催告書とは法的手段に移行する一歩手前の最終通告
催告書とは、債務者が長期間支払いを滞納した場合に、債権者が債務者に対して支払いを求める書類のことです。
単に期日が遅れただけですぐに送られてくるものではなく、法的手段に移行する一歩手前の最終通告として送られてきます。まずはメールや電話で支払いを促し、それに応じなければ催促状で支払いを促すのが一般的です。
それでも支払いに応じなければ督促状に切り替わり、催促状よりも厳しい表現で支払いを求めます。
その後は返事があるまで1週間に1回のペースで何度か督促状を送付し、度重なる督促にも応じなければ「これ以上支払いがなければ法的措置を取る」という最終警告として催告書を送付します。
督促状と催告書では警告の「警戒レベル」が異なる
催告書と督促状はどちらも債務者に滞納分の支払いを求める書類である点は共通しており、法律的にも明確な違いはありません。しかし、一般的に催告書は督促状よりも警告・警戒レベルが高い書類として扱われています。
催告書では督促状よりも厳しい表現が用いられており、これ以上支払いがない場合は法的措置を取る旨も記載されています。そのため、催告書が送られてきたということは、すでに事態が深刻なレベルまで達しているということを意味しているといえるでしょう。
これまでの催促状や督促状と同じように軽く扱っていると、本当に法的措置を取られてしまい、最終的に財産を没収されてしまう可能性があるので絶対に無視してはいけません。
内容証明郵便で催告書が届いた場合は法的措置を取られる可能性が高い
内容証明郵便とは、「いつ・誰が、誰に・どのような内容の文書を送ったのか」を公的に証明できる郵便のことです。内容証明郵便は通常の取引や日常生活では使われない郵便なので、普通郵便よりも債務者に本気度やプレッシャーを与える効果があります。
また、内容証明郵便の催告書には時効の完成を6ヶ月間猶予する効果があるほか、法的措置に移行した場合の証拠としても利用可能です。
そのため、内容証明郵便で催告書を送ってきたということは、それだけ事態が深刻であり、債権者が本気で法的措置への移行を考えているというメッセージでもあります。
内容証明郵便の催告書を無視すれば、ほぼ確実に法的措置へ移行することになるので、法的措置を回避したければ期日までに支払いを済ませなければなりません。
支払督促は法的手続きの一環で裁判所から送られる書類
支払督促とは、債務者が約束通りに支払いをしない場合に、債権者の申し立てに基づいて簡易裁判所の書記官が債務者に対して支払いを命じる書類のことです。
催告書や督促状は債権者が直接送る私的な書類であるのに対し、支払督促は法的手続きの一環として送られてくる書類なので性質がまったく異なります。
支払督促には支払いを強制する法的な効力があるため、支払督促を無視すると強制執行によって財産を没収される可能性が高いです。
催告書を無視するとどうなる?
催告書を無視すると、滞納期間に応じて段階的に以下のようなことが起こります。
- 【1週間~2ヶ月】督促状や催告書が送付される
- 【2~3ヶ月】期限の利益がなくなり残債を一括請求される
- 【2~3ヶ月】ブラックリストに登録される
- 【3ヶ月~】訴状や支払督促が届き裁判を起こされる
- 【裁判以降】財産が差し押さえられる
ここからは、それぞれの出来事について1つずつ詳しく解説していきます。
【1週間~2ヶ月】督促状や催告書が送付される
支払期限を過ぎても支払いがなかった場合、電話やはがきでの催促から始まります。それでも支払いがなかった場合、1~2週間経つと督促状が届き、それでも無視を続けた場合は支払期限から2ヶ月が経つまでに催告書が送られるのが一般的です。
基本的に、督促状も催告書も期日以内に支払えればそれ以上連絡が来ることはありません。ただし、督促状や催告書は普通郵便で届くことが多いため、家族に借金がバレてしまう可能性があります。
そのため、家族に内緒で借金をしていたり、滞納していることを知られたくなかったりする場合は、すぐに支払うか後述する債務整理などの方法で対処するのがおすすめです。
【2~3ヶ月】期限の利益がなくなり残債を一括請求される
期限の利益とは、決められた期日が到来するまで支払いをしなくてもよいという債務者の権利(利益)のことです。
期日が到来するまでに債権者から突然支払いを求められても、債務者は期限の利益を理由に支払いを拒否できます。
しかし、支払いの滞納によって期限の利益を失った場合は、将来支払えるはずだったものを直ちに一括で支払わなければなりません。
期限の利益の喪失を理由とした一括請求は拒否できず、対応できないと法的措置を取られることになるため、一括請求される前に早めに支払いを済ませましょう。
【2~3ヶ月】ブラックリストに登録される
支払いを滞納してから2~3ヶ月ほど経過すると、信用情報機関に事故情報が登録されます。
これをいわゆる、ブラックリストに登録されるといいます。ブラックリストに登録されている間は、以下のような制限を受けます。
- キャッシングやローンの新規契約ができなくなる
- クレジットカードの使用や新規作成ができなくなる
- クレジットカードに付帯するETCカードの使用や新規作成ができなくなる
- 分割払いが利用できなくなる
- 賃貸物件の契約ができない場合がある
- 家族や友人などの保証人になれなくなる
特に新たな借り入れやクレジットカードの利用が制限されてしまうと、借金返済や生活費のためのお金を工面するのが難しくなるため、さらに苦しい状況に追い込まれてしまいます。
なお、ブラックリストの登録は滞納分の支払いが完了してから5年経過しないと削除されません。
【3ヶ月~】訴状提出や支払督促が届き裁判を起こされる
催告書の内容にも従わずに放置すると、裁判所から特別送達で訴状もしくは支払督促が届きます。支払督促は、催告書や督促状とは違って支払いを強制する法的な効力があり、債権者が裁判所に支払督促を申し立てた場合に届く書類です。
支払督促が届いてから2週間以内に異議を申し立てなければ、債権者の主張が全面的に認められ、債権者は裁判を経ずに財産の差し押さえが可能になります。
支払督促が届いてから2週間以内に異議を申し立てた場合や、債権者が貸金返還請求訴訟を起こした場合は訴状が送付されます。
訴状を無視すると債権者の主張通りの判決が下され、強制執行によって財産が差し押さえられてしまうため、訴状が届いたら答弁書を作成し、指定された期日に出廷しなければなりません。
【裁判以降】財産が差し押さえられる
訴状や支払督促に適切に対応しなかった場合や判決内容に従わなかった場合は、財産の差し押さえを受ける可能性が高いです。
財産の差し押さえは法的な強制力を持つため、債務者は拒否できません。差し押さえの対象となる財産は以下の通りです。
- 現金
- 有価証券(株券・債券など)
- 不動産
- 自動車
- 貴金属
- 高級ブランド品
- 預金債権
- 給与債権
差し押さえられた財産は競売にかけられて金銭に換価され、借金の返済に充てられてしまいます。
ただし、民事執行法で定められている差押禁止財産に該当するものは差し押さえの対象外です。
公正証書を作成していた場合はいきなり財産を差し押さえられることも
強制執行認諾文言付き公正証書を作成していた場合は、催告書を無視するといきなり財産の差し押さえを受ける可能性があります。
強制執行認諾文言付き公正証書とは、相手が支払いをしない場合に、裁判手続きを行わなくても相手の財産を差し押さえられる公正証書のことです。
本来、相手の財産を差し押さえるには、裁判を起こして勝訴判決を得なければなりません。しかし、強制執行認諾文言付き公正証書があれば、相手が公正証書の内容通りに支払いを行わない場合、裁判を起こさなくても直ちに強制執行が行えることが民事執行法で定められています。
催告書が届いた場合の対処法
催告書の内容通りに支払えないからといって何もせずに放置すると、法的措置を取られて最終的に強制執行による財産の差し押さえを受ける可能性があります。
最悪の事態を避けるためにも、催告書が届いたら以下の方法で適切に対処しましょう。
- 架空請求ではないか請求内容を確認する
- 時効が成立しないか確認する
- 時効が完成してから催告書が届いた場合は弁護士に相談する
- 支払える場合は期日までに支払う
- 借金の場合は債権者に返済額や期日の調整を相談する
- 年金や税金を滞納している場合は窓口に相談する
ここからは、それぞれの対処法について1つずつ詳しく解説していきます。
架空請求ではないか請求内容を確認する
催告書が届いたら、まずは架空請求ではないか請求内容をよく確認しましょう。実在する金融機関や役所から催告書が届いたと思ったら、実は架空請求だったというケースもあります。
税金や借金の滞納をしていない人ならすぐ気付くかもしれませんが、実際に税金や借金を滞納している人だと催告書の内容が架空請求だと気付かない可能性が高いです。
不安になって催告書に記載されている電話番号に連絡してしまうと、多額のお金をだまし取られてしまう恐れがあります。催告書の内容を確認してまったく身に覚えがなければ、連絡や支払いをせずに警察や消費生活センターに相談してください。
身に覚えのない会社名でも債権回収会社の場合は詐欺ではない
身に覚えのない会社から催告書が送られてきたからといって、架空請求だと決めつけるのは禁物です。なぜなら、借入先の会社から委託された正規の債権回収会社である可能性もあるからです。
債権回収会社とは、債務者が支払いをしない場合に、債権者に代わってお金を回収できる民間企業のことです。代表的な債権回収会社は以下の通りです。
- 日本債権回収株式会社
- アビリオ債権回収株式会社
- ニッテレ債権回収株式会社
- SMBC債権回収株式会社
- オリックス債権回収株式会社
- アルファ債権回収株式会社
正規の債権回収会社からの請求は詐欺ではないため、身に覚えのない会社だからといって無視をすると、法的措置を取られる可能性があります。
身に覚えのない会社から催告書が届いたら、法務省が公開している「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧」に送付元の会社が載っているかどうか、借入先の会社に問い合わせて債権回収会社に委託したかどうか確認してみましょう。
時効が成立しないか確認する
催告書の内容が架空請求ではないことが確認できたら、まず借金の消滅時効が成立しないか確認しましょう。
原則として最後の返済日から5年(場合によっては10年)経過していれば、時効の成立によって借金の返済義務が消滅する可能性があります。ただし、借金の時効を成立させるには、時効期間が満了した後に時効の援用という手続きが必要です。
時効の援用とは、時効の成立によって利益を受ける者(債務者)が、時効の成立によって権利を失う者(債権者)に対して時効の成立を主張することです。
時効の援用方法に法的な定めはないので口頭でも成立しますが、口頭だと証拠が残らないため、時効援用の書類を内容証明郵便で送付するのが一般的です。
ただし、時効期間が経過している間に時効の完成猶予事由や更新事由が発生した場合は、最後の返済日から5年以上経過していても時効が成立しない可能性があります。
- 時効の完成猶予:一定期間は時効のカウントが一時的にストップし、時効の成立が阻止されること
- 時効の更新:これまでの時効のカウントをリセットし、新たにカウントし直すこと
時効の完成猶予や更新が発生する主な事由は以下の通りです。
時効の完成猶予 |
催告(裁判外の請求)
裁判
支払督促
和解・調停(法律に基づくもの)
仮差押え
強制執行 |
時効の更新 |
債務の承認(債務の存在や返済義務の存在を認めること)
裁判
支払督促
和解・調停(法律に基づくもの)
強制執行 |
特に催告書が届いたときは安易に自己判断をしてしまうと、知らない間に時効がリセットされて時効が成立しない恐れがあります。
時効が成立できる見込みがある状況であれば、時効がリセットされないためにも弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
催告書が届くと時効の完成が6ヶ月間猶予される
催告書は、民法第150条の「催告による時効の完成猶予」に該当します。催告書が届くと、その時点で時効のカウントが一時的にストップし、時効の成立がそこから6ヶ月間先延ばしされます。
なお、催告書による時効の延長は1回限りなので、6ヶ月の間に再び催告書が届いても時効は延長されません。
6ヶ月の間に裁判を起こされなければ時効のカウントは再開する
催告書が届いてから6ヶ月の間に債権者から支払督促や裁判の申し立てがない場合は、催告の効力が失われることで時効の完成猶予事由が消滅し、時効のカウントが再開します。
時効の完成猶予は時効の更新とは異なり、これまでの時効のカウントはリセットされません。カウント再開後に時効期間が満了すれば、時効の援用によって時効が成立し、返済義務が消滅します。
ただし、催告書が届いてから6ヶ月の間に支払督促や裁判の申し立てがあった場合は、手続きが終了するまで再び時効の完成が猶予されます。
また、支払督促や裁判によって申立人(債権者)の権利が確定した場合は時効が更新されてしまいます。権利が確定した時点でこれまでの時効のカウントがリセットされるため、ゼロからカウントし直しです。
なお、支払督促や裁判によって権利が確定した場合の時効期間は10年に延長されるため、最低でも10年は時効の援用ができません。
時効が完成してから催告書が届いた場合は弁護士に相談する
時効完成後も債権者が催告書を送ってくる最大の狙いは時効の更新です。借金の時効を更新させる方法としては、大きく分けて「債務の承認」と「裁判上の請求」の2つがあります。
しかし、すでに時効期間が経過した後に時効を更新させるには、債務者に債務を承認させるしか方法がありません(裁判上の請求をしても、債務者は答弁書で時効の完成を主張できるため)。そのため、債権者は催告書で支払いを求めてくるのです。
催告書が届いた後に借金を1円でも返済してしまったり、返済の約束を取り付けてしまったりすると、債務を承認したとみなされてしまい、時効期間がリセットされてしまいます。
自己判断で対処してしまうと時効の完成が主張できなくなってしまう恐れがあるため、弁護士に相談したうえで対処してください。
支払える場合は期日までに支払う
時効を完成させるのが難しく、かつ支払えるだけの余裕があれば、記載されている期日までに支払うのが一番です。
全額支払えるかどうか不安な場合でも、とりあえず催告書で請求された滞納分を支払えば、これ以上催告書や法的な手続きで支払いを迫ってくることはありませんし、ブラックリストへの登録も回避できます。
その後に返済が困難な状況に陥った場合は、債権者や担当窓口に相談する、弁護士に相談するなど適切に対処しましょう。
借金の場合は債権者に返済額や期日の調整を相談する
催告書通りに借金の返済がどうしてもできない場合は、債権者に返済額や期日の調整について相談しましょう。
債権者もできるだけ法的措置を取らずに穏便に問題を解決したいと考えているので、支払いの意思がある債務者に対しては柔軟に対応してくれることが多いです。
事情を説明し、現状で支払いができる金額や期日を正直に話せば、期日の延長や借金の減額、分割払いに対応してもらえる可能性があるので、催告書に記載されている連絡先に連絡して一度相談してみましょう。
年金や税金を滞納している場合は窓口に相談する
催告書の内容通りに年金や税金がどうしても支払えない場合は、担当の窓口に相談しましょう。
滞納している債務の種類 |
相談先 |
年金 |
最寄りの年金事務所 |
国税(相続税・贈与税・自動車重量税など) |
所轄の税務署 |
地方税(住民税・固定資産税・自動車税など) |
所轄の県税事務所、市区町村 |
担当の窓口で事情を説明すれば、分納や免除、期限の延長などに応じてもらえます。
年金や税金を滞納している場合は、催告書が届いてから10日以内に支払いをしないと、いきなり財産の差し押さえを受ける可能性が高いです。
また、年金や税金は債務整理の対象外となっているため、支払いが難しい場合は早めに相談しましょう。
まとめ
催告書は、支払いが長期間滞納した場合に、法的措置に移行する前に最終通告として送られてきます。催告書の内容通りに支払わないと残債の一括請求を求められ、ブラックリストに登録されます。
最終的には支払督促や裁判に移行し、財産の差し押さえを受ける可能性が高いです。そのため、催告書が届いたら早めに弁護士に相談して適切に対処しましょう。
どうしても支払いができない場合は、債権者や担当窓口に借金の減額や期日の調整について相談するか、債務整理の利用を検討してみてください。
催告書についてよくある質問
催告書には何が記載されていますか
催告書には、一般的に以下の内容が記載されています。
- 債務者の情報
- 債権者の情報
- 催告書の作成年月日
- 以前の請求内容・支払期限
- 催告書での請求内容・支払期限
- 振込先の口座
新たに設定した支払期限までに支払いができなかった場合は法的措置を取る旨も記載されています。
催告書には法的効力がありますか?
催告書には、時効の完成が6ヶ月間猶予されるという法的効力があります。催告書が届くと時効のカウントが一時的にストップし、時効の完成が6ヶ月間先延ばしされます。
時効の完成が猶予されている間に債権者から支払督促や裁判の申し立てがなければ、時効のカウントが再開されるのが一般的です。
なお、支払督促や確定判決とは違い、支払いを強制させる法的効力はありません。
催告書の支払期限はどのくらいですか
催告書の支払期限は、催告書の到着日から1週間~2週間後に設定されているのが一般的です。
なお、年金や税金の場合は、催告書を送付してから10日以内に支払いがなければ、裁判上の手続きを経ずに未納者の財産を差し押さえられることが法律で認められています。
借金の場合は、滞納から3ヶ月以後に裁判上の手続きへ移行するケースが多いです。裁判や差し押さえを回避したければ、催告書で定められている期日までに支払いを済ませましょう。
最短即日取立STOP!
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