口座差し押さえが実行されるまでの流れやタイミング
借金の滞納が長期化すると、再三に渡る督促を経て、口座などの差し押さえへと発展します。
債権者(お金を貸した側)が差し押さえの手続きを取る時期は債権者によって異なりますが、3ヵ月程度滞納が継続すると、差し押さえに向けた手続きに入るのが一般的です。
差し押さえ手続きが開始されると、債務者(お金を借りた側)に差し押さえ予告通知が送付されます。差し押さえ予告通知が来た以降は、いつ差し押さえられてもおかしくない状況で、猶予はあまりありません。
まずは、口座差し押さえのタイミングはいつなのか、どのような流れで行われるか解説します。
3ヵ月程度滞納すると差し押さえ手続きが開始される
返済滞納が3ヵ月程度継続すると、債権者は差し押さえの手続きを開始します。これはあくまで目安で、口座差し押さえに着手するかは、債権者の判断です。
もちろん、延滞したからといって、いきなり口座が差し押さえられるわけではありません。なぜなら、債務者には期限の利益が与えられているからです。
ただし期限の利益は、契約どおり返済が行われなかった場合、喪失するのが一般的です。そのため滞納が長期化すると、債権者から期限の利益の喪失通知が送付され、借金全額の一括返済が請求されます。
この一括返済に応じない場合、債権者は債権回収のため差し押さえに向けた法的手続きを開始します。
口座差し押さえが実行されるまでの流れ
債権者からの一括請求に応じないと、債権者から差し押さえ予告通知が届きます。
通知を受け取ってから差し押さえが実行されるまでには、早ければ1ヵ月ほどしか猶予がないため、速やかに弁護士に相談するなどの対応が必要でしょう。
借金の滞納により、口座が差し押さえられる場合、以下の流れで差し押さえが実行されます。
- 債権者から差し押さえ予告通知書が届く
- 裁判所から「支払督促申立書」が届く
- 裁判所から仮執行宣言付支払督促が届く
- 強制執行による差し押さえが実行される
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1.債権者から差し押さえ予告通知書が届く
債権者からの一括請求に応じないと、債権者から差し押さえ予告通知書が届きます。
差し押さえ予告通知は、即時の一括返済を行わない場合は訴訟が提起され、差し押さえを行うと予告するものです。まさに債権者からの最後通告といえます。
この差し押さえ予告通知が届くと、差し押さえの実行までは、早くて1ヵ月ほどしかありません。一括返済に応じられない場合は、裁判を経て差し押さえが実行される、切羽詰まった状況にあるといえるでしょう。
2.裁判所から「支払督促申立書」が届く
一括返済に応じず放置した場合、債権者は裁判所に差し押さえを申し立てます。
差し押さえのための手続きには「訴訟」もしくは「支払督促」の2種類があります。借金返済の滞納の場合は、簡便的な「支払督促」が選択されることが多いです。
支払督促の場合、裁判所は申し立てられた内容が正当なものであるかを審理した後、債務者に「支払督促申立書」を送付します。「支払督促申立書」は特別送達という特別な方法で送付されます。
債務者は「支払督促申立書」を受け取ってから2週間以内であれば、裁判所に異議申し立てが可能です。ただし、異議申し立てが認められるケースは非常に少なくなっています。
異議申し立てがなく2週間が経過すると、次に解説する仮執行宣言付支払督促が裁判所より届きます。
3.裁判所から仮執行宣言付支払督促が届く
「支払督促申立書」の受け取りから2週間が経過すると、裁判所から「仮執行宣言付支払督促」が届きます。
仮執行宣言付支払督促の受け取りから2週間以内であれば「支払督促申立書」を受け取ったときと同様に、異議申し立てを行うことが可能です。ただし、異議申し立てが認められるのはかなり難しいでしょう。
仮執行宣言付支払督促は、受け取りから2週間が経過すれば、裁判の確定判決と同様の効力を持ちます。つまり、裁判所によって、債権者が差し押さえを行うことが許可されたことを示しています。
債権者は裁判所へ強制執行の申し立てが可能となり、いつでも口座差し押さえができる状況です。
4.強制執行による差し押さえが実行される
債権者が裁判所に強制執行の申し立てをすると、口座差し押さえが実行されます。
具体的には、債権者による強制執行の申し立てを受け裁判所で審理された後、裁判所から差し押さえ命令が金融機関に送付されれば差し押さえは実行されます。
ただし差し押さえられたお金は、すぐに債権者の元に引き渡されるわけではありません。差し押さえの実行日から1週間程度は金融機関にプールされ、差し押さえ禁止債権が含まれていないか確認されます。
1週間が経過すれば、債権者の取り立てに基づき債権者にお金が引き渡され、差し押さえが終了します。
差し押さえが実行されるタイミングは正確にはわからない
実際に差し押さえが実行されるタイミングがいつなのかは、債務者側では正確にわかりません。もちろん、差し押さえの実行について、裁判所などから事前に連絡が来ることもありません。
これは差し押さえの実行を知った債務者が、口座から残高を引きだしてしまい、差し押さえが空振りに終わることを防ぐためです。
差し押さえが実行されるのは、口座残高が増える月末や給料日後が多い
差し押さえの実行タイミングを正確に知ることは難しいですが、ある程度予測をすることはできます。
口座差し押さえは、実行時点の口座残高が対象です。したがって債権者側からすると、できるだけ口座に残高が多くある状態で差し押さえを実行したほうが、債権回収の可能性は高くなります。
そのため差し押さえの実行は、給料日や振替の発生する五十日(ごとおび)、月末を指定して行われる場合が多いです。
口座差し押さえを回避するための対処法
借金返済の滞納が長期間に及ぶ場合、いつ差し押さえに発展してもおかしくない危険な状況にあります。差し押さえが実行されてしまえば、経済的な影響だけでなく、周囲の人に借金や延滞の事実が知られてしまうなど、生活面での影響もでてきます。
そうなる前にできるだけ早い段階で、差し押さえ回避に向けた対策を講じなければなりません。
差し押さえを回避するためには、以下の方法があります。
- 債務整理で借金問題を解決する
- 親族や知人に支援してもらい一括返済する
- 債権者に連絡し返済について相談する
それぞれ解説します。
債務整理で借金問題を解決する
債務整理であれば、差し押さえが回避できるだけでなく、差し押さえの原因となっている借金問題そのものも同時に解決できます。
債務整理は、国が認めた借金返済の救済制度で、手続きが認められれば、借金返済の免除・減額が可能です。もちろん、約束した返済を免除されるわけですから、相応のデメリットを受けることになります。しかし、それを差し引いても、返済に苦しむ状況から脱出できるメリットは大きいでしょう。
債務整理には、以下の3種類があります。
債務整理の種類 |
概要 |
自己破産 |
借金全額の返済を免除してもらう手続き |
個人再生 |
借金の元本を1/5~1/10にできる |
任意整理 |
利息をカットし、元本のみの返済にできる |
口座差し押さえの解除が目的の場合、債務整理の手続きのタイミングを誤ると、思うような結果が得られないことも考えられます。
債務整理による口座差し押さえの解除は、手続きによって解除のタイミングが異なり、場合によっては手続きが認可されるまでは、解除されないものもあります。
口座差し押さえは、一旦債権者の取り立てが完了してしまうと、その後、債務整理で差し押さえが解除されても取り立てられたお金は取り戻せません。
債務整理で差し押さえを回避する場合は、債務整理ごとの口座差し押さえとの関係も念頭に、手続きを検討する必要があるでしょう。
ここでは、各債務整理手続きと差し押さえの関係性について解説しますので、参考にしてください。
自己破産なら認可決定で差し押さえは解除
自己破産は、裁判所に返済が難しいことを認めてもらい、借金全額の返済を免除してもらう手続きです。
メリットとデメリットは、以下のとおりです。
メリット |
・借金の返済義務が免除される
・債権者からの請求や催告が止まる
・生活に必要な最低限の財産は残せる |
デメリット |
・ブラックリスト(信用情報)に掲載される
・20万円以下の財産しか手元に残せない
・官報に掲載される
・資格が制限される職業がある
・郵便物や移動が制限される
・市町村役場の破産者名簿に登録される
・破産者が返済できなかった借金は保証人に請求される
・弁護士や裁判所などに費用を支払う必要がある |
自己破産は、裁判所に申し立てた後、財産状況などについての調査、審理を経て認可されます。仮に差し押さえ手続きが進められていたとしても、この認可を受けることで差し押さえは解除されます。
自己破産については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
個人再生も認可決定で解除される
個人再生は、自己破産同様に裁判所を介した手続きで、借金を1/5〜1/10程度まで減額し、残額を3〜5年で返済する手続きです。
メリットとデメリットは、以下のとおりです。
メリット |
・ローン返済中の自宅を残して借金を大幅に減額できる
・免責不許可事由がなく、どのような理由の借金にも利用できる
・職種を制限されない
・手元に資産を残したまま手続きができる
・裁判所を介して手続きをするため強制力がある |
デメリット |
・書類が多く、手続きも難しいため時間がかかる
・手続き費用が高額になりやすい
・信用情報に事故情報が掲載される
・ 個人再生手続きをしたことが官報に掲載される
・ 借金に保証人がついている場合、保証人へ返済請求される |
個人再生手続きによって、口座差し押さえが取り消しされるのは、手続きが完了し認可を受けるタイミングです。個人再生は、手続きに6ヵ月~1年程度かかります。
口座差し押さえの影響をできるだけ少なくするためにも、早めに手続きすることをおすすめします。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
任意整理は債権者との交渉次第
任意整理は、債権者と個別に交渉し、主に将来の利息を免除してもらうことで完済を目指す手続きです。
メリットとデメリットは、以下のとおりです。
メリット |
・整理する債権を選択できる
・返済期間の延長や利息のカットなどが可能
・家族にバレる可能性が低い |
デメリット |
・借金の元金は返済する必要があるため、安定した収入が
・債権者が返済計画に合意しないと利用できない
・「ブラックリスト入り」の状態になるため、整理後5年程度はクレジットカードやローンなどの契約ができない |
任意整理は手続きによるデメリットも債務整理の中で最も小さく、債務者のメリットが大きい手続きです。
しかし口座差し押さえの回避という面ではかなり難しい手続きです。
債権者側からすると、口座差し押さえで確実に債権回収できる状況で、任意整理に応じるメリットはあまりありません。
また債権者との交渉次第になるので、依頼する弁護士の交渉力によって、結果が大きく左右される可能性があります。
詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
親族や知人に支援してもらい一括返済する
差し押さえ回避は、債務整理でなくても、一括返済でも解除は可能です。
一括返済は、差し押さえの原因となる借金を返済するため、差し押さえは解除されます。現実的には親族や知人など、信頼できる人から支援を得て返済することになるでしょう。ただし、いくら信頼していても、お金の問題はトラブルになることも多いため慎重に判断する必要があります。
また、返済金を捻出するために、他の業者から新たに借入することは絶対にやめましょう。借金を借金で返済することは、実質的に複利と同じ状況になってしまうため、借金が雪だるま式に膨らんでいきます。状況をさらに悪化させるため、絶対に行わないでください。
債権者に連絡し返済について相談する
返済が厳しいことを債権者に相談し、今後の返済計画の見直しに合意してもらえれば、差し押さえを回避できる可能性もあります。
滞納している理由を正直に話し、返済猶予や分割返済を交渉してみるとよいでしょう。支払いができない理由によっては相談に応じてもらえる場合があります。
ただし、これも滞納してからの状況や返済計画によるところが大きく、難しい交渉になることは念頭に入れておいてください。
債務整理は専門家である弁護士への相談がおすすめ
債務整理で、差し押さえを回避するなら、弁護士に相談することをおすすめします。
これまで解説したとおり、債務整理は債務者の財産や収入の状況により、選択すべき手続きが異なります。
誤った選択をすると手続きが認められなかったり、不要なデメリットを受けることになったりと、思うような結果が得られないケースも多いです。
また、差し押さえ回避となると更に状況は複雑です。差し押さえによる影響をできるだけ押さえながら、手続きを進める必要がありますし、場合によっては債権者や裁判所との交渉も必要になります。
弁護士に依頼すれば、事前に各手続きのメリット・デメリットについても詳しく説明してもらえ、状況に合ったアドバイスを受けられます。手続きをスムーズに進める手助けもしてもらえるでしょう。
差し押さえが目前に迫っている切迫した状況であれば、あまり猶予はありません。弁護士に依頼し、スムーズに手続きを進めることを強くおすすめします。
口座差し押さえで知っておくべきこと
これまで解説した内容以外にも、口座差し押さえについて、知っておくべきことがあります。
口座差し押さえで知っておいてほしいことは以下のとおりです。
- 差し押さえ対象は実行時点の口座残高のみ
- 差し押さえ口座は債権者が特定する必要がある
- 税金滞納の場合は、督促状の支払い期限から10日で差し押さえられる
それぞれ解説します。
差し押さえ対象は実行時点の口座残高のみ
口座差し押さえで対象になるのは、口座差し押さえを実行された時点の口座残高のみです。
実行時点で口座にある残高が、差し押さえ額より少ない場合は、残高は0円になりますが、その後に入金されたお金は差し押さえの対象になりません。判例でも「差し押さえ命令時点で、金融機関が差し押さえ範囲として把握できないものは、差し押さえ対象にはできない」とされています。
差し押さえられても口座の利用は可能
差し押さえの対象は、実行時点の口座残高のみですから、口座そのものは差し押さえ後にも、そのまま利用が可能です。
ただし、銀行の借金が差し押さえになっている場合は、状況が異なります。銀行の借金が差し押さえになった場合、口座が差し押さえられるだけでなく、口座そのものが凍結されるケースもあります。
口座が凍結されれば、その口座は入出金も含め、利用できなくなります。給与の振込や自動引落口座になっている場合は、変更が必要です。
差し押さえは借金全額が回収されるまで繰り返される
口座差し押さえは、債権者が債権を回収し終えるまで、何度でも手続きが可能です。口座が差し押さえられたということは、債権者が口座の存在を把握しているということなので、またいつ差し押さえられてもおかしくありません。
結局のところ、差し押さえは対象債権の回収が終わるまで続くと認識しておく必要があるでしょう。
差し押さえ口座は債権者が特定する必要がある
口座差し押さえを実行する場合、差し押さえの対象口座は債権者自身が特定しなければなりません。つまり、債権者が口座を把握していない場合は、差し押さえ自体が実行できないということです。
以前は、債権者側が口座を特定するためには、過去の利用履歴や心当たりのある金融機関に問い合わせるしか方法がなく、口座が特定できなければ、差し押さえされないのが通常でした。
しかし、2020年4月に改正民事執行法が施行され「第三者からの情報取得手続き」が可能となり、裁判所は金融機関に対し債務者の財産情報の提供を請求できるようになりました。
債権者が把握できていない口座であっても、容易に調査できるようになったため、差し押さえされやすくなったことを認識しておきましょう。
税金滞納の場合は、督促状の支払い期限から10日で差し押さえられる
税金を滞納すると、支払い期限から10日で差し押さえが可能となります。
借金滞納が原因の場合、口座差し押さえまでにはいくつかの手順が必要です。また、裁判所の許可なく差し押さえすることはできません。
しかし、税金の場合は督促状の納期限から10日が経過すると、裁判所の許可なく差し押さえが可能です。これは、地方税法という法律にも規定されています。
地方税法 第三百三十一条 市町村民税に係る滞納者が次の各号の一に該当するときは、市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押さえなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して十日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。
引用元:e-Gov法令検索 地方税法
そのため、税金を滞納し督促状が届いた場合は、支払い期限から10日以内に支払うようにしましょう。
まとめ
口座差し押さえは、3ヵ月程度の滞納で手続きが開始されます。手続きが進み、差し押さえ予告通知が届けば、実行までに1ヵ月ほどの猶予しかなく、状況はかなり切迫してきます。
差し押さえを回避するためには、親族や知人に支援してもらい一括請求する、債権者と交渉して分割返済にしてもらうなどの方法がありますが、なかでも効果的なのは債務整理です。
しかし、債務整理であっても対応が遅れれば遅れるほど、取れる対策の幅は狭くなり、差し押さえの影響や手続きによって受けるデメリットは大きくなる可能性があります。
すでに毎月の返済が厳しい状況にあるなら、まずは弁護士に相談し、対応策をすぐに検討することをおすすめします。
借金問題は放置していても、決して解決はしません。それどころか、状況はどんどん悪化していくため、一刻も早く借金問題の解決に向けて動き出すことが重要です。
弁護士であれば、現在の状況に合わせた最適な対応策を提示でき、手続きもスムーズに進むよう支援してもらえます。
近年は、初回は相談無料としている事務所も多いので、まずは気軽に相談してみてください。
最短即日取立STOP!
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