょう。
対応スピードが速いかどうかは、問い合わせフォームの反応や電話の折り返し、メールの返信などの速さで判断できます。レスポンスが速い弁護士は依頼者を大切にしているといえますが、はじめから対応スピードが遅い弁護士は何もかも遅い場合があるため注意しましょう。
債務整理中に弁護士から連絡が来ないときの対処法については、以下の記事を参考にしてください。
通いやすい場所にあるか
弁護士事務所の場所も重要です。自宅や職場から通いやすい場所にある事務所を選ぶとよいでしょう。相談や手続きのために、何度か通うことになるためです。
有名な事務所でも、自宅や職場から遠い場合は億劫になったり交通費がかさんだりしてしまうため、問題なく通える場所にあることを条件に探すのがおすすめです。
弁護士事務所の中には全国対応しているところもありますが、全国対応だからといって費用だけで選ぶと通いにくいのに加え、出張可能と謳いながらも会えずじまいになる可能性もあります。
また、債務整理に関しては、裁判所ごとに異なるルールが設けられている場合があります。
地元の案件をメインに活動している事務所なら地元の裁判所のルールを熟知していると考えられるため、遠方の事務所よりも地元で活動している事務所のほうが安心して任せられるでしょう。
仕事の都合で夜間や週末の対応を希望するときは、夜間や土日に対応してもらえるかどうかも確認しておきましょう。
担当弁護士が変わることはないか
最初から最後まで同じ弁護士が担当してくれるかどうかも重視したい点です。中には、担当がコロコロ変わる事務所もあるためです。
たとえば多くの弁護士が所属している大手弁護士事務所は、担当者がよく変わる傾向にあります。弁護士であればまだよいですが、ほとんど事務員が対応する事務所もあります。
担当弁護士が変わっても、情報がきちんと共有されているなら業務上は問題ないでしょう。しかし担当が頻繁に変わると信頼関係を築きにくく、「本当に任せて大丈夫なのか」と余計な不安が生じてしまいます。
たしかに大手は安心感はありますが、地元の小さな事務所であれば担当が変わりにくいため、担当弁護士と信頼関係を築きやすいでしょう。
弁護士懲戒処分検索センターから処分を受けてないか
依頼を検討している弁護士が、「弁護士懲戒処分検索センター」から処分を受けたことがないかどうかも確認したほうがよいでしょう。
弁護士の中には、弁護士法や所属弁護士会の会則に違反したり非行を行なったりして懲戒処分を受ける人もいるためです。
【弁護士懲戒処分検索センターとは】
2000年1月以降に懲戒処分を受けた弁護士の情報を公開しているサービスのこと。弁護士の氏名や登録番号、所属弁護士会などから検索できる。
債務整理関係で処分を受ける理由には、たとえば以下のものが挙げられます。
- 債務整理の処理を事務員にさせた
- 任意整理で預かったお金を無断で出金した
- 自己破産を長期間放置した
懲戒処分を受けたからといって、それがすべて悪い行いであるとは限りませんが、処分を受けた理由が明らかに私欲に走ったものや不正などであれば、その弁護士への依頼は見送ったほうがよいかもしれません。
参照:弁護士懲戒情報|弁護士懲戒処分検索センター
債務整理のために弁護士を選ぶときの注意点
債務整理のために弁護士を選ぶときは、以下の点に注意しましょう。
- 不明点があれば必ず質問する
- 複数の弁護士事務所に相談して比較する
- 面談不要の弁護士事務所ではないか確認する
- 事務所の規模は気にしない
それぞれ解説します。
なお、債務整理中に弁護士を変更したい場合の手順については、以下の記事を参考にしてください。
不明点があれば必ず質問する
不明点は必ず質問するようにしましょう。不明点を不明なままにしていると、あとあとトラブルになる可能性があるためです。
依頼者は交渉だけを依頼したつもりが、弁護士は交渉以外の手続きもすべて受任したつもりでいるなど、認識の違いが生じることもあります。わからないことや疑問に思っていることは相談の段階ですべて聞き、依頼後も不明点が生じたらその都度聞くようにしましょう。
そのためにも、気軽に質問できる話しやすい弁護士に依頼することが大切です。
もし依頼後に「質問しづらい」「話にくい」と感じたら、ほかの弁護士に相談するセカンドオピニオンを検討するのも1つの方法です。タイミングによっては変更できないこともありますが、ほかの弁護士の意見を聞くことで依頼している弁護士の方針が正しいかどうかを判断できます。
複数の弁護士事務所に相談して比較する
依頼する弁護士を決める際は複数の事務所に相談し、対応や事務所の雰囲気、費用などを比較することをおすすめします。
事務所の実績や評判はネットでも調べられますが、実際に話してみないことには人柄や相性などはわからないためです。
借金問題に関しては、多くの事務所が無料相談を実施しています。無料相談を実施している事務所を2〜3カ所ピックアップし、それぞれ相談を受けるとよいでしょう。
通常、その場で委任契約を迫られることはなく、無料相談を受けたからといってそのまま依頼しなければならないわけでもないため安心してください。
ただし、もし契約を急かしたり強引に契約へともっていこうとする場合、その事務所との契約はやめておいたほうがよいでしょう。
なお、無料相談を利用するときは、あらかじめ質問したいことをまとめておくことをおすすめします。相談できる時間は30分や1時間など限りがあるためです。
また、弁護士への相談に慣れていないと、緊張して何をどう話せばよいかわからなくなってしまうこともあります。時間を有効活用するためにも、最低限以下の情報はまとめておきましょう。
- 借金をした日付・金額・借入先
- 月々の返済額
- 収入と支出
- 滞納の有無
- 借金の原因
- 借金が返済できない事情
- 所有している財産
さらに、上記を裏付ける資料があれば持参します。相談した事務所のうち、もっとも親身になって相談に乗ってくれた弁護士や「この先生に依頼したい」と思える弁護士に依頼すると、弁護士選びに失敗しにくいでしょう。
面談不要の弁護士事務所ではないか確認する
面談不要の弁護士事務所ではないかを確認しましょう。
日本弁護士連合会が定める「債務整理事件処理の規律を定める規程」や日本司法書士会連合会の「債務整理事件の処理に関する指針」では、依頼前の面談が必要とされています。
しかし中には、面談もせず依頼を受けるルール違反の事務所も存在します。
とくに全国対応している場合は要注意です。ホームページ上では「全国無料出張」などと謳っているにもかかわらず、結局電話やメール、郵送での書類のやりとりだけで完結することも少なくありません。
面談せずに依頼できることは、多忙な人にとってメリットに思えるかもしれませんが、債務整理は依頼者のその後を大きく左右する手続きです。実際に顔を合わせて話をし、信頼関係を築いていく必要があるため、面談不要の事務所は避けることをおすすめします。
参照:債務整理事件処理の規律を定める規程|日本弁護士連合会
参照:債務整理事件の処理に関する指針|日本司法書士会連合会
事務所の規模は気にしない
弁護士事務所を選ぶ際、事務所の規模を気にする必要はありません。「大きな事務所=実力がある」ということではないためです。
全国展開している大きな事務所やCMでよく目にする有名な弁護士事務所はたしかに安心感がありますが、地元で看板を掲げている小さな事務所にも、優秀な弁護士はたくさんいます。
小さな事務所だからこそ、依頼者一人ひとりを大切にし、一人の弁護士が依頼から解決まで心に寄り添った対応をしてくれるところもあるでしょう。
事務所の規模に関係なく、相談件数や解決件数といった実績や弁護士の人柄、事務所の雰囲気などを見て選ぶようにしましょう。
債務整理に強い弁護士の探し方
債務整理に強い弁護士は、以下の方法で探せます。
- 法テラスを利用する
- 自治体の市民相談会を活用する
- 弁護士会の相談会に参加する
- ネット検索する
それぞれ解説します。
法テラスを利用する
弁護士を探したいなら、「法テラス」を利用する方法があります。
【法テラスとは】
経済的に困っている人が法律サービスを受けられるよう国が設立した総合案内所。利用するには要件を満たす必要があるが、利用できる場合は無料の法律相談や弁護士・司法書士費用の立替制度を受けられる。
法テラスに相談すると、自分で弁護士を探さなくても法テラス側が無料相談に対応してくれる弁護士を手配してくれます。
ただし、どのような弁護士がよいか希望したり選択したりすることはできません。自分で選びたいなら、法テラスと契約している弁護士を探す必要があります。
法テラスと契約している弁護士は、法テラスのホームページに掲載されている名簿から確認できるためチェックしてみましょう。
なお、法テラスの無料相談や立替制度を利用するには、以下の要件を満たす必要があります。
- 収入・資産が一定基準以下
- 勝訴の見込みがある
- 法テラスの趣旨に反していない
収入・資産の基準は以下のとおりです。
世帯人数 |
収入基準 |
資産基準 |
1人 |
20万200円 |
180万円以下 |
2人 |
27万6,100円 |
250万円以下 |
3人 |
29万9,200円 |
270万円以下 |
4人 |
32万8,900円 |
300万円以下 |
※東京都23区・大阪市などの場合
そのほか、債権者との和解や免責が許可される見込みがあることや、嫌がらせ・報復目的ではないことも条件の1つです。
注意点は、法テラスは相談者それぞれに適した弁護士を紹介してくれる機関ではない点です。相談先を案内してくれることはあっても、「どの弁護士がよいか」といったことまで教えてくれることはありません。
そのため法テラスを利用するときでも、自分に合った弁護士は自分で探す必要があることを覚えておきましょう。
参照:法テラス埼玉 契約弁護士・司法書士名簿(直接予約制事務所相談)|日本司法支援センター法テラス
参照:無料法律相談に関するよくあるご質問|日本司法支援センター法テラス
自治体の市民相談会を活用する
弁護士を探すなら、自治体の市民相談会を活用するのも1つの方法です。各自治体では、役所や相談センターなどで無料の法律相談を定期的に実施しているためです。
役所で相談できるため、「弁護士事務所に出向いて相談するのはハードルが高い」と思っている人でも利用しやすいでしょう。
ただし相談できる曜日が決まっており、時間も30分程度と短いのが難点です。また、担当の弁護士を選択できないため、運よく債務整理に精通している弁護士にあたるかどうかはわかりません。
債務整理を得意としている弁護士にきちんと相談・依頼したいなら、やはり自分で探して無料相談を受けるべきでしょう。
なお、東京都練馬区区民相談所で行われている法律相談の内容は以下のとおりです。
相談場所 |
練馬区区民相談所(練馬区役所東庁舎5階) |
相談日 |
月曜・水曜・金曜 |
対象者 |
練馬区在住の方 |
相談時間 |
13時〜16時(1人につき30分以内) |
予約方法 |
相談日の1週間前の9時〜対面・電話で予約 |
相談方法 |
|
中には、オンライン相談を実施しているところもあります。
参照:法律相談|練馬区
弁護士会の相談会に参加する
弁護士会の相談会に相談する方法もあります。
前項で紹介した自治体の市民相談会では、債務整理を得意としている弁護士にあたらない可能性がありますが、弁護士会で実施しているクレジット・サラ金専門の「クレサラ無料法律相談」であれば、弁護士の得意分野に当たり外れがありません。
また、実施しているのが弁護士会であるため、安心感があります。
ただし市民相談会と同様に、相談できる曜日が決まっています。1人30分という短い時間の中で相談しなければならないため、聞きたいことをすべて聞けない可能性がある点にも注意しましょう。
与えられた時間を有効に使うためには、事前に相談内容をまとめておくことをおすすめします。
ネット検索する
ネットで地名を入れて検索すれば、どの地域の弁護士でも探せます。
「東京都 弁護士事務所 任意整理」「大阪市 弁護士 債務整理」というふうに検索すると、ピンポイントで検索できるでしょう。
ただし、ネットの情報がすべて正しいとは限らない点に注意が必要です。たとえば、弁護士の比較サイトやポータルサイトでランキング上位だからといって、本当に評価の高い事務所かどうかはわかりません。
掲載料を多く支払っているために上位表示されている可能性があるためです。
比較サイトやポータルサイトを見て気になった事務所があれば、そこで依頼を決めるのではなく事務所のホームページをチェックしたほうがよいでしょう。
債務整理は司法書士と弁護士どちらに相談するべきか|弁護士がおすすめ
債務整理の手続きを依頼できる専門家には弁護士と司法書士がいますが、おすすめなのは弁護士です。なぜなら司法書士ができることは、以下のとおり制限されているためです。
任意整理 |
・弁護士の対応範囲:すべての任意整理について依頼可能
・司法書士の対応範囲:債権者1件につき140万円以内の債務について依頼可能 |
個人再生 |
・弁護士の対応範囲:代理人としてすべての手続きを依頼可能
・司法書士の対応範囲:書類作成の依頼のみ可能 |
自己破産 |
・弁護士の対応範囲:代理人としてすべての手続きを依頼可能
・司法書士の対応範囲:書類作成の依頼のみ可能 |
任意整理の場合、借入額が140万円を超えると司法書士では対応できません。また、個人再生や自己破産でも、書類は作成してもらえますが、裁判官や破産管財人とのやりとりは自分で行う必要があります。
一般的に、弁護士よりも司法書士のほうが費用を抑えられるため、とにかく費用を安くしないなら司法書士に依頼するのもよいですが、自分で対応しなければならないことが多い分負担やストレスを感じやすいでしょう。
なお、弁護士であればすべての任意整理・個人再生・自己破産案件を一任できます。
個人再生や自己破産の場合、弁護士に依頼していても自分で書類を収集したり打ち合わせをしたりといったことは必要であるため丸投げはできませんが、最小限の負担で手続きできます。
どちらに依頼すべきかどうかは、以下を基準に決めるとよいでしょう。
任意整理で債権者1件あたりの借入額が140万円以下なら、司法書士に依頼しても問題ないでしょう。しかし、任意整理でも借入額が140万円を超えているケースや、個人再生・自己破産を検討しているときは、弁護士に依頼することをおすすめします。
債務整理における弁護士と司法書士の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
債務整理にかかる弁護士費用の相場
弁護士に債務整理を依頼した場合の費用相場は以下のとおりです。
- 任意整理|4万円程度
- 個人再生|50〜60万円程度
- 自己破産|30万円〜80万円
それぞれ解説します。
任意整理|4万円程度
任意整理にかかる弁護士費用は、1社あたり4万円程度です。
内訳は以下のとおりです。
着手金 |
2万2,000円程度 |
解決報酬金 |
2万2,000円程度 |
減額報酬金 |
減額分の10%程度 |
過払い金の成功報酬 |
回収額の20%程度 |
弁済代行費用 |
1社あたり1,000円程度 |
注意点は、債権者の数によって費用が変動する点です。
上記はあくまでも相場であるため料金設定は事務所によって異なりますが、たとえば整理対象にする債権者が3社なら12万円程度、4社なら16万円程度かかります。また、相談料が有料の場合は1時間につき1万円程度かかります。
なお、「弁済代行費用」とは、任意整理後、債権者への支払いを弁護士に管理してもらう際にかかる費用です。
複数の債権者がいる場合、支払いのタイミングが異なると支払いの管理が大変になりますが、弁護士に弁済代行を依頼すると弁護士経由で支払ってもらえるため、弁護士にまとめて支払えば済みます。
任意整理の弁護士費用については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
個人再生|50万円〜60万円程度
個人再生にかかる弁護士費用は、50万円〜60万円程度です。それに加え、数万円〜30万円程度の裁判所費用もかかります。
内訳はそれぞれ以下のとおりです。
▼弁護士費用
相談料 |
1時間あたり1万円程度 |
着手金+報酬金 |
30万円〜50万円程度 |
住宅ローン特則を利用する場合の費用 |
5万円〜10万円程度 |
そのほかの弁護士報酬 |
実費 |
▼裁判所費用
申立手数料 |
1万円程度 |
予納郵券 |
1,000円~4,000円程度 |
官報掲載費用 |
13,000円程度 |
納金(個人再生委員への報酬) |
15万円〜25万円程度 |
個人再生の弁護士費用は、「住宅ローン特則」を利用するかどうかで異なります。
【住宅ローン特則とは】
持ち家を残したまま個人再生を行うための制度。住宅の建築や購入に必要な貸付けであることなどの条件を満たせば利用できる。
また、「個人再生委員」が選任されれば報酬が発生するため、選任されるかどうかで裁判所費用に差が出ます。
【個人再生委員とは】
個人再生の際に裁判所をサポートしたり申立人を監督したりする人のこと。
個人再生委員には、多くの場合裁判所の管轄内にある法律事務所の弁護士が選任されます。ただし個人再生のすべてのケースで選任されるとは限らず、選任されなければ報酬はかかりません。
個人再生にかかる費用相場については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてチェックしてください。
自己破産|30万円〜80万円
自己破産にかかる弁護士費用は、30万円〜80万円程度です。また、個人再生と同様に、1万円〜50万円程度の裁判所費用もかかります。
幅があるのは、自己破産の手続きには同時廃止事件・管財事件・少額管財事件の3種類があり、どの手続きになるかによってかかる費用が異なるためです。
内訳はそれぞれ以下のとおりです。
▼弁護士費用
相談料 |
0円〜1万円程度 |
着手金 |
30万円〜50万円程度 |
成功報酬 |
0円〜80万円程度 |
▼裁判所費用
同時廃止事件 |
1万円〜3万円程度
【内訳】
・申立手数料:1,500円程度
・官報公告費(予納金):1万円〜2万円程度
・予納郵券代:3,000円〜1万円程度 |
管財事件 |
50万円以上
【内訳】
・申立手数料:1,500円程度
・官報公告費(予納金):1万円〜2万円程度
・破産管財人への報酬:50万円程度
・予納郵券代:3,000円〜1万円程度 |
少額管財事件 |
20万円程度
【内訳】
・申立手数料:1,500円程度
・官報公告費(予納金):1万円〜2万円程度
・破産管財人への報酬:20万円程度
・予納郵券代:3,000円〜1万円程度 |
管財事件・少額管財事件は破産管財人への報酬が発生するため、その分裁判所費用が高額になる可能性があります。
【破産管財人とは】
破産者から没収した財産を現金化し、債権者に分配する人のこと。
自己破産にかかる費用の詳細については、以下の記事を参考にしてください。
弁護士に債務整理を依頼するときの流れ|弁護士選び〜契約締結まで
弁護士債務整理を依頼する基本の流れは以下のとおりです。
- ネット検索などで弁護士事務所の候補を出す
- 目星をつけた弁護士事務所に電話やホームページのフォームから問い合わせる
- 弁護士との相談日を決める
- 初回の相談で借金問題や債務整理について相談する
- 弁護士と任意整理などの契約を締結する
「債務整理に強い弁護士の探し方」で解説した方法を参考に、弁護士事務所を探しましょう。相談した事務所に必ず依頼しなければならないわけではなく、「何か違う」と感じたら相談で終了しても問題ありません。
注意点は、早く借金問題を解決したいからといって、焦って決めないことです。運よく良い弁護士に巡り会えることもありますが、よく考えずに依頼を決めてしまうと、あとあと「相性がよくない」「方針が合わない」といった不都合が出てくる可能性があります。
そのせいでスムーズにいかなかったり途中で違う弁護士に依頼し直すことになったりすると、結果的に時間がかかってしまうことも考えられます。複数の事務所を比較し、「この先生に依頼したい」と思える弁護士に依頼しましょう。
まとめ
債務整理が得意な弁護士の選び方について解説しました。
債務整理が得意な弁護士に依頼したいなら、実績の豊富さや費用の鮮明さ、デメリットも説明してくれるかといった条件にあてはまる事務所を選びましょう。
また、弁護士を選ぶときは、必ず不明点について質問するようにし、複数の事務所を比較したり、面談不要の事務所は選ばないようにしたりすることをおすすめします。
なお、依頼をするにあたって、事務所の規模は関係ありません。大きな事務所や有名な事務所が優れているとは限らず、地元の小さな事務所にも腕の立つ弁護士が在籍している可能性があるためです。
弁護士は法テラスや自治体の市民相談会、弁護士会の相談会などを通して探せます。ネットで探すのもよいでしょう。ただし、ネットの情報を鵜呑みにせず、無料相談を受けて直接自分の目で確かめることが重要です。
債務整理の弁護士選びでよくある質問
弁護士費用が払えない場合は諦めるしかないのでしょうか?
弁護士費用が払えない場合でも、弁護士への依頼を諦める必要はありません。事務所によっては分割払いに対応していたり、法テラスを利用することで費用を抑えられたりするためです。
たとえば分割払いに対応している事務所なら、弁護士が受任通知を発送したあと、取り立てが止まっている間に支払えます。そのため、依頼時に費用が用意できていなくても依頼できる可能性があります。
弁護士費用が途中で支払えなくなった場合、どうなるのでしょうか?
弁護士費用を途中で支払えなくなった場合、依頼を辞退されてしまうおそれがあります。債務整理の途中で委任契約を破棄されてしまうと、受任通知によってストップしていた取り立てが再開します。
また、支払えなくなるまで支払っていた着手金は戻ってこないため、無駄になってしまう点にも注意が必要です。
支払えなくなる可能性があるなら、着手金無料の事務所に依頼するとよいでしょう。利用条件を満たしている場合は、法テラスを通して依頼し、弁護士費用の立替制度を利用するのも1つの方法です。
法テラスの立替制度を利用したときは、法テラスに対して月々5,000円程度返していけば済むため、それほど費用を負担に感じないでしょう。そのほか、過払い金が発生するなら過払い金で相殺する手段もあります。
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