奨学金を返せないのは甘えなの?返済できない主な理由とは?
社会人になってから「奨学金が返せない…」「奨学金を返済するのが厳しくなってきた」そう感じている方は意外と多いです。借りたものは返すのが当たり前であるとか、奨学金を返せないのが甘えだとか思われる方も多いかもしれませんが、かならずしもそうとは言い切れません。
実際に奨学金が返済できない人の割合は7%を超えており13~15人に1人は滞納が発生しています。もちろん、奨学金をしっかり返済できている方のほうが多いですが、返済できないことが甘えと思う必要はないでしょう。
ただ、返済できないままでいると今の状況が悪化するだけなので、何らかの解決策を取らなければ現状が変わりません。まずは、奨学金が返済できない人の割合や奨学金を返済できなくなってしまう人の主な「理由」についてお伝えします。
奨学金が返済できない人は意外と多い
主に、奨学金事業を行っている日本学生支援機構のデータによれば、平成25年度~平成30年度までの6年間で発生した延滞債権数割合の平均は「7.65%」です。約13人に1人の割合で奨学金の返済ができていないことがわかります。
とくに、短大や専修学校を卒業された方の延滞債権割合数が10%前後と、他の学種に比べると多いです。この原因は定かではありませんが、奨学金を返せない人は意外と多く、とくに短大や専修学校を卒業された方の延滞率は高いというのが現実です。
参考:日本学生支援機構「学種別延滞債権数割合」
奨学金が返せない一番の理由は「本人の低所得」が原因
奨学金を返せなくなってしまう理由として、もっとも多い理由が「本人の低所得」です。次いで多いのが「親を経済的に援助しているため支出が多い」ことが理由です。奨学金が返せない2つの理由をまとめると「自分や家族の経済的理由」がもっとも多いことになります。
実際には、将来の生活スタイルや資金計画まで見据えた奨学金の借り入れをしている人は少ないでしょう。
学校を卒業したあとはどのような職種に就職するのか?といったビジョンが見えていないまま奨学金を借りていることも、滞納が発生する理由のひとつと言えます。また、奨学金の返済途中で家族や自分が何らかの病気を患ってしまい、経済的に困窮してしまう方もいるでしょう。
参考:日本学生支援機構「返還できない事情(アンケート調査)」
また、大学や短大等を卒業したあと3年以内の離職率は30%前後で推移しており、離職率が高いのも特徴です。仕事を失えば、奨学金を返せない状況に陥ってしまう可能性が高いでしょう。
参考:厚労省「新規学卒就職者の離職状況」
約300万円の借金は簡単に完済できるものではない
奨学金を借りて学校へ通った方の平均借金額は「288万円」で返済期間平均は「16年」です。奨学金を借りた当初は、自分の道を広げるための必要経費と思っていても、実際に社会人になった途端に300万円弱の借金を背負うのは気持ち的にキツいのは当然です。
また、新卒の22歳から返済を始めたとすれば、38歳になるまで完済ができないという先の長い返済期間にも嫌気が差す方は少なくないでしょう。
何事もなく仕事を続けられる保証がないのに、奨学金という重荷を背負って社会に出ていくプレッシャーは計り知れないでしょう。奨学金を返せないことが甘えとは思わず、返せないのであれば奨学金返済の制度を利用したり、法的制度を利用したりして根本的な解決を図るべきでしょう。
参考:マイナビ「4割以上の人が活用した奨学金、返済額は平均288万、完済までは約16年」
奨学金を返せないとどうなる?返済不能になった場合の4つのリスク
奨学金を返せないことは「甘え」でもなければ「恥」でもありません。ただ、返せないまま放置し続けていれば、下記のようなリスクを伴うため注意しなければいけません。
- 延滞金が発生して返済金額が膨れ上がる
- 信用情報機関に事故情報が掲載される
- 連帯保証人への請求・一括請求
- 強制執行を受け、自分の財産や給与を差し押さえられる
「奨学金を返せないから」と言って返さないままでいると、今以上に自分の首を絞めるきっかけになり得ます。奨学金を返せないことが甘えなのか否かよりも、返せないとどうなってしまうのか?どうやって解決をすれば良いのか?についてしっかり考えたほうが良いでしょう。
①年1.5~10%の延滞金が発生して完済が難しくなる
奨学金を延滞していると、延滞期間や延滞日が属する期間に応じて1.5%~10%の延滞金が請求されます。延滞金は「延滞している割賦金」に対して請求されるため、延滞金の金額や延滞期間が長ければ長いほど、返済すべき奨学金の額が大きくなってしまうでしょう。
延滞金の計算方法
延滞している割賦金✕金利(1.5%~10%)✕延滞日数÷365日=延滞金
たとえば、年率10%で30万円の奨学金を1年間延滞していたときの延滞金は下記のとおりになります。
30万円✕10%✕365日÷365日=3万円
30万円の奨学金を1年間延滞しただけで、3万円もの延滞金が発生する恐れがあります。これは、延滞している間はずっと増え続けるため、延滞を早めに解消しなければ返済すべき奨学金の額が膨れ上がってしまうでしょう。
参考:日本学生支援機構「延滞金」
②個人信用情報機関へ事故情報が登録される
奨学金の貸し付けを行っている「日本学生支援機構」は、信用情報機関であるKSC(全国銀行協会)へ加盟しています。そのため、奨学金を返せずに延滞をしていると、延滞の事実が金融事故情報としてKSCのデータベースに掲載されてしまうでしょう。
個人信用情報機関へマイナスな情報(延滞の事実)が掲載されてしまうと、各種ローン契約の締結ができないなどの影響が発生します。、クレジットカード等も持てなくなるので注意してください。
クレジットカードを持つこともできない
奨学金を延滞し、信用情報機関にマイナスな情報が掲載されてしまうと、クレジットカードを持つことができません。現在持っているクレジットカードも更新ができなかったり途中で利用停止になったりする恐れもあるでしょう。
クレジットカードは、社会人のステータス性や将来のために信用を高めておく。といった意味合いで、最低1枚は持っておきたいものです。クレジットカードが持てないのは、利便性が失われるだけではなく、今後の生活にも影響をあたえる恐れがあるでしょう。
ワンポイント解説
クレジットカードはデビットカードで代替可能
クレジットカードを持てなくても、デビットカードを利用すれば代替可能です。ただ、デビットカードは、利用代金を口座から即時引き落とすサービスであるため「信用の積み重ね」ができません。
延滞が続いている間は各種ローン契約ができない
信用情報機関にマイナスな情報が掲載され続けている間は、各種ローン契約の締結も難しいです。たとえば、車の購入や住宅の購入、高額な物品等の購入費用はすべてローンで購入することができません。
社会人になれば、自分の好きな車が欲しいとか、良い時計を購入してモチベーションにつなげたいなどと思う方も多いでしょう。しかし、奨学金を返せなかったことによって、すべて一括で購入するしかありません。
「奨学金を返せないことが甘え」とは言いきれませんが、これからのことを考えると、奨学金をしっかり返済するか根本解決を検討したほうが良いでしょう。
スマートフォンの割賦契約もできない
最近のスマートフォン10万円を超えるものもあり、多くの人が「割賦契約(分割払い)」で本体を購入しています。この割賦契約も、奨学金を延滞して信用情報にキズがつくことで、利用できなくなってしまいます。
携帯電話会社との通信契約自体は可能ですが、携帯電話本体を一括で購入するしか選択肢がなくなってしまいます。新機種が欲しいとか、スマートフォンが壊れたから買い替えたいと思っても、なかなか難しいのが現実です。
③連帯保証人への請求・一括での請求を求められる
奨学金を借りるときは原則として、連帯保証人もしくは保証人を設定しなければいけません。万が一、主契約者である本人が奨学金の返済ができなければ、連帯保証人もしくは保証人あてに奨学金の請求がされます。
請求された者は原則として、主契約者と同等の返済義務を負うため、主契約者もしくは(連帯)保証人が奨学金を返さなければいけなくなります。奨学金を借りた当初は「奨学金のすべてを自分で返す」と約束をしていても、返済できなければ(連帯)保証人に請求がいくので注意してください。
万が一、(連帯)保証人も奨学金の返済ができなければ、奨学金の一括請求や強制執行に至る可能性もあります。奨学金が返せないのであれば、次のステップに進む前、早めに根本的な解決をしておいたほうが良いでしょう。
参考:日本学生支援機構「人的保証制度」
④強制執行によって自分の財産や給与を差し押さえられる
奨学金を返せないまま放置し続けていると、最終的には「強制執行」を受ける恐れがあります。強制執行を受けることによって、あなたが持つ財産が差し押さえられるのみならず、給与も強制的に差し押さえられます。
現在の給与では奨学金の返済が難しくて延滞をしていたとしても、強制的に給与を差し押さえられ、今以上に生活を圧迫する恐れがあります。また、給与を差し押さえられることによって、会社に奨学金滞納の事実がバレてしまう可能性が高いです。自分で自分の首を絞める結果になるので、奨学金の滞納だけは絶対に避けましょう。
既に奨学金の返済が厳しい状況に陥っているなら、一刻も早く弁護士へ相談することで差押えを回避できる可能性が高いです。もちろん、会社や家族にも内緒で相談できるので、まずは当サイトで紹介している弁護士の無料相談を利用してください。
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ワンポイント解説
給与の差し押さえは1/4まで
奨学金を滞納していて差し押さえられる給与の上限は手取りの1/4までと定められています。つまり、手取りが20万円の方であれば5万円まで差し押さえが可能です。ただし、手取り額が44万円を超えたときは、33万円を超える部分がすべて差し押さえられるので注意してください。
奨学金は自分に甘えず、自力で返済していくしかない?
奨学金を返せないのであれば、奨学金の返済負担を軽減する制度や債務整理等の法的制度を利用して、確実に返済できる方法を模索すれば良いです。
自分が借りたお金は自分で返すのが当たり前。奨学金を返せないのは甘えだ。と言われたり思ったりする方も中にはいるかもしれませんが、奨学金を借りたすべての人が安定して稼ぎ、返済を続けられているわけではありません。
今は、奨学金を返せないことが甘えなのか否かを考えるよりも、いかにして奨学金問題を解決するのか?について考えたほうが良いでしょう。
最後に奨学金を確実に減らし、完済するための方法について下記の3つをお伝えします。
- 奨学金の「返還期間猶予制度」を利用すれば、最長で10年間支払猶予を受けられる
- 奨学金の「減額返還制度」を利用すれば、毎月の返済負担を軽減できる
- 債務整理をすれば借金を0にしたり大幅に減額したりできる
奨学金は、本人が死亡もしくは身体の障害にならなければ、原則免除されることはありません。債務整理以外の手段で奨学金を返したいのであれば、返済期間猶予制度や減額返還制度の利用を検討してください。
奨学金の「返還期間猶予制度」を利用すれば最長10年間の猶予があたえられる
「返還期間猶予制度」は災害や病気、失業等によって奨学金の返済が難しくなった方が利用できる制度です。この制度を利用することで最大10年間(120か月)まで、奨学金の返済期間を猶予することができます。
返還期間猶予制度を利用するためには、日本学生支援機構に願い出ることで「承認された期間のみ」免除されます。免除されている期間の延滞利息や追加の利息等は発生しませんが、奨学金の延滞が発生すれば、延滞金が発生するので注意しましょう。
参考:日本学生支援機構「返還期限猶予」
減額返還制度の利用で毎月の返済額を軽減できる
「減額返還制度」とは、奨学金の返済負担額を軽減できる制度です。災害や病気、失業等によって奨学金の返済が厳しい方を対象にしている点は「返還期間猶予制度」と同じですが、こちらの制度は「毎月の支払額を軽減すれば奨学金の返済ができる人」を対象にしています。
つまり、失業等によって収入が途絶え、奨学金が全く支払えない人は「減額返還制度」の利用ができません。少なからず、貯金を取り崩しながら返済していける方は、こちらの制度を利用しても良いでしょう。
ただし「減額返還制度」を利用する際に注意しなければいけないことがいくつかあります。
- 奨学金そのものを減額するわけではない
- 返済額を軽減できる代わりに、返済期間が延長される
- 申し込み時点で延滞している方は、この制度に申し込むことができない
とくに注意すべき点は、奨学金が減額されるわけではないので、返済期間が延長されてしまう点です。ただでさえ長い付き合いを強いられる奨学金の返済期間が、さらに延長されてしまうことになります。
「減額されれば確実に支払いができる」と思っていても、長い目で見れば「債務整理」を選択されたほうが良いこともあるでしょう。もしも、奨学金そのものを減額したいと思うのであれば、弁護士へ相談されてみてはどうでしょうか。
参考:日本学生支援機構「減額返還制度」
奨学金を減額もしくは0にするなら「債務整理」で解決できる
奨学金そのものを減額したり0にしたりするのであれば、債務整理以外の選択肢はありません。現状で、奨学金の返済が厳しいとか奨学金と向き合うのが疲れた。と思うのであれば、思い切って債務整理を検討しても良いでしょう。
奨学金を法的制度で根本的に解決することは、決して甘えではありません。自己破産等の債務整理手続きは、すべての人に平等にあたえられた「権利」のひとつです。奨学金が支払えないのであれば、積極的に権利を行使しても良いでしょう。
参考:e-GOV「破産法(第十二章)」
また、債務整理には下記の3種類があり、自分にあった手続きを選択できます。
- 利息をカットして元金のみを返済する「任意整理」
- 借金を最大で1/10まで減額できる「個人再生」
- 奨学金を含めすべての借金を0にできる「自己破産」
自分にあった債務整理がわからなくても、まずは弁護士へ相談されることをおすすめします。「とにかく奨学金の返済が厳しい」そう感じているのであれば、今すぐに債務整理を検討してください。
>>【奨学金の返済が厳しいと感じたら】無料相談で弁護士から借金問題解決のアドバイスをもらおう
ワンポイント解説
債務整理は信用情報にキズがつく
債務整理をすると最大で10年間、信用情報にキズがついてしまいます。この期間は、新たなローン契約の締結やクレジットカード等を持つことが難しくなるでしょう。しかし、奨学金を早期に終わらせて、生活再建を目指す目的であれば、債務整理をするメリットはとても大きいと言えるでしょう。
まとめ
今回は、奨学金を返せないことが甘えなのか?返せなくなったときにはどうしたら良いのか?についてお伝えしました。奨学金は本人の経済状況等によって、多くの人が返済に行き詰まり、滞納してしまっている事実があるとのことでした。
「奨学金を借りた以上は返すのが当たり前だ。奨学金を返せないのはただの甘えだ」と言われる場合もありますが、やむを得ない事情があれば致し方のないことでしょう。自分の生活を著しく圧迫させてまで奨学金を返済したり、奨学金の返済自体を延滞したりしてしまうことが正しいやり方だとは言えません。
「借りたものは当然返す」と思うのは決して間違いではありませんが、返済が厳しいのであれば積極的に債務整理等で根本解決を図ったほうが良いでしょう。奨学金の返済が、あなたの人生の弊害になってしまっては意味がありません。
「奨学金の返済が厳しい」そう感じているのであれば、今すぐに今回お伝えした解決策を実行してください。
奨学金のよくある質問
奨学金も債務整理できますか?
はい、可能です。
ただし多くの場合、奨学金には連帯保証人がついています。
奨学金を債務整理すると、連帯保証人へ請求がいきます。
奨学金を返せないとどうなりますか?
利息や遅延損害金の発生、ブラックリスト掲載、給料や財産の差押えなどが考えられます。
返済が難しいと感じたら、日本学生支援機構や弁護士へ相談するとよいでしょう。
STEP債務整理「債務整理に力を入れるおすすめの弁護士を紹介」
奨学金の返還猶予が来月までなのですが、コロナの影響で収入が減ってしまい奨学金の支払い再開が難しいです。延長などはできるのでしょうか。
新型コロナウイルスが原因の場合、返還期限猶予は12ヶ月追加で申請できます。
ただし、緊急的な措置のため、最新の情報は日本学生支援機構に直接問い合わせることをおすすめします。
奨学金の返済がきつく、救済制度を利用しようとしたら収入が基準を超えるからと審査に落ちてしまいました。どうしたらよいですか?
収入が基準の上限を超える人のために一部の「特別な支出」を控除できる制度があります。
経済困難・新卒など・災害・海外居住・海外から帰国が特別な支出控除を使える事由です。当てはまる場合は、日本学生支援機構の窓口へ問い合わせてみるとよいでしょう。
奨学金の救済制度に「返還期限猶予」というものがあるのですが、具体的にどのような制度ですか?
返還期限猶予は支払いを先送りにする制度で、返還の支払いを一定期間なくすことができます。
返還する総額が変わるわけではなく、猶予された分、返還期間が延長されます。
最短即日取立STOP!
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