年金は預貯金になった瞬間に差し押さえ対象になる
結論から言うと、年金は「差押禁止財産」に該当するため、借金の返済ができなくても差し押さえられることはありません。
しかし、年金が個人の銀行口座に振り込まれたその瞬間に、差し押さえが可能となる預貯金に変わってしまいます。
少し複雑ですが、日本の法律では「年金の直接的な差し押さえはできないが、預貯金の差し押さえは可能」となっています。そして、年金と支払われたお金は、口座に入金された瞬間に預貯金に変わってしまいます。
銀行口座に振り込まれた瞬間に差し押さえられることは滅多にないですが、「年金は差し押さえられないから、口座に入れておいても大丈夫」と思っていると、差し押さえられてしまう可能性があるので注意してください。
差押禁止財産である公的年金と差し押さえの可能性がある私的年金
年金は公的年金と私的年金に分けられ、それぞれ差し押さえの可否が異なります。年金の種類ごとに定められた差し押さえの可否は以下の通りです。
- 公的年金は差し押さえができない
- 私的年金は場合によって差し押さえ対象となる
ここからは、それぞれの年金が差し押さえられる可能性について解説していきます。
公的年金は差し押さえができない
厚生年金や国民年金などの公的年金は、差押禁止財産であるため、借金の返済が滞り強制執行を受けても差し押さえられることは絶対にありません。
公的年金は、借金の返済ができずに強制執行を受けた方であっても、「生活をしていく上で必要な資金」とみなされるため、差し押さえ対象からは外れています。
公的年金の他にも、債務者(借金を抱えている人)が生活をおこなう上で必要不可欠なものは、差押禁止財産に該当します。
逆に言えば、生活上必要ではないものは、差し押さえの対象となると考えておいてください。
年金以外で差し押さえが禁止されている財産
公的年金以外に差し押さえが禁止されている主な財産は以下の通りです。
- 66万円以下の現金
- 給料や賞与、退職金の手取り額の4分の3に相当する額(手取り額が44万円を超える場合は33万円まで)
- 1ヶ月間の生活に必要な最低限の食料や燃料
- 日常生活に不可欠な家具や家電、寝具、台所用具、衣類など
- 仕事のために必要な工具や器具など
- 仏像や位牌のほか、その他礼拝・祭祀に直接供するために欠かせないもの(神体・神具・仏具など)
- 生活に必要な義手や義足、身体の補助器具(車いす・眼鏡・補聴器・白杖・松葉杖など)
- 実印や日常生活・仕事に必要な印鑑
- 生活保護の受給権
- 児童手当の受給権
一定の生活必需品や生活費は、日本国憲法で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために必要となるものなので、それを侵害するような差し押さえは法律で認められていません。
遺族厚生年金や障害年金等も差し押さえ不可
同じ理由から遺族厚生年金や障害年金などの年金も、差し押さえられることはありません。
遺族厚生年金は、残された遺族が生活をしていく上で大切な資金ですし、障害年金は障害を負ってしまった方が、生活をおこなう上で必要な資金ですので、差押禁止財産に該当します。
また、前述のとおり日本国憲法では、「健康的で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」としています。
そのため、人々が生活を続けていく上で、必要な最低限のお金は絶対に差し押さえられることはありませんので安心してください。
私的年金は場合によって差し押さえ対象となる
差押禁止財産として認められるのはあくまでも公的年金です。そのため、私的に加入している年金保険は、差し押さえの対象となる可能性があるので注意しましょう。
ただ、私的年金の中でも公的年金と同等に扱われる年金があります。
- 厚生年金基金
- 国民年金基金
- 確定拠出年金(個人型・企業型)
- 確定給付企業年金
厚生年金基金や国民年金基金は、厚生年金や国民年金などの公的年金を補完する役割を担っています。そのため、上記の年金は、加入義務のない私的年金に該当しますが、差押禁止財産に該当するのが一般的です。
確定拠出年金も、確定拠出年金法第32条の規定により、差し押さえができない財産として定められています。
このように、ほとんどの私的年金についても差押禁止財産として認められています。
私的年金であっても、老後資金確保の観点から、とても重要な役割を担っているため差し押さえられることはありません。
年金以外で差し押さえの可能性がある財産
私的年金以外で差し押さえを受ける可能性がある財産は以下の通りです。
- 現金(66万円を超える場合のみ)
- 給料や賞与、退職金の手取り額の4分の1に相当する額(手取り額が44万円を超える場合は33万円を超える部分)
- 預貯金
- 有価証券
- 不動産
- 自動車(日常生活や仕事に支障がない場合のみ)
- 貴金属
- ブランド品
- 無形資産(特許権・商標権・著作権・電話加入権など)
- 債権(賃料債権・売掛債権・貸付金の返済請求権など)
年金暮らしであっても、これらの財産は差し押さえの対象となるので注意が必要です。
公的年金でも差し押さえを受ける可能性があるケース
公的年金は原則として差し押さえが禁止されていますが、以下のケースに該当する場合は公的年金であっても差し押さえを受ける可能性があります。
- 年金を担保に借金をしている
- 保険料や税金を滞納している
- 銀行口座に年金が振り込まれた
ここからは、それぞれのケースについて1つずつ詳しく解説していきます。
年金を担保に借金をしている
1つ目は、年金を担保にした借金を滞納したケースです。年金を担保にした貸付制度は以下の3つあります。
貸付制度 |
提供機関 |
年金担保貸付制度 |
福祉医療機構 |
労災年金担保貸付制度 |
福祉医療機構 |
恩給・共済年金担保融資 |
日本政策金融公庫 |
年金を担保にした貸付制度を利用して借金をしていた場合、滞納すると年金であっても差し押さえを受ける可能性があります。
なお、年金を担保にした貸付制度は、民法改正によって令和4年3月末で新規申し込みの受付が終了しています(恩給・共済年金担保融資のうち、軍人恩給および援護年金を除く)。
保険料や税金を滞納している
2つ目は、保険料や税金などの公租公課を滞納しているケースです。
公租公課とは、国や地方公共団体によって徴収・賦課される公的負担の総称のことで、具体的には以下のものが公租公課に該当します。
- 国税(所得税・消費税・法人税・相続税・贈与税など)
- 地方税(住民税・固定資産税・自動車税・地方消費税など)
- 社会保険料(健康保険料・年金保険料・介護保険料・労災保険料・雇用保険料)
- 下水道使用料
国民年金法や厚生年金保険法などの年金に関する法律では、公的年金を差し押さえ禁止財産として明記していますが、ただし書きで「国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は、この限りではない」と規定されています。
つまり、公租公課の滞納を理由に行政機関が財産を差し押さえる場合は、公的年金も差し押さえの対象となるということです。
なお、国や自治体は公租公課の滞納があった場合は、裁判上の手続きを経なくてもただちに財産の差し押さえが行えます。公租公課の督促状を無視すると、いきなり年金の差し押さえを受ける可能性があるので注意しましょう。
銀行口座に年金が振り込まれた
3つ目は、銀行口座に年金が振り込まれたケースです。前述のとおり、国民年金法や厚生年金保険法などの法律で差し押さえが禁止されているのは、あくまで公的年金の受給権のみです。
年金が銀行口座に振り込まれると、公的年金の受給権から預金債権という別の債権に変わります。
預金債権は差し押さえ禁止財産に該当しないため、公的年金として振り込まれたお金であっても差し押さえの対象です。
ただ、銀行口座に振り込まれた年金が差し押さえられてしまうと、生活が成り立たなくなってしまう恐れがあります。その場合は、のちに解説する裁判所に「差押禁止債権の範囲の変更」の申し立てをすることで、銀行口座の預金も差し押さえを禁止してもらえる可能性があります。
年金の差し押さえを防ぐ方法
税金や社会保険料がどうしても支払えない場合は、以下の方法で対処することで年金の差し押さえを一定期間防げます。
- 納税の猶予や換価の猶予制度を利用する
- 社会保険料の猶予・免除制度を利用する
ここからは、それぞれの方法について1つずつ詳しく解説していきます。
納税の猶予や換価の猶予制度を利用する
納税の猶予とは、以下のいずれかの理由があって税金を納付するのが困難な場合に、税金の徴収を最長1年間猶予してもらえる制度のことです。
- 災害や盗難、詐欺などによって財産に相当な損失が生じた場合
- 本人または本人と生計を一にする親族が病気・ケガをし、多額の費用が必要になった場合
- 本人が営む事業について廃止または休止した場合
- 本人が営む事業について著しい損失が発生した場合
一方で換価の猶予とは、以下のすべての条件を満たしている場合に、差し押さえられた財産の売却や一定の財産の差し押さえを最長1年間猶予してもらえる制度です。
- 税金を納付することで、事業の継続や生活の維持が困難になる恐れがある場合
- 納税をする意思を有すると認められる場合
- 換価の猶予を受けようとする税金以外の税金の滞納がない場合
税金は課税主体によって国税と地方税の2つに分けられますが、それぞれ相談窓口が異なります。納税の猶予や換価の猶予制度を利用する場合は、担当の相談窓口でご相談ください。
税金の種類 |
相談先 |
国税(所得税・消費税・法人税・相続税・贈与税など) |
所轄の税務署(徴収担当) |
地方税(住民税・固定資産税・自動車税・地方消費税など) |
市区町村役所(税務課) |
社会保険料の猶予・免除制度を利用する
社会保険料が支払えない場合は、社会保険料の猶予・免除制度を利用しましょう。
病気やケガ、退職、倒産、災害などの正当な理由があって一時的に社会保険料を納付するのが困難であれば、担当窓口に相談することで納付を原則として1年間猶予、もしくは保険料の一部や全額を免除してもらえる可能性があります。
社会保険は、健康保険・年金保険・介護保険・労災保険・雇用保険の5つありますが、どの保険料を滞納しているかによって相談先が異なるので注意が必要です。
社会保険の種類 |
相談先 |
健康保険 |
市区町村役所(保険年金課) |
年金保険 |
全国の年金事務所
ねんきん加入者ダイヤル |
介護保険 |
市区町村役所(介護保険課) |
労災保険 |
都道府県労働局
労働基準監督署 |
雇用保険 |
都道府県労働局
労働基準監督署 |
年金が差し押さえられたら差押禁止範囲変更を申請しよう
年金は生活をしていく上で必要な資金です。預金となった直後に債権者に差し押さえられてしまっては、最低限の生活を維持できなくなる恐れがあります。
そこで、「差押禁止財産変更」の申し立てを裁判所におこなうことが認められています。
差押禁止財産変更とは、差し替えにより債務者の生活が成り立たなくなる場合、裁判所に申し立てることで差し替え財産の範囲を減らせる手続きのことです。
一般的に、下記の条件を立証できれば認められる可能性があります。
- 口座内のお金が公的年金や生活保護による給付であると特定できる
- 該当する口座を差し押さえられると生活が成り立たなくなる
場合によってはほかの条件を求められる可能性もありますが、上記の条件は差押禁止財産変更で重要となる場合が多いです。
裁判例を見ると,年金を原資とする預金が生活費として使用されており,今回の差押えの対象となった部分も生活費として使用する予定であったことが証明できた場合には,申立てが認容されていることが多いです。
引用元:年金振り込み口座に対する差押えは認められるか|新銀座法律事務所
このように、年金を生活費のほとんどとして使っている場合は、申し立てが認められる可能性が高いでしょう。
ただし、債権者による取り立てのほうが早く完了した場合、差押禁止財産変更による取り立ての取消しは認められていません。そのため、早めに申請しておく必要があります。
裁判所に書面提出する必要があるので、弁護士や司法書士などの専門家に依頼して手続きを進めるのがおすすめです。
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差し押さえがおこなわれるほど借金問題が深刻な場合は早めに債務整理をおこなおう
長らく借金返済ができず、差し押さえがおこなわれるほど借金問題が深刻な場合は、もはや自力での問題解決は難しい場合が多いです。
このような場合は早めに弁護士に相談し、債務整理手続きなどを進めながら根本的な解決を図った方がいいでしょう。
しかし、「債務整理をおこなったら自宅を失う」と思っている方も多いのではないでしょうか。
結論、債務整理=自己破産ではありません。債務整理には「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つの手続きがあり、自宅を失う手続きは自己破産だけです。
方法によっては債務整理をする借金を選べるため、全財産を失うことなく負担を減らせる可能性があります。
待っていても年金の受給額が増えることは絶対にありません。特に体力も衰えてきて、働くこともむずかしいのであれば、なおさら債務整理を検討すべきです。
財産を失わずに済む任意整理や個人再生
任意整理とは、借入先と相談の元、利息や遅延金をカットしてもらい、3~5年での返済を目指す方法です。
すべての借金を債務整理するわけではなく、最も負担が大きい借金のみなど債務整理の対象を選べるほか、裁判も必要ないため債務整理の中では最も手軽におこなえるメリットがあります。
個人再生は、裁判所を通して借金の元金を1/5に減額してもらう方法です。任意整理よりも手続きは複雑になりますが、住宅や車などの資産を手放さずに負担を減らせます。
そのため、任意整理や個人再生といった方法をとれば、財産を処分されることなく借金を減額できるでしょう。
ここからは、任意整理や個人再生のメリットについて解説していきます。
年金が安定収入として認められるため手続きをしやすい
任意整理は将来利息をカットし、現在の返済額を概ね1/2までカットする手続きです。
手続き費用が安く(1社あたり4万円程度が相場)、財産を失わないなど、債務整理の中でももっともデメリットが少ないでしょう。
ただし、手続きをおこなうには条件があり、3〜5年で完済できる見通しが立てられることが条件となります。ここで、年金を受け取っていることが有利に働き、安定収入として認められる可能性があります。
年金収入を合わせ、3〜5年での完済計画が立てられるようなら手続きが認められる可能性は十分あるでしょう。
マイホームを残したいなら個人再生をおこなったほうが良い
「マイホームを残したいけど、大幅に借金をカットしたい」という方は、個人再生を検討してみてください。
個人再生は、法的強制力を持った手続きであるため、裁判所が決定を下せば、債権者(お金を貸した人)の意思に関係なく、借金が減額されます。
そして個人再生の一番のメリットは前述のとおり「住宅などの資産を残せること」です。
年金を受給されている方は、若くても60歳以上です。定年退職をされている方も多いため、賃貸住宅の入居審査には通りにくい傾向にあります。
人が最低限の生活をおこなっていくために絶対に必要な住まいを失うわけにはいきません。「可能であれば、住宅を残したい。」という方も、安心できる手続きです。
ただし、個人再生は借金を0にする手続きではないため、大幅に減額(1/5程度減額)された借金を数年掛けて完済します。
もしも支払い途中で債務者(借金を抱えている人)が亡くなってしまえば、相続人は住宅を相続できますが、債務者が残した借金も同時に相続します。
後世に借金を残したくないのであれば、できるだけ早い段階での完済を目指した計画を立てることが大切です。
借金を返済できる見込みがないのであれば、自己破産の検討を
借金を返済できる見込みが一切ないのであれば、自己破産を検討したほうが良いでしょう。
国民年金保険や厚生年金保険として支払われる年金は、微々たるものです。おそらく、自分たちの生活で精一杯な方がほとんどでしょう。
「生活で精一杯であるにも関わらず、借金の返済までおこなうのはむずかしい」「借金を大幅に減額されても、返済を続けていける自信がない」
そのような方は、自己破産をおこなってください。もし自己破産をしても、公的・私的年金が差し押さえられることは絶対にありませんので安心してください。
ちなみに、自己破産の費用は30万円~とかなり高額ですが、分割でのお支払いや法テラスの利用で立て替え払いが利用できます。
今すぐに費用の準備ができなくても、債務整理が始められます。まずは、弁護士へ相談されてみてはどうでしょうか。
まとめ
今回は、借金の返済が滞ったら年金も差し押さえられてしまうの?差し押さえられないためにはどうしたら良いのか、についてお伝えしました。
年金は、差押禁止財産に該当するため、直接的に差し押さえられる心配はありません。また、私的年金のほとんども、差押禁止財産であるため、差し押さえられる心配はないとのことでした。
一方で、年金が預貯金に変わった瞬間には差し押さえ可能財産に変わってしまうので注意しなければいけません。「年金は差押禁止財産だから大丈夫」と、高を括っていると、預貯金を差し押さえられてしまうので注意してください。
そして、借金の返済目処が立たず、借金を支払っていけないのであれば、早めに債務整理を検討されることをおすすめします。現在、支払えない借金をしばらく経ってから支払えるようになる可能性は極めて低いです。早めに決断をして、早めにスッキリしてしまったほうが、気持ちが楽になることでしょう。
借金滞納による年金差し押さえについてよくある質問
借金滞納による年金の差し押さえを回避するにはどうすればよいですか?
元気なうちは働いて、できるだけ早く借金を完済するのが最も良い方法です。しかし、どうしても借金返済の目処が立たないのであれば、債務整理の検討も視野に入れたほうがよいでしょう。
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