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単身赴任を理由に離婚は可能?離婚が認められるケースや離婚時の注意点

単身赴任を理由に離婚は可能?離婚が認められるケースや離婚時の注意点

単身赴任をきっかけに離婚を考える人は少なくないでしょう。

夫婦で話し合いをして離婚する「協議離婚」や、調停委員を交えて離婚する「離婚調停」なら、双方の合意があれば理由を問わずに離婚できます。そのため、単身赴任を理由に離婚することは可能です。

しかし、話し合いで解決せず裁判の判決によって離婚をする「離婚裁判」をすることになった場合は、単身赴任だけを理由に離婚はできません。裁判で離婚を認めてもらうためには、離婚の理由が「法定離婚事由」に該当する必要があります。

仲違いによる長期間の別居(3~5年以上が目安)であれば婚姻関係が破綻していると見なされ「法定離婚事由」に該当し、裁判で離婚が認められる可能性があります。しかし、単身赴任は夫婦間の問題ではなく、仕事の都合で行われるものであるため「法定離婚事由」には該当しません。

ただし、単身赴任がきっかけで、裁判離婚が認められやすいケースに該当する場合もあります。具体的には、単身赴任によって配偶者が不倫をした場合や、単身赴任先の配偶者から生活費がもらえなくなった場合などです。

なお、単身赴任中に離婚する場合は、会って離婚の条件について話し合うことが難しくなります。スムーズに話し合いを進めたいなら弁護士への依頼も検討すると良いでしょう。

そこで本記事では、単身赴任によって離婚が認められるケース、単身赴任中の離婚・浮気を防ぐ方法など、単身赴任と離婚に関してさまざまな内容を紹介していきます。

単身赴任を理由に離婚できる?

双方合意のもと離婚が成立する「協議離婚」や「離婚調停」なら、単身赴任を理由に離婚は可能です。

しかし「協議離婚」や「離婚調停」で話がまとまらず、裁判によって離婚の可否を決めることになった場合は、単身赴任だけを理由に離婚はできません。

今後の離婚を円滑に進めるためにも、単身赴任と離婚の関係を理解しておきましょう。

話し合い(協議や調停)なら単身赴任を理由に離婚できるが、裁判での離婚は難しい

協議や調停で夫婦双方が納得するのであれば、単身赴任に限らずどのような理由でも離婚できます

しかし、片方が同意しない場合は、最終的に裁判にて離婚を認めてもらう必要があります。裁判所に離婚を認めてもらうには、以下の法定離婚事由に該当しなければいけません。

法定離婚事由 内容
不貞行為 配偶者以外の人物と性的関係を持つ
悪意の遺棄 無断別居、収入があるのに生活費を渡さない(経済的DV)など、夫婦間の義務を放棄する行為
3年以上の生死不明 消息を絶ってから3年経過している
回復の見込みのない強度の精神病 統合失調症や認知症など、精神科医の判断により回復の見込みがないと判断される
その他婚姻を継続しがたい重大な事由 DVやモラハラ、正当な理由のない一方的で継続的な性行為の拒否などが該当

見てのとおり、単身赴任は法定離婚事由には該当していません。

つまり、夫婦で話し合いが進まず、最終的に裁判所に離婚を認めてもらうことになる場合、単身赴任が理由では離婚ができないといえるでしょう。

単身赴任による別居は法定離婚事由に該当しない

長期にわたる別居は「夫婦関係が破綻している」と判断されて「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当することがあります。

そのため「単身赴任の必要がなくただ単に配偶者が長期にわたって別居をしている」「別居をして家庭から離れようとしており夫婦として継続する意思がない」という場合は離婚が認められる可能性があるでしょう。

しかし、仕事の都合によって単身赴任をし別居となっている場合では、たとえ単身赴任が長期にわたったとしても、法定離婚事由には該当しません。仕事の都合による別居と、配偶者の意思による別居は異なるためです。

なお、単身赴任中の不倫や、単身赴任中に生活費がもらえないといった経済的DVなど、単身赴任がきっかけで法定離婚事由に該当する原因が発生することはあります

仕事の都合で単身赴任をしているだけなら離婚は認められませんが、このように単身赴任がきっかけで離婚が認められるようになるケースがあることは理解しておきましょう。

単身赴任がきっかけで離婚が認められやすいケース

単身赴任がきっかけで離婚が認められる主なケースは以下のとおりです。

  • 配偶者が浮気(不倫)をした
  • 配偶者から生活費をもらえなくなった
  • 別居が長期化し夫婦関係が破綻した

それぞれのケースを詳しく見ていきましょう。

配偶者が浮気(不倫)をした

単身赴任によって不倫や浮気、具体的には配偶者以外の人と性的関係を持っていた場合は、法定離婚事由である「不貞行為」に該当します。そのため、相手が離婚を拒否したとしても、最終的には裁判で離婚を認めてもらえる可能性が高くなります。

もちろん、これは単身赴任によって赴任する側、残される側どちらも同じです。

なお、不貞行為と浮気・不倫の違いは以下のとおりです。

婚姻関係 性的関係
不貞行為 あり あり
不倫 あり 問わない
浮気 問わない 問わない

一般的に不倫は婚姻関係がある状態で配偶者以外の人と恋愛関係を持つことを指します。浮気は婚姻関係にかかわらず、パートナー以外の人と恋愛関係を持つことを指します。

しかし、不倫や浮気の定義はあいまいで「手をつないだら浮気」「キスだけなら浮気じゃない」というように、人によって考え方はさまざまです。

対して、不貞行為は性的関係を持つかどうかを指しています

民法七七〇条一項一号の不貞な行為とは、配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいい、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わない。
引用元 裁判例結果詳細 | 裁判所

そのため、一方が「不倫・浮気された」と考えていても、法定離婚事由である「不貞行為」に該当しなければ、不倫・浮気を理由に離婚をするのは難しいと言えるでしょう。

離婚をするためにパートナーの「不倫・浮気」の証拠を探す場合は「2人でラブホテルに入る写真」「不貞行為を認めるようなメッセージのやり取り」などが必要になります。

配偶者から生活費をもらえなくなった

配偶者から生活費をもらえなくなった場合は、法定離婚事由である「悪意の遺棄」に該当します。悪意の遺棄とは、婚姻の本質的義務である「同居・協力・扶助義務」を、積極的かつ正当な理由なく履行しないことです。

民法の第752条にて「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と定められており、これに沿って夫婦は「同居・協力・扶助義務」を果たさなければいけません。

単身赴任によって生活費をもらえない場合、扶助義務を果たしていないことになるため、結果として離婚が認められる可能性が高くなります。

ただし「積極的かつ正当な理由」であるかどうかも肝心です。

たとえば、勤務先からの給料の支払いが遅れたことによって生活費の支払いができなくなった場合は、やむを得ない理由があるため悪意の遺棄に該当しません。

なお、単身赴任も同居義務を果たしていないように見えますが、仕事の都合という正当な理由があるため悪意の遺棄には該当しません。

別居が長期化し夫婦関係が破綻した

単身赴任の期間が終わった後も、長期にわたって別居が続く場合は「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性があります

しかし「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」がどのように判断されるかは、裁判をしなければわからない部分も多いです。

たとえば、単身赴任によって「1人の方が楽」という思考が生まれ、配偶者の意思を無視し、個人の判断で別居を続けたところで、必ずしも離婚が認められるというわけではありません。

一方的に別居を続けて「夫婦関係が破綻した」と主張しても、離婚につながるかどうかは裁判次第ということは理解しておきましょう

単身赴任が離婚のきっかけになる理由は?

「単身赴任をすると離婚につながりやすい」とは言われているものの、実際にそのようなデータはありません。

とはいえ、単身赴任という環境を考慮すると、以下のような離婚のきっかけを作りやすい状況にあるとはいえるでしょう。

  • 浮気(不倫)しやすい環境になる
  • セックスレスになる
  • 浪費しやすくなる
  • 1人の生活の方が気楽だと心変わりしてしまう
  • 子育て(ワンオペ)の大変さが理解されにくい
  • 結婚している意味が薄れる
  • コミュニケーション不足によりすれ違いが生じやすい

それぞれの詳細を解説していきます。

浮気(不倫)しやすい環境になる

単身赴任をすると、どちらも浮気・不倫をしやすい環境になります。お互いの目が届かなくなり「不倫をしてもバレない」という余裕が生まれてしまうのが大きな要因といえるでしょう。

ほかにも「単身赴任という慣れない環境でストレスがたまり不倫をする」「一人で過ごすのが寂しくなって不倫する」といった要因も考えられます。

結果、このような不倫がバレてしまえば離婚につながることになります。

セックスレスになる

単身赴任をすると一緒に過ごす機会が少なくなるため、セックスレスになることも考えられます。そして、セックスレスによってお互いの気持ちが離れていき、夫婦仲が悪くなることによって、最終的に離婚につながることもあります。

また、単身赴任によってセックスレスになると「相手に不倫相手ができたのでは?」と疑心暗鬼になってしまい、関係が悪くなることもあるでしょう。

なお、セックスレスは「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性があります。ケースバイケースではあるものの、特に「子供が欲しいのにセックスできない」などの重大な理由があれば裁判でも離婚を認めてもらえる可能性は高くなるでしょう。

浪費しやすくなる

浪費しやすくなるのも単身赴任によって離婚しやすくなるきっかけの一つです。単身赴任によって別々に暮らすと、お互いにお金の使い道に目が行き届かなくなります。

「生活費として渡していたのに散在された」「赴任先でギャンブルをしすぎて貯金を使われていた」などさまざまなトラブルが考えられ、結果として夫婦仲が悪くなり離婚につながってしまいます

なお、夫婦間の金銭トラブルは「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し得るため、一方が離婚を拒否していても裁判にて成立する場合もあります。

1人の生活の方が気楽だと心変わりしてしまう

単身赴任をすると、1人で生活することになるため「1人の生活の方が楽」「配偶者や子供と暮らしたくない」と感じてしまう可能性も考えられます。

単身赴任が終了し、配偶者と暮らすようになっても「単身赴任していた時のほうが良かった」と感じてしまうと、夫婦仲が悪くなったり、赴任者が家族に対する気持ちが薄れたりして、結果的に離婚につながってしまいます。

ただし「1人の方が楽」というのは法定離婚事由に該当しないため、裁判にて離婚は成立させられません。

子育て(ワンオペ)の大変さが理解されにくい

単身赴任で家に残る側は、子どもがいる場合は1人で子育てをしなければいけません。そのため、配偶者にワンオペでの子育ての大変さを理解してもらえず、夫婦仲が悪くなり、結果として離婚につながることもあります。

もちろん家に残る側だけでなく単身赴任をする側も、仕事の大変さやストレスを理解されないことが不満につながることもあるでしょう。

なお、子育ての放棄は「悪意の遺棄」に該当するものの、単身赴任をすること自体は子育ての放棄にはなりません

そのため「単身赴任によってワンオペをさせられている」という理由だけで、離婚を成立させることは難しいと考えたほうが良いでしょう。

結婚している意味が薄れる

特に子供がいない場合は、結婚をしている意味が薄れてしまい離婚につながるケースもあります

子供がいない家庭で、単身赴任によって別々に暮らしている場合、形としては遠距離恋愛をしているカップルと大きな差はありません。

そのため「なぜ生活費を送らなければいけないのか」「わざわざ帰省するのも面倒」といった不満が生まれてしまい、結果として離婚につながってしまうこともあるでしょう。

ただし、このような理由は法定離婚事由に該当しないため、裁判で離婚を成立させることは難しいです。

コミュニケーション不足によりすれ違いが生じやすい

単身赴任をすると、コミュニケーション不足によるすれ違いで離婚につながるケースも考えられます。

一緒に住んでいる場合は夫婦で不満が出てきても、その場で話し合いをして解決ができます。

しかし、単身赴任中は不満が出てきても、実際に対面して話し合いができないため、十分なコミュニケーションがとれません。また「仕事をしてもらっているから」「子育てをしてもらっているから」という思考が生まれてしまい、意見が出せないこともあるでしょう。

このような状態が続けば、双方で不満が募っていき結果として離婚につながってしまいます

単身赴任中の浮気を見破る方法

これまで紹介したように、単身赴任によってさまざまなトラブルが発生しても、浮気などの法定離婚事由に該当しなければ、裁判で離婚は成立しません。

反対に、単身赴任中の浮気・不貞行為を見破り、証拠として残せば、たとえ相手が離婚を拒否していても裁判にて離婚を成立できます

そこで、ここからは単身赴任中の浮気を見破る、以下4つの方法を紹介します。

  • 急に会いに行く
  • 配偶者のSNSを確認する
  • 配偶者の居場所を確認する
  • 探偵事務所などの調査機関を利用する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

急に会いに行く

単身赴任中に急に会いに行くことで、浮気が判明することもあります。ただし、決定的な証拠を得るには、浮気相手と一緒にいるところに遭遇しなければいけません。

たとえば、突然会いに行って「嗅いだことのない香水の匂いがする」「配偶者とは違う髪の毛が落ちている」などと問い詰めても、知らぬ存ぜぬを決め込まれてしまっては意味がありません。

また、一度でも急に会いに行ってしまうと「いきなり来る可能性があるから自宅では浮気相手と会わないようにしよう」と警戒されてしまい、今後証拠を掴みづらくなってしまう可能性も考えられます

そのため、急に会いに行く場合は、浮気相手と一緒にいることが確信できるシチュエーションであることが望ましいです。

家の近くで待ち伏せをし「浮気相手と思われる人が家の中に入ってから会いに行く」「もし浮気相手が確認できない場合は会わずに帰る」というのも一つの手です。

配偶者のSNSを確認する

配偶者のSNSを確認するのも一つの手です。SNSに浮気の証拠が残っている可能性があります。

ただし、一般的に鍵アカウントでない限りはSNSに決定的な証拠を残すことはありません。

「自宅で撮った写真に配偶者以外の人がいる」などと突き付けても「職場の人といた」「気のせい」だとはぐらかされてしまう可能性もあるでしょう。また、その後は警戒されてしまいさらに証拠を見つけるのは困難になってしまいます。

そのため、SNSのチェックは慎重に行い、1つの証拠だけでなく複数の証拠を確保し、言い訳ができない状況を作ってから突き付けるようにしましょう

配偶者の居場所を確認する

配偶者の居場所を確認することで浮気を見破れることもあります。急に会いに行くのと併用すると、より見破りやすくなります。

たとえば配偶者が家にいないことを確認したうえで「今なにしているの?」「今日の予定は?」と連絡をし「家にいる」と返信が来た場合は、浮気をしている可能性が高いです。

たとえ浮気相手と一緒にいるところを確認できなくても、嘘をついていることが分かれば、その後スマートフォンなどをチェックさせてもらえる口実が作れます。また、問いただすことで白状してもらえることもあるでしょう。

探偵事務所などの調査機関を利用する

「子供がいて自力で浮気の証拠を見つけるのが難しい」「証拠は見つけられなかったけど浮気してそう」という場合は、探偵事務所などの調査機関を利用してみましょう。

探偵事務所に依頼して浮気をしていることが判明すれば、裁判の際に有利になる証拠ももらえます。

なお、探偵事務所の依頼費用は10万円以内で済む場合もあれば、100万円以上かかる場合もあり状況によってさまざまです。一般的に調査している時間が長いほど費用は高くなるため、浮気をしている確信があるときの利用がおすすめです。結局浮気をしていなかった場合は、調査費用を支払うだけになってしまうことは留意しておきましょう。

浮気調査の費用は高額になる場合はあるものの、浮気が原因で離婚をすることになったら、多くの場合で100万円以上の慰謝料を受け取れます。また、探偵事務所への依頼費用を損害賠償として配偶者に請求できる場合もあります。そのため、自力で証拠を見つけるのが難しい場合は、探偵事務所に頼ってみましょう。

単身赴任中の離婚を防ぐ方法

前述したように、単身赴任中は離婚のきっかけとなるさまざまな要因があります。

現状で大きな問題が起きていないなら、今後の夫婦生活を円満にするため、未然に離婚になる要因を排除することも大事です。

単身赴任中の離婚を防ぐ主な方法は以下のとおりです。

  • 毎日連絡を取り週末や休日は自宅に帰る約束をする
  • 1人でも怠惰な生活をしない
  • 納得した上で生活費の配分をする

それぞれ詳しく解説していきます。

毎日連絡を取り週末や休日は自宅に帰る約束をする

単身赴任中でも頻繁に連絡を取ることは非常に大事です。もちろん人によって異なりますが、頻繁に連絡を取ることで、コミュニケーションが生まれ良好な夫婦仲を維持できるでしょう

また、頻繁に連絡を取り、さらに週末や休日に会うことができれば、配偶者に対して「浮気をされていない」という安心感を与えることにもつながります。

「浮気をされているかも」と不安に感じさせてしまうと、結果として「浮気をされるぐらいなら自分も浮気をする」という思考が生まれてしまう可能性も考えられます。

そのため、連絡を取ったり会ったりして、できるだけコミュニケーションを取るようにしましょう。

1人でも怠惰な生活をしない

1人でも怠惰な生活をしないというのも非常に重要です。単身赴任によって一人の生活が続くと、夫も妻も生活が乱れてしまうことは少なくありません

たとえば、単身赴任中に帰省したときに「家が汚くなっていた」と夫から幻滅してしまうことも考えられます。もちろんこれは逆も言えることで「単身赴任をしてから夫の体型が変わっている」と妻から幻滅されてしまうこともあるでしょう。

そのため、帰省したときや単身赴任後に幻滅されないように、夫・妻ともに自分磨きはしておきましょう

納得した上で生活費の配分をする

単身赴任中は同居しているときよりも生活費がかかります。家賃や光熱費、通信費などが2重でかかってくるだけでなく、食費の合計額も高くなってしまうのが一般的です。食品は少量ずつ購入すると割高になるためです。

そのため、生活費はどのように配分するのかを入念に相談したうえで決めましょう。一方が納得しないまま生活を続けてしまうと、夫婦関係が悪化してしまいます。

また、単身赴任前に想定していた生活費と、実際に単身赴任をしてから判明する実際の生活費には隔たりがあることも少なくありません。そのため、単身赴任を始めてからも生活費についてはお互いが相談でき、意見を出し合えるような環境を作っておくと良いでしょう。

単身赴任中に離婚する際の注意点

単身赴任中に離婚をする場合、通常の離婚とは異なり以下のような注意点があります。

  • 会って話し合うことが難しい
  • 離婚すると単身赴任手当がもらえなくなる
  • 財産分与の基準時が立証が困難な場合もある

それぞれの注意点を確認し、スムーズにトラブルなく離婚を進めましょう。

会って話し合うことが難しい

単身赴任中に離婚をする場合は、当然赴任者は自宅にいないため、会って話し合いをするのが難しくなります。

離婚をする際は口約束でのトラブルを避けるために、離婚協議書や公正証書に離婚の条件を記載するのが望ましいです。帰省するタイミングや、電話・テレビ通話などで話し合いをして書類に条件を記載することは可能ではありますが、話し合いができる機会が少なかったり、実際に対面できなかったりして、入念なコミュニケーションが取りづらくなります。

そのため、離婚が成立するまでに時間がかかることは覚悟しておきましょう。

単身赴任によって会って話すのが難しいなら、弁護士への依頼も検討してみてください。

離婚すると単身赴任手当がもらえなくなる

離婚をすると単身赴任手当がもらえなくなります。単身赴任手当がもらえないと、単に収入が少なくなるだけでなく、養育費の額にも影響が出てきます。

養育費は、双方の年収を加味したうえで決まります。親は子供に対して、自分の生活と同程度の生活を保持する義務があるため、年収が高ければ必要な養育費もそれだけ高くなるのが一般的です。

年収は一般的に源泉徴収票に記載されているものから算出されますが、源泉徴収票に記載の年収には単身赴任手当も含まれています。つまり、源泉徴収票に記載の年収のまま養育費を算出しようとすると、離婚後の収入に対して高い養育費を支払うことになってしまいます

たとえば、夫の年収が500万円、妻が専業主婦で、子どもが1人なら「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」を参考に養育費を算出すると、月6万円~8万円になります。しかし、単身赴任手当がなくなって夫の年収が400万円になったとすると、算出される額は月4万円~6万円です。

単身赴任手当込みの年収で養育費を算出すると夫側の負担が大きくなるため、単身赴任手当を抜いた年収で養育費を算出しましょう。

財産分与の基準時が立証が困難な場合もある

単身赴任中の離婚では、財産分与の基準時が立証しづらくなる点にも注意しなければいけません。

前提として、離婚をする際は、財産分与といって夫婦の財産を2人で分けることになります。これはどちらが働いていたかどうかは関係なく、2人で築いた財産は一般的には2分の1にして分けます。ただし、夫婦関係が破綻していた場合は、夫婦関係が破綻した日(主に別居日)を基準時として、それ以降に得た収入による貯金、財産は財産分与されません。

単身赴任中の離婚で問題になるのが、夫婦関係が破綻した日である、基準時の立証が難しいという点です。一緒に住んでいた場合は、わかりやすく別居日を基準時とすることはできるものの、単身赴任をしている場合は、最初から別居をしている状態といえるため、基準時について夫婦で意見が食い違う可能性もあるでしょう。

お互いで話し合いがまとまらない場合は、過去に行った夫婦間のやり取り・メッセージなどから基準時を立証することもあります。

単身赴任中に離婚する手順

単身赴任中に離婚を考えたら、離婚時に有利になるような証拠を集めましょう。DVや浮気などの証拠を集めておけば、裁判で有利になったり慰謝料を請求できたりします。

証拠集めの準備が終わったら、配偶者と離婚の可否や条件について話し合いを進めていきます。この夫婦間で話し合いをして離婚することを「協議離婚」といいます。

「協議離婚」で話がまとまらない場合は「離婚調停」をし、それでも話がまとまらない場合は「離婚裁判」をするというのが一般的な流れです。

離婚方法 内容
協議離婚 夫婦で話し合いをして双方合意の条件のもと離婚ができるように進める
離婚調停 双方の話し合いで解決できない場合に行われる
調停委員という人が仲介に入ったうえで話し合いをし、双方合意の条件のもと離婚ができるように進める
離婚裁判 離婚調停でも解決しない場合に行われる
離婚するかどうか、親権や養育費の内容などを裁判所が判決する

証拠集めから離婚をするまでの手順を詳しく見ていきましょう。

浮気や経済的DVが理由で離婚する場合は証拠を集める

単身赴任中に、浮気や生活費がもらえないなどの経済的DVが理由で離婚する場合は、証拠を集めておきましょう。これらは法定離婚事由になるため、たとえ相手が離婚を拒否して離婚裁判までもつれ込んでも、証拠さえあれば離婚ができます。また、証拠があれば慰謝料を請求することも可能です。

証拠となり得るものとしては主に以下のとおりです。

離婚原因 証拠になり得るもの
浮気 ラブホテルを出入りする写真・動画
ラブホテルの領収書・クレジットカード明細
不貞行為があったことを裏付ける動画・音声・メッセージ
浮気相手や配偶者が不貞行為があったことを認めている音声
経済的DV 経済的DVをしていることを裏付ける音声・メッセージ
通帳の内容
家計簿の記録
借金の借用書
経済的DVについて記録した日記

単身赴任中の浮気の証拠を自力で集めるのは簡単ではないため、探偵に依頼することも検討しましょう

生活費がもらえないといった経済的DVは、経済的DVをしていることを裏付ける音声・メッセージがあれば証拠となります。ほかにも、通帳の内容や家計簿、経済的DVの内容を綴った日記でも証拠になります。経済的DVによって借金をしてしまっている場合は、その借用書も証拠の一つとなるでしょう。

離婚について協議する

続いて、夫婦で離婚について話し合いましょう。離婚の話し合いの進め方に決まったルールはないものの、単身赴任をしている配偶者に対して離婚を申し出る場合は、自ら離婚届をもって会いに行くことをおすすめします。

離婚の話し合いはストレスになりますし、特に相手が単身赴任中だと、離婚届を郵送して穏便に終わらせたくなる気持ちもあるかもしれません。しかし、配偶者が離婚の意思を持っていなかった場合、郵送した離婚届を放置されてうやむやになってしまうことも考えられます。

また、離婚というのは離婚届けを出せば終わるものではなく、養育費や財産分与、浮気などをしているなら慰謝料などについても話し合わなければいけません。これらの額に決まりはないため、お互い綿密に話し合わないと後からトラブルになってしまいます。

そのため、自ら離婚届をもって会いに行く、もしくは配偶者が自宅に帰った時に話し合いをしましょう。

ここで話し合いができ、双方が条件に合意すれば協議離婚は成立です。

離婚に夫婦間で合意を得られなかった場合は離婚調停

協議離婚が不成立となった場合は離婚調停をすることになります。

離婚調停というのは相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをすることになります。つまり、夫が単身赴任をしており、妻が調停を申し立てする場合は、妻が単身赴任先の住所を管轄している家庭裁判所まで足を運ぶということです。

離婚調停は基本的に月に1回のペースで行われ、おおむね3か月から半年、長いと1年以上かかることもあります。特に単身赴任先が遠くて高額な交通費がかかる場合は、申し立てる側に大きな経済的な負担がかかるということは理解しておきましょう。

離婚調停によって双方合意となった場合は、調停の内容を記載した調停調書を裁判所が作成してくれます。

その後は調停調書と離婚届を役所に提出することで、離婚は成立します。離婚調停をする場合は、証人の署名捺印・夫婦2人の署名捺印は不要です。

なお、離婚調停が成立してから10日以内に離婚届を提出しないと、5万円以下の過料が発生します。そのため、調停が成立したら速やかに離婚の手続きを済ませましょう。

離婚調停が不成立の場合は離婚裁判をする

離婚調停が不成立となった場合は、最終的に離婚裁判を起こすことになります。

最終的な判断は裁判所が下すため、たとえ配偶者が離婚を拒否していても、法定離婚事由に該当していれば離婚を認めてもらえます。

ただし、前述しているように、単身赴任だけが理由なら法定離婚事由には該当しません。不貞行為や悪意の遺棄などの、法定離婚事由がない場合は一般的に離婚は認められないということは理解しておきましょう。

また、たとえ不貞行為や悪意の遺棄が実際にあったとしても、証拠を提示できなければ一般的に離婚は認めてもらえません。

そのため、法定離婚事由がある場合は証拠を集めてから離婚を進める、法定離婚事由がない場合は話し合いで離婚を成立させるようにしましょう。

まとめ

離婚は双方合意であればどのような理由でも可能です。しかし、一方が離婚を拒否している場合は、最終的に裁判にて離婚を認めてもらう必要があります。裁判で離婚を認めてもらうには、法定離婚事由に該当する理由が必要ですが、単身赴任は法定離婚事由には該当しません。

そのため、相手が拒否している場合は、単身赴任だけを理由に離婚は基本的にできません

ただし、単身赴任によって法定離婚事由に該当するケースが出てくる場合は、離婚を認めてもらえる可能性があります。主なケースとしては「単身赴任によって不倫された」「生活費をもらえなくなった」などです。

そのため、単身赴任だけを理由に離婚したい場合は、配偶者と話し合いで離婚を進めてください。法定離婚事由には該当しないものの、話し合いにて離婚成立を目指しましょう。

不倫や経済的DVなど、法定離婚事由に該当する場合は、事前に証拠を集めたうえで離婚の話し合いを進めましょう。なお、不倫や経済的DVをされた場合は、慰謝料を請求できます。よりスムーズに慰謝料の請求をしたい場合は、弁護士に依頼することも検討してください。

単身赴任中の離婚に関するよくある質問

単身赴任のためセックスレスに陥った場合、離婚できますか?

夫婦間の合意であれば離婚は可能です。しかし、一方が離婚を拒否している場合は、最終的には裁判で判断を仰ぎます。セックスレスは「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する場合があるため、裁判でも離婚を認められることはあります。ただし、夫婦にとってセックスレス自体が、婚姻を継続し難い重大な事由になるかどうかが重要で、必ずしも離婚が認められるとは限らないということは理解しておきましょう。

海外に単身赴任したままの配偶者と離婚することは可能ですか?

配偶者が単身赴任によって海外にいる場合でも、海外に離婚届を送り、内容を記載してもらえば離婚は可能です。ただし、双方で話し合いが進まない場合は離婚調停をすることになります。離婚調停をする場合は、海外にいる配偶者が調停の場に出席する必要があるため、現実的ではないといえるでしょう。

単身赴任をした夫に慰謝料請求できますか?

慰謝料とは、精神的苦痛を負った被害者の心の傷を癒すために加害者が支払うものです。しかし、単身赴任をするという行為は、配偶者に対して精神的苦痛を与えるために行われるものではありません。そのため、配偶者には責任はなく、慰謝料の請求はできないという考えが一般的です。

単身赴任をきっかけに離婚することになった場合、夫を単身赴任させた会社に対して慰謝料請求できますか?

「単身赴任=離婚」というイメージは一般的にはなく「単身赴任をさせたから離婚した」という形で結びつけられません。そのため、前項の内容と同じで、単身赴任させた会社には責任はなく、慰謝料の請求は難しいという結論となります。

単身赴任中でも婚姻費用を支払わないといけないでしょうか?

単身赴任中でも婚姻関係があるなら、婚姻費用は支払う必要があります。子供の数や夫婦の収入によって支払う額は異なり、夫婦で話し合って決めます。これまで単身赴任中に渡していた生活費のようなものです。「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」を参考に婚姻費用を算出してみましょう。

単身赴任中の婚姻費用を請求できますか?

単身赴任中でも婚姻費用の請求は可能です。ただし、これまで単身赴任中に受け取っていた生活費にプラスされるのではなく、生活費が婚姻費用に代わるというイメージです。夫婦の年収・子供の数によって異なるので「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」を参考に算出してみてください。